説明

発光装置、発光素子パッケージ及び発光素子搭載用配線基板

【課題】安価な基板を用いた簡便な片面配線基板の構造を採りつつ、放熱特性を良好に保つ。
【解決手段】波長が450nmの光に対し、少なくとも第1主面10aの全反射率が80%以上であり、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能な電気的絶縁基板10と、電気的絶縁基板10を貫通するビアホール13内に充填された金属材からなる金属充填部30と、電気的絶縁基板10の第1主面10a側に設けられ、電気的絶縁基板10と共に一部が電気的絶縁基板10の第2主面10b側へと折り曲げられている銅配線パターン20pと、第1主面10a側の金属充填部30上に搭載され、第1主面10a側の銅配線パターン20pにボンディング接続された発光素子と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光素子パッケージ及び前記発光装置に用いられる発光素子搭載用配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータを代表とする液晶ディスプレイを用いた携帯機器や、LEDバックライトを用いた液晶テレビジョン、さらにはLED電球等のように、近年、省エネルギーやCO排出低減を目的として、LEDチップ等の発光素子を光源とする製品が増えつつある。発光素子は、例えばガラスエポキシ基板やアルミニウムベース基板、セラミックス基板等の配線基板上に発光素子が実装されたLEDモジュールやLEDパッケージ等の発光装置として、上記製品に組み込まれている。或いは、リードフレーム上に発光素子を実装して白色モールド樹脂で成形した発光装置が用いられることもある。
【0003】
これらの発光装置に実装される発光素子としては、例えばGaN系青色LEDチップ等が使用される。青色LEDチップは、例えば青色光を白色光に波長変換することができる蛍光体を混入した封止材で封止され、白色発光するように構成されている。その際、発光特性のばらつきを抑えるため、例えば0.25mm×0.35mm角などの小さなサイズで使用される場合が多い。
【0004】
発光装置に実装された発光素子は、大量の熱を放散する場合がある。そこで、例えば1ワットクラスの発光装置では、発熱する発光素子に耐えうるよう、配線基板としてセラミックス基板等が用いられることが多い。また、例えば特許文献1では、発光素子が実装される配線基板に放熱基板としてアルミナコンポジットを用いて放熱性を高めている。また、例えば特許文献2では、基板裏面に電極端子を有するフィルドビアをLED素子の直下に設け、基板裏面で電気的導通をとると共に電極端子へと放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−235778号公報
【特許文献1】特開2009−054860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1のようなアルミニウムベース基板やガラスエポキシ基板、セラミックス基板等は、通常200μm以上の厚さで用いられるため、加工性が悪く製造コストが増大してしまうほか、セラミックス基板等は材料コスト自体も高い。また、例えば特許文献2のようにフィルドビア等の放熱構造を有する発光装置やその他多くの発光装置では両面配線基板の構造が採られるため、発光素子の搭載面および電極端子の形成面の両面への回路形成や導通加工等が必要となり、加工工程が増え製造コストの低減が困難である。
【0007】
本発明の目的は、安価な基板を用いた簡便な片面配線基板の構造を採りつつ、放熱特性を良好に保つことが可能な発光装置、発光素子パッケージ及び発光装置に用いられる発光素子搭載用配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、波長が450nmの光に対し、少なくとも第1主面の全反射率が80%以上であり、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能な電気的絶縁基板と、前記電気的絶縁基板を貫通するビアホール内に充填された金属材からなる金属充填部と、前記電気的絶縁基板の第1主面側に設けられ、前記電気的絶縁基板と共に一部が前記電気的絶縁基板の第2主面側へと折り曲げられている銅配線パターンと、前記第1主面側の前記金属充填部上に搭載され、前記第1主面側の前記銅配線パターンにボンディング接続された発光素子と、を備える発光装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、前記電気的絶縁基板の第1主面の色が白色又は銀色である第1の態様に記載の発光装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、前記電気的絶縁基板は、前記第2主面側に配置される基材と、前記第1主面側に配置される接着剤と、を備える第1又は第2の態様に記載の発光装置が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、前記基材は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、エポキシ、アラミドの少なくともいずれかの樹脂を含む第1〜第3の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、前記基材の厚さは、4μm以上75μm以下である第1〜第4の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、前記ビアホールの開口領域は前記発光素子のサイズよりも大きく、前記ビアホールに充填された金属材は銅めっきである第1〜第5の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、前記金属充填部は、前記第2主面側へと折り曲げられた前記銅配線パターンと略同一の高さとなるよう、前記電気的絶縁基板の第2主面よりも突出して設けられている第1〜第6の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0015】
本発明の第8の態様によれば、前記金属充填部の前記第2主面側及び折り曲げられた前記銅配線パターンの前記第2主面側が、それぞれ外部との電気的導通をとる電極端子となっている第1〜第7の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0016】
本発明の第9の態様によれば、前記銅配線パターン及び前記金属充填部のそれぞれの露出部分には、金、銀、パラジウム、ニッケル、スズの少なくともいずれかの元素を含むめっきが施されている第1〜第8の態様のいずれかに記載の発光装置が提供される。
【0017】
本発明の第10の態様によれば、第1〜第9の態様のいずれかに記載の発光装置が1個以上の発光素子を含む単位で個片化された発光素子パッケージが提供される。
【0018】
本発明の第11の態様によれば、波長が450nmの光に対し、少なくとも第1主面の全反射率が80%以上であり、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能な電気的絶縁基板と、前記電気的絶縁基板を貫通するビアホール内に充填された金属材からなり、前記第1主面側に発光素子を搭載可能に構成される金属充填部と、前記第1主面側で前記発光素子とボンディング接続可能に前記電気的絶縁基板の第1主面側に設けられ、前記電気的絶縁基板と共に一部が前記電気的絶縁基板の第2主面側へと折り曲げられている銅配線パターンと、を備える発光素子搭載用配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安価な基板を用いた簡便な片面配線基板の構造を採りつつ、放熱特性を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の1ユニットを示す図であって、(a)は発光装置の第1主面側の上面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は発光装置の第2主面側の上面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法の一部の工程を、図1(a)のA−A断面と同方向側の断面図で示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本発明の一実施形態>
【0022】
(1)発光装置の構造
まずは、本発明の一実施形態に係る発光装置の構造について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置としてのLEDモジュール1の1ユニットを示す図であって、(a)はLEDモジュール1の第1主面10a側の上面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)はLEDモジュール1の第2主面10b側の上面図である。なお、説明の便宜上、図1(a)中、封止材40の図示は省略した。
【0023】
図1に示すように、LEDモジュール1は、発光素子としてのLEDチップ100が、発光素子搭載用配線基板1sに実装された発光装置として構成されている。LEDチップ100は、例えば450nm付近にピーク波長を有するGaN系の青色LEDチップとして構成される。
【0024】
(電気的絶縁基板)
具体的には、LEDモジュール1は、第1主面10a及び第2主面10bを備える電気的絶縁基板10を備える。電気的絶縁基板10は、第2主面10b側に配置される基材11と、第1主面10a側に配置される接着剤12とを備える。
【0025】
第2主面10b側の基材11は、例えばポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エポキシ、アラミド等の少なくともいずれかの樹脂を含む絶縁性フィルムとして構成され、例えば厚さが4μm以上75μm以下である。これにより、電気的絶縁基板10は、例えば50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能に構成される。
【0026】
第1主面10a側の接着剤12は、例えば熱硬化性のエポキシ系接着剤等であり、TAB(Tape Automated Bonding)テープ用又はフレキシブル配線基板用の接着剤や、カバーレイ用接着剤等を用いることができる。これらの接着剤を有するメーカーとしては、例えば巴川製紙所、東レ、有沢製作所等がある。
【0027】
ここで、例えば基材11として、白色顔料を混ぜ込んだり白色材料を貼り合せたりした白色基材を用いたり、例えば接着剤12として、白色カバーレイ等の輝度の高い接着剤を用いることで、電気的絶縁基板10の第1主面10aの色を例えば白色又は銀色とし、波長が450nmの光に対する第1主面10aの全反射率を例えば80%以上とすることができる。なお、白色には灰色や乳白色等の近似色が含まれ、また、銀色は金属光沢をもつ白色又は灰色等である。
【0028】
(金属充填部)
また、LEDモジュール1は、電気的絶縁基板10を貫通するビアホール13を備え、
ビアホール13内には、例えば銅めっき等からなる金属材が充填された金属充填部30が設けられている。また、ビアホール13の開口領域は、例えばLEDチップ100のサイズよりも大きく、LEDチップ100の全体が、後述の銅配線パターン20pを介して金属充填部30上に搭載可能に構成される。また、金属充填部30は、電気的絶縁基板10の第2主面10bよりも突出して設けられ、突出した部分はLEDモジュール1の外部と電気的導通をとる電極端子としての銅めっき端子30tとなっている。
【0029】
(銅配線パターン)
また、LEDモジュール1は、接着剤12を介して電気的絶縁基板10の第1主面10a側に設けられ、例えば厚さが9μm以上70μm以下の銅配線パターン20pを備える。銅配線パターン20pは、金属充填部30上に設けられ、LEDチップ100がダイボンディングされるダイボンディング部21dと、ダイボンディング部21dとは非接触に形成された折り曲げ部22bと、を備える。
【0030】
折り曲げ部22bの一部は、下地となる電気的絶縁基板10と共に電気的絶縁基板10の第2主面10b側へと折り曲げられている。互いに折り重なった電気的絶縁基板10の第2主面10b同士は、例えばエポキシ系やポリイミド系等の耐熱性のある図示しない接着剤等で固定されている。電気的絶縁基板10の両面側に跨る折り曲げ部22bの第1主面10a側はワイヤボンディング部22wとして構成され、第2主面10b側は銅配線端子22tとして構成される。
【0031】
すなわち、折り曲げられずに第1主面10a側に残ったワイヤボンディング部22wは、LEDチップ100とワイヤボンディング接続可能に構成される。第2主面10b側へと折り曲げられた電極端子としての銅配線端子22tは、LEDモジュール1の外部と電気的導通をとって、外部からLEDチップ100に電力が供給されるよう構成される。また、銅配線端子22tは、金属充填部30が備える突出した銅めっき端子30tと略同一の高さとなっている。
【0032】
また、金属充填部30及び銅配線パターン20pのそれぞれの露出部分には、例えば金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)等の少なくともいずれかの元素を含む図示しないめっきが施されている。これにより、金属充填部30及び銅配線パターン20pの接続信頼性を高めることができるとともに、電気的絶縁基板10の第1主面10a側に設けられた銅配線パターン20pについても、波長が450nmの光に対する全反射率を高めることができる。
【0033】
以上、基材11と接着剤12とを備える電気的絶縁基板10と、電気的絶縁基板10を貫通するビアホール13内に設けられた金属充填部30と、電気的絶縁基板10と共に一部が折り曲げられた銅配線パターン20pと、を主要な構造として、発光素子搭載用配線基板1sが構成される。
【0034】
(発光素子)
上述のように、LEDモジュール1は、この発光素子搭載用配線基板1sに実装されるLEDチップ100を備える。すなわち、LEDチップ100は、図示しないAgペースト等の導電性材料を用いて導通可能にダイボンディング部21dにダイボンディングされることで、ダイボンディング部21dを介して第1主面10a側の金属充填部30に搭載される。また、LEDチップ100は、第1主面10a側のワイヤボンディング部22wに、ワイヤ110によりワイヤボンディング接続されている。
【0035】
また、LEDチップ100は、封止材40により1個又は複数個の単位で発光素子搭載用配線基板1s上に封止されている。封止材40には、例えば青色光を白色光に波長変換
する蛍光体樹脂、及びパッケージ封止樹脂を用いることができる。パッケージ封止樹脂が蛍光体樹脂の機能を兼用する場合もある。
【0036】
以上により、本実施形態に係る発光装置としてのLEDモジュール1が構成される。
【0037】
なお、上述のLEDモジュール1を用い、1個又は複数個のLEDチップ100を含む単位でLEDモジュール1が個片化された発光素子パッケージとしてのLEDパッケージが構成される。
【0038】
以上のように、本実施形態では、例えばLEDチップ100の全体が搭載可能な大きさの金属充填部30を、LEDチップ100の直下に設けている。これにより、例えば熱伝導性の高い銅めっき等で構成される金属充填部30の放熱効果により、LEDチップ100の発熱による温度上昇や、これに伴うLEDチップ100の特性悪化、電気的絶縁基板10の熱膨張等の周辺部材への影響を抑制することができる。
【0039】
また、金属充填部30は、電気的絶縁基板10の第2主面10b側に銅めっき端子30tを備え、LEDチップ100が搭載される第1主面10aの反対側から外部との電気的導通をとる構造となっているため、LEDモジュール1には両面配線基板に相当する構成が必要となる。
【0040】
本実施形態では、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能なポリイミド等の安価な電気的絶縁基板10を用いている。また、電気的絶縁基板10の第1主面10a側に設けられ、かつ、電気的絶縁基板10の両面側に跨る折り曲げ部22bを備える。これにより、安価な基板を用いた簡便な片面配線基板の構造を採りつつ、実質的に両面配線基板と同等の構造とすることができ、上記のように金属充填部30を設けて放熱特性を良好に保つことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、電気的絶縁基板10の第1主面10aを、波長が450nmの光に対する全反射率が例えば80%以上の白色又は銀色等となるよう構成している。また、銅配線パターン20pに所定のめっきを施すことで、電気的絶縁基板10が銅配線パターン20pで覆われることによる第1主面10a側の反射率低下を抑制している。これにより、例えば450nm付近にピーク波長を有するLEDチップ100から発せられて乱反射した光等を、第1主面10a側から外部に向けて効率よく反射させることができ、LEDモジュール1全体としての光量を向上させることができる。
【0042】
(2)発光装置の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る発光装置としてのLEDモジュール1の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るLEDモジュール1の製造方法の一部の工程を、図1(a)のA−A断面と同方向側の断面図で示す工程図である。以下に説明するLEDモジュール1の製造工程には、例えばTABテープ向けの製造工程が適用される。
【0043】
(ビアホール形成工程)
まず、図2(a)に示すように、第2主面10b側に配置される基材11と、第1主面10a側に配置される接着剤12とを有する電気的絶縁基板10を用意する。このような電気的絶縁基板10は、例えばポリイミド等からなる基材11上にエポキシ系等の熱硬化性の接着剤12をラミネート加工又は塗工して製造することができる。基材11と接着剤12とが予め貼り合わされた基板を上記に挙げた接着剤メーカー等から購入し、使用する製造ラインに適合する幅に裁断(スリット)してもよい。
【0044】
次に、図2(b)に示すように、電気的絶縁基板10に、電気的絶縁基板10を貫通するビアホール13を形成する。ビアホール13は、例えばプレス加工等で形成することができる。その際、後に搭載されるLEDチップ100のサイズよりもビアホール13の開口領域が大きくなるよう調整する。また、このとき、搬送に用いるスプロケットホールや露光位置の調整に用いるアライメントホール等を同時に形成してもよい(いずれも図示せず)。ビアホール13等の形成をレーザ又はエッチング工法等の手法で行ってもよい。
【0045】
(銅箔形成工程)
次に、図2(c)に示すように、ビアホール13を覆うよう、電気的絶縁基板10の第1主面10a上の全面に銅箔20を形成する。このとき、例えば厚さが9μm以上70μm以下の銅箔20を使用し、例えば常圧又は減圧環境下のロールラミネータを用いたラミネート等により電気的絶縁基板10に貼り合せることができる。ラミネート終了後、例えば150℃以上の温度で接着剤12のポストキュアを行う。ラミネートやポストキュアの条件は、接着剤メーカーの推奨値を基準に選定可能である。なお、接着剤を用いず、熱圧着により銅箔を貼り合せたり、銅を直接的に電気的絶縁基板に成膜したりしてもよい。
【0046】
(金属充填部形成工程)
続いて、図2(d)に示すように、電気的絶縁基板10の第2主面10b側から、例えば電気銅めっき等で銅(Cu)めっき等の金属材をビアホール13内に充填して、銅めっき端子30tを備え、電気的絶縁基板10の第2主面10bと第1主面10aとを導通させる金属充填部30を形成する。このとき、銅めっき端子30tが後に形成される銅配線パターン20pの銅配線端子22tと略同一の高さとなるよう、めっき時間等の電気銅めっき条件を調整して金属充填部30を電気的絶縁基板10の第2主面10bよりも突出させる。なお、電気銅めっき等を行う際には、第1主面10a側の銅箔20の表面を図示しないめっき用マスキングテープ等でマスキングする。めっき用マスキングテープは、電気銅めっき終了後、銅箔20から剥離する。
【0047】
このような銅めっき等による埋め込みめっきの手法については、例えば特開2003−124264号公報等で開示されているほか、エバラユージライト、アトテック等のメーカー製の銅めっき液を使用し、各メーカーの推奨値を基準に条件選定を行うことができる。
【0048】
以上により、第2主面10b側で外部と電気的導通をとることが可能な電極端子としての銅めっき端子30tを備え、尚且つ、第1主面10a側にLEDチップ100を搭載可能に構成される金属充填部30が形成される。
【0049】
(エッチング工程)
次に、図2(e)に示すように、電気的絶縁基板10の第1主面10a上の銅箔20をエッチング等によりパターニングし、銅配線パターン20pを形成する。具体的には、例えば図示しないエッチング用レジストを銅箔20の上に塗工して露光・現像し、図示しないレジストパターンを形成する。或いは、エッチング用レジストの代わりにドライフィルムレジスト等を用いてもよい。
【0050】
続いて、レジストパターンをマスクとして銅箔20をエッチングし、金属充填部30を覆うダイボンディング部21dと、ダイボンディング部21dとは非接触な折り曲げ部22bとを備える銅配線パターン20pを形成する。但し、この時点では、折り曲げ部22bは電気的絶縁基板10の第1主面10a上に略まっすぐに延びた状態で形成されている。
【0051】
なお、上記エッチング時には、第2主面10b上に図示しないマスキングテープ等を貼
付し、第2主面10b側に突出した金属充填部30をマスキングする。或いは、金属充填部30に裏止め材を塗工してもよい。エッチング終了後、レジストパターン及びマスキングテープを剥離する。
【0052】
(めっき形成工程)
次に、金属充填部30及び銅配線パターン20pのそれぞれの露出部分に、Au、Ag、Pd、Ni、Snの少なくともいずれかの元素を含むめっきを施す(図示せず)。なお、めっき形成工程は、後述の折り曲げ工程の後に行ってもよい。
【0053】
(折り曲げ工程)
次に、図2(f)に示すように、プレス加工等により電気的絶縁基板10の一部に切れ込みを入れ、折り曲げ部22bが折り曲げ可能となるよう切れ込み部14を形成する。すなわち、切れ込み部14は、銅配線パターン20p及び金属充填部30等を含む領域が完全に切り離されることのないよう、後にLEDチップ100がワイヤボンディング接続される側とは反対側の折り曲げ部22b端部の周囲を囲むように、例えば角張ったU字型(コの字型)或いは丸みを帯びたU字型等に形成することができる。
【0054】
次に、図2(g)に示すように、第1主面10a側に設けられた折り曲げ部22bの一部を、下地の電気的絶縁基板10と共に電気的絶縁基板10の第2主面10b側へと折り曲げる。そして、互いに折り重なった電気的絶縁基板10の第2主面10b同士を、例えばエポキシ系やポリイミド系等の耐熱性のある図示しない接着剤等で固定する。
【0055】
これにより、第1主面10a側でLEDチップ100とワイヤボンディング接続可能に構成されるワイヤボンディング部22wと、第2主面10b側で外部から電力の供給が可能に構成される電極端子としての銅配線端子22tと、が形成される。このように、折り曲げ容易で安価な基板を用いた片面配線基板の構造を採ることで、工程数を削減して製造コストの低減を図りつつ、実質的に両面配線基板と同等の構造とすることができる。
【0056】
以上により、本実施形態に係るロール状の発光素子搭載用配線基板1sが製造される。
【0057】
(ダイボンディング工程)
次に、発光素子搭載用配線基板1sにLEDチップ100を実装し、本実施形態に係る発光素子としてのLEDモジュール1を製造する。以下に、LEDモジュール1の製造工程について、図1を参照しながら説明する。
【0058】
まずは、例えば450nm付近にピーク波長を有する発光素子としてのLEDチップ100を、ウエハダイシング後のウエハリング又はウエハトレイに搭載された状態で用意する。このLEDチップ100を、LED用ダイボンダ等を用い、電気的絶縁基板10の第1主面10a側の金属充填部30直上のダイボンディング部21dに、例えば図示しないAgペースト等を介してダイボンディングする。その後、Agペースト等のダイボンディング材を、例えばダイボンディング材メーカーの推奨値にしたがい、例えば150℃で1時間ほど加熱キュアする。
【0059】
(クリーニング工程)
上記のように、ダイボンディング材を加熱キュアすると、発生したデガス(脱ガス)により、LEDチップ100の備える図示しない表面電極等のボンディングパッドが汚染される場合がある。そこで、例えば減圧環境下で、アルゴン(Ar)ガス及び酸素(O)ガス等の混合ガスを用いて、汚染されたボンディングパッド等のプラズマクリーニングを行う。
【0060】
(ワイヤボンディング接続工程)
次に、LED用ワイヤボンダ等を用い、電気的絶縁基板10の第1主面10a側に残った折り曲げ部22bのワイヤボンディング部22wに、LEDチップ100をワイヤ110によりワイヤボンディング接続する。
【0061】
(封止工程)
続いて、蛍光体樹脂とパッケージ封止樹脂とを用い、LEDチップ100を1個又は複数個の単位で発光素子搭載用配線基板1s上に封止する。或いは、蛍光体樹脂とパッケージ封止樹脂とを兼用してもよい。このように、LEDチップ100が1個又は複数個の単位で封止材40により封止されることで、LEDチップ100の発する青色光を白色光に波長変換し、白色発光させることができる。
【0062】
以上により、本実施形態に係る発光装置としてのLEDモジュール1が製造される。
【0063】
なお、1個又は複数個のLEDチップ100を含む単位で、ダイサやビグ刃を用いてLEDモジュール1を個片化することで、本実施形態に係る発光素子パッケージとしてのLEDパッケージが製造される。
【0064】
上記のように、本実施形態によれば、セラミックス基板等の高価な基板を用いることなく基板のコストを低減することができ、また、片面配線基板の構造を採ることで工程数を削減して製造コストの低減を図ることができる。このように、本実施形態によれば、安価な基板を用いた簡便な片面配線基板の構造を採りつつ、放熱特性を良好に保つことが可能となる。
【0065】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0066】
例えば、上述の実施形態においては、発光素子搭載用配線基板1sに実装されるLEDチップ100を、例えば450nm付近にピーク波長を有するGaN系の青色LEDチップとしたが、実装されるLEDチップの発光波長や構成材料はこれに限られない。
【0067】
また、上述の実施形態においては、1ユニットのLEDモジュール1が備える1個の金属充填部30上に1個のLEDチップ100が搭載されているものとしたが、LEDモジュールの構成はこれに限られない。例えば1ユニットのLEDモジュールが備える1個の金属充填部上に複数個のLEDチップが搭載されていてもよく、1ユニットのLEDモジュールが備える複数個の金属充填部上のそれぞれに、1個又は複数個のLEDチップが搭載されていてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態においては、銅配線パターン20pの形成後に、折り曲げ部22bを折り曲げ可能とする切れ込み部14を形成するものとしたが、工程順はこれに限られない。例えば、金属充填部30が設けられるビアホール13の形成時に同時に切れ込み部14を形成してもよい。
【0069】
また、上述の実施形態においては、金属充填部30の形成時に高さを調整するものとしたが、高さ調整の手法はこれに限られない。例えば、電気銅めっき等の際には金属充填部30を適度な高さに突出させておき、折り曲げ工程を実施後に、プレス加工や研磨加工等により金属充填部30の銅めっき端子30tの高さと銅配線端子22tの高さとを揃えてもよい。なお、この場合には、Au,Ag等のめっき工程を高さ調整後に行うようにする。
【0070】
また、上述の実施形態においては、TABテープ向けの製造工程を適用してLEDモールド1を製造することとしたが、用いる電気的絶縁基板等により、リジット配線基板やフレキシブル配線基板向けの製造工程を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 LEDモジュール(発光装置)
1s 発光素子搭載用配線基板
10 電気的絶縁基板
10a 第1主面
10b 第2主面
11 基材
12 接着剤
13 ビアホール
14 切れ込み部
20 銅箔
20p 銅配線パターン
21d ダイボンディング部
22b 折り曲げ部
22t 銅配線端子(電極端子)
22w ワイヤボンディング部
30 金属充填部
30t 銅めっき端子(電極端子)
40 封止材
100 LEDチップ(発光素子)
110 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が450nmの光に対し、少なくとも第1主面の全反射率が80%以上であり、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能な電気的絶縁基板と、
前記電気的絶縁基板を貫通するビアホール内に充填された金属材からなる金属充填部と、
前記電気的絶縁基板の第1主面側に設けられ、前記電気的絶縁基板と共に一部が前記電気的絶縁基板の第2主面側へと折り曲げられている銅配線パターンと、
前記第1主面側の前記金属充填部上に搭載され、前記第1主面側の前記銅配線パターンにボンディング接続された発光素子と、を備える
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記電気的絶縁基板の第1主面の色が白色又は銀色である
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記電気的絶縁基板は、
前記第2主面側に配置される基材と、
前記第1主面側に配置される接着剤と、を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基材は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、エポキシ、アラミドの少なくともいずれかの樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記基材の厚さは、4μm以上75μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記ビアホールの開口領域は前記発光素子のサイズよりも大きく、
前記ビアホールに充填された金属材は銅めっきである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記金属充填部は、前記第2主面側へと折り曲げられた前記銅配線パターンと略同一の高さとなるよう、前記電気的絶縁基板の第2主面よりも突出して設けられている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記金属充填部の前記第2主面側及び折り曲げられた前記銅配線パターンの前記第2主面側が、それぞれ外部との電気的導通をとる電極端子となっている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記銅配線パターン及び前記金属充填部のそれぞれの露出部分には、
金、銀、パラジウム、ニッケル、スズの少なくともいずれかの元素を含むめっきが施されている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の発光装置が1個以上の発光素子を含む単位で個片化された
ことを特徴とする発光素子パッケージ。
【請求項11】
波長が450nmの光に対し、少なくとも第1主面の全反射率が80%以上であり、50mm以下の曲率半径で折り曲げ可能な電気的絶縁基板と、
前記電気的絶縁基板を貫通するビアホール内に充填された金属材からなり、前記第1主面側に発光素子を搭載可能に構成される金属充填部と、
前記第1主面側で前記発光素子とボンディング接続可能に前記電気的絶縁基板の第1主面側に設けられ、前記電気的絶縁基板と共に一部が前記電気的絶縁基板の第2主面側へと折り曲げられている銅配線パターンと、を備える
ことを特徴とする発光素子搭載用配線基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84803(P2013−84803A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224089(P2011−224089)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】