説明

発光装置および発光装置の製造方法

【課題】白色の有機EL素子と共振構造を組み合わせたトップエミッション方式の発光装置において、有機EL素子に過剰に電流が流れること、および、有機EL素子と第2電極の段切れを防止しつつ、開口面積が減少することを抑制する。
【解決手段】矩形の開口領域の一の短辺側において、透明導電膜14a、14b、14cを階段状にずらしてパターニングする。他の辺側においては、透明導電膜14a、14b、14cの端面が揃うようにパターニングする。透明導電膜14a、14b、14cの端部は絶縁膜15で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の発光素子を利用した発光装置および発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を発光素子として形成し、発光素子の発光光を基板と反対側に取り出すトップエミッション方式の発光装置が電子機器の表示装置などとして多用されている。トップエミッション方式は、発光素子を挟み、基板側に形成された一方の第1電極(例えば陽極)と基板との間に反射層を形成し、発光素子を挟む他方の第2電極(例えば陰極)側から光を取り出す方式であって、光の利用効率が高い方式である。
【0003】
また、トップエミッション方式の発光装置において、白色の有機EL素子を用い、前記第2電極と反射層との間で所定の波長の光を共振させて、光の取り出し効率を高める技術が開示されている(例えば特許文献1)。この技術では、赤色発光光、緑色発光光および青色発光光のそれぞれの共振長は、基板側の透明膜または前記第1電極としての透明導電膜で調整を行っている。
【0004】
したがって、この方式では画素周辺に段差が生じやすく、その箇所では有機EL素子の膜厚が薄くなり、過剰に電流が流れてしまうことがある。そこで、この段差をなくすために、画素を規定する絶縁膜を形成するのが一般的である。また、透明膜または透明導電膜の段差が高すぎると、有機EL素子およびその上に形成する第2電極が段切れを起こしてしまうことがあった。そこで、透明膜または透明導電膜のパターン位置を階段状にずらし、段差を極力小さくして、有機EL素子および第2電極との導通を確保することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2797883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように透明膜または透明導電膜のパターン位置を階段状にずらし、さらに絶縁膜を形成すると、パターン位置をずらしただけ開口面積が小さくなってしまうという問題があった。
【0007】
このような事情を背景として、本発明は、白色の有機EL素子と共振構造を組み合わせたトップエミッション方式の発光装置において、有機EL素子に過剰に電流が流れること、および、有機EL素子と第2電極の段切れを防止しつつ、開口面積が減少することを抑制するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基板と、前記基板上に形成された光反射層と、前記光反射層上に形成された透過膜と、前記透過膜上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された電極とを備え、前記光反射層と電極の間の光路長を前記透過膜により調整した共振構造を有し、矩形の開口領域が形成された発光装置であって、前記透過膜は、前記矩形の少なくとも一辺では、階段状に位置をずらしてパターニングされ、他の辺では、端面が揃うようにパターニングされていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記矩形の少なくとも一辺では、透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされている。したがって、透過膜の段差が小さくなり、発光層の膜厚が薄くならないので、発光層に過剰に電流が流れることがない。また、透過膜の段差が小さいので、発光層と電極が段切れを起こすことがなく、電極に対する導通を確保できる。しかも、前記一辺以外の他の辺では、透過膜は端面が揃うようにパターニングされている。したがって、発光に関係しない領域が減少し、開口面積を増加させることができる。
【0010】
本発明に係る発光装置として、前記光反射層および透過膜を各発光色ごとに備え、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記矩形の少なくとも一辺を、各発光色において同じ側の一辺とすることもできる。
【0011】
本発明に係る発光装置においては、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記矩形の少なくとも一辺が、各発光色において同じ側の一辺なので、前記同じ側の一辺にコンタクトホールを設けることができ、レイアウト上有利である。
【0012】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜の端部を絶縁層で覆うこともできる。これにより、透過膜による段差を減少させ、開口面積を減少させずに、発光層に過剰電流が流れること、および、発光層と電極の段切れが生じることを防ぐことができる。
【0013】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜をパターン端よりも内側で絶縁層により覆うこともできる。これにより、透過膜による段差を減少させ、開口面積を減少させずに、発光層に過剰電流が流れることを防止できる。
【0014】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記一辺側では、前記基板側に設けられた駆動素子と前記電極とを電気的に導通させることもできる。これにより、開口面積を増大させつつ、発光装置を確実に駆動できる。
【0015】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜の端面が揃うようにパターニングされた前記他の辺側では、前記基板側に設けられた駆動素子と電極とを電気的に導通しないようにすることもできる。これにより、開口面積を増大させることができる。
【0016】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記一辺は、前記透過膜の端面が揃うようにパターニングされた他の辺の長さよりも短くすることができる。これにより、発光に関係しない領域を極力減らして開口面積を増大させることができる。
【0017】
本発明に係る発光装置は、前記他の辺の長さよりも短く対向する二辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングすることもできる。これにより、高精細な発光装置においても、開口面積を減少させることなく、確実に駆動することができる。
【0018】
本発明に係る発光装置は、前記透過膜を透明導電膜とすることもできる。また、前記透過膜を絶縁体とすることもできる。
【0019】
本発明に係る発光装置の製造方法は、基板上に光反射層を形成する工程と、前記光反射層上に透過膜を形成する工程と、前記透過膜上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に電極を形成する工程とを備え、前記光反射層と電極の間の光路長を前記透過膜により調整した共振構造を有し、矩形の開口領域が形成された発光装置の製造方法であって、前記矩形の少なくとも一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングする工程と、 前記矩形の他の辺に、前記透過膜を端面が揃うようにパターニングする工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、前記矩形の少なくとも一辺では、透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされている。したがって、透過膜の段差が小さくなり、発光層の膜厚が薄くならないので、発光層に過剰に電流が流れることがない。また、透過膜の段差が小さいので、発光層と電極が段切れを起こすことがなく、電極に対する導通を確保できる。しかも、前記一辺以外の他の辺では、透過膜は端面が揃うようにパターニングされている。したがって、発光に関係しない領域が減少し、開口面積を増加させることができる。
【0021】
本発明に係る発光装置は、透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた一辺には、透明膜と駆動素子とを電気的に導通させるコンタクトホールを形成することもできる。これにより、発光に関係しない領域を有効に利用することができる。
【0022】
本発明に係る発光装置の製造方法は、前記光反射層および透過膜を各発光色ごとに形成する工程をさらに備え、前記矩形の少なくとも一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングする工程として、各発光色において同じ側の一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングすることもできる。
【0023】
本発明に係る発光装置においては、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記矩形の少なくとも一辺が、各発光色において同じ側の一辺なので、前記同じ側の一辺にコンタクトホールを設けることができ、レイアウト上有利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置における赤色発光素子の構造を示す平面図である。
【図2】図1におけるy−y’方向の断面図である。
【図3】図1におけるx−x’方向の断面図である。
【図4】絶縁膜および基板側電極上に有機EL素子と光取り出し側電極を成膜した状態の図1におけるy−y’方向の断面図である。
【図5】絶縁膜および基板側電極上に有機EL素子と光取り出し側電極を成膜した状態の図1におけるx−x’方向の断面図である。
【図6】比較例の発光装置の構造を示す断面図である。
【図7】図6の発光装置に有機EL素子と光取り出し側電極を成膜した状態を示す断面図である。
【図8】比較例の発光装置の各色の開口領域を示す平面図である。
【図9】本実施形態の発光装置の各色の開口領域を示す平面図である。
【図10】比較例の発光装置の各色の開口領域を示す平面図である。
【図11】本実施形態の発光装置の開口率の計算結果を示すグラフである。
【図12】比較例の発光装置の開口率の計算結果を示すグラフである。
【図13】本発明の応用例における発光装置における赤色発光素子の構造を示す平面図である。
【図14】本発明の発光装置を利用した電子機器の一例を示す斜視図である。
【図15】本発明の発光装置を利用した電子機器の一例を示す斜視図である。
【図16】本発明の発光装置を利用した電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A:実施形態>
<A−1:発光装置の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置における赤色発光素子の構造を示す平面図である。図2は図1におけるy−y’方向の断面図である。図3は図1におけるx−x’方向の断面図である。図4は絶縁膜および基板側電極上に有機EL素子と光取り出し側電極を成膜した状態の図1におけるy−y’方向の断面図である。図5は絶縁膜および基板側電極上に有機EL素子と光取り出し側電極を成膜した状態の図1におけるx−x’方向の断面図である。
【0026】
本実施形態の発光装置は発光素子が図示しない基板の面上に配列された構成となっている。各発光素子は複数の色彩(赤色・緑色・青色)の何れかに対応した波長の光を発生する要素である。本実施形態では、説明を簡単にするために、赤色光を出射する発光素子の構造について説明する。本実施形態における発光装置は、各発光素子にて発生した光が基板とは反対側に向かって進行するトップエミッション型である。したがって、ガラスなどの光透過性を有する板材のほか、セラミックスや金属のシートなど不透明な板材を基板として採用することができる。
【0027】
基板上には、駆動素子であるTFTや保持容量が形成された図示しないデバイス層が設けられ、デバイス層の表面全体はSiOまたはSiNからなる平坦化膜10により平坦化されている。平坦化膜10の表面側の内部には反射膜11が設けられている。反射膜11は、光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、例えばアルミニウムや銀などの単体金属、またはアルミニウムや銀を主成分とする合金などが好適に採用される。平坦化膜10上にはSiOまたはSiNからなる透明膜12が設けられている。図示しないTFT(Thin Film Transistor)の電極と接続された配線20は、平坦化膜10および透明膜12を貫通するように形成されたコンタクトホール13を介して基板側電極14と結線されている。
【0028】
基板側電極14は陽極であり、反射膜11上の位置に形成される。基板側電極14は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide、出光興産株式会社の登録商標)、またはZnOのような透明酸化物導電材料から形成される。赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子に形成される基板側電極14は、それぞれ異なる構成を有している。本実施形態で説明する赤色発光素子に形成される基板側電極14は、透明導電膜14a、14b、14cの3層の透明導電膜で構成される。図2および図3には図示しないが、緑色発光素子に形成される基板側電極14は、透明導電膜14b、14cの2層の透明導電膜で構成され、青色発光素子に形成される基板側電極14は、1層の透明導電膜14cで構成される。このように本実施形態では、透明導電膜を積層することにより基板側で共振長を調整している。
【0029】
基板側電極14の端部は、図4に示すようにSiOまたはSiNからなる絶縁膜15で覆われており、さらにその上に有機EL層16が形成されている。有機EL層16は、基板側電極14を覆うように形成される。すなわち、有機EL層16は複数の発光素子にわたって連続しており、有機EL層16の特性は複数の発光素子について共通である。詳細な図示は省略するが、有機EL層16は、基板側電極14上に形成された正孔注入層と、正孔注入層上に形成された正孔輸送層と、正輸送層上に形成された発光層と、発光層上に形成された電子輸送層と、電子輸送層上に形成された電子注入層とからなる。なお、正孔注入層および正孔輸送層を、正孔注入層と正孔輸送層の機能を兼ねる単一の層で形成することもできる。
【0030】
発光層は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料である。発光層のホスト材料としては出光興産株式会社製の商品名「BH−232」が使用され、そのホスト材料中に、赤色、緑色、青色のドーパントが混合されている。本実施形態では、赤色ドーパントの材料としては出光興産株式会社製の商品名「RD−001」が使用され、緑色ドーパントの材料としては出光興産株式会社製の商品名「GD−206」が使用され、青色ドーパントの材料としては出光興産株式会社製の商品名「BD−102」が使用される。
【0031】
本実施形態では、電子輸送層はAlq3(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)で形成される。また、電子注入層はLiF(フッ化リチウム)で形成される。なお、電子輸送層および電子注入層を、電子注入層と電子輸送層の機能を兼ねる単一の層で形成することもできる。
【0032】
図4に示す光取り出し側電極17は陰極であり、有機EL層16を覆うように形成される。すなわち、光取り出し側電極17は複数の発光素子にわたって連続している。光取り出し側電極17は、その表面に到達した光の一部を透過するとともに他の一部を反射する性質(すなわち半透過反射性)を持った半透過反射層として機能し、例えばマグネシウムや銀などの単体金属、またはマグネシウムや銀を主成分とする合金から形成される。本実施形態では、光取り出し側電極17はMgAg(マグネシウム銀合金)で形成される。
【0033】
本実施形態に係る発光装置においては、反射膜11と光取り出し側電極17との間で有機EL層16が発する光を共振させる共振器構造が形成される。すなわち、有機EL層16が発する光は反射膜11と光取り出し側電極17との間で往復し、共振によって特定の波長の光が強められて光取り出し側電極17を透過して観察側(図2、図4の上方)に進行する(トップエミッション)。
【0034】
赤色発光素子では有機EL層16で発した光のうち赤色が強められ、緑色発光素子では緑色が強められ、青色発光素子では青色が強められるように、各発光素子における基板側電極14の膜厚が調整される。
【0035】
図1ないし図5には図示しないが、光取り出し側電極17を覆うように応力緩和層が形成される。応力緩和層は、光透過性および耐湿性を有するとともに、光取り出し側電極17よりも軟らかい材料で形成される。応力緩和層は、有機EL層16における電子注入層と同じ材料から形成され、例えばLiF、LiO、Liq、MgO、MgF、CaF、SrF、NaF、WFの何れかから形成することができる。
【0036】
また、光取り出し側電極17上には、発光素子に対する水や外気の浸入を防ぐための保護層であって、無機材料からなる図示しないパシベーション層が形成される。パシベーション層は、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い無機材料から形成される。
【0037】
さらに、本実施形態では、複数の発光素子と対向するように図示しない第2基板が配置される。第2基板はガラスなどの光透過性を有する材料で形成される。第2基板のうち上述した平坦化膜10が形成された基板との対向面には、カラーフィルタおよび遮光膜が形成される。遮光膜は、各発光素子に対応して開口が形成された遮光性の膜体である。開口内にはカラーフィルタが形成される。
【0038】
本実施形態では、赤色発光素子に対応する開口内には赤色光を選択的に透過させる赤色用カラーフィルタが形成され、緑色発光素子に対応する開口内には緑色光を選択的に透過させる緑色用カラーフィルタが形成され、青色発光素子に対応する開口36内には青色光を選択的に透過させる青色用カラーフィルタが形成される。
【0039】
カラーフィルタおよび遮光膜が形成された第2基板は、図示しない封止層を介して上述した平坦化膜10が形成された基板と貼り合わされる。封止層は、透明の樹脂材料、例えばエポキシ樹脂などの硬化性樹脂から形成される。以上が本実施形態の発光装置の構造である。
【0040】
<A−2:透明導電膜のパターニング>
次に、本実施形態における基板側電極14の透明導電膜のパターニングについて説明する。透明導電膜を積層して膜厚により共振長を調整する場合には、透明導電膜の積層により画素周辺部で大きな段差が生じることになる。この状態で有機EL層と光取り出し電極を成膜すると、成膜後に段切れを起こすことになる。
【0041】
そこで、このような段切れを防ぐために、図6に示すように透明導電膜のそれぞれのパターン位置を階段状ずらして形成することが行われている。これにより、画素周辺部での段差が小さくなり、有機EL層と光取り出し電極の成膜後の段切れを防止することができる。
【0042】
また、上述のようにパターン位置を階段状にずらした透明導電膜の段差がむき出しになると、その上に形成する有機EL層の膜厚が薄くなり、この箇所に過剰電流が流れてしまう。さらに、反射膜の幅は、最下層の透明導電膜の幅よりも広く形成されている。反射膜の上方に適正に膜厚調整された透明導電膜が形成されている箇所では、適正な色での発光が行われる。しかし、反射膜が最下層の透明導電膜の外側にはみ出た部分の上方には透明導電膜が存在しないため、好ましくない色の発光が行われることになる。
【0043】
そこで、上述したような透明導電膜の段差がむき出し箇所を覆い、かつ、反射膜の上方の透明導電膜が存在しない領域を覆うために、図6に示すように透明導電膜の端部に絶縁膜を設けることが行われている。このようにすれば、図7に示すように、段切れを起こすことなく、有機EL層と光取り出し側電極を形成することができる。
【0044】
しかしながら、パターン位置をずらして積層した透明導電膜のうち、絶縁膜で覆われた領域は、図8に示すように発光に関与しなくなり、その結果、開口面積が小さくなってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、図1、図2および図4に示すように、発光素子の短辺側の1辺は、透明導電膜14a、14b、14cのパターン位置を階段状にずらして透明導電膜14a、14b、14cを形成し、他の辺については、図1ないし図5に示すように、透明導電膜14a、14b、14cの端面が揃うようなパターン位置で透明導電膜14a、14b、14cを形成する。その結果、少なくとも発光素子の短辺側の1辺においては、画素周辺部での段差が小さくなり、段切れを起こすことなく、有機EL層16および光取り出し側電極17への導通が可能となっている。しかも、他の辺においては、透明導電膜14a、14b、14cの端面が揃っているので、発光に関与しない領域の面積が減少し、開口面積を広くすることができる。
【0046】
また、本実施形態の発光素子においては、図2および図4に示すように、コンタクトホール13を形成する必要があるが、このコンタクトホール13は、パターン位置を階段状にずらして透明導電膜を形成した1辺側に設けられている(図9参照)。パターン位置を階段状にずらして透明導電膜を形成し、その上に絶縁膜を形成した領域は、元々発光に関与しない領域であるので、コンタクトホール13をこの領域に設けても発光には支障を来さない。しかも、本実施形態では、赤色発光素子、緑色発光素子、および、青色発光素子のそれぞれにおいて、同じ側の短辺側の1辺に、パターン位置を階段状にずらして透明導電膜を形成する領域を設けているので、いずれの発光素子においても同じ側にコンタクトホール13を形成することができ、レイアウト上、有利となっている。さらに、コンタクトホール13を形成すると段差が生じてしまう場合があるが、本実施形態のコンタクトホール13は、上述のように透明導電膜のパターン位置をずらして階段形状を形成し、絶縁膜を設けた領域に形成しているので、電流集中を防ぐことができる。
【0047】
<A−3:開口率の向上>
次に、本実施形態において、開口率がどの程度向上しているかについて説明する。図9は本実施形態の発光装置の例である。つまり、赤色発光素子、緑色発光素子、および、青色発光素子のそれぞれにおいて、同じ側の短辺側の1辺は、パターン位置を階段状にずらして透明導電膜を形成し、他の辺については、端面が揃うようなパターン位置で透明導電膜を形成している。一方、図10は、図6ないし図8のように赤色発光素子、緑色発光素子、および、青色発光素子の各辺において、透明導電膜のパターン位置をずらして形成した例である。
【0048】
説明を簡単にするため、図9および図10においてはコンタクトホールの領域を考慮していない。画素開口率計算のため、1ピクセル幅を3x、サブピクセルピッチをx、最小加工寸法をyと定義する。それぞれの開口部の面積は以下のようになる。
【0049】
図9(本実施形態)の場合
A箇所の面積:SA=(3x−2*2y)(x−2*2y)
B箇所の面積:SB=(3x−2*2y)(x−(2+3)y)
C箇所の面積:SC=(3x−2*2y)(x−(2+4)y) (ただし、x>2*4y)
【0050】
図10(比較例)の場合
A箇所の面積:SA=(3x−2*2y)(x−2*2y)
B箇所の面積:SB=(3x−2*3y)(x−2*3y)
C箇所の面積:SC=(3x−2*4y)(x−2*4y)(ただし、x>2*4y)
【0051】
サブピクセルピッチxを1〜5μm、最小加工寸法yを0.1〜0.5μmの範囲で変化させ、開口率((SA+SB+SC)/3x)を計算した結果を図11と図12のグラフに示す。図11が図9(本実施形態)の場合に対応し、図12が図10(比較例)の場合に対応している。
【0052】
図11と図12を比較すると明らかなように、本実施形態では開口率が広く取れているのが分かる。例えば、サブピクセルピッチxが3.0μm、最小加工寸法yを0.2μmの場合には、比較例では52.40%の開口率であるのに対し、本実施形態では65.19%となっており、10%以上の差がある。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、赤色発光素子、緑色発光素子、および、青色発光素子のそれぞれにおいて、同じ側の短辺側の1辺は、パターン位置を階段状にずらして透明導電膜を形成した。その結果、透明導電膜の段差を減らすことにより、有機EL層に過剰に電流が流れることを防ぐことができる。また、段差が小さいので、有機EL層および光取り出し側電極の段切れを起こすことがなく、有機EL層および光取り出し側電極に対する導通を確保することができる。しかも、前記短辺側の1辺以外の辺については、端面が揃うようなパターン位置で透明導電膜を形成したので、開口面積を広くすることができ、開口率を増加させることができる。したがって、有機EL層の輝度寿命を向上させることができる。
【0054】
<B:応用例>
図13は、本発明の実施形態の応用例に係る発光装置の構造を示す図である。図13に示すように、発光素子の両方の短辺側でパターン位置をずらして透明導電膜を階段形状に形成し、他の辺については、端面が揃うようなパターン位置で透明導電膜を形成するようにしてもよい。
【0055】
発光素子の最小加工寸法と画素ピッチが近い高精細な有機ELディスプレイにおいては、パネルサイズも小さく、例えば、1インチ以下である。したがって、光取り出し電極に求められる抵抗値は10nm程度の金属膜の抵抗値で十分であり、例えば、10〜50Ω/□である。そのため、いわゆる補助配線は必要ないと考えられる。ただし、上述した実施形態の発光装置においては、透明導電膜を階段形状に形成した領域においては光取り出し電極に対する導通が確保されているが、その領域に対向する短辺の領域においては導通が確保されていない。したがって、この導通が確保されていない領域における光取り出し電極に対しては、長辺側の細い領域に細い配線を設ける必要があり、抵抗値が高くなってしまう。その結果、表示ムラが発生することがある。
【0056】
そこで、この応用例では、発光素子の両方の短辺側でパターン位置をずらして透明導電膜を階段形状に形成し、他の辺については、端面が揃うようなパターン位置で透明導電膜を形成する。これにより、開口面積を極端に減少させることなく、両方の短辺側で光取り出し電極に対する導通が確保することができる。その結果、EVF(Electric View Finder)やHMD(Head Mount Display)などのように高精細な有機ELディスプレイに本発明を適用することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態および応用例では、基板側電極の透明導電膜の膜厚により共振長を調整する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。透明導電膜の下層として形成される透明膜の膜厚により共振長を調整するようにしてもよい。
【0058】
<C:電子機器>
次に、上述した実施形態及び応用例に係る発光装置1を適用した電子機器について説明する。図14に、発光装置1を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての発光装置1と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
【0059】
図15に、発光装置1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての発光装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置1に表示される画面がスクロールされる。
【0060】
図16に、発光装置1を適用した情報携帯端末(PVA:Personal Vigital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示ユニットとしての発光装置1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置1に表示される。
【0061】
なお、発光装置1が適用される電子機器としては、図14〜16に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器、および電子ペーパー等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した発光装置が適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10……平坦化基板、11……反射膜、12……透明膜、13……コンタクトホール、14……基板側電極、14a,14b,14c……透明導電膜、15……絶縁膜、16……有機EL層、17……光取り出し側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された光反射層と、
前記光反射層上に形成された透過膜と、
前記透過膜上に形成された発光層と、
前記発光層上に形成された電極と、を備え、前記光反射層と電極との間の光路長を前記透過膜により調整した共振構造を有し、矩形の開口領域が形成された発光装置であって、
前記透過膜は、前記矩形の少なくとも一辺では、階段状に位置をずらしてパターニングされ、他の辺では、端面が揃うようにパターニングされている、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記光反射層および透過膜が各発光色ごとに備えられており、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記矩形の少なくとも一辺は、各発光色において同じ側の一辺であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記透過膜は、端部が絶縁層で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記透過膜は、パターン端よりも内側に絶縁層で覆われた領域があることを特徴とする請求項3記載の発光装置。
【請求項5】
前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記一辺側では、前記基板側に設けられた駆動素子と前記電極とが電気的に導通していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記透過膜の端面が揃うようにパターニングされた前記他の辺側では、前記基板側に設けられた駆動素子と電極とが電気的に導通していないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記一辺は、前記透過膜の端面が揃うようにパターニングされた他の辺の長さよりも短いことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記他の辺の長さよりも短く対向する二辺に、前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされていることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記透過膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記透過膜は絶縁体であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記透過膜が階段状に位置をずらしてパターニングされた前記一辺には、前記透明膜と駆動素子とを電気的に導通させるコンタクトホールが形成されていることを特徴する請求項1ないし10のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項12】
基板上に光反射層を形成する工程と、
前記光反射層上に透過膜を形成する工程と、
前記透過膜上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に電極を形成する工程とを備え、前記光反射層と電極の間の光路長を前記透過膜により調整した共振構造を有し、矩形の開口領域が形成された発光装置の製造方法であって、
前記矩形の少なくとも一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングする工程と、
前記矩形の他の辺に、前記透過膜を端面が揃うようにパターニングする工程と、を備える、
ことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記光反射層および透過膜を各発光色ごとに形成する工程をさらに備え、
前記矩形の少なくとも一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングする工程は、各発光色において同じ側の一辺に、前記透過膜を階段状に位置をずらしてパターニングする工程であることを特徴とする請求項12記載の発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−186083(P2012−186083A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49406(P2011−49406)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】