発光装置および電子機器
【課題】共振構造を有し、タンデム構造の白色発光素子を用いたトップエミッション方式の発光装置において、各色用の発光ドーパントに適したピーク波長を得ることにより、光取り出し効率と色純度の低下を防止し、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高める。
【解決手段】赤色発光素子U1と青色発光素子U2において、反射層11および反射層12と対向電極30との間の光学的距離を同一に設定し、赤色発光素子U1の反射層11を、他の色の発光素子の反射層12とは異なる材質で形成する。
【解決手段】赤色発光素子U1と青色発光素子U2において、反射層11および反射層12と対向電極30との間の光学的距離を同一に設定し、赤色発光素子U1の反射層11を、他の色の発光素子の反射層12とは異なる材質で形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の発光素子を利用した発光装置およびこの発光装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を発光素子として形成し、発光素子の発光光を基板と反対側に取り出すトップエミッション方式の発光装置が電子機器の表示装置などとして多用されている。トップエミッション方式は、発光素子を挟み、基板側に形成された一方の第1電極(例えば陽極)と基板との間に反射層を形成し、発光素子を挟む他方の第2電極(例えば陰極)側から光を取り出す方式であって、光の利用効率が高い方式である。
【0003】
トップエミッション方式の発光装置において、白色の有機EL素子を用い、前記第2電極と反射層との間で所定の波長の光を共振させて、光の取り出し効率を高める技術が開示されている(例えば非特許文献1)。この技術では、共振構造におけるピーク波長をλ、反射層から前記第2電極の光学的距離をD、前記反射層での反射における位相シフトをφL、前記第2電極での反射における位相シフトをφU、整数をmとしたとき、下記の式を満たす光学構造が提案されている。
D={(2πm+φL+φU)/4π}λ・・・(1)
【0004】
また、前記共振構造を有すると共に、赤色の有機EL素子、緑色の有機EL素子および青色の有機EL素子を中間層を介して積層することによりタンデム構造の白色発光素子とし、カラーフィルターを用いてフルカラーを実現する発光装置が提案されている。
【0005】
さらに、このようなタンデム構造の白色発光素子を有する発光装置であって、赤色の有機EL素子、緑色の有機EL素子および青色の有機EL素子のうち、2色の有機EL素子の光路長を同一にし、製造プロセスを簡略化した発光装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この発光装置は、同一の光学距離で複数のピークが現れるように、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有している。前記タンデム構造を採用する場合には、発光素子の膜厚を薄くすると特性が低下するため、200〜300nm程度の膜厚を確保した方が好ましい。また、光学距離を変えて各色ごとにピークが現れるようにすると、製造工程が増えてしまう。したがって、前記タンデム構造を採用する場合において、特性の低下を防ぎ、製造工程を簡略化するためには、上述のように、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有することが好ましいと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−30250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発光装置では、必ずしも青色用の発光ドーパント、赤色用の発光ドーパントの両者に適したピーク波長を得られるようには設計できない場合がある。その結果、光取り出し効率が低下し、色純度が低下するという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の発光装置では、一つの発光素子で複数のピークが現れるため、濃いカラーフィルター、つまり、膜厚の厚いカラーフィルターを用いないと色純度を高くすることができないという問題があった。
【0010】
このような事情を背景として、本発明は、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有し、タンデム構造の白色発光素子を用いたトップエミッション方式の発光装置において、各色用の発光ドーパントに適したピーク波長を得ることにより、光取り出し効率と色純度の低下を防止し、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高めるという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、複数の画素が形成されたものであって、前記複数の画素の各々は、反射層と、画素電極と、光透過半反射層と、 前記反射層と前記光透過半反射層との間に形成された複数の発光部と、前記複数の発光部の間に形成された少なくとも一つの電荷分離層と、対向電極とを備え、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離は、少なくとも二つの画素について同一であり、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の二つの画素のうち、一つの画素の前記反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、前記反射層と光透過半反射層との間の光学的距離が、少なくとも二つの画素について同一に設定されているため、所定の共振構造とすることにより、二つの画素のそれぞれについてピーク波長が得られる。そして、これらの画素において、一つの画素の反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成されているので、この一つの画素の発光強度が変化し、いずれかの画素の発光波長側にシフトする。その結果、各色用の発光部に適したピーク波長を得ることができ、光取り出し効率と色純度の低下を防止し、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高める。
【0013】
本発明に係る発光装置として、前記複数の発光部は、前記画素電極と前記電荷分離層との間に形成された第一の発光部と、前記電荷分離層と前記対向電極との間に形成された第二の発光部とからなることが好ましい。本発明によれば、各画素に共通の構造を用いることができるので、製造プロセスが簡略化される。
【0014】
本発明に係る発光装置として、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の少なくとも二つの画素の反射層のうち、発光波長が長い画素の反射層のほうが反射率が高い材質で形成してもよい。本発明によれば、短波長側の領域の発光強度が低下すると共に、長波長側の発光強度が向上し、発光スペクトルが長波長側にシフトする。その結果、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなる。
【0015】
本発明に係る発光装置として、前記対向電極と前記反射層との間には透明層が形成され、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素において、前記反射層で反射される光の位相シフト量をφ、前記電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層の屈折率をn1、前記反射層の屈折率をn2、前記反射層の消衰係数をk2としたとき、φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)}・・・(2)を満たし、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素の反射層は、発光波長が長い画素ほど前記位相シフト量が小さい材質で形成することが好ましい。
本発明によれば、短波長側の領域の発光強度が低下すると共に、長波長側の発光強度が向上し、発光スペクトルが長波長側にシフトする。その結果、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなる。なお、「電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層」は対向電極と反射層との間に形成された透明層、あるいは対向電極であってもよい。
【0016】
本発明に係る発光装置として、前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、前記緑色画素と前記青色画素との反射層、または、前記赤色画素と前記緑色画素との反射層が共通の金属材料で形成することが好ましい。この発明によれば、緑色画素と青色画素の反射層、または、赤色画素と緑色画素の反射層を、共通の金属材料で形成するので、消費電力に影響与える発光色の光取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0017】
本発明に係る発光装置として、前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、前記赤色画素または前記緑色画素の反射層は、Cu、Au、Agまたはこれらを主成分とする金属材料から形成することが好ましい。この発明によれば、全ての色の画素における反射層をAlで形成する場合に比べて、長波長側の光の取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0018】
本発明に係る発光装置として、前記対向電極の光が射出する側にカラーフィルターを形成することが好ましい。この発明によれば、対向電極にカラーフィルターを設けた簡単な構造を実現にしつつ、光の取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0019】
本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えていることを特徴とする。本発明に係る電子機器においては、上述した発光装置を備えているので、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図2】図1における正孔輸送層、蛍光Bユニット、電子輸送層、LG101、電荷分離層、赤色用有機EL素子、緑色用有機EL素子、リン光RGユニット、およびホールブロックに用いられた材料を示す図である。
【図3】反射層と対向電極との間の光学的距離をD、反射層での反射における位相シフトをφL、対向電極での反射における位相シフトをφU、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、光学構造をD={(2πm+φL+φU)/4π}λで表したとき、各色のピーク波長に対する、整数mと、反射層から対向電極までの膜厚との関係を示す図である。
【図4】赤色発光素子と青色発光素子の反射層を双方ともにAlで形成し、対向電極を双方ともにMgAgで形成した上で、赤色発光素子では上記整数m=2の場合の光学構造を有し、青色発光素子では上記整数m=3の場合の光学構造を有するように構成した場合の発光スペクトルを示す図である。
【図5】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する位相シフトの変化を示す図である。
【図6】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する屈折率の変化を示す図である。
【図7】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する消衰係数の変化を示す図である。
【図8】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する反射率の変化を示す図である。
【図9】赤色発光素子の反射層をCuに変更した場合の発光スペクトルの変化を示す図である。
【図10】本実施形態のパネルシミュレーションに用いたカラーフィルターの透過率を示す図である。
【図11】本発明の実施例1および実施例2の各層の材料と膜厚を示した図である。
【図12】比較例1と比較例2の各層の材料と膜厚を示した図である。
【図13】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のカラーフィルターと各画素の反射層の材料を示した図である。
【図14】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2の消費電力を示した図である。
【図15】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のNTSC面積比を示した図である。
【図16】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のCIE色度を示した図である。
【図17】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図18】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図19】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A:発光装置の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置E1の概要を示す模式的な断面図である。発光装置E1は、複数の赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3が第1基板の面上に配列された構成であるが、図1においては、説明の便宜上、各色の発光素子が一つずつ例示されている。本実施形態の発光装置E1は、トップエミッション型であり、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3にて発生した光は第1基板10とは反対側、つまり、図1の下から上に向かって進行する。第1基板10には、ガラスなどの光透過性を有する板材のほか、セラミックスや金属のシートなど不透明な板材を採用することができる。
また、第1基板10には、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3に給電して発光させるための配線が配置されているが、配線の図示は省略する。また、第1基板には、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3に給電するための回路が配置されているが、回路の図示は省略する。
【0022】
赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3は、第1基板の上に形成された反射層11または反射層12と、画素電極14(陽極)と、光取り出し側半透明反射層としての対向電極30(陰極)と、OLED層の蛍光Bユニット16およびリン光RG23とを備える。以下、詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、第1基板上には反射層11および反射層12が形成される。反射層は、光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)などの単体金属、またはAu、CuまたはAgを主成分とする合金などが好適に採用される。本実施形態では、赤色発光素子U1の反射層11はCuで形成され、青色発光素子U2および緑色発光素子U3の反射層12はAlで形成される。このように、本実施形態においては、赤色発光素子U1の反射層11が他の色の発光素子の反射層12とは異なる金属材料で形成されている。詳しくは後述する。
【0024】
反射層11および反射層12上には、透明層13が形成される。透明層13はSiO2またはSiNで形成され、本実施形態では、赤色発光素子U1、緑色発光素子U2および青色発光素子U3の透明層13は、SiNで形成されている。
【0025】
透明層13上には、画素電極(陽極)14が形成される。本実施形態では、画素電極14はITOの透明導電膜から形成される。また、本実施形態では、反射層11および反射層12と対向電極30との距離は画素電極14の膜厚で調節している。本実施形態においては、赤色発光素子U1と青色発光素子U2における画素電極14の膜厚が同一で、緑色発光素子U3における画素電極14の膜厚は、他の色の発光素子における画素電極14の膜厚よりも薄く設定されている。詳しくは後述する。
【0026】
画素電極14上には、正孔輸送層(HTL:Hole transport layer、他にも正孔輸送層があるので、正孔輸送層15を正孔輸送層(HTL1)15と示す)15が形成される。正孔輸送層(HTL1)15には、図2に示すようにα−NPD((N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン)が用いられる。
【0027】
正孔輸送層(HTL1)15上には、蛍光Bユニット16が形成される。蛍光Bユニット16は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料であって、青色のホスト材料(B−Host)には、図2に示すように、10,10’−ジ(ビフェニル−2−イル)−9,9’−ビアントラセンが用いられる。また、青色のドーパント材料(B−Dopant)には、図2に示すように、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニルが用いられる。
【0028】
蛍光Bユニット16上には、電荷分離層(CGL:Carrier Generation Layer)20が形成される。電荷分離層20は、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer、他にも電子輸送層があるので、電子輸送層17を電子輸送層(ETL1)17と示す)17、LG101(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルポニトリル、図2参照。)18が形成される。電子輸送層(ETL1)17には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。正孔輸送層(HTL:Hole transport layer、正孔輸送層19を正孔輸送層(HTL2)19と示す)19が形成される。
電子輸送層(ETL1)17には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。正孔輸送層(HTL2)19には、図2に示すようにα−NPD((N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン)が用いられる。
【0029】
電荷分離層20上には、リン光RGユニット23が形成される。リン光RGユニット23は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料であって、赤色用の有機EL素子21と、緑色用の有機EL素子22とから成る。赤色用の有機EL素子21は、図2に示すように、赤色ホスト材料(TCTA:1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリアセテート)と、赤色ドーパント(Ir(MDQ)2(acac):ビス(2−メチル−ジベンゾ[f.h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III))から成る。
また、緑色用の有機EL素子22は、図2に示すように、緑色ホスト材料(TPBi:1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)と、緑色ドーパント材料(Ir(ppy)3:トリス(2−フェニルピリジナート)イリジウム(III))から成る。
【0030】
リン光RGユニット23上には、ホールブロック層(HBL:Hole Block Layer)24が形成される。ホールブロック層24には、TPBi(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)が用いられる。
【0031】
ホールブロック層24上には、電子輸送層(ETL2)25が形成される。電子輸送層(ETL2)25には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。
【0032】
電子輸送層(ETL2)25上には、光取り出し側半透明反射層としての対向電極(陰極)30が形成される。本実施形態では、対向電極30は、MgAg(マグネシウム銀合金)で形成される。
【0033】
対向電極30上には、封止層31が形成される。封止層31には、透明の樹脂材料、例えば、SiO2またはSiNが用いられる。本実施形態では、封止層31はSiNで形成される。また、封止層31上には、第2基板32が配置される。第2基板32はガラスなどの光透過性を有する材料で形成される。第2基板32のうち第1基板との対向面には、図示しないカラーフィルターおよび遮光膜が形成される。遮光膜は、各発光素子U1、U2、U3に対向して開口が形成された遮光体の膜体である。開口内にはカラーフィルターが形成される。カラーフィルターおよび遮光膜が形成された第2基板32は、封止層31を介して第1基板と貼り合わされる。
【0034】
本実施形態では、赤色発光素子U1に対応する開口内には赤色光を選択的に透過させる赤色用カラーフィルターが形成され、青色発光素子U2に対応する開口内には青色光を選択的に透過させる青色用カラーフィルターが形成され、緑色発光素子U3に対応する開口内には緑色光を選択的に透過させる緑色用カラーフィルターが形成される。以上が本実施形態の発光装置の構造である。
【0035】
<B:光学構造>
次に、本実施形態の発光装置E1における光学構造について説明する。本実施形態における発光装置E1は、反射層11および反射層12から光取り出し側半透明反射層としての対向電極30までの光学的距離を所定値に設定することにより、反射層12から対向電極30に定在波を発生させる共振構造を採用している。
【0036】
具体的には、反射層11および反射層12から対向電極30間の光学的距離をD、反射層11および反射層12での反射における位相シフトをφL、対向電極30での反射における位相シフトをφU、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、下記の式を満たす構造となっている。
D={(2πm+φL+φU)/4π}λ・・・(3)
【0037】
上記(3)式で、Alの反射層12とMgAgの対向電極30の間の層の屈折率nを1.8として、反射層12から対向電極30間の光学的距離Dと、整数m、および、赤色、緑色、青色の各色を想定してピーク波長をプロットした図が図3である。
【0038】
図3に楕円で囲った領域に示すように、上記(3)式でm=2の場合の赤色のピーク波長と、上記(3)式でm=3の場合の青色のピーク波長は、同じAl〜MgAg間距離でピークが得られることがわかる。
【0039】
従って、図1に示すようなタンデム構造の発光装置において、赤色発光素子U1と青色発光素子U2の反射層を双方ともにAlで形成し、対向電極30を双方ともにMgAgで形成した上で、赤色発光素子U1では上記(3)式でm=2の場合の光学構造を有し、青色発光素子U2では上記(3)式でm=3の場合の光学構造を有するように構成した場合の発光スペクトルを図4に示す。図4に示すように、図1に示すようなタンデム構造の発光装置において、赤色発光素子U1と青色発光素子U2の反射層と対向電極を同じ材料で形成し、反射層から対向電極までの光学的距離を同じに設定した場合でも、青色領域と赤色領域の発光を取り出せることがわかる。
【0040】
但し、この場合には、反射層から対向電極の距離を青色領域の発光ピークに合わせると、赤色発光ドーパントに対して適正なピーク波長よりも短波長側に寄ってしまうことがある。その結果、光取り出し効率が低下し、色純度が悪くなる場合がある。また、赤色発光素子、青色発光素子の色分離は、カラーフィルターのみで行うため、カットオフ特性の高いカラーフィルターが必要になる。
【0041】
そこで、本実施形態では、赤色発光素子U1における反射層11の材料を、青色発光素子U2における反射層12とは異なる材料で形成した。具体的には、赤色発光素子U1における反射層11は、青色領域の波長における反射率が低く、かつ、赤色領域の位相シフト量が小さい材料を用いた。このような材料を用いると、赤色発光素子U1において、ピーク波長を長波長側へシフトさせることができる。
【0042】
位相シフトとピーク波長の関係は、以下のような式で表される。まず、上記(3)式を変形すると、
λ=4Dπ/(2πm+φL+φU) ・・・(4)
となる。つまり、同一膜厚であっても、反射界面での位相シフトが小さい場合、定在波のピーク波長は長波長側へシフトすることがわかる。
【0043】
位相シフトは、位相シフト量をφ[rad]、反射層と対向電極の間の層の屈折率をn1、反射膜の屈折率をn2、反射膜の消衰係数をk2とすると、下記の式で表すことができる。
φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)} ・・・(5)
透明層などの反射層と対向電極の間の層の屈折率をn1を1.8として、代表的な金属材料であるAl、Cu、Au、Agで位相シフト量を計算した結果を図5に示す。なお、各金属材料であるAl、Cu、Au、Agの各波長に対する屈折率nの変化を図6に、また、消衰係数kの変化を図7に示す。
図5から明らかなように、金属材料としてAlを使用した場合に比べて、Cu、Au、Agを使用した方が、位相シフト量が小さいことがわかる。
【0044】
また、屈折率が1.8の媒質と各種金属反射膜の界面における反射率を図8に示す。光取り出し効率を上げるためには、反射率が高い方が良い。図8に示すように、Cu、Au、Agは、赤色の領域(600nm以上)の波長で高い反射率を有しているのがわかる。
【0045】
このように、上述したような共振構造を有し、かつ、タンデム構造の発光素子の場合に、赤色発光素子U1において、ピーク波長を長波長側へシフトさせるには、赤色発光素子U1の反射層11の金属材料として、Cu、Au、Agが適している。
【0046】
一例として、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合の発光スペクトルを図9に示す。図9に示すように、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合、青色領域(450〜470nmの領域)の発光強度が低下していることがわかる。また、赤色領域(600nm付近の領域)の発光スペクトル強度が向上し、かつ、長波長側にシフトしていることがわかる。従って、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合には、赤色発光素子U1にとって、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなることがわかる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、赤色発光素子U1に用いる反射層11には、位相シフトが小さいCu、Au、または、Agを採用することにより、450〜470nmの青色領域の発光強度を低下させると共に、600nm以上の長波長側である赤色領域の光の取出し効率を改善するように構成した。520〜560nmの波長である緑色を発光する緑色発光素子U3、および、450〜470nmの波長である青色を発光する青色発光素子U2に用いる反射層12については、いずれもAlを採用した。
【0048】
<C:パネルシミュレーション>
次に、赤色発光素子U1の反射層11に、位相シフトが小さいCuを用いた際の消費電力の低減と色域の拡大を確認するために行ったパネルシミュレーションについて説明する。
このシミュレーションにおいては、図1に示した発光装置E1と同様の構成の実施例1および実施例2と、図1に示した発光装置E1とほぼ同様の構成を有し、いずれの色の発光素子にも反射層としてAlを採用した比較例1および比較例2とを比較した。
また、このシミュレーションにおいては、図10に示すように、薄いカラーフィルターであるCF1と、厚いカラーフィルターであるCF2の2種類のカラーフィルターを用いた。薄いカラーフィルターであるCF1は、図10に示すように、赤色のカラーフィルターCF1−Rとして、600nm以上の光に対する透過率が95%のカラーフィルターを用いた。緑色のカラーフィルターCF1−Gとしては、520〜560nmの光に対する透過率が85〜90%のカラーフィルターを用いた。青色のカラーフィルターCF1−Bとしては、430〜470nmの光に対する透過率が80〜85%のカラーフィルターを用いた。
厚いカラーフィルターCF2は、赤色のカラーフィルターCF2−Rとして、600nm以上の光に対する透過率が90%のカラーフィルターを用いた。緑色のカラーフィルターCF2−Gとしては、520〜560nmの光に対する透過率が65〜70%のカラーフィルターを用いた。青色のカラーフィルターCF2−Bとしては、430〜470nmの光に対する透過率が60〜65%のカラーフィルターを用いた。
【0049】
<C−1:実施例1の構造>
実施例1の発光装置は、図1に示した発光装置E1と同じ構造で、各層の厚さは図11に示すように設定した。特に、赤色発光素子U1の反射層11にはCuを用い、膜厚は100nmとした。また、青色発光素子U2および緑色発光素子U3の反射層12にはAlを用い膜厚は100nmとした。赤色発光素子U1および青色発光素子U2の画素電極14は、ITOで形成し、膜厚は140nmとした。緑色発光素子U3の画素電極14は、ITOで形成し、膜厚は70nmとした。カラーフィルターには、薄いカラーフィルターCF1−R、CF1−G、CF1−Bを用いた。
<C−2:実施例2の構造>
実施例2の発光装置は、各層の厚さは実施例1の発光装置と同じであり、カラーフィルターとして厚いカラーフィルターCF2−R、CF2−G、CF2−Bを用いたところが実施例1と異なっている。
<C−3:比較例1の構造>
比較例1の発光装置は、実施例1の発光装置とほぼ同じ構造であるが、全ての発光装置の反射層にAlを用いたところが実施例1の発光装置と異なっている。比較例1の各層の厚さは図12に示すように設定した。カラーフィルターには、薄いカラーフィルターCF1−R、CF1−G、CF1−Bを用いた。
<C−4:比較例2の構造>
比較例2の発光装置は、各層の厚さは比較例1の発光装置と同じであり、カラーフィルターとして厚いカラーフィルターCF2−R、CF2−G、CF2−Bを用いたところが比較例1と異なっている。
各例のカラーフィルターおよび各画素の材料を図13に示す。
【0050】
<C−5:パネルシミュレーションの結果>
図14に示すように、比較例1の消費電力を1.00として規格化すると、比較例2の消費電力は1.62、実施例1の消費電力は1、実施例2の消費電力は1.58であった。このように、消費電力については使用するカラーフィルターへの依存度が大きく、実施例の方が若干ではあるが消費電力が低減されていることがわかる。
【0051】
また、図15に示すように、色域(NTSC面積比)は、比較例1が92、比較例2が104、実施例1が99、実施例2が108であった。このように、色域については、赤色発光素子の色純度が高くなった影響で、比較例よりも実施例の方が色域が広くなっていることがわかる。
【0052】
さらに、図16に赤色発光素子のCIE色度を示す。図16に示すように、実施例の方が比較例よりもNTSC座標の頂点に近いことがわかる。
【0053】
以上のように、前記(3)式においてmの値が2以上となる共振構造を有し、タンデム構造の白色発光素子を用いたトップエミッション方式の発光装置において、赤色発光素子の反射層についてはCuを用い、他の色の発光素子の反射層についてはAlを用いたことにより、各色用の発光ドーパントに適したピーク波長を得ることができ、光取り出し効率を高め、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高めることができた。
【0054】
<D:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図17は、上述の実施形態に係る発光装置E1を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置E1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置E1は有機EL素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0055】
図18に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置E1に表示される画面がスクロールされる。
【0056】
図19に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置E1に表示される。
【0057】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図17から図19に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【0058】
なお、上述した実施形態においては、前記(3)式において、整数mが2となる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、整数mが3以上となる場合にも適用可能である。
【0059】
さらに、上述した実施形態においては、赤色発光素子の反射層として、Cuを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、赤色発光素子の反射層として、AuまたはAg、あるいは、Cu、Au、Agのうち少なくとも一つを主成分とする合金であればいい。
【0060】
また、上述した実施形態においては、緑色発光素子と青色発光素子の反射層を同じ材料で形成し、赤色発光素子の反射層を異なる材料で形成する例について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、赤色発光素子と緑色発光素子の反射層を同じ材料で形成し、青色発光素子の反射層を異なる材料で形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10……第1基板、11……反射層、12……反射層、13……透明層、14……画素電極、15……正孔輸送層、16……蛍光Bユニット、17……電子輸送層、18……LG101、19……正孔輸送層、20……電荷分離層、21…赤色用有機EL素子、22…緑色用有機EL素子、23…リン光RGユニット、24…ホールブロック層、25…電子輸送層、30…対向電極、31……封止層、32……第2基板、E1……発光装置、U1…赤色発光素子、U2…青色発光素子、U3…緑色発光素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の発光素子を利用した発光装置およびこの発光装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を発光素子として形成し、発光素子の発光光を基板と反対側に取り出すトップエミッション方式の発光装置が電子機器の表示装置などとして多用されている。トップエミッション方式は、発光素子を挟み、基板側に形成された一方の第1電極(例えば陽極)と基板との間に反射層を形成し、発光素子を挟む他方の第2電極(例えば陰極)側から光を取り出す方式であって、光の利用効率が高い方式である。
【0003】
トップエミッション方式の発光装置において、白色の有機EL素子を用い、前記第2電極と反射層との間で所定の波長の光を共振させて、光の取り出し効率を高める技術が開示されている(例えば非特許文献1)。この技術では、共振構造におけるピーク波長をλ、反射層から前記第2電極の光学的距離をD、前記反射層での反射における位相シフトをφL、前記第2電極での反射における位相シフトをφU、整数をmとしたとき、下記の式を満たす光学構造が提案されている。
D={(2πm+φL+φU)/4π}λ・・・(1)
【0004】
また、前記共振構造を有すると共に、赤色の有機EL素子、緑色の有機EL素子および青色の有機EL素子を中間層を介して積層することによりタンデム構造の白色発光素子とし、カラーフィルターを用いてフルカラーを実現する発光装置が提案されている。
【0005】
さらに、このようなタンデム構造の白色発光素子を有する発光装置であって、赤色の有機EL素子、緑色の有機EL素子および青色の有機EL素子のうち、2色の有機EL素子の光路長を同一にし、製造プロセスを簡略化した発光装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この発光装置は、同一の光学距離で複数のピークが現れるように、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有している。前記タンデム構造を採用する場合には、発光素子の膜厚を薄くすると特性が低下するため、200〜300nm程度の膜厚を確保した方が好ましい。また、光学距離を変えて各色ごとにピークが現れるようにすると、製造工程が増えてしまう。したがって、前記タンデム構造を採用する場合において、特性の低下を防ぎ、製造工程を簡略化するためには、上述のように、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有することが好ましいと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−30250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発光装置では、必ずしも青色用の発光ドーパント、赤色用の発光ドーパントの両者に適したピーク波長を得られるようには設計できない場合がある。その結果、光取り出し効率が低下し、色純度が低下するという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の発光装置では、一つの発光素子で複数のピークが現れるため、濃いカラーフィルター、つまり、膜厚の厚いカラーフィルターを用いないと色純度を高くすることができないという問題があった。
【0010】
このような事情を背景として、本発明は、前記(1)式においてmの値が2以上となる共振構造を有し、タンデム構造の白色発光素子を用いたトップエミッション方式の発光装置において、各色用の発光ドーパントに適したピーク波長を得ることにより、光取り出し効率と色純度の低下を防止し、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高めるという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、複数の画素が形成されたものであって、前記複数の画素の各々は、反射層と、画素電極と、光透過半反射層と、 前記反射層と前記光透過半反射層との間に形成された複数の発光部と、前記複数の発光部の間に形成された少なくとも一つの電荷分離層と、対向電極とを備え、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離は、少なくとも二つの画素について同一であり、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の二つの画素のうち、一つの画素の前記反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、前記反射層と光透過半反射層との間の光学的距離が、少なくとも二つの画素について同一に設定されているため、所定の共振構造とすることにより、二つの画素のそれぞれについてピーク波長が得られる。そして、これらの画素において、一つの画素の反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成されているので、この一つの画素の発光強度が変化し、いずれかの画素の発光波長側にシフトする。その結果、各色用の発光部に適したピーク波長を得ることができ、光取り出し効率と色純度の低下を防止し、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高める。
【0013】
本発明に係る発光装置として、前記複数の発光部は、前記画素電極と前記電荷分離層との間に形成された第一の発光部と、前記電荷分離層と前記対向電極との間に形成された第二の発光部とからなることが好ましい。本発明によれば、各画素に共通の構造を用いることができるので、製造プロセスが簡略化される。
【0014】
本発明に係る発光装置として、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の少なくとも二つの画素の反射層のうち、発光波長が長い画素の反射層のほうが反射率が高い材質で形成してもよい。本発明によれば、短波長側の領域の発光強度が低下すると共に、長波長側の発光強度が向上し、発光スペクトルが長波長側にシフトする。その結果、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなる。
【0015】
本発明に係る発光装置として、前記対向電極と前記反射層との間には透明層が形成され、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素において、前記反射層で反射される光の位相シフト量をφ、前記電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層の屈折率をn1、前記反射層の屈折率をn2、前記反射層の消衰係数をk2としたとき、φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)}・・・(2)を満たし、前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素の反射層は、発光波長が長い画素ほど前記位相シフト量が小さい材質で形成することが好ましい。
本発明によれば、短波長側の領域の発光強度が低下すると共に、長波長側の発光強度が向上し、発光スペクトルが長波長側にシフトする。その結果、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなる。なお、「電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層」は対向電極と反射層との間に形成された透明層、あるいは対向電極であってもよい。
【0016】
本発明に係る発光装置として、前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、前記緑色画素と前記青色画素との反射層、または、前記赤色画素と前記緑色画素との反射層が共通の金属材料で形成することが好ましい。この発明によれば、緑色画素と青色画素の反射層、または、赤色画素と緑色画素の反射層を、共通の金属材料で形成するので、消費電力に影響与える発光色の光取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0017】
本発明に係る発光装置として、前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、前記赤色画素または前記緑色画素の反射層は、Cu、Au、Agまたはこれらを主成分とする金属材料から形成することが好ましい。この発明によれば、全ての色の画素における反射層をAlで形成する場合に比べて、長波長側の光の取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0018】
本発明に係る発光装置として、前記対向電極の光が射出する側にカラーフィルターを形成することが好ましい。この発明によれば、対向電極にカラーフィルターを設けた簡単な構造を実現にしつつ、光の取り出し効率を改善でき、消費電力を低減させることができる。
【0019】
本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えていることを特徴とする。本発明に係る電子機器においては、上述した発光装置を備えているので、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図2】図1における正孔輸送層、蛍光Bユニット、電子輸送層、LG101、電荷分離層、赤色用有機EL素子、緑色用有機EL素子、リン光RGユニット、およびホールブロックに用いられた材料を示す図である。
【図3】反射層と対向電極との間の光学的距離をD、反射層での反射における位相シフトをφL、対向電極での反射における位相シフトをφU、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、光学構造をD={(2πm+φL+φU)/4π}λで表したとき、各色のピーク波長に対する、整数mと、反射層から対向電極までの膜厚との関係を示す図である。
【図4】赤色発光素子と青色発光素子の反射層を双方ともにAlで形成し、対向電極を双方ともにMgAgで形成した上で、赤色発光素子では上記整数m=2の場合の光学構造を有し、青色発光素子では上記整数m=3の場合の光学構造を有するように構成した場合の発光スペクトルを示す図である。
【図5】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する位相シフトの変化を示す図である。
【図6】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する屈折率の変化を示す図である。
【図7】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する消衰係数の変化を示す図である。
【図8】Al、Cu、Au、Agの各波長に対する反射率の変化を示す図である。
【図9】赤色発光素子の反射層をCuに変更した場合の発光スペクトルの変化を示す図である。
【図10】本実施形態のパネルシミュレーションに用いたカラーフィルターの透過率を示す図である。
【図11】本発明の実施例1および実施例2の各層の材料と膜厚を示した図である。
【図12】比較例1と比較例2の各層の材料と膜厚を示した図である。
【図13】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のカラーフィルターと各画素の反射層の材料を示した図である。
【図14】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2の消費電力を示した図である。
【図15】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のNTSC面積比を示した図である。
【図16】比較例1、比較例2、実施例1および実施例2のCIE色度を示した図である。
【図17】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図18】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図19】図1の実施形態に係る発光装置を表示装置として採用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A:発光装置の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置E1の概要を示す模式的な断面図である。発光装置E1は、複数の赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3が第1基板の面上に配列された構成であるが、図1においては、説明の便宜上、各色の発光素子が一つずつ例示されている。本実施形態の発光装置E1は、トップエミッション型であり、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3にて発生した光は第1基板10とは反対側、つまり、図1の下から上に向かって進行する。第1基板10には、ガラスなどの光透過性を有する板材のほか、セラミックスや金属のシートなど不透明な板材を採用することができる。
また、第1基板10には、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3に給電して発光させるための配線が配置されているが、配線の図示は省略する。また、第1基板には、赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3に給電するための回路が配置されているが、回路の図示は省略する。
【0022】
赤色発光素子U1、青色発光素子U2および緑色発光素子U3は、第1基板の上に形成された反射層11または反射層12と、画素電極14(陽極)と、光取り出し側半透明反射層としての対向電極30(陰極)と、OLED層の蛍光Bユニット16およびリン光RG23とを備える。以下、詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、第1基板上には反射層11および反射層12が形成される。反射層は、光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)などの単体金属、またはAu、CuまたはAgを主成分とする合金などが好適に採用される。本実施形態では、赤色発光素子U1の反射層11はCuで形成され、青色発光素子U2および緑色発光素子U3の反射層12はAlで形成される。このように、本実施形態においては、赤色発光素子U1の反射層11が他の色の発光素子の反射層12とは異なる金属材料で形成されている。詳しくは後述する。
【0024】
反射層11および反射層12上には、透明層13が形成される。透明層13はSiO2またはSiNで形成され、本実施形態では、赤色発光素子U1、緑色発光素子U2および青色発光素子U3の透明層13は、SiNで形成されている。
【0025】
透明層13上には、画素電極(陽極)14が形成される。本実施形態では、画素電極14はITOの透明導電膜から形成される。また、本実施形態では、反射層11および反射層12と対向電極30との距離は画素電極14の膜厚で調節している。本実施形態においては、赤色発光素子U1と青色発光素子U2における画素電極14の膜厚が同一で、緑色発光素子U3における画素電極14の膜厚は、他の色の発光素子における画素電極14の膜厚よりも薄く設定されている。詳しくは後述する。
【0026】
画素電極14上には、正孔輸送層(HTL:Hole transport layer、他にも正孔輸送層があるので、正孔輸送層15を正孔輸送層(HTL1)15と示す)15が形成される。正孔輸送層(HTL1)15には、図2に示すようにα−NPD((N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン)が用いられる。
【0027】
正孔輸送層(HTL1)15上には、蛍光Bユニット16が形成される。蛍光Bユニット16は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料であって、青色のホスト材料(B−Host)には、図2に示すように、10,10’−ジ(ビフェニル−2−イル)−9,9’−ビアントラセンが用いられる。また、青色のドーパント材料(B−Dopant)には、図2に示すように、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニルが用いられる。
【0028】
蛍光Bユニット16上には、電荷分離層(CGL:Carrier Generation Layer)20が形成される。電荷分離層20は、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer、他にも電子輸送層があるので、電子輸送層17を電子輸送層(ETL1)17と示す)17、LG101(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルポニトリル、図2参照。)18が形成される。電子輸送層(ETL1)17には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。正孔輸送層(HTL:Hole transport layer、正孔輸送層19を正孔輸送層(HTL2)19と示す)19が形成される。
電子輸送層(ETL1)17には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。正孔輸送層(HTL2)19には、図2に示すようにα−NPD((N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン)が用いられる。
【0029】
電荷分離層20上には、リン光RGユニット23が形成される。リン光RGユニット23は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。本実施形態では、有機EL物質は低分子材料であって、赤色用の有機EL素子21と、緑色用の有機EL素子22とから成る。赤色用の有機EL素子21は、図2に示すように、赤色ホスト材料(TCTA:1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリアセテート)と、赤色ドーパント(Ir(MDQ)2(acac):ビス(2−メチル−ジベンゾ[f.h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III))から成る。
また、緑色用の有機EL素子22は、図2に示すように、緑色ホスト材料(TPBi:1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)と、緑色ドーパント材料(Ir(ppy)3:トリス(2−フェニルピリジナート)イリジウム(III))から成る。
【0030】
リン光RGユニット23上には、ホールブロック層(HBL:Hole Block Layer)24が形成される。ホールブロック層24には、TPBi(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)が用いられる。
【0031】
ホールブロック層24上には、電子輸送層(ETL2)25が形成される。電子輸送層(ETL2)25には、図2に示すように、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)が用いられる。
【0032】
電子輸送層(ETL2)25上には、光取り出し側半透明反射層としての対向電極(陰極)30が形成される。本実施形態では、対向電極30は、MgAg(マグネシウム銀合金)で形成される。
【0033】
対向電極30上には、封止層31が形成される。封止層31には、透明の樹脂材料、例えば、SiO2またはSiNが用いられる。本実施形態では、封止層31はSiNで形成される。また、封止層31上には、第2基板32が配置される。第2基板32はガラスなどの光透過性を有する材料で形成される。第2基板32のうち第1基板との対向面には、図示しないカラーフィルターおよび遮光膜が形成される。遮光膜は、各発光素子U1、U2、U3に対向して開口が形成された遮光体の膜体である。開口内にはカラーフィルターが形成される。カラーフィルターおよび遮光膜が形成された第2基板32は、封止層31を介して第1基板と貼り合わされる。
【0034】
本実施形態では、赤色発光素子U1に対応する開口内には赤色光を選択的に透過させる赤色用カラーフィルターが形成され、青色発光素子U2に対応する開口内には青色光を選択的に透過させる青色用カラーフィルターが形成され、緑色発光素子U3に対応する開口内には緑色光を選択的に透過させる緑色用カラーフィルターが形成される。以上が本実施形態の発光装置の構造である。
【0035】
<B:光学構造>
次に、本実施形態の発光装置E1における光学構造について説明する。本実施形態における発光装置E1は、反射層11および反射層12から光取り出し側半透明反射層としての対向電極30までの光学的距離を所定値に設定することにより、反射層12から対向電極30に定在波を発生させる共振構造を採用している。
【0036】
具体的には、反射層11および反射層12から対向電極30間の光学的距離をD、反射層11および反射層12での反射における位相シフトをφL、対向電極30での反射における位相シフトをφU、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、下記の式を満たす構造となっている。
D={(2πm+φL+φU)/4π}λ・・・(3)
【0037】
上記(3)式で、Alの反射層12とMgAgの対向電極30の間の層の屈折率nを1.8として、反射層12から対向電極30間の光学的距離Dと、整数m、および、赤色、緑色、青色の各色を想定してピーク波長をプロットした図が図3である。
【0038】
図3に楕円で囲った領域に示すように、上記(3)式でm=2の場合の赤色のピーク波長と、上記(3)式でm=3の場合の青色のピーク波長は、同じAl〜MgAg間距離でピークが得られることがわかる。
【0039】
従って、図1に示すようなタンデム構造の発光装置において、赤色発光素子U1と青色発光素子U2の反射層を双方ともにAlで形成し、対向電極30を双方ともにMgAgで形成した上で、赤色発光素子U1では上記(3)式でm=2の場合の光学構造を有し、青色発光素子U2では上記(3)式でm=3の場合の光学構造を有するように構成した場合の発光スペクトルを図4に示す。図4に示すように、図1に示すようなタンデム構造の発光装置において、赤色発光素子U1と青色発光素子U2の反射層と対向電極を同じ材料で形成し、反射層から対向電極までの光学的距離を同じに設定した場合でも、青色領域と赤色領域の発光を取り出せることがわかる。
【0040】
但し、この場合には、反射層から対向電極の距離を青色領域の発光ピークに合わせると、赤色発光ドーパントに対して適正なピーク波長よりも短波長側に寄ってしまうことがある。その結果、光取り出し効率が低下し、色純度が悪くなる場合がある。また、赤色発光素子、青色発光素子の色分離は、カラーフィルターのみで行うため、カットオフ特性の高いカラーフィルターが必要になる。
【0041】
そこで、本実施形態では、赤色発光素子U1における反射層11の材料を、青色発光素子U2における反射層12とは異なる材料で形成した。具体的には、赤色発光素子U1における反射層11は、青色領域の波長における反射率が低く、かつ、赤色領域の位相シフト量が小さい材料を用いた。このような材料を用いると、赤色発光素子U1において、ピーク波長を長波長側へシフトさせることができる。
【0042】
位相シフトとピーク波長の関係は、以下のような式で表される。まず、上記(3)式を変形すると、
λ=4Dπ/(2πm+φL+φU) ・・・(4)
となる。つまり、同一膜厚であっても、反射界面での位相シフトが小さい場合、定在波のピーク波長は長波長側へシフトすることがわかる。
【0043】
位相シフトは、位相シフト量をφ[rad]、反射層と対向電極の間の層の屈折率をn1、反射膜の屈折率をn2、反射膜の消衰係数をk2とすると、下記の式で表すことができる。
φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)} ・・・(5)
透明層などの反射層と対向電極の間の層の屈折率をn1を1.8として、代表的な金属材料であるAl、Cu、Au、Agで位相シフト量を計算した結果を図5に示す。なお、各金属材料であるAl、Cu、Au、Agの各波長に対する屈折率nの変化を図6に、また、消衰係数kの変化を図7に示す。
図5から明らかなように、金属材料としてAlを使用した場合に比べて、Cu、Au、Agを使用した方が、位相シフト量が小さいことがわかる。
【0044】
また、屈折率が1.8の媒質と各種金属反射膜の界面における反射率を図8に示す。光取り出し効率を上げるためには、反射率が高い方が良い。図8に示すように、Cu、Au、Agは、赤色の領域(600nm以上)の波長で高い反射率を有しているのがわかる。
【0045】
このように、上述したような共振構造を有し、かつ、タンデム構造の発光素子の場合に、赤色発光素子U1において、ピーク波長を長波長側へシフトさせるには、赤色発光素子U1の反射層11の金属材料として、Cu、Au、Agが適している。
【0046】
一例として、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合の発光スペクトルを図9に示す。図9に示すように、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合、青色領域(450〜470nmの領域)の発光強度が低下していることがわかる。また、赤色領域(600nm付近の領域)の発光スペクトル強度が向上し、かつ、長波長側にシフトしていることがわかる。従って、赤色発光素子U1の反射層11をCuに変更した場合には、赤色発光素子U1にとって、光取り出し効率が向上し、かつ、色純度が高くなることがわかる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、赤色発光素子U1に用いる反射層11には、位相シフトが小さいCu、Au、または、Agを採用することにより、450〜470nmの青色領域の発光強度を低下させると共に、600nm以上の長波長側である赤色領域の光の取出し効率を改善するように構成した。520〜560nmの波長である緑色を発光する緑色発光素子U3、および、450〜470nmの波長である青色を発光する青色発光素子U2に用いる反射層12については、いずれもAlを採用した。
【0048】
<C:パネルシミュレーション>
次に、赤色発光素子U1の反射層11に、位相シフトが小さいCuを用いた際の消費電力の低減と色域の拡大を確認するために行ったパネルシミュレーションについて説明する。
このシミュレーションにおいては、図1に示した発光装置E1と同様の構成の実施例1および実施例2と、図1に示した発光装置E1とほぼ同様の構成を有し、いずれの色の発光素子にも反射層としてAlを採用した比較例1および比較例2とを比較した。
また、このシミュレーションにおいては、図10に示すように、薄いカラーフィルターであるCF1と、厚いカラーフィルターであるCF2の2種類のカラーフィルターを用いた。薄いカラーフィルターであるCF1は、図10に示すように、赤色のカラーフィルターCF1−Rとして、600nm以上の光に対する透過率が95%のカラーフィルターを用いた。緑色のカラーフィルターCF1−Gとしては、520〜560nmの光に対する透過率が85〜90%のカラーフィルターを用いた。青色のカラーフィルターCF1−Bとしては、430〜470nmの光に対する透過率が80〜85%のカラーフィルターを用いた。
厚いカラーフィルターCF2は、赤色のカラーフィルターCF2−Rとして、600nm以上の光に対する透過率が90%のカラーフィルターを用いた。緑色のカラーフィルターCF2−Gとしては、520〜560nmの光に対する透過率が65〜70%のカラーフィルターを用いた。青色のカラーフィルターCF2−Bとしては、430〜470nmの光に対する透過率が60〜65%のカラーフィルターを用いた。
【0049】
<C−1:実施例1の構造>
実施例1の発光装置は、図1に示した発光装置E1と同じ構造で、各層の厚さは図11に示すように設定した。特に、赤色発光素子U1の反射層11にはCuを用い、膜厚は100nmとした。また、青色発光素子U2および緑色発光素子U3の反射層12にはAlを用い膜厚は100nmとした。赤色発光素子U1および青色発光素子U2の画素電極14は、ITOで形成し、膜厚は140nmとした。緑色発光素子U3の画素電極14は、ITOで形成し、膜厚は70nmとした。カラーフィルターには、薄いカラーフィルターCF1−R、CF1−G、CF1−Bを用いた。
<C−2:実施例2の構造>
実施例2の発光装置は、各層の厚さは実施例1の発光装置と同じであり、カラーフィルターとして厚いカラーフィルターCF2−R、CF2−G、CF2−Bを用いたところが実施例1と異なっている。
<C−3:比較例1の構造>
比較例1の発光装置は、実施例1の発光装置とほぼ同じ構造であるが、全ての発光装置の反射層にAlを用いたところが実施例1の発光装置と異なっている。比較例1の各層の厚さは図12に示すように設定した。カラーフィルターには、薄いカラーフィルターCF1−R、CF1−G、CF1−Bを用いた。
<C−4:比較例2の構造>
比較例2の発光装置は、各層の厚さは比較例1の発光装置と同じであり、カラーフィルターとして厚いカラーフィルターCF2−R、CF2−G、CF2−Bを用いたところが比較例1と異なっている。
各例のカラーフィルターおよび各画素の材料を図13に示す。
【0050】
<C−5:パネルシミュレーションの結果>
図14に示すように、比較例1の消費電力を1.00として規格化すると、比較例2の消費電力は1.62、実施例1の消費電力は1、実施例2の消費電力は1.58であった。このように、消費電力については使用するカラーフィルターへの依存度が大きく、実施例の方が若干ではあるが消費電力が低減されていることがわかる。
【0051】
また、図15に示すように、色域(NTSC面積比)は、比較例1が92、比較例2が104、実施例1が99、実施例2が108であった。このように、色域については、赤色発光素子の色純度が高くなった影響で、比較例よりも実施例の方が色域が広くなっていることがわかる。
【0052】
さらに、図16に赤色発光素子のCIE色度を示す。図16に示すように、実施例の方が比較例よりもNTSC座標の頂点に近いことがわかる。
【0053】
以上のように、前記(3)式においてmの値が2以上となる共振構造を有し、タンデム構造の白色発光素子を用いたトップエミッション方式の発光装置において、赤色発光素子の反射層についてはCuを用い、他の色の発光素子の反射層についてはAlを用いたことにより、各色用の発光ドーパントに適したピーク波長を得ることができ、光取り出し効率を高め、膜厚の厚いカラーフィルターを用いることなく色純度を高めることができた。
【0054】
<D:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図17は、上述の実施形態に係る発光装置E1を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置E1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置E1は有機EL素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0055】
図18に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置E1に表示される画面がスクロールされる。
【0056】
図19に、上述の実施形態に係る発光装置E1を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置E1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置E1に表示される。
【0057】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図17から図19に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【0058】
なお、上述した実施形態においては、前記(3)式において、整数mが2となる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、整数mが3以上となる場合にも適用可能である。
【0059】
さらに、上述した実施形態においては、赤色発光素子の反射層として、Cuを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、赤色発光素子の反射層として、AuまたはAg、あるいは、Cu、Au、Agのうち少なくとも一つを主成分とする合金であればいい。
【0060】
また、上述した実施形態においては、緑色発光素子と青色発光素子の反射層を同じ材料で形成し、赤色発光素子の反射層を異なる材料で形成する例について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、赤色発光素子と緑色発光素子の反射層を同じ材料で形成し、青色発光素子の反射層を異なる材料で形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10……第1基板、11……反射層、12……反射層、13……透明層、14……画素電極、15……正孔輸送層、16……蛍光Bユニット、17……電子輸送層、18……LG101、19……正孔輸送層、20……電荷分離層、21…赤色用有機EL素子、22…緑色用有機EL素子、23…リン光RGユニット、24…ホールブロック層、25…電子輸送層、30…対向電極、31……封止層、32……第2基板、E1……発光装置、U1…赤色発光素子、U2…青色発光素子、U3…緑色発光素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が形成された発光装置であって、
前記複数の画素の各々は、
反射層と、
画素電極と、
光透過半反射層と、
前記反射層と前記光透過半反射層との間に形成された複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に形成された少なくとも一つの電荷分離層と、
対向電極と、を備え、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離は、少なくとも二つの画素について同一であり、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の二つの画素のうち、一つの画素の前記反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の発光部は、前記画素電極と前記電荷分離層との間に形成された第一の発光部と、前記電荷分離層と前記対向電極との間に形成された第二の発光部とからなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の少なくとも二つの画素の反射層のうち、発光波長が長い画素の反射層のほうが反射率が高い材質で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記対向電極と前記反射層との間には透明層が形成され、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素において、前記反射層で反射される光の位相シフト量をφ、前記電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層の屈折率をn1、前記反射層の屈折率をn2、前記反射層の消衰係数をk2としたとき、
φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)}
を満たし、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素の反射層は、発光波長が長い画素ほど前記位相シフト量が小さい材質で形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、
前記緑色画素と前記青色画素との反射層、または、前記赤色画素と前記緑色画素との反射層が共通の金属材料で形成されることを特徴する請求項1ないし請求項4のいずれか一記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、
前記赤色画素または前記緑色画素の反射層は、Cu、Au、Agまたはこれらを主成分とする金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一記載の発光装置。
【請求項7】
前記対向電極の光が射出する側にカラーフィルターを形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数の画素が形成された発光装置であって、
前記複数の画素の各々は、
反射層と、
画素電極と、
光透過半反射層と、
前記反射層と前記光透過半反射層との間に形成された複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に形成された少なくとも一つの電荷分離層と、
対向電極と、を備え、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離は、少なくとも二つの画素について同一であり、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の二つの画素のうち、一つの画素の前記反射層は、もう一方の画素の反射層とは異なる材質で形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の発光部は、前記画素電極と前記電荷分離層との間に形成された第一の発光部と、前記電荷分離層と前記対向電極との間に形成された第二の発光部とからなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の少なくとも二つの画素の反射層のうち、発光波長が長い画素の反射層のほうが反射率が高い材質で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記対向電極と前記反射層との間には透明層が形成され、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素において、前記反射層で反射される光の位相シフト量をφ、前記電荷分離層側に設けられ前記反射層と接する層の屈折率をn1、前記反射層の屈折率をn2、前記反射層の消衰係数をk2としたとき、
φ=tan−1{2n1k2/(n12−n22−k22)}
を満たし、
前記反射層と前記光透過半反射層との間の光学的距離が同一の複数の画素の反射層は、発光波長が長い画素ほど前記位相シフト量が小さい材質で形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、
前記緑色画素と前記青色画素との反射層、または、前記赤色画素と前記緑色画素との反射層が共通の金属材料で形成されることを特徴する請求項1ないし請求項4のいずれか一記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数の画素は、緑色で発光する緑色画素と、青色で発光する青色画素と、赤色で発光する赤色画素とからなり、
前記赤色画素または前記緑色画素の反射層は、Cu、Au、Agまたはこれらを主成分とする金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一記載の発光装置。
【請求項7】
前記対向電極の光が射出する側にカラーフィルターを形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−252933(P2012−252933A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125957(P2011−125957)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]