説明

発光装置と発光装置のグローブ成形方法

【課題】配光特性が良好な照明用グローブを低コストで提供する。
【解決手段】中間品の高さ寸法が完成後のグローブ6の高さ寸法よりも高くし、且つ中間品内壁を周方向に広げて圧縮させるためのくさび機構を有するブロー成形金型を用いてブロー成形を行うことにより、グローブのヒートシンクへの挿入部の入口に段差63を設け、ヒートシンクへの挿入部の厚みt2をその上部の光線通過部の厚みt1より薄くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用電球と、照明用電球用合成樹脂グローブ成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明用電球の代表的な構成図を図8に示す。図8は広配光を実現するLED電球の構成図であり、アルミプレート1に半導体発光素子21を実装した基台2が固定されており、更に第1反射板31、第2反射板32がアルミプレート1に固定されている。アルミプレート1の周囲にはヒートシンク4が固定されており、ヒートシンク4の下方には金具5が固定されている。アルミプレート1、ヒートシンク4、金具5に囲まれた空間部には図示しない電源回路が装着されており、アルミプレート1上面には基台2を保護するためのグローブ6が固定されている。
【0003】
半導体発光素子21より発光した光は第1反射板31の窓部311を通過して直進する光71、第1反射板31の窓部311を通過した後に第2反射板32にて反射して横方向に方向を変える光72、第1反射板31により反射して下方向に方向を変える光73に分かれる。この電球の配光角を広げるためには第1反射板31により反射され、グローブ6を通過した反射して下方向に方向を変える光73をグローブ6にて拡散することが望ましい。そのため、通常グローブ6の材料には拡散材料を含有した合成樹脂材料が用いられる。
【0004】
グローブ6の形状は、光の配光を均一にするために球状或は楕円体の形状をし、より後方の光を確保するためにはグローブ6の外径はヒートシンク4の外径に対して大きいことが望まれる。そのために、グローブ6は袋状の形状であることが好ましい。そのために従来では、グローブの製造方法として、射出成形法により有底筒状の中間品(パリソン)を予め製作しておき、ブロー成形型内において圧縮空気で膨らませることによって所望のグローブ形状に成形する方法が主に用いられている。
【0005】
この従来のブロー成形法によるグローブ成形のプロセスを図9(a)から図9(d)により説明する。図9(a)は中間品8をブロー成形型10にセットした状態の図である。射出成形法により成形された中間品8を棒状の加熱具9に挿入して予め軟化させた後に、ブロー成形型10にセットされ、ブロー成形型10を閉じる。その後、圧縮空気供給口11から供給さえた圧縮空気で膨らませる。図9(b)は圧縮空気により中間品8が膨張し、所望のグローブ形状に成形された図である。
【0006】
図9(c)は上記により成形されたグローブ6の形状図であるが、ブロー成形においては中間品8に圧縮空気を供給するホルダー部9にエアー漏れが無いように強く抑える必要があるために中間品8に突起を有する押さえ代82を設け、押さえ治具により強固に固定する。押さえ代82は成形後に切断面12より切断され、図9(d)で示すようなグローブ形状に形成される。
【0007】
特許文献1では、合成樹脂シートを真空吸引により治具に固定した後に成形型内において圧縮空気で膨らませることによって所望のグローブ形状に成形し、余分な部分を切り落とすという方法によりグローブ6を製造する方法も提案されている。
【0008】
特許文献1の方法を、図10(a)から図10(f)を用いて説明する。図10(a)において、ブロー成形用の分割金型402上にクランプ403が配置され、その上方に棒状のプラグ404が配置された成形装置が準備されている。分割金型402は左右に分かれて待機しており、クランプ403は合成樹脂シート401が水平にはさまれている。合成樹脂シート401は予め加熱軟化され、クランプ403により固定されている。
【0009】
プラグ404を下降させて、加熱により軟化した合成樹脂シート401を図10(b)に示すようにその球状の先端で垂直に押し、クランプ403の開口部405を境に分離金型402内に伸ばす。
【0010】
プラグ404周壁には数箇所の通気孔406が有り、取付部内に配置された通路407を介して図示しない真空装置及び圧縮空気発生装置に通じている。そこで、まず真空装置を作動させて、軟化状態にある合成樹脂シート401をプラグ404の通気孔406を通じて直ちに真空で引き込み、図10(c)に示すようにプラグ404に密着させる。そして図10(d)に示すように分離金型402を閉じ、次に圧縮空気発生機を作動させ、通気孔406から噴出する圧縮空気により、図10(e)に示すようにてプラグ404に密着した合成樹脂シート410を型面408に密着させる。
【0011】
その後、図10(f)に示すように分離金型402を開き、クランプ403を開放することにより、成形品409を取り出す。
【0012】
取り出された成型品409は次工程で余分な部分がカットされ、グローブが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭58−209531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
反射板により光線を反射させてグローブ後方に光を導き、広配光を実現する照明用電球においては、上記反射板の外径をできるだけ大きくすることが求められる。グローブの取り付けは、上記反射板装着後に行われるために、グローブ内径は反射板外径よりも大きい必要があり、グローブ内径もできるだけ広くすることが望まれるが、上記のブロー成形法では、どちらもグローブのヒートシンクへの挿入部の厚みはその上部の光線通過部の厚みと同じ厚みになり、グローブ内径を大きくすることができないといった問題があった。
【0015】
また、中間品の固定部である押さえ代82(図9(a)参照)上部付近はブロー成形時に圧縮空気を注入する前に温度が低下することにより、その付近で白化等の外観不良が発生したり、逆に固定部の温度が高く固定部の形状変化が発生したりするため、固定部が外観品質を要求される箇所から離れた位置に設ける必要があった。そのため、図9に示すような、予め射出成形法により有底筒状の中間品を製作してブロー成形を行う方法では、グローブのヒートシンクに挿入する部分よりも下方に突起を有する押さえ代を設け成形後に切断していた。また図10に示す特許文献1の合成樹脂シートを用いる方法においても、成形後に余分な箇所を切り落とす必要があった。
【0016】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、配光特性が良好な照明用グローブを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記欠点や課題を解消するために、本発明は、半導体発光素子を実装した基台と、前記基台の下部に配置されたヒートシンクと、前記基台上方で前記ヒートシンクと組み合わされる中空で球状のグローブと、前記ヒートシンクの下部で電源へ接続される金具とからなる発光装置であって、前記グローブの前記ヒートシンクに組み合わされる外壁面に段差を設け、かつ、前記段差の下部の厚みを上部の部分の厚みより薄くしたことを特徴とする発光装置を用いる。
【0018】
射出成形法により中間品を成形する成形工程と、前記中間品を加熱具にて軟化させ、圧縮空気で膨らませて、かつ、金型で圧縮してグローブ形状を形成するブロー工程とからなり、前記中間品の高さ寸法が完成後のグローブの高さ寸法よりも高くし、前記圧縮にて高さを低く圧縮し、且つ、前記中間品の内壁を周方向に広げて膨らませることを特徴とする発光装置のグローブ成形方法を用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によると、光線通過部とグローブ挿入部との境界部に段差を設けることにより、グローブの光線通過部の最下点に対するグローブ最内周までの距離が短くできるために、反射板の外径を大きくすることが可能になり、より広い配光角を得ることが可能になる。また、ブロー成形後に余分な部分を切り落とす工程が不要になり、グローブの製造コストを大幅に削減できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例のグローブ形状の断面図
【図2】(a)本発明の中間品の断面図、(b)本発明のグローブの断面図
【図3】(a)実施例における射出成形金型の成形開始前(型開状態)の状態図、(b)実施例における射出成形金型の型締め、射出後の状態図、(c)実施例における射出成形金型の射出、冷却が完了し、型開き動作を行った後の状態図、(d)実施例における射出成形金型の成形品(中間品)を取り出す時の状態図
【図4】(a)実施例の加熱具の加熱具に中間品を挿入する時の状態図、(b)実施例の加熱具の加熱具の動作を示す図、(c)実施例の加熱具の加熱具で中間品を加熱する時の状態図
【図5】実施例のブロー成形型の構成図
【図6】実施例のブロー成形型にいける(a)ブロー成形型に中間品を供給した時の状態図、(b)ブロー成形型を閉じる工程において、中間品が固定側型板に接触した時点での状態図、(c)ブロー成形型を閉じる工程において、ホルダー部がベース金型に接触した時点での状態図、(d)ブロー成形型が完全に型締めされた野の状態図、(e)圧縮空気を供給し、中間品を膨らませる時の状態図、(f)圧縮空気を開放させる時の状態図、(g)グローブ形成工程が完了し、型開きを開始する直前の状態図、(h)ブロー成形型を開く途中での状態図、(i)ブロー成形型の型開き動作が完了した時の状態図
【図7】実施例のブロー成形型の(a)くさびが下降した状態での中間品とくさびとの関係を示す図、(b)くさびが上昇した状態での中間品とくさびとの関係を示す図
【図8】従来のLED電球の断面図
【図9】従来例のブロー成形型の、(a)中間品をグローブ成形型にセットし、型を閉じた時の状態図、(b)中間品を圧縮空気にて膨らませた後の状態図、(c)ブロー成形直後のグローブ形状の状態図、(d)不要部を切断した後のグローブ形状の状態図
【図10】特許文献1を説明する、(a)合成樹脂シートをブロー成形装置にセットした状態図、(b)プラグを合成樹脂シートに押し付けた時の状態図、(c)真空吸引により、合成樹脂シートをプラグに密着させた時の状態図、(d)金型を閉じた時の状態図、(e)圧縮空気を供給し、合成樹脂シートを膨らませ、型面に密着させた時の状態図、(f)金型を開いた時の状態図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(構造)
本発明の実施例のグローブ形状を図1に示す。グローブ6の材料には拡散材料を含有した合成樹脂材料(ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、ABS,AS,ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニルなど)を使用している。グローブ6の光線通過部61とヒートシンクへの挿入部62の境界部には外壁面に段差63を設けており、ヒートシンクへの挿入部62の肉厚(グローブのヒートシンクへの挿入部の肉厚t2)は光線通過部61部の肉厚(グローブの光線通過部の膜厚t1)の2/3以下になっている。また、グローブ6の内壁部には段差が無く連続した形状になっている。ここで、光線通過部61部の肉厚は、ほぼ一定の厚みである。グローブの光線通過部の膜厚t1は、この例では、約1.5mmである。後の製法のところで説明するが、高さ方向に圧縮してグローブ6を成形するので、この例のグローブ6は、端面から段差63まで直線で、その後、一端、外側、外径へ広がり(グローブ6の中心から離れ)、その後、球状となる。左右、前後、対称形状である。この広がり部分で、図8で説明した、反射して下方向に方向を変える光73を、より広い配光角で放出することが可能である。
【0022】
外形へ広がった領域は、半導体素子21が実装された位置に対応する側面部分である。または、第1反射板31、第2反射板32に対応する側面である。上部部分は球面である。
【0023】
照明装置としては、グローブ6以外は、図8に示す従来の照明装置と同様である。照明装置内部には、アルミプレート1に半導体発光素子21を実装した基台2が固定されており、更に反射板31、反射板32がアルミプレート1に固定されている。アルミプレート1の周囲下部にはヒートシンク4が固定されており、ヒートシンク4の下方には金具5が固定されている。アルミプレート1、ヒートシンク4、金具5に囲まれた空間部には図示しない電源回路が装着されており、アルミプレート1上面には基台2を保護するためのグローブ6が固定されている。半導体発光素子21より発光した光は反射板31の窓部311を通過して直進する光71、反射板31の窓部311を通過した後に反射板32にて反射して横方向に方向を変える光72、反射板31により反射して下方向に方向を変える光73に分かれる。この電球の配光角を広げるためには反射板31により反射され、グローブ6を通過した光73をグローブ6にて拡散することが望ましい。そのため、通常グローブ6の材料には拡散材料を含有した合成樹脂材料が用いられる。
【0024】
本願発明のグローブ6は、ヒートシンク4と組み合わされ、半導体素子21を覆う中空で球状である。
【0025】
(製造方法)
以下に、本発明の実施例における中間品8の成形から、グローブ6の成形までのプロセスを説明する。
【0026】
本発明の実施例では、上記の合成樹脂材料を用いて、射出成形法により、図2(a)に示す中間品8を成形する。中間品8の外周部には段差83を設け、ホルダー108への挿入部の押さえ代82の肉厚をその上部の変形部81肉厚の2/3以下にしている。中間品8の内壁部には段差が無く連続した形状になっている。
【0027】
中間品8の高さ寸法は図2(b)で示すブロー成形後に形成されるグローブ6(図1)の高さ寸法よりも△hだけ高い形状をしている。△hの値は、ブロー成形の型締め動作において、中間品8を完全に圧縮し、金型を完全に閉じきるのに必要な型締め力が図2のスプリング105をたわますのに必要な力以上になるように設定している。この△hの値は中間品8の形状(外径、肉厚等)及び上記スプリング力に依存する。全体の高さ50mmの場合、△hは、約5mm(約1割)程度である。
【0028】
以下に、本発明の実施例におけるグローブ6の製造プロセスを説明する。本実施例において、グローブ6の製造プロセスは射出成形(図3)の工程、熱処理の工程(図4)、ブロー成形の工程(図6)からなる。
【0029】
本発明の実施例では射出成形法により、図2(a)に示す中間品8を成形する。中間品8の高さ寸法は図2(b)で示すブロー成形後に形成されるグローブ6の高さ寸法よりも△hだけ高い形状をしている。
【0030】
(射出成形の工程)
図3(a)から図3(d)に示す射出成形金型は本実施例で使用した3プレート金型の構成及び射出成形工程における状態を示すものである。
【0031】
図3(a)は射出成形機において、型締め動作を開始する前の金型の状態図である。
【0032】
固定側取付板203には、スプルーブッシュ201が配置されており、スプルーブッシュ201の内部には樹脂を注入するためのスプルー部202が形成されている。固定側取付板203下方部にはランナーストリッパープレート204が設けられている。ランナーストリッパープレート204の更に下方部には固定側型板211が設けられている。固定側取付板203、ランナーストリッパープレート204、及び固定側型板211はサポートピン207でそれぞれガイドされており、ランナーストリッパープレート204に固定されたストップボルト205によりランナーストリッパープレート204と固定側取付板203との開き量が規制されている。またランナーストリッパープレート204にはプラーボルト206が固定されており、固定側型板211との開き量が規制されている。
【0033】
固定側型板211には、中間品8に相当するパリソン外周形状210が形成され、その上部に樹脂を流し込むためのランナー部208が形成されている。ランナー部208の先端部はテーパ形状で絞られ、ランナーと中間品8とを分離するためのランアーゲート209が形成されている。
【0034】
固定側型板211の下方には可動側型板216が配置され、可動側型板216の中央部には中子213が固定されている。可動側型板216と中子213の間には成形後に中間品8を突き出すためのストリッパープレート214が配置されており、ストリッパープレート214はエジェクトピン215を介して、エジェクトプレート217に連結している。エジェクトプレート217は射出成形装置のエジェクトロッド218に接触している。固定側型板211と固定側型板211は引張りリンク212により連結されている。
【0035】
図示しない射出成形機の型締め駆動装置により、可動側型板216が上昇し、型締め動作が行われた後に、図3(b)に示すように、図示しない射出装置により、スプルー部202より溶融樹脂が射出注入され、固定側型板211と中子213の間に形成された空隙部219に溶融樹脂が充填され、中間品8が成形される。
【0036】
空隙部219に充填された溶融樹脂は金型内で冷却固化され、図3(c)に示すように、図示しない型締め駆動装置により型開き動作がなされ、固定側型板211と固定側型板211が開くことにより、ランナー部208と中間品8がランナーゲート209で分離される。更に型開き動作を続けることにより、引張りリンク212により固定側型板211が引っ張られ、固定側型板211が開き、続いてプラーボルト206により、ランナーストリッパープレート204が開く。
【0037】
図3(d)に示すように、図示しないエジェクト駆動装置によりエジェクトロッド218を突き出すことにより、エジェクトプレート217、エジェクトピン215を介してストリッパープレート214が突き出され、中間品8が中子213から離型され、図示しない取り出し装置により中間品8及びスプルーランナー220が取り出される。例えば、ポリカーボネート樹脂材料の場合、荷重たわみ温度が120℃から130℃のため、上記の取り出し温度は100℃から120℃である。
【0038】
(熱処理の工程)
本発明の実施例における加熱具の構成を図4に示す。図示しない架台に固定されたプリヒートベース301にはヒータ303及び温度センサー304が設けられており、樹脂材料の荷重たわみ温度より高い、一定の温度に制御されている。(ポリカーボネート樹脂材料の場合、180℃〜230℃)プリヒートベース301にはパリソンホルダー302が固定されており、プリヒートベース301からの熱伝導で樹脂材料の荷重たわみ温度より高い温度に保持されている。(ポリカーボネート樹脂材料の場合、150℃〜200℃)。
【0039】
図4(a)に示すように、射出成形金型から図示しない取出し装置等により取出された中間品8はパリソンホルダー302に挿入される。その後、図4(b)に示すように、図示しない上下駆動装置に連結したプリヒートブロック305が、上下駆動装置により下降し、中間品8に対して適正な位置に到達した時点で停止する(図4(c)参照)。この時、プリヒートブロック305と中間品8との距離は1mm以下になっている。プリヒートブロック305にはバンドヒータ306及び温度センサー307が設けられており、樹脂材料の荷重たわみ温度よりも充分に高い温度に制御されている。(ポリカーボネート樹脂材料の場合、200℃〜300℃)一定時間が経過して、中間品8の温度が樹脂材料の荷重たわみ温度以上になり(ポリカーボネート樹脂材料の場合、130℃〜140℃)、中間品8が軟化した状態で、上下駆動装置によりプリヒートブロック305を上昇させ、図示しない取出し装置により、ブロー成形型に搬送する。
【0040】
(ブロー成形の工程)
まず、上記合成樹脂グローブ6を製造するためのブロー成形型の構成図を図5に示す。
【0041】
金型ベース101にはスプリングガイド104、スプリング105を介してホルダー108が接続されており、ホルダー108上部には可動側型板103が固定されている。ホルダー108の中央部にはくさびガイド106が固定されており、くさびガイド106の外周部にくさび107が接触している。くさび107にはシャフト109が固定されている。シャフト109はホルダー108を通過して金型ベース101に接触している。可動側型板103の上部には固定側型板102が配置されている。くさびガイド106には圧縮空気を注入するための圧縮空気供給口110と金型内の空気を開放するための圧縮空気排出口111が設けられている。
【0042】
軟化した中間品8をブロー成形型に搬送した後のプロセスに関して、図6(a)から図6(i)を用いて説明する。
【0043】
熱処理工程の図4の上記加熱具により軟化させた中間品8は、図示しない搬送装置により、ホルダー108に挿入される(図6(a))。中間品8挿入後、図示しない型締め装置により可動側型板103が上昇し、中間品8の天面が固定側型板102に接触した時点(図6(b))で、スプリング105がたわみ、ホルダー108と金型ベース101との隙間が減少し始める。上記動作により、くさび107に固定されたシャフト109が金型ベース101に接触して、くさび107が上昇して中間品8の押さえ代82を内周部が広がる方向に圧縮し、中間品8がホルダー108に強固に固定される(図6(c))。この時のくさび107及び中間品8の関係の拡大図を図7に示す。
【0044】
図7(a)は、くさび107が下降した状態での中間品8と、くさび107と、可動側型板103との関係を示す図であり、図7(b)は、くさび107が上昇した状態での中間品8と、くさび107と、可動側型板103との関係を示す図である。くさび107が、矢印の方向へ上昇することにより、中間品8は周方向(矢印の方向)に圧縮される。本実施例ではこの時の圧縮量を押さえ代82の肉厚の3%から10%になるように設定している。この圧縮量が少なすぎる場合は、ブロー成形時にホルダー108から中間品8が抜け、形状不良が発生するか或はホルダー108部からのエアー漏れが発生したりする。また、圧縮量が大きすぎる場合は、ブロー成形後にホルダー108からグローブ6を取り出す時の抵抗が大きくなり、取り出し不良が発生したり、上記抵抗による中間品8に変形が発生したりする。くさび107が上昇して、上記中間品8を圧縮する際に、中間品8にはその摩擦による上方向に押し上げる力が発生するために、スプリング105(図6)の設定値は、その押し上げ力以上の値に設定する必要がある。
【0045】
くさび107が上昇した後も、更に型締め動作を続けることにより、中間品8は、圧縮され、周方向に膨張する(図6(d))。一定時間経過し、中間品8の押さえ代82が冷却され、その部分の温度が樹脂材料の荷重たわみ温度よりも充分に低くなった時点で、圧縮空気供給口110から、図示しない圧縮空気発生装置により高圧エアーを注入する。ここで注入するエアーの圧力は中間品8が塑性変形し、表面全体が固定側型板102の内壁に押し付けられるだけの圧力が必要であり、本実施例では3MPa〜4MPaの高圧エアーを注入している(図6(e))。
【0046】
高圧エアーの注入により、中間品8が膨張し、所望のグローブ形状が形成された時点で、圧縮空気排出口111を開放し、金型内の空気を排出する(図6(f))。中間品8が膨張して形成されたグローブ6全体の温度が樹脂材料の荷重たわみ温度以下になった時点で、図示しない型締め駆動装置により型開きを行い、図6(g)から、図6(h)、図6(i)へ変化する。その後、図示しない搬送装置により、グローブ6を取り出す。
【0047】
グローブ6の外壁面に段差を設け、ヒートシンクへの挿入部の肉厚を光線通過部の肉厚(グローブの光線通過部の膜厚t1)より薄くすることにより、グローブ6の最内周の径を大きくでき、反射板の外径を大きくすることが可能になり、より広い配光角を得ることが可能になる。
【0048】
また中間品8(パリソン)の外周部に段差を設け、ホルダーへの挿入部の肉厚をその上部の変形部肉厚よりも薄くすることにより、ホルダーへの挿入部とその上部の変形部との温度勾配を大きくすることが可能になり、ブロー成形時にホルダーへの挿入部の上方に発生する白化による外観不良や挿入部の変形等の不良が発生しにくくなる。
【0049】
更に、くさび構造により中間品の内壁部を圧縮して中間品を固定するため、中間品をホルダーに固定するための突起形状が不要になり、ブロー成形後に不要な箇所を切断する工程が不要になる。
【0050】
ヒートシンクへの挿入部の肉厚及び中間品のホルダーへの挿入部の肉厚は薄い程良いが、ヒートシンク4への挿入部の機械強度を満足させるために、本実施例ではヒートシンク4への挿入部の肉厚(グローブのヒートシンクへの挿入部の肉厚t2)を0.4mm以上にしている。また、挿入部の厚みが、光線通過部の肉厚の3分の2以下の理由は、3分の2より厚いと、課題のところで説明したように、ブロー成形時に圧縮空気を注入する前に温度が低下することにより、その付近で白化等の外観不良が発生したり、逆に固定部の温度が高く固定部の形状変化が起こる。
【0051】
この発明では、段差を設け、かつ、厚みを変えているので、温度差がつき、光線通過部には、白化、形状変化が起こらない。さらに、グローブ6のヒートシンクへのはめ込み部分を広くすることができ、光を広配光で放出できる。さらに、挿入部分が一段薄くできているので、ヒートシンク4へもはめ込みもしやすい。
【0052】
なお、製造条件、製造装置などは1例であり、上記のものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は合成樹脂グローブの形状および合成樹脂グローブを製造するためのブロー成形金型に適用される。
【符号の説明】
【0054】
1 アルミプレート
2 基台
4 ヒートシンク
5 金具
6 グローブ
8 中間品
9 ホルダー
10 ブロー成形型
11 圧縮空気供給口
12 切断面
21 半導体発光素子
31 第1反射板
32 第2反射板
61 光線通過部
62 挿入部
63 段差
71 通過して直進する光
72 反射して横方向に方向を変える光
73 反射して下方向に方向を変える光
81 変形部
82 押さえ代
83 段差
101 金型ベース
102 固定側型板
103 可動側型板
104 スピリングガイド
105 スプリング
106 くさびガイド
107 くさび
108 ホルダー
109 シャフト
110 圧縮空気供給口
111 圧縮空気排出口
201 スプルーブッシュ
202 スプルー部
203 固定側取付板
204 ランナーストリッパープレート
205 ストップボルト
206 プラーボルト
207 サポートピン
208 ランナー部
209 ランナーゲート
210 パリソン外周形状
211 固定側型板
212 引張りリンク
213 中子
214 ストリッパープレート
215 エジェクトピン
216 可動側型板
217 エジェクトプレート
218 エジェクトロッド
219 空隙部
301 プリヒートベース
302 パリソンホルダー
303 ヒータ
304 温度センサー
305 プリヒートブロック
306 バンドヒータ
307 温度センサー
311 窓部
401 合成樹脂シート
402 分割金型
403 クランプ
404 プラグ
405 開口部
406 通気孔
407 通路
408 型面
409 成形品
410 密着した合成樹脂シート
t1 グローブの光線通過部の膜厚
t2 グローブのヒートシンクへの挿入部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を実装した基台と、
前記基台の下部に配置されたヒートシンクと、
前記基台上方で前記ヒートシンクと組み合わされ、前記半導体素子を覆う中空で球状のグローブと、
前記ヒートシンクの下部で電源へ接続される金具
とからなる発光装置であって、
前記グローブの前記ヒートシンクに組み合わされる外壁面に段差を設け、
かつ、前記段差の下部の厚みを上部の部分の厚みより薄くしたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記段差は、前記グローブの光通過部と、前記グローブのヒートシンクへの挿入部との間に設けた請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記グローブの前記段差の下部の厚みが、上部の前記グローブ部分の厚みの3分の2より薄い請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記グローブの前記段差の下部の厚みが、0.4mm以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記グローブの形状は、前記半導体発光素子の位置に対応する側面部分は、外側へ広がり、前記半導体発光素子の上部の領域は球状の形状であり、左右、前後対称の図形である請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
射出成形法により中間品を成形する成形工程と、
前記中間品を加熱具にて軟化させ、圧縮空気で膨らませて、かつ、金型で圧縮してグローブ形状を形成するブロー工程とからなり、
前記中間品の高さ寸法が完成後のグローブの高さ寸法よりも高くし、前記圧縮にて高さを低く圧縮し、且つ、前記中間品の内壁を周方向に広げて膨らませることを特徴とする発光装置のグローブ成形方法。
【請求項7】
前記中間品の外壁面に段差を設け、前記ブロー工程の前記金型の固定部に挿入する部分の厚みをその上部の前記中間品の厚みより薄くした請求項6記載の発光装置のグローブ成形方法。
【請求項8】
前記ブロー工程の前記金型の固定部に挿入する部分の厚みが、その上部の前記中間品の厚みの3分の2以下とした請求項7記載の発光装置のグローブ成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195130(P2012−195130A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57511(P2011−57511)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】