発光装置の作製方法
【課題】有機EL材料の塗布液を塗布する際に、塗布液の液切れを良くして効率的に塗布する手段を提供する。
【解決手段】塗布液を塗布する際に成膜形成装置にヒーターもしくは超音波振動子を設けて、塗布液に熱や超音波振動を与える。これにより塗布液の液切れ不良や液詰まりを解決することができる。
【解決手段】塗布液を塗布する際に成膜形成装置にヒーターもしくは超音波振動子を設けて、塗布液に熱や超音波振動を与える。これにより塗布液の液切れ不良や液詰まりを解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極、陰極及びそれらの間にEL(Electro Luminescence)が得られる発光性有機材料(以下、有機EL材料という)を挟んだ構造からなるEL素子を基板上に形成した自発光装置及びその自発光装置を表示部(表示ディスプレイまたは表示モニター)として有する電気器具の作製方法に関する。なお、上記自発光装置はOLED(Organic Light Emitting Diodes)ともいう。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性有機材料のEL現象を利用した自発光素子としてEL素子を用いた表示装置(自発光装置または、EL表示装置という)の開発が進んでいる。自発光装置は自発光型であるため、液晶表示装置のようなバックライトが不要であり、さらに視野角が広いことから電気器具の表示部として有望視されている。
【0003】
自発光装置にはパッシブ型(単純マトリクス型)とアクティブ型(アクティブマトリクス型)の二種類があり、どちらも盛んに開発が行われている。特に現在はアクティブマトリクス型自発光装置が注目されている。また、EL素子の中心とも言えるEL層となる有機EL材料は、低分子系有機EL材料と高分子系(ポリマー系)有機EL材料とが研究されているが、低分子系有機EL材料よりも取り扱いが容易で耐熱性の高いポリマー系有機EL材料が注目されている。
【0004】
しかしながら、ポリマー系有機EL材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布する際に溶液の粘性や吐出部における表面張力により吐出部の液切れが悪い又、吐出部に液詰まりが起こるなどの問題が生じる。なお、本明細書中では、有機EL材料を溶媒に溶解させたEL層用塗布液のことを塗布液という。さらに、塗布液は、ポリマー系有機EL材料を溶媒に溶解させたもの以外に、ポリマー系とモノマー系の有機EL材料を一緒に溶媒に溶解させた物も含む。
【0005】
また、有機EL材料におけるルミネッセンスには一重項状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(燐光)とがある。本発明の自発光装置には、どちらの有機EL材料を有するEL素子を用いても良い。
【0006】
また、塗布液は、スピナーを用いた塗布方式で塗布することで膜厚のコントロールが可能である。しかし、スピン塗布方式を用いるとウエットエッチングといった有機EL材料に対して好ましくない工程を挟んでしまうことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、ポリマーからなる有機EL材料をライン状に塗布することで成膜後のエッチングの問題を解決し、吐出時の吐出部における液切れ及び液詰まりなどの問題を解決し、効率よく成膜する手段を提供することを課題とする。さらに、このような手段を用いた自発光装置及びその作製方法を提供することを課題とする。そして、このような自発光装置を表示用部として有する電気器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、ライン状に塗布する際に用いる塗布液は、有機EL材料の希釈率を調整して作製することにより粘性を制御し、塗布した際の膜厚が均一となるように制御する。さらに、本発明ではEL層を形成する塗布液の塗布には、ヘッド部及びノズルを有する薄膜形成装置を用いて塗布液を塗布する際の液切れ不良や液詰まりを解決する。
【0009】
なお、本発明においてヘッド部は、超音波振動子を有しており、この超音波振動子によりヘッド部に超音波振動が与えられる。また、ヘッド部は、ノズルを有しておりヘッド部に与えられた超音波振動はノズルにも与えられる。
【0010】
ノズルには、EL層を形成する塗布液が充填されており、超音波振動子によりノズルに与えられた超音波振動が塗布液にも与えられる。なお、塗布液に超音波振動が与えられることにより塗布液に圧力が加わり、これにより塗布液は、ノズルから吐出され所望の位置に塗布される。塗布液は、毛管現象や塗布液の重力による圧力でノズルから吐出されることもある。
【0011】
また、ノズルの先端部が、接触子を有し、この接触子をEL層を形成する基板上のバンクに接触させることにより塗布液が接触子を伝って画素列に塗布するようにすることも可能である。なお、本明細書中において接触子は、ノズルとは別の材料を用いて形成したものを用いても良いし、ノズルの先端を一部改良してバンクと接触するようにしても良い。また、場合によっては、ノズルを直接バンクと接触させて接触子の役割を果たしても良い。なお、接触子の材料としては、絶縁材料が好ましい。
【0012】
なお、ノズルは、ヘッド部と連結されており、この連結部付近のノズルの内径と塗布液がノズルから圧力により吐出されるノズル先端部の内径の大きさは異なっている。内径の大きさの大小関係は、連結部付近のノズルの内径の方が先端部のノズルの内径に比べて大きくなっている。これは、吐出される先端部のノズルの内径を小さくすることにより、塗布液を塗布する位置の制御性を高めるためである。
【0013】
また、ノズルの先端部(ノズルの内径の小さい部分)は、ヒーターを有しており、ヒーターによりノズルの先端部が加熱され、これにより塗布液も加熱される。なお、塗布液がヒーターで加熱されることにより、ノズルの先端部における塗布液の液切れや液詰まりを解消することができる。
【0014】
ここで本発明の薄膜形成装置を図1に示し、さらにこの薄膜形成装置を用いた自発光装置の作製方法について説明する。
【0015】
図1(A)は、本発明を実施してπ共役系ポリマーからなる有機EL材料を成膜する様子を模式的に示す図である。図1(A)において、110は基板であり、基板110上には画素部111、ソース側駆動回路112、ゲート側駆動回路113がTFTにより形成されている。ソース側駆動回路112に接続された複数のソース配線とゲート側駆動回路113に接続された複数のゲート配線とで囲まれた領域が画素であり、画素内にはTFTと該TFTに電気的に接続されたEL素子が形成される。画素部111はこのような画素がマトリクス状の配列されて形成されている。
【0016】
なお、本実施例は赤色、緑色、青色のEL層をストライプ状に同時に成膜する方法を示す。ストライプ状とは、縦横比が2以上の細長い長方形状、長径と短径の比が2以上の細長い楕円形状を含む。
【0017】
ここで114aは赤色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、赤色EL層用塗布液という)、114bは緑色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、緑色EL層用塗布液という)、114cは青色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、青色EL層用塗布液という)である。なお、これらの有機EL材料はポリマー重合したものを直接溶媒に溶かして塗布する方法と、モノマーを溶媒に溶かしたものを成膜した後に加熱重合させてポリマーとする方法とがあるが、本発明はどちらでも構わない。ここではポリマーとなった有機EL材料を溶媒に溶かして塗布した例を示す。
【0018】
本発明の場合、薄膜形成装置からは赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが別々に吐出され、矢印の方向に向かって塗布される。即ち、赤色に発光すべき画素列、緑色に発光すべき画素列及び青色に発光すべき画素列に、同時にストライプ状のEL層(厳密にはEL層の前駆体)が形成される。
【0019】
なお、ここでいう画素列とはバンク121に仕切られた画素の列を指し、バンク121はソース配線の上方に形成されている。即ち、ソース配線に沿って複数の画素が直列に並んだ列を画素列と呼んでいる。但し、ここではバンク121がソース配線の上方に形成された場合を説明したが、ゲート配線の上方に設けられていても良い。この場合は、ゲート配線に沿って複数の画素が直列に並んだ列を画素列と呼ぶ。
【0020】
従って、画素部111は、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線の上方に設けられたストライプ状のバンクにより分割された複数の画素列の集合体として見ることができる。そのようにして見た場合、画素部111は、赤色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列、緑色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列及び青色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列からなるとも言える。
【0021】
また、上記ストライプ状のバンクは、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線の上方に設けられているため、実質的に画素部111は、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線により分割された複数の画素列の集合体と見ることもできる。
【0022】
次に、図1(A)に示した塗布工程を行った際の薄膜形成装置のヘッド部(吐出部と言っても良い)の様子を図1(B)に示す。
【0023】
115は薄膜形成装置のヘッド部であり、赤色用ノズル116a、緑色用ノズル116b、青色用ノズル116cが取り付けられている。また各々のノズルの内部には赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが蓄えられている。
【0024】
これらの塗布液は、加圧されることにより、画素部111上に吐出される。なお、塗布液は、ノズル116a、116b、116cと配管117をしきる板(図示せず)に配管117に充填された不活性ガスを加圧することで吐出される。
このようなヘッド部115が紙面に垂直な方向に沿って手前方向に走査されることで図1(A)に示したような塗布工程が行われる。
【0025】
なお、ここでは、赤色用ノズル116a、緑色用ノズル116b、青色用ノズル116cにそれぞれ赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが備えられているが、塗布液は、これらの色に限られることはなく、また、塗布液を備えているノズルは、一つであっても複数であっても良い。
【0026】
さらに、ヘッド部115には、塗布液を吐出しやすくするために超音波による振動をあたえるための超音波振動子122が取り付けられている。これは、外部の超音波電源に接続されている。
なお、超音波振動子を取り付ける位置は、図1(B)に示される位置に限られることはなく、別の位置に付けても良いし、各ノズルに付けても良い。
【0027】
さらに、各ノズル114a、114b、114cには、それぞれヒーター123a、123b、123cが設けられている。このヒーターとは、塗布液をうまく吐出するための塗布液温度調節用に設けられているものであり、ヒーターとなる部分に抵抗材料を存在させると、抵抗材料によりヒーターにかかる電圧が制御できる。電圧が制御されることによりヒーター部にかかる温度調節ができるので、ここで用いる抵抗材料は、各塗布液が適温になるような抵抗を与える材料を選ぶとよい。なお、抵抗材料は、ノズルに接触するように存在させても良いし、ノズルが半導体材料で形成される場合には、ノズル自体に抵抗材料をドーピングしても良い。また、抵抗材料としては、銅、鉄、アルミニウム、タングステン、タンタル、ニッケル、リン、ボロン、ヒ素やアンチモンといった金属を用いる。これにより、吐出液の温度調節が可能となる。
【0028】
さらにヒーターとしては、各ノズルのヒーター部分に測温部を設けて各塗布液の温度を検知し、検知した温度情報をフィードバックさせて新たな電気信号に変換する回路を設け、この回路に各ヒーターの温度を制御させるような機能を有するものも含める。
【0029】
また、本明細書中ではヘッド部が走査されるという記載にしているが、基板をX−Yステージにより縦方向または横方向に移動させることも可能である。
【0030】
ここで118に示される吐出部付近の拡大図を図1(C)に示す。基板110上に設けられた画素部111は、複数のTFT119a〜119cと画素電極120a〜120cからなる複数の画素の集合体である。図1(B)のノズル116a〜116cに圧力がかかると、その圧力により塗布液114a〜114cが吐出される。
【0031】
なお、画素間には樹脂材料で形成されたバンク121が設けられており、隣接する画素間で塗布液が混合されてしまうことを防いでいる。この構造ではバンク121の幅(フォトリソグラフィの解像度で決まる)を狭くすることで画素部の集積度が向上し、高精細な画像を得ることができる。また、ここで用いる塗布液としては、その粘性が1×10-3〜3×10-2Pa・sであることが好ましい。
【0032】
また、バンク121を形成しうる樹脂材料としてはアクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミドを用いることができる。この樹脂材料に予めカーボンや黒色顔料等を設けて樹脂材料を黒色化しておくと、バンク121を画素間の遮光膜として用いることも可能となる。
【0033】
また、ノズル116a、116bまたは116cのいずれかに光反射を用いたセンサーを取り付ければ、塗布面とノズルとの距離を常に一定に保つように調節することも可能である。なお、センサーを取り付ける位置は、ノズルの先端が好ましいが、この限りではない。さらに、画素ピッチ(画素間の距離)に応じてノズル116a〜116cの間隔を調節する機構を備えることで、どのような画素ピッチの自発光装置にも対応することが可能である。
【0034】
こうしてノズル116a〜116cから吐出された塗布液114a〜114cは各々画素電極120a〜120cを覆うようにして塗布される。塗布液114a〜114cを塗布したら真空中で加熱処理(ベーク処理または焼成処理)することにより塗布液114a〜114cに含まれる有機溶媒を揮発させ、有機EL材料からなるEL層を形成する。このため、有機溶媒は有機EL材料のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で揮発するものを用いる。また、有機EL材料の粘度により最終的に形成されるEL層の膜厚が決まる。この場合、粘度は1×10-3〜5×10-2Pa・s(好ましくは1×10-3〜2×10-2Pa・s)とするのが好ましい。
【0035】
さらに、有機EL材料中に不純物が多いと、EL層の劣化原因となり、発光効率が低下してしまうので有機EL材料中にはできるだけ不純物を低減することが望ましい。
【0036】
なお、不純物を低減するには、溶媒及び有機EL材料を徹底的に精製し、溶媒と有機EL材料を混合する時の環境を可能な限り清浄化することが重要である。
溶媒の精製または有機EL材料の精製は、蒸留法、昇華法、濾過法、再結晶法、再沈殿法、クロマトグラフィ法または透析法等の技術を繰り返し行うことが好ましい。最終的には金属元素やアルカリ金属元素等の不純物を0.1ppm以下(好ましくは0.01ppm以下)にまで低減することが望ましい。
【0037】
また、図1のような薄膜形成装置により有機EL材料を含む塗布液を塗布する際の雰囲気にも十分に注意することが好ましい。具体的には、上記有機EL材料の成膜工程を、窒素などの不活性ガスが充填されたクリーンブースやグローブボックス内で行うことが望ましい。
【0038】
以上のような薄膜形成装置を用いることにより、塗布液を均一に効率よく塗布することができ、高いスループットでポリマー系有機EL材料からなるEL層を形成することができる。さらに、一つの画素列では切れ間なくストライプ状に塗布していくことができるため、非常にスループットが高い。
【発明の効果】
【0039】
本発明を実施することで、有機EL材料を成膜する際に問題となる塗布液の液切れの悪さや液詰まりに対する改善を図ることができる。また、本発明においては、様々な方法で有機EL材料を成膜する方法を示しているので、条件や用途に応じて成膜する事が可能であり、ポリマー系有機EL材料を用いた自発光装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図2】画素部の断面構造を示す図。
【図3】画素部の上面構造及び構成を示す図。
【図4】自発光装置の作製工程を示す図。
【図5】自発光装置の作製工程を示す図。
【図6】自発光装置の作製工程を示す図。
【図7】サンプリング回路の素子構造を示す図。
【図8】自発光装置の外観を示す図。
【図9】自発光装置の回路ブロック構成を示す図。
【図10】アクティブマトリクス型の自発光装置の断面構造を示す図。
【図11】自発光装置の画素部の断面構造を示す図。
【図12】画素部の上面構造を示す図。
【図13】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図14】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図15】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図16】画素部を拡大した図。
【図17】パッシブ型の自発光装置の断面構造を示す図。
【図18】電気器具の具体例を示す図。
【図19】電気器具の具体例を示す図。
【図20】薄膜形成装置の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態について、図2、図3を用いて説明する。図2に示したのは本発明の薄膜形成装置を用いて作製した自発光装置の画素部の断面図であり、図3(A)はその上面図、図3(B)はその回路構成である。実際には画素がマトリクス状に複数配列されて画素部(画像表示部)が形成される。なお、図3(A)をA−A’で切断した断面図が図2に相当する。従って図2及び図3で共通の符号を用いているので、適宜両図面を参照すると良い。また、図3の上面図では二つの画素を図示しているが、どちらも同じ構造である。
【0042】
図2において、11は基板、12は下地となる絶縁膜(以下、下地膜という)
である。基板11としてはガラス、ガラスセラミックス、石英、シリコン、セラミックス、金属若しくはプラスチックからなる基板を用いることができる。
【0043】
また、下地膜12は特に可動イオンを含む基板や導電性を有する基板を用いる場合に有効であるが、石英基板には設けなくても構わない。下地膜12としては、珪素(シリコン)を含む絶縁膜を用いれば良い。なお、本明細書において「珪素を含む絶縁膜」とは、具体的には酸化珪素膜、窒化珪素膜若しくは窒化酸化珪素膜(SiOxNyで示される)など珪素、酸素若しくは窒素を所定の割合で含む絶縁膜を指す。
【0044】
また、下地膜12に放熱効果を持たせることによりTFTの発熱を発散させることはTFTの劣化又はEL素子の劣化を防ぐためにも有効である。放熱効果を持たせるには公知のあらゆる材料を用いることができる。
【0045】
ここでは画素内に二つのTFTを形成している。201はスイッチング用TFTであり、nチャネル型TFTで形成され、202は電流制御用TFTであり、pチャネル型TFTで形成されている。
【0046】
ただし、本発明において、スイッチング用TFTをnチャネル型TFT、電流制御用TFTをpチャネル型TFTに限定する必要はなく、スイッチング用TFTをpチャネル型TFT、電流制御用TFTをnチャネル型TFTにしたり、両方ともnチャネル型、又はpチャネル型TFTを用いることも可能である。
【0047】
スイッチング用TFT201は、ソース領域13、ドレイン領域14、LDD領域15a〜15d、高濃度不純物領域16及びチャネル形成領域17a、17bを含む活性層、ゲート絶縁膜18、ゲート電極19a、19b、第1層間絶縁膜20、ソース配線21並びにドレイン配線22を有して形成される。
【0048】
また、図3に示すように、ゲート電極19a、19bは別の材料(ゲート電極19a、19bよりも低抵抗な材料)で形成されたゲート配線211によって電気的に接続されたダブルゲート構造となっている。勿論、ダブルゲート構造だけでなく、シングルゲートもしくはトリプルゲート構造といったいわゆるマルチゲート構造(直列に接続された二つ以上のチャネル形成領域を有する活性層を含む構造)であっても良い。マルチゲート構造はオフ電流値を低減する上で極めて有効であり、本発明では画素のスイッチング素子201をマルチゲート構造とすることによりオフ電流値の低いスイッチング素子を実現している。
【0049】
また、活性層は結晶構造を含む半導体膜で形成される。即ち、単結晶半導体膜でも良いし、多結晶半導体膜や微結晶半導体膜でも良い。また、ゲート絶縁膜18は珪素を含む絶縁膜で形成すれば良い。また、ゲート電極、ソース配線若しくはドレイン配線としてはあらゆる導電膜を用いることができる。
【0050】
さらに、スイッチング用TFT201においては、LDD領域15a〜15dは、ゲート絶縁膜18を挟んでゲート電極19a、19bと重ならないように設ける。このような構造はオフ電流値を低減する上で非常に効果的である。
【0051】
なお、チャネル形成領域とLDD領域との間にオフセット領域(チャネル形成領域と同一組成の半導体層でなり、ゲート電圧が印加されない領域)を設けることはオフ電流値を下げる上でさらに好ましい。また、二つ以上のゲート電極を有するマルチゲート構造の場合、チャネル形成領域の間に設けられた高濃度不純物領域がオフ電流値の低減に効果的である。
【0052】
次に、電流制御用TFT202は、ソース領域31、ドレイン領域32及びチャネル形成領域34を含む活性層、ゲート絶縁膜18、ゲート電極35、第1層間絶縁膜20、ソース配線36並びにドレイン配線37を有して形成される。なお、ゲート電極35はシングルゲート構造となっているが、マルチゲート構造であっても良い。
【0053】
図2に示すように、スイッチング用TFTのドレインは電流制御用TFT202のゲートに接続されている。具体的には電流制御用TFT202のゲート電極35はスイッチング用TFT201のドレイン領域14とドレイン配線(接続配線とも言える)22を介して電気的に接続されている。また、ソース配線36は電源供給線212に接続される。
【0054】
電流制御用TFT202はEL素子203に注入される電流量を制御するための素子であるが、EL素子の劣化を考慮するとあまり多くの電流を流すことは好ましくない。そのため、電流制御用TFT202に過剰な電流が流れないように、チャネル長(L)は長めに設計することが好ましい。望ましくは一画素あたり0.5〜2μA(好ましくは1〜1.5μA)となるようにする。
【0055】
また、スイッチング用TFT201に形成されるLDD領域の長さ(幅)は0.5〜3.5μm、代表的には2.0〜2.5μmとすれば良い。
【0056】
また、図3に示すように電流制御用TFT3503のゲート電極35を含む配線36は、3504で示される領域で電流制御用TFT3503のドレイン配線37と絶縁膜を挟んで重なる。このとき3504で示される領域では、保持容量(コンデンサ)が形成される。保持容量3504は電源供給線212と電気的に接続された半導体膜3520、ゲート絶縁膜と同一層の絶縁膜(図示せず)及び電源供給線212で形成される容量も保持容量として用いることが可能である。
この保持容量3504は、電流制御用TFT3503のゲート電極35にかかる電圧を保持するためのコンデンサとして機能する。
【0057】
また、流しうる電流量を多くするという観点から見れば、電流制御用TFT202の活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を厚くする(好ましくは50〜100nm、さらに好ましくは60〜80nm)ことも有効である。逆に、スイッチング用TFT201の場合はオフ電流値を小さくするという観点から見れば、活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を薄くする(好ましくは20〜50nm、さらに好ましくは25〜40nm)ことも有効である。
【0058】
次に、38は第1パッシベーション膜であり、膜厚は10nm〜1μm(好ましくは200〜500nm)とすれば良い。材料としては、珪素を含む絶縁膜(特に窒化酸化珪素膜又は窒化珪素膜が好ましい)を用いることができる。
【0059】
第1パッシベーション膜38の上には、各TFTを覆うような形で第2層間絶縁膜(平坦化膜と言っても良い)39を形成し、TFTによってできる段差の平坦化を行う。第2層間絶縁膜39としては、有機樹脂膜が好ましく、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)等を用いると良い。勿論、十分な平坦化が可能であれば、無機膜を用いても良い。
【0060】
第2層間絶縁膜39によってTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成されるEL層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、EL層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0061】
また、40は透明導電膜からなる画素電極(EL素子の陽極に相当する)であり、第2層間絶縁膜39及び第1パッシベーション膜38にコンタクトホール(開孔)を開けた後、形成された開孔部において電流制御用TFT202のドレイン配線37に接続されるように形成される。
【0062】
本実施形態では、画素電極として酸化インジウムと酸化スズの化合物からなる導電膜を用いる。また、これに少量のガリウムを添加しても良い。さらに酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることもできる。
【0063】
画素電極を形成したら、樹脂材料からなるバンク41aおよび41bを形成する。バンク41aおよび41bは1〜2μm厚のアクリル膜またはポリイミド膜をパターニングして形成すれば良い。このバンク41aおよび41bは、画素と画素との間にストライプ状に形成される。本実施例ではソース配線21に沿って形成するがゲート配線35に沿って形成しても良い。
【0064】
次にEL層42が図1で説明したような薄膜形成装置により形成される。なお、ここでは一画素しか図示していないが、図1で説明したようにR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層が同時に形成される。EL層とする有機EL材料としてはポリマー系材料を用いる。代表的なポリマー系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系、ポリビニルカルバゾール(PVK)
系、ポリフルオレン系などが挙げられる。
【0065】
なお、PPV系有機EL材料としては様々な型のものがあるが、例えば以下のような分子式が発表されている。
(「H. Shenk,H.Becker,O.Gelsen,E.Kluge,W.Kreuder,and H.Spreitzer,“Polymers for Light Emitting Diodes”,Euro Display,Proceedings,1999,p.33-37」)
【0066】
【化1】
【0067】
【化2】
【0068】
また、特開平10−92576号公報に記載された分子式のポリフェニルビニルを用いることもできる。分子式は以下のようになる。
【0069】
【化3】
【0070】
【化4】
【0071】
また、PVK系有機EL材料としては以下のような分子式がある。
【0072】
【化5】
【0073】
ポリマー系有機EL材料はポリマーの状態で溶媒に溶かして塗布することもできるし、モノマーの状態で溶媒に溶かして塗布した後に重合することもできる。
モノマーの状態で塗布した場合、まずポリマー前駆体が形成され、真空中で加熱することにより重合してポリマーになる。
【0074】
具体的なEL層としては、赤色に発光するEL層にはシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層にはポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層にはポリフェニレンビニレン若しくはポリアルキルフェニレンを用いれば良い。膜厚は30〜150nm(好ましくは40〜100nm)とすれば良い。
【0075】
但し、以上の例は本発明のEL層として用いることのできる有機EL材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。本発明では有機EL材料と溶媒との混合物を図1に示す方式により塗布して、溶媒を揮発させて除去することによりEL層を形成する。従って、溶媒を揮発させる際にEL層のガラス転移温度を超えない組み合わせであれば如何なる有機EL材料を用いても良い。
【0076】
また、代表的な溶媒としてはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロフォルム、ジクロロメタン、γブチルラクトン、ブチルセルソルブ、シクロヘキサン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、シクロヘキサノン、ジオキサンまたは、THF(テトラヒドロフラン)が挙げられる。
【0077】
さらに、EL層42を形成する際、EL層は水分や酸素の存在によって容易に劣化してしまうため、処理雰囲気は水分や酸素の少ない雰囲気とし、窒素やアルゴンといった不活性ガス中で行うことが望ましい。さらに処理雰囲気としては、塗布液の蒸発速度を制御できることから塗布液作製に用いた溶媒雰囲気にするのも良い。なお、これらを実施するためには、図1の薄膜形成装置を、不活性ガスを充填したクリーンブースに設置し、その雰囲気中で発光層の成膜工程を行うことが望ましい。
【0078】
以上のようにしてEL層42を形成したら、次に遮光性導電膜からなる陰極43、保護電極44及び第2パッシベーション膜45が形成される。本実施形態では陰極43として、MgAgからなる導電膜を用い、保護電極44としてアルミニウムからなる導電膜を用いる。また、第2パッシベーション膜45としては、10nm〜1μm(好ましくは200〜500nm)の厚さの窒化珪素膜を用いる。
【0079】
なお、上述のようにEL層は熱に弱いので、陰極43及び第2パッシベーション膜45はなるべく低温(好ましくは室温から120℃までの温度範囲)で成膜するのが望ましい。従って、プラズマCVD法、真空蒸着法又は溶液塗布法(スピンコート法)が望ましい成膜方法と言える。
【0080】
ここまで完成したものをアクティブマトリクス基板とよび、アクティブマトリクス基板に対向して、対向基板(図示せず)が設けられる。本実施形態では対向基板としてガラス基板を用いる。なお、対向基板としては、プラスチックやセラミックスからなる基板を用いても良い。
【0081】
また、アクティブマトリクス基板と対向基板はシール剤(図示せず)によって接着され、密閉空間(図示せず)が形成される。本実施形態では、密閉空間をアルゴンガスで充填している。勿論、この密閉空間内に酸化バリウムといった乾燥剤を配置したり酸化防止剤を配置することも可能である。
【実施例1】
【0082】
本発明の実施例における画素部とその周辺に設けられる駆動回路部のTFTを同時に作製する方法について図4〜図6を用いて説明する。但し、説明を簡単にするために、駆動回路に関しては基本回路であるCMOS回路を図示することとする。
【0083】
まず、図4(A)に示すように、ガラス基板300上に下地膜301を300nmの厚さに形成する。本実施例では下地膜301として100nm厚の窒化酸化珪素膜と200nmの窒化酸化珪素膜とを積層して用いる。この時、ガラス基板300に接する方の窒素濃度を10〜25wt%としておくと良い。もちろん下地膜を設けずに石英基板上に直接素子を形成しても良い。
【0084】
次に下地膜301の上に50nmの厚さの非晶質珪素膜(図示せず))を公知の成膜法で形成する。なお、非晶質珪素膜に限定する必要はなく、非晶質構造を含む半導体膜(微結晶半導体膜を含む)であれば良い。さらに非晶質シリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を含む化合物半導体膜でも良い。また、膜厚は20〜100nmの厚さであれば良い。
【0085】
そして、公知の技術により非晶質珪素膜を結晶化し、結晶質珪素膜(多結晶シリコン膜若しくはポリシリコン膜ともいう)302を形成する。公知の結晶化方法としては、電熱炉を使用した熱結晶化方法、レーザー光を用いたレーザーアニール結晶化法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法がある。本実施例では、XeClガスを用いたエキシマレーザー光を用いて結晶化する。
【0086】
なお、本実施例では線状に加工したパルス発振型のエキシマレーザー光を用いるが、矩形であっても良いし、連続発振型のアルゴンレーザー光や連続発振型のエキシマレーザー光を用いることもできる。
【0087】
本実施例では結晶質珪素膜をTFTの活性層として用いるが、非晶質珪素膜を用いることも可能である。また、オフ電流を低減する必要のあるスイッチング用TFTの活性層を非晶質珪素膜で形成し、電流制御用TFTの活性層を結晶質珪素膜で形成することも可能である。非晶質珪素膜はキャリア移動度が低いため電流を流しにくくオフ電流が流れにくい。即ち、電流を流しにくい非晶質珪素膜と電流を流しやすい結晶質珪素膜の両者の利点を生かすことができる。
【0088】
次に、図4(B)に示すように、結晶質珪素膜302上に酸化珪素膜からなる保護膜303を130nmの厚さに形成する。この厚さは100〜200nm(好ましくは130〜170nm)の範囲で選べば良い。また、珪素を含む絶縁膜であれば他の膜でも良い。この保護膜303は不純物を添加する際に結晶質珪素膜が直接プラズマに曝されないようにするためと、微妙な濃度制御を可能にするために設ける。
【0089】
そして、その上にレジストマスク304a、304bを形成し、保護膜303を介してn型を付与する不純物元素(以下、n型不純物元素という)を添加する。
なお、n型不純物元素としては、代表的には15族に属する元素、典型的にはリン又は砒素を用いることができる。なお、本実施例ではホスフィン(PH3)を質量分離しないでプラズマ励起したプラズマ(イオン)ドーピング法を用い、リンを1×1018atoms/cm3の濃度で添加する。勿論、質量分離を行うイオンインプランテーション法を用いても良い。
【0090】
この工程により形成されるn型不純物領域305には、n型不純物元素が2×1016〜5×1019atoms/cm3(代表的には5×1017〜5×1018atoms/cm3)
の濃度で含まれるようにドーズ量を調節する。
【0091】
次に、図4(C)に示すように、保護膜303およびレジスト304a、304bを除去し、添加した15族に属する元素の活性化を行う。活性化手段は公知の技術を用いれば良いが、本実施例ではエキシマレーザー光の照射により活性化する。勿論、パルス発振型でも連続発振型でも良いし、エキシマレーザー光に限定する必要はない。但し、添加された不純物元素の活性化が目的であるので、結晶質珪素膜が溶融しない程度のエネルギーで照射することが好ましい。なお、保護膜303をつけたままレーザー光を照射しても良い。
【0092】
なお、このレーザー光による不純物元素の活性化に際して、熱処理による活性化を併用しても構わない。熱処理による活性化を行う場合は、基板の耐熱性を考慮して450〜550℃程度の熱処理を行えば良い。
【0093】
この工程によりn型不純物領域305の端部、即ち、n型不純物領域305、の周囲に存在するn型不純物元素を添加していない領域との境界部(接合部)が明確になる。このことは、後にTFTが完成した時点において、LDD領域とチャネル形成領域とが非常に良好な接合部を形成しうることを意味する。
【0094】
次に、図4(D)に示すように、結晶質珪素膜の不要な部分を除去して、島状の半導体膜(以下、活性層という)306〜309を形成する。
【0095】
次に、図4(E)に示すように、活性層306〜309を覆ってゲート絶縁膜310を形成する。ゲート絶縁膜310としては、10〜200nm、好ましくは50〜150nmの厚さの珪素を含む絶縁膜を用いれば良い。これは単層構造でも積層構造でも良い。本実施例では110nm厚の窒化酸化珪素膜を用いる。
【0096】
次に、200〜400nm厚の導電膜を形成し、パターニングしてゲート電極311〜315を形成する。このゲート電極311〜315の端部をテーパー状にすることもできる。なお、本実施例ではゲート電極と、ゲート電極に電気的に接続された引き回しのための配線(以下、ゲート配線という)とを別の材料で形成する。具体的にはゲート電極よりも低抵抗な材料をゲート配線として用いる。
これは、ゲート電極としては微細加工が可能な材料を用い、ゲート配線には微細加工はできなくとも配線抵抗が小さい材料を用いるためである。勿論、ゲート電極とゲート配線とを同一材料で形成しても構わない。
【0097】
また、ゲート電極は単層の導電膜で形成しても良いが、必要に応じて二層、三層といった積層膜とすることが好ましい。ゲート電極の材料としては公知のあらゆる導電膜を用いることができる。ただし、上述のように微細加工が可能、具体的には2μm以下の線幅にパターニング可能な材料が好ましい。
【0098】
代表的には、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、シリコン(Si)から選ばれた元素からなる膜、または前記元素の窒化物膜(代表的には窒化タンタル膜、窒化タングステン膜、窒化チタン膜)、または前記元素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金、Mo−Ta合金)、または前記元素のシリサイド膜(代表的にはタングステンシリサイド膜、チタンシリサイド膜)を用いることができる。勿論、単層で用いても積層して用いても良い。
【0099】
本実施例では、50nm厚の窒化タンタル(TaN)膜と、350nm厚のタンタル(Ta)膜とからなる積層膜を用いる。これはスパッタ法で形成すれば良い。また、スパッタガスとしてXe、Ne等の不活性ガスを添加すると応力による膜はがれを防止することができる。
【0100】
またこの時、ゲート電極312はn型不純物領域305の一部とゲート絶縁膜310を挟んで重なるように形成する。この重なった部分が後にゲート電極と重なったLDD領域となる。なお、ゲート電極313,314は、断面では、二つに見えるが実際には電気的に接続されている。
【0101】
次に、図5(A)に示すように、ゲート電極311〜315をマスクとして自己整合的にn型不純物元素(本実施例ではリン)を添加する。こうして形成される不純物領域316〜323にはn型不純物領域305の1/2〜1/10(代表的には1/3〜1/4)の濃度でリンが添加されるように調節する。具体的には、1×1016〜5×1018atoms/cm3(典型的には3×1017〜3×1018atoms/cm3)の濃度が好ましい。
【0102】
次に、図5(B)に示すように、ゲート電極等を覆う形でレジストマスク324a〜324dを形成し、n型不純物元素(本実施例ではリン)を添加して高濃度にリンを含む不純物領域325〜329を形成する。ここでもホスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法で行い、この領域のリンの濃度は1×1020〜1×1021atoms/cm3(代表的には2×1020〜5×1021atoms/cm3)となるように調節する。
【0103】
この工程によってnチャネル型TFTのソース領域若しくはドレイン領域が形成されるが、スイッチング用TFTでは、図5(A)の工程で形成したn型不純物領域319〜321の一部を残す。この残された領域が、図2におけるスイッチング用TFT201のLDD領域15a〜15dに対応する。
【0104】
次に、図5(C)に示すように、レジストマスク324a〜324dを除去し、新たにレジストマスク332を形成する。そして、p型不純物元素(本実施例ではボロン)を添加し、高濃度にボロンを含む不純物領域333〜336を形成する。ここではジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法により3×1020〜3×1021atoms/cm3(代表的には5×1020〜1×1021atoms/cm3ノ)濃度となるようにボロンを添加する。
【0105】
なお、不純物領域333〜336には既に1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度でリンが添加されているが、ここで添加されるボロンはその少なくとも3倍以上の濃度で添加される。そのため、予め形成されていたn型の不純物領域は完全にp型に反転し、p型の不純物領域として機能する。
【0106】
次に、レジストマスク332を除去した後、それぞれの濃度で添加されたn型またはp型不純物元素を活性化する。活性化手段としては、ファーネスアニール法、レーザーアニール法、またはランプアニール法で行うことができる。本実施例では電熱炉において窒素雰囲気中、550℃、4時間の熱処理を行う。
【0107】
このとき雰囲気中の酸素を極力排除することが重要である。なぜならば酸素が少しでも存在していると露呈したゲート電極の表面が酸化され、抵抗の増加を招くと共に後にオーミックコンタクトを取りにくくなるからである。従って、上記活性化工程における処理雰囲気中の酸素濃度は1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下とすることが望ましい。
【0108】
次に、活性化工程が終了したら図5(D)に示すように300nm厚のゲート配線337を形成する。ゲート配線337の材料としては、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)を主成分(組成として50〜100%を占める。)とする金属を用いれば良い。配置としては図3のようにゲート配線211とスイッチング用TFTのゲート電極19a、19b(図4(E)の313、314)が電気的に接続するように形成する。
【0109】
このような構造とすることでゲート配線の配線抵抗を非常に小さくすることができるため、面積の大きい画像表示領域(画素部)を形成することができる。即ち、画面の大きさが対角10インチ以上(さらには30インチ以上)の自発光装置を実現する上で、本実施例の画素構造は極めて有効である。
【0110】
次に、図6(A)に示すように、第1層間絶縁膜338を形成する。第1層間絶縁膜338としては、珪素を含む絶縁膜を単層で用いるか、2種類以上の珪素を含む絶縁膜を組み合わせた積層膜を用いれば良い。また、膜厚は400nm〜1.5μmとすれば良い。本実施例では、200nm厚の窒化酸化珪素膜の上に800nm厚の酸化珪素膜を積層した構造とする。
【0111】
さらに、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行い、水素化処理をする。この工程は熱的に励起された水素により半導体膜の不対結合手を水素終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマ化して生成された水素を用いる)を行っても良い。
【0112】
なお、水素化処理は第1層間絶縁膜338を形成する間に入れても良い。即ち、200nm厚の窒化酸化珪素膜を形成した後で上記のように水素化処理を行い、その後で残り800nm厚の酸化珪素膜を形成してもよい。
【0113】
次に、第1層間絶縁膜338及びゲート絶縁膜310に対してコンタクトホールを形成し、ソース配線339〜342と、ドレイン配線343〜345を形成する。なお、本実施例ではこの電極を、Ti膜を100nm、Tiを含むアルミニウム膜を300nm、Ti膜150nmをスパッタ法で連続形成した3層構造の積層膜とする。勿論、他の導電膜でも良い。
【0114】
次に、50〜500nm(代表的には200〜300nm)の厚さで第1パッシベーション膜346を形成する。本実施例では第1パッシベーション膜346として300nm厚の窒化酸化珪素膜を用いる。これは窒化珪素膜で代用しても良い。
【0115】
なお、窒化酸化珪素膜の形成に先立ってH2、NH3等水素を含むガスを用いてプラズマ処理を行うことは有効である。この前処理により励起された水素が第1層間絶縁膜338に供給され、熱処理を行うことで、第1パッシベーション膜346の膜質が改善される。それと同時に、第1層間絶縁膜338に添加された水素が下層側に拡散するため、効果的に活性層を水素化することができる。
【0116】
次に、図6(B)に示すように有機樹脂からなる第2層間絶縁膜347を形成する。有機樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)等を使用することができる。特に、第2層間絶縁膜347は平坦化の意味合いが強いので、平坦性に優れたアクリルが好ましい。本実施例ではTFTによって形成される段差を十分に平坦化しうる膜厚でアクリル膜を形成する。好ましくは1〜5μm(さらに好ましくは2〜4μm)とすれば良い。
【0117】
次に、第2層間絶縁膜347及び第1パッシベーション膜346に対してコンタクトホールを形成し、ドレイン配線345と電気的に接続される画素電極348を形成する。本実施例では酸化インジウム・スズ(ITO)膜を110nmの厚さに形成し、パターニングを行って画素電極とする。また、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いても良い。この画素電極がEL素子の陽極となる。
【0118】
次に、図6(C)に示すように、樹脂材料からなるバンク349を形成する。
バンク349は1〜2μm厚のアクリル膜またはポリイミド膜をパターニングして形成すれば良い。このバンク349は図3に示したように、画素と画素との間にストライプ状に形成される。本実施例ではソース配線341に沿って形成するがゲート配線337に沿って形成しても良い。
【0119】
次に、EL層350を、図1を用いて説明した薄膜形成装置を用いた成膜工程により形成する。具体的には、EL層350となる有機EL材料をクロロフォルム、ジクロロメタン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンといった溶媒に溶かして塗布し、その後、熱処理を行うことにより溶媒を揮発させる。こうして有機EL材料からなる被膜(EL層)が形成される。
【0120】
なお、本実施例では一画素しか図示されていないが、このとき同時に赤色に発光するEL層、緑色に発光するEL層及び青色に発光するEL層が形成される。
本実施例では、赤色に発光するEL層としてシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層としてポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層としてポリアルキルフェニレンを各々50nmの厚さに形成する。また、溶媒としては1,2−ジクロロメタンを用い、80〜150℃のホットプレートで1〜5分の熱処理を行って揮発させる。
【0121】
なお、EL層350としては公知の材料を用いることができる。公知の材料としては、駆動電圧を考慮すると有機材料を用いるのが好ましい。なお、本実施例ではEL層350を上記EL層のみの単層構造とするが、必要に応じて電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層もしくは正孔素子層を設けても良い。また、本実施例ではEL素子の陰極351としてMgAg電極を用いた例を示すが、公知の他の材料であっても良い。
【0122】
EL層350を形成した後、陰極(MgAg電極)351を真空蒸着法を用いて形成する。なお、EL層350の膜厚は80〜200nm(典型的には100〜120nm)、陰極351の厚さは180〜300nm(典型的には200〜250nm)とすれば良い。
【0123】
さらに、陰極351上には、保護電極352を設ける。保護電極352としてはアルミニウムを主成分とする導電膜を用いれば良い。保護電極352は、マスクを用いて真空蒸着法で形成すれば良い。
【0124】
最後に、窒化珪素膜からなる第2パッシベーション膜353を300nmの厚さに形成する。実際には保護電極352がEL層を水分等から保護する役割を果たすが、さらに第2パッシベーション膜353を形成しておくことで、EL素子の信頼性をさらに高めることができる。
【0125】
本実施例の場合、図6(C)に示すように、nチャネル型205の活性層は、ソース領域355、ドレイン領域356、LDD領域357及びチャネル形成領域358を含み、LDD領域357はゲート絶縁膜310を挟んでゲート電極312と重なっている。
【0126】
ドレイン領域側のみにLDD領域を形成しているのは、動作速度を落とさないための配慮である。また、このnチャネル型TFT205はオフ電流値をあまり気にする必要はなく、それよりも動作速度を重視した方が良い。従って、LDD領域357は完全にゲート電極に重ねてしまい、極力抵抗成分を少なくすることが望ましい。即ち、いわゆるオフセットはなくした方がよい。
【0127】
こうして図6(C)に示すような構造のアクティブマトリクス基板が完成する。なお、バンク349を形成した後、パッシベーション膜353を形成するまでの工程をマルチチャンバー方式(またはインライン方式)の薄膜形成装置を用いて、大気解放せずに連続的に処理することは有効である。
【0128】
ところで、本実施例のアクティブマトリクス基板は、画素部だけでなく駆動回路部にも最適な構造のTFTを配置することにより、非常に高い信頼性を示し、動作特性も向上しうる。
【0129】
まず、極力動作速度を落とさないようにホットキャリア注入を低減させる構造を有するTFTを、駆動回路部を形成するCMOS回路のnチャネル型TFT205として用いる。なお、ここでいう駆動回路としては、シフトレジスタ、バッファ、レベルシフタ、サンプリング回路(サンプル及びホールド回路)などが含まれる。デジタル駆動を行う場合には、D/Aコンバータなどの信号変換回路も含まれうる。
【0130】
なお、駆動回路の中でもサンプリング回路は他の回路と比べて少し特殊であり、チャネル形成領域を双方向に大電流が流れる。即ち、ソース領域とドレイン領域の役割が入れ替わるのである。さらに、オフ電流値を極力低く抑える必要があり、そういった意味でスイッチング用TFTと電流制御用TFTの中間程度の機能を有するTFTを配置することが望ましい。
【0131】
従って、サンプリング回路を形成するnチャネル型TFTは、図7に示すような構造のTFTを配置することが望ましい。図7に示すように、LDD領域901a、901bの一部がゲート絶縁膜902を介してゲート電極903と重なる。
この効果は電流を流した際に生じるホットキャリア注入に対する劣化対策であり、サンプリング回路の場合はチャネル形成領域904を挟む形で両側に設ける点が異なる。
【0132】
なお、実際には図6(C)まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性の高いガラス、石英、プラスチックといったハウジング材でパッケージング(封入)することが好ましい。その際、ハウジング材の内部に内部に酸化バリウムといった吸湿剤や酸化防止剤を配置するとよい。
【0133】
また、パッケージング等の処理により気密性を高めたら、基板上に形成された素子又は回路から引き回された端子と外部信号端子とを接続するためのコネクター(フレキシブルプリントサーキット:FPC)を取り付けて製品として完成する。このような出荷できる状態にまでした状態を本明細書中では自発光装置(またはELモジュール)をという。
【0134】
ここで本実施例のアクティブマトリクス型自発光装置の構成を図8の斜視図を用いて説明する。本実施例のアクティブマトリクス型自発光装置は、ガラス基板601上に形成された、画素部602と、ゲート側駆動回路603と、ソース側駆動回路604を含む。画素部のスイッチング用TFT605はnチャネル型TFTであり、ゲート側駆動回路603に接続されたゲート配線606、ソース側駆動回路604に接続されたソース配線607の交点に配置されている。また、スイッチング用TFT605のドレインは電流制御用TFT608のゲートに接続されている。
【0135】
さらに、電流制御用TFT608のソース側は電源供給線609に接続される。本実施例のような構造では、電源供給線609には接地電位(アース電位)が与えられている。また、電流制御用TFT608のドレインにはEL素子610が接続されている。また、このEL素子610の陽極には所定の電圧(3〜12V、好ましくは3〜5V)が加えられる。
【0136】
そして、外部入出力端子となるFPC611には駆動回路部まで信号を伝達するための接続配線612、613、及び電源供給線609に接続された接続配線614が設けられている。
【0137】
また、図8に示した自発光装置の回路構成の一例を図9に示す。本実施例の自発光装置は、ソース側駆動回路801、ゲート側駆動回路(A)807、ゲート側駆動回路(B)811、画素部806を有している。なお、本明細書中において、駆動回路部とはソース側処理回路およびゲート側駆動回路を含めた総称である。
【0138】
ソース側駆動回路801は、シフトレジスタ802、レベルシフタ803、バッファ804、サンプリング回路(サンプル及びホールド回路)805を備えている。また、ゲート側駆動回路(A)807は、シフトレジスタ808、レベルシフタ809、バッファ810を備えている。ゲート側駆動回路(B)811も同様な構成である。
【0139】
ここでシフトレジスタ802、808は駆動電圧が5〜16V(代表的には10V)であり、回路を形成するCMOS回路に使われるnチャネル型TFTは図6(C)の205で示される構造が適している。
【0140】
また、レベルシフタ803、809、バッファ804、810はシフトレジスタと同様に、図6(C)のnチャネル型TFT205を含むCMOS回路が適している。なお、ゲート配線をダブルゲート構造、トリプルゲート構造といったマルチゲート構造とすることは、各回路の信頼性を向上させる上で有効である。
【0141】
また、サンプリング回路805はソース領域とドレイン領域が反転する上、オフ電流値を低減する必要があるので、図7のnチャネル型TFT208を含むCMOS回路が適している。
【0142】
また、画素部806は図2に示した構造の画素を配置する。
【0143】
なお、上記構成は、図4〜6に示した作製工程に従ってTFTを作製することによって容易に実現することができる。また、本実施例では画素部と駆動回路部の構成のみ示しているが、本実施例の作製工程に従えば、その他にも信号分割回路、D/Aコンバータ回路、オペアンプ回路、γ補正回路など駆動回路以外の論理回路を同一基板上に形成することが可能であり、さらにはメモリ部やマイクロプロセッサ等を形成しうると考えている。
【0144】
さらに、ハウジング材をも含めた本実施例のELモジュールについて図10(A)、(B)を用いて説明する。なお、必要に応じて図8、図9で用いた符号を引用することにする。
【0145】
図10(A)は、図8に示した状態にシーリング構造を設けた状態を示す上面図である。点線で示された602は画素部、603はゲート側駆動回路、604はソース側駆動回路である。本発明のシーリング構造は、図8の状態に対して充填材(図示せず)、ハウジング材1101、シール材(図示せず)及びフレーム材1102を設けた構造である。
【0146】
ここで、図10(A)をA−A’で切断した断面図を図10(B)に示す。なお、図10(A)、(B)では同一の部位に同一の符号を用いている。
【0147】
図10(B)に示すように、基板601上には画素部602、ゲート側駆動回路603が形成されており、画素部602は電流制御用TFT202とそれに電気的に接続された画素電極348を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路603はnチャネル型TFT205とpチャネル型TFT206とを相補的に組み合わせたCMOS回路を用いて形成される。
【0148】
画素電極348はEL素子の陽極として機能する。また、画素電極348の両端にはバンク349が形成され、バンク349の内側にEL層350、陰極351が形成される。また、その上には保護電極352、第2パッシベーション膜353が形成される。勿論、発明の実施の形態にも述べたようにEL素子の構造を反対とし、画素電極を陰極としても構わない。
【0149】
本実施例の場合、保護電極352は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線612を経由してFPC611に電気的に接続されている。さらに、画素部602及びゲート側駆動回路603に含まれる素子は全て第2パッシベーション膜353で覆われている。この第2パッシベーション膜353は省略することも可能であるが、各素子を外部と遮断する上で設けた方が好ましい。
【0150】
次に、EL素子を覆うようにして充填材1103を設ける。この充填材1103はハウジング材1101を接着するための接着剤としても機能する。充填材1103としては、PVC(ポリビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)
を用いることができる。この充填材1103の内部に乾燥剤(図示せず)を設けておくと、吸湿効果を保ち続けられるので好ましい。このとき、乾燥剤は充填材に添加されたものであっても良いし、充填材に封入されたものであっても良い。
また、上述した充填材の代わりに不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の他、不活性液体(パーフルオロアルカンに代表されるのは、液状フッ素化炭素等である)を充填させてもよい。
【0151】
また、本実施例ではハウジング材1101としては、ガラス、プラスチック、およびセラミックスからなる材料を用いることができる。なお、充填材1103の内部に予め酸化バリウム等の吸湿剤を添加しておくことは有効である。
【0152】
次に、充填材1103を用いてハウジング材1101を接着した後、充填材1103の側面(露呈面)を覆うようにフレーム材1102を取り付ける。フレーム材1102はシール材(接着剤として機能する)1104によって接着される。このとき、シール材1104としては、光硬化性樹脂を用いるのが好ましいが、EL層の耐熱性が許せば熱硬化性樹脂を用いても良い。なお、シール材1104はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、シール材1104の内部に乾燥剤を添加してあっても良い。
【0153】
以上のような方式を用いてEL素子を充填材1103に封入することにより、EL素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い自発光装置を作製することができる。なお、本実施例において、赤色、緑色または青色に発光する三種類のストライプ状のEL層を同時に縦方向または横方向に形成する例を示したがストライプ状のEL層を長手方向において複数に分割して形成しても良い。
【0154】
また、本実施例では赤色に発光するEL層、緑色に発光するEL層、青色に発光するEL層の全てを図1の薄膜形成装置を用いて形成する例を示しているが、図1の薄膜形成装置を用いるEL層は赤色用、緑色用または青色用の少なくとも一つであっても良い。
【実施例2】
【0155】
次に、図2において説明した画素部におけるコンタクト構造に改良を加える際の作製方法について図11の断面図を用いて説明する。なお、図11における番号は、図2における番号に対応している。本実施例1の工程に従って、図11(A)に示すようにEL素子を構成する画素電極(陽極)40が設けられている状態を得る。
【0156】
次に画素電極上のコンタクト部1900をアクリルで埋め、図11(B)に示すようにコンタクトホール保護部1901を設ける。ここでは、アクリルをスピンコート法により成膜し、レジストマスクを用いて露光した後、エッチングを行うことにより図11(B)に示すようなコンタクトホール保護部1901を形成させる。
【0157】
なお、コンタクトホール保護部1901は、断面から見て画素電極よりも盛り上がっている部分(図11(B)のDaに示す部分)の厚さが0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmとなるのがよい。コンタクトホール保護部1901が形成されると、図11(C)に示すようにEL層42が形成され、さらに陰極43が形成される。EL層42及び陰極43の作製方法は、実施例1と同様の方法を用いればよい。
【0158】
また、コンタクトホール保護部1901には、有機樹脂が好ましく、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)といった材料を用いると良い。また、これらの有機樹脂を用いる際には、粘度を10-3Pa・s〜10-1Pa・sとするとよい。
【0159】
以上のようにして図11(C)に示す様な構造とすることで、コンタクトホールの段差部分で、EL層42が切断された際に生じる画素電極40と陰極43間での短絡の問題を解決することができる。また、図11で示した画素部の上面図を図12に示す。なお、図12で使用される番号は、図11の番号と一致しており、本実施例で示したコンタクトホール保護部1901は上面図で見ると図12の1901で示される位置にあたる。
【0160】
また、本実施例の構成は、実施例1の構成と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0161】
実施例1では、本発明を実施する上でEL層を形成する際に、塗布液が加圧されることにより各ノズルから塗布液が画素部に吐出される加圧タイプの塗布方法を用いた。本実施例では、塗布方法として各ノズルが一本の管からなる柔軟で微細な接触子からなり、この接触子が画素部のバンクに接触することにより塗布液が画素部に吐出されるという毛管現象を利用した万年筆タイプの塗布方法を用いた例を示す。
【0162】
図13(A)に示すように、基板110上にはTFTによって画素部111、ソース側駆動回路112、ゲート側駆動回路113が形成され、画素部111はバンク121によってストライプ状に分割されている。
【0163】
本実施例では、図13の薄膜形成装置を用いてEL層として機能する有機EL材料の成膜工程を行う。ヘッド部124には、赤色用ノズル125a、緑色用ノズル125b、青色用ノズル125cが取り付けられている。これらのノズルの先端には、管状の部品がついており、これを本明細書中では、接触子と呼ぶ。なお、赤色用ノズル125a、緑色用ノズル125b、青色用ノズル125cに取り付けられている接触子をそれぞれ接触子129a、接触子129b、接触子129cとよぶ。
【0164】
この接触子は、シリコン、ゲルマニウムといった半導体材料、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスといった金属、ゴム、テフロン(登録商標)、ガラスやプラスチックでできている。そして、接触子の一端がバンクに接触することにより毛管現象でノズル中の塗布液が注入される。なお、各々のノズルの内部には赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが蓄えられている。取り付けられたノズルよって同時に赤色用塗布液114a、緑色用塗布液114b及び青色用塗布液114cを塗り分ける。
【0165】
さらに、ヘッド部124には、超音波振動子122が取り付けられており、また、各ノズル125a、125b、125cには、ヒーター123a、123b、123cがそれぞれ取り付けられている。この超音波振動子及びヒーターは、本明細書中の本実施の形態で示すように塗布液を塗布しやすくするために設けられている。
【0166】
本実施例における特徴は、塗布する位置を一度決めれば、バンク121に沿って塗布液が塗布されるため塗布位置がずれにくいという点にある。
【0167】
また、本実施例においては、ヘッド部124がaで示される方向に移動するのに伴って塗布液が塗布されるだけでなく、毛管現象によっても塗布液が塗布面に広がるのでより均一に効率よく塗布液を塗布することができる。この動作を繰り返して画素部に塗布液を塗布していき、その後、熱処理により溶媒を揮発させて有機EL材料を形成する。
【0168】
なお、本実施例は実施例1で説明した自発光装置の作製に用いることが可能である。バンク121はパターニングによりストライプ状に形成すればよいし、ヘッド部124の動作は電気的に制御すれば良い。なお、バンク121をマトリクス状に形成して画素部を塗布することも可能である。
【0169】
本実施例で示した、万年筆タイプの塗布例に関してノズル部分の構造を変えることにより塗布方法を改良した例を図14に示す。
【0170】
ヘッド部127には、各ノズル125a、125b、125cがそれぞれ取り付けられており、これらのノズルはいずれも図13で示したものと同様に一本の管でなり柔軟で微細な接触子からなる。しかし、ここでは、接触子はバンクと接触しないところに位置している。なお、図14に示されているノズルには、図14(B)に示すように液吸い取り管126a、126b、126cがそれぞれ取り付けられている。つまりそれぞれの接触子の外側に二重になるように液吸い取り管が126a、126b、126cがそれぞれ取り付けられている。
【0171】
この液吸い取り管の役割を図14(C)を用いて説明する。なお、図14(C)は、図14(B)の128の拡大図である。
【0172】
本実施例における塗布液114aは、塗布すべき画素部において画素電極もしくは、すでに塗布された塗布液と接触した際に毛管現象により吐出される。
さらに、塗布液114aは、ノズル125aから矢印bの方向へかけられる圧力や塗布液の重力により吐出が補助される。
【0173】
しかし、吐出される瞬間に表面張力により矢印cの方向へ塗布液が広がってしまい液切れが悪くなる。そこで、広がった塗布液を矢印cの方向に吸い取るための液吸い取り管126aを設ける。
【0174】
液吸い取り管126aを設けることで働く吸引力により吐出部に滞留している余分な塗布液を取り除くことができ、液切れの悪さが改善される。また、吐出される瞬間の塗布液の大きさをすることもでき、さらに吐出部の液詰まりを防止するのに効果的である。
【0175】
また、ノズルの管の外側先端部は、吸い取られた液が液吸い取り管に取り込まれやすくするために濡れ性を高めておくと良い。
【0176】
なお、本実施例において、各液吸い取り管から吸い取られた塗布液は、全て接続されているヘッド部127に回収される。なお、ヘッド部127は外部のポンプ(図示せず)に接続されていることから、ヘッド部に回収された塗布液はポンプにより吸引される。
【実施例4】
【0177】
本実施例は、EL層を形成する際にEL層用の塗布液を荷電粒子とし、これに電圧をかけることにより制御して、画素部に塗布液を塗布するという電着タイプの塗布例を図15に示す。なお、図15(A)は本実施例のモデル図であり、図15(B)は、本実施例を実施した例を示す。図15(A)(B)において、いずれも矢印kの方向に塗布液が塗布されている。
【0178】
図15(A)に示すように基板1801上には、バンク1802が設けられている。次にEL層用の塗布液として有機EL材料を、溶媒に溶解させる。なお、本実施例では、有機EL材料として、赤色EL層としてシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層として、ポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層としてはポリアルキルフェニレンを用い、溶媒としては、トルエンやN−メチルピロリドンを用いる。
【0179】
なお、溶媒の有機EL材料に対する溶解度を高めるためにアルコールや界面活性剤を混合させても良い。
【0180】
次にEL層用の塗布液をノズル1804で、超音波振動もしくは温度をかけることによりノズルから取り出しやすい霧状の粒子にする。ノズル1804および引き出し電極1805にはそれぞれ電圧がかけられていることから霧状の粒子は、引き出し電極1805によりノズル1804より荷電粒子として引き出される。
【0181】
なお、EL塗布液を荷電粒子として引き出しやすくするために、導電率の高い溶媒を用いて塗布液を作製すると良い。
【0182】
さらに引き出し電極1805により引き出された霧状の粒子は、加速電極1806により引き出された方向に(ノズル1804から基板1801の方向に)加速され、制御電極1807により荷電粒子の流れがコントロールされて最終的に基板1801上の画素部に電着される。
【0183】
本実施例では、ノズル1804から引き出し電極1805により荷電粒子が引き出された後、加速電極1806及び制御電極1807により荷電粒子がうまく基板上の画素に電着されるように補正されているが、電極は、必ずしも3つである必要はなく1つ以上であれば良い。
【0184】
また、ノズル1804には、ヒーター1808及び超音波振動子1809が設けられている。なお、ヒーター1808を設けて温度をかけたり、超音波振動子を設けて超音波振動を加えることにより有機EL材料をノズル1804から引き出しやすくなる。
【実施例5】
【0185】
図10(A)の向きに本発明のアクティブマトリクス型自発光装置を見た時、画素列は縦方向に形成しても良いし、横方向に形成しても良い。即ち、縦方向に画素列を形成した場合は、図16(A)のような配置となり、横方向に画素列を形成した場合は、図16(B)のような配置となる。
【0186】
図16(A)において、1401は縦方向にストライプ状に形成されたバンク、1402aは赤色に発光するEL層、1402bは緑色に発光するEL層である。勿論、緑色に発光するEL層1402bの隣には青色に発光するEL層(図示せず)が形成される。なお、バンク1401は絶縁膜を介したソース配線の上方に、ソース配線に沿って形成される。
【0187】
ここでいうEL層とは、EL層、電荷注入層、電荷輸送層等の発光に寄与する有機EL材料からなる層を指している。EL層単層とする場合もありうるが、例えば正孔注入層とEL層とを積層した場合はその積層膜をEL層と呼ぶ。
【0188】
このとき、点線で示される画素1403の相互の距離(D)は、EL層の膜厚(t)の5倍以上(好ましくは10倍以上)とすることが望ましい。これは、D<5tでは画素間でクロストークの問題が発生しうるからである。なお、距離(D)が離れすぎても高精細な画像が得られなくなるので、5t<D<50t(好ましくは10t<D<35t)とすることが好ましい。
【0189】
また、図16(B)において、1404は横方向にストライプ状に形成されたバンク、1405aは赤色に発光するEL層、1405bは緑色に発光するEL層である。1405cは緑色に発光するEL層である。なお、バンク1404は絶縁膜を介したゲート配線の上方に、ゲート配線に沿って形成される。
【0190】
この場合も点線で示される画素1406の相互の距離(D)は、EL層の膜厚(t)の5倍以上(好ましくは10倍以上)、さらに好ましくは5t<D<50t(好ましくは10t<D<35t)とすると良い。
【0191】
本実施例の構成は、実施例1〜3のいずれの構成と組み合わせて実施しても良い。本実施例のようにEL層を形成する塗布液を電気的に制御することで塗布位置の制御が可能となる。
【0192】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例4のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例6】
【0193】
本実施例では本発明をパッシブ型(単純マトリクス型)の自発光装置に用いた場合について説明する。説明には図17を用いる。図17において、1301はプラスチックからなる基板、1306は透明導電膜からなる陽極である。本実施例では、透明導電膜として酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を蒸着法により形成する。なお、図17では図示されていないが、複数本の陽極が紙面に垂直な方向へストライプ状に配列されている。
【0194】
また、ストライプ状に配列された陽極1302の間を埋めるようにバンク1303が形成される。バンク1303は陽極1302に沿って紙面に垂直な方向に形成されている。
【0195】
次に、ポリマー系有機EL材料からなるEL層1304a〜1304cが図1の薄膜形成装置を用いた成膜方法により形成される。勿論、1304aは赤色に発光するEL層、1304bは緑色に発光するEL層、1304cは青色に発光するEL層である。用いる有機EL材料は実施例1と同様のものを用いれば良い。これらのEL層はバンク1302によって形成された溝に沿って形成されるため、紙面に垂直な方向にストライプ状に配列される。
【0196】
その後、図17では図示されていないが、複数本の陰極及び保護電極が紙面に平行な方向が長手方向となり、且つ、陽極1302と直交するようにストライプ状に配列されている。なお、本実施例では、陰極1305は、MgAgからなり、保護電極1306はアルミニウム合金膜でなり、それぞれ蒸着法により形成される。また、図示されないが保護電極1306は所定の電圧が加えられるように、後にFPCが取り付けられる部分まで配線が引き出されている。
【0197】
また、ここでは図示していないが保護電極1306を形成したら、パッシベーション膜として窒化珪素膜を設けても良い。
【0198】
以上のようにして基板1301上にEL素子を形成する。なお、本実施例では下側の電極が透光性の陽極となっているため、EL層1304a〜1304cで発生した光は下面(基板1301)に放射される。しかしながら、EL素子の構造を反対にし、下側の電極を遮光性の陰極とすることもできる。その場合、EL層1304a〜1304cで発生した光は上面(基板1301とは反対側)に放射されることになる。
【0199】
次に、ハウジング材1307としてセラミックス基板を用意する。本実施例の構造では遮光性で良いのでセラミックス基板を用いたが、勿論、前述のようにEL素子の構造を反対にした場合、ハウジング材は透光性のほうが良いので、プラスチックやガラスからなる基板を用いるとよい。
【0200】
こうしてハウジング材1307を用意したら、乾燥剤(図示せず)として酸化バリウムを添加した充填材1308によりハウジング材1307を貼り合わせる。充填材1308としては、PVC(ポリビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。この充填材1308の内部に乾燥剤(図示せず)を設けておくと、吸湿効果を保ち続けられるので好ましい。このとき、乾燥剤は充填材に添加されたものであっても良いし、充填材に封入されたものであっても良い。また、上述した充填材の代わりに不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の他、不活性液体(パーフルオロアルカンに代表されるのは、液状フッ素化炭素等である)を充填させてもよい。
【0201】
その後、紫外線硬化樹脂からなるシール材1309を用いてフレーム材1310を取り付ける。本実施例ではフレーム材1310としてステンレス材を用いる。最後に異方導電性フィルム1311を介してFPC1312を取り付けてパッシブ型の自発光装置が完成する。
【0202】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例5のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例7】
【0203】
本発明を実施してアクティブマトリクス型の自発光装置を作製する際に、基板としてシリコン基板(シリコンウェハー)を用いることは有効である。基板としてシリコン基板を用いた場合、画素部に形成するスイッチング用素子や電流制御用素子または駆動回路部に形成する駆動用素子を、従来のICやLSIなどに用いられているMOSFETの作製技術を用いて作製することができる。
【0204】
MOSFETはICやLSIで実績があるように非常にばらつきの小さい回路を形成することが可能であり、特に電流値で階調表現を行うアナログ駆動のアクティブマトリクス型自発光装置には有効である。
【0205】
なお、シリコン基板は遮光性であるので、EL層からの光は基板とは反対側に放射されるような構造とする必要がある。本実施例の自発光装置は構造的には図10と似ているが、画素部602、駆動回路部603を形成するTFTの代わりにMOSFETを用いる点で異なる。
【0206】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例6のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例8】
【0207】
本発明を実施して形成された自発光装置は、自発光型であるため液晶表示装置に比べて明るい場所での視認性に優れ、しかも視野角が広い。従って、様々な電子機器の表示部として用いることができる。例えば、TV放送等を大画面で鑑賞するには対角30インチ以上(典型的には40インチ以上)のELディスプレイ(自発光装置を筐体に組み込んだディスプレイ)の表示部として本発明の自発光装置を用いるとよい。
【0208】
なお、ELディスプレイには、パソコン用ディスプレイ、TV放送受信用ディスプレイ、広告表示用ディスプレイ等の全ての情報表示用ディスプレイが含まれる。また、その他にも様々な電子機器の表示部として本発明の自発光装置を用いることができる。
【0209】
その様な本発明の電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から見ることの多い携帯情報端末は視野角の広さが重要視されるため、自発光装置を用いることが望ましい。それら電子機器の具体例を図18、図19に示す。
【0210】
図18(A)はELディスプレイであり、筐体2001、支持台2002、表示部2003等を含む。本発明は表示部2003に用いることができる。ELディスプレイは自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。
【0211】
図18(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本発明の自発光装置は表示部2102に用いることができる。
【0212】
図18(C)は頭部取り付け型のELディスプレイの一部(右片側)であり、本体2201、信号ケーブル2202、頭部固定バンド2203、表示部2204、光学系2205、自発光装置2206等を含む。本発明は自発光装置2206に用いることができる。
【0213】
図18(D)は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)
であり、本体2301、記録媒体(DVD等)2302、操作スイッチ2303、表示部(a)2304、表示部(b)2305等を含む。表示部(a)は主として画像情報を表示し、表示部(b)は主として文字情報を表示するが、本発明の自発光装置はこれら表示部(a)、(b)に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0214】
図18(E)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体2401、カメラ部2402、受像部2403、操作スイッチ2404、表示部2405等を含む。本発明の自発光装置は表示部2405に用いることができる。
【0215】
図18(F)はパーソナルコンピュータであり、本体2501、筐体2502、表示部2503、キーボード2504等を含む。本発明の自発光装置は表示部2503に用いることができる。
【0216】
なお、将来的にEL材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0217】
また、上記電子装置はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増してきている。EL材料の応答速度は非常に高いため、自発光装置は動画表示に好ましいが、画素間の輪郭がぼやけてしまっては動画全体もぼけてしまう。従って、画素間の輪郭を明瞭にするという本発明の自発光装置を電子装置の表示部として用いることは極めて有効である。
【0218】
また、自発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なくなるように情報を表示することが望ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生装置のような文字情報を主とする表示部に自発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが望ましい。
【0219】
ここで図19(A)は携帯電話であり、本体2601、音声出力部2602、音声入力部2603、表示部2604、操作スイッチ2605、アンテナ2606を含む。本発明の自発光装置は表示部2604に用いることができる。なお、表示部2604は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0220】
また、図19(B)は音響再生装置、具体的にはカーオーディオであり、本体2701、表示部2702、操作スイッチ2703、2704を含む。本発明の自発光装置は表示部2702に用いることができる。また、本実施例では車載用オーディオを示すが、携帯型や家庭用の音響再生装置に用いても良い。なお、表示部2704は黒色の背景に白色の文字を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型の音響再生装置において特に有効である。
【0221】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に用いることが可能である。また、本実施例の電気器具は実施例1〜7に示したいずれの構成の自発光装置を用いても良い。
【実施例9】
【0222】
本明細書中の薄膜形成装置において、ノズルを有するヘッド部分に超音波振動子を設ける構造を示しているが、この超音波振動子を設けることで、ノズルの先端部に液切れをよくするための超音波振動が加えられるのが好ましい。
【0223】
なお、超音波振動子の材料としては、ニッケルやクロムやコバルトからなる合金、または鉄やアルミニウムからなる合金といった磁場を印加すると伸びまたは縮みの変形(磁歪現象とも言う)を生じうる磁歪材料や、チタン酸バリウム系(BaTiO3)、チタン酸ジルコニウム酸鉛系(Pb(Zr,Ti)O3といった電圧を加えると変位や力が発生する圧電材料を用いる。
【0224】
また、構造としては、図20(a)で示すように超音波振動子122を薄膜形成装置のヘッド部に設けて、超音波振動子122により与えられた超音波振動がノズルの先端に最大となって伝わるように、すなわち振動振幅の腹部になるように設定しても良いが、図20(b)で示すようにノズルに直接振動板132を接続させて、振動板132に接続された超音波振動子131からの超音波振動を効果的にノズルの先端に伝えるような構造にしても良い。
【0225】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例8のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極、陰極及びそれらの間にEL(Electro Luminescence)が得られる発光性有機材料(以下、有機EL材料という)を挟んだ構造からなるEL素子を基板上に形成した自発光装置及びその自発光装置を表示部(表示ディスプレイまたは表示モニター)として有する電気器具の作製方法に関する。なお、上記自発光装置はOLED(Organic Light Emitting Diodes)ともいう。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性有機材料のEL現象を利用した自発光素子としてEL素子を用いた表示装置(自発光装置または、EL表示装置という)の開発が進んでいる。自発光装置は自発光型であるため、液晶表示装置のようなバックライトが不要であり、さらに視野角が広いことから電気器具の表示部として有望視されている。
【0003】
自発光装置にはパッシブ型(単純マトリクス型)とアクティブ型(アクティブマトリクス型)の二種類があり、どちらも盛んに開発が行われている。特に現在はアクティブマトリクス型自発光装置が注目されている。また、EL素子の中心とも言えるEL層となる有機EL材料は、低分子系有機EL材料と高分子系(ポリマー系)有機EL材料とが研究されているが、低分子系有機EL材料よりも取り扱いが容易で耐熱性の高いポリマー系有機EL材料が注目されている。
【0004】
しかしながら、ポリマー系有機EL材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布する際に溶液の粘性や吐出部における表面張力により吐出部の液切れが悪い又、吐出部に液詰まりが起こるなどの問題が生じる。なお、本明細書中では、有機EL材料を溶媒に溶解させたEL層用塗布液のことを塗布液という。さらに、塗布液は、ポリマー系有機EL材料を溶媒に溶解させたもの以外に、ポリマー系とモノマー系の有機EL材料を一緒に溶媒に溶解させた物も含む。
【0005】
また、有機EL材料におけるルミネッセンスには一重項状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(燐光)とがある。本発明の自発光装置には、どちらの有機EL材料を有するEL素子を用いても良い。
【0006】
また、塗布液は、スピナーを用いた塗布方式で塗布することで膜厚のコントロールが可能である。しかし、スピン塗布方式を用いるとウエットエッチングといった有機EL材料に対して好ましくない工程を挟んでしまうことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、ポリマーからなる有機EL材料をライン状に塗布することで成膜後のエッチングの問題を解決し、吐出時の吐出部における液切れ及び液詰まりなどの問題を解決し、効率よく成膜する手段を提供することを課題とする。さらに、このような手段を用いた自発光装置及びその作製方法を提供することを課題とする。そして、このような自発光装置を表示用部として有する電気器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、ライン状に塗布する際に用いる塗布液は、有機EL材料の希釈率を調整して作製することにより粘性を制御し、塗布した際の膜厚が均一となるように制御する。さらに、本発明ではEL層を形成する塗布液の塗布には、ヘッド部及びノズルを有する薄膜形成装置を用いて塗布液を塗布する際の液切れ不良や液詰まりを解決する。
【0009】
なお、本発明においてヘッド部は、超音波振動子を有しており、この超音波振動子によりヘッド部に超音波振動が与えられる。また、ヘッド部は、ノズルを有しておりヘッド部に与えられた超音波振動はノズルにも与えられる。
【0010】
ノズルには、EL層を形成する塗布液が充填されており、超音波振動子によりノズルに与えられた超音波振動が塗布液にも与えられる。なお、塗布液に超音波振動が与えられることにより塗布液に圧力が加わり、これにより塗布液は、ノズルから吐出され所望の位置に塗布される。塗布液は、毛管現象や塗布液の重力による圧力でノズルから吐出されることもある。
【0011】
また、ノズルの先端部が、接触子を有し、この接触子をEL層を形成する基板上のバンクに接触させることにより塗布液が接触子を伝って画素列に塗布するようにすることも可能である。なお、本明細書中において接触子は、ノズルとは別の材料を用いて形成したものを用いても良いし、ノズルの先端を一部改良してバンクと接触するようにしても良い。また、場合によっては、ノズルを直接バンクと接触させて接触子の役割を果たしても良い。なお、接触子の材料としては、絶縁材料が好ましい。
【0012】
なお、ノズルは、ヘッド部と連結されており、この連結部付近のノズルの内径と塗布液がノズルから圧力により吐出されるノズル先端部の内径の大きさは異なっている。内径の大きさの大小関係は、連結部付近のノズルの内径の方が先端部のノズルの内径に比べて大きくなっている。これは、吐出される先端部のノズルの内径を小さくすることにより、塗布液を塗布する位置の制御性を高めるためである。
【0013】
また、ノズルの先端部(ノズルの内径の小さい部分)は、ヒーターを有しており、ヒーターによりノズルの先端部が加熱され、これにより塗布液も加熱される。なお、塗布液がヒーターで加熱されることにより、ノズルの先端部における塗布液の液切れや液詰まりを解消することができる。
【0014】
ここで本発明の薄膜形成装置を図1に示し、さらにこの薄膜形成装置を用いた自発光装置の作製方法について説明する。
【0015】
図1(A)は、本発明を実施してπ共役系ポリマーからなる有機EL材料を成膜する様子を模式的に示す図である。図1(A)において、110は基板であり、基板110上には画素部111、ソース側駆動回路112、ゲート側駆動回路113がTFTにより形成されている。ソース側駆動回路112に接続された複数のソース配線とゲート側駆動回路113に接続された複数のゲート配線とで囲まれた領域が画素であり、画素内にはTFTと該TFTに電気的に接続されたEL素子が形成される。画素部111はこのような画素がマトリクス状の配列されて形成されている。
【0016】
なお、本実施例は赤色、緑色、青色のEL層をストライプ状に同時に成膜する方法を示す。ストライプ状とは、縦横比が2以上の細長い長方形状、長径と短径の比が2以上の細長い楕円形状を含む。
【0017】
ここで114aは赤色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、赤色EL層用塗布液という)、114bは緑色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、緑色EL層用塗布液という)、114cは青色に発光する有機EL材料と溶媒との混合物(以下、青色EL層用塗布液という)である。なお、これらの有機EL材料はポリマー重合したものを直接溶媒に溶かして塗布する方法と、モノマーを溶媒に溶かしたものを成膜した後に加熱重合させてポリマーとする方法とがあるが、本発明はどちらでも構わない。ここではポリマーとなった有機EL材料を溶媒に溶かして塗布した例を示す。
【0018】
本発明の場合、薄膜形成装置からは赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが別々に吐出され、矢印の方向に向かって塗布される。即ち、赤色に発光すべき画素列、緑色に発光すべき画素列及び青色に発光すべき画素列に、同時にストライプ状のEL層(厳密にはEL層の前駆体)が形成される。
【0019】
なお、ここでいう画素列とはバンク121に仕切られた画素の列を指し、バンク121はソース配線の上方に形成されている。即ち、ソース配線に沿って複数の画素が直列に並んだ列を画素列と呼んでいる。但し、ここではバンク121がソース配線の上方に形成された場合を説明したが、ゲート配線の上方に設けられていても良い。この場合は、ゲート配線に沿って複数の画素が直列に並んだ列を画素列と呼ぶ。
【0020】
従って、画素部111は、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線の上方に設けられたストライプ状のバンクにより分割された複数の画素列の集合体として見ることができる。そのようにして見た場合、画素部111は、赤色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列、緑色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列及び青色に発光するストライプ状のEL層が形成された画素列からなるとも言える。
【0021】
また、上記ストライプ状のバンクは、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線の上方に設けられているため、実質的に画素部111は、複数のソース配線もしくは複数のゲート配線により分割された複数の画素列の集合体と見ることもできる。
【0022】
次に、図1(A)に示した塗布工程を行った際の薄膜形成装置のヘッド部(吐出部と言っても良い)の様子を図1(B)に示す。
【0023】
115は薄膜形成装置のヘッド部であり、赤色用ノズル116a、緑色用ノズル116b、青色用ノズル116cが取り付けられている。また各々のノズルの内部には赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが蓄えられている。
【0024】
これらの塗布液は、加圧されることにより、画素部111上に吐出される。なお、塗布液は、ノズル116a、116b、116cと配管117をしきる板(図示せず)に配管117に充填された不活性ガスを加圧することで吐出される。
このようなヘッド部115が紙面に垂直な方向に沿って手前方向に走査されることで図1(A)に示したような塗布工程が行われる。
【0025】
なお、ここでは、赤色用ノズル116a、緑色用ノズル116b、青色用ノズル116cにそれぞれ赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが備えられているが、塗布液は、これらの色に限られることはなく、また、塗布液を備えているノズルは、一つであっても複数であっても良い。
【0026】
さらに、ヘッド部115には、塗布液を吐出しやすくするために超音波による振動をあたえるための超音波振動子122が取り付けられている。これは、外部の超音波電源に接続されている。
なお、超音波振動子を取り付ける位置は、図1(B)に示される位置に限られることはなく、別の位置に付けても良いし、各ノズルに付けても良い。
【0027】
さらに、各ノズル114a、114b、114cには、それぞれヒーター123a、123b、123cが設けられている。このヒーターとは、塗布液をうまく吐出するための塗布液温度調節用に設けられているものであり、ヒーターとなる部分に抵抗材料を存在させると、抵抗材料によりヒーターにかかる電圧が制御できる。電圧が制御されることによりヒーター部にかかる温度調節ができるので、ここで用いる抵抗材料は、各塗布液が適温になるような抵抗を与える材料を選ぶとよい。なお、抵抗材料は、ノズルに接触するように存在させても良いし、ノズルが半導体材料で形成される場合には、ノズル自体に抵抗材料をドーピングしても良い。また、抵抗材料としては、銅、鉄、アルミニウム、タングステン、タンタル、ニッケル、リン、ボロン、ヒ素やアンチモンといった金属を用いる。これにより、吐出液の温度調節が可能となる。
【0028】
さらにヒーターとしては、各ノズルのヒーター部分に測温部を設けて各塗布液の温度を検知し、検知した温度情報をフィードバックさせて新たな電気信号に変換する回路を設け、この回路に各ヒーターの温度を制御させるような機能を有するものも含める。
【0029】
また、本明細書中ではヘッド部が走査されるという記載にしているが、基板をX−Yステージにより縦方向または横方向に移動させることも可能である。
【0030】
ここで118に示される吐出部付近の拡大図を図1(C)に示す。基板110上に設けられた画素部111は、複数のTFT119a〜119cと画素電極120a〜120cからなる複数の画素の集合体である。図1(B)のノズル116a〜116cに圧力がかかると、その圧力により塗布液114a〜114cが吐出される。
【0031】
なお、画素間には樹脂材料で形成されたバンク121が設けられており、隣接する画素間で塗布液が混合されてしまうことを防いでいる。この構造ではバンク121の幅(フォトリソグラフィの解像度で決まる)を狭くすることで画素部の集積度が向上し、高精細な画像を得ることができる。また、ここで用いる塗布液としては、その粘性が1×10-3〜3×10-2Pa・sであることが好ましい。
【0032】
また、バンク121を形成しうる樹脂材料としてはアクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミドを用いることができる。この樹脂材料に予めカーボンや黒色顔料等を設けて樹脂材料を黒色化しておくと、バンク121を画素間の遮光膜として用いることも可能となる。
【0033】
また、ノズル116a、116bまたは116cのいずれかに光反射を用いたセンサーを取り付ければ、塗布面とノズルとの距離を常に一定に保つように調節することも可能である。なお、センサーを取り付ける位置は、ノズルの先端が好ましいが、この限りではない。さらに、画素ピッチ(画素間の距離)に応じてノズル116a〜116cの間隔を調節する機構を備えることで、どのような画素ピッチの自発光装置にも対応することが可能である。
【0034】
こうしてノズル116a〜116cから吐出された塗布液114a〜114cは各々画素電極120a〜120cを覆うようにして塗布される。塗布液114a〜114cを塗布したら真空中で加熱処理(ベーク処理または焼成処理)することにより塗布液114a〜114cに含まれる有機溶媒を揮発させ、有機EL材料からなるEL層を形成する。このため、有機溶媒は有機EL材料のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で揮発するものを用いる。また、有機EL材料の粘度により最終的に形成されるEL層の膜厚が決まる。この場合、粘度は1×10-3〜5×10-2Pa・s(好ましくは1×10-3〜2×10-2Pa・s)とするのが好ましい。
【0035】
さらに、有機EL材料中に不純物が多いと、EL層の劣化原因となり、発光効率が低下してしまうので有機EL材料中にはできるだけ不純物を低減することが望ましい。
【0036】
なお、不純物を低減するには、溶媒及び有機EL材料を徹底的に精製し、溶媒と有機EL材料を混合する時の環境を可能な限り清浄化することが重要である。
溶媒の精製または有機EL材料の精製は、蒸留法、昇華法、濾過法、再結晶法、再沈殿法、クロマトグラフィ法または透析法等の技術を繰り返し行うことが好ましい。最終的には金属元素やアルカリ金属元素等の不純物を0.1ppm以下(好ましくは0.01ppm以下)にまで低減することが望ましい。
【0037】
また、図1のような薄膜形成装置により有機EL材料を含む塗布液を塗布する際の雰囲気にも十分に注意することが好ましい。具体的には、上記有機EL材料の成膜工程を、窒素などの不活性ガスが充填されたクリーンブースやグローブボックス内で行うことが望ましい。
【0038】
以上のような薄膜形成装置を用いることにより、塗布液を均一に効率よく塗布することができ、高いスループットでポリマー系有機EL材料からなるEL層を形成することができる。さらに、一つの画素列では切れ間なくストライプ状に塗布していくことができるため、非常にスループットが高い。
【発明の効果】
【0039】
本発明を実施することで、有機EL材料を成膜する際に問題となる塗布液の液切れの悪さや液詰まりに対する改善を図ることができる。また、本発明においては、様々な方法で有機EL材料を成膜する方法を示しているので、条件や用途に応じて成膜する事が可能であり、ポリマー系有機EL材料を用いた自発光装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図2】画素部の断面構造を示す図。
【図3】画素部の上面構造及び構成を示す図。
【図4】自発光装置の作製工程を示す図。
【図5】自発光装置の作製工程を示す図。
【図6】自発光装置の作製工程を示す図。
【図7】サンプリング回路の素子構造を示す図。
【図8】自発光装置の外観を示す図。
【図9】自発光装置の回路ブロック構成を示す図。
【図10】アクティブマトリクス型の自発光装置の断面構造を示す図。
【図11】自発光装置の画素部の断面構造を示す図。
【図12】画素部の上面構造を示す図。
【図13】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図14】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図15】本発明の有機EL材料の塗布工程を示す図。
【図16】画素部を拡大した図。
【図17】パッシブ型の自発光装置の断面構造を示す図。
【図18】電気器具の具体例を示す図。
【図19】電気器具の具体例を示す図。
【図20】薄膜形成装置の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態について、図2、図3を用いて説明する。図2に示したのは本発明の薄膜形成装置を用いて作製した自発光装置の画素部の断面図であり、図3(A)はその上面図、図3(B)はその回路構成である。実際には画素がマトリクス状に複数配列されて画素部(画像表示部)が形成される。なお、図3(A)をA−A’で切断した断面図が図2に相当する。従って図2及び図3で共通の符号を用いているので、適宜両図面を参照すると良い。また、図3の上面図では二つの画素を図示しているが、どちらも同じ構造である。
【0042】
図2において、11は基板、12は下地となる絶縁膜(以下、下地膜という)
である。基板11としてはガラス、ガラスセラミックス、石英、シリコン、セラミックス、金属若しくはプラスチックからなる基板を用いることができる。
【0043】
また、下地膜12は特に可動イオンを含む基板や導電性を有する基板を用いる場合に有効であるが、石英基板には設けなくても構わない。下地膜12としては、珪素(シリコン)を含む絶縁膜を用いれば良い。なお、本明細書において「珪素を含む絶縁膜」とは、具体的には酸化珪素膜、窒化珪素膜若しくは窒化酸化珪素膜(SiOxNyで示される)など珪素、酸素若しくは窒素を所定の割合で含む絶縁膜を指す。
【0044】
また、下地膜12に放熱効果を持たせることによりTFTの発熱を発散させることはTFTの劣化又はEL素子の劣化を防ぐためにも有効である。放熱効果を持たせるには公知のあらゆる材料を用いることができる。
【0045】
ここでは画素内に二つのTFTを形成している。201はスイッチング用TFTであり、nチャネル型TFTで形成され、202は電流制御用TFTであり、pチャネル型TFTで形成されている。
【0046】
ただし、本発明において、スイッチング用TFTをnチャネル型TFT、電流制御用TFTをpチャネル型TFTに限定する必要はなく、スイッチング用TFTをpチャネル型TFT、電流制御用TFTをnチャネル型TFTにしたり、両方ともnチャネル型、又はpチャネル型TFTを用いることも可能である。
【0047】
スイッチング用TFT201は、ソース領域13、ドレイン領域14、LDD領域15a〜15d、高濃度不純物領域16及びチャネル形成領域17a、17bを含む活性層、ゲート絶縁膜18、ゲート電極19a、19b、第1層間絶縁膜20、ソース配線21並びにドレイン配線22を有して形成される。
【0048】
また、図3に示すように、ゲート電極19a、19bは別の材料(ゲート電極19a、19bよりも低抵抗な材料)で形成されたゲート配線211によって電気的に接続されたダブルゲート構造となっている。勿論、ダブルゲート構造だけでなく、シングルゲートもしくはトリプルゲート構造といったいわゆるマルチゲート構造(直列に接続された二つ以上のチャネル形成領域を有する活性層を含む構造)であっても良い。マルチゲート構造はオフ電流値を低減する上で極めて有効であり、本発明では画素のスイッチング素子201をマルチゲート構造とすることによりオフ電流値の低いスイッチング素子を実現している。
【0049】
また、活性層は結晶構造を含む半導体膜で形成される。即ち、単結晶半導体膜でも良いし、多結晶半導体膜や微結晶半導体膜でも良い。また、ゲート絶縁膜18は珪素を含む絶縁膜で形成すれば良い。また、ゲート電極、ソース配線若しくはドレイン配線としてはあらゆる導電膜を用いることができる。
【0050】
さらに、スイッチング用TFT201においては、LDD領域15a〜15dは、ゲート絶縁膜18を挟んでゲート電極19a、19bと重ならないように設ける。このような構造はオフ電流値を低減する上で非常に効果的である。
【0051】
なお、チャネル形成領域とLDD領域との間にオフセット領域(チャネル形成領域と同一組成の半導体層でなり、ゲート電圧が印加されない領域)を設けることはオフ電流値を下げる上でさらに好ましい。また、二つ以上のゲート電極を有するマルチゲート構造の場合、チャネル形成領域の間に設けられた高濃度不純物領域がオフ電流値の低減に効果的である。
【0052】
次に、電流制御用TFT202は、ソース領域31、ドレイン領域32及びチャネル形成領域34を含む活性層、ゲート絶縁膜18、ゲート電極35、第1層間絶縁膜20、ソース配線36並びにドレイン配線37を有して形成される。なお、ゲート電極35はシングルゲート構造となっているが、マルチゲート構造であっても良い。
【0053】
図2に示すように、スイッチング用TFTのドレインは電流制御用TFT202のゲートに接続されている。具体的には電流制御用TFT202のゲート電極35はスイッチング用TFT201のドレイン領域14とドレイン配線(接続配線とも言える)22を介して電気的に接続されている。また、ソース配線36は電源供給線212に接続される。
【0054】
電流制御用TFT202はEL素子203に注入される電流量を制御するための素子であるが、EL素子の劣化を考慮するとあまり多くの電流を流すことは好ましくない。そのため、電流制御用TFT202に過剰な電流が流れないように、チャネル長(L)は長めに設計することが好ましい。望ましくは一画素あたり0.5〜2μA(好ましくは1〜1.5μA)となるようにする。
【0055】
また、スイッチング用TFT201に形成されるLDD領域の長さ(幅)は0.5〜3.5μm、代表的には2.0〜2.5μmとすれば良い。
【0056】
また、図3に示すように電流制御用TFT3503のゲート電極35を含む配線36は、3504で示される領域で電流制御用TFT3503のドレイン配線37と絶縁膜を挟んで重なる。このとき3504で示される領域では、保持容量(コンデンサ)が形成される。保持容量3504は電源供給線212と電気的に接続された半導体膜3520、ゲート絶縁膜と同一層の絶縁膜(図示せず)及び電源供給線212で形成される容量も保持容量として用いることが可能である。
この保持容量3504は、電流制御用TFT3503のゲート電極35にかかる電圧を保持するためのコンデンサとして機能する。
【0057】
また、流しうる電流量を多くするという観点から見れば、電流制御用TFT202の活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を厚くする(好ましくは50〜100nm、さらに好ましくは60〜80nm)ことも有効である。逆に、スイッチング用TFT201の場合はオフ電流値を小さくするという観点から見れば、活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を薄くする(好ましくは20〜50nm、さらに好ましくは25〜40nm)ことも有効である。
【0058】
次に、38は第1パッシベーション膜であり、膜厚は10nm〜1μm(好ましくは200〜500nm)とすれば良い。材料としては、珪素を含む絶縁膜(特に窒化酸化珪素膜又は窒化珪素膜が好ましい)を用いることができる。
【0059】
第1パッシベーション膜38の上には、各TFTを覆うような形で第2層間絶縁膜(平坦化膜と言っても良い)39を形成し、TFTによってできる段差の平坦化を行う。第2層間絶縁膜39としては、有機樹脂膜が好ましく、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)等を用いると良い。勿論、十分な平坦化が可能であれば、無機膜を用いても良い。
【0060】
第2層間絶縁膜39によってTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成されるEL層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、EL層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0061】
また、40は透明導電膜からなる画素電極(EL素子の陽極に相当する)であり、第2層間絶縁膜39及び第1パッシベーション膜38にコンタクトホール(開孔)を開けた後、形成された開孔部において電流制御用TFT202のドレイン配線37に接続されるように形成される。
【0062】
本実施形態では、画素電極として酸化インジウムと酸化スズの化合物からなる導電膜を用いる。また、これに少量のガリウムを添加しても良い。さらに酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることもできる。
【0063】
画素電極を形成したら、樹脂材料からなるバンク41aおよび41bを形成する。バンク41aおよび41bは1〜2μm厚のアクリル膜またはポリイミド膜をパターニングして形成すれば良い。このバンク41aおよび41bは、画素と画素との間にストライプ状に形成される。本実施例ではソース配線21に沿って形成するがゲート配線35に沿って形成しても良い。
【0064】
次にEL層42が図1で説明したような薄膜形成装置により形成される。なお、ここでは一画素しか図示していないが、図1で説明したようにR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層が同時に形成される。EL層とする有機EL材料としてはポリマー系材料を用いる。代表的なポリマー系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系、ポリビニルカルバゾール(PVK)
系、ポリフルオレン系などが挙げられる。
【0065】
なお、PPV系有機EL材料としては様々な型のものがあるが、例えば以下のような分子式が発表されている。
(「H. Shenk,H.Becker,O.Gelsen,E.Kluge,W.Kreuder,and H.Spreitzer,“Polymers for Light Emitting Diodes”,Euro Display,Proceedings,1999,p.33-37」)
【0066】
【化1】
【0067】
【化2】
【0068】
また、特開平10−92576号公報に記載された分子式のポリフェニルビニルを用いることもできる。分子式は以下のようになる。
【0069】
【化3】
【0070】
【化4】
【0071】
また、PVK系有機EL材料としては以下のような分子式がある。
【0072】
【化5】
【0073】
ポリマー系有機EL材料はポリマーの状態で溶媒に溶かして塗布することもできるし、モノマーの状態で溶媒に溶かして塗布した後に重合することもできる。
モノマーの状態で塗布した場合、まずポリマー前駆体が形成され、真空中で加熱することにより重合してポリマーになる。
【0074】
具体的なEL層としては、赤色に発光するEL層にはシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層にはポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層にはポリフェニレンビニレン若しくはポリアルキルフェニレンを用いれば良い。膜厚は30〜150nm(好ましくは40〜100nm)とすれば良い。
【0075】
但し、以上の例は本発明のEL層として用いることのできる有機EL材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。本発明では有機EL材料と溶媒との混合物を図1に示す方式により塗布して、溶媒を揮発させて除去することによりEL層を形成する。従って、溶媒を揮発させる際にEL層のガラス転移温度を超えない組み合わせであれば如何なる有機EL材料を用いても良い。
【0076】
また、代表的な溶媒としてはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロフォルム、ジクロロメタン、γブチルラクトン、ブチルセルソルブ、シクロヘキサン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、シクロヘキサノン、ジオキサンまたは、THF(テトラヒドロフラン)が挙げられる。
【0077】
さらに、EL層42を形成する際、EL層は水分や酸素の存在によって容易に劣化してしまうため、処理雰囲気は水分や酸素の少ない雰囲気とし、窒素やアルゴンといった不活性ガス中で行うことが望ましい。さらに処理雰囲気としては、塗布液の蒸発速度を制御できることから塗布液作製に用いた溶媒雰囲気にするのも良い。なお、これらを実施するためには、図1の薄膜形成装置を、不活性ガスを充填したクリーンブースに設置し、その雰囲気中で発光層の成膜工程を行うことが望ましい。
【0078】
以上のようにしてEL層42を形成したら、次に遮光性導電膜からなる陰極43、保護電極44及び第2パッシベーション膜45が形成される。本実施形態では陰極43として、MgAgからなる導電膜を用い、保護電極44としてアルミニウムからなる導電膜を用いる。また、第2パッシベーション膜45としては、10nm〜1μm(好ましくは200〜500nm)の厚さの窒化珪素膜を用いる。
【0079】
なお、上述のようにEL層は熱に弱いので、陰極43及び第2パッシベーション膜45はなるべく低温(好ましくは室温から120℃までの温度範囲)で成膜するのが望ましい。従って、プラズマCVD法、真空蒸着法又は溶液塗布法(スピンコート法)が望ましい成膜方法と言える。
【0080】
ここまで完成したものをアクティブマトリクス基板とよび、アクティブマトリクス基板に対向して、対向基板(図示せず)が設けられる。本実施形態では対向基板としてガラス基板を用いる。なお、対向基板としては、プラスチックやセラミックスからなる基板を用いても良い。
【0081】
また、アクティブマトリクス基板と対向基板はシール剤(図示せず)によって接着され、密閉空間(図示せず)が形成される。本実施形態では、密閉空間をアルゴンガスで充填している。勿論、この密閉空間内に酸化バリウムといった乾燥剤を配置したり酸化防止剤を配置することも可能である。
【実施例1】
【0082】
本発明の実施例における画素部とその周辺に設けられる駆動回路部のTFTを同時に作製する方法について図4〜図6を用いて説明する。但し、説明を簡単にするために、駆動回路に関しては基本回路であるCMOS回路を図示することとする。
【0083】
まず、図4(A)に示すように、ガラス基板300上に下地膜301を300nmの厚さに形成する。本実施例では下地膜301として100nm厚の窒化酸化珪素膜と200nmの窒化酸化珪素膜とを積層して用いる。この時、ガラス基板300に接する方の窒素濃度を10〜25wt%としておくと良い。もちろん下地膜を設けずに石英基板上に直接素子を形成しても良い。
【0084】
次に下地膜301の上に50nmの厚さの非晶質珪素膜(図示せず))を公知の成膜法で形成する。なお、非晶質珪素膜に限定する必要はなく、非晶質構造を含む半導体膜(微結晶半導体膜を含む)であれば良い。さらに非晶質シリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を含む化合物半導体膜でも良い。また、膜厚は20〜100nmの厚さであれば良い。
【0085】
そして、公知の技術により非晶質珪素膜を結晶化し、結晶質珪素膜(多結晶シリコン膜若しくはポリシリコン膜ともいう)302を形成する。公知の結晶化方法としては、電熱炉を使用した熱結晶化方法、レーザー光を用いたレーザーアニール結晶化法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法がある。本実施例では、XeClガスを用いたエキシマレーザー光を用いて結晶化する。
【0086】
なお、本実施例では線状に加工したパルス発振型のエキシマレーザー光を用いるが、矩形であっても良いし、連続発振型のアルゴンレーザー光や連続発振型のエキシマレーザー光を用いることもできる。
【0087】
本実施例では結晶質珪素膜をTFTの活性層として用いるが、非晶質珪素膜を用いることも可能である。また、オフ電流を低減する必要のあるスイッチング用TFTの活性層を非晶質珪素膜で形成し、電流制御用TFTの活性層を結晶質珪素膜で形成することも可能である。非晶質珪素膜はキャリア移動度が低いため電流を流しにくくオフ電流が流れにくい。即ち、電流を流しにくい非晶質珪素膜と電流を流しやすい結晶質珪素膜の両者の利点を生かすことができる。
【0088】
次に、図4(B)に示すように、結晶質珪素膜302上に酸化珪素膜からなる保護膜303を130nmの厚さに形成する。この厚さは100〜200nm(好ましくは130〜170nm)の範囲で選べば良い。また、珪素を含む絶縁膜であれば他の膜でも良い。この保護膜303は不純物を添加する際に結晶質珪素膜が直接プラズマに曝されないようにするためと、微妙な濃度制御を可能にするために設ける。
【0089】
そして、その上にレジストマスク304a、304bを形成し、保護膜303を介してn型を付与する不純物元素(以下、n型不純物元素という)を添加する。
なお、n型不純物元素としては、代表的には15族に属する元素、典型的にはリン又は砒素を用いることができる。なお、本実施例ではホスフィン(PH3)を質量分離しないでプラズマ励起したプラズマ(イオン)ドーピング法を用い、リンを1×1018atoms/cm3の濃度で添加する。勿論、質量分離を行うイオンインプランテーション法を用いても良い。
【0090】
この工程により形成されるn型不純物領域305には、n型不純物元素が2×1016〜5×1019atoms/cm3(代表的には5×1017〜5×1018atoms/cm3)
の濃度で含まれるようにドーズ量を調節する。
【0091】
次に、図4(C)に示すように、保護膜303およびレジスト304a、304bを除去し、添加した15族に属する元素の活性化を行う。活性化手段は公知の技術を用いれば良いが、本実施例ではエキシマレーザー光の照射により活性化する。勿論、パルス発振型でも連続発振型でも良いし、エキシマレーザー光に限定する必要はない。但し、添加された不純物元素の活性化が目的であるので、結晶質珪素膜が溶融しない程度のエネルギーで照射することが好ましい。なお、保護膜303をつけたままレーザー光を照射しても良い。
【0092】
なお、このレーザー光による不純物元素の活性化に際して、熱処理による活性化を併用しても構わない。熱処理による活性化を行う場合は、基板の耐熱性を考慮して450〜550℃程度の熱処理を行えば良い。
【0093】
この工程によりn型不純物領域305の端部、即ち、n型不純物領域305、の周囲に存在するn型不純物元素を添加していない領域との境界部(接合部)が明確になる。このことは、後にTFTが完成した時点において、LDD領域とチャネル形成領域とが非常に良好な接合部を形成しうることを意味する。
【0094】
次に、図4(D)に示すように、結晶質珪素膜の不要な部分を除去して、島状の半導体膜(以下、活性層という)306〜309を形成する。
【0095】
次に、図4(E)に示すように、活性層306〜309を覆ってゲート絶縁膜310を形成する。ゲート絶縁膜310としては、10〜200nm、好ましくは50〜150nmの厚さの珪素を含む絶縁膜を用いれば良い。これは単層構造でも積層構造でも良い。本実施例では110nm厚の窒化酸化珪素膜を用いる。
【0096】
次に、200〜400nm厚の導電膜を形成し、パターニングしてゲート電極311〜315を形成する。このゲート電極311〜315の端部をテーパー状にすることもできる。なお、本実施例ではゲート電極と、ゲート電極に電気的に接続された引き回しのための配線(以下、ゲート配線という)とを別の材料で形成する。具体的にはゲート電極よりも低抵抗な材料をゲート配線として用いる。
これは、ゲート電極としては微細加工が可能な材料を用い、ゲート配線には微細加工はできなくとも配線抵抗が小さい材料を用いるためである。勿論、ゲート電極とゲート配線とを同一材料で形成しても構わない。
【0097】
また、ゲート電極は単層の導電膜で形成しても良いが、必要に応じて二層、三層といった積層膜とすることが好ましい。ゲート電極の材料としては公知のあらゆる導電膜を用いることができる。ただし、上述のように微細加工が可能、具体的には2μm以下の線幅にパターニング可能な材料が好ましい。
【0098】
代表的には、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、シリコン(Si)から選ばれた元素からなる膜、または前記元素の窒化物膜(代表的には窒化タンタル膜、窒化タングステン膜、窒化チタン膜)、または前記元素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金、Mo−Ta合金)、または前記元素のシリサイド膜(代表的にはタングステンシリサイド膜、チタンシリサイド膜)を用いることができる。勿論、単層で用いても積層して用いても良い。
【0099】
本実施例では、50nm厚の窒化タンタル(TaN)膜と、350nm厚のタンタル(Ta)膜とからなる積層膜を用いる。これはスパッタ法で形成すれば良い。また、スパッタガスとしてXe、Ne等の不活性ガスを添加すると応力による膜はがれを防止することができる。
【0100】
またこの時、ゲート電極312はn型不純物領域305の一部とゲート絶縁膜310を挟んで重なるように形成する。この重なった部分が後にゲート電極と重なったLDD領域となる。なお、ゲート電極313,314は、断面では、二つに見えるが実際には電気的に接続されている。
【0101】
次に、図5(A)に示すように、ゲート電極311〜315をマスクとして自己整合的にn型不純物元素(本実施例ではリン)を添加する。こうして形成される不純物領域316〜323にはn型不純物領域305の1/2〜1/10(代表的には1/3〜1/4)の濃度でリンが添加されるように調節する。具体的には、1×1016〜5×1018atoms/cm3(典型的には3×1017〜3×1018atoms/cm3)の濃度が好ましい。
【0102】
次に、図5(B)に示すように、ゲート電極等を覆う形でレジストマスク324a〜324dを形成し、n型不純物元素(本実施例ではリン)を添加して高濃度にリンを含む不純物領域325〜329を形成する。ここでもホスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法で行い、この領域のリンの濃度は1×1020〜1×1021atoms/cm3(代表的には2×1020〜5×1021atoms/cm3)となるように調節する。
【0103】
この工程によってnチャネル型TFTのソース領域若しくはドレイン領域が形成されるが、スイッチング用TFTでは、図5(A)の工程で形成したn型不純物領域319〜321の一部を残す。この残された領域が、図2におけるスイッチング用TFT201のLDD領域15a〜15dに対応する。
【0104】
次に、図5(C)に示すように、レジストマスク324a〜324dを除去し、新たにレジストマスク332を形成する。そして、p型不純物元素(本実施例ではボロン)を添加し、高濃度にボロンを含む不純物領域333〜336を形成する。ここではジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法により3×1020〜3×1021atoms/cm3(代表的には5×1020〜1×1021atoms/cm3ノ)濃度となるようにボロンを添加する。
【0105】
なお、不純物領域333〜336には既に1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度でリンが添加されているが、ここで添加されるボロンはその少なくとも3倍以上の濃度で添加される。そのため、予め形成されていたn型の不純物領域は完全にp型に反転し、p型の不純物領域として機能する。
【0106】
次に、レジストマスク332を除去した後、それぞれの濃度で添加されたn型またはp型不純物元素を活性化する。活性化手段としては、ファーネスアニール法、レーザーアニール法、またはランプアニール法で行うことができる。本実施例では電熱炉において窒素雰囲気中、550℃、4時間の熱処理を行う。
【0107】
このとき雰囲気中の酸素を極力排除することが重要である。なぜならば酸素が少しでも存在していると露呈したゲート電極の表面が酸化され、抵抗の増加を招くと共に後にオーミックコンタクトを取りにくくなるからである。従って、上記活性化工程における処理雰囲気中の酸素濃度は1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下とすることが望ましい。
【0108】
次に、活性化工程が終了したら図5(D)に示すように300nm厚のゲート配線337を形成する。ゲート配線337の材料としては、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)を主成分(組成として50〜100%を占める。)とする金属を用いれば良い。配置としては図3のようにゲート配線211とスイッチング用TFTのゲート電極19a、19b(図4(E)の313、314)が電気的に接続するように形成する。
【0109】
このような構造とすることでゲート配線の配線抵抗を非常に小さくすることができるため、面積の大きい画像表示領域(画素部)を形成することができる。即ち、画面の大きさが対角10インチ以上(さらには30インチ以上)の自発光装置を実現する上で、本実施例の画素構造は極めて有効である。
【0110】
次に、図6(A)に示すように、第1層間絶縁膜338を形成する。第1層間絶縁膜338としては、珪素を含む絶縁膜を単層で用いるか、2種類以上の珪素を含む絶縁膜を組み合わせた積層膜を用いれば良い。また、膜厚は400nm〜1.5μmとすれば良い。本実施例では、200nm厚の窒化酸化珪素膜の上に800nm厚の酸化珪素膜を積層した構造とする。
【0111】
さらに、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行い、水素化処理をする。この工程は熱的に励起された水素により半導体膜の不対結合手を水素終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマ化して生成された水素を用いる)を行っても良い。
【0112】
なお、水素化処理は第1層間絶縁膜338を形成する間に入れても良い。即ち、200nm厚の窒化酸化珪素膜を形成した後で上記のように水素化処理を行い、その後で残り800nm厚の酸化珪素膜を形成してもよい。
【0113】
次に、第1層間絶縁膜338及びゲート絶縁膜310に対してコンタクトホールを形成し、ソース配線339〜342と、ドレイン配線343〜345を形成する。なお、本実施例ではこの電極を、Ti膜を100nm、Tiを含むアルミニウム膜を300nm、Ti膜150nmをスパッタ法で連続形成した3層構造の積層膜とする。勿論、他の導電膜でも良い。
【0114】
次に、50〜500nm(代表的には200〜300nm)の厚さで第1パッシベーション膜346を形成する。本実施例では第1パッシベーション膜346として300nm厚の窒化酸化珪素膜を用いる。これは窒化珪素膜で代用しても良い。
【0115】
なお、窒化酸化珪素膜の形成に先立ってH2、NH3等水素を含むガスを用いてプラズマ処理を行うことは有効である。この前処理により励起された水素が第1層間絶縁膜338に供給され、熱処理を行うことで、第1パッシベーション膜346の膜質が改善される。それと同時に、第1層間絶縁膜338に添加された水素が下層側に拡散するため、効果的に活性層を水素化することができる。
【0116】
次に、図6(B)に示すように有機樹脂からなる第2層間絶縁膜347を形成する。有機樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)等を使用することができる。特に、第2層間絶縁膜347は平坦化の意味合いが強いので、平坦性に優れたアクリルが好ましい。本実施例ではTFTによって形成される段差を十分に平坦化しうる膜厚でアクリル膜を形成する。好ましくは1〜5μm(さらに好ましくは2〜4μm)とすれば良い。
【0117】
次に、第2層間絶縁膜347及び第1パッシベーション膜346に対してコンタクトホールを形成し、ドレイン配線345と電気的に接続される画素電極348を形成する。本実施例では酸化インジウム・スズ(ITO)膜を110nmの厚さに形成し、パターニングを行って画素電極とする。また、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いても良い。この画素電極がEL素子の陽極となる。
【0118】
次に、図6(C)に示すように、樹脂材料からなるバンク349を形成する。
バンク349は1〜2μm厚のアクリル膜またはポリイミド膜をパターニングして形成すれば良い。このバンク349は図3に示したように、画素と画素との間にストライプ状に形成される。本実施例ではソース配線341に沿って形成するがゲート配線337に沿って形成しても良い。
【0119】
次に、EL層350を、図1を用いて説明した薄膜形成装置を用いた成膜工程により形成する。具体的には、EL層350となる有機EL材料をクロロフォルム、ジクロロメタン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンといった溶媒に溶かして塗布し、その後、熱処理を行うことにより溶媒を揮発させる。こうして有機EL材料からなる被膜(EL層)が形成される。
【0120】
なお、本実施例では一画素しか図示されていないが、このとき同時に赤色に発光するEL層、緑色に発光するEL層及び青色に発光するEL層が形成される。
本実施例では、赤色に発光するEL層としてシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層としてポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層としてポリアルキルフェニレンを各々50nmの厚さに形成する。また、溶媒としては1,2−ジクロロメタンを用い、80〜150℃のホットプレートで1〜5分の熱処理を行って揮発させる。
【0121】
なお、EL層350としては公知の材料を用いることができる。公知の材料としては、駆動電圧を考慮すると有機材料を用いるのが好ましい。なお、本実施例ではEL層350を上記EL層のみの単層構造とするが、必要に応じて電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層もしくは正孔素子層を設けても良い。また、本実施例ではEL素子の陰極351としてMgAg電極を用いた例を示すが、公知の他の材料であっても良い。
【0122】
EL層350を形成した後、陰極(MgAg電極)351を真空蒸着法を用いて形成する。なお、EL層350の膜厚は80〜200nm(典型的には100〜120nm)、陰極351の厚さは180〜300nm(典型的には200〜250nm)とすれば良い。
【0123】
さらに、陰極351上には、保護電極352を設ける。保護電極352としてはアルミニウムを主成分とする導電膜を用いれば良い。保護電極352は、マスクを用いて真空蒸着法で形成すれば良い。
【0124】
最後に、窒化珪素膜からなる第2パッシベーション膜353を300nmの厚さに形成する。実際には保護電極352がEL層を水分等から保護する役割を果たすが、さらに第2パッシベーション膜353を形成しておくことで、EL素子の信頼性をさらに高めることができる。
【0125】
本実施例の場合、図6(C)に示すように、nチャネル型205の活性層は、ソース領域355、ドレイン領域356、LDD領域357及びチャネル形成領域358を含み、LDD領域357はゲート絶縁膜310を挟んでゲート電極312と重なっている。
【0126】
ドレイン領域側のみにLDD領域を形成しているのは、動作速度を落とさないための配慮である。また、このnチャネル型TFT205はオフ電流値をあまり気にする必要はなく、それよりも動作速度を重視した方が良い。従って、LDD領域357は完全にゲート電極に重ねてしまい、極力抵抗成分を少なくすることが望ましい。即ち、いわゆるオフセットはなくした方がよい。
【0127】
こうして図6(C)に示すような構造のアクティブマトリクス基板が完成する。なお、バンク349を形成した後、パッシベーション膜353を形成するまでの工程をマルチチャンバー方式(またはインライン方式)の薄膜形成装置を用いて、大気解放せずに連続的に処理することは有効である。
【0128】
ところで、本実施例のアクティブマトリクス基板は、画素部だけでなく駆動回路部にも最適な構造のTFTを配置することにより、非常に高い信頼性を示し、動作特性も向上しうる。
【0129】
まず、極力動作速度を落とさないようにホットキャリア注入を低減させる構造を有するTFTを、駆動回路部を形成するCMOS回路のnチャネル型TFT205として用いる。なお、ここでいう駆動回路としては、シフトレジスタ、バッファ、レベルシフタ、サンプリング回路(サンプル及びホールド回路)などが含まれる。デジタル駆動を行う場合には、D/Aコンバータなどの信号変換回路も含まれうる。
【0130】
なお、駆動回路の中でもサンプリング回路は他の回路と比べて少し特殊であり、チャネル形成領域を双方向に大電流が流れる。即ち、ソース領域とドレイン領域の役割が入れ替わるのである。さらに、オフ電流値を極力低く抑える必要があり、そういった意味でスイッチング用TFTと電流制御用TFTの中間程度の機能を有するTFTを配置することが望ましい。
【0131】
従って、サンプリング回路を形成するnチャネル型TFTは、図7に示すような構造のTFTを配置することが望ましい。図7に示すように、LDD領域901a、901bの一部がゲート絶縁膜902を介してゲート電極903と重なる。
この効果は電流を流した際に生じるホットキャリア注入に対する劣化対策であり、サンプリング回路の場合はチャネル形成領域904を挟む形で両側に設ける点が異なる。
【0132】
なお、実際には図6(C)まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性の高いガラス、石英、プラスチックといったハウジング材でパッケージング(封入)することが好ましい。その際、ハウジング材の内部に内部に酸化バリウムといった吸湿剤や酸化防止剤を配置するとよい。
【0133】
また、パッケージング等の処理により気密性を高めたら、基板上に形成された素子又は回路から引き回された端子と外部信号端子とを接続するためのコネクター(フレキシブルプリントサーキット:FPC)を取り付けて製品として完成する。このような出荷できる状態にまでした状態を本明細書中では自発光装置(またはELモジュール)をという。
【0134】
ここで本実施例のアクティブマトリクス型自発光装置の構成を図8の斜視図を用いて説明する。本実施例のアクティブマトリクス型自発光装置は、ガラス基板601上に形成された、画素部602と、ゲート側駆動回路603と、ソース側駆動回路604を含む。画素部のスイッチング用TFT605はnチャネル型TFTであり、ゲート側駆動回路603に接続されたゲート配線606、ソース側駆動回路604に接続されたソース配線607の交点に配置されている。また、スイッチング用TFT605のドレインは電流制御用TFT608のゲートに接続されている。
【0135】
さらに、電流制御用TFT608のソース側は電源供給線609に接続される。本実施例のような構造では、電源供給線609には接地電位(アース電位)が与えられている。また、電流制御用TFT608のドレインにはEL素子610が接続されている。また、このEL素子610の陽極には所定の電圧(3〜12V、好ましくは3〜5V)が加えられる。
【0136】
そして、外部入出力端子となるFPC611には駆動回路部まで信号を伝達するための接続配線612、613、及び電源供給線609に接続された接続配線614が設けられている。
【0137】
また、図8に示した自発光装置の回路構成の一例を図9に示す。本実施例の自発光装置は、ソース側駆動回路801、ゲート側駆動回路(A)807、ゲート側駆動回路(B)811、画素部806を有している。なお、本明細書中において、駆動回路部とはソース側処理回路およびゲート側駆動回路を含めた総称である。
【0138】
ソース側駆動回路801は、シフトレジスタ802、レベルシフタ803、バッファ804、サンプリング回路(サンプル及びホールド回路)805を備えている。また、ゲート側駆動回路(A)807は、シフトレジスタ808、レベルシフタ809、バッファ810を備えている。ゲート側駆動回路(B)811も同様な構成である。
【0139】
ここでシフトレジスタ802、808は駆動電圧が5〜16V(代表的には10V)であり、回路を形成するCMOS回路に使われるnチャネル型TFTは図6(C)の205で示される構造が適している。
【0140】
また、レベルシフタ803、809、バッファ804、810はシフトレジスタと同様に、図6(C)のnチャネル型TFT205を含むCMOS回路が適している。なお、ゲート配線をダブルゲート構造、トリプルゲート構造といったマルチゲート構造とすることは、各回路の信頼性を向上させる上で有効である。
【0141】
また、サンプリング回路805はソース領域とドレイン領域が反転する上、オフ電流値を低減する必要があるので、図7のnチャネル型TFT208を含むCMOS回路が適している。
【0142】
また、画素部806は図2に示した構造の画素を配置する。
【0143】
なお、上記構成は、図4〜6に示した作製工程に従ってTFTを作製することによって容易に実現することができる。また、本実施例では画素部と駆動回路部の構成のみ示しているが、本実施例の作製工程に従えば、その他にも信号分割回路、D/Aコンバータ回路、オペアンプ回路、γ補正回路など駆動回路以外の論理回路を同一基板上に形成することが可能であり、さらにはメモリ部やマイクロプロセッサ等を形成しうると考えている。
【0144】
さらに、ハウジング材をも含めた本実施例のELモジュールについて図10(A)、(B)を用いて説明する。なお、必要に応じて図8、図9で用いた符号を引用することにする。
【0145】
図10(A)は、図8に示した状態にシーリング構造を設けた状態を示す上面図である。点線で示された602は画素部、603はゲート側駆動回路、604はソース側駆動回路である。本発明のシーリング構造は、図8の状態に対して充填材(図示せず)、ハウジング材1101、シール材(図示せず)及びフレーム材1102を設けた構造である。
【0146】
ここで、図10(A)をA−A’で切断した断面図を図10(B)に示す。なお、図10(A)、(B)では同一の部位に同一の符号を用いている。
【0147】
図10(B)に示すように、基板601上には画素部602、ゲート側駆動回路603が形成されており、画素部602は電流制御用TFT202とそれに電気的に接続された画素電極348を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路603はnチャネル型TFT205とpチャネル型TFT206とを相補的に組み合わせたCMOS回路を用いて形成される。
【0148】
画素電極348はEL素子の陽極として機能する。また、画素電極348の両端にはバンク349が形成され、バンク349の内側にEL層350、陰極351が形成される。また、その上には保護電極352、第2パッシベーション膜353が形成される。勿論、発明の実施の形態にも述べたようにEL素子の構造を反対とし、画素電極を陰極としても構わない。
【0149】
本実施例の場合、保護電極352は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線612を経由してFPC611に電気的に接続されている。さらに、画素部602及びゲート側駆動回路603に含まれる素子は全て第2パッシベーション膜353で覆われている。この第2パッシベーション膜353は省略することも可能であるが、各素子を外部と遮断する上で設けた方が好ましい。
【0150】
次に、EL素子を覆うようにして充填材1103を設ける。この充填材1103はハウジング材1101を接着するための接着剤としても機能する。充填材1103としては、PVC(ポリビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)
を用いることができる。この充填材1103の内部に乾燥剤(図示せず)を設けておくと、吸湿効果を保ち続けられるので好ましい。このとき、乾燥剤は充填材に添加されたものであっても良いし、充填材に封入されたものであっても良い。
また、上述した充填材の代わりに不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の他、不活性液体(パーフルオロアルカンに代表されるのは、液状フッ素化炭素等である)を充填させてもよい。
【0151】
また、本実施例ではハウジング材1101としては、ガラス、プラスチック、およびセラミックスからなる材料を用いることができる。なお、充填材1103の内部に予め酸化バリウム等の吸湿剤を添加しておくことは有効である。
【0152】
次に、充填材1103を用いてハウジング材1101を接着した後、充填材1103の側面(露呈面)を覆うようにフレーム材1102を取り付ける。フレーム材1102はシール材(接着剤として機能する)1104によって接着される。このとき、シール材1104としては、光硬化性樹脂を用いるのが好ましいが、EL層の耐熱性が許せば熱硬化性樹脂を用いても良い。なお、シール材1104はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、シール材1104の内部に乾燥剤を添加してあっても良い。
【0153】
以上のような方式を用いてEL素子を充填材1103に封入することにより、EL素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い自発光装置を作製することができる。なお、本実施例において、赤色、緑色または青色に発光する三種類のストライプ状のEL層を同時に縦方向または横方向に形成する例を示したがストライプ状のEL層を長手方向において複数に分割して形成しても良い。
【0154】
また、本実施例では赤色に発光するEL層、緑色に発光するEL層、青色に発光するEL層の全てを図1の薄膜形成装置を用いて形成する例を示しているが、図1の薄膜形成装置を用いるEL層は赤色用、緑色用または青色用の少なくとも一つであっても良い。
【実施例2】
【0155】
次に、図2において説明した画素部におけるコンタクト構造に改良を加える際の作製方法について図11の断面図を用いて説明する。なお、図11における番号は、図2における番号に対応している。本実施例1の工程に従って、図11(A)に示すようにEL素子を構成する画素電極(陽極)40が設けられている状態を得る。
【0156】
次に画素電極上のコンタクト部1900をアクリルで埋め、図11(B)に示すようにコンタクトホール保護部1901を設ける。ここでは、アクリルをスピンコート法により成膜し、レジストマスクを用いて露光した後、エッチングを行うことにより図11(B)に示すようなコンタクトホール保護部1901を形成させる。
【0157】
なお、コンタクトホール保護部1901は、断面から見て画素電極よりも盛り上がっている部分(図11(B)のDaに示す部分)の厚さが0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmとなるのがよい。コンタクトホール保護部1901が形成されると、図11(C)に示すようにEL層42が形成され、さらに陰極43が形成される。EL層42及び陰極43の作製方法は、実施例1と同様の方法を用いればよい。
【0158】
また、コンタクトホール保護部1901には、有機樹脂が好ましく、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)といった材料を用いると良い。また、これらの有機樹脂を用いる際には、粘度を10-3Pa・s〜10-1Pa・sとするとよい。
【0159】
以上のようにして図11(C)に示す様な構造とすることで、コンタクトホールの段差部分で、EL層42が切断された際に生じる画素電極40と陰極43間での短絡の問題を解決することができる。また、図11で示した画素部の上面図を図12に示す。なお、図12で使用される番号は、図11の番号と一致しており、本実施例で示したコンタクトホール保護部1901は上面図で見ると図12の1901で示される位置にあたる。
【0160】
また、本実施例の構成は、実施例1の構成と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0161】
実施例1では、本発明を実施する上でEL層を形成する際に、塗布液が加圧されることにより各ノズルから塗布液が画素部に吐出される加圧タイプの塗布方法を用いた。本実施例では、塗布方法として各ノズルが一本の管からなる柔軟で微細な接触子からなり、この接触子が画素部のバンクに接触することにより塗布液が画素部に吐出されるという毛管現象を利用した万年筆タイプの塗布方法を用いた例を示す。
【0162】
図13(A)に示すように、基板110上にはTFTによって画素部111、ソース側駆動回路112、ゲート側駆動回路113が形成され、画素部111はバンク121によってストライプ状に分割されている。
【0163】
本実施例では、図13の薄膜形成装置を用いてEL層として機能する有機EL材料の成膜工程を行う。ヘッド部124には、赤色用ノズル125a、緑色用ノズル125b、青色用ノズル125cが取り付けられている。これらのノズルの先端には、管状の部品がついており、これを本明細書中では、接触子と呼ぶ。なお、赤色用ノズル125a、緑色用ノズル125b、青色用ノズル125cに取り付けられている接触子をそれぞれ接触子129a、接触子129b、接触子129cとよぶ。
【0164】
この接触子は、シリコン、ゲルマニウムといった半導体材料、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスといった金属、ゴム、テフロン(登録商標)、ガラスやプラスチックでできている。そして、接触子の一端がバンクに接触することにより毛管現象でノズル中の塗布液が注入される。なお、各々のノズルの内部には赤色EL層用塗布液114a、緑色EL層用塗布液114b、青色EL層用塗布液114cが蓄えられている。取り付けられたノズルよって同時に赤色用塗布液114a、緑色用塗布液114b及び青色用塗布液114cを塗り分ける。
【0165】
さらに、ヘッド部124には、超音波振動子122が取り付けられており、また、各ノズル125a、125b、125cには、ヒーター123a、123b、123cがそれぞれ取り付けられている。この超音波振動子及びヒーターは、本明細書中の本実施の形態で示すように塗布液を塗布しやすくするために設けられている。
【0166】
本実施例における特徴は、塗布する位置を一度決めれば、バンク121に沿って塗布液が塗布されるため塗布位置がずれにくいという点にある。
【0167】
また、本実施例においては、ヘッド部124がaで示される方向に移動するのに伴って塗布液が塗布されるだけでなく、毛管現象によっても塗布液が塗布面に広がるのでより均一に効率よく塗布液を塗布することができる。この動作を繰り返して画素部に塗布液を塗布していき、その後、熱処理により溶媒を揮発させて有機EL材料を形成する。
【0168】
なお、本実施例は実施例1で説明した自発光装置の作製に用いることが可能である。バンク121はパターニングによりストライプ状に形成すればよいし、ヘッド部124の動作は電気的に制御すれば良い。なお、バンク121をマトリクス状に形成して画素部を塗布することも可能である。
【0169】
本実施例で示した、万年筆タイプの塗布例に関してノズル部分の構造を変えることにより塗布方法を改良した例を図14に示す。
【0170】
ヘッド部127には、各ノズル125a、125b、125cがそれぞれ取り付けられており、これらのノズルはいずれも図13で示したものと同様に一本の管でなり柔軟で微細な接触子からなる。しかし、ここでは、接触子はバンクと接触しないところに位置している。なお、図14に示されているノズルには、図14(B)に示すように液吸い取り管126a、126b、126cがそれぞれ取り付けられている。つまりそれぞれの接触子の外側に二重になるように液吸い取り管が126a、126b、126cがそれぞれ取り付けられている。
【0171】
この液吸い取り管の役割を図14(C)を用いて説明する。なお、図14(C)は、図14(B)の128の拡大図である。
【0172】
本実施例における塗布液114aは、塗布すべき画素部において画素電極もしくは、すでに塗布された塗布液と接触した際に毛管現象により吐出される。
さらに、塗布液114aは、ノズル125aから矢印bの方向へかけられる圧力や塗布液の重力により吐出が補助される。
【0173】
しかし、吐出される瞬間に表面張力により矢印cの方向へ塗布液が広がってしまい液切れが悪くなる。そこで、広がった塗布液を矢印cの方向に吸い取るための液吸い取り管126aを設ける。
【0174】
液吸い取り管126aを設けることで働く吸引力により吐出部に滞留している余分な塗布液を取り除くことができ、液切れの悪さが改善される。また、吐出される瞬間の塗布液の大きさをすることもでき、さらに吐出部の液詰まりを防止するのに効果的である。
【0175】
また、ノズルの管の外側先端部は、吸い取られた液が液吸い取り管に取り込まれやすくするために濡れ性を高めておくと良い。
【0176】
なお、本実施例において、各液吸い取り管から吸い取られた塗布液は、全て接続されているヘッド部127に回収される。なお、ヘッド部127は外部のポンプ(図示せず)に接続されていることから、ヘッド部に回収された塗布液はポンプにより吸引される。
【実施例4】
【0177】
本実施例は、EL層を形成する際にEL層用の塗布液を荷電粒子とし、これに電圧をかけることにより制御して、画素部に塗布液を塗布するという電着タイプの塗布例を図15に示す。なお、図15(A)は本実施例のモデル図であり、図15(B)は、本実施例を実施した例を示す。図15(A)(B)において、いずれも矢印kの方向に塗布液が塗布されている。
【0178】
図15(A)に示すように基板1801上には、バンク1802が設けられている。次にEL層用の塗布液として有機EL材料を、溶媒に溶解させる。なお、本実施例では、有機EL材料として、赤色EL層としてシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光するEL層として、ポリフェニレンビニレン、青色に発光するEL層としてはポリアルキルフェニレンを用い、溶媒としては、トルエンやN−メチルピロリドンを用いる。
【0179】
なお、溶媒の有機EL材料に対する溶解度を高めるためにアルコールや界面活性剤を混合させても良い。
【0180】
次にEL層用の塗布液をノズル1804で、超音波振動もしくは温度をかけることによりノズルから取り出しやすい霧状の粒子にする。ノズル1804および引き出し電極1805にはそれぞれ電圧がかけられていることから霧状の粒子は、引き出し電極1805によりノズル1804より荷電粒子として引き出される。
【0181】
なお、EL塗布液を荷電粒子として引き出しやすくするために、導電率の高い溶媒を用いて塗布液を作製すると良い。
【0182】
さらに引き出し電極1805により引き出された霧状の粒子は、加速電極1806により引き出された方向に(ノズル1804から基板1801の方向に)加速され、制御電極1807により荷電粒子の流れがコントロールされて最終的に基板1801上の画素部に電着される。
【0183】
本実施例では、ノズル1804から引き出し電極1805により荷電粒子が引き出された後、加速電極1806及び制御電極1807により荷電粒子がうまく基板上の画素に電着されるように補正されているが、電極は、必ずしも3つである必要はなく1つ以上であれば良い。
【0184】
また、ノズル1804には、ヒーター1808及び超音波振動子1809が設けられている。なお、ヒーター1808を設けて温度をかけたり、超音波振動子を設けて超音波振動を加えることにより有機EL材料をノズル1804から引き出しやすくなる。
【実施例5】
【0185】
図10(A)の向きに本発明のアクティブマトリクス型自発光装置を見た時、画素列は縦方向に形成しても良いし、横方向に形成しても良い。即ち、縦方向に画素列を形成した場合は、図16(A)のような配置となり、横方向に画素列を形成した場合は、図16(B)のような配置となる。
【0186】
図16(A)において、1401は縦方向にストライプ状に形成されたバンク、1402aは赤色に発光するEL層、1402bは緑色に発光するEL層である。勿論、緑色に発光するEL層1402bの隣には青色に発光するEL層(図示せず)が形成される。なお、バンク1401は絶縁膜を介したソース配線の上方に、ソース配線に沿って形成される。
【0187】
ここでいうEL層とは、EL層、電荷注入層、電荷輸送層等の発光に寄与する有機EL材料からなる層を指している。EL層単層とする場合もありうるが、例えば正孔注入層とEL層とを積層した場合はその積層膜をEL層と呼ぶ。
【0188】
このとき、点線で示される画素1403の相互の距離(D)は、EL層の膜厚(t)の5倍以上(好ましくは10倍以上)とすることが望ましい。これは、D<5tでは画素間でクロストークの問題が発生しうるからである。なお、距離(D)が離れすぎても高精細な画像が得られなくなるので、5t<D<50t(好ましくは10t<D<35t)とすることが好ましい。
【0189】
また、図16(B)において、1404は横方向にストライプ状に形成されたバンク、1405aは赤色に発光するEL層、1405bは緑色に発光するEL層である。1405cは緑色に発光するEL層である。なお、バンク1404は絶縁膜を介したゲート配線の上方に、ゲート配線に沿って形成される。
【0190】
この場合も点線で示される画素1406の相互の距離(D)は、EL層の膜厚(t)の5倍以上(好ましくは10倍以上)、さらに好ましくは5t<D<50t(好ましくは10t<D<35t)とすると良い。
【0191】
本実施例の構成は、実施例1〜3のいずれの構成と組み合わせて実施しても良い。本実施例のようにEL層を形成する塗布液を電気的に制御することで塗布位置の制御が可能となる。
【0192】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例4のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例6】
【0193】
本実施例では本発明をパッシブ型(単純マトリクス型)の自発光装置に用いた場合について説明する。説明には図17を用いる。図17において、1301はプラスチックからなる基板、1306は透明導電膜からなる陽極である。本実施例では、透明導電膜として酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を蒸着法により形成する。なお、図17では図示されていないが、複数本の陽極が紙面に垂直な方向へストライプ状に配列されている。
【0194】
また、ストライプ状に配列された陽極1302の間を埋めるようにバンク1303が形成される。バンク1303は陽極1302に沿って紙面に垂直な方向に形成されている。
【0195】
次に、ポリマー系有機EL材料からなるEL層1304a〜1304cが図1の薄膜形成装置を用いた成膜方法により形成される。勿論、1304aは赤色に発光するEL層、1304bは緑色に発光するEL層、1304cは青色に発光するEL層である。用いる有機EL材料は実施例1と同様のものを用いれば良い。これらのEL層はバンク1302によって形成された溝に沿って形成されるため、紙面に垂直な方向にストライプ状に配列される。
【0196】
その後、図17では図示されていないが、複数本の陰極及び保護電極が紙面に平行な方向が長手方向となり、且つ、陽極1302と直交するようにストライプ状に配列されている。なお、本実施例では、陰極1305は、MgAgからなり、保護電極1306はアルミニウム合金膜でなり、それぞれ蒸着法により形成される。また、図示されないが保護電極1306は所定の電圧が加えられるように、後にFPCが取り付けられる部分まで配線が引き出されている。
【0197】
また、ここでは図示していないが保護電極1306を形成したら、パッシベーション膜として窒化珪素膜を設けても良い。
【0198】
以上のようにして基板1301上にEL素子を形成する。なお、本実施例では下側の電極が透光性の陽極となっているため、EL層1304a〜1304cで発生した光は下面(基板1301)に放射される。しかしながら、EL素子の構造を反対にし、下側の電極を遮光性の陰極とすることもできる。その場合、EL層1304a〜1304cで発生した光は上面(基板1301とは反対側)に放射されることになる。
【0199】
次に、ハウジング材1307としてセラミックス基板を用意する。本実施例の構造では遮光性で良いのでセラミックス基板を用いたが、勿論、前述のようにEL素子の構造を反対にした場合、ハウジング材は透光性のほうが良いので、プラスチックやガラスからなる基板を用いるとよい。
【0200】
こうしてハウジング材1307を用意したら、乾燥剤(図示せず)として酸化バリウムを添加した充填材1308によりハウジング材1307を貼り合わせる。充填材1308としては、PVC(ポリビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。この充填材1308の内部に乾燥剤(図示せず)を設けておくと、吸湿効果を保ち続けられるので好ましい。このとき、乾燥剤は充填材に添加されたものであっても良いし、充填材に封入されたものであっても良い。また、上述した充填材の代わりに不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の他、不活性液体(パーフルオロアルカンに代表されるのは、液状フッ素化炭素等である)を充填させてもよい。
【0201】
その後、紫外線硬化樹脂からなるシール材1309を用いてフレーム材1310を取り付ける。本実施例ではフレーム材1310としてステンレス材を用いる。最後に異方導電性フィルム1311を介してFPC1312を取り付けてパッシブ型の自発光装置が完成する。
【0202】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例5のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例7】
【0203】
本発明を実施してアクティブマトリクス型の自発光装置を作製する際に、基板としてシリコン基板(シリコンウェハー)を用いることは有効である。基板としてシリコン基板を用いた場合、画素部に形成するスイッチング用素子や電流制御用素子または駆動回路部に形成する駆動用素子を、従来のICやLSIなどに用いられているMOSFETの作製技術を用いて作製することができる。
【0204】
MOSFETはICやLSIで実績があるように非常にばらつきの小さい回路を形成することが可能であり、特に電流値で階調表現を行うアナログ駆動のアクティブマトリクス型自発光装置には有効である。
【0205】
なお、シリコン基板は遮光性であるので、EL層からの光は基板とは反対側に放射されるような構造とする必要がある。本実施例の自発光装置は構造的には図10と似ているが、画素部602、駆動回路部603を形成するTFTの代わりにMOSFETを用いる点で異なる。
【0206】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例6のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例8】
【0207】
本発明を実施して形成された自発光装置は、自発光型であるため液晶表示装置に比べて明るい場所での視認性に優れ、しかも視野角が広い。従って、様々な電子機器の表示部として用いることができる。例えば、TV放送等を大画面で鑑賞するには対角30インチ以上(典型的には40インチ以上)のELディスプレイ(自発光装置を筐体に組み込んだディスプレイ)の表示部として本発明の自発光装置を用いるとよい。
【0208】
なお、ELディスプレイには、パソコン用ディスプレイ、TV放送受信用ディスプレイ、広告表示用ディスプレイ等の全ての情報表示用ディスプレイが含まれる。また、その他にも様々な電子機器の表示部として本発明の自発光装置を用いることができる。
【0209】
その様な本発明の電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から見ることの多い携帯情報端末は視野角の広さが重要視されるため、自発光装置を用いることが望ましい。それら電子機器の具体例を図18、図19に示す。
【0210】
図18(A)はELディスプレイであり、筐体2001、支持台2002、表示部2003等を含む。本発明は表示部2003に用いることができる。ELディスプレイは自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。
【0211】
図18(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本発明の自発光装置は表示部2102に用いることができる。
【0212】
図18(C)は頭部取り付け型のELディスプレイの一部(右片側)であり、本体2201、信号ケーブル2202、頭部固定バンド2203、表示部2204、光学系2205、自発光装置2206等を含む。本発明は自発光装置2206に用いることができる。
【0213】
図18(D)は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)
であり、本体2301、記録媒体(DVD等)2302、操作スイッチ2303、表示部(a)2304、表示部(b)2305等を含む。表示部(a)は主として画像情報を表示し、表示部(b)は主として文字情報を表示するが、本発明の自発光装置はこれら表示部(a)、(b)に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0214】
図18(E)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体2401、カメラ部2402、受像部2403、操作スイッチ2404、表示部2405等を含む。本発明の自発光装置は表示部2405に用いることができる。
【0215】
図18(F)はパーソナルコンピュータであり、本体2501、筐体2502、表示部2503、キーボード2504等を含む。本発明の自発光装置は表示部2503に用いることができる。
【0216】
なお、将来的にEL材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0217】
また、上記電子装置はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増してきている。EL材料の応答速度は非常に高いため、自発光装置は動画表示に好ましいが、画素間の輪郭がぼやけてしまっては動画全体もぼけてしまう。従って、画素間の輪郭を明瞭にするという本発明の自発光装置を電子装置の表示部として用いることは極めて有効である。
【0218】
また、自発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なくなるように情報を表示することが望ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生装置のような文字情報を主とする表示部に自発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが望ましい。
【0219】
ここで図19(A)は携帯電話であり、本体2601、音声出力部2602、音声入力部2603、表示部2604、操作スイッチ2605、アンテナ2606を含む。本発明の自発光装置は表示部2604に用いることができる。なお、表示部2604は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0220】
また、図19(B)は音響再生装置、具体的にはカーオーディオであり、本体2701、表示部2702、操作スイッチ2703、2704を含む。本発明の自発光装置は表示部2702に用いることができる。また、本実施例では車載用オーディオを示すが、携帯型や家庭用の音響再生装置に用いても良い。なお、表示部2704は黒色の背景に白色の文字を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型の音響再生装置において特に有効である。
【0221】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に用いることが可能である。また、本実施例の電気器具は実施例1〜7に示したいずれの構成の自発光装置を用いても良い。
【実施例9】
【0222】
本明細書中の薄膜形成装置において、ノズルを有するヘッド部分に超音波振動子を設ける構造を示しているが、この超音波振動子を設けることで、ノズルの先端部に液切れをよくするための超音波振動が加えられるのが好ましい。
【0223】
なお、超音波振動子の材料としては、ニッケルやクロムやコバルトからなる合金、または鉄やアルミニウムからなる合金といった磁場を印加すると伸びまたは縮みの変形(磁歪現象とも言う)を生じうる磁歪材料や、チタン酸バリウム系(BaTiO3)、チタン酸ジルコニウム酸鉛系(Pb(Zr,Ti)O3といった電圧を加えると変位や力が発生する圧電材料を用いる。
【0224】
また、構造としては、図20(a)で示すように超音波振動子122を薄膜形成装置のヘッド部に設けて、超音波振動子122により与えられた超音波振動がノズルの先端に最大となって伝わるように、すなわち振動振幅の腹部になるように設定しても良いが、図20(b)で示すようにノズルに直接振動板132を接続させて、振動板132に接続された超音波振動子131からの超音波振動を効果的にノズルの先端に伝えるような構造にしても良い。
【0225】
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例8のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にストライプ状に配列された第1の電極を形成し、
前記第1の電極同士の間を埋めるように、前記第1の電極に沿ってバンクを形成し、
ノズルからEL層を形成する塗布液を吐出して、前記第1の電極上にEL層を形成し、
前記EL層及び前記バンク上に、前記第1の電極と直交するようにストライプ状に配列された第2の電極を形成するものであり、
前記ノズルには超音波振動子及びヒーターが設けられ、当該超音波振動子が前記塗布液に超音波振動を与え、当該ヒーターが前記塗布液を加熱し、前記塗布液は霧状の粒子となってノズルから取り出され、
前記霧状の粒子は、引き出し電極により引き出され、加速電極により引き出された方向に加速され、制御電極により制御されて前記第1の電極上に塗布されて前記EL層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項2】
基板上にTFTを形成し、
前記TFTと電気的に接続される画素電極を形成し、
前記画素電極同士の間にストライプ状にバンクを形成し、
ノズルからEL層を形成する塗布液を吐出して、前記画素電極上にEL層を形成し、
前記EL層及び前記バンク上に前記画素電極と対向する電極を形成するものであり、
前記ノズルには超音波振動子及びヒーターが設けられ、当該超音波振動子が前記塗布液に超音波振動を与え、当該ヒーターが前記塗布液を加熱し、前記塗布液は霧状の粒子となってノズルから取り出され、
前記霧状の粒子は、引き出し電極により引き出され、加速電極により引き出された方向に加速され、制御電極により制御されて前記画素電極上に塗布されて前記EL層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、前記バンクは、前記画素電極の端部を覆うように形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記霧状の粒子は前記引き出し電極により荷電粒子として引き出されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記塗布液はトルエン又はN−メチルピロリドンを溶媒として用いることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、前記バンクは樹脂材料で形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項1】
基板上にストライプ状に配列された第1の電極を形成し、
前記第1の電極同士の間を埋めるように、前記第1の電極に沿ってバンクを形成し、
ノズルからEL層を形成する塗布液を吐出して、前記第1の電極上にEL層を形成し、
前記EL層及び前記バンク上に、前記第1の電極と直交するようにストライプ状に配列された第2の電極を形成するものであり、
前記ノズルには超音波振動子及びヒーターが設けられ、当該超音波振動子が前記塗布液に超音波振動を与え、当該ヒーターが前記塗布液を加熱し、前記塗布液は霧状の粒子となってノズルから取り出され、
前記霧状の粒子は、引き出し電極により引き出され、加速電極により引き出された方向に加速され、制御電極により制御されて前記第1の電極上に塗布されて前記EL層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項2】
基板上にTFTを形成し、
前記TFTと電気的に接続される画素電極を形成し、
前記画素電極同士の間にストライプ状にバンクを形成し、
ノズルからEL層を形成する塗布液を吐出して、前記画素電極上にEL層を形成し、
前記EL層及び前記バンク上に前記画素電極と対向する電極を形成するものであり、
前記ノズルには超音波振動子及びヒーターが設けられ、当該超音波振動子が前記塗布液に超音波振動を与え、当該ヒーターが前記塗布液を加熱し、前記塗布液は霧状の粒子となってノズルから取り出され、
前記霧状の粒子は、引き出し電極により引き出され、加速電極により引き出された方向に加速され、制御電極により制御されて前記画素電極上に塗布されて前記EL層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、前記バンクは、前記画素電極の端部を覆うように形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記霧状の粒子は前記引き出し電極により荷電粒子として引き出されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記塗布液はトルエン又はN−メチルピロリドンを溶媒として用いることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、前記バンクは樹脂材料で形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−175986(P2011−175986A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133923(P2011−133923)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2001−27421(P2001−27421)の分割
【原出願日】平成13年2月2日(2001.2.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2001−27421(P2001−27421)の分割
【原出願日】平成13年2月2日(2001.2.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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