説明

発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置

【課題】管の内面における発光特性の均一性が高い発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置を提供する。
【解決手段】円筒管1と、円筒管1の内面へ有機EL素子12の原料の放出を行なう坩堝9vとが相対運動を行なうように、坩堝9vおよび円筒管1の少なくともいずれかを動かしながら放出を行なうことにより、円筒管1の内面に有機EL素子12が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置に関し、特に、管の内面に形成された有機EL素子を含む発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electro Luminescence)素子が形成された円筒型の面発光デバイスが提案されている。たとえば特開2007−73403号公報によれば、面発光デバイスは、円筒形状の透明基材(管)と、この透明基材に形成された有機EL素子とを有している。有機EL素子を構成する膜の成膜方法は、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法およびCVD(Chemical Vapor Deposition)法のいずれかである。
【特許文献1】特開2007−73403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の成膜方法では、放出された原料が管の内面に付着することで、有機ELを構成する膜が形成される。たとえば真空蒸着法において蒸着源と管の一方端部とが対向するように配置された場合、蒸発した原料は管の一方端部から管の中に入り込み、管の内部を管の長さ方向に進んでいく。この過程で、原料が管の長さ方向に進む距離が長いほど、原料はより拡散される。よって管の内面のうち、管の一方端部の近傍では厚い膜が形成され、管の他方端部の近傍では薄い膜が形成される。この膜の厚みのばらつきに起因して、管の内面における発光特性の不均一性が大きくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その一の目的は、管の内面における発光特性の均一性が高い発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置を提供することである。
【0005】
また本発明の他の目的は、原料を効率的に使用することができる、発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置の製造方法は、管と、管の内面に形成された有機EL素子とを含む発光装置の製造方法であって、以下の工程を有している。
【0007】
まず管が準備される。管と、管の内面へ有機EL素子の原料の放出を行なう放出部とが相対運動を行なうように、放出部および管の少なくともいずれかを動かしながら放出を行なうことにより、管の内面に有機EL素子が形成される。
【0008】
本発明の発光装置の製造方法によれば、管と放出部とが相対運動を行ないながら管の内面に有機EL素子が形成されるので、管と放出部との相対的な位置関係が固定されている場合に比して管の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。よって管の内面における発光特性の均一性を高めることができる。
【0009】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、相対運動は、管と管の中に配置された放出部とが管の長さ方向に相対的に変位する運動を含む。放出部が管の中に配置されることにより、放出された原料の多くの割合が管の内面に達するので、有機EL用の高価な原料を管の内面上の成膜のために効率的に使用することができる。よって発光装置の製造コストを下げることができる。また放出部が長さ方向に移動するので、管の長さ方向における膜厚の均一性を高めることができる。
【0010】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、相対運動は、管が管の長さ方向を中心として自転する運動を含む。これにより、管の長さ方向周りにおける膜厚の均一性を高めることができる。
【0011】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、放出は、管の内部に配置された原料を放出部から飛散させることにより行なわれる。これにより、たとえば真空蒸着法またはスパッタリング法のように原料が飛散される成膜方法を用いて、管の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。
【0012】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、管の外部から内部へ延び、かつ管の内部の側の端部が放出部となる原料供給路を用いて、管の外部から内部へ気体状の原料を流すことにより放出が行なわれる。これにより、管の外部から流される気体状の原料の種類を順次変更することで連続して異なる材質の膜を形成することができる。よって複数の互いに材質の異なる膜が積層されて構成された有機EL素子を効率的に製造することができる。
【0013】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、放出は、管の長さ方向が重力方向に対して斜めになるように支持されかつ管の長さ方向を中心として自転する管の内部へ、原料として液体を注ぐことにより行なわれる。これにより、真空蒸着法を用いた成膜が困難な、高分子系の有機EL材料を用いた成膜を行なうことができる。
【0014】
本発明の発光装置の製造装置は、管と、管の内面に形成された有機EL素子とを含む発光装置の製造装置であって、放出部と、駆動部とを有している。放出部は、管の内面へ有機EL素子の原料を放出することができるように構成されている。駆動部は、放出部が原料を放出している際に、放出部と管とに相対運動を行なわせることができるように構成されている。本発明の発光装置の製造装置によれば、管と放出部とが相対運動を行なうので、管と放出部との相対的な位置関係が固定されている場合に比して管の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。よって管の内面における発光特性の均一性を高めることができる。
【0015】
上記の発光装置の製造装置において好ましくは、相対運動は、管と管の中に配置された放出部とが管の長さ方向に相対的に変位する運動を含む。放出部が管の中に配置されることにより、放出された原料の多くの割合が管の内面に達するので、有機EL用の高価な原料を管の内面上の成膜のために効率的に使用することができる。よって発光装置の製造コストを下げることができる。また放出部が長さ方向に移動するので、管の長さ方向における膜厚の均一性を高めることができる。
【0016】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、相対運動は、管が管の長さ方向を中心として自転する運動を含む。これにより、管の長さ方向周りにおける膜厚の均一性を高めることができる。
【0017】
上記の発光装置の製造方法において好ましくは、放出部は複数の放出部分を有し、かつ発光装置の製造装置は容器と搬送部とをさらに有している。容器は複数の放出部分を収めている。搬送部は、容器内において、管を複数の放出部分の各々に対応する位置へ順に移動させることができるように構成されている。これにより、複数の放出部分の各々を用いた成膜を、管を容器から取り出すことなしに、連続して行なうことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、管と放出部とが相対運動を行なうので、管と放出部との相対的な位置関係が固定されている場合に比して管の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。よって管の内面における発光特性の均一性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
はじめに本実施の形態の発光装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態1における発光装置の構成を概略的に示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態の発光装置は、円筒管1と、有機EL素子12と、封止部品110、110と、電極112a、112bと、配線113a、113bとを有している。円筒管1は、長さ方向(図中LD方向)に延びる空洞部を有する透光性の管である。より具体的には円筒管1は、たとえばソーダ石灰ガラスにより形成された、直径50mm、長さ540mm、厚さ1mmの管である。有機EL素子12は、円筒管1の内面上に順に、保護層12aと、透明陽極層12bと、第1〜第4の層12c〜12fと、陰極層12gとを有している。保護層12aは、アルカリ金属イオンの移動を防止する機能を有している。よって円筒管1の材質にソーダ石灰ガラスなどのアルカリ金属イオンを含む材質が用いられても、円筒管1から透明陽極層12bへアルカリ金属イオンが移動することが防止される。保護層12aは、たとえば酸化シリコン(SiO2)により形成された厚さ10nmの層である。透明陽極層12bは、透光性を有しており、かつ有機EL素子12の陽極としての機能を有している。透明陽極層12bは、たとえば酸化インジウム錫(ITO(Tin doped Indium Oxide))により形成された厚さ1μmの層である。
【0021】
第1の層12cは、たとえば下記の式(1)に示す有機材料(NPD)から形成された厚さ40nmの層である。
【0022】
【化1】

【0023】
第2の層12dは、たとえば、下記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)を主成分とし、かつ下記の式(3)に示すペリレン(C2012)により1.5重量%のドーピングがなされた、厚さ7nmの層である。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
第3の層12eは、たとえば、上記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)を主成分とし、かつ下記の式(4)に示す有機材料(DCM1)により0.25重量%のドーピングがなされた、厚さ23nmの層である。
【0027】
【化4】

【0028】
第4の層12fは、たとえば、上記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)から形成された、厚さ30nmの層である。
【0029】
陰極層12gは、有機EL素子12の陰極としての機能を有し、たとえばアルミニウムにより形成された厚さ0.5μmの層である。なお有機EL素子12上の領域のうち円筒管1の長さ方向の両端側の領域は、陰極層12gが形成されていない領域であるショート防止用スペースSPとなっている。ショート防止用スペースSPが設けられていることにより、陰極層12gと透明陽極層12bとが有機EL素子12の端部において短絡することが防止されている。
【0030】
なお上記の第1の層12cはホール輸送層としての機能を有し、第4の層12fは電子輸送層としての機能を有している。また第2の層12dおよび第3の層12eのそれぞれは、ドーパント色素としてペリレンおよびDCM1を含有することにより、発光層としての機能を有している。第2の層12dおよび第3の層12eのそれぞれにおいて青色およびオレンジ色の発光が生じ、これら2色の光が混合することで白色の光が得られる。
【0031】
封止部品110、110のそれぞれは、不活性ガス115が充填された円筒管1内部を封止している。配線113aの一端は透明陽極層12bに電気的に接続されており、配線113aの他端は電極112aに電気的に接続されている。配線113bの一端は陰極層12gに電気的に接続されており、配線113bの他端は電極112bに電気的に接続されている。また電極112a、112bの各々は封止部品110を貫通して形成されている。この構成により、円筒管1の封止領域の外に露出した電極112aと電極112bとの間に電圧を印加することで、透明陽極層12bと陰極層12gとの間に電圧が印加される。この電圧により上記の発光層における発光が生じる。
【0032】
次に本実施の形態の発光装置の製造装置としての蒸着装置について説明する。図2は、本発明の実施の形態1における発光装置の製造装置としての真空蒸着装置の構成を概略的に示す断面図である。なお図2においては真空蒸着装置本体に加えて、円筒管、形成中の有機EL素子、および固体原料も図示されている。
【0033】
図2を参照して、本実施の形態の発光装置の製造装置としての成膜装置100Vは、円筒管1と、円筒管1の内面に形成された有機EL素子12とを含む発光装置の製造装置である。成膜装置100Vは、主に、真空容器5と、固定冶具2と、坩堝9v(放出部)と、冷却器7と、駆動部3、11とを有している。
【0034】
真空容器5は、真空ポンプ6により真空蒸着に適した圧力まで減圧されることができる。
【0035】
固定冶具2は、真空容器5内に円筒管1を支持するための冶具である。固定冶具2は、図中の破線部Fで示すように、円筒管1の長さ方向LDの一方端部(図中上側の端部)における縁部分を保持することで、円筒管1を支持することができる。なお図中においては固定冶具2により円筒管1の縁部分の外周側のみが保持されているが、内周側のみ、あるいは外周側および内周側の両方が保持されてもよい。また図中においては固定冶具2により円筒管1の一方端部が保持されているが、円筒管1の両端部が保持されてもよい。
【0036】
坩堝9vは、ヒータ10により加熱されることができる。これにより坩堝9vに入れられた固体原料8bを加熱することができる。また坩堝9vは、本体部分に加えてさらに上蓋9vLを有している。上蓋9vLは、本体部分との間に隙間GPが設けられるように坩堝9vの本体部分に固定されている。坩堝9vの材質は、たとえば窒化ホウ素である。
【0037】
冷却器7は、円筒管1の外面部分から熱を奪うことにより円筒管1を冷却することができるように構成されている。
【0038】
駆動部は、回転導入器3と、直線駆動機構11とを有している。回転導入器3は、固定冶具2が円筒管1の長さ方向LDを中心に回転することができるように固定冶具2を支持している。また回転導入器3は回転モータ4aの回転力を固定冶具2に伝達することができるように構成されている。これにより円筒管1を円筒管1の長さ方向LDを中心として自転させることができる。円筒管1が自転する運動により、坩堝9vが原料を放出している際に、坩堝9vから見て円筒管1は円筒管1の長さ方向LDを中心として自転する運動を行なうことができる。すなわち坩堝9vと円筒管1とが相対運動を行なうことができる。直線駆動機構11は、円筒管1の中で坩堝9vを円筒管1の長さ方向LDに沿って直線的に変位させることができるように構成されている。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置された坩堝9vとを円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位させることができる。すなわち坩堝9vと円筒管1とが相対運動を行なうことができる。
【0039】
次に本実施の形態の発光装置の製造方法の概要について説明する。図1および図2を参照して、保護層12a、透明陽極層12b、第1〜第4の層12c〜12f、および陰極層12gの各々に対応する固体原料8bと、円筒管1とが準備される。そして坩堝9v内に収められる固体原料8bの種類を入れ替えながら成膜装置100Vにより真空蒸着が行なわれる。これにより円筒管1の内面上に有機EL素子12が形成される。次に、封止部品110、110、電極112a、112b、および配線113a、113bが取り付けられ、また円筒管1の内部に不活性ガス115が充填される。これにより発光装置(図1)が得られる。
【0040】
次に有機EL素子12のうち有機物から形成されている部分である第1〜第4の層12c〜12fの形成工程について詳しく説明する。まず第1〜第4の層12c〜12fの真空蒸着に用いられる固体原料8bとして、粉体の原料が準備される。また各原料ごとに坩堝9vが準備される。そして第1〜第4の層12c〜12fのそれぞれ対応する固体原料8bが収められた複数の坩堝9vのひとつが真空容器5内に取り付けられる。また円筒管1が固定冶具2により成膜装置100Vに取り付けられる。真空ポンプ6により真空容器5内部が減圧される。冷却器7の内部に冷媒が流されることにより、円筒管1の温度が50℃以下に保たれる。回転モータ4aが駆動されることにより、円筒管1が長さ方向LDを中心として自転する。この円筒管1が自転する運動により、坩堝9vから見て円筒管1は円筒管1の長さ方向LDを中心として自転する運動を行なう。自転速度は、たとえば30rpmである。また直線駆動機構11が駆動されることにより、坩堝9vが円筒管1の長さ方向LDに沿って円筒管1の中で往復するように変位する。変位速度は、たとえば20mm/秒である。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置された坩堝9vとが円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位する。すなわち坩堝9vと円筒管1とが相対運動を行なう。ヒータ10に直流電流が流されることにより固体原料8bが加熱されることで、固体原料8bが坩堝9vから隙間GPを介して蒸発する。すなわち円筒管1の内部に配置された固体原料8bが、坩堝9vからその周囲に飛散する。飛散された固体原料8bの少なくとも一部が円筒管1の内面へ付着することで、円筒管1の内面に真空蒸着による層の形成が行なわれる。異なる材質の固体原料8bが収められた複数の坩堝9vが順次用いられて真空蒸着が行なわれることで、第1〜第4の層12c〜12fからなる積層構造が得られる。
【0041】
次に陰極層12gの形成工程について詳しく説明する。固体原料8bとしてアルミニウム材が収められた坩堝9vが真空容器5内に取り付けられる。また第1〜第4の層12c〜12fが形成された円筒管1が固定冶具2により成膜装置100Vに取り付けられる。またショート防止用スペースSP(図1)を覆うように、円筒状のマスクが円筒管1内に挿入される。次に第1〜第4の層12c〜12fの形成工程と同様の真空蒸着が行なわれる。これにより陰極層12gが形成される。
【0042】
なお透明陽極層12bは、上述した真空蒸着法の代わりに、スパッタリング装置を用いたスパッタリング法により形成することもできる。以下にこの形成方法について説明する。
【0043】
はじめに本実施の形態の発光装置の製造装置としてのスパッタリング装置について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における発光装置の製造装置としてのスパッタリング装置の構成を概略的に示す断面図である。なお図3においてはスパッタリング装置本体に加えて、円筒管、形成中の有機EL素子、および原料ターゲットも図示されている。また図4は、図3のスパッタリング装置の電極である平行平板の形状と配置とを示す概略的な部分斜視図である。
【0044】
図3および図4を参照して、本実施の形態の発光装置の製造装置としてのスパッタリング装置100Sは、マグネトロン電極9e(放出部)と、平行平板22と、高周波電源23と、ランプヒータ21と、Ar(アルゴン)ガスボンベ25と、質量流量計16とを有している。マグネトロン電極9eは、原料ターゲット8tのターゲット面が円筒管1の内面と対向するように、原料ターゲット8tを載せることができるように構成されている。高周波電源23は、マグネトロン電極9eと、金属製の平行平板22との間に高周波電力を印加することができるように接続されている。Arガスボンベ25は質量流量計16を介して真空容器5に接続されている。直線駆動機構11は、マグネトロン電極9eを円筒管1の長さ方向LDに円筒管1の中で変位させることができるように構成されている。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置されたマグネトロン電極9eとを円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位させることができる。すなわちマグネトロン電極9eと円筒管1とが相対運動を行なう。ランプヒータ21は、円筒管1の外面部分を加熱することにより、円筒管1を加熱することができるように構成されている。なお上記以外の構成については成膜装置100Vの構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
次にスパッタリング法による透明陽極層12bの形成方法について説明する。図3を参照して、ITOからなる原料ターゲット8tと、円筒管1とが準備される。そしてマグネトロン電極9e上に原料ターゲット8tが取り付けられる。また円筒管1が固定冶具2によりスパッタリング装置100Sに取り付けられる。真空ポンプ6により真空容器5内部が真空引きされつつ、Arガスボンベ25から質量流量計16を介して真空容器5にArガスが20sccm/分で供給されることで、真空容器5内の圧力が0.0001atmに保持される。ランプヒータ21により円筒管1の温度が300℃に保たれる。回転モータ4aが駆動されることにより、円筒管1が長さ方向LDを中心として自転する。この円筒管1が自転する運動により、マグネトロン電極9eから見て円筒管1は円筒管1の長さ方向LDを中心として自転する運動を行なう。自転速度は、たとえば30rpmである。また直線駆動機構11が駆動されることにより、マグネトロン電極9eが円筒管1の長さ方向LDに沿って円筒管1の中で往復するように変位する。変位速度は、たとえば20mm/秒である。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置されたマグネトロン電極9eとが円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位する。すなわちマグネトロン電極9eと円筒管1とが相対運動を行なう。高周波電源23によりマグネトロン電極9eと平行平板22との間に周波数13.56MHz、出力100Wの高周波電力が印加される。これにより生じたArプラズマにより原料ターゲット8tがスパッタされる。この結果、円筒管1の内部に配置された原料ターゲット8tが、マグネトロン電極9e上から飛散される。飛散された原料ターゲット8tの少なくとも一部が円筒管1の内面へ付着することで、円筒管1の内面に透明陽極層12bの形成が行なわれる。
【0046】
また保護層12aは、上述した真空蒸着法の代わりに、プラズマCVD法により形成されることもできる。図5を参照して、プラズマCVD法に用いられるプラズマCVD装置100Rは、主に、平行平板22x、22yと、高周波電源23と、気体原料20と、質量流量計16と、ランプヒータ21と、ガス管71とを有している。気体原料20としては、たとえば、TEOS(Tetra Ortho Silicate)ガス、酸素(O2)ガス、およびヘリウム(He)ガスが準備される。質量流量計16により流量が制御されることで、TEOSガス0.1sccm/分、酸素ガス10sccm/分、およびヘリウムガス500cc/分の条件で、ガス管71を経由してプロセスガスが真空容器5内に導入される。また真空ポンプ6により真空容器5内の圧力が0.01atmに保たれる。またランプヒータ21により円筒管1全体の温度が300℃に保たれる。回転モータ4aが駆動することにより、円筒管1は30rpmで自転運動する。高周波電源23により、周波数13.56MHz、出力50Wの高周波電力が平行平板22x、22y間に印加される。この高周波電力により円筒管1内にプラズマが発生する。このプラズマにより円筒管1内に導入されたガスが分解することで、円筒管1の内面に保護層12aが形成される。
【0047】
本実施の形態によれば、円筒管1と、坩堝9v(図2)またはマグネトロン電極9e(図3)とが相対運動を行なうので、円筒管1と放出部との相対的な位置関係が固定されている場合に比して、円筒管1の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。よって円筒管1の内面に形成された有機EL素子12の発光特性の均一性を高めることができる。
【0048】
また坩堝9v(図2)またはマグネトロン電極9e(図3)が円筒管1の中に配置されることにより、坩堝9vまたはマグネトロン電極9eから放出された原料の多くの割合が、円筒管1の外部に飛散することなく、円筒管1の内面に達する。このため有機EL素子12用の高価な原料を円筒管1の内面上の成膜のために効率的に使用することができる。よって発光装置の製造コストを下げることができる。
【0049】
また坩堝9v(図2)またはマグネトロン電極9e(図3)が円筒管1の長さ方向LDに移動するので、円筒管1の長さに関わらず、長さ方向LDにおける膜厚の均一性を高めることができる。
【0050】
また円筒管1が長さ方向LDを中心として自転するので、長さ方向LD周りにおける有機EL素子12を構成する各層の厚みの均一性を高めることができる。
【0051】
また坩堝9vが上蓋9vLを有するので、固体原料8bを円筒管1の内面に向かって飛散させることができる。
【0052】
また原料ターゲット8tのターゲット面が円筒管1の内面と対向しているので、原料ターゲット8tを円筒管1の内面に向かって飛散させることができる。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態においては第1〜第4の層12c〜12fはガス輸送法により形成される。ここでガス輸送法とは、OVPD(Organic Vapor Phase Deposition)法とも称され、以下の工程を含む成膜方法のことである。
【0054】
有機物からなる出発原料が加熱されることで昇華または蒸発される。昇華または蒸発された有機物がキャリヤガスに含められる。有機物が再固化しないように加熱を行ないながら、有機物を含んだキャリヤガスが成膜される領域まで輸送される。成膜される領域は冷却されており、この領域でキャリヤガス中の有機物が再固化されることで成膜が行なわれる。
【0055】
図6は、本発明の実施の形態2における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。なお図6においては成膜装置本体に加えて、円筒管および形成中の有機EL素子も図示されている。
【0056】
図6を参照して、本実施の形態の発光装置の製造装置としての成膜装置100Gは、原料供給路19と、ヒータ10と、ガス輸送管72と、気化器13と、オーブン14と、質量流量計16と、ガス加熱器17と、ガスボンベ15とを有している。原料供給路19は円筒管1の外部から内部へと延びる管状の部材である。原料供給路19の両端のうち円筒管1の内部の側の端部(図中の上端部)は開口部となっている。これにより、原料供給路19は円筒管1の外部から内部へと気体を流すことができ、かつ原料供給路19の上端部がこの気体を放出することができるガスノズル9g(放出部)となっている。また原料供給路19の両端のうち円筒管1の外部の側の端部(図中の下端部)は、ガス輸送管72を経由してガスボンベ15に接続されている。ガスボンベ15はガス輸送法におけるキャリヤガスの供給源である。ガス輸送管72の途中には、ガスボンベ15側から順に、質量流量計16と、ガス加熱器17と、気化器13とが設けられている。オーブン14は、気化器13を加熱することにより、気化器13に収められた固体原料8bから蒸発原料18(気体状の原料)を生じさせる機能を有している。ヒータ10は、ガス加熱器17とガスノズル9gとの間のガス輸送管72を加熱する機能を有している。直線駆動機構11は、ガスノズル9gを円筒管1の長さ方向LDに沿って円筒管1の中で変位させることができるように構成されている。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置されたガスノズル9gとを円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位させることができる。すなわちガスノズル9gと円筒管1とが相対運動を行なう。なお上記以外の構成については実施の形態1の成膜装置100Vの構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
次に成膜装置100Gを用いたガス輸送法による第1〜第4の層12c〜12f(図1)の形成方法について説明する。図6を参照して、第1の層12cの材質からなる粉末状の固体原料8bと、円筒管1とが準備される。そして気化器13内に固体原料8bが入れられる。また円筒管1が固定冶具2により成膜装置100Gに取り付けられる。真空ポンプ6により真空容器5内部が真空引きされつつ、質量流量計16によりガスボンベ15から真空容器5にN2(窒素)ガスが500sccm/分で供給されることで、真空容器5内が0.001atmに保持される。ヒータ10により、ガス加熱器17とガスノズル9gとの間のガス輸送管72の温度が300℃に保たれる。円筒管1は冷却器7により2℃に保たれる。回転モータ4aが駆動されることにより、円筒管1が長さ方向LDを中心として自転する。この円筒管1が自転する運動により、ガスノズル9gから見て円筒管1は円筒管1の長さ方向LDを中心として自転する運動を行なう。自転速度は、たとえば30rpmである。また直線駆動機構11が駆動されることにより、ガスノズル9gが円筒管1の長さ方向LDに沿って円筒管1の中で往復するように変位する。変位速度は、たとえば20mm/秒である。この変位により、円筒管1と円筒管1の中に配置されたガスノズル9gとが円筒管1の長さ方向LDに相対的に変位する。すなわちガスノズル9gと円筒管1とが相対運動を行なう。オーブン14がオンされることにより固体原料8bが加熱されることで、気化器13から蒸発原料18が生じる。この蒸発原料18は、キャリヤガスと共に、円筒管1の外部から内部へ原料供給路19を流され、ガスノズル9gから吹き出される。吹き出された蒸発原料18が円筒管1の内面上において冷却されることで、蒸発原料18が再固化する。この再固化により、円筒管1の内面に第1の層12cの形成が行なわれる。
【0058】
次に固体原料8bの材質が第1の層12cの材質から第2〜第4の層12d〜12fの材質に順次入れ替えられて成膜が行なわれることにより、第1の層12c上に第2〜第4の層12fが形成される。なお気化器13およびオーブン14の対が複数設けられ、各対がバルブにより選択的にガスノズル9gと接続される構成とすれば、バルブの開閉により、第1〜第4の層12c〜12fの連続的な成膜を行なうことができる。
【0059】
本実施の形態によれば、ガス輸送法を用いて実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また気化器13内に入れられる固体原料8bの材質を変更することで、第1〜第4の層12c〜12fからなる積層膜を連続的に形成することができる。
【0060】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す部分断面図である。図8は、本発明の実施の形態3における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す上面図である。なお図7においては成膜装置本体に加えて、円筒管、形成中の有機EL素子、および固体原料も図示されている。また図8においては成膜装置本体に加えて円筒管が図示されている。また図8においては図を見易くするために成膜装置の上面側の構造が一部図示されていない。
【0061】
図7および図8を参照して、本実施の形態の発光装置の製造装置としての成膜装置100Pは、円筒管1と、円筒管1の内面に形成された有機EL素子12とを含む発光装置の製造装置である。成膜装置100Pは、主に、複数の固定冶具2と、複数の坩堝9v(複数の放出部分)と、公転用テーブル84(搬送部)と、複数の駆動部とを有している。公転用テーブル84は、真空容器5内に設けられ、円板形状を有している。この公転用テーブル84の一方の面の中心に、真空容器5外に設けられた公転モータ4bと自転モータ4cとが自公転機構28を介して取り付けられている。この公転モータ4bにより、公転用テーブル84は円板形状の中心を通る軸AXを中心にして自転することができる。またこの公転用テーブル84の他方の面の外周に沿って、複数の固定冶具2が設けられている。この構成により、公転用テーブル84は自身が自転することにより複数の固定冶具2を公転用テーブル84の円形形状の中心の周りに公転させることができる。駆動部の各々は、自転用伝達ベルト83と、直線駆動機構11とを有する。固定冶具2は自転用伝達ベルト83を介して自転モータ4cの駆動力を受けることにより自転することができる。直線駆動機構11は複数の坩堝9vの各々に設けられている。
【0062】
なお成膜装置100Pは、さらに予備室81と、搬送室82と、直線搬送器30と、ゲートバルブ29とを有している。予備室81は搬送室82を介して真空容器5に接続されている。直線搬送器30は予備室81と真空容器5との間で円筒管1を搬送する機能を有している。ゲートバルブ29は搬送室82と真空容器5との間を開閉することができる。
【0063】
上記以外の構成については実施の形態1の成膜装置100Vの構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
次に成膜装置100Pを用いた有機EL素子12の形成方法について説明する。図1および図7を参照して、複数の坩堝9vのそれぞれに、有機EL素子12の保護層12a、透明陽極層12b、第1〜第4の層12c〜12f、および陰極層12gに対応する固体原料8bが収められる。
【0065】
図8を参照して、ゲートバルブ29が閉じた状態で、予備室81内において直線搬送器30に円筒管1が取り付けられる。
【0066】
図7および図9を参照して、ゲートバルブ29が開けられ、直線搬送器30により円筒管1が真空容器5内に移動される。そして円筒管1が固定冶具2に取り付けられる。次に直線搬送器30が元の位置に戻り、ゲートバルブ29が閉じる。
【0067】
成膜装置100V(図2)を用いた成膜方法と同様の方法で、保護層12aの形成が行なわれる。すなわち長さ方向LDを中心として時点する円筒管1の内面に保護層12aが形成される。なお、成膜中は軸AXを中心とする公転用テーブル84の自転は行なわれない。
【0068】
保護層12aの形成が終了した時点で、坩堝9vは直線駆動機構11により、図中下側(直線駆動機構11の側)に移動されることで、円筒管1の外部に引き出される。シャッター27により坩堝9vから蒸発する固体原料8bが遮られる。回転モータ4aにより軸AXを中心に公転用テーブル84が一定角度だけ回転される。これにより円筒管1は、軸AXを中心として一定角度だけ公転し、透明陽極層12bに対応する固体原料8bが収められた坩堝9vの上方に至る。次に成膜装置100V(図2)を用いた成膜方法と同様の方法で、保護層12a上に透明陽極層12bが形成される。同様にして、さらに第1〜第4の層12c〜12f、および陰極層12gが形成されることで、有機EL素子12が形成される。
【0069】
なお公転用テーブル84が一定角度回転されるごとに、真空容器5から予備室81を経由して有機EL素子12が形成済みの円筒管1を1つ取り出し、有機EL素子12が形成前の円筒管1の1つを予備室を経由して真空容器5に入れることにより、複数の円筒管1への成膜を1つの真空容器5内で同時に行なうことができる。
【0070】
また有機EL素子12を構成する複数の層の少なくとも1層が、成膜装置100P以外の装置である成膜装置100V、スパッタリング装置100S、または成膜装置100Gにより形成されてもよい。
【0071】
次に本実施の形態における発光装置の製造装置の変形例としての成膜装置100C、およびそれを用いた有機EL素子12の形成方法ついて説明する。図10〜図15は、本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の様子を工程順に示す概略上面図である。なお図10〜図15においては、図を見易くするために、成膜装置の上面側の構造が一部図示されていない。
【0072】
図10〜図15を参照して、成膜装置100Cは、成膜装置100Pにおける公転用テーブル84(図8および図9)の代わりに、搬送ロボット91を有している。この搬送ロボット91により複数の坩堝(図10〜図15において図示せず)に対応する位置へ円筒管1を順に移動させることにより、真空容器5内で連続的に、有機EL素子12を構成する複数の層の形成を行なうことができる。
【0073】
本実施の形態によれば、円筒管1を真空容器5から取り出すことなく、連続して複数の層を形成することができるので、効率よく有機EL素子12を形成することができる。
【0074】
(実施の形態4)
図16は、本発明の実施の形態4における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。なお図16においては成膜装置本体に加えて、円筒管、形成中の有機EL素子、および液体原料も図示されている。
【0075】
図16を参照して、本実施の形態の成膜装置100Lは、固定冶具2と、供給管34と、傾斜機構35と、回転モータ4aと、プーリー32と、中空軸受け31とを有している。供給管34は、固定冶具2に支持された円筒管1の一方端側に液体原料33を注ぐことができるように構成されている。傾斜機構35は、中空軸受け31を介して固定冶具2を支持している。傾斜機構35は、円筒管1の長さ方向LDが重力方向に対して斜め方向となり、かつ円筒管1の一方端側(液体原料33が注がれる側)が他方端側よりも上方に位置するように、円筒管1を傾けることができる。回転モータ4aは中空軸受け31を介して固定冶具2を回転駆動させることができる。これにより固定冶具2に支持された円筒管1を長さ方向LDを中心に自転させることができる。
【0076】
次に本実施の形態の発光装置が有する有機EL素子12Lの形成方法について説明する。まず実施の形態1で説明した方法により、有機EL素子12Lの一部として、保護層12aと、透明陽極層12bと、第1の層12cとが円筒管1の内面上に形成される。この円筒管1が成膜装置100Lの固定冶具2に取り付けられる。傾斜機構35により円筒管1の長さ方向LDが重力方向に対して斜め方向とされる。回転モータ4aが駆動されることにより、円筒管1が長さ方向LDを中心として自転させられる。有機EL素子12Lの発光層の原料が溶媒に溶かされて作製された液体原料33が準備される。液体原料33が供給管34から円筒管1の上方側の端部へ注がれる。この結果、塗布法により円筒管1内面上に液体原料33からなる層が形成される。なお注がれた液体原料33のうちの余剰分は円筒管1の他方端側(図中下側)から円筒管1の外部に落下する。次に円筒管1が加熱されることにより、上記の塗布法により形成された層から溶媒が蒸発する。これにより液体原料33中の発光層の原料のみが残留し、発光層が形成される。次に実施の形態1で説明した方法により、発光層の上に第4の層12fと、陰極層12gとが形成される。これにより有機EL素子12Lが形成される。
【0077】
次に上記の液体原料33の具体例について説明する。緑色に発光する発光層が形成される場合、液体原料33は、たとえば、下記の式(5)に示す高分子系有機材料であるポリフルオレン、および下記の式(6)に示す低分子系有機材料のイリジウム錯体であるIr(ppy)3の水溶液である。この液体原料33を用いた成膜装置100Lによる成膜により、ポリフルオレンにIr(ppy)3がドーピングされた発光層を形成することができる。
【0078】
【化5】

【0079】
【化6】

【0080】
なお成膜装置100Lにより成膜される層は有機EL素子12Lの発光層に限定されるものではない。たとえば下記の式(7)に示す高分子系有機材料であるPEDOTの水溶液を液体原料33として用いることにより、有機EL素子12Lのホール注入層を形成することができる。
【0081】
【化7】

【0082】
また液体原料33には、高分子系材料を水に分散させるための安定化剤を加えることが好ましい。安定化剤としては、たとえば下記の式(8)に示す安定化剤(PSS)を用いることができる。
【0083】
【化8】

【0084】
図17は、本発明の実施の形態4の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。なお図17においては成膜装置本体に加えて、円筒管、形成中の有機EL素子、および液体原料も図示されている。図17を参照して、本変形例においては、円筒管1の長さ方向LDと、円筒管1の回転の中心RCとが0度以上の角度THをなすように、円筒管1が装置に取り付けられている。角度THが0°よりも大きな角度とされた場合、円筒管1が偏芯された状態で回転する。これにより円筒管1内部において液体原料33が円筒管1の外側に向かって移動する力が与えられる。
【0085】
本実施の形態およびその変形例によれば、液体原料33が注がれる際に円筒管1が長さ方向LDを中心に自転させられているので、円筒管1が固定されている場合に比して、円筒管1の内面に均一な厚みで成膜を行なうことができる。よって円筒管1の内面に形成された有機EL素子12Lの発光特性の均一性を高めることができる。
【0086】
また高分子系有機材料を含む液体原料33を用いることで、円筒管1内面に有機EL素子12Lの一部として高分子系有機材料からなる層を形成することができる。なお高分子系有機材料は、分子量が大きいことにより蒸発し難い性質を有するため、蒸着法やガス輸送法のように原料自体が蒸発する必要がある成膜方法が適用されることは困難である。
【0087】
上記実施の形態1〜4においては管として円筒管1、すなわち管の長さ方向に垂直な断面形状が円形となるような管が用いられたが、本発明はこれに限定されるものではない。管の長さ方向に垂直な断面形状は、たとえば楕円形または多角形であってもよい。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、管の内面に形成された有機EL素子を含む発光装置の製造方法およびそれに用いる製造装置に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1における発光装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における発光装置の製造装置としての真空蒸着装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における発光装置の製造装置としてのスパッタリング装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】図3のスパッタリング装置の電極である平行平板の形状と配置とを示す概略的な部分斜視図である。
【図5】プラズマCVD法により保護層が形成される工程を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す上面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における発光装置の製造装置としての成膜装置が円筒管を搬送している様子を概略的に示す上面図である。
【図10】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第1工程を示す概略上面図である。
【図11】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第2工程を示す概略上面図である。
【図12】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第3工程を示す概略上面図である。
【図13】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第4工程を示す概略上面図である。
【図14】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第5工程を示す概略上面図である。
【図15】本発明の実施の形態3の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置を用いた有機EL素子の形成の第6工程を示す概略上面図である。
【図16】本発明の実施の形態4における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態4の変形例における発光装置の製造装置としての成膜装置の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 円筒管、2 固定冶具、3 回転導入器、4a 回転モータ、4b 公転モータ、4c 自転モータ、5 真空容器、8b 固体原料、8t 原料ターゲット、9g ガスノズル、9e マグネトロン電極、9v 坩堝、10 ヒータ、11 直線駆動機構、12,12L 素子、12a 保護層、12b 透明陽極層、12c〜12f 第1〜第4の層、12g 陰極層、13 気化器、14 オーブン、15 ガスボンベ、16 質量流量計、17 ガス加熱器、18 蒸発原料、19 原料供給路、20 気体原料、21 ランプヒータ、22 平行平板、22x,22y 平行平板、23 高周波電源、25 ガスボンベ、27 シャッター、28 自公転機構、30 直線搬送器、33 液体原料、34 供給管、35 傾斜機構、72 ガス輸送管、83 自転用伝達ベルト、84 公転用テーブル、100S スパッタリング装置、100C,100G,100L,100P,100R,100V 成膜装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管と、前記管の内面に形成された有機EL素子とを含む発光装置の製造方法であって、
前記管を準備する工程と、
前記管と前記管の内面へ前記有機EL素子の原料の放出を行なう放出部とが相対運動を行なうように前記放出部および前記管の少なくともいずれかを動かしながら前記放出を行なうことにより、前記管の内面に前記有機EL素子を形成する工程とを備えた、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記相対運動は、前記管と前記管の中に配置された前記放出部とが前記管の長さ方向に相対的に変位する運動を含む、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記相対運動は、前記管が前記管の長さ方向を中心として自転する運動を含む、請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記放出は、前記管の内部に配置された前記原料を前記放出部から飛散させることにより行なわれる、請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記管の外部から内部へ延び、かつ前記管の内部の側の端部が前記放出部となる原料供給路を用いて、前記管の外部から内部へ気体状の前記原料を流すことにより前記放出が行なわれる、請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記放出は、前記管の長さ方向が重力方向に対して斜めになるように支持されかつ前記管の長さ方向を中心として自転する前記管の内部へ、前記原料として液体を注ぐことにより行なわれる、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
管と、前記管の内面に形成された有機EL素子とを含む発光装置の製造装置であって、
前記管の内面へ前記有機EL素子の原料を放出するための放出部と、
前記放出部が前記原料を放出している際に前記放出部と前記管とに相対運動を行なわせるための駆動部とを備えた、発光装置の製造装置。
【請求項8】
前記相対運動は、前記管と前記管の中に配置された前記放出部とが前記管の長さ方向に相対的に変位する運動を含む、請求項7に記載の発光装置の製造装置。
【請求項9】
前記相対運動は、前記管が前記管の長さ方向を中心として自転する運動を含む、請求項7または8に記載の発光装置の製造装置。
【請求項10】
前記放出部は複数の放出部分を有し、
前記複数の放出部分を収める容器と、
前記容器内において、前記管を前記複数の放出部分の各々に対応する位置へ順に移動させるための搬送部とをさらに備えた、請求項7〜9のいずれかに記載の発光装置の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−206008(P2009−206008A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49103(P2008−49103)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(508016664)フジテック・インターナショナル株式会社 (7)
【出願人】(599048661)有限会社マイクロシステム (9)
【Fターム(参考)】