説明

発光装置の製造方法及び発光装置

【課題】発光素子の周囲に蛍光含有樹脂を所定の厚みに均一に形成する。
【解決手段】予め発光素子110に蛍光物質を被膜した状態の大きさに開口された開口領域152を形成した枠体150を、発光素子110を載置する台座上に、発光素子110を配置すべき位置を開口領域152で囲むように形成する工程と、発光素子110と開口領域152との間に蛍光物質の膜厚に相当する略一定の空隙が形成されるように、開口領域152の略中心に発光素子110を載置する工程と、発光素子110と開口領域152との間に形成された空隙に、蛍光物質を含有する硬化性組成物を充填して発光素子110を被覆する工程とを有する。これにより、正確に枠体150の開口領域152の中心に発光素子110を配置して、発光素子110の周囲に略均一な厚さで蛍光物質を被膜でき、発光装置の配光色度ムラを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子に半導体素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、半導体素子である発光素子は球切れ等の心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いる発光装置は、各種の光源として利用されている。
【0003】
特に、GaN系化合物半導体を利用した高輝度の青色発光のLEDが開発され、その輝度性を活用して白色発光の発光装置が実現されている。この白色発光の発光装置は、青色に発光する発光素子の周りを黄緑色に発光する蛍光物質を含む樹脂で被覆して、白色光を得るというものである。
【0004】
このような発光装置を製造する手段として、発光素子を波長変換部材で被覆する必要がある。発光素子への波長変換部材の被膜の形成方法として、ポッティング手段が知られている(例えば特許文献1参照)。図5は、ポッティング手段を用いた従来の被膜形成方法を示す模式的工程断面図である。図5に示すポッティング手段を用いた発光装置300は、所定の形状のキャビティ311内に、フリップチップ型の発光素子310をフェイスダウン実装している。発光素子310の上面及び側面は、蛍光物質316を含む被膜312で被覆されている。発光素子310はリード電極315と電気的に接続されている。このリード電極315はキャビティ311と一体成型されている。この発光装置300は、あらかじめ発光素子310をリード電極315上にフェイスダウン実装させている。この発光素子310の上面に、樹脂313を細管314から突出させる。この突出された樹脂314が、発光素子310の上面及び側面をほぼ完全に被覆したら投入を止め、樹脂314を硬化させる。このようにして発光素子310の上面及び側面に被膜312を形成する。
【0005】
しかしながら、上記のようなポッティングにより波長変換部材を被覆すると、発光素子の周囲に蛍光物質が均一に被膜されず、配光色度ムラを生じるという問題があった。すなわち、図6に示すように凹部611に充填された波長変換部材612は、発光素子610の上面と側面付近では厚さが異なるため、発光素子610から発せられる光が外部に放出されるまでに励起する蛍光物質の量も異なり、結果として波長変換の度合いに差が生じることとなる。例えば発光素子610として青色光を発光するGaN系LEDチップ、波長変換部材612として青色光を黄色に変換するYAG系蛍光体とを組み合わせて混色により白色を発光する発光装置の場合、発光素子610の上面ではYAG系蛍光体の量が相対的に少ないため、青色光が波長変換される割合も減少してやや青みがかった白色光となる。一方、発光素子610の側面近傍では、上面に比べて相対的にYAG系蛍光体の量が多くなるため、波長変換される割合が多くなってやや黄色がかった白色光となる。この結果、発光装置から発する白色光は、均一とならず、発光素子610の中心近傍で青色っぽくなり、周辺で黄色っぽくなり、配光色度ムラを生じてしまうという問題があった。このような配光色度ムラは、照明として使用する場合に発光品質の低下を招くため、配光色度ムラを抑制して場所によらず均一な白色光等を得ることのできる発光装置が求められている。
【0006】
このような配光色度ムラを抑制するには、図7に示すように発光素子710の周囲にほぼ均一に蛍光物質716を含有する波長変換部材712を被覆する必要がある。このような被覆を実現する方法としては、図8に示すようなスクリーン印刷が知られている。図8(a)、(b)に示す発光装置400は、発光素子410の上面及び側面を、スクリーン印刷により蛍光物質417を含む被膜412で被覆されている。まず図8(a)に示すように、フリップチップ型の発光素子410は、基板411の上面にフェイスダウン実装する。発光素子410は、基板411に設けられたリード電極415と電気的に接続される。そして、所定の形状に開口された金属製のメタルマスク416を、開口領域の中心に発光素子410が位置するように基板411上に裁置し、さらに蛍光物質417を含む樹脂413を開口領域に供給する。この状態で、ヘラ414で樹脂413を延ばしていき、発光素子410の上面に被膜412を形成する。被膜412を形成した後、メタルマスク416を取り外すことで、図8(b)に示すように発光素子410の上面及び側面に被膜412が形成される。
【0007】
しかしながら、スクリーン印刷方法では多数の発光素子に均一に蛍光物質を塗布することが困難であり、量産性が悪いという欠点があった。量産性よく蛍光物質を塗布するには、同一基板上に多数の発光素子をダイボンディングした状態で、各発光素子の位置に応じて開口領域を多数形成したメタルマスクを裁置してスクリーン印刷を行うこととなる。ここで、一般に発光素子の周囲に被覆する蛍光物質は薄く、例えば30μm程度の膜厚を形成される。したがって、図8(a)に示すように発光素子の周囲にメタルマスクの開口領域を配置する際に、発光素子とメタルマスクの開口領域との間隔も30μm程度となるよう、メタルマスクの開口中心が発光素子の中心とほぼ一致するように正確に位置合わせを行う必要がある。しかしながら、同一基板上に多数の発光素子をダイボンダ等でボンディングしようとすれば、ボンディングの際の位置ずれの誤差が±30μm程度生じてしまう。この結果、基板上にダイボンドされた複数の発光素子それぞれに、図8のような方法でメタルマスクの開口領域を各々位置合わせしようとすれば、ダイボンディングの誤差のためにすべての開口領域で発光素子との中心を一致させることが非常に困難となる。すなわちダイボンディングの誤差によって開口領域の中心に発光素子が位置せず、発光素子と開口領域との間隔が不均一となり、蛍光物質の膜厚を発光素子毎に一定することができなくなる結果、歩留まりが低下するという問題がある。これを回避するには、多数の発光素子に同時にメタルマスクを配置するのでなく、発光素子毎に個別マスクをセットしてスクリーン印刷を行う必要があり、極めて煩雑で量産性が悪化するという問題があった。
【0008】
一方、所望の膜厚で蛍光剤を含む透光性樹脂を発光素子の周囲に形成する技術として、特許文献2に記載される表面実装型LEDが開発されている。このLEDは、図9に示すように基板911上に配されたLEDチップ910と、LEDチップ910を封止するチップ封止部915a、及びチップ封止部915aの周囲に、溝部915bを介し、その高さをチップ封止部915aの高さより高くして設けられたチップ封止部包囲部915cを有した第1透光性樹脂層915と、蛍光剤を含み、チップ封止部包囲部915cの内側に形成された第2透光性樹脂層916とを備える。これによって、第1透光性樹脂層915の形状により第2透光性樹脂層916の形状が定まるので、第2透光性樹脂層916の厚みを均一にすることができる。
【0009】
しかしながらこの方法では、発光素子の周囲に2段階で樹脂層を形成するため、製造工数が増えて時間及びコストがかかるという問題があった。すなわち、一旦第1透光性樹脂を充填する型を配置し、樹脂を流し込んだ後、これを硬化させ、さらに第2透光性樹脂を流し込み、硬化させるため、樹脂層成形のための設備及び工程が必然的に増加する。また図9に示すように、発光素子の側面に蛍光剤が配置されない隙間が生じてしまうため、この隙間から漏れる発光素子の光は波長変換されず、発光観測方位によって発光装置の出力光の色度に差が生じる。また、変換効率の面からは発光素子と蛍光物質との距離は近い程好ましいが、図9の構成では発光素子と蛍光物質との間に別の樹脂が介在するため、蛍光物質と発光素子が離間され、変換効率が悪くなるという問題もあった。
【0010】
加えて、発光素子の上面に電極が表出するフェイスアップ実装においては、ボンディングした後に蛍光体層を塗布しているため、スクリーン印刷を利用するとボンディングしたワイヤ等が邪魔になるという問題もある。また、蛍光体層がワイヤの接続部分等に接触する結果、導電性が低下する等信頼性を損なう恐れもあった。
【特許文献1】特開2002−134792号公報
【特許文献2】特開2002−252376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、簡単な構成で発光素子の周囲に一定の膜厚で蛍光物質を被膜することにより、配光色度変化を減少させた発光装置の製造方法及び発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的を達成するために本発明の発光装置の製造方法は、発光素子と、発光素子からの発光の一部を異なる波長に変換するよう発光素子の周囲に配置された蛍光物質とを備える発光装置の製造方法であって、予め発光素子に蛍光物質を被膜した状態の大きさに開口された開口領域を形成した枠体を、発光素子を載置する台座上に、発光素子を配置すべき位置を開口領域で囲むように形成する工程と、発光素子と開口領域との間に蛍光物質の膜厚に相当する略一定の空隙が形成されるように、開口領域の略中心に発光素子を載置する工程と、発光素子と開口領域との間に形成された空隙に、蛍光物質を含有する硬化性組成物を充填して発光素子を被覆する工程とを有する。これにより、正確に枠体の開口領域の中心に発光素子を配置して、発光素子の周囲に略均一な厚さで蛍光物質を被膜でき、発光装置の配光色度ムラを低減できる。
【0013】
また、本発明の他の発光装置の製造方法は、枠体に形成された開口領域が、発光素子を開口領域の略中心に配置した際、発光素子の側面とその周囲を区画する開口領域の側壁との間の距離と、発光素子の上面と枠体上面の平面部分との距離が、略等しくなるように設定されている。この構成によって、発光素子を被覆する蛍光物質の膜厚を、発光素子の側面を被覆する蛍光物質と、発光素子の上面を被覆する蛍光物質とが略等しくなるように構成でき、配光色度ムラを低減した均一な出力光を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の他の発光装置の製造方法は、枠体が透光性樹脂よりなる。これにより、硬化性組成物の充填後に枠体を除去せずとも発光装置から光を取り出すことができ、製造工程を簡略化できる。
【0015】
さらにまた、本発明の他の発光装置の製造方法は、枠体が、開口領域を同一平面上に所定の間隔で複数形成している。これにより、多数の発光素子を並べて同時に枠体を配置し、生産性よく硬化性組成物を被膜できる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の発光装置の製造方法は、さらに発光素子に蛍光物質を被覆する工程の後、枠体の開口領域の周囲で枠体ごと台座を切断して個別の発光素子毎に分割する工程とを有する。これにより、枠体を除去せずとも発光素子毎に分割して発光装置を構成でき、製造工程を簡素化して発光装置を安価に製造できる。
【0017】
さらにまた、本発明の他の発光装置の製造方法は、さらに発光素子に蛍光物質を被覆する工程の後、枠体を除去し、枠体の開口領域が存在した位置の周囲で台座を切断して個別の発光素子毎に分割する工程とを有する。これにより、枠体を除去して更に光の取り出し効率を高めた発光装置を実現できる。
【0018】
また、本発明の発光装置は、フリップチップ型の発光素子と、発光素子を実装した状態で発光素子と電気的に接続されるリード電極を備える台座と、発光素子からの発光の一部を異なる波長に変換する蛍光物質を含有し、発光素子の周囲に略一定の厚さで配置される波長変換部材と、波長変換部材の側面側の周囲に配置され、波長変換部材を充填するための透光性樹脂よりなる枠体とを備え、発光素子とその周囲を区画する開口領域の側壁との間の空隙が略均一で、かつこの空隙に充填された波長変換部材と、発光素子の上面に被覆された波長変換部材の厚さが略等しい。これにより、正確に枠体の中心に発光素子を配置して発光素子の周囲に略均一な厚さで蛍光物質を被膜でき、発光装置の配光色度ムラを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発光装置の製造方法及び発光装置によれば、台座上に実装された発光素子にメタルマスク等を配置するのでなく、先に枠体を台座上に配置した後、枠体の開口領域に発光素子を実装する方法を採用することで、発光素子が枠体の開口領域の中心に位置するように載置の精度を高めることができ、従来困難であった蛍光含有樹脂の膜厚のより正確な制御が可能となり、製品の歩留まりを向上させ量産性に適した発光装置の製造方法が実現できる。これにより、ダイボンディングの精度を上げることが容易であるため、樹脂の膜厚を正確に制御でき、その結果発光素子の周囲に均一な膜厚の蛍光含有樹脂を被覆し、極めて精度の高い高品質な発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法及び発光装置を例示するものであって、本発明は発光装置の製造方法及び発光装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(発光装置)
【0021】
図1に、一実施の形態に係る発光装置100の概略断面図を示す。この図に示す発光装置100は、リード電極102を有する台座101の上面に実装された発光素子110と、発光素子110の周囲を被覆する蛍光含有樹脂120と、蛍光含有樹脂120中に含有される蛍光物質140を備える。発光素子110はフリップチップ又はフェイスダウン型であり、台座101と接続する面に電極113を有している。台座101は所定の導電パターンを有するリード電極102を有している。リード電極102の一端は、外部電極と電気的に接続するように配置されており、またリード電極102の他端は、発光素子110の電極113と電気的に接続するように配置されている。発光素子110の電極113とリード電極102とは、バンプ103等を介して電気的に接続されている。また発光素子110の周囲に蛍光物質140を配置するよう、蛍光物質140を含有した蛍光含有樹脂120で発光素子110の周囲を被覆している。蛍光含有樹脂120は、発光素子110の周囲にほぼ均一に形成される。この蛍光含有樹脂120は、発光素子110で発生した熱を台座101等を介して外部に放出する役割も有している。以下、各部材について詳細に説明する。
(発光素子110)
【0022】
発光素子110の概略を図2〜図3に示す。図2は、発光素子110の平面図、図3は、図2のIII−III’線における断面図をそれぞれ示す。発光素子110は、GaN系又はAlGaN系、InGaN系、InAlGaN系、BN、SiC等の材料を有し、紫外線領域から可視光領域までの光を発することができる。特に350nm〜550nm近傍に発光ピーク波長を有する発光素子を使用し、蛍光物質140を効率よく励起可能な発光波長を有する光を発光できる発光層を有することが好ましい。ここでは発光素子110として窒化物半導体発光素子を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。窒化物半導体発光素子110は、図3に示すようにサファイア基板111上にそれぞれ窒化物半導体からなるn型層、活性層及びp型層の順に積層されてなる半導体層112を有しており、n側電極は、互いに分離されてライン状に露出されたn型半導体に対して形成され、p側電極は、pオーミック電極とそのpオーミック電極の上に形成された複数のpパッド電極により構成されている。
【0023】
詳細に説明すると、窒化物半導体発光素子では、n型層、活性層及びp型層からなる積層体において、図2(a)に示すようにp型層及び活性層の一部がライン状に除去されることにより複数の溝が形成されて、n型半導体層114がライン状に露出される。さらに、図2(b)に示すように露出されたn型半導体層114上にそれぞれnパッド電極115が形成される。一方p側電極は、p型半導体層116のほぼ全面に形成された透光性を有するpオーミック電極と、そのpオーミック電極の上に形成された複数のpパッド電極117とによって構成される。
【0024】
上述した電極構成を有する窒化物半導体発光素子は、以下のような理由により、発光領域全体に電流が注入されるようにして発光効率を向上させるとともに、比較的大面積(例えば、1000μm×1000μm)の窒化物半導体発光素子においても、発光面全体に亙って均一な発光が可能になるようにしている。
【0025】
発光素子110は、サファイア基板、シリコン基板等の透光性基板の上に窒化ガリウムを主成分としたn型半導体層及びp型半導体層が積層された構造を有し、それぞれの半導体層に形成されたnパッド電極115及びpパッド電極117はバンプを介して、台座101に設けられたリード電極102と電気的に接続されている。発光素子110とリード電極102とを電気的に接続している部分以外の隙間部分は、空気が残存しないように、またpパッド電極115とnパッド電極117との短絡を防止するために、蛍光含有樹脂120を充填させることもできる。パッド電極115、117とリード電極102との接合は、はんだ、金バンプを導電パターンとパッド電極との間に超音波接合したもの、金、銀、パラジウム、ロジウム等の導電性ペースト、異方性導電ペースト等を用いることができる。
(台座101)
【0026】
台座101は、発光素子110を載置して、これと電気的に接続される。台座101には、所定の形状を有するリード電極102が形成されている。リード電極102は連接された、発光素子110と電気的に接続する部位と、外部電極と電気的に接続する部位とを有している。腐食を防止する観点からは、これらの両部位のみが台座101上で露出していることが好ましいが、光の反射効率を向上させるために両部位以外の部分が露出していてもよい。台座101は、発光素子110と電気的に接続する部位において、発光素子110のnパッド電極115及びpパッド電極117と対向する位置にリード電極102を設けている。一方、外部電極と電気的に接続する部位は、ワイヤを用いてワイヤボンディングにより接続される。これにより、発光素子110は、リード電極102を介して、外部電極と電気的に接続される。台座101は、ガラスエポキシ積層基板、液晶ポリマー基板、ポリイミド樹脂基板、セラミック基板等で形成される。
【0027】
リード電極102は、所定の導電パターンを有することもできる。導電パターンには、銅、リン青銅、鉄、ニッケル等の電気良導体を用いることができる。さらに、導電パターンの表面に銀、金、パラジウム、ロジウム等の貴金属メッキを施すこともできる。また、発光素子110とリード電極102とを電気的に接続する手段としては、バンプ103を介する手段等が利用できる。
【0028】
なお図示しないが、発光素子は台座に直接実装するのでなく、サブマウント基板に実装し、このサブマウント基板を介して台座に実装することもできる。また、台座をサブマウント基板とすることもできる。台座をサブマウント基板とした場合、蛍光含有樹脂で被覆されていないリード電極を外部端子として利用できる。さらにサブマウント基板はウエハ状の板材とすることもできる。あるいは、台座自体を実装基板としてもよい。さらに、台座のリード電極と発光素子とはワイヤボンディングで電気的に接続することもできる。
(蛍光含有樹脂)
【0029】
蛍光含有樹脂120は、波長変換部材として蛍光物質140を混入した波長変換層を構成する。なお硬化前の波長変換部材は請求項における硬化性組成物に相当する。硬化性組成物には熱硬化性樹脂が利用できる。蛍光物質140は、蛍光含有樹脂120中にほぼ均一の割合で混合されていることが好ましい。ただ、蛍光物質が部分的に偏在するように配合することもできる。例えば、蛍光含有樹脂120の外面側に蛍光物質140が多く含まれるよう偏在させ、発光素子110と蛍光含有樹脂120との接触面から離間させることにより、発光素子110で発生した熱が蛍光物質140に伝達し難くして蛍光物質140の劣化を抑制できる。蛍光含有樹脂120は、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物等を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の透光性を有する絶縁樹脂組成物を用いることもできる。また蛍光含有樹脂120中には、顔料、拡散剤等を混入することもできる。
【0030】
蛍光含有樹脂120は、硬化後でも軟質であることが好ましい。硬化前は、発光素子110の周囲に蛍光含有樹脂120を行き渡らせ、かつ、発光素子110とリード電極102とを電気的に接続する部分以外の隙間部分へ蛍光含有樹脂120を浸入させるため、粘度の低い液状のものが好ましい。また蛍光含有樹脂120は、接着性を有していることが好ましい。蛍光含有樹脂120に接着性を持たせることにより、発光素子110と台座101との固着性を高めることができる。接着性は、常温で接着性を示すものだけでなく、蛍光含有樹脂120に所定の熱と圧力を加えることにより接着するものも含む。また蛍光含有樹脂120は、固着強度を高めるために温度や圧力を加えたり乾燥させたりすることもできる。
【0031】
蛍光物質140は、発光素子110からの光を吸収し異なる波長の光に波長変換する波長変換部材である。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、又はCe等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これらに限定されない。
【0032】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)等がある。また、MSi:Euの他、MSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)等もある。一方、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)等がある。
【0033】
またEu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)等がある。
【0034】
さらにアルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、MX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)等がある。
【0035】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl:R、SrAl1425:R、CaAl:R、BaMgAl1627:R、BaMgAl1612:R、BaMgAl1017:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)等がある。
【0036】
またアルカリ土類硫化物蛍光体には、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Eu等がある。
【0037】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系蛍光体等がある。
【0038】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、ZnGeO:Mn、MGa:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。)等がある。
【0039】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又はEuに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0040】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0041】
これらの蛍光物質は、発光素子110の励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有する蛍光体を使用することができる他、これらの中間色である黄緑色、青緑色、橙色等に発光スペクトルを有する蛍光体も使用することができる。これらの蛍光体を種々組み合わせて使用することにより、種々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0042】
例えば、青色に発光するGaN系化合物半導体を用いて、YAl12:Ce若しくは(Y0.8Gd0.2Al12:Ceの蛍光物質に照射し、波長変換を行う。発光素子110からの光と、蛍光物質140からの光との混合色により白色に発光する発光装置を提供することができる。
【0043】
あるいは、緑色から黄色に発光するCaSi:Eu、又はSrSi:Euと、蛍光体である青色に発光する(Sr,Ca)(POCl:Eu、赤色に発光する(Ca,Sr)Si:Euと、からなる蛍光物質140を使用することによって、演色性の良好な白色に発光する発光装置を提供することができる。これは、色の三源色である赤・青・緑を使用しているため、第1の蛍光体及び第2の蛍光体の配合比を変えることのみで、所望の白色光を実現することができる。
【0044】
蛍光物質140の粒径は、1μm〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは2μm〜8μm、特に5μm〜8μmの範囲が好ましい。2μmより小さい粒径を有する蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。一方、5μm〜8μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高い。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性が向上する。
【0045】
ここで粒径は、空気透過法で得られる平均粒径を指す。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、1cm分の試料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読みとり、平均粒径に換算した値である。本発明で用いられる蛍光体の平均粒径は2μm〜8μmの範囲であることが好ましく、さらに、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。また、粒度分布も狭い範囲に分布していることが好ましく、特に粒径2μm以下の微粒子が少ないと好ましい。このように粒径及び粒度分布のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置が得られる。
(拡散剤)
【0046】
さらに、蛍光含有樹脂120中に蛍光物質140の他に拡散剤を含有させてもよい。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。これによって良好な指向特性を有する発光装置が得られる。
【0047】
ここで本明細書において拡散剤とは、中心粒径が1nm以上5μm未満のものをいう。1μm以上5μm未満の拡散剤は、発光素子110及び蛍光物質140からの光を良好に乱反射させ、大きな粒径の蛍光物質を用いることによって生じやすい色ムラを抑制することができるので、好適に使用できる。また、発光スペクトルの半値幅を狭めることができ、色純度の高い発光装置が得られる。一方、1nm以上1μm未満の拡散剤は、発光素子110からの光波長に対する干渉効果が低い反面、透明度が高く、光度を低下させることなく樹脂粘度を高めることができる。
(フィラー)
【0048】
さらに、蛍光含有樹脂120中に蛍光物質140の他にフィラーを含有させてもよい。具体的な材料としては、拡散剤と同様のものが使用できる。ただ、拡散剤とフィラーとは中心粒径が異なり、本明細書においてはフィラーの中心粒径は5μm以上100μm以下とすることが好ましい。このような粒径のフィラーを透光性樹脂中に含有させると、光散乱作用により発光装置の色度バラツキが改善される他、透光性樹脂の耐熱衝撃性を高めることができる。これにより、高温下での使用においても、発光素子と外部電極とを電気的に接続しているワイヤーの断線や発光素子底面とパッケージの凹部底面と剥離等を防止可能な信頼性の高い発光装置とできる。さらには樹脂の流動性を長時間一定に調整することが可能となり、所望とする場所内に封止部材を形成することができ歩留まり良く量産することが可能となる。
(膜厚)
【0049】
発光素子の周囲に被覆する蛍光含有樹脂の膜厚は、図7に示すように上面及び側面で各々各位置で均一となるようにする。発光素子の上面及び側面を各々一定の厚さとすることにより、指向特性を優れたものとすることができる。また、側面の膜厚と上面の膜厚をほぼ等しくすることで、さらに配光色度ムラを低減した高品質な発光を得ることが可能となる。また蛍光含有樹脂を図6から図7のように薄く被膜することで、蛍光物質の密度を増し蛍光物質の沈降等による分布の不均一さを低減でき、より均一な発光とできる効果も得られる。蛍光含有樹脂120の膜厚は、後述するように枠体に開口された開口領域152と発光素子110との隙間により決定される。膜厚は、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは20〜40μm、最も好ましくは30μm程度とする。ただし、膜厚は特に限定されず、非常に薄い膜厚のものや厚い膜厚のものも使用することができる。
(枠体)
【0050】
さらに発光装置100は、蛍光含有樹脂120を発光素子110の周囲で均一な膜厚に形成するために枠体150を、発光素子110を実装する前の台座上、ここではウエハ上に形成する。枠体150は、蛍光含有樹脂120を発光素子110の周囲に形成するための型枠あるいはキャビティを構成する。図4に、枠体150を利用して発光素子110の周囲に蛍光含有樹脂120を形成する例を図示する。この図に示す枠体150は台座とほぼ同じ外形の平板状に成型され、開口領域152を形成している。枠体150の成型は、トランスファーモールド等により行われる。トランスファーモールドは、非難燃性エポキシ系樹脂等の熱硬化性材料を加熱ポットから閉じた加熱金型のキャビティの中へ移送することによって成形する工程である。枠体150は透光性を備える部材で構成することが好ましい。透光性のある枠体150は、蛍光含有樹脂120の形成後に枠体150を除去せずとも、蛍光体の光を遮ることなく外部に取り出すことができる。このため、枠体150は透光性を有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂が利用できる。ただ、蛍光含有樹脂の形成後に枠体を除去するよう構成してもよく、この場合は枠体が透光性を有することを必要としない。
【0051】
なお図4の例では、枠体を台座上に直接形成しているが、枠体を別部材として形成し、この枠体を台座上に配置する構成とすることもできる。この場合は、枠体の成型はトランスファーモールドに限られず、注型法、押出成形法、プレス加工法等でも成型できる。さらにこの場合は、一枚の台座に一枚の枠体を使用する例に限られず、複数枚の枠体を一枚の台座にセットしたり、あるいは一枚の枠体を一枚の台座上で移動させて使用することもできる。
【0052】
枠体150に形成される開口領域152は、台座上の発光素子110を実装する位置に開口される。このため枠体150は発光素子110を実装する台座よりも小さく、発光素子110よりも大きい。発光素子110を台座上にダイボンダ等で配置するパターンに応じて、開口領域152は形成される。図4(b)の例では、開口領域152は同一平面上に所定の間隔で複数形成されて、碁盤目状に開口している。ただ、開口領域の配置パターンはオフセットさせた千鳥状や網目状等、所望のパターンにすることができる。
【0053】
さらに開口領域152の大きさは、発光素子110よりも若干大きくし、発光素子110に蛍光含有樹脂120を形成した大きさとする。これにより、開口領域152の中央に発光素子110を配置すれば、発光素子110と開口領域152との間の空隙に蛍光含有樹脂120を注入して均一な膜厚に形成できる。従来のスクリーン印刷等により蛍光含有樹脂を被膜する方法では、台座上に発光素子を実装した状態でメタルマスク等を配置して、メタルマスクに開口されたパターンの中心に発光素子が位置するよう位置決めする必要があった。この方法では、台座上に発光素子を実装する際のダイボンダ等の誤差によって、メタルマスクの開口パターンと発光素子とが一致しなくなり、一の台座上に実装されたすべての発光素子について同一の膜厚となるようメタルマスクを位置決めすることが極めて困難であった。特に発光素子の実装に使用されるダイボンダは、精度が±25〜50μm程度であるため、蛍光含有樹脂の膜厚を10〜50μm程度とする場合には、誤差の影響が極めて大きくなる。ボンディングされた発光素子毎にそれぞれ異なる実装誤差が生じ、予め用意されていたメタルマスクの孔に発光素子が規定の位置に入らなくなってしまうこともある。さらに、このような実装誤差が生じた状態で、蛍光体含有樹脂をメタルマスクの孔内に充填すると、発光素子毎に一定の膜厚で蛍光体層を形成することができず、歩留まりが低下していた。
【0054】
これに対して本願発明では、先に発光素子を実装した状態でメタルマスクの開口領域と発光素子との位置決めを行うのでなく、先に枠体を台座上に固定した状態で、すなわち開口領域を台座上で確定した状態で、発光素子を実装する手順とした。これにより、各開口領域毎に発光素子を実装する位置を最適な位置に調整できるので、開口領域と発光素子との間の空隙を一定にして、ここに充填される蛍光含有樹脂の膜厚を一定に制御することが可能となる。特に開口領域が特定された状態でダイボンディングを行う際には、画像処理等により正確な位置決めを行うことができるので、開口領域のほぼ中央に発光素子を位置させることが可能となる。すなわち、ダイボンディングを一律に行う場合は、各発光素子毎の位置のばらつきが生じることは避けられないが、開口領域毎に各発光素子の基準位置を調整することによって、正確なダイボンディングが可能となり、開口領域毎に正確に発光素子をほぼ中央に配置して、発光素子と開口領域との空隙を一定として膜厚を均一に近付けることを可能としたものである。
【0055】
枠体150の開口領域152は、蛍光含有樹脂120で被覆する発光素子110の大きさ及び形状に応じて成形される。またその寸法は、発光素子110に加えて被膜する蛍光含有樹脂120の厚みによって決定される。図4に示すように、使用される発光素子110の外形寸法及び厚みに蛍光含有樹脂120の厚さを加えた大きさに設計される。例えば、発光素子110を開口領域152のほぼ中心に配置した際に、発光素子110の前後左右側面とその周囲を囲む開口領域152の各側壁との間の距離がほぼ等しくなるようにすると共に、発光素子110の上面と枠体150上面の平面との距離がほぼ等しくなるように設定される。これにより、図4(d)に示すように硬化前の蛍光含有樹脂120である硬化性組成物を枠体150の平面まで充填した状態で、発光素子110上面の膜厚と側面の膜厚がほぼ一致するようになり、発光素子110から放出される光の配光色度ムラを抑制して均一な光を得ることができる。
【0056】
蛍光含有樹脂120の形成に枠体150を使用することで、蛍光含有樹脂120の膜厚を均一に形成することが容易となる。特に枠体150を金型等の成型型で成型する場合、金型の精度は比較的高くできるため、より正確な膜厚制御が可能となる。発光素子110の発光を波長変換する波長変換部材を含有した波長変換層をムラなく均一に形成すれば、蛍光含有樹脂120に含有されて枠体150と発光素子110との間に位置する蛍光物質140で、発光素子110の上面及び側面から放出される光が均等に波長変換されあるいは透過する距離を一定とでき、蛍光物質の分布が均一となるので波長変換効率が均一になり、波長変換された光や発光素子110からの発光色との混色が色ムラなく放出され、混色性や配向特性に優れた高品質な発光を実現できる。特に発光素子110の上方だけでなく、側方も蛍光含有樹脂120で覆われているので、発光素子110の上面からの放射光と側面からの放射光との色調ムラが低減する。
【0057】
ただ、本発明は必ずしも発光素子の側面と上面とで膜厚を等しくする必要はなく、これを異なる値に設定することもできる。例えば発光素子の上面と枠体上面との距離と、発光素子の側面と枠体側壁との距離を変化させ、発光素子の上面からの光量と側面からの光量に応じて蛍光物質の量を変更させることで、光量を調整できる。
【0058】
また蛍光含有樹脂120は熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。加熱温度は蛍光含有樹脂120の硬化温度により適宜変更するが、70℃以上130℃以下であることが好ましい。発光素子110の耐用温度以下で蛍光含有樹脂120を硬化することを要するからである。
(発光装置の製造方法)
【0059】
次に、図4に基づいて、本発明の実施の形態に係る発光装置100の製造工程を説明する。まず、図4(a)に示す台座の上面に図4(b)のように枠体150を形成する。台座は、予めリード電極102を形成している。リード電極102は所定の配向パターンを有しており、台座101の上面若しくは内部に配線されている。リード電極102は発光素子110の電極113と対向するように配向パターンを形成することが好ましい。リード電極102の一端は台座101の上面若しくは下面から露出しており外部電極と電気的に接続するように形成されている。リード電極102の他端は発光素子110が載置される部分に露出している。一方枠体150は、トランスファーモールドにより金型(図示せず)で台座の上下面を狭持し、透光性樹脂を射出して形成される。この際、枠体150には所定のパターンで開口領域152が形成されるよう、予め金型には凹凸が形成される。金型の型精度は、±2μmの公差といった高精度で作製できる。
(発光素子の位置決め)
【0060】
次に、図4(c)に示すように予め作製された発光素子110を各開口領域152に各々載置する。ここでは、ダイボンダを用いて発光素子110を開口領域152の中心にダイボンドする。ダイボンダは別のウエハからダイシングされた発光素子110のチップ(ダイ、ダイス)を摘み上げ、台座のリード電極102にバンプを介して発光素子110を電気接続状態に接着して実装する。ダイボンドの位置決めにおいては、図4(c)に示すように開口領域152に発光素子110が収納され、かつ発光素子110の周囲で開口領域152を形成する側壁との間隔が一定となるように、すなわち発光素子110が開口領域152の中央に配置されるように位置決めされる。この例では、ほぼ直方体状の発光素子110の周囲に、ほぼ同じ形状の直方体形状を一回り大きくしたサイズで開口するように開口領域152が形成される。ダイボンダは、発光素子110を実装する開口領域152毎にカメラで撮像し、画像処理により正確に発光素子110が開口領域152の中央に位置するよう、位置決めを行う。この方式であれば開口領域毎に個別の位置決めを行えるため、枠体150の位置が多少ずれていたとしてもダイボンドの位置を調整することができる。すなわち、先に枠体150を配置して開口領域152を確定した後にチップを載置することにより、微調整を可能とし、これによって実装の位置決め精度を向上させることができ、ひいては蛍光物質の均一な塗布を実現できる。
【0061】
バンプ103は導電性があり、リード電極102や電極113よりも軟質の部材であるもの、例えばハンダ等を用いることができる。これにより、発光素子110の電極113とリード電極102とはバンプ103を介して電気的に接続される。発光素子110の基板面の上面は、台座101とほぼ平行になるように配置することが好ましい。次の工程で蛍光含有樹脂120をポッティングしたときに蛍光含有樹脂120が流れ出さないようにし、また発光装置100の配向色度を所定の状態に保持するためである。
(蛍光含有樹脂の塗布)
【0062】
次に、予め蛍光物質を均一に含有させた蛍光含有樹脂120を用意し、この蛍光含有樹脂120を図4(d)に示すように各開口領域152に実装された発光素子110の上方から供給する。蛍光含有樹脂120はペースト状で、発光素子110と台座との間の隙間に浸入できる粘度に調整しておく。また、空隙への蛍光含有樹脂120の浸入を確実にするために、減圧あるいは真空状態で蛍光含有樹脂120を充填することもできる。蛍光含有樹脂120を発光素子110の上面に載置する手段としては、ポッティングやスクリーン印刷、スプレー噴霧手段等が利用できる。スクリーン印刷によれば、空隙から溢れた蛍光含有樹脂120はへら状又は棒状のスキージ等を用いて押し出し、平滑化できる。蛍光含有樹脂120を載置する量は、発光素子110と対向する台座101と枠体150とで囲まれた容積に等しい量、若しくは若干多くする。蛍光含有樹脂120には、予め蛍光物質140をほぼ均一に混合することで、発光装置100から放出される光の色ムラを防止できる。また蛍光含有樹脂120には、必要に応じて蛍光物質140の他に拡散剤やフィラー等を均一に混合することもできる。また蛍光含有樹脂120が表面張力により発光素子110の上面に保持されて流出しないよう、また流出した場合でも発光素子110の周囲から広く拡散しない程度に蛍光含有樹脂120の粘度を調整してもよい。また蛍光含有樹脂120に気泡が残存していると光取り出し効率が低下したり色調バラツキが生じたりするため、発光素子110と開口領域152の間の空隙には空気が残存しないように蛍光含有樹脂120を注入する。
(蛍光含有樹脂の硬化)
【0063】
さらに発光素子110の周囲に蛍光含有樹脂120を行き渡らせた図4(d)の状態で加熱して、熱硬化性樹脂である蛍光含有樹脂120を熱硬化させる。蛍光含有樹脂120を硬化することにより枠体150と蛍光含有樹脂120との界面、蛍光含有樹脂120と発光素子110との界面、蛍光含有樹脂120と台座101との界面を接着することができ、剥離が防止される。また蛍光含有樹脂120中に含まれる蛍光物質140を均一に混合された状態で保持する。
【0064】
蛍光含有樹脂120の硬化は、枠体150をセットした台座101を所定の加熱装置に挿入して加熱する。また、台座をラミネートや袋状のものに封入して水等の溶液中に浸漬して枠体等に圧力を加えながら、該溶液を加熱して蛍光含有樹脂を硬化することもできる。これにより蛍光含有樹脂中に蛍光物質を密にした部分を形成でき、発光素子から波長変換されずに直接放出される光を少なくして色ムラを低減する効果が期待できる。また本明細書において硬化とは完全に硬化させる他、ゲル状に硬化させる場合も含まれる。
【0065】
蛍光含有樹脂120を硬化させる温度及びその加熱時間は、使用する熱硬化性樹脂の種類や塗布量等に応じて決定され、蛍光含有樹脂120が十分に硬化できる温度及び時間とする。例えば蛍光含有樹脂120をシリコーン樹脂とする場合、約100℃でおよそ1時間加熱して硬化させる。その結果、蛍光物質を含有したシリコーン樹脂層は、発光素子110周囲に約30μmの均一な蛍光体層が形成されていることが確認された。
(発光装置のチップ化)
【0066】
そして蛍光含有樹脂120を硬化させた後、図4(e)に示すように枠体150を残したまま枠体150の位置で台座を切断し、発光素子110毎に切り出してチップ化し、発光装置100とする。切断はダイサ等を用いてダイシングし所望の形状にカットされる。図4(e)の例では6角形状に切り出しているが、この形状に限られず、矩形状や3角形、5角形等の多角形状、円形や楕円形状とすることもできる。
【0067】
図4(e)では、チップ化の際に枠体150の部分でカットしており、図1のように発光装置100は枠体150の一部が残った形となる。上述の通り枠体150を透明な部材とすることで、光の取り出し効率を低下させることなく高出力な発光装置とすることができる。また枠体を除去する工程を排除することにより、工数を削減して安価に製造できる利点も得られる。
【0068】
ただ、図4(d)の状態から蛍光含有樹脂の硬化後に枠体を除去し、枠体の無い状態で図4(e)に示すように切断することもできる。枠体の除去には、例えば枠体を特定の溶媒に溶融する材質で構成し、蛍光含有樹脂の硬化後にこの溶媒で枠体を溶融させる等の方法が利用できる。この方法では枠体を除去する工程が必要となり製造工数が増えるものの、枠体を除去することで枠体による光取り出しの損失を抑えたより高品質な発光装置を得ることができる。
【0069】
以上の構成では蛍光含有樹脂を一層のみ発光素子に被覆しているが、樹脂層を多層構成とすることもできる。この際、各樹脂層に蛍光物質を含有させる際に、各樹脂層中に混入させる蛍光物質は、同一のものとする他、異なるものとすることもできる。例えば、第1の樹脂中に混入する蛍光物質を、第2の樹脂中に混入する蛍光物質よりも長波長側に発光ピーク波長を有するタイプとすることにより、第1の樹脂中の蛍光物質で波長変換された光を第2の樹脂中の蛍光物質で波長変換されることなく外部に放出させ、発光装置の波長変換効率を向上させることができる。あるいは、多層構成の樹脂層の内、発光素子と接触する樹脂層等、特定の層にのみ蛍光物質を含有させた波長変換層とし、他の層は蛍光物質を含有しない透光性の樹脂層として、フィラーや拡散剤を混入してもよい。
【0070】
以上の工程を経ることにより、図1のような発光素子の周囲に均一な膜厚で蛍光含有樹脂120が成形された発光装置100が得られる。蛍光含有樹脂120の膜厚を一定にすることで、発光素子110から放出された光はほぼ均一な膜厚を持つ蛍光含有樹脂120を透過するため、所定の発光色を再現性良く実現することができ、発光観測方位によって色度の変化が少ない発光装置を実現できる。枠体150と発光素子110チップとの間は、ダイボンドの精度レベルの空隙とできるため、チップ周囲に狭い空間を精度良く形成することが可能となる。そして枠体150内に蛍光含有樹脂120をポッティングするだけでチップ周囲に均一な波長変換部材を形成することができる。このように本実施の形態によれば、量産性がよく、配光色度ムラを低減した高品質な発光装置を安価に大量生産することができるという優れた特長が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の発光装置の製造方法及び発光装置は、照明用光源、LEDデイスプレイ、バックライト光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図3】図2のIII−III’線における断面図である。
【図4】枠体を利用して発光素子の周囲に蛍光含有樹脂を形成する工程を示す断面図及び平面図である。
【図5】ポッティング手段を用いた従来の被膜形成方法を示す断面図である。
【図6】従来の発光装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図8】スクリーン印刷手段を用いた従来の被膜形成方法を示す断面図である。
【図9】従来の他の発光装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
100、300、400…発光装置;101…台座;102…リード電極;103…バンプ;110、310、410、610、710…発光素子;111、411…基板;112…半導体層;113…電極;114…n型半導体層;115…nパッド電極;116…p型半導体層;117…pパッド電極;120…蛍光含有樹脂;140…蛍光物質;150…枠体;152…開口領域;311…キャビティ;312…被膜;313…樹脂;314…細管;315…リード電極;316…蛍光物質;412…被膜;413…樹脂;414…ヘラ;415…リード電極;416…メタルマスク;417…蛍光物質;611…凹部:612、712…波長変換部材;616、716…蛍光物質;910…LEDチップ;911…基板;915…第1透光性樹脂層;915a…チップ封止部;915b…溝部;915c…チップ封止部包囲部;916…第2透光性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子からの発光の一部を異なる波長に変換するよう発光素子の周囲に配置された蛍光物質とを備える発光装置の製造方法であって、
前記発光素子を載置する台座上に、所定の大きさに開口された開口領域を有する枠体を、発光素子を配置すべき位置が前記開口領域に含まれるように形成する工程と、
前記発光素子の周囲に略一定の大きさの空隙が形成されるように、前記開口領域の略中心に前記発光素子を載置する工程と、
前記発光素子と開口領域の側壁との間に形成された空隙に、前記蛍光物質を含有する硬化性組成物を充填して前記発光素子を被覆する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置の製造方法であって、
前記枠体に形成された開口領域が、発光素子を開口領域の略中心に配置した際、発光素子の側面とその周囲を区画する開口領域の側壁との間の距離と、発光素子の上面と枠体上面の平面部分との距離が、略等しくなるように設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法であって、
前記枠体が透光性樹脂よりなることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の発光装置の製造方法であって、
前記枠体が、開口領域を同一平面上に所定の間隔で複数形成していることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置の製造方法であって、さらに
前記発光素子に蛍光物質を被覆する工程の後、前記枠体の開口領域の周囲で枠体ごと前記台座を切断して個別の発光素子毎に分割する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の発光装置の製造方法であって、さらに
前記発光素子に蛍光物質を被覆する工程の後、前記枠体を除去し、枠体の開口領域が存在した位置の周囲で前記台座を切断して個別の発光素子毎に分割する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項7】
発光素子と、
前記発光素子を実装した状態で前記発光素子と電気的に接続されるリード電極を備える台座と、
前記発光素子からの発光の一部を異なる波長に変換する蛍光物質を含有し、前記発光素子の周囲に略一定の厚さで配置される波長変換部材と、
前記波長変換部材の側面側の周囲に配置され、波長変換部材を充填するための透光性樹脂よりなる枠体と、
を備え、前記発光素子とその周囲を区画する開口領域の側壁との間の空隙が略均一で、かつこの空隙に充填された波長変換部材と、発光素子の上面に被覆された波長変換部材の厚さが略等しいことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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