説明

発光装置の駆動方法

【課題】駆動回路側の負担を小さく抑えつつ、閾値電圧の補正と、アノードの電位の補正を行う発光装置の駆動方法。
【解決手段】トランジスタのドレインに第1電位が供給されており、発光素子のカソードに第1電位よりも低い第2電位が供給されており、トランジスタのソースと発光素子のアノードが接続されており、トランジスタのゲート電極とソースの間の電圧は容量素子で保持され、第1期間において、上記ゲート電極には、トランジスタの閾値電圧及び発光素子の閾値電圧を第2電位に加算した電位よりも低い第3電位が供給され、なおかつ、上記ソースには、第3電位からトランジスタの閾値電圧を差し引いた電位よりも低い第4電位が供給され、第2期間において、上記ソースへの第4電位の供給が停止し、第3期間において、上記ゲート電極への第3電位の供給が停止し、第4期間において、上記ゲート電極に、画像信号の電位が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタが各画素に設けられた発光装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置は、通常、少なくとも発光素子と、画素へのビデオ信号の入力を制御するトランジスタ(スイッチング用トランジスタ)と、該発光素子に供給する電流値を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)とが、各画素に設けられている。上記構成の発光装置では、駆動用トランジスタのドレイン電流が発光素子に供給されるため、画素間において駆動用トランジスタの閾値電圧にばらつきが生じると、発光素子の輝度にもそのばらつきが反映されてしまう。
【0003】
また、pチャネル型よりも移動度が高いとされるnチャネル型を駆動用トランジスタに採用する場合、駆動用トランジスタのソースが、発光素子のアノードに接続されることとなる。よって、電界発光材料の劣化に伴って、発光素子のアノードとカソード間の電圧が増加すると、駆動用トランジスタにおいてソースの電位が上昇し、ゲートとソース間の電圧(ゲート電圧)が小さくなる。そのため、駆動用トランジスタのドレイン電流、すなわち、発光素子に供給される電流が小さくなり、発光素子の輝度が低下する。
【0004】
上記閾値電圧のばらつきによる発光素子の輝度のばらつきと、電界発光層の劣化による発光素子の輝度の低下とを防ぐために、下記の特許文献1及び特許文献2では、閾値電圧の補正と、アノードの電位の補正とを行う表示装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2007−310311号公報
【特許文献2】2007−148129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の表示装置では、駆動用トランジスタを介してアノードに接続されている電源線の電位を、電源スキャナと呼ばれる駆動回路で制御している。しかし、電源線には発光素子へ供給されるような大きな電流が流れる。そのため、上記電源線の電位を制御する駆動回路には、大電流の供給が可能な高い性能が要求されるので、駆動回路側の負担が大きい。
【0007】
また、画素に設ける上記トランジスタをすべて同じ極性とすることで、トランジスタの作製工程において、半導体層に一導電性を付与する不純物元素の添加などの一部の工程を省略できることが、一般的には知られている。しかし、特許文献2に記載の表示装置では、ドライブトランジスタを電源ラインに接続するスイッチングトランジスタをnチャネル型とすると、発光素子のアノードとカソード間の電圧よりも十分に大きな電圧振幅を有する信号をスイッチングトランジスタのゲート電極に供給する必要が生じる。よって、上記信号をスイッチングトランジスタに供給する駆動回路にも、大電流の供給が可能な高い性能が要求されるため、駆動回路側の負担が大きい。
【0008】
上述したような技術的背景のもと、本発明では、駆動回路側の負担を小さく抑えつつ、閾値電圧の補正と、アノードの電位の補正とを行う発光装置の駆動方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
トランジスタのドレインに第1電位が供給されており、発光素子のカソードに第1電位よりも低い第2電位が供給されており、トランジスタのソースと発光素子のアノードが接続されており、トランジスタのゲート電極とソースの間の電圧は容量素子で保持され、第1期間において、トランジスタのゲート電極には、トランジスタの閾値電圧及び発光素子の閾値電圧を第2電位に加算した電位よりも低い、第3電位が供給され、なおかつ、トランジスタのソースには、第3電位からトランジスタの閾値電圧を差し引いた電位よりも低い第4電位が供給され、第2期間において、トランジスタのソースへの第4電位の供給が停止し、第3期間において、トランジスタのゲート電極への第3電位の供給が停止し、第4期間において、トランジスタのゲート電極に、画像信号の電位が与えられる発光装置の駆動方法。
【0010】
トランジスタのドレインに第1電位が供給されており、発光素子のカソードに第1電位よりも低い第2電位が供給されており、トランジスタのソースと発光素子のアノードが接続されており、トランジスタのゲート電極とソースの間の電圧は容量素子で保持され、第1期間において、トランジスタのゲート電極には、トランジスタの閾値電圧及び発光素子の閾値電圧を第2電位に加算した電位よりも低い、第3電位が供給され、なおかつ、トランジスタのソースには、第3電位からトランジスタの閾値電圧を差し引いた電位よりも低い第4電位が供給され、第2期間において、トランジスタのソースへの第4電位の供給が停止し、第3期間において、トランジスタのゲート電極に、画像信号の電位が与えられる発光装置の駆動方法。
【0011】
なお、容量素子が有する容量値は、発光素子が有する容量値よりも小さい構成とする。
【発明の効果】
【0012】
上記駆動方法を用いることで、画像信号の電圧に、トランジスタの閾値電圧を加算することで得られる電位を、トランジスタのゲート電極に与えることができる。よって、本発明の一態様に係る駆動方法を用いることで、駆動回路側の負担を小さく抑えつつ、閾値電圧の補正と、アノードの電位の補正とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画素の回路図と、タイミングチャート。
【図2】画素の駆動方法を示す図。
【図3】画素の駆動方法を示す図。
【図4】容量素子と発光素子とが直列に接続されている様子を、模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
なお、本明細書において発光装置とは、発光素子が各画素に形成されたパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを、その範疇に含む。
【0016】
まず、本発明の一態様に係る駆動方法が用いられる、画素の構成について説明する。図1(A)に、画素の回路図を一例として示す。
【0017】
図1(A)に示す画素100は、トランジスタ101、トランジスタ102、トランジスタ103、発光素子104、及び容量素子105を有する。トランジスタ101は、トランジスタ102が有するゲート電極(Gとして示す)への、画像信号の電位の供給を制御する。トランジスタ102は、そのゲート電極に与えられた画像信号の電位に従って、発光素子104に供給する電流の値を制御する。トランジスタ103は、トランジスタ102のソース(Sとして示す)の電位を制御する。容量素子105は、トランジスタ102のゲート電極とソースの間の電圧を保持する。
【0018】
以下、画素100の構成について、より具体的に説明する。トランジスタ101のゲート電極は、第1走査線GLaに接続されている。トランジスタ101のソースとドレインは、いずれか一方が信号線SLに接続されて、他方がトランジスタ102のゲート電極に接続されている。トランジスタ102は、そのソースが発光素子104のアノードに接続されており、ドレインが電源線VLに接続されている。トランジスタ103のゲート電極は、第2走査線GLbに接続されている。トランジスタ103のソースとドレインは、いずれか一方がトランジスタ102のソースに接続されており、他方が、電位V0の与えられているノード106に、接続されている。容量素子105が有する第1電極は、トランジスタ102のゲート電極に接続されている。容量素子105が有する第2電極は、トランジスタ102のソースに接続されている。
【0019】
なお、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、電流、電圧又は電位が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している状態とは、直接接続している状態を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧又は電位が、供給可能、或いは伝送可能であるように、配線、導電膜、抵抗、ダイオード、トランジスタなどの素子を介して間接的に接続している状態も、その範疇に含む。
【0020】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極として機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0021】
また、トランジスタが有するソースとドレインは、トランジスタの極性及び各電極に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がソースと呼ばれ、高い電位が与えられる電極がドレインと呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がドレインと呼ばれ、高い電位が与えられる電極がソースと呼ばれる。本明細書では、便宜上、ソースとドレインとが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソースとドレインの呼び方が入れ替わる。
【0022】
発光素子104は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に設けられたEL層とを有する。EL層は、単層または複数の層で構成されていて、これらの層の中に、発光性の物質を含む発光層を少なくとも含んでいる。EL層は、カソードを基準としたときの、カソードとアノード間の電位差が、発光素子104の閾値電圧Vthe以上になったときに供給される電流により、エレクトロルミネッセンスが得られる。エレクトロルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とが含まれる。
【0023】
なお、図1(A)に示す画素100では、トランジスタ102がnチャネル型である。トランジスタ101と、トランジスタ103は、nチャネル型とpチャネル型のどちらでも良い。ただし、トランジスタ101、トランジスタ102、及びトランジスタ103を全てnチャネル型とすることで、発光装置の作製工程を簡略化することができる。
【0024】
また、トランジスタ101、トランジスタ102、及びトランジスタ103は、酸化物半導体などのワイドギャップ半導体を活性層に有していても良いし、非晶質、微結晶、多結晶又は単結晶である、シリコン又はゲルマニウムなどの半導体が用いられていても良い。
【0025】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0026】
なお、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0027】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0028】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0029】
なお、酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0030】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0031】
また、シリコン半導体としては、プラズマCVD法などの気相成長法若しくはスパッタリング法で作製された非晶質シリコン、非晶質シリコンをレーザーアニールなどの処理により結晶化させた多結晶シリコン、単結晶シリコンウエハーに水素イオン等を注入して表層部を剥離した単結晶シリコンなどを用いることができる。
【0032】
また、図1(A)では、画素100に容量素子105が設けられている場合を例示しているが、トランジスタ102のゲート電極と活性層の間に形成されるゲート容量が十分大きい場合は、容量素子105を設けなくとも良い。
【0033】
次いで、上記画素100の動作について説明する。図1(B)は、信号線SL、第1走査線GLa、第2走査線GLbのそれぞれに与えられる電位のタイミングチャートの一例である。
【0034】
画素100の動作は、5つの期間に分けて説明することができる。各期間における画素の動作を、図2及び図3に模式的に示す。なお、図2及び図3では、スイッチング素子として機能するトランジスタ101及びトランジスタ103を、スイッチとして示している。
【0035】
期間T1乃至期間T5を通して、電源線VLには電位Vano(第1電位)が与えられ、発光素子104のカソードには電位Vcat(第2電位)が与えられている。電位Vcatを基準としたときの、電位Vanoと電位Vcatの電位差は、発光素子104の閾値電圧Vthe以上である。
【0036】
まず、図2(A)に示すように、期間T1において、第1走査線GLa及び第2走査線GLbの電位がハイレベルになることで、トランジスタ101及びトランジスタ103がオンになる。
【0037】
トランジスタ101がオンの状態において、信号線SLに電位V1(第3電位)が供給されることで、電位V1はトランジスタ101を介して、トランジスタ102のゲート電極(Gで示す)に供給される。電位V1は、トランジスタ102の閾値電圧Vthn及び発光素子104の閾値電圧Vtheを、Vcatに加算した電位よりも、低いものとする。すなわち、V1<Vcat+Vthe+Vthnである。
【0038】
また、オンであるトランジスタ103を介して、トランジスタ102のソース(Sで示す)に、ノード106の電位V0(第4電位)が供給される。電位V0は、電位V1からトランジスタ102の閾値電圧Vthnを差し引いた電位よりも低いものとする。すなわち、V0<V1−Vthnである。
【0039】
上記動作により、トランジスタ102における、ソースの電位を基準としたときの、ゲート電極とソースの電位差、すなわちゲート電圧Vgsが、閾値電圧Vthnよりも大きくなるため、トランジスタ102はオンとなる。上記ゲート電圧Vgsは、容量素子105において保持される。よって、矢印で示すように、電源線VLとノード106の間に、ゲート電圧Vgsに見合った値の電流が流れる。
【0040】
また、発光素子104のアノードとカソード間の電圧は、発光素子104の閾値電圧Vtheよりも小さくなる。よって、期間T1において、発光素子104は発光していない状態にある。
【0041】
次いで、図2(B)に示すように、期間T2において、第1走査線GLaの電位はハイレベルのままなので、トランジスタ101はオンの状態を維持する。第2走査線GLbの電位はハイレベルからローレベルに変化するので、トランジスタ103はオフになる。
【0042】
上記動作により、電源線VLとノード106の間における電流の経路が断たれるため、トランジスタ102のソースの電位が上昇を始める。そして、最終的には、トランジスタ102のゲート電圧Vgsが、トランジスタ102の閾値電圧Vthnとなり、トランジスタ102はオフする。トランジスタ102がオフした状態におけるゲート電圧Vgs=Vthnは、容量素子105において保持される。
【0043】
なお、本発明の一態様では、トランジスタ102のゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthnとなった状態で、期間T2を終了させなくとも良い。例えば、トランジスタ102のソースの電位を電位V2とすると、電位V2が、電位V1からトランジスタ102の閾値電圧Vthnを差し引いた電位よりも低い状態で、期間T2を終了させても良い。すなわち、期間T2の終了時における電位V2は、V2≦V1−Vthnであれば良い。
【0044】
なお、発光素子104のアノードとカソード間の電圧は、期間T2の終了時における電位V2がV2=V1−Vthnの場合であっても、発光素子104の閾値電圧Vtheよりも小さくなる。よって、期間T2において、発光素子104は発光していない状態にある。
【0045】
次いで、図3(A)に示すように、期間T3において、第1走査線GLaの電位はハイレベルからローレベルに変化するので、トランジスタ101はオフになる。第2走査線GLbの電位はローレベルのままなので、トランジスタ103はオフの状態を維持する。そして、トランジスタ101がオフの状態において、信号線SLに、画像信号の電位Vdataを供給する。
【0046】
なお、本実施の形態では、期間T3において、トランジスタ101がオフの状態にて、信号線SLに電位Vdataを予め供給しているが、本発明の一態様は必ずしもこの構成に限定されない。期間T3は必ずしも設けなくとも良い。ただし、予め信号線SLに電位Vdataを供給しておくことで、次の期間T4においてトランジスタ101をオンにしたときに、トランジスタ102のゲート電極の電位を、画像信号の電位Vdataに素早く近づけることができる。
【0047】
次いで、図3(B)に示すように、期間T4において、第1走査線GLaの電位はローレベルからハイレベルに変化するので、トランジスタ101はオンになる。第2走査線GLbの電位はローレベルのままなので、トランジスタ103はオフの状態を維持する。信号線SLには、画像信号の電位Vdataが供給されている。
【0048】
上記動作により、画像信号の電位Vdataは、オンのトランジスタ101を介して、トランジスタ102のゲート電極に供給される。なお、画像信号の電位Vdataは、画像信号に含まれる画像情報によって、当然その高さが異なる。
【0049】
なお、期間T4終了時におけるトランジスタ102のソースの電位V3について、以下に説明する。
【0050】
図1(A)に示す画素100では、容量素子105と発光素子104とが直列に接続された構成を有している。図4に、容量素子105と発光素子104とが直列に接続されている様子を、模式的に示す。図4では、発光素子104が容量素子の一つであるものとして、図示している。図4(A)は、期間T2終了時に相当し、図4(B)は、期間T4終了時に相当する。
【0051】
図4(A)に示すように、期間T2終了時では、容量素子105の第1電極110には、電位V1が与えられ、容量素子105の第2電極及び発光素子104のアノード(以下、ノード111として示す)は電位V2になっており、発光素子104のカソード112には、電位Vcatが与えられている。そして、期間T4終了時では、容量素子105の第1電極110に画像信号の電位Vdataが与えられるので、図4(B)に示すように、ノード111の電位V3は、トランジスタ102がオフであるならば、容量素子105が有する容量値C1と、発光素子104が有する容量値C2の比によって決まる。
【0052】
しかし、電位Vdataの高さによっては、期間T4においてトランジスタ102がオンするので、トランジスタ102を介してノード111に電荷が流入してしまう。よって、期間T4におけるノード111の電位V3は、容量素子105が有する容量値C1と、発光素子104が有する容量値C2の比によってのみ決まらず、ノード111に流入する電荷によっても、その値が変化する。
【0053】
具体的に、期間T4終了時におけるノード111の電位を電位V3とすると、期間T4におけるトランジスタ102のゲート電圧Vgsは、以下の式1で表される。なお、式1では、V2=V1−Vthnの場合を例示している。また、Q1は、ノード111に流入する電荷量を意味する。
【0054】
Vgs=Vdata−V3=C2(Vdata−V1)/(C1+C2)+Vthn−Q1/(C1+C2) (式1)
【0055】
なお、期間T4終了時における、理想的なゲート電圧VgsはVgs=Vdata−V1+Vthnである。ゲート電圧Vgsが上記値を有していれば、トランジスタ102の閾値電圧Vthnにばらつきが生じても、上記ばらつきの影響がトランジスタ102のドレイン電流に及ばなくなる。ゲート電圧Vgsを理想的な値に近づけるには、式1から、C2/(C1+C2)を1に近づけるのが望ましいことが分かる。すなわち、発光素子104の容量値C2が、容量素子105の容量値C1よりも十分に大きければ、ゲート電圧Vgsを理想的な値に近づけることができるので、望ましい。
【0056】
また、ゲート電圧Vgsを理想的な値に近づけるには、式1から、Q1/(C1+C2)を小さくするのが望ましいことが分かる。すなわち、ノード111に流入する電荷量Q1を小さくすることが、ゲート電圧Vgsを理想的な値に近づける上で、望ましい。よって、電荷量Q1を小さくするために期間T4はなるべく短い方が良い。なお、上述したように、予め期間T3において信号線SLに電位Vdataを供給しておくと、期間T4においてトランジスタ101をオンにしたときに、トランジスタ102のゲート電極の電位を、画像信号の電位Vdataに素早く近づけることができる。よって、期間T4を短くできるので、電荷量Q1を小さくする上で望ましい。
【0057】
なお、画像信号の電位Vdataは、画像信号に含まれる画像情報によって、当然その高さが異なる。ただし、電位Vdataは、カソードの電位Vcatに発光素子104の閾値電圧Vtheを加算した電圧よりも小さいことが望ましい。すなわち、Vdata<Vcat+Vtheであることが望ましい。画像信号の電位Vdataの上限を上記値に設定することで、容量素子105の第1電極110と、発光素子104のカソード112との間の電圧を、発光素子104の閾値電圧Vtheよりも小さくすることができる。よって、発光素子104に印加される電圧、すなわちノード111とカソード112との間の電圧を閾値電圧Vtheよりも小さくすることができるので、期間T4において発光素子104を発光しない状態に保つことができる。
【0058】
期間T4において設定されたゲート電圧Vgsは、容量素子105において保持される。
【0059】
次いで、期間T5において、第1走査線GLaの電位はハイレベルからローレベルに変化するので、トランジスタ101はオフになる。第2走査線GLbの電位はローレベルのままなので、トランジスタ103はオフの状態を維持する。
【0060】
期間T4において設定されたゲート電圧Vgsは、容量素子105において保持されている。そして、トランジスタ101はオフなので、トランジスタ102のゲート電極はフローティングの状態にある。よって、電位Vdataに従ってトランジスタ102がオンになっている場合は、トランジスタ102に電流が流れることで、ゲート電圧Vgsが保持されたまま、トランジスタ101のソースの電位が上昇する。その結果、発光素子104のアノードとカソード間の電圧が、発光素子104の閾値電圧Vtheよりも大きくなり、発光素子104が発光する。一方、電位Vdataに従ってトランジスタ102がオフになっている場合は、発光素子104に電流が供給されないため、発光素子104は発光しない。
【0061】
上記動作は、1ラインの画素100ごとに行われる。1ラインの画素とは、トランジスタ101のゲート電極が互いに接続されている画素群を意味する。1ラインの画素ごとに画像信号の書き込みを行い、画素部の全ての画素100に画像信号を書き込むことで、画像の表示が行われる。
【0062】
本発明の一態様では、上記駆動方法を用いることで、画像信号の電位に、トランジスタの閾値電圧を加算することで得られる電位を、トランジスタ102のゲート電極に与えることができる。よって、本発明の一態様に係る駆動方法を用いることで、駆動回路側の負担を小さく抑えつつ、閾値電圧の補正と、アノードの電位の補正とを行うことができる。
【0063】
なお、発光素子に供給する電流値を制御するトランジスタの、ゲート電極とドレインを電気的に接続し、閾値電圧の取得を行う発光装置の場合、当該トランジスタにおいて、ソースの電位がゲート電極の電位よりも高くなることはない。そのため、上記トランジスタがノーマリオンの場合、閾値電圧を取得することが困難である。
【0064】
しかし、本発明の一態様に係る発光装置では、トランジスタ102のドレインと、トランジスタ102のゲート電極とが電気的に分離しているので、それぞれの電位を個別に制御することができる。よって、期間T2において、トランジスタ102のドレインの電位を、トランジスタ102のゲート電極の電位よりも高い値に設定することができる。そのため、トランジスタ102がノーマリオンである場合に、すなわち閾値電圧Vthnがマイナスの値を有している場合に、トランジスタ102において、ソースの電位V2がゲート電極の電位V1よりも高くなるまで、容量素子105に電荷を蓄積することができる。よって、本発明の一態様に係る発光装置では、トランジスタ102がノーマリオンであっても、期間T2において閾値電圧を取得することができ、期間T4において、閾値電圧Vthnを加味した値になるよう、トランジスタ102のゲート電圧Vgsを設定することができる。
【0065】
したがって、本発明の一態様に係る発光装置では、例えばトランジスタ102の半導体膜に非晶質シリコンや酸化物半導体を用いた場合などに、トランジスタ102がノーマリオンとなっても、表示ムラを低減でき、高い画質の表示を行うことができる。
【0066】
また、期間T2の終了時における電位V2が、V2<V1−Vthnである場合、トランジスタ102の移動度ばらつきが発光素子104の輝度に反映されるのを防ぐことができる。以下、より詳細に説明する。
【0067】
発光素子104に流れるドレイン電流Idは、Id=kμ(Vgs−Vthn)/2で表される。ただし、μはトランジスタ102の移動度、kはトランジスタ102のチャネル長、チャネル幅、ゲート容量によって決まる定数である。移動度μの補正を行わない場合、移動度μが大きくなると発光素子104に流れるドレイン電流Idも大きくなり、逆に移動度μが小さくなると発光素子104に流れるドレイン電流Idも小さくなる。
【0068】
例えば、電位V2がV2<V1−Vthnである場合、トランジスタ102のゲート電極とソース間に生じる電圧を電圧Vaとすると、電圧Vaは、閾値電圧Vthnにオフセットの電圧Vbが加算された値となる。そして、期間T4終了時では、画像信号の電位Vdataに電圧Vaを加算した値がトランジスタ102のゲート電圧Vgsとなるので、期間T5におけるドレイン電流Idは、Id=kμ(Vdata+Va−Vthn)/2で表される。なお電圧VaはVa=Vb+Vthnなので、ドレイン電流Idは以下の式2で表される。
【0069】
Id=kμ(Vdata+Vb)/2 (式2)
【0070】
式2から、閾値電圧Vthnがばらついても、閾値電圧Vthnのばらつきによって生じる電流値の変動は相殺されることがわかる。一方、トランジスタ102がnチャネル型の場合、オフセットの電圧Vbは正の値を有している。よって、ドレイン電流Idは、移動度μが小さいほどその絶対値が大きくなる。逆に移動度μが大きいほどその絶対値が小さくなる。よって、Vbは期間T5におけるドレイン電流Idの移動度μによるばらつきを補正するための補正項として機能し、移動度μが小さくなっても、ドレイン電流Idが小さくなるのが抑えられ、移動度μが大きくなっても、ドレイン電流Idが大きくなるのが抑えられる。
【0071】
なお、電荷量Q1は、上述したように小さい方が望ましいが、トランジスタ102の移動度のばらつきが大きい場合は、電荷量Q1によって移動度のばらつきを抑える効果が期待できる。以下、この理由について説明する。
【0072】
電荷量Q1は、第1走査線GLaの電位がハイレベルの間に、トランジスタ102のドレインからソースに流れ込む電荷量である。よって、電荷量Q1は、トランジスタ102の移動度が大きいほど、大きくなる。そして、電荷量Q1が大きくなると、上記式1から、発光素子104の発光時における、トランジスタ102のゲート電圧Vgsが、小さくなることが分かる。すなわち、電荷量Q1により、トランジスタ102の移動度が大きいほど、発光素子104に供給される電流値が小さくなるように補正がかかり、また、トランジスタ102の移動度が小さいほど、発光素子104に供給される電流値が大きくなるように補正がかかる。したがって、電荷量Q1により、電位V2がV2<V1−Vthnである場合と同様に、移動度のばらつきを抑えることができる。
【符号の説明】
【0073】
100 画素
101 トランジスタ
102 トランジスタ
103 トランジスタ
104 発光素子
105 容量素子
106 ノード
110 第1電極
111 ノード
112 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタのドレインに第1電位が供給されており、発光素子のカソードに前記第1電位よりも低い第2電位が供給されており、前記トランジスタのソースと前記発光素子のアノードが接続されており、前記トランジスタのゲート電極とソースの間の電圧は容量素子で保持され、
第1期間において、前記トランジスタのゲート電極には、前記トランジスタの閾値電圧及び前記発光素子の閾値電圧を前記第2電位に加算した電位よりも低い、第3電位が供給され、なおかつ、前記トランジスタのソースには、前記第3電位から前記トランジスタの閾値電圧を差し引いた電位よりも低い第4電位が供給され、
第2期間において、前記トランジスタのソースへの前記第4電位の供給が停止し、
第3期間において、前記トランジスタのゲート電極に、画像信号の電位が与えられる発光装置の駆動方法。
【請求項2】
トランジスタのドレインに第1電位が供給されており、発光素子のカソードに前記第1電位よりも低い第2電位が供給されており、前記トランジスタのソースと前記発光素子のアノードが接続されており、前記トランジスタのゲート電極とソースの間の電圧は容量素子で保持され、
第1期間において、前記トランジスタのゲート電極には、前記トランジスタの閾値電圧及び前記発光素子の閾値電圧を前記第2電位に加算した電位よりも低い、第3電位が供給され、なおかつ、前記トランジスタのソースには、前記第3電位から前記トランジスタの閾値電圧を差し引いた電位よりも低い第4電位が供給され、
第2期間において、前記トランジスタのソースへの前記第4電位の供給が停止し、
第3期間において、前記トランジスタのゲート電極への前記第3電位の供給が停止し、
第4期間において、前記トランジスタのゲート電極に、画像信号の電位が与えられる発光装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記容量素子が有する容量値は、前記発光素子が有する容量値よりも小さい発光装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−256032(P2012−256032A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105572(P2012−105572)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】