説明

発光装置

【課題】有機EL素子で発生した熱をより効率良く放熱させることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、透光性基板10と、透光性基板10の一表面側に形成された有機EL素子20と、透光性基板10の上記一表面側において有機EL素子20よりも上記一表面から離れて配置された封止部材50と、封止部材50と有機EL素子20との間に介在する不活性液体90とを備える。有機EL素子20は、陽極(第1の電極)22と発光層を含む有機EL層23と陰極(第2の電極)24との積層構造を有しており、陰極24において発光層側とは反対の表面側に、当該表面を平面とするときよりも放熱面積を拡大させる凹凸構造部24bを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)を利用した発光装置が各所で研究開発されている。
【0003】
有機EL素子としては、例えば、透光性基板(透明基板)の一表面側に、陽極となる透明電極、ホール輸送層、発光層(有機発光層)、電子注入層、陰極となる電極の積層構造を備えたものが知られている。この種の有機EL素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加することによって発光層で発光した光が、透明電極および透光性基板を通して取り出される。
【0004】
有機EL素子は、自発光型の発光素子であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること、などの特徴を有するものであり、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイなどの発光体など)や、光源(例えば、液晶表示機器のバックライトや照明光源など)としての適用が期待されており、一部では既に実用化されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途に有機EL素子を応用展開するために、より高効率・長寿命・高輝度の有機EL素子の開発が望まれている。
【0006】
ここで、有機EL素子の発熱による有機EL素子の特性の悪化を抑制することができる発光装置として、有機EL素子が形成された素子基板と、素子基板に固着され当該素子基板との間において封止空間を形成する対向基板と、この封止空間内に設けられ有機EL素子の熱を対向基板に伝える熱伝導体とを備え、熱伝導体として不活性液体を用いたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−179218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発光装置においても、放熱性のより一層の向上が望まれている
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、有機EL素子で発生した熱をより効率良く放熱させることが可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、透光性基板と、前記透光性基板の一表面側に形成されてなり前記一表面に近い側の第1の電極と前記一表面から遠い側の第2の電極との間に発光層を有する有機EL素子と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子よりも前記一表面から離れて配置された封止部材と、前記封止部材と前記有機EL素子との間に介在する不活性液体とを備え、前記有機EL素子は、前記第2の電極において前記発光層側とは反対の表面側に、前記表面を平面とするときよりも放熱面積を拡大させる凹凸構造部を設けてなることを特徴とする。
【0010】
この発光装置において、前記第2の電極は、少なくとも前記表面側の部分が黒色であることが好ましい。
【0011】
この発光装置において、前記凹凸構造部からなる第1の凹凸構造部とは別に、前記透光性基板の他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する第2の凹凸構造部と、前記透光性基板の前記他表面側に配置されたパッケージ用基板と、前記封止部材と前記パッケージ用基板との間に介在する枠状のスペーサ部とを備え、前記透光性基板がプラスチックフィルムにより構成され、前記パッケージ用基板が第1のガラス基板により構成されるとともに、前記封止部材が第1のガラス基板により構成され、前記スペーサ部がフリットガラスからなり、前記パッケージ用基板と前記封止部材と前記スペーサ部とで囲まれた空間に前記不活性液体が充填されてなり、前記第2の凹凸構造部と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置においては、有機EL素子で発生した熱をより効率良く放熱させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態の発光装置について、図1に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の発光装置は、透光性基板10と、透光性基板10の一表面側に形成された有機EL素子20と、透光性基板10の上記一表面側において有機EL素子20よりも上記一表面から離れて配置された封止部材50とを備えている。また、発光装置は、封止部材50と有機EL素子20との間に介在する不活性液体90を備えている。
【0016】
ここにおいて、有機EL素子20は、陰極24において陽極22側とは反対の表面側に、当該表面を平面とするときよりも放熱面積を拡大させる放熱用の凹凸構造部(以下、第1の凹凸構造部と称する)24bを設けてある。
【0017】
また、発光装置は、透光性基板10の他表面側に設けられ有機EL素子20から放射された光の上記他表面での反射を抑制する反射抑制用の凹凸構造部(以下、第2の凹凸構造部と称する)30を備えている。また、発光装置は、透光性基板10の上記他表面側に配置されたパッケージ用基板40と、封止部材50とパッケージ用基板40との間に介在する枠状のスペーサ部80とを備え、第2の凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在している。
【0018】
透光性基板10としては、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて更に安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きなプラスチック基板の一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用いている。プラスチックフィルムのプラスチック材料としては、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。また、透光性基板10は、プラスチックフィルムに限らず、上述の無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板、高屈折率ガラス基板などのガラス基板を用いてもよい。
【0019】
ただし、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合には、透光性基板10の上記一表面の凹凸が有機EL素子20のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子20の劣化原因となることがある)。このため、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなってしまう。なお、透光性基板10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。
【0020】
これに対して、透光性基板10としてプラスチックフィルムを用いれば、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができるという利点がある。
【0021】
また、透光性基板10は、少なくとも一部(有機EL素子20の発光領域に重なる部位)が透光性材料(例えば、上述のプラスチック材料や、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのガラス材料)により形成されていればよい。
【0022】
また、透光性基板10の平面視形状は、矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0023】
有機EL素子20は、陽極22と陰極24との間に介在する有機EL層23が、陽極22側から順に、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。ここにおいて、有機EL素子20は、陽極22を透光性基板10の上記一表面側に積層してあり、陽極22における透光性基板10側とは反対側で、陰極24が陽極22に対向している。
【0024】
有機EL素子20は、陽極22を透明電極により構成するとともに、陰極24を発光層からの光を反射する電極で構成してある。ここで、陰極24を透明電極により構成するとともに陽極24を発光層からの光を反射する電極で構成して、陰極24と陽極22との位置関係を逆にしてもよい。要するに、有機EL素子20は、陽極22と陰極24との2つの電極のうち、光を取り出す側の電極からなる第1の電極が透光性基板10上に形成され、他方の電極からなる第2の電極が第1に電極に対向していればよい。
【0025】
上述の有機EL層23の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0026】
陽極22は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極22の電極材料としては、例えば、ITO、IZO、酸化スズ、酸化亜鉛など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極22は、透光性基板10の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0027】
なお、陽極22のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極22の膜厚は、陽極22の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0028】
また、陰極24は、発光層中に電子を注入するための電極であり、上述の金属電極の材料として、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極24の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。なお、陰極24側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0029】
また、第2の電極を構成する陰極24は、発光層からの光を反射する電極に限らず、黒色電極により構成してもよい。黒色電極の材料としては、例えば、カーボン、酸化マンガン、酸化チタン、金黒などの黒色化した電極材料(黒色電極材料)を採用すればよい。また、陰極24は、金属膜の表面側を黒色酸化処理(黒色処理)することにより形成してもよい。
【0030】
ここで、陰極24を黒色電極により構成することにより、陰極24の放射率が高くなって放熱性が向上し、有機EL素子20の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図れる。ただし、陰極24での光の吸収損失や陰極24の抵抗値の増大による光取り出し効率の低下を抑制するには、黒色電極のみにより構成するよりも、黒色電極と当該黒色電極と有機EL層23との間に介在し発光層からの光を反射する反射電極とで構成することが好ましい。
【0031】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0032】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極22との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0033】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0034】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0035】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、酸化シリコンなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0036】
パッケージ用基板40としては、高屈折率ガラス基板に比べて安価なガラス基板である無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、ソーダライムガラス基板、青ソーダガラス基板などを用いてもよい。また、パッケージ用基板40で用いるガラス基板(以下、第1のガラス基板と称する)については、有機EL素子20を形成するためのものではないので、算術平均粗さRaが数100nm以上のガラス基板を用いることができる。
【0037】
上述の有機EL素子20が形成された透光性基板10は、当該透光性基板10の周部を全周に亘ってパッケージ用基板40と接合してある。ここにおいて、透光性基板10とパッケージ用基板40とを接合する接合部29は、例えば、接着用フィルム、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)などにより構成すればよい。
【0038】
また、発光装置は、有機EL素子20および有機EL素子20の陽極22に電気的に接続された第1の配線層25、陰極24に電気的に接続された第2の配線層27が透明な透光性基板10の上記一表面側に形成されており、有機EL素子20と透光性基板10とで有機EL素子ユニット1を構成している。なお、第1の配線層25および第2の配線層27それぞれの数は特に限定するものではない。
【0039】
有機EL素子ユニット1は、第1の配線層25の材料を陽極22と同じ材料とし、第1の配線層25を陽極22と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。また、第2の配線層27の材料を陰極24と同じ材料としてあり、第2の配線層27を陰極24と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。ただし、各配線層25,27は、それぞれ陽極22、陰極24とは異なる材料により形成してもよい。また、各配線層25,37は、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0040】
また、発光装置は、パッケージ用基板40において透光性基板10に対向する一面側に、有機EL素子20の各配線層25,27それぞれと電気的に接続される導体パターン42,44が形成されている。ここで、各配線層25,27と各導体パターン42,44とは、ボンディングワイヤ(例えば、金線、アルミニウム線、銅線などの金属線)からなる接続部132,134を介して電気的に接続される。この接続部132,134は、ボンディングワイヤに限らず、導電性ペースト(例えば、銀ペーストなど)や、金属膜などにより構成してもよい。
【0041】
また、発光装置は、接続部132,134を封止材料(例えば、シリコーン樹脂など)からなる被覆部150により覆ってある。しかして、接続部132,134を被覆部150により覆ってあることにより、接続部132,134を構成するボンディングワイヤや当該ボンディングワイヤと配線層25,27や導体パターン42,44との結線部から金属などの不純物が不活性液体90中へ溶出して信頼性が低下するのを防止することができ、信頼性が向上する。また、発光装置は、被覆部150が透光性基板10の周部を全周に亘って覆うように形成してある(つまり、被覆部150の平面視形状は枠状である)ので、第2の凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間の空間70へ不活性液体90が漏れるのをより確実に防止することが可能となる。
【0042】
封止部材50は、第2のガラス基板により構成してあり、パッケージ用基板40に対してフリットガラスからなるスペーサ部80を介して封着されている。要するに、発光装置は、パッケージ用基板40が第1のガラス基板からなるとともに、封止部材50が第2のガラス基板からなり、第2のガラス基板における第1のガラス基板との対向面の周部の全周が、フリットガラスからなるスペーサ部80により第1のガラス基板側に封着されているので、スペーサ部80がエポキシ樹脂などの有機材料からなる接着剤により構成されている場合に比べて、耐湿性を向上できる。
【0043】
また、封止部材50を構成する第2のガラス基板として、パッケージ用基板40の第1のガラス基板と同じガラス材料のガラス基板(例えば、無アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板、青ソーダガラス基板など)を用いて、第2のガラス基板と第1のガラス基板との線膨張係数を同じにすれば、パッケージ用基板40と封止部材50との線膨張係数差に起因したパッケージ用基板40の反りを防止することができて、パッケージ用基板40の反りに起因した光学特性のばらつきを低減できるとともに、スペーサ部80とパッケージ用基板40および封止部材50それぞれとの接合部位の信頼性を高めることができる。
【0044】
上述のパッケージ用基板40の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きなサイズに設定してあり、各導体パターン22,24の一部が有機EL素子ユニット1の投影領域の外側で、スペーサ部80よりも外側に位置している。各導体パターン22,24は、スパッタ法や蒸着法などのドライプロセスで成膜することが好ましい。
【0045】
パッケージ用基板40および封止部材50は、平面視形状を矩形状としてあるが、矩形状に限らず、これに限らず、例えば、有機EL素子ユニット1の平面形状に応じて適宜変更してもよく、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0046】
封止部材50の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きく且つパッケージ用基板40の平面サイズよりも小さなサイズに設定してあり、パッケージ用基板40の上記一面側から見て各導体パターン22,24の上記一部を視認できるようになっている。要するに、各導体パターン22,24の一部が封止部材50の投影領域の外側に位置している。したがって、各導体パターン22,24の上記一部が外部接続電極を構成している。
【0047】
スペーサ部80は、封止部材50の外周縁に沿った枠状に形成することが好ましく、本実施形態では、矩形枠状に形成してある。なお、封止部材50と有機EL素子ユニット1との平面視形状が相違する場合には、いずれか一方の外周線に沿った形状としてもよい。
【0048】
スペーサ部80は、フリットガラスを用いて形成してある。ここで、発光装置の製造時には、パッケージ用基板40上にスペーサ部60を配置し、封止部材50とパッケージ用基板40とでスペーサ部80を挟みこんでから、スペーサ部80をレーザ光などにより加熱して封止部材50およびパッケージ用基板40それぞれと接合すればよい。この場合、フリットガラスがレーザ光により加熱されやすいように適宜の不純物をフリットガラスに添加しておいてもよい。なお、加熱は、レーザ光に限らず、例えば、赤外線により行ってもよい。本実施形態の発光装置では、封止代を1mm程度にしながらも気密性を確保することができる。また、レーザ光の光源としては、例えば、YAGレーザなどを用いればよい。
【0049】
スペーサ部80は、フリットガラスのみを用いて形成する場合に限らず、例えば、合金からなる枠部材と、当該枠部材におけるパッケージ用基板40および封止部材50それぞれとの対向面に形成されたフリットガラスとを用いて形成してもよい。ここにおいて、枠部材の材料である合金としては、熱膨張係数がパッケージ用基板40および封止部材50の熱膨張係数に近いコバール(Kovar)を用いることが好ましいが、コバールに限らず、例えば、42合金などを用いてもよい。コバールは、鉄にニッケル、コバルトを配合した合金であり、常温付近での熱膨張係数が、金属の中で低いものの一つで、無アルカリガラス、青ソーダガラス、硼珪酸ガラスなどの熱膨張係数に近い値を有している。コバールの成分比の一例は、重量%で、ニッケル:29重量%、コバルト:17重量%、シリコン:0.2重量%、マンガン:0.3重量%、鉄:53.5重量%である。コバールの成分比は、特に限定するものではなく、コバールの熱膨張係数が、パッケージ用基板40および封止部材50の熱膨張係数に揃うように適宜成分比のものを採用すればよい。また、この場合のフリットガラスとしては、熱膨張係数を合金の熱膨張係数に揃えることができる材料を採用することが好ましい。ここで、合金がコバールの場合には、フリットガラスの材料として、コバールガラスを用いることが好ましい。また、スペーサ部80の形成にあたっては、例えば、コバールなどの合金からなる板材の厚み方向の両面に、フリットガラスを所定パターン(本実施形態では、矩形枠状のパターン)となるように塗布し、乾燥、焼成後、プレス抜き加工を行うことにより、スペーサ部80を形成することができる。
【0050】
上述の説明から分かるように、発光装置は、パッケージ用基板40と封止部材50とスペーサ部80との線膨張係数を揃えてある。ここにおいて、熱膨張係数を揃えるとは、完全に一致させることに限らず、略同一であることを意味し、熱膨張係数差ができるだけ小さくなるように材料を選択することを趣旨としている。
【0051】
スペーサ部80として、上述の枠部材を備えたものを用いれば、フリットガラスが溶融した時もパッケージ用基板40と封止部材50との間隔を安定して保つことができて気密封止することができるから、パッケージ用基板40と封止部材50とスペーサ部80とで構成されるパッケージの気密性を高めることが可能となり、有機EL素子20の発光部の大面積化を図りながらも有機EL素子20の長寿命化を図れる。また、スペーサ部80として、上述の枠部材を備えたものを用いれば、パッケージ用基板40と封止部材50との間の距離の設計自由度が高くなるとともに、有機EL素子20と封止部材50との間の距離の精度が向上し、製品間の放熱性のばらつきを低減することが可能となる。なお、枠部材は、断面矩形状に限らず、断面環状のものを用いてもよい。
【0052】
また、発光装置は、パッケージ用基板40と封止部材50とスペーサ部80とで構成されるパッケージの内部空間に、有機EL素子20の封止用の媒体として、上述の不活性液体90を封入してある。ここで、不活性液体90としては、例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイル、フッ素系オイル(例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル)などの、不活性な液体で且つ不活性ガス(例えば、Nガス、Arガスなど)に比べて熱伝導率の高い液体を用いればよい。しかして、発光装置は、外部からの有機EL素子20への水分の到達を抑制することができて信頼性が向上するとともに、有機EL素子20で発生した熱を、不活性液体90を介して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子20の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子20へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。なお、不活性液体90を封入するために、封止部材50には、不活性液体90の注入孔(図示せず)と、空気抜き孔(図示せず)とが形成されている。注入孔および空気抜き孔は、パッケージの内部空間に不活性液体90を封入した後に接着剤などにより封止すればよい。
【0053】
ところで、有機EL素子20の発光層および透光性基板10それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気の屈折率に比べて大きい。したがって、第2の凹凸構造部30が設けられずに透光性基板10とパッケージ用基板40との間の空間が空気雰囲気となっている場合には、透光性基板10からなる第1の媒質と空気からなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層23または透光性基板10内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0054】
これに対して、本実施形態の発光装置においては、有機EL素子20を上記一表面側に形成する透光性基板10の上記他表面側に第2の凹凸構造部30を設けてあるので、有機EL素子ユニット1の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0055】
第2の凹凸構造部30は、多数の突起31が透光性基板10の上記一表面に平行な2次元面内で周期的に配列された2次元周期構造を有している。図1に示した例では、突起31を四角錐状の形状としてあるが、突起31の形状は、四角錐状以外の錐状(例えば、三角錐状、六角錐状、円錐状など)でもよいし、半球状でもよいし、これら以外の形状でもよい。
【0056】
また、当該2次元周期構造の周期Pは、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0057】
周期Pを例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期Pを例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期Pをλ/4〜λの範囲で設定した場合には、第2の凹凸構造部30付近の有効屈折率が透光性基板10の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、透光性基板10と空間70との間に、第2の凹凸構造部30の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期Pの上限としては、1000λまで適用可能である。また、第2の凹凸構造部30は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期Pが1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で最も第2の凹凸構造部30における占有率の大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。また、多数の突起31の形状についても、複数も種類の形状が混在していてもよい。
【0058】
第2の凹凸構造部30は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成してあるが、これに限るものではない。例えば、透光性基板10の上記他表面に第2の凹凸構造部30をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよいし、透光性基板10を射出成形により形成するようにし、適宜の金型を用いて透光性基板10に第2の凹凸構造部30を直接形成してもよい。
【0059】
第2の凹凸構造部30については、表面に傷が付くのを防止するためのハードコートを施すか、あるいは、硬度が十分に高いプリズムシートを用いるか、あるいは、硬化後の硬度が十分に高い透明材料を用いることが望ましい。ハードコートを施すためのハードコート剤としては、例えば、東洋インキ製のTYZシリーズ(〔平成21年12月22日検索〕、インターネット<URL:http://www.toyoink.co.jp/products/lioduras/index.html>)などの高屈折率タイプ(屈折率が1.63〜1.74程度)のハードコート剤を採用することができる。なお、TYZシリーズは、エポキシ樹脂などにフィラーとしてジルコニアを混入させた紫外線硬化型のハードコート剤である。
【0060】
本実施形態では、第2の凹凸構造部30の表面とパッケージ用基板40との間に空間70が存在することが重要である。仮に、第2の凹凸構造部30の表面が、当該第2の凹凸構造部30とパッケージ用基板40との界面であるとすると、パッケージ用基板40と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、本実施形態では、有機EL素子20の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の不活性ガスとパッケージ用基板40との界面、パッケージ用基板40と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。
【0061】
ここで、インプリント法により、第2の凹凸構造部30を形成する方法の一例について簡単に説明する。
【0062】
まず、PETフィルムからなる透光性基板10の上記他表面上に、第2の凹凸構造部30の基礎となる高屈折率の透明材料(例えば、酸化チタンのナノ粒子を混入させた熱硬化性樹脂)からなる転写層をスピンコート法により形成する。次に、第2の凹凸構造部30の形状に応じてパターン設計した凹凸パターンを形成したモールドを、転写層に押し付けて当該転写層を変形させ硬化させる(例えば、熱硬化させる)ことにより第2の凹凸構造部30を形成し、モールドを第2の凹凸構造部30から離す。ここにおいて、モールドとしては、例えば、周期が2μm、高さが2μmの錐状(例えば、四角錐状、円錐状など)の微細突起が2次元アレイ状にパターニングされたNiモールドを用いればよい。
【0063】
なお、インプリント法としては、上述のように熱硬化性樹脂を転写層の透明材料として用いる熱インプリント法(熱ナノインプリント法)に限らず、転写層の材料として光硬化性樹脂を用いる光インプリント法(光ナノインプリント法)を採用してもよい。この場合には、粘度の低い光硬化性樹脂層からなる転写層をモールドにより変形させて、その後に紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させ、モールドを転写層から離すようにすればよい。インプリント法では、モールド用の金型さえ1度作れば、第2の凹凸構造部30を再現性良く形成することができ、低コスト化を図れる。
【0064】
発光装置は、第2の凹凸構造部30の表面(凹凸面)とパッケージ用基板40との間に空間70が存在することが重要である。仮に、第2の凹凸構造部30の表面が、当該凹凸構造部30とパッケージ用基板40との界面であるとすると、パッケージ用基板40と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、有機EL素子20の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の媒質である空気とパッケージ用基板40との界面、パッケージ用基板40と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。なお、第2の凹凸構造部30の各突起31それぞれが、透光性基板10とパッケージ用基板40との間に介在し透光性基板10とパッケージ用基板40との間の距離を所定距離に保つスペーサを兼ねるようにしてもよい。
【0065】
本実施形態の発光装置においては、パッケージ用基板40を光が透過する際にフレネル反射による損失(フレネルロス)が生じるので、パッケージ用基板40を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。フレネルロスを抑制する手段としては、例えば、パッケージ用基板40の厚み方向の少なくとも一面に、単層もしくは多層の誘電体膜からなるアンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)を設けることが考えられる。ここにおいて、AR膜を例えば屈折率nが1.38のフッ化マグネシウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.38)=99.6nmとすればよい。同様に、AR膜を例えば屈折率nが1.58の酸化アルミニウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、AR膜は、厚さが99.6nmのフッ化マグネシウム膜と厚さが87.0nmの酸化アルミニウム膜との積層膜(2層AR膜)としてもよい。なお、誘電体膜の材料は、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム以外の材料を採用してもよい。
【0066】
本実施形態の発光装置では、パッケージ用基板40の厚み方向の少なくとも一面、好ましくは両面にAR膜を設けることにより、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0067】
また、フレネルロスを抑制する他の手段としては、パッケージ用基板40の厚み方向の少なくとも一面側にモスアイ(蛾の目)構造を設けることが考えられる。モスアイ構造は、先細り状の微細突起が2次元アレイ状に配列されて2次元周期構造を有しており、多数の微細突起と隣り合う微細突起間に入り込んだ媒質(例えば、空気)とで反射防止部が構成されることとなる。ここにおいて、パッケージ用基板40をナノインプリント法により加工してモスアイ構造を形成した場合には、微細突起の屈折率がパッケージ用基板40の屈折率と同じとなる。この場合、反射防止部の有効屈折率は、当該反射防止部の厚さ方向においてパッケージ用基板40の屈折率(=1.51)と媒質の屈折率(=1)との間で連続的に変化し、フレネルロスの原因となる屈折率界面がなくなった状態が擬似的に得られる。したがって、モスアイ構造では、AR膜に比べて、波長や入射角に対する依存性を小さくでき、かつ、反射率も小さくすることができる。
【0068】
モスアイ構造における微細突起の高さおよび微細突起の周期は、例えば、それぞれ200nm、100nmに設定すればよいが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0069】
上述のモスアイ構造は、例えば、ナノインプリント法により形成することができるが、ナノプリント法以外の方法(例えば、レーザ加工技術)で形成してもよい。また、モスアイ構造は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のモスアイ型無反射フィルムにより構成してもよい。
【0070】
ところで、上述の有機EL素子20の第2の電極である陰極24に設けた凹凸構造部24bは、複数の凸部24aを備えており、各凸部24aがフィンを構成している。このような凹凸構造部24bを備えた陰極24の形成にあたっては、例えば、蒸着法などにより陰極24を形成する際に、2種類のマスクを利用すればよい。すなわち、陰極24全体に対応する部位に第1の開孔部を有する第1のシャドーマスクを蒸発源と被処理基板(透光性基板10に陽極22、有機EL層23などを形成したもの)との間に配置して蒸着を行ってから、陰極24の各凸部24aに対応する部位に第2の開孔部を有する第2のシャドーマスクを蒸発源と非処理基板との間に配置して蒸着を行えばよい。また、陰極24に、カーボンフィルムや放熱用のシリコーンフィルム(例えば、サーコン(登録商標)など)などを、陰極24との間に空気が入らないように適宜貼り合わせることにより、さらに高い放熱効果が得られる。
【0071】
この実施形態の発光装置においては、透光性基板10の上記一表面側において有機EL素子20よりも上記一表面から離れて配置された封止部材50と、封止部材50と有機EL素子20との間に介在する不活性液体90とを備え、有機EL素子20の第2の電極である陰極24の表面側に、当該表面を平面とするときよりも放熱面積を拡大させる凹凸構造部24bを設けてあるので、有機EL素子20で発生した熱を、不活性液体90を通して、より効率良く放熱させることが可能となる。特に、本実施形態の発光装置においては、透光性基板10とパッケージ用基板40との間の空間が断熱部として機能するので、有機EL素子20で発生した熱を、不活性液体90を通る経路で、より効率的に放熱させることができる。
【0072】
また、この実施形態の発光装置においては、第2の電極である陰極24の少なくとも表面側の部分を黒色とすることにより、陰極24が反射電極や透明電極により構成されている場合に比べて、陰極24での熱の放射率が高くなって放熱性が向上する。
【0073】
さらに、この実施形態の発光装置においては、透光性基板10の上記他表面側に設けられた光反射抑制用の第2の凹凸構造部30と、透光性基板10の上記他表面側に配置されたパッケージ用基板40と、封止部材50とパッケージ用基板40との間に介在する枠状のスペーサ部80とを備え、透光性基板10がプラスチックフィルムにより構成され、パッケージ用基板40が第1のガラス基板により構成されるとともに、封止部材50が第2のガラス基板により構成され、スペーサ部80がフリットガラスからなり、パッケージ用基板40と封止部材50とスペーサ部80とで囲まれた空間に不活性液体80が充填されており、第2の凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在している。しかして、有機EL素子20から放射されパッケージ用基板40まで到達した光の全反射ロスを低減でき、第2の凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在しない場合に比べて光取り出し効率の向上を図れる。
【0074】
また、この本実施形態の発光装置では、透光性基板10としてプラスチックフィルムを採用すれば、透光性基板10としてソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板のような一般的なガラス基板に比べて屈折率が高いものを用いることができるので、有機EL素子20と透光性基板10との界面での全反射ロスを低減できる。また、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合に比べて低コスト化を図れる。
【0075】
また、この本実施形態の発光装置では、第1のガラス基板からなるパッケージ用基板40と、第2のガラス基板からなる封止部材50と、ガラスフリットからなるスペーサ部80とで構成されるパッケージに有機EL素子ユニット1が収納されており、有機EL素子20が不活性液体90により封止されているので、透光性基板10として高屈折率ガラス基板やバリア層が設けられたプラスチック基板を用いることなく、防水性および耐湿性を高めることができる。
【0076】
ところで、本実施形態では、封止部材50を第2のガラス基板により構成して、パッケージ用基板40と封止部材50との間にスペーサ部80を介在させてあるが、封止部材50を、パッケージ用基板40との間に有機EL素子20および透光性基板10を囲む一面開口した箱状の形状としてもよい。また、透光性基板10をガラス基板により構成して、透光性基板10に、透光性基板10との間に有機EL素子20を囲む一面開口した箱状の封止部材50を接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 透光性基板
20 有機EL素子
22 陽極(第1の電極)
23 有機EL層
24 陰極(第2の電極)
24b 凹凸構造部(第1の凹凸構造部)
30 凹凸構造部(第2の凹凸構造部)
40 パッケージ用基板
50 封止部材
70 空間
80 スペーサ部
90 不活性液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、前記透光性基板の一表面側に形成されてなり前記一表面に近い側の第1の電極と前記一表面から遠い側の第2の電極との間に発光層を有する有機EL素子と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子よりも前記一表面から離れて配置された封止部材と、前記封止部材と前記有機EL素子との間に介在する不活性液体とを備え、前記有機EL素子は、前記第2の電極において前記発光層側とは反対の表面側に、前記表面を平面とするときよりも放熱面積を拡大させる放熱用の凹凸構造部を設けてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2の電極は、少なくとも前記表面側の部分が黒色であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記凹凸構造部からなる第1の凹凸構造部とは別に、前記透光性基板の他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する第2の凹凸構造部と、前記透光性基板の前記他表面側に配置されたパッケージ用基板と、前記封止部材と前記パッケージ用基板との間に介在する枠状のスペーサ部とを備え、前記透光性基板がプラスチックフィルムにより構成され、前記パッケージ用基板が第1のガラス基板により構成されるとともに、前記封止部材が第1のガラス基板により構成され、前記スペーサ部がフリットガラスからなり、前記パッケージ用基板と前記封止部材と前記スペーサ部とで囲まれた空間に前記不活性液体が充填されてなり、前記第2の凹凸構造部と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−204645(P2011−204645A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73591(P2010−73591)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】