説明

発光装置

【課題】画質の均質性の高い発光装置を提供する。
【解決手段】発光素子102の形成された基板(第1の基板)101に向かい合ってプリ
ント配線板(第2の基板)107が設けられる。プリント配線板107上のPWB側配線
(第2の配線群)110は異方導電性フィルム105a、105bにより素子側配線(第1
の配線群)103、104と電気的に接続される。このとき、PWB側配線110として
低抵抗な銅箔を用いるため、素子側配線103、104の電圧降下や信号遅延を低減する
ことができ、画質の均質性の向上及び駆動回路部の動作速度の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に発光性材料を挟んだ素子(以下、発光素子という)を有する装置(
以下、発光装置という)及びその作製方法に関する。特に、EL(Electro Luminescence
)が得られる発光性材料(以下、EL材料という)を用いた発光装置に関する。
【0002】
なお、本発明に用いることのできるEL材料は、一重項励起もしくは三重項励起または
両者の励起を経由して発光(燐光および/または蛍光)するすべての発光性材料を含む。
【背景技術】
【0003】
近年、発光性材料のEL現象を利用した発光素子(以下、EL素子という)を用いた発
光装置(EL表示装置)の開発が進んでいる。EL表示装置は発光素子自体に発光能力が
あるため、液晶ディスプレイのようなバックライトが不要である。さらに視野角が広く、
軽量であり、且つ、低消費電力という利点をもつ。
【0004】
このようなEL表示装置は、陽極と陰極との間にEL材料を挟んだ構造のEL素子を有
した構造からなる。この陽極と陰極との間に電圧を加えてEL材料中に電流を流すること
によりキャリアを再結合させて発光させる。このような駆動方法は電流駆動と呼ばれる。
【0005】
ところが、電流駆動であるEL表示装置で問題となる現象に配線抵抗による電圧降下(
IRドロップともいう)がある。これは同一配線であっても電源からの距離が遠くなるに
従って電圧が低下してしまうという現象である。この問題は特に配線長が長くなった場合
に顕著であり、EL表示装置の大画面化にとって大きな障害となっている。
【0006】
配線としてタンタル、タングステンもしくはシリコンなどの材料を用いる場合は配線抵
抗の影響を受けやすく、画質の均質性を大幅に落とす原因となりうる。
また、アルミニウムや銅などの低抵抗な材料を用いた場合においても、引き回しの距離が
長くなればやはり同様のことが言える。
【0007】
ここで、上記問題点について図2を用いて説明する。図2に示したのはアクティブマト
リクス型EL表示装置の画素部の一部であり、図面の上下方向にA1、A2…Anで示され
るn個の画素が配列されている。ここで201はゲート配線、202はソース配線、20
3は電流供給線である。また、ゲート配線201、ソース配線202及び電流供給線20
3で囲まれた領域には、スイッチング用TFT204、保持容量205、電流制御用TF
T206及びEL素子207が形成されている。
【0008】
この時、電流供給線205は電圧降下の影響により図面の下方にいくほど電圧が下がる
。即ち、画素部の上方ではV1であった電圧が画素部の下方ではV2となり、V1>V2の関
係となる。この影響は画素部(画像表示領域)の面積が大きくなるほど顕著となる。
【0009】
その結果、同一輝度で各画素のEL素子を発光させた場合において、A1で示される画
素とA2で示される画素はほぼ同じ輝度で発光するが、Anで示される画素はA1で示され
る画素とA2で示される画素に比べて輝度が低下することになる。これはAnで示される画
素のEL素子に加わる電圧が電圧降下によって低下したことに起因する。
【0010】
また、このような電圧降下の影響は電流供給線203だけでなくゲート配線201やソ
ース配線202に対しても与えられる。即ち、ゲート配線201は電圧降下によってスイ
ッチング用TFT204のゲートを開くことができなくなる恐れがある。また、ソース配
線202は電圧降下によって所望の電圧を電流制御用TFT206のゲートに加えること
ができなくなり、EL素子の輝度が変化してしまったり発光しなかったりする恐れがある

【0011】
以上のように、配線抵抗に起因する電圧降下によって所望の電圧を伝達することが不可
能となり、その結果として画素部において画質の均質性を著しく損ねるといった不具合を
生じる。こういった問題を配線の両端から電圧を加えるなどの工夫により改善しようとす
る試みがなされている。しかしながら、配線を長く引きまわすことになるため結局は電圧
降下の影響を無視できない。
【0012】
また、同一基板上に駆動回路部(典型的にはゲート駆動回路及びソース駆動回路を含む
)を一体形成したモノリシック型の発光装置を形成する場合、駆動回路部と電気信号の入
力端子との間を引き回す配線の配線抵抗が問題となる。配線抵抗は電気信号の遅延を招き
、ゲート駆動回路やソース駆動回路の動作速度を低下させてしまう恐れがある。
【0013】
以上のように、配線抵抗に起因する電圧降下や信号の遅延によって画質の均質性を著し
く損ねたり、駆動回路部の動作速度が極端に低下したりするといった不具合を生じる。こ
ういった問題は、対角数十インチといった大画面の発光装置においては特に顕著な問題と
なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述のような配線抵抗に起因する電圧降下の影響を抑え、発光装置の画質を
均質なものとすることを課題とする。また、駆動回路部と入出力端子とを電気的に接続す
る配線の遅延を抑え、駆動回路部の動作速度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発光装置は、発光素子の形成された基板(以下、素子形成基板または第1の基
板という)と硬度の大きいプリント配線板(PWB:Printed wiring board)とを導電体
(異方導電性フィルムまたはバンプ)により電気的に接続した構造からなり、素子形成基
板に形成された各種配線(第1の配線群)の抵抗を低減していることを特徴とする。
【0016】
なお、硬度の大きいプリント配線板(以下、プリント配線板または第2の基板という)
とは、多少の衝撃では屈曲したり湾曲したりしない程度の硬度を有するプリント配線板を
指し、典型的にはガラス布−エポキシ、ガラス布−耐熱エポキシ、セラミックス、アルミ
ナ、紙ベース−フェノールもしくは紙ベース−エポキシから選ばれた材料で形成されたプ
リント配線板をいう。また、透光性のガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板を
用いることも可能である。
【0017】
本発明の発光装置の断面図を図1(A)に、上面図を図1(B)に示す。なお、図1(
B)をA−A’で切断した断面図が図1(A)に相当する。
【0018】
図1(A)において、101は基板であり、その上に発光素子(代表的にはEL素子も
しくは半導体ダイオード素子)102、発光素子102に電気信号を伝送する配線(以下
、素子側配線という)103、104が形成されている。これらが上述の素子形成基板に
相当する。なお、基板101としては、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、シリ
コン基板、セラミックス基板もしくは金属基板を用いることが可能である。
【0019】
また、素子形成基板の配線103、104の上には導電体105a、105bが設けられ
、導電体105a、105bを介してプリント配線板107が電気的に接続されている。な
お、106aと106bは素子形成基板101とプリント配線板107を接着するためのシ
ール剤である。
【0020】
また、プリント配線板107は基板の表面、裏面もしくは内部に配線群(第2の配線群
)が形成されている。本明細書では異なる二層以上に配線が形成されている場合を多層配
線(または積層配線)と呼び、表面、裏面もしくは内部のいずれか一層しか形成されてい
ない場合を単層配線と呼ぶ。本発明においてプリント配線板107は多層配線であっても
単層配線であっても良い。
【0021】
このとき、導電体105a、105bとしては、異方導電性フィルム、導電性ペーストも
しくはバンプを用いることができる。バンプとしては、代表的に、はんだバンプ、金バン
プ、ニッケルバンプもしくは銅バンプを用いることができる。
また、導電性ペーストとしては銀やニッケル等の金属粒子を分散させた樹脂を用いること
ができる。
【0022】
また、プリント配線板107の端子部にはFPC(Flexible Printed circuit)108
が取り付けられ、さらに異方導電性フィルム109に伝送されてきた電気信号を導電体1
05a、105bに伝送するための配線(以下、PWB側配線または第2の配線群という)
110が1〜20μmの厚さで形成されている。PWB側配線108としては、代表的に
は銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔もしくはアルミニウム箔からなるパターンが用いられる
。なお、FPCも広義にはプリント配線板であるが、本発明におけるプリント配線板の定
義には含まない。
【0023】
以上のような構造を含む本発明の発光装置は、FPC108に伝送されてきた電気信号
を、PWB側配線108により導電体105a、105bに伝送し、素子側配線103、1
04を介して発光素子102に伝送することができる。このとき、PWB側配線108が
非常に低抵抗な配線であるため配線抵抗に起因する電圧降下を大幅に抑制することができ
、素子側配線103、104にほぼ等しい電気信号を伝送することが可能である。また、
同様にPWB側配線108の配線抵抗が小さいために信号遅延も大幅に抑制され、駆動回
路の動作速度が低下するといった不具合を改善することが可能である。
【0024】
また、本発明はプリント配線板107の材料として、ガラス布−エポキシ、ガラス布−
耐熱エポキシ、セラミックス、アルミナ、紙ベース−フェノールもしくは紙ベース−エポ
キシから選ばれた材料を用い、プリント配線板107に耐衝撃性を持たせる点にも特徴が
ある。その結果、発光素子を外部の衝撃から保護することが可能となり、信頼性の高い発
光装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
アクティブマトリクス型もしくはパッシブマトリクス型の発光装置において、配線抵抗
により生じる電圧降下や信号遅延を低減し、駆動回路部の動作速度の向上及び画素部にお
ける画像の均質性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】発光装置の断面構造及び上面構造を示す図。
【図2】画素の輝度変化を示す図。
【図3】発光装置の断面構造及び上面構造を示す図。
【図4】EL表示装置の上面構造及び断面構造を示す図。
【図5】EL表示装置の上面構造及び断面構造を示す図。
【図6】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図7】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図8】本発明の電気器具を示す図。
【図9】本発明の電気器具を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施の形態では、本発明を用いてEL表示装置を作製した場合について説明する。本
発明を用いて作製したEL表示装置の上面図を図3に示す。
【0028】
なお、本実施の形態では上面図を図3(A)及び図3(B)に、断面図を図3(C)に
示す。図3(A)及び図3(B)に示す上面図をA−A’で切断した断面図が図3(B)
である。また、本実施の形態ではプリント配線板が二層構造からなり、各々の層を図3(
A)及び図3(B)に示すこととする。
【0029】
図3(A)において300は第1プリント配線板であり、その上に電流供給線を補助す
るための配線(以下、電流供給補助線という)301が形成されている。本明細書におい
て電流供給線とは、EL素子に流す電流を各EL素子へ供給するための配線であり、電流
供給線を補助するための配線とは、電流供給線の配線抵抗を見かけ上低減するために電流
供給線に並列接続させた配線である。
【0030】
また、302で示される点線はソース駆動回路、303a及び303bで示される点線は
ゲート駆動回路、304で示される点線は画素部を示している。これらの駆動回路及び画
素部は素子形成基板330(図3(C)参照)に形成されている。さらに、305で示さ
れる太い点線は、素子形成基板に形成された電流供給線である。このとき、電流供給補助
線301はコンタクト部306において導電体307に電気的に接続され、さらにその導
電体307を介して電流供給線305に電気的に接続される。
【0031】
以上のように、第1プリント配線板300には銅箔等の低抵抗な材料からなる電流供給
補助線301が形成され、それがコンタクト部306を介して素子形成基板330上の電
流供給線305と電気的に接続している。これにより電流供給線305のいずれの位置に
おいても電位を等しくすることが可能となり、電流供給線305の電圧降下を大幅に抑制
することができる。
【0032】
また、図3(B)において310は第2プリント配線板であり、その上にゲート用制御
配線を補助するための配線(以下、ゲート用制御補助線という)311が形成されている
。本明細書においてゲート用制御配線とは、ゲート駆動回路の電源信号、クロック信号も
しくはスタート信号を伝送するための配線であり、ゲート用制御配線を補助するための配
線とは、ゲート用制御配線の配線抵抗を見かけ上低減するためにゲート用制御配線に並列
接続させた配線である。
【0033】
また、312で示される太い点線は、素子形成基板に形成されたゲート用制御配線であ
る。このとき、ゲート用制御補助線311はコンタクト部313を介して導電体314に
電気的に接続され、さらに導電体314を介してゲート用制御配線315に電気的に接続
される。
【0034】
以上のように、第2プリント配線板310には銅箔等の低抵抗な材料からなるゲート用
制御補助線311が形成され、それがコンタクト部313を介して素子形成基板330上
のゲート用制御配線312と電気的に接続している。これによりゲート用制御配線312
のいずれの位置においても電位を等しくでき、ゲート用制御配線312の電圧降下を大幅
に抑制することができる。
【0035】
本実施の形態では、上記第1プリント配線板300と第2プリント配線板310とを貼
り合わせたもの(プリント配線板320と示す)を、シール剤331により素子形成基板
330と貼り合わせる。また、第1プリント配線板300もしくは第2プリント配線板3
10と、素子形成基板330とは導電体307や314により電気的に接続されている。
なお、導電体307や314を設ける位置に制限はない。
【0036】
また、本実施の形態ではプリント配線板320と素子形成基板330との間隔(ギャッ
プ)は異方導電性フィルム、導電性ペーストもしくはバンプの高さで規定される。この間
隔は5μm〜1mm(好ましくは10〜100μm)とすることが望ましい。間隔が狭すぎ
るとプリント配線板320と発光素子とが接触してしまい、広すぎると異方導電性フィル
ム、導電性ペーストもしくはバンプによるギャップの確保が困難になるからである。なお
、液晶で用いられるスペーサもしくはフィラーを間隔の確保に用いても良い。
【0037】
さらに、素子形成基板330とプリント配線板320との間の密閉空間321には、不
活性ガス(好ましくはアルゴンガス、ネオンガス、窒素ガスもしくはヘリウムガス)もし
くは樹脂を充填すれば良い。樹脂としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン樹
脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、PVC(ポリビニ
ルクロライド)、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテー
ト)を用いると良い。
【0038】
また、不活性ガスもしくは樹脂と共に吸湿性材料(代表的には酸化バリウムもしくは酸
化セシウム)を密閉空間321の内部に設けることは有効である。
【0039】
本実施の形態で重要な点は、配線抵抗が問題となりやすい電流供給線305やゲート用
制御配線312に、プリント配線板に設けた低抵抗な配線パターンを電気的に接続させる
点である。これにより電流供給線305やゲート用制御配線312の配線抵抗により生じ
る電圧降下を抑制することができ、均質な画像表示の可能なEL表示装置を作製すること
ができる。
【実施例1】
【0040】
本実施例では、本発明を用いて作製したアクティブマトリクス型EL表示装置について
図4(A)、(B)を用いて説明する。図4(A)は、EL素子の形成された素子形成基
板(図4(B)にて400で示される)の上面図である。点線で示された401はソース
駆動回路、402はゲート駆動回路、403は画素部である。
【0041】
また、404はプリント配線板であり、その上にはPWB側配線405が形成されてい
る。また、406で示される点線は第1シール材であり、第1シール材406で囲まれた
内側ではプリント配線板404と素子形成基板400との間に樹脂(図4(B)にて40
7で示される)が設けられている。なお、本実施例では樹脂407に吸湿性物質として酸
化バリウム(図4(B)にて408で示される)が添加されている。
【0042】
また、409はPWB側配線405と素子形成基板400に形成された接続配線410
a〜410cとを電気的に接続するコンタクト部である。外部機器との接続端子となるFP
C(フレキシブルプリントサーキット)411から入力されたビデオ信号やクロック信号
等の電気信号は、PWB側配線405に伝送され、コンタクト部409を介して電流供給
線に伝送される。
【0043】
ここで、図4(A)をA−A’で切断した断面に相当する断面図を図4(B)
に示す。なお、図4(A)、(B)では同一の部位に同一の符号を用いている。
図4(B)に示すように、基板400上には画素部403、ソース側駆動回路401が形
成されており、画素部403はEL素子に流れる電流を制御するためのTFT(以下、電
流制御用TFTという)431とそのドレインに電気的に接続された画素電極432を含
む複数の画素により形成される。また、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT4
33とpチャネル型TFT434とを相補的に組み合わせたCMOS回路を用いて形成さ
れる。
【0044】
画素電極432は透明導電膜(本実施例では酸化インジウムと酸化スズとの化合物から
なる膜)で形成され、EL素子の陽極として機能する。また、画素電極432の両端には
絶縁膜435が形成され、さらに赤色に発光する発光層436a、緑色に発光する発光層
436b、青色に発光する発光層(図示せず)が形成される。その上にはEL素子の陽極
437が遮光性導電膜(本実施例ではリチウムとアルミニウムとの合金膜)でもって形成
される。
【0045】
発光層436a、436bの成膜方法は公知の如何なる手段を用いても良いし、材料とし
て有機材料または無機材料を用いることができる。また、発光層だけでなく電子注入層、
電子輸送層、正孔輸送層もしくは正孔注入層などを組み合わせた積層構造としても良い。
【0046】
また、本実施例の場合、陰極437は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線4
10a、410cに電気的に接続される。また、接続配線410a〜410cは異方導電性フ
ィルム440a〜440cによりPWB側配線405に電気的に接続される。さらに、PW
B側配線405はFPC411に電気的に接続されているため、結果的に接続配線410
a〜410cとFPC411とが電気的に接続されることになる。
【0047】
なお、本実施例では第1シール材406をディスペンサー等で形成し、スペーサ(図示
せず)を撒布してプリント配線板404を貼り合わせる。そして、素子形成基板400、
プリント配線板404及び第1シール材406で囲まれた領域内に樹脂407を充填して
いる。本実施例では吸湿性物質として酸化バリウムを樹脂に添加して用いるが、塊状に分
散させて樹脂中に封入することもできる。また、図示されていないがスペーサの材料とし
て吸湿性物質を用いることも可能である。
【0048】
次に、樹脂407を紫外線照射または加熱により硬化させた後、第1シール材406に
形成された開口部(図示せず)を塞ぐ。さらに、第1シール材406、プリント配線板4
04及びFPC411の一部を覆うように第2シール材412を設ける。第2シール材4
12は第1シール材406と同様の材料を用いれば良い。
【0049】
以上のような方式を用いてEL素子を樹脂407に封入することにより、EL素子を外
部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機材料の酸化を促す物質が
侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高いEL表示装置を作製することが
できる。
【0050】
また、本発明を用いることで素子形成基板に設けられた電流供給線やゲート用制御配線
の配線抵抗により生じる電圧降下を抑制することができ、均質な画像表示の可能なEL表
示装置を作製することができる。
【実施例2】
【0051】
本実施例では、本発明を用いて作製したパッシブマトリクス型EL表示装置について図
5を用いて説明する。なお、図5(A)は上面図を、図5(B)は図5(A)をA−A’
で切断した断面図を示している。
【0052】
図5(B)において、501はプラスチックからなる素子形成基板、502は酸化イン
ジウムと酸化亜鉛との化合物からなる陽極である。本実施例では、陽極502を蒸着法に
より形成する。なお、図5では図示されていないが、複数本の陰極が紙面に平行な方向へ
ストライプ状に配列されている。
【0053】
また、ストライプ状に配列された陽極502と直交するように絶縁膜503が形成され
る。また、この絶縁膜503は陽極502の各々を絶縁分離するために陽極502の隙間
にも設けられる。そのため、絶縁膜503を上面から見るとマトリクス状にパターニング
されている。
【0054】
さらに、絶縁膜503の上に樹脂からなるバンク504が形成される。バンク504は
陽極502に直交するように、紙面に垂直な方向に形成されている。また、形状は逆三角
形状(逆テーパー形状)に加工される。なお、二層構造にして上層が下層に対してひさし
状に乗った構造としても良い。
【0055】
次に、発光層505及びアルミニウム合金からなる陰極506が連続的に形成される。
発光層505が水分や酸素に弱いため、真空中または不活性雰囲気中で両者を連続的に成
膜することが望ましい。発光層505は公知の如何なる材料であっても良いが、成膜の簡
便性からポリマー系有機材料が好ましい。また、陰極506は蒸着法で設けることが好ま
しい。発光層505及び陰極506どちらもはバンク504によって形成された溝に沿っ
て形成され、紙面に垂直な方向にストライプ状に配列される。
【0056】
なお、図示しないが、発光層505と陰極506との間にバッファ層として正孔輸送層
や正孔注入層を設けることは有効である。正孔注入層としては銅フタロシアニン、ポリチ
オフェン、PEDOT等を用いることができる。
【0057】
以上のようにして素子形成側基板501上にEL素子を形成する。なお、本実施例では
下側の電極が透光性の陽極となっているため、発光層505で発生した光は紙面において
下面側(素子形成側基板501の方向)に放射される。
【0058】
また、陽極502は第1シール材507の内部に設けられた異方導電性フィルム508
a、508bによりプリント配線板510に形成されたPWB側配線511に電気的に接続
される。本実施例ではPWB側配線511をプリント配線板510の表面に設けた配線5
11a、内部に設けた配線511b及び裏面に設けた配線511cの三層構造としている。
また、プリント配線板510としては、図1の説明で用いた材料を用いることができる。
【0059】
このとき、図5(A)に示すように、プリント配線板510の表面に設けた配線511
aとプリント配線板510の内部に設けた配線511bとは互いに直交するように形成され
ている。また、プリント配線板510の表面に設けた配線511aは陽極502に電気的
に接続され、プリント配線板510の裏面に設けた配線511bは陰極506に電気的に
接続される。また、プリント配線板510の表面に設けた配線511aは、FPC512
に電気的に接続され、外部機器からの信号を伝送する。
【0060】
本実施例では、素子形成側基板501とプリント配線板510との間に樹脂513及び
樹脂513に添加された吸湿性物質514を設けることによってEL素子を酸素や水分か
ら保護している。勿論、樹脂を充填するのではなく、不活性ガスを充填して空間としても
良い。さらに、本実施例では、プリント配線板510全体を第2シール材515で覆うこ
とでEL素子の劣化を抑制する。
【0061】
以上のような方式を用いてEL素子を樹脂508に封入することにより、EL素子を外
部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機材料の酸化を促す物質が
侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高いEL表示装置を作製することが
できる。
【0062】
また、本発明を用いることで素子形成基板に設けられた陽極や陰極の配線抵抗により生
じる電圧降下を抑制することができ、均質な画像表示の可能なEL表示装置を作製するこ
とができる。
【実施例3】
【0063】
本実施例では実施例1に示したEL表示装置の構造の変形例を示す。説明には図6を用
いるが、素子形成側基板400上に形成されたTFTやEL素子の構造は図4と同一であ
るので、異なる部分に符号を付して説明する。
【0064】
実施例1と同様の構造で陰極437まで形成されたら、さらに陰極437を覆って厚さ
50〜500nm(好ましくは300〜400nm)のパッシベーション膜601を形成
する。パッシベーション膜601としては、酸化タンタル膜、窒化シリコン膜、酸化シリ
コン膜、窒化酸化シリコン膜もしくはこれらを組み合わせた積層膜を用いれば良い。成膜
方法はEL素子が劣化しないように150℃以下の温度で気相成膜を行うことが望ましい

【0065】
本実施例では、パッシベーション膜601によってEL素子の封入を完了する。即ち、
パッシベーション膜601によって外部の酸素や水分からEL素子を保護し、EL表示装
置の信頼性を向上させる点に特徴がある。従って、図4ではEL素子を保護するために樹
脂407で封入するといった構造を用いたが、本実施例では特にそのような封入を行う必
要がなく、EL表示装置の構造を簡略化することができる。
【0066】
このとき異方導電性フィルム602a、602bは接続配線410a、410cとプリント
配線板603上に形成されたPWB側配線604とを電気的に接続するだけでなく、素子
形成側基板400とプリント配線板603との間隔を決定するスペーサとしての役割も担
う。勿論、別途スペーサを設けても良い。
【0067】
以上のような方式を用いてEL素子をパッシベーション膜601によって保護すること
により、EL素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機材
料の酸化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高いEL表示
装置を作製することができる。
【0068】
また、本発明を用いることで素子形成基板に設けられた電流供給線やゲート用制御配線
の配線抵抗により生じる電圧降下を抑制することができ、均質な画像表示の可能なEL表
示装置を作製することができる。
【0069】
なお、本実施例の構成は実施例1の構成と組み合わせることが可能である。
【実施例4】
【0070】
本実施例では、実施例1に示したEL表示装置の構造の変形例を示す。説明には図7を
用いるが、素子形成側基板400上に形成されたTFTやEL素子の構造は基本的には図
4と同一であるので、異なる部分に符号を付して説明する。
【0071】
本実施例では、EL素子の構造が図4とは逆であり、画素電極(陰極)701として遮
光性導電膜(本実施例ではアルミニウム合金膜)を用い、陽極702として透明導電膜(
本実施例では酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物膜)を用いている。そのため、発光方
向は図面の上方に向かう方向(矢印の方向)となる。
【0072】
EL素子が完成したら、第1シール材703によりカバー材704を貼り合わせ、内側
に吸湿性物質705を添加した樹脂706を設ける。カバー材704としては透光性の材
料を用いることができ、樹脂フィルム、樹脂基板、プラスチック基板、ガラス基板もしく
は石英基板を用いれば良い。
【0073】
次に、素子形成側基板400の裏面側からビアホールを形成し、接続配線707a、7
07bを形成する。さらに、接続配線707a、707bは、金、半田もしくはニッケルか
らなるバンプ708a、708bを介してプリント配線板709に形成されたPWB側配線
710に電気的に接続される。また、PWB側配線710はFPC711に電気的に接続
される。なお、712は素子形成側基板400とプリント配線板709とを貼り合わせる
ための樹脂であるが、これを設けない構成とすることも可能である。
【0074】
本実施例の構成を用いることで素子形成基板に設けられた電流供給線やゲート用制御配
線の配線抵抗により生じる電圧降下を抑制することができ、均質な画像表示の可能なEL
表示装置を作製することができる。
【実施例5】
【0075】
実施例1〜4ではEL素子を用いた発光装置を例にして説明してきたが、本発明はEC
(エレクトロクロミクス)表示装置、フィールドエミッションディスプレイ(FED)ま
たは半導体を用いた発光ダイオードを有する発光装置に用いることも可能である。
【実施例6】
【0076】
本発明を実施して形成した発光装置は、自発光型であるため液晶表示装置に比べて明る
い場所での視認性に優れ、しかも視野角が広い。従って、様々な電気器具の表示部として
用いることができる。例えば、TV放送等を大画面で鑑賞するには対角20〜60インチ
のディスプレイとして本発明の発光装置を筐体に組み込んだディスプレイを用いるとよい

【0077】
なお、発光装置を筐体に組み込んだディスプレイには、パソコン用ディスプレイ、TV
放送受信用ディスプレイ、広告表示用ディスプレイ等の全ての情報表示用ディスプレイが
含まれる。また、その他にも様々な電気器具の表示部として本発明の発光装置を用いるこ
とができる。
【0078】
その様な本発明の電気器具としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディ
スプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カ
ーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、
携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、
記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルバーサタイルディスク(DVD)等
の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられ
る。特に、斜め方向から見ることの多い携帯情報端末は視野角の広さが重要視されるため
、EL表示装置を用いることが望ましい。それら電気器具の具体例を図8、図9に示す。
【0079】
図8(A)は発光装置を筐体に組み込んだディスプレイであり、筐体2001、支持台
2002、表示部2003等を含む。本発明は表示部2003に用いることができる。こ
のようなディスプレイは発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよ
りも薄い表示部とすることができる。
【0080】
図8(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部210
3、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本発明の発
光装置は表示部2102に用いることができる。
【0081】
図8(C)は頭部取り付け型のELディスプレイの一部(右片側)であり、本体220
1、信号ケーブル2202、頭部固定バンド2203、表示部2204、光学系2205
、発光装置2206等を含む。本発明は発光装置2206に用いることができる。
【0082】
図8(D)は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本
体2301、記録媒体(DVD等)2302、操作スイッチ2303、表示部(a)23
04、表示部(b)2305等を含む。表示部(a)は主として画像情報を表示し、表示
部(b)は主として文字情報を表示するが、本発明の発光装置はこれら表示部(a)、(
b)に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器
なども含まれる。
【0083】
図8(E)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体2401、カメラ部240
2、受像部2403、操作スイッチ2404、表示部2405等を含む。本発明の発光装
置は表示部2405に用いることができる。
【0084】
図8(F)はパーソナルコンピュータであり、本体2501、筐体2502、表示部2
503、キーボード2504等を含む。本発明の発光装置は表示部2503に用いること
ができる。
【0085】
なお、将来的に発光輝度がさらに高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズや光
ファイバー等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも
可能となる。
【0086】
また、発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なくなる
ように情報を表示することが望ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生
装置のような文字情報を主とする表示部に発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景
として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが望ましい。
【0087】
ここで図9(A)は携帯電話であり、本体2601、音声出力部2602、音声入力部
2603、表示部2604、操作スイッチ2605、アンテナ2606を含む。本発明の
発光装置は表示部2604に用いることができる。なお、表示部2604は黒色の背景に
白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0088】
また、図9(B)は音響再生装置、具体的にはカーオーディオであり、本体2701、
表示部2702、操作スイッチ2703、2704を含む。本発明の発光装置は表示部2
702に用いることができる。また、本実施例では車載用オーディオを示すが、携帯型や
家庭用の音響再生装置に用いても良い。なお、表示部2704は黒色の背景に白色の文字
を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型の音響再生装置において特に有効
である。
【0089】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に用いることが
可能である。また、本実施例の電気器具は実施例1〜5に示したいずれの構成の発光装置
を用いても良い。
【実施例7】
【0090】
本発明の発光装置を表示部とする電気器具を屋外で使う場合、当然暗い所で見る場合も
明るい所で見る場合もある。このとき、暗い所ではさほど輝度が高くなくても十分に認識
できるが、明るい所では輝度が高くないと認識できない場合がありうる。
【0091】
発光装置の場合、輝度は素子を動作させる電流量または電圧に比例して変化するため、
輝度を高くする場合は消費電力も増してしまう。しかし、発光輝度をそのような高いレベ
ルに合わせてしまうと、暗い所では消費電力ばかり大きくで必要以上に明るい表示となっ
てしまうことになる。
【0092】
そのような場合に備えて、本発明の発光装置に外部の明るさをセンサーで感知して、明
るさの程度に応じて発光輝度を調節する機能を持たせることは有効である。即ち、明るい
所では発光輝度を高くし、暗い所では発光輝度を低くする。その結果、消費電力の増加を
防ぐとともに観測者に疲労感を与えない発光装置を実現することができる。
【0093】
なお、外部の明るさを感知するセンサーとしては、CMOSセンサーやCCD(チャー
ジカップルドデバイス)を用いることができる。CMOSセンサーは公知の技術を用いて
発光素子の形成された基板上に一体形成することもできるし、半導体チップを外付けして
も良い。また、CCDを形成した半導体チップを発光素子の形成された基板に取り付けて
も良いし、発光装置を表示部として用いた電気器具の一部にCCDやCMOSセンサーを
設ける構造としても構わない。
【0094】
こうして外部の明るさを感知するセンサーによって得られた信号に応じて、発光素子を
動作させる電流量または電圧を変えるための制御回路を設け、それにより外部の明るさに
応じて発光素子の発光輝度を調節しうる。なお、このような調節は自動で行われるように
しても良いし、手動で行えるようにしても良い。
【0095】
なお、本実施例の構成は、実施例6に示したどの電気器具においても実施することが可
能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子に電気的に接続された第1の配線群と、前記発光素子を制御する薄膜トランジスタと、を有する第1の基板と、
端子部と、前記端子部に電気的に接続された第2の配線群と、を有する第2の基板と、
前記第1の配線群と前記第2の配線群とを電気的に接続する導電体と、を有する発光装置であって、
前記第1の配線群は、前記発光素子に電流を供給する電流供給線と、前記薄膜トランジスタを制御するゲート用制御配線と、を含み、
前記第2の配線群は、前記電流供給線に電気的に接続された電流供給補助線と、前記ゲート用制御配線に電気的に接続されたゲート用制御補助線と、を含み、
前記電流供給補助線および前記ゲート用制御補助線は、互いに異なる階層として形成されていることを特徴とする発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−54250(P2012−54250A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247238(P2011−247238)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2011−52451(P2011−52451)の分割
【原出願日】平成12年12月14日(2000.12.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】