説明

発光部品及びその製造方法

【課題】 放熱性が良好であり、高輝度及び高出力のLEDを光源とする、信頼性の高い発光部品を提供すること。
【解決手段】 光源と、前記光源を搭載した金属基板Aと、前記光源に接続するワイヤボンドと、前記ワイヤボンドにより前記光源と電気的に接続され、前記金属基板Aと同一平面状に形成され、かつ前記金属基板Aと絶縁されている金属基板Bと、前記金属基板A及び前記金属基板Bに設置され、内側に傾斜面を有する反射部材と、前記光源を覆うモールド部と、を備える発光部品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度及び高出力のLED素子を光源として使用する発光部品及びその製造方法に関するものであって、放熱効果を高めることにより、LED素子の使用寿命を伸ばし、高輝度及び高出力を維持することが出来るよう改善された発光部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLEDパッケージは、固定用電極パターンを有する回路基板に光源としてLED素子を実装し、上記基板の前面と、基板と外形のサイズが大体類似で内側に放射状の反射面を有する反射部材とをエポキシレジンなどで一体化して固定させた構造である。このような従来のLEDパッケージは、反射部材に傾斜貫通された反射面を有し、この反射面を通じてLED素子からの光を前面へ反射させる。
【0003】
ところが、上記のような従来のLEDパッケージは、基板材料として熱伝導性の高い、即ち放熱機能に優れた材料を使用していないため、LED素子の発光作動中に優れた放熱効果を得ることが出来ない。また従来のLEDパッケージは、上記基板に反射部材を別途の工程で固定させるため、製造工程の簡略化が困難で、それによる組み立て費用の上昇を招いた。
【0004】
これらの欠点を解消するべく、LEDパッケージを製造する方法として、「多層反射面構造を有するLEDパッケージ及びその製造法」(特許文献1)などが提案されている。
【0005】
図5を用いて特許文献1の内容を説明する。特許文献1に係る発明は、アルミニウム材料からなり側面に窪んだ多層反射面が形成された基板200と、上記反射面上に装着され電極パターンに電気的に連結された光源400と、上記電極パターンと基板との間に形成されたアノダイジング絶縁層210と、上記基板の光源上に覆われるモールディング部600と、を含み、上記光源のLED素子はその下部面にアルミニウム放熱部を形成して放熱性能に優れるよう構成された多層反射面構造を有するLEDパッケージとその製造方法を提供している。特許文献1に係る発明によると基板がアルミニウム材料からなり、アノダイジング処理して絶縁層を形成するものであるため、これを通じたLED素子の優れた放熱効果を得ることができ、それによってLEDパッケージの使用寿命と発光効率を大きく増大させることが出来るというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−294966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記LEDパッケージでは熱伝導率236W/m・Kのアルミニウムを用いているにも関わらず、アノダイジング処理した絶縁層は32W/m・Kになるため、熱伝導率を低下させているという課題がある。また、アノダイジング処理した絶縁層210はポーラス状の構造になり、モールディング部600はこの絶縁層210を覆っていることから、モールディング部形成時に絶縁層部分から気泡を発生しやすく、気泡を内在する不良を発生するという課題がある。更には、この絶縁層を通して、硫化物等の気体がパッケージ内部に到達するため、銀コーティングされた反射膜の劣化が早く進行するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
光源と、光源を搭載した金属基板Aと、光源に接続するワイヤボンドと、ワイヤボンドにより光源と電気的に接続され、金属基板Aと同一平面状に形成され、かつ、金属基板Aと絶縁されている金属基板Bと、金属基板A及び金属基板Bに設置され、かつ内側に傾斜面を有する反射部材と、光源を覆うモールド部と、を備える発光部品を提供する。
【0010】
また、金属基板A及び金属基板Bは銅、銀、金、アルミニウムのいずれかで形成されることを特徴とする。 また、反射部材の傾斜面は、コールドミラー膜、銀膜、アルミニウム膜の少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする。また、モールド部は疎水性であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の発光部品の製造方法は、傾斜貫通孔が形成された反射部材を金属基板Cに設置する工程と、前記金属基板Cに光源を搭載する工程と、前記金属基板Cと前記光源とをワイヤボンドにより電気的に接続する工程と、モールド部を形成する工程と、前記金属基板Cを光源を搭載した部分である金属基板Aとワイヤボンドで接続した部分である金属基板Bに分割する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、反射部材を金属基板Cに設置する工程において、反射部材はガラスで形成され、金属基板A及び金属基板Bの反射部材と接合する面はアルミニウム薄膜又はシリコン薄膜で形成され、反射部材と、金属基板A及び金属基板Bとを陽極接合することを特徴とする。
【0013】
また、反射部材を金属基板Cに設置する工程において、反射部材はガラスで形成され、金属基板A及び金属基板Bの反射部材と接合する面はアルミニウム薄膜又はシリコン薄膜で形成され、反射部材と、金属基板A及び金属基板Bとを陽極接合することを特徴とする。
【0014】
また、金属基板Cに光源を設置する工程が、金属基板Cと光源とを金属ナノ粒子を焼成することにより接合することを特徴とする。
【0015】
さらに、金属基板Cに一括形成された複数の発光部品を個片化する工程を備える。この際、反射部材と金属基板Cを接着又は接合する工程において、溝部を有する反射部材と金属基板Cとを接着又は接合することによって、個片化を容易に行うことができる。
【0016】
このような手段をとることで、熱伝導率を下げる部分のない放熱経路が確保されるため、放熱性の高い発光部品を提供できる。また、反射部材にはポーラス状の構造がないため、モールド部形成時の不良がなく、信頼性も高い発光部品を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、分割された金属基板の一方に光源であるLED素子が接合され、優れた放熱効果を得ることができ、それによって、発光部品の使用寿命と発光効率を大きく増大させることが出来る効果を有する。
【0018】
また本発明は、金属基板と反射部材を多数個同時に一括形成し、最終工程で個片化するため、製作コストを低減する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る発光部品の断面図である。
【図2】本発明に係る発光部品の製造工程を示す図である。
【図3】本発明に係る発光部品の製造工程における上面図である。
【図4】本発明に係る発光部品の製造工程を示す図である。
【図5】従来例の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る発光部品の断面図である。発光部品1は光源40を搭載した金属基板A21を備えている。また、金属基板B22はワイヤボンド50により光源40と電気的に接続している。さらに、金属基板A21と金属基板B22とが絶縁されている。また、反射部材31は、金属基板A21及び金属基板B22に設置されている。また、モールド部60は光源40を覆っている。また、反射部材31は光源からの光を反射する傾斜面を有している。また、この傾斜面は、反射部材31の内側に形成された貫通孔の側面であり、この貫通孔内に光源が搭載されている構造となっている。また、反射部材により金属基板Aと金属基板Bとは接続している。
【0022】
金属基板A21、及び金属基板B22の材質は、例えば熱伝導率236W/m・Kであるアルミニウム、熱伝導率320W/m・Kである金、熱伝導率420W/m・Kである銀、熱伝導率398W/m・Kである銅である。また、金属基板A21及び金属基板B22の厚みは、放熱性、構造上の強度、製造しやすさ、等を考慮すると10μmから100μmが適当である。
【0023】
反射部材31の材質としては、例えばガラスやセラミックスを用いることができる。また、反射部材31の傾斜面には例えば銀膜、アルミニウム膜、コールドミラー膜を形成することで、反射効率を上げることができる。
【0024】
反射部材31を金属基板A21及び金属基板B22に設置する方法として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いて接着することが可能である。
【0025】
また、反射部材31の材質がガラスである場合には、金属基板A21及び金属基板B22の表面に、例えば1000Åから5000Åのシリコンの薄膜或いはアルミニウムの薄膜を形成し、陽極接合法により、接合することも可能である。ただし、金属基板A21及び金属基板B22がアルミニウムで形成されている場合は、上記薄膜を形成せずに陽極接合することができる。
【0026】
また、反射部材31の材質がセラミックスである場合には、例えば銀ろうを用いて、ろう付けすることも可能である。
【0027】
以上のような方法を採用することで、接着剤で接着するより、信頼性の高い部品を作製できる。
【0028】
モールド部60の材料は、透明であり、疎水性であるものがよい。例えば透明樹脂を用いることができ、エポキシ、アクリル、シリコーン、ポリシロキサン等の透明樹脂などを使用することが可能である。また、上記樹脂に蛍光体等を混入してもよい。
【0029】
光源40と金属基板A21は、ダイボンド剤と称される銀ペースト等の導電性接着剤を用いて接合する。また、光源40と金属基板A21は、放熱性を考慮し、例えば銀、金錫合金、金、銅等の金属ナノ粒子を焼結させて、接合することで樹脂成分のない熱伝導性の高い接合となる。
【0030】
次に、図2から図4を用いて、本発明に係わる製造方法を説明する。
【0031】
図2は、本発明に係る発光部品の製造工程を示す図であり、複数個の発光部品をウェハ単位で製造し、最終工程で個片化する手段を示している。
【0032】
図2(a)は金属基板A21及び金属基板B22を形成するための金属基板C20を示している。金属基板C20は、複数の傾斜貫通孔が一体形成されている反射部材30の材質、反射部材30との接合又は接着などの設置方法に応じて図示しない薄膜が形成されている。また、光源40及びワイヤボンド50の実装パターンが金膜等で形成されていてもよい。
【0033】
図2(b)は複数の傾斜貫通孔が一体形成されている反射部材30を金属基板C20に接着又は接合などにより設置する工程である。傾斜貫通孔は、反射部材30の素材に応じて、ブラスト加工、エッチング加工、ドリル加工、粉末焼成等により形成する。
【0034】
図2(c)は金属基板C20に光源40を搭載する工程を示している。この際、光源は金属基板C20の金属基板Aを形成する部分に搭載する。この工程において、金属基板C20と光源40とを銀、金錫合金、金、銅等の金属ナノ粒子を焼結させて、接合している。この工程により、金属基板C20と光源40との間に上記金属からなる接合層が形成する。また、金属基板C20と光源40との接合は他にもダイボンド剤と称される銀ペースト等の導電性接着剤を用いて接合することもできる。
【0035】
図2(d)はワイヤボンド50を形成し、光源40と金属基板Cの金属基板Bを形成する部分とを電気的に接続する工程である。
【0036】
図2(e)は光源40及びワイヤボンド50をモールドするモールド部60を形成する工程である。このとき、モールド部60は透明であり、疎水性であるものがよい。また、モールド部60は、蛍光体等の混合物が混入されていてもよい。
【0037】
図2(f)は光源40への電極を分割するために、金属基板C20に分割部23を形成する分割部形成工程である。分割部23を形成する方法としては、レーザー加工、機械加工等から適切な方法を選択できる。また、モールド部60を疎水性、撥水性にしておくことで、ウェットエッチングによる加工が可能となる。また、このときに金属基板C20の厚みをウェットエッチングにより薄くすることも可能であり、より放熱性をあげることができる。このときの上面図を図3に示す。
【0038】
図2(g)は金属基板C20に複数個同時に形成してきたものをダイシング等により個片化して、個々の発光部品を製造する発光部品形成工程を示している。この工程により、金属基板C20が金属基板Aと金属基板Bとに完全に分割される。
【0039】
以上の工程により、金属基板C20に複数の発光部品を一括形成した後、個々の発光部品に個片化することが可能となり、製作コストを低減する効果が得られる。
【0040】
なお、本実施例は発光部品を複数個同時に形成する場合に限定されるものではなく、発光部品を1個形成する場合にも適用できる。その場合は図2(g)の工程が必要なく、図2(f)の工程により金属基板C20が金属基板Aと金属基板Bとに分割される。
【0041】
図4を用いて、更に容易に発光部品を製造する方法を説明する。
【0042】
図4(b1)に示すとおり、反射部材30を金属基板C20に設置する工程において、発光部品1を個片化する場所に溝部を有する反射部材32を用いて、金属基板C20と接合又は接着により金属基板C20に設置する。この後、図2(c)から図2(e)の工程を先に述べたとおり行う。
【0043】
図4(f1)に示すとおり、分割部形成工程において、金属基板A21と金属基板B22を分割する分割部23を形成し、さらに分割部23を反射部材32の溝部にあたる部分にも形成する。この工程で、金属基板C20の材質が銅である場合には、腐食を抑えるために、金属基板A21、金属基板B22に、金めっきや、Snめっき等の防錆処理をする。なお、図4(b1)の工程、又は図4(f1)の工程のどちらか一方を行うだけでもよい。
【0044】
このようにしておくと、図4(g1)に示す発光部品形成工程では反射部材のみを切断すればよく、異なる材質を切断しなくて済むため、精度の向上、コスト低減ができ、切断方法の選択肢も多くなる。また、溝部が形成されているため、応力が集中する構造となるため、割るように切断することが可能となり、特別な装置が不要で、すばやく個片化できるようになる。
【符号の説明】
【0045】
1 発光部品
20 金属基板C
21 金属基板A
22 金属基板B
23 分割部
30 複数の傾斜貫通孔が一体形成されている反射部材
31 反射部材
32 溝部を有する反射部材
40 光源
50 ワイヤボンド
60 モールド部
100 LEDパッケージ
200 アルミニウム基板
210 アノダイジング絶縁層
300 電極パターン
400 光源
500 ワイヤ
600 モールディング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源を搭載した金属基板Aと、前記光源に接続するワイヤボンドと、前記ワイヤボンドにより前記光源と電気的に接続され、前記金属基板Aと同一平面状に形成され、かつ前記金属基板Aと絶縁されている金属基板Bと、前記金属基板A及び前記金属基板Bに設置され、内側に傾斜面を有する反射部材と、前記光源を覆うモールド部と、を備える発光部品。
【請求項2】
前記金属基板A及び前記金属基板Bは銅、銀、金、アルミニウムのいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光部品。
【請求項3】
前記反射部材はガラスで形成され、前記金属基板A及び前記金属基板Bの前記反射部材と接合する面はアルミニウム薄膜又はシリコン薄膜で形成され、前記反射部材と、前記金属基板A及び前記金属基板Bとが陽極接合されていることを特徴とする請求項2に記載の発光部品。
【請求項4】
前記反射部材はセラミックスで形成され、前記反射部材と、前記金属基板A及び前記金属基板Bとはろう付けされることを特徴とする請求項2に記載の発光部品。
【請求項5】
前記金属基板Aと前記光源は、金属ナノ粒子を焼成することにより接合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の発光部品。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子は、銀、金錫合金、金、銅のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の発光部品。
【請求項7】
前記反射部材の前記傾斜面は、コールドミラー膜、銀膜、アルミニウム膜の少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする請求項6に記載の発光部品。
【請求項8】
前記モールド部は疎水性であることを特徴とする請求項7に記載の発光部品。
【請求項9】
傾斜貫通孔が形成された反射部材を金属基板Cに設置する工程と、前記金属基板Cに光源を搭載する工程と、前記金属基板Cと前記光源とをワイヤボンドにより電気的に接続する工程と、モールド部を形成する工程と、前記金属基板Cを前記光源を搭載した部分である金属基板Aと前記ワイヤボンドで前記光源と電気的に接続した部分である金属基板Bとに分割する工程と、を備えることを特徴とする発光部品の製造方法。
【請求項10】
前記反射部材を前記金属基板Cに設置する工程において、前記反射部材はガラスで形成され、前記金属基板Cの前記反射部材と接合する面はアルミニウム薄膜又はシリコン薄膜で形成され、前記反射部材と前記金属基板Cとを陽極接合することを特徴とする請求項9に記載の発光部品の製造方法。
【請求項11】
前記反射部材を前記金属基板Cに設置する工程において、前記反射部材はセラミックスで形成され、前記反射材と前記金属基板Cとをろう付けすることを特徴とする請求項9に記載の発光部品の製造方法。
【請求項12】
前記金属基板Cに前記光源を搭載する工程において、前記金属基板Cと前記光源とを金属ナノ粒子を焼成することにより接合することを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の発光部品の製造方法。
【請求項13】
前記金属基板Cに複数の発光部品を一括形成した後、個々の発光部品に個片化することを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の発光部品の製造方法。
【請求項14】
前記反射部材を前記金属基板Cに設置する工程において、少なくとも1つ以上の溝部を有する前記反射部材を前記金属基板Cに設置することを特徴とする請求項13に記載の発光部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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