説明

発塵抑制作用に優れた水硬物質材料

【目的】 作業現場においてセメントのような水硬性物質材料による粉塵の発生を抑制する。
【構成】 液体を含有するパーライト,シラスバルーン,フライアッシュバルーンのような単孔性物質、或いは木粉,活性炭,バーミキュライトのような多孔質組織部材をセメントや石灰のような水硬性物質に混入、配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントや石灰といった水硬性物質材料において現場において発生する粉塵抑制作用に優れた水硬物質材料を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
セメントなどの水硬性物質粉体を原料とする各種製品の生産や加工工場などにおいては、その処理取扱い工程において多量の原料粉塵が発生し、該粉塵が作業域の空間に浮遊することは周知のとおりである。したがって、斯うした発生粉塵を制御・抑制する必要があることに関しては従来から種々の検討がなされてはいるが、未だその発塵抑制効果に関して好ましい低減を図ることが困難であり、また適切な均一性や持続性を持った材料が得られるに至っていないのが現状である。
【特許文献1】 特開2000−63835号公報
【特許文献2】 特開平6−87643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したような発生粉塵は作業現場における環境を悪化させ、作業性や作業効率をも低下させるものであると同時に、人体に有害なものとして環境問題を引き起こす可能性が否定できないので出来る限りその発生を抑制する必要がある。
【0004】
特に、施工現場や製造工場などでセメントや石灰などを混入すると共に砂その他の材料を添加混入して練り合わせ処理する際には大量の原料粉塵が高濃度状に発生することが当然視されているが、これを適切に抑制すべきことは明らかである。
【0005】
上記のような場合において適宜な保水材料を利用して発塵を抑制しようとすることが考えられるが、一般的に困難であることは明らかで、特に高温低圧条件下などでは水分が容易に蒸発してしまい発塵抑制効果が継続し難いものとなってしまうことは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記したような従来技術における課題を解消すべく研究を重ねて創案されたものであり、微細な単孔性物質や多孔性物質の空隙組織に適宜に液体を含ましめ、これをセメント等の粉体原料に混入配合して発生粉塵の抑制低減効果を得しめる新規な材料を提案するものであって、より具体的には以下の如くである。
【0007】
(1) 液体を含有せしめ得る材料である単孔性物質又は多孔性物質部材のどちらか一方又は双方をセメント、石灰の何れか一方又は双方を用いた水硬性物質に混入又は配合したことを特徴とする発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【0008】
(2) 単孔性物質として、パーライト、シラスバルーン、フライアッシュバルーンの1種以上を用いることを特徴とする前記(1)項に記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【0009】
(3) 多孔質組織部材として、木粉、活性炭、バーミキュライトの1種以上を用いることを特徴とする前記(1)項に記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【0010】
(4) 単孔質物質や多孔質組織部材に対し、更に水や脂肪族多価アルコール類及びワックスなどの液体を添加含有せしめたことを特徴とする前記(1)項〜(3)項の何れか1つに記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【0011】
(5) 単孔質物質又は多孔質組織部材であって、液体を含有せしめ得る材料の平均粒径サイズが2.0mm以下とされていることを特徴とする前記(1)項〜(4)項の何れか1つに記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【発明の効果】
【0012】
液体を含有せしめ得る材料である単孔質物質又は多孔質空隙組織部材の何れか一方又は双方をセメント、石灰などの発塵物質の何れか一方又は双方を用いた水硬性物質に混入又は配合したことにより、粉塵の発生し易い原料粉体の発塵が適切に抑制され易くすることができる。
【0013】
単孔質物質として、パーライト、シラスバルーン、フライアッシュバルーンの1種または2種以上を用いることで、これらの物質に液体を含有せしめて利用し効率的な発塵抑制作用を実現することが可能となる。
【0014】
多孔質組織部材として、木粉、活性炭、バーミキュライトの1種以上を用いることで、適宜な選択組合せによってより効率的な発塵抑制作用を実現することが可能となる。
【0015】
単孔質物質や多孔質組織部材に、更に水や脂肪族多価アルコール類及びワックスなどの液体を添加含有せしめたことにより、水分などの蒸発効果が高い条件下においても適切な発塵抑制効果を長期間継続させることが可能となる。
【0016】
単孔質物質又は多孔質組織部材である液体を含有せしめ得る材料の平均粒径サイズが2.0mm以下とされていることにより、原料粉体などの条件に合わせて最適な発塵抑制作用が実現するように調整できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者等は、上記したような本発明に従い各種液体を含有せしめた単孔質物質や多孔質物質をセメントや石灰のような粉塵発生原料に混ぜ合わせることで高い発塵抑制効果が得られることを見出し、特に脂肪質多価アルコール類やワックスを併用することで高温環境下などにおいても効果が長期持続することを見出して本発明を完成したものである。
【0018】
つまり、本発明はセメントや石灰あるいはこれらを主原料とするような固化材料に単孔質物質や多孔質物質を配合せしめ、これに脂肪族多価アルコール類及びワックスを重量比で1:5〜10:1となる割合で付着させることで、高温環境下などにおいても蒸発が抑制されて粉塵発生効果が長期間にわたって維持可能なものとなるものである。
【0019】
また、本発明においてセメントなどの固化材料に添加混合される脂肪族多価アルコール類及びワックスは、水のようにセメントや石灰を硬化させるような作用は持たないので、施工作業前に原料粉体が硬化反応を始めるおそれはなく、適切な発塵抑止作用を維持したままで長期保存が可能となるものである。
【0020】
さらに、このような脂肪族多価アルコール類やワックスの添加混合処理だけで本発明は実現可能なものであるから簡単且つ低コストに実施することも可能となっている。
【0021】
本発明における粉塵発生抑止効果は、主として脂肪族多価アルコール類により達成されるものである。したがって、この脂肪族多価アルコール類の比率が上記より少ないものとなると(脂肪族多価アルコール類がワックスの5分の1未満の場合)、目的とする高い発塵抑制効果は実現されない。
【0022】
また、ワックスの割合が上記重量比よりも少ないと(ワックスが脂肪族多価アルコール類の10分の1未満の場合)、高温環境下などにおいて脂肪族多価アルコール類が蒸発することを適切の阻止することができず、このような環境下での発塵抑止機能を期待することができなくなる。
なお、脂肪族多価アルコール類及びワックスの最も好ましい重量比は3:1である。
【0023】
また、本発明において、脂肪族多価アルコール類とワックスのセメントなどの固化材料に対する添加混合割合は、1〜8重量%が好ましい。
すなわち、これらの添加割合が1重量%に満たない場合には粉塵発生の抑制効果が不充分であり、また、8重量%を超えると混合した脂肪族多価アルコール類とワックスにより粉体同士の結合が見られるようになり、それら自体も粉体を介して相互に連結してしまって粘着状態となり、該固化材料としての粉体流動性が損なわれるものである。
なお、この場合のより好ましい範囲は2〜5重量%である。
【0024】
本発明において使用する脂肪族多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンから選択された何れか1種又は2種以上の混合物が好ましい。
これらのものは、特に気化蒸発し難く、更にセメントや石灰などの固化反応に影響を与えず、しかも無臭であるために取扱い操作性において優れている。
なお、これらの中で特に好ましいものはジエチレングリコールであって、このものは比較的廉価で、しかもセメントなどとの混合性においても良好であって実用上優れたものである。
【0025】
さらに、本発明において使用すべきワックスとして好ましいものは、液体状のワックス又は固体状のワックスに乳化材と水とを混合することにより液体状となるワックスである。
【実施例】
【0026】
本発明の具体的な実施例について説明すると、上述したようなセメント混練物として、その製造時において最も発塵し易い条件としてはセメントペーストを調整する原料としてセメントのみを採用した。即ち、普通セメント1t(1000kg)に対しパーライト5kgを添加すると共に水15kgを霧状に分散噴霧して添加混合する方式により混合したときの粉塵発生状態(粉塵量)を測定した結果をセメント単体及び特許文献1に挙げた従来技術と比較したものが図1〜図3である。
【0027】
即ち、1日目の結果は図1に、2日目の結果は図2に、4日目の結果は図3に示すとおりであって、発塵量(CPM)は2日目及び4日目となることにより次第に高くなる傾向を示すとしても何れも最大値で200CPM以下であり、作業現場でほとんどほこりを感じないレベルであり、従来のこの種の技術においては求め得ない粉塵低減を図らしめ得ることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したような本発明によるならば、発塵抑制効果に優れた水硬性物質成形体を提供することができることは明らかであり、各種生産ないし加工現場などにおける発生粉塵を効率高く有効適切に制御抑制することができるものであるから、工業的にその硬化の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明水硬物質材料(1日目)の発塵量(CPM)を30秒ごとに計測した結果を示す図表である。
【図2】 本発明水硬物質材料(2日目)の発塵量(CPM)を30秒ごとに計測した結果を示す図表である。
【図3】 本発明水硬物質材料(4日目)の発塵量(CPM)を30秒ごとに計測した結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含有せしめ得る材料である単孔質物質又は多孔質組織部材の何れか一方又は双方にセメント、石灰などの発塵物質の何れか一方又は双方を用いた水硬性物質を混入又は配合したことを特徴とする発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【請求項2】
単孔質物質として、パーライト、シラスバルーン、フライアッシュバルーンの何れか1種以上を用いることを特徴とする請求項1に記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【請求項3】
多孔質組織部材として、木粉、活性炭、バーミキュライトの何れか1種以上を用いることを特徴とする請求項1に記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【請求項4】
単孔質物質または多孔質組織部材に、更に水や脂肪族多価アルコール類及びワックス、セメント凝結遅延剤および保水剤などの液体を添加含有せしめたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。
【請求項5】
単孔質物質又は多孔質組織部材として液体を含有せしめ得る材料の平均粒径サイズが2.0mm以下とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の発塵抑制作用に優れた水硬性物質材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−1848(P2007−1848A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213406(P2005−213406)
【出願日】平成17年6月25日(2005.6.25)
【出願人】(505276786)
【出願人】(599080694)カドヤ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】