説明

発振器結合システム

【課題】ノイズ抑制の困難度を簡易な回路素子で簡単化するための発振器結合システムを提供する。
【解決手段】複数の発振素子と、複数の遅延素子とを備え、該遅延素子は、少なくとも2つの発振素子の間に接続され、それらの複数の遅延素子の間には特定の位相または時間遅延関係があり、該遅延素子により少なくとも該2つの発振素子の位相または周波数のノイズ抑制関連特性が結合されることで、回路システム動作中においてノイズの自己相関性が低下し、位相または周波数のノイズ抑制効果が増進し、スペースを取るような固体(solid state)サーキュレータ(circulator)またはアイソレーター(isolator)または共振器(resonator)の使用はなく、信号のひずみが低減され、システムの安定性が向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズを低減する技術に関し、より詳しくは、高周波/低周波の環境下に適用され、位相または周波数のノイズを抑制するための発振器結合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信回路および電子システムにおいて、信号元または発振生成素子に生じたノイズによって、システム全体の効率が制限される結果となり、ノイズ干渉の発生としてその原因は、例えば落雷、周辺負荷設備の開閉器、発電機、ラジオ通信、導線の接続不良、スイッチの接合不良、接地方式の不当およびラジオ電波の干渉などである。ノイズの発生現象が除去されなければ、例えば、記憶設備においてデータファイルのアクセスや執行可能ファイルのランダムエラーが生じ、電子製品において計算機およびプログラム制御器の異常な動作が生じやすくなり、通信システムに干渉してしまうことがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ノイズによる影響を少なくするために、業者は、位相または周波数のノイズを低減する技術を開発した。その技術は、半導体装置における低周波発振ノイズ抑制、特殊な発振器回路設計、高クォリティファクター(Q−factor)である共振器設計、および注入信号(injection signal)を位相ロック(phase locked)として位相または周波数のノイズを低減するものに使用されており、該注入信号によって位相または周波数のノイズを低減する技術として、高周波信号注入、低周波信号注入、および高周波発振器信号と低周波発振器信号との混合信号注入に分けられているが、技術の進歩に伴って、電子および通信領域において高周波に適用されるシステムが多くなりつつあるのが現状である。
【0004】
従来の発振器結合システムのブロック図を模式的に図1aに示す。図1aに示すように、第1の発振素子11’と第2の発振素子13’との間に遅延素子21’が直列接続されることにより、該第1の発振素子11’に生じた周波数およびノイズを該遅延素子21’を介して該第2の発振素子13’の出力端に入力し、該第2の発振素子13’に生じた周波数およびノイズを該遅延素子21’を介して該第1の発振素子11’の出力端に入力することで、異なる発振器の出力信号が同一の動作周波数となり、位相ロックが図られ、異なる発振器のノイズ入力により回路システムの間に一定の位相または周波数のノイズが抑制される程度の相関性が生じて、位相または周波数のノイズが低減された発振信号が再び回路の負荷用のものとなり、より安定的な動作環境が得られる。したがって、従来の発振器結合システムは、高パワー結合(Power Combining)システムおよび能動位相アレイ(Active Phased Array)等に応用されている。
【0005】
図1bに示すように、ノイズの発生を抑制するために、位相シフトおよび発振信号の相互注入を位相ロックとして利用している。そして、該発振器結合方式および必要とする素子は上記と略一致しているが、その主要な相違点としては、第2の発振素子13’の発振信号が出力された後、位相シフト素子15’を介して発振信号およびノイズの位相を所定の角度だけシフトさせて、この2つの発振素子間のノイズの抑制を行うとともに、発振器のうちの一つのモード周波数の信号を抑制し、他のモード周波数の信号を向上することができることにある。このように、発振器において所定の周波数信号のパワー結合を向上することができ、プッシュ・プッシュ(push−push)発振器と称されるこの結合回路は、いずれの単一発振器に比べても、その信号パワーが6dB改善されている。
【0006】
また、従来の技術では、図1cに示すように、互いに逆方向である2つの単方向アンプからなる遅延素子21’を2つの発振素子回路間に設けることにより、2つの発振素子のノイズ抑制関連特性が図られ、例えば周知の交錯結合(cross−coupled)発振器および直角位相結合(quadrature−coupled)発振器のものが知られている。ここで注意すべきことは、該遅延素子21’が発振素子の自身に生じた発振の特性を破壊するものではない。
【0007】
上記の従来の発振器結合システムは、2つの発振器の間に結合回路が接続され、該結合回路が発振器における発振信号を伝送することができる。2つの発振器が接続された回路は、時間とともに変化しない固定直流(DC)電圧または直流(DC)電流または接地(Ground)のみが提供されるものであれば、結合回路とはならない。また、このような結合回路がなければ、2つの発振器の発振信号には相関性がない。したがって、2つの発振器の自身によるノイズの特性を利用して、該結合回路が2つの発振器のノイズの間に異なるノイズ振幅を生じて互いに相殺するという結合性質に応じることにより、一定程度のノイズの抑制効果が図られ、信号周波数が安定的に出力される条件下において、位相ノイズ(phase noise)が最適で10log2=3dB低減され、N個の発振器同位相結合システムの環境下(Nが正整数である)において、位相ノイズが最適で10logNdBのみ低減されている。
【0008】
技術の進歩に伴って、衛星通信、衛星ネットワーク、衛星ナビゲーション、および無線ネットワークによる動作周波数が数十MHzないし数十GHzとますます高くなりつつあるので、前記のように、少なくとも2つ以上の発振器を結合させる技術では、ノイズによる影響をより有効に低減できなければ、通信システム全体の信号ノイズ比が制限され、システムの最小検知可能信号パワーに影響を及ぼし、信号の有効伝送や受信距離が制限され、帯域幅が不足することがあった。
【0009】
従って、上記の技術に存在した問題を有効に解決し、高周波回路の需要に応じて、より好ましい位相または周波数のノイズ抑制効果を有するシステムの開発により、システムの動作帯域幅を増加させ、動作効率を向上させ、位相または周波数のノイズによる出力効果への影響を回避することは、実に現在の技術領域において極めて解決すべき課題である。
【0010】
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、本発明は、ノイズ抑制の困難度を簡易な回路素子で簡単化するための発振器結合システムを提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明は、位相または周波数のノイズの抑制効果の向上、ひずみの低減やシステムの安定性の増加が図られる発振器結合システムを提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明は、高周波の応用時において帯域幅を増加させ、位相または周波数のノイズの干渉を低減させ、入力出力インピーダンスを変更し、省エネルギー効果が図られる発振器結合システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る発振器結合システムでは、複数の発振素子と、少なくとも二つの発振素子の間に接続され、発振器の信号が互いに注入され、位相ロック(phase locked)が図られるための少なくとも一つの第1の遅延素子と、少なくとも二つの発振素子の間に接続され、第1の遅延素子より少なくとも数倍以上の位相または時間遅延パラメーターを導入し、位相または周波数のノイズ抑制関連特性を有する少なくとも二つの発振素子を結合させ、発振器のノイズの自己相関性(autocorrelation)を低減させ、システム作動中にノイズ抑制の効果が図られる少なくとも1つの第2の遅延素子と、を備えている。
【0014】
前記第1の遅延素子は、信号線またはアンプのいずれか一つであり、その信号線はケーブル、フラッドケーブル、リード又は電気伝送線のいずれか一つであれば好ましく、そのアンプは単方向アンプまたは双方向アンプ(即ち、互いに逆向きである二つの単方向アンプ)のいずれか一つであれば好ましく、少なくとも二つの発振素子の発振信号が互いに注入され、位相ロックが図られるようにするためのものが望ましい。最適の位相遅延は、πの整数倍となっており、調整可能の動作周波数範囲内においては、該遅延の最適値が少なくとも二つの発振器の等価回路モデルに相関しており、少なくとも二つの発振器の間に一層好ましいノイズ抑制効果が図られるように、該第2の遅延素子の位相または時間の遅延数値(即ち第2の遅延素子と第1の遅延素子の位相または時間の遅延との差分)を第1の遅延素子より数倍以上とする。
【0015】
さらに、第2の遅延素子は、抵抗と直列接続されるための設計自由度が別途あり、該第2の遅延素子のクォリティファクターや注入信号の強弱を調整する。また、該第2の遅延素子は、位相遅延素子又は時間遅延素子のいずれか一つであり、いずれも調整可能抵抗・容量・インダクタンス複合回路素子、遅延信号線、遅延IC、単方向アンプ、および双方向アンプのいずれか一つであれば好ましく、その時間遅延素子は更にケーブル、フラッドケーブル、リード又は電気伝送線のいずれか一つである信号線であっても良く、システム回路に応じて該第2の遅延素子の時間遅延パラメータおよびその等価位相遅延パラメータを調整し、さらに、該第2の遅延素子は、発振器に信号の時間遅延または位相遅延を注入させ、発振素子のノイズの自己相関性を低減させることで、好ましい結合位相または周波数のノイズ抑制関連特性が図られる。これにより、該発振器結合システムは、異なる製品の回路特性に応じて校正または最適化設計を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発振器結合システムでは、少なくとも二つの発振素子の間に少なくとも一つの遅延素子と少なくとも一つの第2の遅延素子との結合配置により、発振器のノイズの自己相関性を低減させ、好ましい位相または周波数のノイズ抑制効果が図られ、さらに、抵抗と該第2の遅延素子との直列接続により、該第2の遅延素子のクォリティファクターおよび注入信号の強弱を調整し、システム回路に応じて第2の遅延素子の時間遅延パラメータおよびその等価位相遅延パラメータを調整することができる。この発振器結合システムは、スペースを取るような固体(solid state)サーキュレータ(circulator)またはアイソレーター(isolator)または共振器(resonator)の使用はなく、簡易な回路素子で構成されているので、ノイズ抑制の困難度が簡単化され、ノイズの抑制効果が向上し、信号のひずみが低減され、システムの安定性が増進し、また、高周波数および低周波数関係製品のシステム動作環境下に適用され、帯域幅が増加し、ノイズ干渉が低減され、入力出力インピーダンスが変更し、省エネルギーの効果が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
下記は特定の具体実施例によって本発明の実施方式を説明する。明細書に記載の内容によってこの技芸に習熟した者は簡単に本発明のその他の利点や効果を理解できる。本発明に係る実質的な技術内容は、広汎に下記の特許請求の範囲内に定義される。また、本発明は図示の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で数々の変更態様が可能であることは言うまでもない。
【0018】
図2は、本発明に係る発振器結合システムを模式的に示したブロック図である。図2に示すように、本発明に係る発振器結合システムは、複数の発振素子11、13と、少なくとも二つの発振素子11、13の間に接続される第1の遅延素子21と、少なくとも該二つの発振素子11、13の間に接続され、該第1の遅延素子21に並列接続される第2の遅延素子23とを備え、該第2の遅延素子23により第1の遅延素子21より少なくとも数倍以上の位相または時間の遅延パラメータ(即ち第2の遅延素子と第1の遅延素子の位相または時間遅延との差分は、第1の遅延素子21の位相または時間遅延値の数倍以上)を導入することにより、位相または周波数のノイズ抑制関連特性を有する複数の発振素子11、13を結合させ、発振器のノイズの自己相関性を低減させ、システム作動においてノイズ抑制の効果が図られ、ノイズがさらに少なくとも数dBないし数十dB低減されることが可能となっている。
【0019】
該第1の遅延素子21は、第1の発振素子11の出力端と第2の発振素子13の出力端とを接続させ、該第2の遅延素子23は、該第1の遅延素子21に並列接続されており、少なくとも2つの発振器の相互注入信号の時間または位相遅延を増加するために第1の発振素子11の出力端と第2の発振素子13の出力端との間に設けられることで、ノイズの自己相関性を抑制し、発振器のノイズを低減させる。すなわち、該第1の遅延素子21と該第2の遅延素子23とを、位相または周波数のノイズ抑制関連特性を有する少なくとも2つの発振素子(即ち第1の発振素子11と第2の発振素子13)に直列接続することにより、その位相または周波数のノイズ抑制関連特性や効果を増強することができ、好ましいノイズ抑制の出力効率を得ることができ、負荷31および負荷33にはより好ましい電気的効果があり、該第1の遅延素子21および該第2の遅延素子23は、双方向信号線であってもよい。
【0020】
図3は、本発明に係わる発振器単方向アンプ結合システムを模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステムの構成および使用技術は、ともに上記の実施形態と略同様であるが、主要な相違点としては、該第2の遅延素子では、単方向アンプ231が使用され、該第2の発振素子13の出力発振信号を拡大し、位相または時間の遅延を増加させ、該第1の発振素子11の出力端に結合させることにより、該第1の発振素子11が第2の発振素子13との位相または周波数のノイズ抑制関連特性を増強し、ノイズの自己相関性を低減させ、該第2の発振素子13は、第1の遅延素子21と第1の発振素子11とのみによって位相または周波数のノイズ抑制関連特性が保持されることにより、第1の発振素子11が好ましい位相または周波数のノイズ抑制信号を負荷31に出力し、これによって、製造コストが低下し、好ましい位相または周波数のノイズ抑制効果が図られることにある。
【0021】
図4は、本発明に係わる発振器双方向アンプ結合システムを模式的に示したブロック図である。図4に示すように、そのシステムの構成および使用技術は、ともに上記の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、単方向アンプ231により、第1の発振素子11が第2の発振素子13とのノイズ抑制関連特性を増強し、ノイズの自己相関性を低減させるとともに、さらに、単方向アンプ233が設けられ、該第1の発振素子11の出力信号を該第2の発振素子13の出力端に結合させ、すなわち単方向アンプ231に並列接続させることにより、該第2の発振素子13が該第1の発振素子11とのノイズ抑制関連特性を有し、ノイズの自己相関性が低減されることにある。すなわち、第1の発振素子11と第2の発振素子13との間では、単方向アンプ231と単方向アンプ233とにより、該第1の発振素子11と該第2の発振素子13とのノイズ抑制関連特性を増強することで、より好ましいノイズ抑制の出力効果を得ることができ、負荷31および負荷33にはより好ましい電気的効果があるとともに、信号のひずみの発生が抑制される。ただし、単方向アンプ231と単方向アンプ233との信号ゲイン(gain)、時間および位相遅延は、正帰還ループ発振(positive feedback loop oscillation)によって結合システム全体の所望の信号周波数および安定性が破壊されることを回避する必要がある。
【0022】
図5は、本発明に係わる高周波環境に適用される発振器結合システムを模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステム構成および使用技術は、ともに上記の図2の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、第2の発振素子13の出力端には位相シフト素子15が設けられることにより、ノイズの発生が抑制されることにある。最適の場合、ノイズが3dB低減することができるとともに、発振器のうちの1モードの信号を抑制し、他のモードの周波数の信号を増加することができ、これにより、発振器における特定周波数信号のパワーコンバイン(Power Combine)が向上し、また、第2の遅延素子による時間または位相の遅延により、ノイズがさらに少なくとも数dBないし数十dB低減され、発振素子のノイズ自己相関性が低下し、回路システム帯域幅およびその信号安定性が増加し、回路システムにおける入力出力インピーダンスが低減され、出力パワーが節約され、省エネルギーの効果が図られる。したがって、この発振器結合システムでは、高周波応用製品の必要(例えば衛星通信システム、無線ネットワークリンクシステム、携帯電話通信システム等)に応じて、より好ましいノイズ抑制効果が図られる。
【0023】
図6は、本発明が発振器内部システムに結合される構成を模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステム構成および使用技術は、ともに図2の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、第2の遅延素子23は、第1の発振素子11と第2の発振素子13と結合することができ、発振器における違う高低周波数信号を相互に注入させ、第2の遅延素子23の時間または位相の遅延により、各発振器のノイズ自己相関性が低減され、異なる回路設計の必要に応じることができることにある。第2の遅延素子23は、調整可能式抵抗・容量・インダクタンス複合回路素子、遅延信号線、遅延IC、単方向アンプ、および双方向アンプのいずれか一つである。ここで、低周波信号は、発振器自身のノンリニア特性または素子が自身の信号および結合した発振器の信号を第1の遅延素子21を介して混合してなるものである。
【0024】
図7は、本発明に係わる出力端および非出力端がミクサによって混合されたのち、フィルターおよびアンプを介して双方向結合の発振器システムを変調する構成を模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステム構成および使用技術は、ともに図2の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、第2の遅延素子23は、複合回路の組成であり、複数の遅延素子23’、25’がそれぞれ第1の発振素子11および第2の発振素子13の出力端に設けられ、該第2の発振素子13からの出力発振信号がミクサ235によって混合され、フィルター237および単方向アンプ231によって信号が拡大され、複数の遅延素子27’、29’に出力され、混合変調された出力信号を、それぞれ第1の発振素子11の非出力端および第2の発振素子13の非出力端に結合させることにより、この2つの発振素子による発振の発生時にノイズ抑制関連特性が増強し、ノイズの自己相関性が低下することにある。簡単に言えば、本発明に係わる発振器結合システムにおける少なくとも1つの第2の遅延素子23は、2つの発振素子出力端の信号が混合され、時間遅延パラメータまたは位相遅延パラメータが変調され、低周波信号または高周波信号のいずれかが出力されるとともに、該2つの発振素子の非出力端に注入され、より好ましい位相または周波数のノイズ抑制の出力効果が図られ、高低の異なる動作周波数に応じて位相または周波数のノイズが抑制され、負荷31および負荷33には、より好ましい電気的効果があり、信号のひずみの発生の可能性が減少する。
【0025】
図8は、本発明に係わる出力端および非出力端がミクサによって混合されたのち、フィルターおよびアンプを介して単方向結合の発振器システムを変調する構成を模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステム構成および使用技術は、ともに図7の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、第2の遅延素子23は、複合回路の組成であり、複数の遅延素子23’、25’がそれぞれ第1の発振素子11および第2の発振素子13の出力端に設けられ、該二つの発振素子からの出力発振信号がミクサ235によって混合され、フィルター237および単方向アンプ231によって信号が拡大され、遅延素子27’に出力され、混合変調された出力信号を、第2の発振素子13の非出力端に結合させることにより、この2つの発振素子による発振の発生時にノイズ抑制関連特性が増強し、ノイズの自己相関性が低下することにある。簡単に言えば、本発明に係わる発振器結合システムにおける少なくとも1つの第2の遅延素子23は、2つの発振素子出力端の信号が混合され、時間遅延パラメータまたは位相遅延パラメータが変調され、低周波信号または高周波信号のいずれかが出力されるとともに、第2の発振素子13の非出力端に注入され、第1の発振素子11に対応するノイズ抑制関連特性が図られ、第1の発振素子11の位相または周波数のノイズ抑制に対応する出力効果が図られ、高低の異なる動作周波数に応じて位相または周波数のノイズが抑制され、負荷31および負荷33には、より好ましい電気的効果があり、信号のひずみの発生の可能性が減少する。
【0026】
図9は、本発明に係わる発振器結合システム内における遅延素子と抵抗とが直列接続される構成を模式的に示したブロック図である。図に示すように、そのシステム構成および使用技術は、ともに図2の実施形態と略同様であるが、その主要な相違点としては、抵抗239を介して第2の遅延素子23と直列接続されており、システム回路に応じて第2の遅延素子23のクォリティファクターおよび注入信号の強弱を調整することができる。ここで、第2の遅延素子23は、さらに調整可能式抵抗・容量・インダクタンス複合回路素子、遅延信号線、遅延IC、単方向アンプ、および双方向アンプのいずれか一つであり、システム回路に応じて第2の遅延素子23の時間遅延パラメータおよびその等価位相遅延パラメータを調整し、好ましい結合位相または周波数のノイズ抑制関連特性が図られることにある。
【0027】
図10は、本発明に係わる発振器結合システムにおいて注入信号の強弱を調整することにより、クォリティファクターおよび遅延位相パラメータによるシステムへの影響を変更する様子を模式的に示したブロック図である。図に示すように、遅延時間は、遅延位相に比例しているので、遅延位相の調整は遅延時間の調整に等価である。さらに、図9を参照して、本発明に係わる発振器結合システムにおいては、抵抗239が第2の遅延素子23に直列接続されることにより、第2の遅延素子23のクォリティファクターおよび注入信号の強弱(ρ)が調整されるとともに、第2の遅延素子23の位相遅延パラメータ(Δθ)が調整されることで、システム回路が必要とするノイズ抑制効果を調整することができる。ここで、直列接続抵抗値が小さいほど、クォリティファクターが高いものであればノイズ抑制効果がよく、遅延位相または時間が長いものであれば位相または周波数のノイズ抑制効果がよい。
【0028】
図11は、本発明に係わる発振器結合システムにおいて位相または周波数のノイズが抑制される効果と従来技術との比較を模式的に示したブロック図である。図に示すように、従来技術の位相または周波数のノイズ抑制の効果をスペクトル1に示す。発振周波数の信号パワーが一定の条件下において、ノイズの干渉がひどいので、発振周波数両側にあるスペクトル信号ノイズのレベルが高くなっている。同様の発振周波数の信号パワーが一定の条件下において、スペクトル2は位相シフトが設けられたことによるノイズ抑制効果であるので、ノイズの干渉が減少し、発振周波数両側にあるスペクトル信号ノイズのレベルが低くなっている。同様の発振周波数の信号パワーが一定の条件下において、スペクトル3は、第2の遅延素子が設けられたことによる位相または周波数のノイズ抑制効果であるので、該スペクトル1およびスペクトル2に比較して、発振器ノイズの自己相関性がさらに低下し、好ましいノイズ抑制効果が図られ、その発振周波数両側にあるスペクトル信号ノイズのレベルが一番低くなっている。したがって、本発明に係わる発振器結合システムによれば、より好ましい動作効率および低いエネルギー消費が回路システムに提供されるとともに、システム動作帯域幅およびシステムの安定性が図られる。
【0029】
本発明に係わる発振器結合システムでは、少なくとも2つの発振素子の間に少なくとも1つの第1の遅延素子および少なくとも1つの第2の遅延素子とを結合させ配置することにより、より好ましい位相または周波数のノイズ抑制効果が図られ、さらに、抵抗と第2の遅延素子との直列接続により、該第2の遅延素子のクォリティファクターおよび注入信号の強弱を調整し、第2の遅延素子内に設けられた容量値の変更に応じて、第2の遅延素子の時間遅延パラメータおよびその等価位相遅延パラメータを調整する。この発振器結合システムは、簡易な回路素子で構成され、発振ノイズの自己相関性が低下するとともに、ノイズ抑制の困難度が簡単化され、さらに、ノイズの抑制効果が向上し、信号のひずみが低減され、システムの安定性が増進し、また、高周波数応用製品のシステム動作環境下に適用され、帯域幅が増加し、ノイズ干渉が低減され、入出力インピーダンスが変更し、省エネルギーの効果が図られる。
【0030】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせに、さらにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の請求範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】従来の発振器結合システムを模式的に示したブロック図である。
【図1b】従来の発振器結合システムを高周波環境に適用される構成を模式的に示したブロック図である。
【図1c】従来の発振器結合システムを発振器内部システムに結合される構成を模式的に示したブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る発振器結合システムを模式的に示したブロック図である。
【図3】図3は、本発明に係る発振器単方向アンプ結合システムを模式的に示したブロック図である。
【図4】図4は、本発明に係る発振器双方向アンプ結合システムを模式的に示したブロック図である。
【図5】図5は、本発明に係る高周波環境に適用される発振器結合システムを模式的に示したブロック図である。
【図6】図6は、本発明が発振器内部システムに結合される構成を模式的に示したブロック図である。
【図7】図7は、本発明に係る出力端および非出力端がミクサによって混合されたのち、フィルターおよびアンプを介して双方向結合を変調する発振器システムを模式的に示したブロック図である。
【図8】図8は、本発明に係る出力端および非出力端がミクサによって混合されたのち、フィルターおよびアンプを介して単方向結合を変調する発振器システムを模式的に示したブロック図である。
【図9】図9は、本発明に係る発振器結合システム内における遅延素子と抵抗とが直列接続される構成を模式的に示したブロック図である。
【図10】図10は、本発明に係る発振器結合システムでは注入信号の強弱を調整することによりクォリティファクターおよび遅延位相パラメータによるシステムへの影響を変更する様子を示したチャートである。
【図11】図11は、本発明に係る発振器結合システムによる位相または周波数のノイズが抑制される効果をもって従来技術との比較を示したチャートである。
【符号の説明】
【0032】
11、11’ 第1の発振素子
13、13’ 第2の発振素子
15、15’ 位相シフト素子
21 第1の遅延素子
21’ 遅延素子
23、23’、25’、27’、29’ 第2の遅延素子
231、233 単方向アンプ
235 ミクサ
237 フィルター
239 抵抗
31、33、31’、33’負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発振素子と、
少なくとも二つの発振素子の間に接続される少なくとも1つの第1の遅延素子と、
少なくとも二つの発振素子の間に接続され、第1の遅延素子より少なくとも数倍以上の位相または時間遅延パラメーターを導入し、位相または周波数のノイズ抑制関連特性を有する少なくとも二つの発振素子を結合させ、発振器のノイズの自己相関性(autocorrelation)を低下させ、システム作動中にノイズを数dBないし数十dB低減させる少なくとも1つの第2の遅延素子と、
を備えることを特徴とする発振器結合システム。
【請求項2】
前記第1の遅延素子は、信号線またはアンプのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の発振器結合システム。
【請求項3】
前記第2の遅延素子は、位相遅延素子または時間遅延素子のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の発振器結合システム。
【請求項4】
前記位相遅延素子は、調整可能式抵抗・容量・インダクタンス複合回路素子、遅延信号線、遅延ICまたはアンプのいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載の発振器結合システム。
【請求項5】
前記時間遅延素子は、信号線、調整可能式抵抗・容量・インダクタンス複合回路素子、遅延信号線、遅延ICまたはアンプのいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載の発振器結合システム。
【請求項6】
前記信号線は、ケーブル、フラッドケーブル、リードまたは電気伝送線のいずれか一つであることを特徴とする請求項2または5に記載の発振器結合システム。
【請求項7】
前記アンプは、単方向アンプまたは双方向アンプのいずれか一つであることを特徴とする請求項2または5に記載の発振器結合システム。
【請求項8】
前記第2の遅延素子には、前記第2の遅延素子のクォリティファクターおよび注入信号の強弱を調整するための抵抗が直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の発振器結合システム。
【請求項9】
前記第2の遅延素子には、前記第2の遅延素子の位相または時間遅延パラメータを調整するための容量が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発振器結合システム。
【請求項10】
前記容量は、変調容量であることを特徴とする請求項9に記載の発振器結合システム。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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