説明

発振回路

【課題】高い周波数安定性を持ちながら、設計が容易な発振回路を提供する。
【解決手段】第1の容量素子の端子に、電源電圧に比例した電流Iを供給して充電する第1の電流源と、グランド配線の電位にまで放電する放電手段とを有する第1の充放電回路と、第2の容量素子の端子に、−Iの電流を供給して放電する第2の電流源と、電源配線の電位にまで充電する充電手段とを有する第2の充放電回路とを設ける。そして、第1の容量素子の端子の電圧がしきい値電圧に到達した時点で、第1の電流源による充電を停止させて放電手段による放電を開始させるとともに、第2の電流源による第2の容量素子の放電を開始させ、第2の容量素子の端子の電圧がしきい値電圧に到達した時点で、第2の電流源による放電を停止させて充電手段による充電を開始させるとともに、第1の電流源による第1の容量素子の充電を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路内においてクロック生成等に利用できる発振回路に関し、特に、電源電圧が変動しても発振周波数が変動しない発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体集積回路において、容量を所定の電流で充電する時間を利用して、所定の周期(周波数)で発振する発振回路が利用されていた。このような発振回路においては、従来から、電源電圧の変動による発振周期(周波数)変動の抑制、すなわち、周波数安定性の向上が、課題として認識されていた。例えば、特許文献1には、電源電圧に依存しない定電流および定電圧を生成し、この定電流および定電圧を利用して、安定性を高めた発振回路が開示される。
【0003】
図4に示すのは、特許文献1に記された発振回路である。図4に示された発振回路140においては、MOSトランジスタT3,T4により、電源電圧に依存しない一定電流が生成される。この一定電流が、カレントミラー回路を構成するMOSトランジスタT1,T2を介して、MOSトランジスタT7,T8にも流れる。この結果、コンデンサC1,C2が一定電流で充電される。また、同じ一定電流を抵抗Rに流すことにより、一定電圧VRSYSが生成され、コンパレータCP1,CP2に供給される。そして、コンパレータCP1,CP2で、交互に一定電流で充電されるコンデンサC1,C2のノードA,Bの電圧と、一定電圧VRSYSとを比較することにより、一定の周期での発振を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−120782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記された回路では、一定電流および一定電圧を生成する回路が必要になり、トランジスタ寸法の設定等に困難性がある。さらに、コンパレータの動作速度の限界のため、発振可能な周波数に限界があることも、用途によっては課題となる。
【0005】
本発明は、上記のような従来の課題を解決し、高い周波数安定性を持ちながら、設計が容易な発振回路を提供することを目的とする。さらに、付加的な目的として、高い周波数でも発振可能な発振回路を提供することがあげられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の実施形態の発振回路は、グランド配線と、該グランド配線の電位を基準として電源電圧が供給される電源配線と、第1の容量を有し、一方の端子が前記グランド配線もしくは電源配線の一方に接続された第1の容量素子の、他方の端子に、前記電源電圧に比例した第1の電流を供給して該第1の容量素子を充電する第1の電流源を有するとともに、前記第1の容量素子の他方の端子を前記グランド配線もしくは電源配線の一方の電位にまで放電する放電手段を有する第1の充放電回路と、前記第1の容量のk倍の容量を有し、一方の端子が前記グランド配線もしくは電源配線の一方に接続された第2の容量素子の、他方の端子に、前記第1の電流の−k倍の第2の電流を供給して該第2の容量素子を放電する第2の電流源を有するとともに、前記第2の容量素子の他方の端子を前記グランド配線もしくは電源配線の他方の電位にまで充電する充電手段を有する第2の充放電回路とを有する。そしてさらに、前記第1の容量素子の他方の端子の電圧をモニタする第1のモニタ素子と、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧をモニタする第2のモニタ素子とを有し、前記第1の容量素子の他方の端子の電圧が、前記第1の電流源による充電によって、前記グランド配線の電位を基準として前記電源電圧と符号が同一で絶対値が小さいしきい値電圧に到達したことを、前記第1のモニタ素子がモニタした時点で、前記第1の電流源による充電を停止させて前記放電手段による放電を開始させるとともに、前記第2の電流源による前記第2の容量素子の放電を開始させ、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧が、前記第2の電流源による放電によって、前記しきい値電圧に到達したことを前記第2のモニタ素子がモニタした時点で、前記第2の電流源による放電を停止させて前記充電手段による充電を開始させるとともに、前記第1の電流源による前記第1の容量素子の充電を開始させる、制御信号を生成する制御回路とを有することを特徴とする。
【0007】
ここで、k=1とするのが好適である。
【0008】
また、前記第1および第2のモニタ素子は、前記しきい値電圧に等しい入力しきい値電圧を有し、入力端子が前記第1および第2の容量素子の他方の端子に接続された第1および第2のバッファであるか、もしくは、第1および第2のインバータであり、前記制御回路は、さらに、前記第1および第2のモニタ素子の出力に接続され、前記第1の容量素子の他方の端子の電圧が前記第1の電流源による充電によって前記しきい値電圧に到達したことを前記第1のモニタ素子がモニタした時点の、該第1のモニタ素子の出力と、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧が前記第2の電流源による放電によって前記しきい値電圧に到達したことを前記第2のモニタ素子がモニタした時点の、該第2のモニタ素子の出力とをラッチするとともに、前記制御信号を生成する、ラッチ素子を有することが好ましい。
【0009】
さらに、外部電源から、ノイズ成分を除去し、前記電源配線に前記電源電圧を供給する、フィルタをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発振回路は、高い周波数安定性を得ながら、容易に設計することができる。また、高速動作が可能な素子をモニタ素子とすることにより、高い周波数での発振も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の発振回路の実施形態の一例を示す回路図である。
【0012】
図1の半導体集積回路10は、電流発生回路12と、充電・放電回路14と、制御回路16とからなる。これらの回路は、グランド配線(図中、▽の符号で示される)にグランド電位の供給を受けるとともに、電源配線(図中、T字の符号で示される)に、グランド電位を基準として電源電圧oscvddが供給されて動作する。
【0013】
電流発生回路12は、抵抗素子r0,r1,r2と、増幅器Ampと、PMOSトランジスタmp0とを有する。抵抗素子r1,r2は、電源配線とグランド配線との間に直列に接続され、抵抗分割により、電源電圧oscvddに比例した電圧V0を発生し、増幅器Ampの反転入力端子に供給する。PMOSトランジスタmp0のソースは電源配線に接続され、ゲートには増幅器Ampの出力が供給され、ソースは、増幅器Ampの正相入力端子に接続されるとともに、抵抗素子r0を介してグランド配線に接続されている。これにより、PMOSトランジスタmp0には、電圧V0に比例する、すなわち、電源電圧oscvdに比例する電流iが流れる。
【0014】
電流発生回路12はまた、PMOSトランジスタmp0とゲートが共通に接続され、ソースが電源配線に接続されたPMOSトランジスタmp1と、このPMOSトランジスタmp1と直列に接続され、ソースがグランド配線に接続された、ダイオード接続NMOSトランジスタmn0を有する。mp1はmp0と同一の寸法(ゲート長、ゲート幅)を有しており、mp1およびmn0にも、mp0と同一の電流iが流れる。
【0015】
充電・放電回路14は、第1の容量素子c_bと、PMOSトランジスタmp_bと、NMOSトランジスタmn2からなる第1の充放電回路と、第2の容量素子c_uと、NMOSトランジスタmn_uと、PMOSトランジスタmp2とからなる第2の充放電回路とを有する。
【0016】
第1の容量素子c_bと第2の容量素子c_uのそれぞれの一方の端子は、グランド配線に接続されている。第1の容量素子c_bと第2の容量素子c_uとは同一の容量Cを有する。
【0017】
PMOSトランジスタmp_bのゲートはPMOSトランジスタmp0のゲートと共通に接続され、ソースは電源配線に接続され、ドレインは第1の容量素子c_bの他方の端子(第1のノードn_below)に接続される。PMOSトランジスタmp_bには、電流iと、PMOSトランジスタmp_bとmp0との寸法の比で決まる電流I(例えば、両者のゲート長が同一で、mp_bのゲート幅がmp0のゲート幅のα倍である場合、I=α・i)が流れる。これにより、PMOSトランジスタmp_bは、第1の容量素子c_bの他方の端子に電流Iを供給する第1の電流源として機能する。NMOSトランジスタmn2のドレインは第1の容量素子c_bの他方の端子に接続され、ソースはグランド配線に接続され、ゲートに信号Qが入力される。NMOSトランジスタmn2は、信号Qのレベルに応じてON,OFFするスイッチを構成する。
【0018】
信号Qが“L”レベルの時、NMOSトランジスタmn2はOFFし、第1の容量素子c_bは、第1の電流源(PMOSトランジスタmp_b)から供給される電流Iで充電される。信号Qが“H”レベルになると、NMOSトランジスタmn2がONし、第1の容量素子c_bの他方の端子をグランド配線に接続する。これによって、第1の電流源による第1の容量素子c_bの充電は停止され、第1の容量素子c_bは、第1のノードn_belowがグランド配線の電位になるまで放電される。すなわち、NMOSトランジスタmn2からなるスイッチは、第1の容量素子c_bの他方の端子をグランド配線の電位にまで放電する、放電手段として機能する。
【0019】
なお、NMOSトランジスタmn2がONである期間にも、第1の電流源からの電流Iの供給は継続される。しかし、この電流IはNMOSトランジスタmn2からなるスイッチを介してグランド配線に流れるため、第1の電流源による第1の容量素子c_bの充電は停止される。
【0020】
NMOSトランジスタmn_uのゲートはNMOSトランジスタmn0のゲートと共通に接続され、ソースはグランド配線に接続され、ドレインは第2の容量素子c_uの他方の端子(第2のノードn_upper)に接続される。NMOSトランジスタmn_uには、電流iと、NMOSトランジスタmn_uとmn0との寸法の比で決まる電流I(例えば、両者のゲート長が同一で、mn_uのゲート幅がmn0のゲート幅のα倍である場合、I=α・i)が流れる。これにより、NMOSトランジスタmn_uは、第2の容量素子c_uの他方の端子に電流−Iを供給する第2の電流源として機能する。PMOSトランジスタmp2のドレインは第2の容量素子c_uの他方の端子に接続され、ソースは電源配線に接続され、ゲートに信号Qが入力される。PMOSトランジスタmp2は、信号Qのレベルに応じてON,OFFするスイッチを構成する。
【0021】
信号Qが“H”レベルの時、PMOSトランジスタmp2がOFFし、第2の容量素子c_uは、第2の電流源(NMOSトランジスタmn_u)から供給される電流−Iで放電される。信号Qが“L”レベルになると、PMOSトランジスタmpn2がONし、第2の容量素子c_uの他方の端子を電源配線に接続する。これによって、第2の電流源による第2の容量素子c_uの放電は停止され、第2の容量素子c_uは、第2のノードn_upperが電源配線の電位になるまで充電される。すなわち、PMOSトランジスタmp2からなるスイッチは、第2の容量素子c_uの他方の端子を電源配線の電位にまで充電する、充電手段として機能する。
【0022】
なお、PMOSトランジスタmp2がONである期間にも、第2の電流源からの電流−Iの供給は継続される。しかし、この電流−IはPMOSトランジスタmp2からなるスイッチを介して電源配線に流れるため、第2の電流源による第2の容量素子c_uの放電は停止される。
【0023】
制御回路16は、入力端子が第1の容量素子c_bの他方の端子に接続された第1のバッファBuff_bと、入力端子が第2の容量素子c_uの他方の端子に接続された第2のバッファBuff_uとを有する。これらのバッファは、対応する容量素子の他方の端子の電圧をモニタするモニタ素子として動作する。図示は省略するが、これらのバッファBuff_b、Buff_uも、電源配線およびグランド配線に接続され、電源電圧oscvddの供給を受けて動作する。そして、入力端子の電圧が“L”レベルであるか“H”レベルであるかを判断する入力しきい値電圧として、電源電圧oscvddよりも低い(厳密には、グランド配線の電位を基準として、電源電圧oscvddと符号が同一で絶対値が小さい)しきい値電圧Vthを有する。
【0024】
従って、第1の容量素子c_bが第1の電流源(PMOSトランジスタmp_b)から供給される電流Iによって充電され、第1のノードn_belowの電圧が第1のバッファBuff_bのしきい値電圧に到達したことをモニタした時点で、(電源電圧oscvddが正である場合)第1のバッファBuff_bの出力は“L”レベルから“H”レベルに変化する。また、第2の容量素子c_uが第2の電流源(NMOSトランジスタmn_u)から供給される電流で放電され、第2のノードn_upperの電圧が第2のバッファBuff_uのしきい値電圧に到達したことをモニタした時点で、(同じく、電源電圧oscvddが正である場合)第2のバッファBuff_uの出力は“H”レベルから“L”レベルに変化する。
【0025】
なお、第1および第2のバッファは、デジタル論理回路を構成するために一般的に用いられるものであり、高速な動作が可能である。このような高速動作が可能な素子をモニタ素子として利用することにより、高い発振周波数で発振する発振回路を得ることができる。また、モニタ素子の応答特性を考慮する必要がないので、発振回路の設計が容易である。
【0026】
制御回路16は、また、2つの2入力NANDゲート17,18によって構成されるラッチ19を有する。第1および第2のバッファの出力は、このラッチに入力される。すなわち、第1のバッファBuff_bの出力は第1のNANDゲート17の第1の入力端子に供給され、第2のバッファBuff_uの出力は第2のNANDゲート18の第1の入力端子に供給され、第1および第2のNANDゲートの出力は、それぞれ他方のNANDゲートの第2の入力端子に接続される。ただし、第1のNANDゲート17の第1の入力端子のみは負論理である。そして、第1のNANDゲートの出力が、ラッチ19の出力となり、信号Qが出力される。
【0027】
第1の容量素子c_bの第1のノードn_belowの電圧が、第1の電流源による充電によってしきい値電圧に到達したことを第1のバッファBuff_bがモニタし、第1のバッファBuff_bの出力が“H”レベルに変化した時点で、ラッチ19は、この出力(“H”レベル)をラッチする。また、第2の容量素子c_uの第2のノードn_upperの電圧が、第2の電流源による放電によってしきい値電圧に到達したことを第2のバッファBuff_uがモニタし、第2のバッファBuff_uの出力が“L”レベルに変化した時点で、ラッチ19は、この出力(“L”レベル)をラッチする。
【0028】
ラッチ19の出力Qは、充電・放電回路14に供給される制御信号となるとともに、発振回路10の出力となる。
【0029】
次に、発振回路10の動作について、図2を参照してさらに説明する。
【0030】
図2は、第2のノードn_upper、第1のノードn_below、および、出力Qの波形を示す波形図である。ここで、第1のバッファBuff_bのしきい値電圧と第2のバッファBuff_uのしきい値電圧とは、互いに同一であるとする。
【0031】
最初に、信号Qが“L”レベルであり、PMOSトランジスタmp2がONし、第2のノードn_upperが電源電圧oscvddになっていると仮定する。そして、この状態で、PMOSトランジスタmp_bから供給される電流Iによって第1の容量素子c_bが充電され、第1のノードn_belowの電圧がしきい値電圧に到達したことを第1のバッファBuff_bがモニタし、信号Qが“H”レベルに変化したとする。すると、第2の充放電回路では、PMOSトランジスタmp2がOFFし、NMOSトランジスタmn_uから供給される電流−Iによる第2の容量素子c_uの放電が開始される。
【0032】
一方、第1の充電回路では、信号Qの“H”レベルへの変化により、NMOSトランジスタmn2がONする。このため、PMOSトランジスタmp_bから供給される電流Iによる第1の容量素子c_bの充電は停止する。その後、NMOSトランジスタmn2による第1の容量素子c_bの放電が行われ、第1の容量素子c_bの容量およびNMOSトランジスタmn2のON抵抗によって決まる所定の時間の後に、第1のノードn_belowは、実効的に、グランド配線の電位(0V)に到達する。
【0033】
そして、今度は、NMOSトランジスタmn_uから供給される電流−Iによって第2の容量素子c_uが放電され、第2のノードn_upperの電圧がしきい値電圧に到達したことを第2のバッファBuff_uがモニタした時点で、信号Qが“L”レベルに変化する。すると、第1の充放電回路では、NMOSトランジスタmn2がOFFになり、PMOSトランジスタmp_bから供給される電流Iによる第1の容量素子c_bの充電が開始される。
【0034】
一方、第2の充放電回路では、信号Qの“L”レベルへの変化により、PMOSトランジスタmp2がONする。このため、NMOSトランジスタmn_uから供給される電流−Iによる第2の容量素子c_uの放電は停止する。その後、PMOSトランジスタmp2による第2の容量素子c_uの充電が行われ、第2の容量素子c_uの容量およびPMOSトランジスタmp2のON抵抗によって決まる所定の時間の後に、第2のノードn_upperは、実効的に、電源配線の電位(電源電圧ossvdd)に到達する。
【0035】
以下、同様に、第1の容量素子c_bの充電と第2の容量素子c_uの放電とが繰り返されることにより、発振が継続される。
【0036】
ここで、発振回路10の発振周期は、以下の要因によって決定される。ただし、第1の容量素子c_bの容量およびNMOSトランジスタmn2のON抵抗によって決まる所定の時間、および、第2の容量素子c_uの容量およびPMOSトランジスタmp2のON抵抗によって決まる所定の時間は、それぞれ、NMOSトランジスタmn_uによる第2の容量素子c_uの放電が行われている時間、および、PMOSトランジスタmp_bによる第1の容量素子c_bの充電が行われている時間以下であるとする。すなわち、信号Qが“L”レベルになってPMOSトランジスタmp_bによる第1の容量素子c_bの充電が開始される時点では、第1のノードn_belowの電位は実効的にグランド配線の電位であり、また、信号Qが“H”レベルになってNMOSトランジスタmn_uによる放電が開始される時点では、第2のノードn_upperの電位は実効的に電源配線の電位であるとする。
電流:I=(oscvdd×(Rr1/(Rr1+Rr2))/Rr0)×α
=oscvdd/(β×Rr0)
容量:C
しきい値電圧:Vth
第1の容量素子の充電時間:Tb=C×Vth/I
第2の容量素子の放電時間:Tu=C×(oscvdd−Vth)/I
発振周期:Tc=Tb+Tu=C×oscvdd/I=β×C×Rr0 …(1)
上記の式(1)により、本実施形態の発振回路10の発振周期は、電源電圧oscvddやしきい値電圧Vthに依存しないことがわかる。すなわち、本実施形態の発振回路10は、電源電圧oscvddが変動した場合でも発振周波数(周期)が変動しない、高い安定性を有する。なお、上記の式(1)とその導出過程の式において、Rr0は抵抗素子r0の抵抗値、Rr1は抵抗素子r1の抵抗値、Rr2は抵抗素子r2の抵抗値を示す。また、β=(1+r2/r1)/αである。
【0037】
上記式(1)導出の過程から示されるように、電流Iは電源電圧oscvddに比例して変化する。一方、充電時間と放電時間との合計である発振周期は、電荷量C×oscvddと電流Iとの比によって決定されるが、電荷量も電源電圧oscvddに比例して変化する。このため、結果的には、発振周波数(周期)は、電源電圧oscvddには依存しない。従って、本発明の発振回路は、特許文献1に示された従来の発振回路とは異なり、電源電圧に依存しない一定電流や一定電圧を生成する回路を必要とすることなく、高い安定性を得ることができる。
【0038】
しきい値電圧Vthは、第1および第2のバッファを構成するトランジスタのしきい値電圧等の特性に依存して変化し、また、電源電圧oscvddの変動によっても変化する。しかし、第1および第2のバッファを、同一の半導体集積回路内に形成される、同一の特性のトランジスタを用いて構成することにより、互いに実効的に等しいしきい値電圧を持たせることは容易である。式(1)から示されるように、第1のバッファのしきい値電圧と第2のバッファのしきい値電圧とが互いに等しければ、その値がoscvddの変動によって変動したとしても、発振回路10の発振周波数(発振周期)は一定に保たれる。
【0039】
このように、本実施形態の発振回路10は、高い周波数安定性を得ながら、容易に設計することができる。また、高速動作が可能な素子をモニタ素子とすることにより、高い周波数での発振も可能である。
【0040】
次に、図1に示した本発明の実施形態の発振回路10において、電源供給のための使用されるフィルタの一例を示す。
【0041】
図3には、ソースフォロワ接続されたNMOSトランジスタを利用したフィルタの一例を示す。このフィルタ20は、ドレインに外部電源VDDが供給され、ゲートが、VDDとグランド配線との間に直列に接続された抵抗素子r_fと容量素子c_fとの間の中点に接続されたNMOSトランジスタmn_fからなる。そして、NMOSトランジスタmn_fのソースから、電源配線に供給する電源電圧oscvddを出力する。
【0042】
前述のように、図1の発振回路10の発振周波数(周期)は、電源電圧oscvddに依存しない。しかし、電源電圧oscvddのノイズが大きく、発振回路10の発振周期と同程度の周期で電源電圧oscvddのゆれが発生する場合には、発振回路10の発振周期にもゆれが発生する。このようなノイズの影響を抑制するためには、例えば図3に示されるようなフィルタ20を設けることが好ましい。これにより、フィルタ20を含めた全体としての、発振回路10のノイズ耐性を高めることができる。
【0043】
図3に示されたフィルタ20は、簡単な構成を有し、かつ、大きなノイズ除去効果を有する。しかし、供給できる電源電圧oscvddが外部電源VDDの電圧よりも低くなる。しかも、この電圧低下の量が、NMOSトランジスタmn_fのしきい値電圧のバラツキによって変化する。しかしながら、図1に示した本実施形態の発振回路10は、電源電圧oscvddに依存しない発振周波数(周期)を有するため、このようなフィルタ20を利用して、ノイズ耐性を高めることが可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明した。本発明が上記の具体例には限定されず、さまざまな変形、改良が可能であることは言うまでもない。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、第1および第2の容量素子の一方の端子をグランド配線に接続した。しかし、第1および第2の容量素子の一方の端子は、例えば、電源配線に接続することも可能である。この場合、第1の容量素子c_bは、信号Qが“H”レベルの時に他方の端子がグランド配線に接続されて充電され、信号Qが“L”レベルの時にPMOSトランジスタmp_bから供給される電流Iで放電される。第2の容量素子c_uは、信号Qが“L”レベルの時に、他方の端子が電源配線に接続されて放電され、信号Qが“H”レベルの時にNMOSトランジスタmn_uから供給される電流−Iで充電される。
【0046】
また、上記の実施形態では、第1および第2の容量素子の容量を互いに同一にし、絶対値が同一の電流を供給することによって充電もしくは放電した。しかし、一方の容量素子の容量を他方の容量素子の容量よりも大きく(例えばk倍に)することも可能である。この場合、k倍の容量を有する容量素子を充電もしくは放電する電流の絶対値を、他方の容量素子を放電もしくは充電する電流の絶対値のk倍とする。これにより、発振周期は式(1)で決定される。すなわち、上記の実施形態の場合と同様に、電源電圧oscvddおよびしきい値電圧Vthには依存しない。
【0047】
ただし、設計の容易性の観点では、第1の容量素子と第2の容量素子との寸法や形状をそろえ、寄生容量の成分も含めた容量を同一にすることが好ましい。これにより、第1の電流源の電流と第2の電流源の電流とを同一にすることができ、容易に、発振周期が電源電圧oscvddに依存しない高い安定性を持つ発振回路を設計することができる。
【0048】
上記の実施形態では、モニタ素子としてバッファを利用した。同様に、インバータをモニタ素子として利用することも可能である。その他、様々な素子をモニタ素子として利用することが可能であるが、少なくとも、発振可能周波数を高くするためには、高速動作が可能な、バッファやインバータ等の素子をモニタ素子として利用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の発振回路の第1の実施形態の一例を示す回路図である。
【図2】本発明の発振回路における電圧波形の一例を示す波形図である。
【図3】本発明の発振回路において電源供給のための使用されるフィルタの一例を示す回路図である。
【図4】従来の発振回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0050】
10,140 発振回路
12 電流発生回路
14 充電・放電回路
16 制御回路
17、18 2入力NANDゲート
19 ラッチ
20 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド配線と、該グランド配線の電位を基準として電源電圧が供給される電源配線と、
第1の容量を有し、一方の端子が前記グランド配線もしくは電源配線の一方に接続された第1の容量素子の、他方の端子に、前記電源電圧に比例した第1の電流を供給して該第1の容量素子を充電する第1の電流源を有するとともに、前記第1の容量素子の他方の端子を前記グランド配線もしくは電源配線の一方の電位にまで放電する放電手段を有する第1の充放電回路と、
前記第1の容量のk倍の容量を有し、一方の端子が前記グランド配線もしくは電源配線の一方に接続された第2の容量素子の、他方の端子に、前記第1の電流の−k倍の第2の電流を供給して該第2の容量素子を放電する第2の電流源を有するとともに、前記第2の容量素子の他方の端子を前記グランド配線もしくは電源配線の他方の電位にまで充電する充電手段を有する第2の充放電回路と、
前記第1の容量素子の他方の端子の電圧をモニタする第1のモニタ素子と、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧をモニタする第2のモニタ素子とを有し、前記第1の容量素子の他方の端子の電圧が、前記第1の電流源による充電によって、前記グランド配線の電位を基準として前記電源電圧と符号が同一で絶対値が小さいしきい値電圧に到達したことを、前記第1のモニタ素子がモニタした時点で、前記第1の電流源による充電を停止させて前記放電手段による放電を開始させるとともに、前記第2の電流源による前記第2の容量素子の放電を開始させ、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧が、前記第2の電流源による放電によって、前記しきい値電圧に到達したことを前記第2のモニタ素子がモニタした時点で、前記第2の電流源による放電を停止させて前記充電手段による充電を開始させるとともに、前記第1の電流源による前記第1の容量素子の充電を開始させる、制御信号を生成する制御回路とを有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
k=1であることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記第1および第2のモニタ素子は、前記しきい値電圧に等しい入力しきい値電圧を有し、入力端子が前記第1および第2の容量素子の他方の端子に接続された第1および第2のバッファであるか、もしくは、第1および第2のインバータであり、
前記制御回路は、さらに、前記第1および第2のモニタ素子の出力に接続され、前記第1の容量素子の他方の端子の電圧が前記第1の電流源による充電によって前記しきい値電圧に到達したことを前記第1のモニタ素子がモニタした時点の、該第1のモニタ素子の出力と、前記第2の容量素子の他方の端子の電圧が前記第2の電流源による放電によって前記しきい値電圧に到達したことを前記第2のモニタ素子がモニタした時点の、該第2のモニタ素子の出力とをラッチするとともに、前記制御信号を生成する、ラッチ素子を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発振回路。
【請求項4】
外部電源から、ノイズ成分を除去し、前記電源配線に前記電源電圧を供給する、フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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