説明

発振回路

【課題】簡易な方法で、特性の劣化を抑制し発振周波数を調整することが可能な発振回路を提供すること。
【解決手段】一対の負性抵抗回路と、前記一対の負性抵抗回路にそれぞれ接続された一対の伝送線路14a、14bと、前記一対の伝送線路にそれぞれ対称に設けられ、前記一対の伝送線路の間をボンディングワイヤによって互いに接続可能な一対のパッド40a、40bと、前記一対の負性抵抗回路の出力信号を合成する合成回路と、を有する発振回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプッシュプッシュ発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波数用途の発振回路では、一対の負性抵抗回路および負性抵抗回路それぞれに接続された共振回路を備え、これら負性抵抗回路の出力信号の基本波または高調波を合成するプッシュプッシュ型発振回路が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−323931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プッシュプッシュ型発振回路においては、発振周波数の調整のため、共振回路にスタブを接続する場合がある。共振回路を構成する伝送線路の周辺には、スタブとなる金属パターンがあらかじめ設けられており、これと伝送線路との間をボンディングワイヤによって接続することで、調整が行われる。プッシュプッシュ型発振回路の特性を向上するためには、各負性抵抗回路に接続される共振回路それぞれの特性が揃っていることが重要である。しかし、発振周波数が高くなると、その調整のためのボンディングワイヤの長さのばらつきが、スタブの特性に影響を与えることになる。このため、高い周波数でプッシュプッシュ発振回路を実現するためには、調整が非常に難しいという問題がある。なお、ここで高い周波数とは、プッシュプッシュ発振器が5GHz以上で出力をなす場合を指す。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡易な方法で、特性の劣化を抑制し発振周波数を調整することが可能な発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一対の負性抵抗回路と、前記一対の負性抵抗回路にそれぞれ接続された一対の伝送線路と、前記一対の伝送線路にそれぞれ対称に設けられ、前記一対の伝送線路の間をボンディングワイヤによって互いに接続可能な一対のパッドと、前記一対の負性抵抗回路の出力信号を合成する合成回路と、を有することを特徴とする発振回路である。本発明によれば、簡易な方法で、特性の劣化を抑制し発振周波数を調整することができる。
【0007】
上記構成において、前記一対のパッドの間を互いに接続するボンディングワイヤを有する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記合成回路は、前記一対の負性抵抗回路の出力信号を基本波逆相かつ2倍波同相で合成する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記一対のパッドは、前記一対の伝送線路の上にそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記一対のパッドは、前記一対の伝送線路から離間した位置にそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において前記一対のパッドと前記一対の伝送線路との間に、幅が前記パッドの幅より狭いフィードがそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記一対の伝送線路それぞれに接続された一対のバラクタダイオードを有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記合成回路の出力周波数は、5GHz以上である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記一対のパッドの位置は、基本波波長λに対して±1/10λ以内の範囲で対称に配置されてなる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な方法で、特性の劣化を抑制し発振周波数を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、比較例1に係る発振回路の回路図である。
【図2】図2(a)は、伝送線路の平面図、図2(b)は、伝送線路の等価回路図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、発振回路の発振周波数の調整方法を示す図である。
【図4】図4は、実施例1に係る発振回路の回路図である。
【図5】図5は、比較例2に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。
【図6】図6は、実施例1に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。
【図7】図7(a)から図7(c)は、一対の伝送線路を伝送する信号が同位相の場合のボンディングワイヤの役割を説明するための図である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、一対の伝送線路を伝送する信号が逆位相の場合のボンディングワイヤの役割を説明するための図である。
【図9】図9は、シミュレーションに用いた発振回路の回路図である。
【図10】図10(a)および図10(b)はシミュレーションを行った発振回路の回路構成を示す図である。
【図11】図11(a)および図11(b)は、それぞれ比較例3および4における時間に対するノードN3およびN4の電圧を示す図である。
【図12】図12(a)および図12(b)は、それぞれ比較例5および実施例1における時間に対するノードN3およびN4の電圧を示す図である。
【図13】図13は、比較例3〜5および実施例4の発振周波数(2倍波)を示す図である。
【図14】図14は、比較例3〜5および実施例4の2倍波の出力電力を示す図である。
【図15】図15は、比較例3〜5および実施例4の基本波の出力電力を示す図である。
【図16】図16は、実施例2に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。
【図17】図17は、実施例2におけるボンディングワイヤの接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を用い実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、発振回路について比較例1を用い説明する。図1は、比較例1に係る発振回路の回路図である。図1のように、発振回路100は、負性抵抗回路10と共振回路12とを有している。負性抵抗回路10は、出力端子Toutから発振信号を出力する。共振回路12は、発振信号の発振周波数を規定する。共振回路12においては、伝送線路14とバラクタダイオード16とが直列に接続されている。バラクタダイオード16のカソードには、制御端子Tcが接続されている。制御端子Tcに印加される電圧により、バラクタダイオード16の容量値を調整することができる。共振回路12の容量値C、インダクタンスLとすると、発振回路の発振周波数fosc∝1/√(C×L)で規定される。
【0019】
次に、ボンディングワイヤを用いた発振周波数の調整方法について説明する。図2(a)は、伝送線路の平面図、図2(b)は、伝送線路の等価回路図である。図2(a)のように、伝送線路14にボンディングワイヤ54を接合可能なパッド50を形成する。伝送線路14の横にパッド52を形成する。パッド50と52とをボンディングワイヤ54を用い電気的に接続する。図2(b)のように、伝送線路14を複数の分布定数線路60で表す。パッド50と52とをボンディングワイヤ54を用い接続した箇所は、オープンスタブ62となる。これにより、伝送線路14のインダクタンス成分が変化する。ボンディングワイヤ54を用い、パッド50と52とをいくつ接続するまたは全く接続しないことにより、発振周波数を調整することができる。
【0020】
図3(a)および図3(b)は、発振回路の発振周波数の調整方法を示す図である。図3(a)および図3(b)において、横軸は、制御端子Tcに印加される制御電圧Vc、縦軸は発振周波数である。図3(a)の周波数特性70のように、制御電圧Vcを電圧Vc1からVc2の範囲で変化させることにより、発振周波数をf1からf2の範囲で調整できる特性が理想的な特性とする。しかしながら、図3(a)の周波数特性71および72のように、製造ばらつきにより周波数特性が理想的な周波数特性70からずれてしまう。そこで、図3(b)のように、製造ばらつきを考慮して、周波数特性を低周波数側に設定しておく。製造ばらつきにより、周波数特性が最も高周波数側にずれた場合、理想的な周波数特性70となるように設定する。周波数特性が理想的な特性から低周波数側にずれた周波数特性73の場合、図2(a)および図2(b)のように、ボンディングワイヤを用い、伝送線路14にスタブを形成することにより、発振周波数を高周波数側に調整する。これにより、理想的な周波数特性とすることができる。
【0021】
図4は、実施例1に係る発振回路の回路図である。実施例1に係る発振回路102は、一対の負性抵抗回路10aおよび10b、一対の共振回路12aおよび12b、並びに合成回路18を有する。負性抵抗回路10aおよび10bは、発振信号をそれぞれ出力ノードN3およびN4から合成回路18に出力する。共振回路12aおよび12bは、それぞれ負性抵抗回路10aおよび10bに接続されている。共振回路12aおよび12bは、それぞれ伝送線路14aおよび14b並びにバラクタダイオード16aおよび16bを有する。伝送線路14aと14bとは互いに対称である。バラクタダイオード16aおよび16bのカソードは共通に制御端子Vcに接続されている。伝送線路14aおよび14bと、バラクタダイオード16aおよび16bと、の間のノードがそれぞれノードN1およびN2である。合成回路18は、負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号を合成し、出力端子Toutに出力する。このような構成により、負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号が基本波の同位相の場合、基本波の出力電力を大きくできる。また、負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号が基本波の逆位相の場合、基本波の出力電力を小さくし、2倍波の出力電力を大きくできる。
【0022】
図5は、比較例2に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。比較例2に係る発振回路の回路図は図4と同じである。図5のように、伝送線路14aおよび14b上にそれぞれパッド50aおよび50bが設けられ、伝送線路14aおよび14bの横にそれぞれパッド52aおよび52bが形成されている。伝送線路14a、パッド50aおよび52aと、伝送線路14b、パッド50bおよび52bと、線31に対し対称に形成されている。図2(a)と同様に、パッド50aとパッド52aとの間にボンディングワイヤ54a、パッド50bとパッド52bとの間にボンディングワイヤ54bを形成する。これにより、発振周波数を調整することができる。しかしながら、ボンディングワイヤ54aと54bとの長さが異なると、図2(b)で示したオープンスタブ62の長さが異なることになる。これにより、負性抵抗回路10aおよび10bが出力する出力信号の周波数が異なってしまい、発振回路の特性が劣化する。また、比較例2においては、ボンディングワイヤを比較例1の図2(a)比較例に対し2倍多く接続することになる。
【0023】
図6は、実施例1に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。図6のように、伝送線路14aおよび14bにそれぞれパッド40aおよび40bが設けられている。パッド40aと40bとは、伝送線路14aおよび14bの対称な位置に設けられている。すなわち、パッド40aと40bとは伝送線路14aと14bの中間線31に対し対称に設けられている。パッド40aおよび40bとはボンディングワイヤ42により電気的に接続される。ボンディングワイヤ42がパッド40aおよび40bに接続される位置41aおよび41bは線31に対し対称である。
【0024】
図7(a)から図7(c)は、一対の伝送線路を伝送する信号が同位相の場合のボンディングワイヤの役割を説明するための図である。図7(a)のように、伝送線路14aのパッド40aと伝送線路14bのパッド40bとの間にボンディングワイヤ42が電気的に接続されている。図7(b)のように、この場合のボンディングワイヤ42内の定在波の電圧は、例えば線31の位置が腹となる。腹となる位置は、ボンディングワイヤ42の物理的な中点とは限らず、電気長的な中点の場合もある。図7(c)は、図7(a)の等価回路である。図7(c)のように、伝送線路14aの等価回路としては、伝送線路14aを構成する分布定数線路60aの間のノードにオープンスタブ64aが接続されている。伝送線路14bの等価回路としては、伝送線路14bを構成する分布定数線路60bの間のノードにオープンスタブ64bが接続されている。図7(b)の腹となる位置は、伝送線路14aと14bとの中点のため、オープンスタブ64aと64bとの長さはほぼ同じとなる。よって、ボンディングワイヤ42の長さがばらついたとしても、伝送線路14aと14bとの対称性は失われない。
【0025】
図8(a)から図8(c)は、一対の伝送線路を伝送する信号が逆位相の場合のボンディングワイヤの役割を説明するための図である。図8(a)は、図7(a)と同じ図であり説明を省略する。図8(b)のように、この場合のボンディングワイヤ42内の定在波の電圧は、例えば線31の位置が節となる。節となる位置は、図7(b)と同様に、ボンディングワイヤ42の物理的な中点とは限らず、電気長的な中点の場合もある。図8(c)は、図8(a)の等価回路である。図8(c)のように、伝送線路14aの等価回路としては、伝送線路14aを構成する分布定数線路60aの間のノードにショートスタブ66aが接続されている。伝送線路14bの等価回路としては、伝送線路14bを構成する分布定数線路60bの間のノードにショートスタブ66bが接続されている。図8(b)の節となる位置は、伝送線路14aと14bとの中点のため、ショートスタブ66aと66bとの長さはほぼ同じとなる。よって、ボンディングワイヤ42の長さがばらついたとしても、伝送線路14aと14bとの対称性は失われない。
【0026】
実施例1に係る発振回路の特性をシミュレーションした。図9は、シミュレーションに用いた発振回路の回路図である。図9のように、負性抵抗回路10aは、バイポーラトランジスタQ11を備えている。バイポーラトランジスタQ11のエミッタE1はインダクタL11を介し接地される。また、エミッタE1は、帰還キャパシタC12を介し、ベースB1に接続される。コレクタC1は電源Vccに接続される。電源Vccは直流カットキャパシタC14を介し接地される。抵抗R12は電源VDDとベースB1の間、抵抗R13は、ベースB1とグランドとの間に接続される。抵抗R12およびR13は、ベースB1の電位を設定する。負性抵抗回路10aの出力は、エミッタE1に接続された出力ノードN3から出力される。負性抵抗回路10bは、バイポーラトランジスタQ21、インダクタL21、キャパシタC22、C24、抵抗R22およびR23を有しており、負性抵抗回路10aと同様に接続されている。
【0027】
共振回路12aは、伝送線路14aとしてマイクロストリップ線路と、バラクタダイオード16aを有している。伝送線路14aとバラクタダイオード16aとの間のノードN1は抵抗R11を介し接地される。バラクタダイオード16aのカソードは、抵抗R31を介し制御端子Tcに接続されている。共振回路12bは、伝送線路14b、バラクタダイオード16b、抵抗R21を備えており、伝送線路14bとバラクタダイオード16bとの間のノードN2は抵抗R21を介し接地される。
【0028】
共振回路12aと負性抵抗回路10aのトランジスタQ11のベースB1との間には結合キャパシタC11が接続されている。共振回路12bと負性抵抗回路10bのトランジスタQ21のベースB2との間には結合キャパシタC21が接続されている。負性抵抗回路10aの出力ノードN3と負性抵抗回路10bの出力ノードN4との間には、キャパシタC13とC23とが直列に接続される。キャパシタC13とC23との間のノードN5と出力端子Toutとの間にはキャパシタC31が接続されている。ノードN5が合成回路として機能する。以下のシミュレーションは、バイポーラトランジスタQ11およびQ21をGaAs系のHBT(Hetero
Bipolar Transistor)とした。また、伝送線路14aおよび14bは、GaAs基板の下面にグランド金属が形成され、GaAs基板の上面に配線パターンが形成されたマイクロストリップ線路とした。合成回路18は、基本波における逆位相の発振信号を合成している。
【0029】
図10(a)および図10(b)はシミュレーションを行った発振回路の回路構成を示す図である。シミュレーションは以下の4つのタイプの発振回路について行なった。比較例3は、図4の回路構成であり、ノードN1およびN2にボンディングワイヤが接続されていない。比較例4は、図10(a)の回路構成であり、ノードN1とグランド間に直径が25μmで長さが1mmのAuボンディングワイヤ54aが接続され、ノードN2とグランド間にボンディングワイヤ54aと同じAuボンディングワイヤ54bが接続されている。比較例5は、図10(a)の回路構成であり、ボンディングワイヤ54aの長さが0.8mmであり、その他の構成は比較例4と同じである。実施例1は、図10(b)のように、ノードN1とノードN2との間に直径が25μmで長さが2mmのAuボンディングワイヤ42が接続されている。ノードN1およびノードN2は、伝送線路14aおよび14bの端に対応する。すなわち、この例では、ボンディングワイヤ42は、伝送線路14aおよび14bの端に接続されている。
【0030】
図11(a)から図12(b)は、それぞれ比較例3〜5および実施例1における時間に対するノードN3およびN4の電圧を示す図である。図13は、比較例3〜5および実施例4の発振周波数(2倍波)を示す図である。図14は、比較例3〜5および実施例4の2倍波の出力電力を示す図である。図15は、比較例3〜5および実施例4の基本波の出力電力を示す図である。11(a)および図11(b)のように、比較例3および4においては、ノードN3とノードN4の電圧は逆位相であり、振幅は同じである。図13のように、ボンディングワイヤ54aおよび54bを用いショートスタブを形成した比較例4は、比較例3に対し、発振周波数を高周波数側に調整されている(点線矢印参照)。図12(a)のように、比較例5においては、ボンディングワイヤ54aと54bとの長さが異なるため、ノードN3とN4の電圧にΔVの差が生じる。このため、図15のように、比較例5においては、基本波の出力電力が大きくなってしまう。図12(b)のように、実施例1においては、ボンディングワイヤ42によるショートスタブの電気長が同じとみなせるため、ノードN3とノードN4の電圧の振幅は同じである。
【0031】
また、図13のように、実施例1は比較例3に対し、ボンディングワイヤ42により発振周波数を高周波数側に調整することができる。図14のように、実施例1は比較例3に対し2倍波の出力電力を同程度とすることができる。図15のように、実施例1は比較例3に対し基本波の出力電力を同程度に抑制することができる。
【0032】
また、図3(a)および図3(b)において説明したように、図3(b)のように、製造ばらつきを考慮して、周波数特性を低周波数側に設定しておく。製造ばらつきにより、周波数特性が高周波数側にずれた場合、理想的な周波数特性70となるように、ボンディングワイヤ42を伝送線路14aと14bとの間に1本または複数本接続する。これにより、周波数特性を理想的な周波数特性70に近づけることができる。なお、ボンディングワイヤ42を1本も接続しない状態で、理想的な周波数特性70であった場合は、ボンディングワイヤ42を接続しなくともよい。
【0033】
実施例1によれば、図4のように、一対の共振回路12aおよび12bは、一対の負性抵抗回路10aおよび10bにそれぞれ接続され、互いに対称に配置された伝送線路14aおよび14bを含む。一対のパッド40aおよび40bは、一対の伝送線路14aおよび14bにそれぞれ対称に設けられている。また、一対のパッド40aおよび40bの間をボンディングワイヤ42によって互いに接続可能である。合成回路18が一対の負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号を合成する。このような発振回路において、図6のように、一対のパッド40aおよび40bは、ボンディングワイヤ42を介して互いに接続されることにより、一対の伝送線路14aおよび14bを互いに電気的に接続する。一対のパッド40aおよび40bは、一対の伝送線路14aおよび14bの対称な位置41aおよび41bに、ボンディングワイヤ42を介した経路が電気的に接続するように設けられている。例えば、一対の負性抵抗回路10aおよび10bからボンディングワイヤ42を接続する位置41aおよび41bまでの電気的な長さが一対の伝送線路14aおよび14bでほぼ同じである。これにより、図6のように、ボンディングワイヤ42をパッド40aと40bとの間に接続するという簡単な方法で、図3(a)および図3(b)のように、発振周波数を調整することができる。すなわち、ボンディングワイヤのばらつきを吸収して発振周波数の調整ができることから、とりわけ5GHz以上の高い発振周波数を有する発振回路において有用である。さらに、図7(c)および図8(c)のように、ボンディングワイヤ42により等価的に形成される一対のオープンスタブ64aおよび64bの長さ、またはショートスタブ66aおよび66bの長さをほぼ等しくできる。これにより、図12(b)および図14のように、一対の負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号の振幅をほぼ等しくでき、比較例5のように、特性が劣化することを抑制できる。また、図5の比較例2に比べボンディングワイヤの数を半分にすることができる。
【0034】
なお、ボンディングワイヤ42を形成しなくとも発振周波数が理想的な場合は、ボンディングワイヤ42は形成されていなくてもよい。ボンディングワイヤ42を用い、発振周波数を調整する場合、一対のパッド50aおよび50bは、ボンディングワイヤ42を介して互いに接続されている。
【0035】
また、合成回路18は、一対の負性抵抗回路10aおよび10bの互いに逆位相の出力信号を合成する。例えば、合成回路18は、一対の負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号を基本波逆相かつ2倍波同相で合成する。これにより、図14のように、基本波の出力電力を抑制することができる。
【0036】
さらに、図6のように、一対のパッド40aおよび40bは、一対の伝送線路14aおよび14bの上にそれぞれ設けられている。これにより、面積を削減することができる。
【0037】
さらに、ボンディングワイヤ42の長さは、電気長が1/2λ以下であることが好ましい。ここで、λは、負性抵抗回路10aおよび10bの出力信号の基本波の波長である。電気長が1/2λを越えると、ボンディングワイヤ42内に定在波の腹または節が形成されるためである。
【0038】
一対の伝送線路14aおよび14bの対称な位置とは、例えば、負性抵抗回路10aおよび10bが同位相の発振信号を出力する場合、定在波の位相がほぼ同じとなる位置であり、負性抵抗回路10aおよび10bが逆位相の発振信号を出力する場合、定在波の位相がほぼ180°異なる位置である。伝送線路14aおよび14bのボンディングワイヤ42を介した経路が電気的に接続される位置(実施例1においては、ボンディングワイヤ42がパッド40aおよび40bに接続される位置41aおよび41b)の許容誤差は、±1/10λ以内の範囲であることが好ましい。例えば、一対の伝送線路14aおよび14bの対称な位置41aおよび41bは、±1/10λ以内程度の誤差を含む程度に対称な位置であることが好ましい。例えば、負性抵抗回路10aから位置41aの距離と、負性抵抗回路10bから位置41bの距離と、の差が±1/10λ以内である程度に、負性抵抗回路10aから位置41aの距離と、負性抵抗回路10bから位置41bの距離と、は等しいことが好ましい。
【実施例2】
【0039】
図16は、実施例2に係る発振回路の伝送線路を示す平面図である。図15のように、パッド44aおよび44bが伝送線路14aおよび14bから離間した位置にそれぞれ設けられている。パッド44aおよび44bと伝送線路14aおよび14bとはフィード46aおよび46bにより電気的に接続されている。パッド44aおよび44b間をボンディングワイヤ42が接続している。伝送線路14a、パッド44aおよびフィード46aと、伝送線路14b、パッド44bおよびフィード46bと、は線31に対し対称に形成されている。伝送線路14aおよび14b、パッド44aおよび44b並びにフィード46aおよび46bは、基板上に同じ金属を用い形成されている。
【0040】
実施例2によれば、一対のパッド44aおよび44bは、ボンディングワイヤ42を介して互いに接続されることにより、一対の伝送線路14aおよび14bを互いに電気的に接続する。さらに、一対のパッド44aおよび44bが、一対の伝送線路14aおよび14bから離間した位置にそれぞれ設けられている。これにより、実施例1のように、伝送線路14aおよび14b上にボンディングワイヤ42を接合することがなく、ワイヤボンディングによる伝送線路14aおよび14bの損傷を抑制できる。
【0041】
また、一対のパッド44aおよび44bと一対の伝送線路14aおよび14bとの間に、幅がパッドの幅より狭いフィード46aおよび46bがそれぞれ設けられている。これにより、ボンディングワイヤ42が形成されていない場合に、パッド44aおよび44bの伝送線路14aおよび14bを伝送する高周波信号への影響を小さくできる。
【0042】
図17は、実施例2におけるボンディングワイヤの接続例を示す図である。図16のように、一対のパッド44aおよび44bにより、ボンディングワイヤ42を介した経路が一対の伝送線路14aおよび14bに電気的に接続されるの対称な位置を位置45aおよび45bとする。パッド44a内のボンディングワイヤ42の接続位置43aはパッド44aの伝送線路14a寄りである。パッド44b内のボンディングワイヤ42の接続位置43bはパッド44bの伝送線路14bから離れた位置である。このように、パッド44aと44bとでボンディングワイヤ42の接続位置43aおよび43bが線31に対し対称でない場合について考える。この場合、伝送線路14a内の位置45aと伝送線路14a内の位置45aとの間のインピーダンスがほぼ同じとなる箇所(例えば電気的な中点)が定在波の腹または節となる。よって、伝送線路14aおよび14bに等価的に接続されるオープンスタブまたはショートスタブの長さや接続位置は、ほぼ対称となる。このため、ボンディングワイヤ42の接続位置が非対称であっても発振特性に与える影響は少ない。このように、実施例2によれば、実施例1に比べ、ボンディングワイヤ42を接続する位置が変動したとしても、発振特性に与える影響は少ない。
【0043】
実施例1および実施例2においては、共振回路12aおよび12bが、一対の伝送線路14aおよび14bにそれぞれ接続する一対のバラクタダイオード16aおよび16bを有する例を説明した。すなわち、発振回路としてVCO(Voltage
Controlled Oscllator)を例に説明した。VCO以外の発振回路でもよい。また、実施例1のシミュレーションは、負性抵抗回路10aおよび10bのトランジスタとしてGaAs系HBTを用いて行なった。負性抵抗回路10aおよび10bのトランジスタは、InP系HBT、GaAs系FET(Field
Effect Transistor)またはGaN系FETでもよい。位相雑音を低減する観点からはバイポーラトランジスタを用いることが好ましい。また、伝送線路14aおよび14bは、トランジスタと同じチップに形成されているとし、伝送線路14aおよび14bが形成される基板としてGaAs基板を用いた。伝送線路14aおよび14bが形成される基板は、InP基板、SiC基板等でもよい。さらに、伝送線路14aおよび14bは、樹脂またはセラミック等の基板に形成されていてもよい。さらに、伝送線路14aおよび14bとしてマイクロストリップ線路の例を説明したが、コプレーナ線路等の伝送線路でもよい。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10a、10b 負性抵抗回路
12a、12b 共振回路
14a、14b 伝送線路
16a、16b バラクタダイオード
18 合成回路
40a、40b パッド
41a、41b 位置
42 ボンディングワイヤ
44a、44b パッド
45a、45b 位置
46a、46b フィード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の負性抵抗回路と、
前記一対の負性抵抗回路にそれぞれ接続された一対の伝送線路と、
前記一対の伝送線路にそれぞれ対称に設けられ、前記一対の伝送線路の間をボンディングワイヤによって互いに接続可能な一対のパッドと、
前記一対の負性抵抗回路の出力信号を合成する合成回路と、
を有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記一対のパッドの間を互いに接続するボンディングワイヤを有することを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記合成回路は、前記一対の負性抵抗回路の出力信号を基本波逆相かつ2倍波同相で合成することを特徴とする請求項1または2記載の発振回路。
【請求項4】
前記一対のパッドは、前記一対の伝送線路の上にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記一対のパッドは、前記一対の伝送線路から離間した位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項6】
前記一対のパッドと前記一対の伝送線路との間に、幅が前記パッドの幅より狭いフィードがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発振回路。
【請求項7】
前記一対の伝送線路それぞれに接続された一対のバラクタダイオードを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項8】
前記合成回路の出力周波数は、5GHz以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項9】
前記一対のパッドの位置は、基本波波長λに対して±1/10λ以内の範囲で対称に配置されてなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−257073(P2012−257073A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128973(P2011−128973)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】