説明

発振装置

【課題】2つの動作を規定する2つの電流が別個に独立して流れることから、多大な消費
電流が流れていた。
【解決手段】発振周波数を有する発振信号を生成する発振回路であって当該生成に必要な
第1の電流の供給を受ける前記発振回路と、前記発振信号に付随する、前記発振周波数の
逓倍である逓倍周波数を有する逓倍信号を増幅する増幅回路であって当該増幅に必要な第
2の電流の供給を受ける前記増幅回路とを含み、前記第1の電流及び前記第2の電流は、
少なくとも一部が共通に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムや無線通信システム等に用いられる発振装置に関し、特に、
発振信号の発振周波数の逓倍に相当する逓倍周波数を有する逓倍信号を増幅する発振装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示されるように、従来の発振装置OSC10は、発振周波数f(例えば、数百M
Hz)を有する発振信号S10を生成する発振回路10と、当該発振信号S10に付随す
る、例えば、前記発振周波数fの2逓倍である逓倍周波数2fを有する逓倍信号S20を
濾波する逓倍回路20と、濾波された逓倍信号S20を増幅する増幅回路30と、増幅さ
れた逓倍信号S20を濾波する、即ち、前記逓倍信号S20を前記逓倍周波数2fに同調
させる第1の同調回路40及び第2の同調回路50とを含む。発振回路10及び増幅回路
30は、それぞれ、発振回路10及び増幅回路30の動作特性(負性抵抗、増幅率等)を
規定する電流I10、I20を流すべく、電源電位Vcc及び接地電位GND間に並列接
続されている。
【0003】
上記した発振回路10は、図5に示されるように、コルピッツ型発振回路であり、発振
回路10の負性抵抗を規定するための電流I10の供給を受けつつ、水晶振動子Y11に
より規定される発振周波数fを有する発振信号S10を生成し、当該発振信号S10をト
ランジスタQ11のコレクタから出力する。他方で、増幅回路30は、エミッタ接地型増
幅回路であり、トランジスタQ12の増幅率を規定するための電流I20の供給を受けつ
つ、逓倍信号S20を増幅して出力する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の発振装置OSC10では、電流I10及び電流I20が
別個に独立して流れることから、多大な消費電流が流れるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発振装置は、上記した課題を解決すべく、発振周波数を有する発振信号を
生成する発振回路であって当該生成に必要な第1の電流の供給を受ける前記発振回路と、
前記発振信号に付随する、前記発振周波数の逓倍である逓倍周波数を有する逓倍信号を増
幅する増幅回路であって当該増幅に必要な第2の電流の供給を受ける前記増幅回路とを含
み、前記第1の電流及び前記第2の電流は、少なくとも一部が共通に流れる。
【0006】
本発明に係る発振装置によれば、前記第1の電流及び前記第2の電流の少なくとも一部
が共通に流れることから、前記第1の電流及び前記第2の電流が別個に独立して流れてい
た従来の発振装置に比して、消費電力を低減することが可能となる。
【0007】
上記した発振回路では、前記第1の電流と前記第2の電流とは、実質的に全部が共通に
流れる一の電流である。
【0008】
当該発振装置によれば、前記第1の電流と前記第2の電流とは、実質的に同一な一の電
流であることから、上記した消費電力を最大に低減することが可能となる。
【0009】
上記した発振装置では、前記発振回路又は前記増幅回路は、前記一の電流を規定する一
の受動素子を有する。
【0010】
当該第1の発信装置によれば、当該一の受動素子により前記一の電流を規定することか
ら、前記発振装置の回路規模が大型化することを回避することが可能となる。
【0011】
上記した発振装置では、前記発振回路及び前記増幅回路は、電源電位及び接地電位間に
縦続接続されている。
【0012】
当該発振装置によれば、前記第1の電流及び前記第2の電流に共通する少なくとも一部
の電流が、縦続接続されている前記発振回路及び前記増幅回路を貫通し又は縦断するよう
に流れることにより、前記消費電力の低減を達成することができる。
【0013】
上記した発振装置では、前記発振回路は、エミッタが前記接地電位に接続された第1の
バイポーラトランジスタを有し、前記増幅回路は、ベースが前記接地電位に接続された第
2のバイポーラトランジスタを有し、前記発振回路及び前記増幅回路は、前記第1のバイ
ポーラトランジスタのコレクタと前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタとの接続
によりカスコード接続されている。
【0014】
上記した発振装置では、前記増幅回路の後段に設けられ、前記逓倍信号を増幅する他の
増幅回路を更に含み、前記発振回路、前記増幅回路及び前記他の増幅回路は、電源電位及
び接地電位間に縦続接続されている。
【0015】
上記した発振装置では、前記増幅回路の前段又は後段に設けられ、前記逓倍信号を濾波
する逓倍回路を更に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る発振装置の実施例について図面を参照して説明する。
【0017】
《実施例1》
図1は、実施例1の発振装置の構成を示すブロック図である。実施例1の発振装置OS
C1は、図1に示されるように、発振回路1と、増幅回路2と、逓倍回路3と、第1の同
調回路4と、第2の同調回路5とを含む。発振回路1及び増幅回路2は、電源電位Vcc
及び接地電位GND間に縦続接続されており、当該両回路1、2には、発振回路1、増幅
回路2の動作を規定するための電流I1が流れる。発振回路1は、発振周波数fを有する
発振信号S1を生成し、当該発振信号S1は、増幅回路2により増幅され、当該増幅され
た発振信号S1に付随する、前記発振周波数fの逓倍、例えば、2逓倍である逓倍周波数
2fを有する逓倍信号S2が、逓倍回路3により濾波され、更に、当該逓倍信号S2が、
波形整形のために、第1、第2の同調回路4、5により濾波される。
【0018】
図2は、実施例の発振装置の構成を示す回路図である。実施例1の発振装置OSC1で
は、図2に示されるように、発振回路1は、コルピッツ型発振回路であり、NPN型トラ
ンジスタQ1と、水晶振動子Y1と、コンデンサC1、C2と、一の受動素子である抵抗
器R4とを有する。水晶振動子Y1は、トランジスタQ1のベース及び接地電位GND間
に設けられており、コンデンサC1、C2は、トランジスタQ1及び接地電位GND間に
直列接続され、かつ、両コンデンサC1、C2の接続点がトランジスタQ1のエミッタに
接続されて設けられている。抵抗器R4は、トランジスタQ1のエミッタ及び接地電位G
ND間に設けられており、発振回路1の負性抵抗及び増幅回路2の増幅率を定める電流I
1を規定する。発振回路1は、前記電流I1の供給を受けつつ発振信号S1を生成し、当
該発振信号S1をトランジスタQ1のコレクタから増幅回路2に出力する。
【0019】
増幅回路2は、エミッタ接地型増幅回路であり、NPN型トランジスタQ2と、コンデ
ンサC3とを有する。トランジスタQ2は、そのエミッタがトランジスタQ1のコレクタ
に接続されており、トランジスタQ2とトランジスタQ1とは、いわゆるカスコート接続
されている。コンデンサC3は、トランジスタQ2のベース及び接地電位GND間に設け
られている。抵抗器R1、R2、R3は、トランジスタQ1、Q2のベース電圧を規定す
る。増幅回路2は、発振回路2により生成された発振信号S1を増幅し、トランジスタQ
2のコレクタから逓倍回路3に出力する。
【0020】
逓倍回路3は、LCフィルタであり、電源電位Vcc及びトランジスタQ2のコレクタ
間に並列接続されたコイルL1と、コンデンサC4とを有する。逓倍回路3は、増幅回路
2により増幅された逓倍信号S2を濾波して、第1の同調回路4に出力する。
【0021】
第1の同調回路4及び第2の同調回路5は、逓倍回路3と同様に、LCフィルタであり
、第1の同調回路4は、コイルL2及びコンデンサC6を有し、また、第2の同調回路5
は、コイルL3及びコンデンサC8、C9を有する。第1の同調回路4では、コイルL2
及びコンデンサC6は、並列接続されており、また、第2の同調回路5では、コンデンサ
C8及びコンデンサC9は、直列接続されており、かつ、当該コンデンサC8、C9及び
コイルL3は、並列接続されている。コンデンサC8とコンテンツC9との接続点は、出
力端子OUTに接続されている。第1の同調回路4及び第2の同調回路5は、前記逓倍回
路3により濾波された逓倍信号S2を濾波し、即ち、同調を取り、出力端子OUTから、
光通信システムや無線システム等内の周辺装置(図示せず)に出力する。
【0022】
逓倍回路3及び第1の同調回路4間、並びに、第1の同調回路4及び第2の同調回路5
間には、コンデンサC5及びコンデンサC7が設けられている。コンデンサC5及びコン
デンサC7は、カップリングコンデンサであり、逓倍信号S2を通過させ、かつ、直流成
分を遮断する機能を有する。
【0023】
上述したように、実施例1の発振装置OSC1では、発振回路1及び増幅回路2が、電
源電位Vcc及び接地電位GND間に縦続接続されており、発振回路1の動作(負性抵抗
)及び増幅回路2の動作(増幅率)という2つの動作を同時に規定する1つの電流I1の
みが流れることから、換言すれば、図4及び図5に示される、発振回路10の動作を規定
する電流I10、及び、増幅回路30の動作を規定する電流I20が完全に共通に流れる
ことから、電流I10及び電流I20という2つの電流が別個に独立して流れていた従来
の発振装置OSC10に比して、消費電流を低減することが可能となる。
【0024】
上記したような、一つの電流I1のみの供給を受けることに代えて、発振回路1の動作
を規定するための電流、及び、増幅回路2の動作を規定する電流という2つの電流を、少
なくとも一部が共通に流れるようにすることによっても、前記した一つの電流I1のみが
流れるときの消費電力の低減には劣るものの、従来の発振装置OSC10に比較して消費
電流を低減することができる。
【0025】
逓倍回路3は、上記したような、増幅回路2の後段に設けることに代えて、増幅回路2
の前段に設けることによっても、上記したと同様な効果を得ることができる。
【0026】
《実施例2》
図3は、実施例2の発振装置のブロック図である。実施例2の発振装置OSC2は、図
3に示されるように、図1に示される実施例1の発振装置OSC1に含まれる発振回路1
〜第2の同調回路5と同様な構成及び機能を有する、発振回路11と、第1の増幅回路1
2aと、逓倍回路13と、第1の同調回路14と、第2の同調回路15とを含み、他方で
、実施例1の発振装置OSC1と異なり、更に、実施例1の発振装置OSC1の増幅回路
2と同一な構成及び機能、換言すれば、実施例2の発振装置OSC2の第1の増幅回路1
2aと同一な構成及び機能を有する第2の増幅回路12bを含む。
【0027】
加えて、図1に示される実施例1の発振装置OSC1と異なり、実施例2の発振装置O
SC2では、発振回路11、第1の増幅回路12a、及び第2の増幅回路12bが、電源
電位Vcc及び接地電位GND間に縦続接続されている。発振回路11、及び、第1、第
2の増幅回路12a、12bには、発振回路11の発振動作及び第1、第2の増幅回路1
2a、12bの増幅動作を規定する電流I2が、電源電位Vccから接地電位GNDに向
けて縦断的に流れる。
【0028】
実施例2の発振装置OSC2では、発振回路11は、発振周波数fの発振信号S1を生
成し、第1の増幅回路12aは、前記生成された発振信号S1を増幅し、第2の増幅回路
12bは、前記増幅された発振信号S1を更に増幅し、逓倍回路13は、前記発振信号S
1に付随する、発振周波数fの2逓倍である逓倍周波数2fの逓倍信号S2を濾波し、第
1の同調回路14及び第2の同調回路15は、前記濾波された逓倍信号S2を濾波する。
【0029】
上述したように、実施例2の発振装置OSC2では、発振回路11、第1の増幅回路1
2a、及び第2の増幅回路12bが、電源電位Vcc及び接地電位GND間に縦続接続さ
れていることから、実施例1の発振装置OSC1と同様に、発振回路11、第1、第2の
増幅回路12a、12bに一つの電流I2のみが流れる。これにより、図4及び図5に図
示された、電流I10及び電流I20の2つの電流が別個に独立して流れる従来の発振装
置OSC10に比して、消費電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の発振装置のブロック図。
【図2】実施例1の発振装置の回路図。
【図3】実施例2の発振装置のブロック図。
【図4】従来の発振装置のブロック図。
【図5】従来の発振装置の回路図。
【符号の説明】
【0031】
OSC1…発振装置、1…発振回路、2…増幅回路、3…逓倍回路、4…第1の同調回
路、5…第2の同調回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振周波数を有する発振信号を生成する発振回路であって当該生成に必要な第1の電流
の供給を受ける前記発振回路と、
前記発振信号に付随する、前記発振周波数の逓倍である逓倍周波数を有する逓倍信号を
増幅する増幅回路であって当該増幅に必要な第2の電流の供給を受ける前記増幅回路とを
含み、
前記第1の電流及び前記第2の電流は、少なくとも一部が共通に流れることを特徴とす
る発振装置。
【請求項2】
前記第1の電流と前記第2の電流とは、実質的に全部が共通に流れる一の電流であるこ
とを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項3】
前記発振回路又は前記増幅回路は、前記一の電流を規定する一の受動素子を有すること
を特徴とする請求項2記載の発振装置。
【請求項4】
前記発振回路及び前記増幅回路は、電源電位及び接地電位間に縦続接続されていること
を特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項5】
前記発振回路は、エミッタが前記接地電位に接続された第1のバイポーラトランジスタ
を有し、
前記増幅回路は、ベースが前記接地電位に接続された第2のバイポーラトランジスタを
有し、
前記発振回路及び前記増幅回路は、前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタと前
記第2のバイポーラトランジスタのエミッタとの接続によりカスコード接続されているこ
とを特徴とする請求項4記載の発振装置。
【請求項6】
前記増幅回路の後段に設けられ、前記逓倍信号を増幅する他の増幅回路を更に含み、
前記発振回路、前記増幅回路及び前記他の増幅回路は、電源電位及び接地電位間に縦続
接続されていることを特徴とする請求項4記載の発振装置。
【請求項7】
前記増幅回路の前段又は後段に設けられ、前記逓倍信号を濾波する逓倍回路を更に含む
ことを特徴とする請求項4記載の発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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