説明

発毛促進剤

本発明は、結晶形態の6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノン、これら結晶形態の少なくとも1つを含む製剤、及び発毛を促進するためのそれらの使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノンの結晶形態に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,912,244号(「244特許」)は、化合物6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノン(以後、「本化合物」)、その製造法及びカリウム・チャンネル・オープナーとしてのその使用を開示している。244特許は、カリウム・チャンネル・オープナーが、平滑筋の緊張又は運動性の変化に関連する病気の治療に使えることを開示している。その様な疾患の例には、慢性閉塞性気道疾患、喘息、尿失禁、高血圧、心筋虚血、脳虚血及び緑内障が挙げられる。
【0003】
244特許の実施例7は、エタノール溶媒和物としての本化合物の製造について説明している。そのエタノール溶媒和物は、時間が経つと非晶質形態(アモルファス)に変わる。高い結晶安定性を有する、本化合物の新たな結晶形態は、従来技術を超えた改善となる。そのような形態であれば、臨床的又は工業的規模での取り扱い及び完成剤形への製剤化がより容易になる。
【0004】
同時係属の、同一出願人による、米国特許出願第60/544,116号(「116出願」)には、哺乳類の発毛を促進するための本化合物の使用が開示されている。116出願は、本化合物が、毛包の成長、成長期の毛包数の増化及び毛包が成長期に留まる期間の延長(即ち、休止期に対する成長期の比率の増加)を活発化する事を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、新規な結晶形態の6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノンが発見されている。本化合物の構造を下に示す。
【化1】

【0006】
新規な結晶形態の1つは、6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノンの二水和物である。新規な結晶形態の2つ目は、無水の6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノンである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本化合物のこれら新規な結晶形態は、臨床的或いは工業的規模での取り扱い、及び哺乳類に投与するための担体との製剤化がより容易になる。本化合物の無水物の結晶形態は、製剤化及び工業的な取り扱いが特にやり易い。それぞれの結晶形態は、その粉末X線回折(pXRD)パターン、又はpXRDパターンとその示差走査熱量測定(DSC)の自記温度記録図との組み合わせによって区別する事ができる。
【0008】
本化合物の二水和物及び無水物の結晶形態について、粉末X線回折(pXRD)パターンを測定した。後に、特徴的なピークを示す。
【0009】
本化合物の新規な結晶形態はどちらも、カリウム・チャンネル・オープナーとして使用できる。本化合物の新規な結晶形態はどちらも、平滑筋の緊張又は運動性の変化に関連する病気の治療に使うことができる。又、本化合物の新規な結晶形態はどちらも、発毛促進(脱毛症の治療又は予防を含むが、これに限定されない)に使うことができる。或いは、新規な結晶形態はどちらも、哺乳類に投与するための剤形に使うことができる。或いは、新規な結晶形態はどちらも、発毛促進が望まれる領域に直接投与できる局所剤形の製造に使うことができる。
【0010】
より具体的な実施態様において、無水結晶形態の本化合物は、発毛促進に使うことができる。別の実施態様において、無水結晶形態の本化合物は、発毛促進が望まれる皮膚の領域に直接投与できる局所剤形の製造に使うことができる。
【0011】
更なる実施態様において、本発明は、消費者が発毛を促進させるための本製品の使い方の説明書を添えて小売流通用に包装された、無水結晶形態の本化合物から製造された局所剤形を含む製品を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
A)定義
本明細書に引用又は記載された個々の特許、特許出願及び出版物の開示内容は、それらの全文が参照することによって本明細書に組み入れられている。本明細書に記載されたものに加えて、さまざまな改変が、当業者には、前記の説明から明らかになるであろう。その様な改変も、又、添付の特許請求の範囲に入るものとする。
【0013】
特許請求の範囲を含め、本出願明細書の中で用いられる以下の用語は、特に具体的に示唆されない限り、以下に定義した意味を有する。
複数形および単数形は、数を指定しない限り、置き替え可能なものとして扱うことができる。
a.用語の「含む」は、含有を意味するが、これに限定されない。
b.「哺乳類」には、ヒト、太くて短い尾を持つマカクサルなどの霊長類、イヌ、ネコ、アレチネズミ等のペット動物、並びにウシ、ブタ、ウマ、ラマ及びヒツジなどの家畜が含まれる。
c.「混合物」は、2つ又はそれ以上の成分が混合されて生じる、成分の組み合わせを意味する。非限定の例として、1つの成分が別の成分に溶解する場合も含まれる。
d.「発毛促進」には、全毛質量及び/又は長さが増加することの活発化が含まれる。その様な増加には、毛幹(即ち、毛包)の伸長及び/又は成長速度の増加、毛数の増加、及び/又は毛の厚みの増加が含まれる。上記の幾つか又は全ての最終結果は、毛周期の増殖期である成長期(anagen)を延長又は活性化することによって、又は退行期(catagen)及び休止期(telogen)の相を短縮又は遅延させることによって達成できる。「発毛促進」には、又、脱毛の防止、阻止、減少、遅延及び/又は反転が含まれると考えるべきである。
【0014】
e.本明細書で使われる「脱毛症」には、部分的又は全体的な禿、脱毛及び/又は薄毛が包含される。
f.「脱毛症の治療又は軽減」とは、脱毛症に罹っているか又は罹る危険性がある哺乳類の発毛を促進することを言う。
g.「薬学的に許容される」とは、哺乳類に使用するのに好適であることを意味する。
h.「溶媒和物」は、1つ又はそれ以上の結晶化溶媒分子を含む化合物又はその塩の結晶形態、即ち、分子の形態で結合した溶媒を含む本化合物又はその塩の結晶形態である。本化合物のエタノール溶媒和物は、その中の溶媒がエタノールである溶媒和物である。「水和物」は、その中の溶媒が水である溶媒和物である。
i.「皮膚科学的に許容される」とは、皮膚又は毛髪に適用でき、薬剤を作用部位に拡散させる担体を言う。
j.「本発明の化合物」及び「本化合物」は互換的に使用され、同義語として扱われる。それぞれは、6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノンを言う。本化合物は、又、一般に(3S,4R)−[6−(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−4−(2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロピリダジン−6−イル−オキシ)−3−クロマノール及び(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−4−(2,3−ジヒドロ−2−メチル−3−オキソピリダジン−6−イル)オキシ−3−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル−2,2,3−トリメチル−2H−ベンゾ[b]ピランとも言われる(米国特許第5,912,244号の実施例7を参照のこと)。式Iで示される本化合物の他の化学名も知られており、それらは本明細書に使われる用語の「本化合物」の範囲に含まれる。
【0015】
B)特徴付けの方法
同一分子の異なる結晶形態の識別には、いろいろな方法を使うことができる。例えば、実験的粉末X線回折(pXRD)パターン及び示差走査熱量測定法(DSC)が、互いの結晶形態を識別するために使われている。それぞれが、本化合物の無水結晶形態及び二水和物結晶を特徴付けするために用いられた。
【0016】
a.実験的粉末X線回折
実験的粉末X線回折(pXRD)は、本化合物の特定の結晶形態が、エタノール溶媒和物、二水和物、無水結晶形態又は新しい結晶形態かを確定するための一手段である。粉末X線回折の理論の考察は、Stout and Jensen, X-ray Structure Determination; A practical guide, MacMillan and Co. New York, N.Y. (1968)に記載されている。実験的粉末X線回折法の更なる考察は、Jenkins and Snyder, Introduction to X-ray powder diffractometry, Wiley, New York, N.Y. (1996) に記載されている。
【0017】
図1〜3に示した実験的粉末X線回折は、シングルGoebelミラー構造(single Goebel mirror configuration)を有するGADDS (General Area Diffraction Detector System) C2システム搭載のBruker D8型粉末X線回折装置で行った。スキャニング(走査)は、15.0cmの位置に検出器を設置して実施した。θ(シータ)1、即ちコリ
メータは7°、θ2、即ち検出器は17°の位置であった。スキャニング軸は、幅3°の2ω(オメガ)であった。各スキャニングの終点は、θ1は10°、θ2は14°の位置である。サンプルは、40kV及び40mAで120秒間、Cu放射線を用いて行った。スキャニングは、6.4°〜41°2θまでを積算した。サンプルは、Gem Dugout [State College, PA] から購入したASC−6サンプルホールダー内で測定した。サンプルをサンプルホルダー中央にある空洞に入れ、ホルダーの表面と水平になるように、ヘラで平らにした。全ての分析は、20℃〜30℃の室温で行った。スキャニングは、2003年発売のDiffracPlus, Eva version 8 ソフトウェアを使って評価した。
【0018】
当業者には容易に明白な事であるが、いずれの粉末X線回折パターンの結果も変動する可能性がある。この変動は、サンプル調製、使用したX線回折装置の特定の型式、オペレータの技量などに因る。更に当業者は、実験的pXRDパターンにあるピークの相対強度が特定の結晶の優先配向(preferred orientation)によって変化し得ること、そしてそれらの影響を最小にする手法を使ってpXRDを行う事が出来ることを認識しているであろう。その様な手法としては、例えば、分析前のサンプルの粉砕、分析中のサンプルの回転若しくは振動、又は二次元検出器を装着した回折装置の使用が挙げられる。用語の「およそ」は、粉末X線回折パターンの特徴的なピークの位置を定義するために用いた場合、示した2θ値±0.2°2θと定義する。
【0019】
従って、単に実験的pXRDが図1又は2に示されたpXRDと同じでないと言う理由で、結晶形態が本化合物の二水和物又は無水結晶形態でないということを意味するものではない。後で考察する様に、pXRDパターンから識別され、選定された特徴的なピークの存在を、結晶形態が本化合物の無水結晶形態か、本化合物のエタノール溶媒和物結晶か、本化合物の二水和物結晶形態か又は本化合物の新規な形態かを判断するために使うことができる。
【0020】
b.融点
本明細書に記載した全ての融点は、DSC(示差走査熱量測定)によって測定した。エタノール溶媒和物は、TA Instruments 2920 DSC (New Castle, DE)を用いて測定した。サンプルを秤量し、ピンホールが付いた波形の標準アルミニウム皿に入れた。皿は、TA Instrumentsの部品番号900786.901(下部)及び900779.901(最上部)を使用した。サンプルは、3℃/分の昇温法を用い、窒素パージの下で350℃の温度まで走査した。1〜5mgのサンプルを使用した。示差走査熱量測定の更なる考察は、Clas, Dalton, and Hancock, Differential scanning calorimetry: application in drug development, Pharmaceutical Science and Technology Today, Volume 2, Number 8 (8 August 1999)に見出すことができる。
【0021】
本化合物の二水和物結晶形態及び本化合物の無水物結晶形態は、TA Instruments Q1000 series DSC (New Castle, DE)で測定した。両者は同様に、ピンホールがある波形のアルミニウム皿上で測定した。これらの皿を秤量し、その重量はTA InstrumentsのTzero Technologyを使って計算した。Tzero Technologyの更なる考察は、Cassel, How Tzero Technology Improves DSC Performance. Part I: Flat Baselines and Glass Transition Measurements, TA Instruments library Number TA272 に見出すことができる。
【0022】
1〜5mgの本化合物の二水和物結晶形態或いは本化合物の無水結晶形態を秤量した。これらのサンプルに使用した方法は、変調型DSC即ちmDSC測定である。mDSCの更なる考察は、Coleman and Craig, Modulated temperature differential scanning calorimetry: a novel approach to pharmaceutical analysis. International Journal of Pharmaceutics 135 (1996) pages 13-29に見出すことができる。二水和物については、以下のパラメータを使用した:振幅変調±2℃;変調時間100秒;35℃〜200℃までの基礎加熱速度3.0℃/分。本化合物の無水結晶形態については、以下のパラメータを使用した:振幅変調±2℃;変調時間60秒;35℃〜170℃までの基礎加熱速度1.5℃/分。
【0023】
c.熱重量分析(TGA)
熱重量分析は、時間及び温度の関数として物質の質量の変化を測定する。TGAにおける質量の減少は、溶媒又は水の損失による。TGAの更なる考察は、Rodiguez and Bugay, Characterization of Pharmaceutical Solvates by Combined Thermogravimetric and Infrared Analysis. Journal of Pharmaceutical Sciences, Volume 86, Number 2 (February 1997)に見出すことができる。本化合物に会合した水の量は、TGAを使って定量した。全ての熱重量分析(TGA)は、TA Instruments 2950 TGAs. (New Castle, DE)で行った。サンプルは標準アルミニウム皿内で測定した。2〜5mgのサンプルを使った。昇温速度は、400℃まで10℃/分であった。
【0024】
C)本化合物の無水結晶形態
本化合物の結晶形態の一つは、無水結晶形態である。それは、137℃±3℃の融点を有する。水が結晶格子に会合していないので、サンプルは無水である。しかし、この無水の形態は、保存条件によって保存中に表面に水を吸着する可能性があり、これは後で二水和物に変換することはない。
【0025】
本化合物の無水結晶形態の粉末X線回折パターンを、図1に示す。pXRDパターンは、本化合物の無水結晶形態に関連する特徴的な数個のピークを示している。特徴的なピークは、pXRDパターンにおいて顕著な相対強度及び本化合物の無水結晶形態に特有の2θ位置を有する。本化合物の無水結晶形態の度2θ(概略値)で表した特徴的な数個のピークは、10.5°、15.0°、17.2°及び22.8°に位置する。
【0026】
20℃〜30℃で行われる実験的X線回折を行った本化合物の結晶サンプルにおいて、10.5°、15.0°、17.2°及び22.8°の2θ概略値における特徴的なピークの何れか1つの存在は、そのサンプルが無水結晶形態であることを確認するのに十分である。更なる実施態様において、実験的X線回折を行った本化合物の結晶サンプルにおいて、これらのピークの少なくとも2個又は3個が存在することは、サンプルが無水結晶形態であることを確認するのに十分である。より具体的な実施態様において、10.5°、15.0°、17.2°及び22.8°2θ概略値において特徴的なピークが存在することは、結晶物質が本化合物の無水結晶形態であることを確認するのに十分である。生じるパターンに及ぼす優先配向の影響を最小限にするために、どの実験的X線回折の検討も上記の様にして行われなければならない。
【0027】
図1を見直すと、本化合物の無水結晶形態のどのサンプルにも、更にピークが存在することが確認される。上記で同定された特徴的なピークを含め、pXRDパターンに確認される最も関連するピークを、以下の表Iに記載する。表Iに示したデータは、本化合物の結晶形態の実験的X線回折パターンを解釈する上の支援として使われるべきである。これらのデータは、本化合物の無水形態の結晶サンプルに1つ又はそれ以上の選択されたピークが無い事をもって、無水結晶形態でないと結論するために使われるべきではない。
【0028】
【表1】

【0029】
D)二水和物形態
本化合物の二水和物結晶形態は、今日までに確認された本化合物のもう一つの結晶形態である。それは127℃±3℃の融点を有する。二水和物は、分子1モル当たりそれと会合したおよそ1.5〜2.5モルの間の何れかの値の水を有することができる。
【0030】
本化合物の二水和物結晶形態のX線回折パターンを、図2に示す。pXRDパターンは、本化合物の二水和物結晶形態に関連する幾つかの特徴的なピークを示している。特徴的なピークは、pXRDパターンにおいて顕著な相対強度を有し、本化合物の二水和物結晶形態に特有の2θ位置を有する。pXRDパターンは(9.2°、20.1°、24.0°及び25.4°2θに位置する)、本化合物の二水和物結晶形態の2θ度(概略値)で表した特徴的な数個のピークを示している。
【0031】
実験的X線回折が20℃〜30℃で行われた本化合物の結晶サンプルにおいて、これらの特徴的なピークのうちの少なくとも1つが存在することは、サンプルが本化合物の二水和物結晶形態であることを確認するのに十分である。更なる実施態様において、実験的X線回折を行った本化合物の二水和物結晶形態の結晶サンプルにおいて、これらのピークの少なくとも2個、3個又は4個が存在することは、サンプルが本化合物の二水和物結晶形態であることを確認するのに十分である。生じるパターンに及ぼす優先配向の影響を最小限にするために、どの実験的X線回折も上記の様にして行われなければならない。
【0032】
図2を見直すと、本化合物の二水和物結晶形態のどのサンプルにも、更にピークが存在することが確認される。上記で同定された特徴的なピークを含め、本化合物の二水和物の結晶サンプルで実施した実験的X線回折パターンに確認された関連するピークを、以下の表IIに記載する。
表IIに示したデータは、本化合物の二水和物結晶形態のサンプルについて、pXRDを解釈する上の支援として使われるべきである。これらのデータは、本化合物の結晶サンプルに1つ又はそれ以上の選択されたピークが無い事をもって、本化合物の二水和物結晶形態でないと結論するために使われるべきではない。
【0033】
【表2】

【0034】
E)エタノール溶媒和物
本化合物のエタノール溶媒和物のX線回折パターンを、図3に示す。
【0035】
F)製造方法
本化合物の無水結晶形態及び本化合物の二水和物結晶形態は、当業界に一般に知られている技法を使って製造することができる。最初の工程は本化合物の製造であり、それは、参照することによって本明細書に組み入れられている、244特許の実施例7に記載の合成に従って達成される。
【0036】
本化合物の二水和物結晶形態は、エタノール溶媒和物を水と接触させ、その混合物を高温で長時間(通常約50℃で4日間以内)加熱することによって製造される。二水和物結晶は、当業界で周知のように、濾過によって回収できる。実施例2は、その反応を更に詳細に説明する。
【0037】
本化合物の無水結晶形態は、二水和物の脱水によって製造される。例えば、二水和物結晶を、減圧下で加熱する。実施例3で、その反応を説明する。
【0038】
G)薬理学及び投与量
上記のように、244特許及び116特許出願は、本化合物の薬理作用を説明している。それはカリウム・チャンネル・オープナーである。それは哺乳類の毛の成長を促進するために使うことができる。無水結晶形態及び二水和物結晶形態の本化合物(「結晶形態の本化合物」)も、又、カリウム・チャンネル・オープナーである。それらは、116特許出願に記載されているのと同じ様態で、休止期に対する成長期の割合を延長させるために使うことができる。従って、結晶形態の本化合物は、発毛を促進するために使うことができる。
【0039】
結晶形態の本化合物は、又、使用者が要望するように発毛を促進する、又は対象における発毛の減退を防止する局所剤形の製造に使うことができる。
【0040】
代表的な実施態様において、結晶形態の本化合物は、本化合物を含む製剤の製造に使われる。典型的に、その製剤は哺乳類の局所投与に好適である。より典型的には、発毛を促進するために使われる。その様な製剤は、一般には頭皮に、特に毛髪が無いか又は薄くなっている領域に直接適用される。投与量は変動するが、一般的な指針として、本化合物が皮膚科学的に許容される担体を含む皮膚用製剤中に、0.01〜10質量%の量で存在し、その皮膚用製剤は治療する部位に1日1回〜4回投与される。より典型的には、本化合物は1〜3質量%の量で存在し、本化合物は1日1回又は2回投与される。
【0041】
更なる実施態様において、その製剤は、未だ脱毛の経験はないが脱毛症になる危険があると信じている患者にも使うことが出来る。その様な患者の例には、脱毛症を誘発する事が知られている投薬計画で癌化学療法を受けようとしている患者が挙げられる。禿のことを考えた精神的な悩みを有する、特に禿の家族履歴を有する若年成人も、又、その様な予防的治療の恩恵を受けることができる。その様な予防的治療は、用語の「発毛促進」に包含される。
【0042】
発毛は、毛包の活動的な周期過程から生じるもので、多くの一般的な発毛の疾患は発毛周期の時間の変化に関係している。発毛周期には、成長期(anagen)、退行期(catagen)及び休止期(telogen)が含まれる。健康な発毛状態の期間は、頭皮毛包の90%以上が成長期、7%〜9%が休止期及び1%〜3%が退行期に在る。
【0043】
成長期は増殖期であり、この期間に毛包の細胞が急速に分裂し、分化して、毛包(即ち、毛根)が真皮に深く侵入する。分化の過程で、有毛細胞は、毛の主要な成分であるケラチンを合成する。禿でない人の場合、増殖期は1年〜5年間続く。
【0044】
退行期は過渡期であり、細胞分裂の停止によって特徴付けられる。退行期は、一般に約2週間〜3週間続く。
【0045】
休止期は休止状態であり、その間、毛は頭皮の下からの新たな毛包の発育で置き換えられるまで頭皮内に最長で12週間保持される。
【0046】
ヒトでは、この成長周期は同調していない。個体はこれら3つの期のそれぞれに数千個の毛包を有することになる。しかし、大部分の毛包は成長期に在る。若年の健常人では、成長期と休止期の比率は9:1まで高まる。脱毛症の人では、この比率が2:1までに低下する。
【0047】
脱毛症の最も一般的な形態は、遺伝的な素因を持つ男性及び女性が、アンドロゲンによって誘発されて美容に役立つ毛髪が遺伝的に減少する、アンドロゲン性脱毛症である。この状態は、一般的に男性型禿頭症及び女性型禿頭症と呼ばれる。アンドロゲンは、或る種の禿に関わりがあるけれども、それによって脱毛が起こる生理学的なメカニズムは知られていない。しかし、脱毛症に苦しむ人が発毛するように変わることは知られている。結晶形態の本化合物は、この種の脱毛症に罹っている人の発毛を促進させる製品の製造に使うことができる。脱毛は、様々な他の条件においても起こる。
【0048】
成長期脱毛は、癌の化学療法或いは放射線療法のような、化学物質又は放射線による脱毛である。それは、一般に「化学物質誘発」又は「放射線誘発」脱毛症とも呼ばれる。結晶形態の本化合物は、この種の脱毛症を治療する製剤の製造に使うことができる。
【0049】
円形脱毛症は、一つの自己免疫疾患であり、初期には頭皮に丸いパッチ状の脱毛が現れる。それは、全頭性脱毛症として知られる全頭髪の脱毛及び全身性脱毛症として知られる全頭髪及び体毛の脱毛に進展する可能性がある。結晶形態の本化合物は、この種の脱毛症を治療する製剤の製造に使うことができる。
【0050】
外傷性脱毛症は、毛包への傷害によるものである。それは、又、一般に「瘢痕性脱毛症」とも呼ばれる。心因性脱毛症は、急性の情緒的ストレスによって起こる。本化合物は、成長期を誘導することによって、これらの種類の脱毛症に対しても有益となる。従って、本発明は、アンドロゲン性脱毛症の治療に限定されると解釈すべきではない。結晶形態の本化合物は、如何なる種類の脱毛も軽減させる製剤の製造に使うことができる。
【0051】
本化合物の結晶形態は、ヒトに加えてその他の哺乳類の発毛をも促進する製剤の製造に使うことができる。例えば、本化合物は、毛皮(毛)の成長が経済的な利益を示す羊などの家畜に使うことができる。本化合物は、又、イヌ、ネコ、アレチネズミ等のペット動物における発毛を刺激するために使われる。この効果を得るのに必要な投与量は、上記の指針の範囲に適合する。同様に、本化合物は、治療する動物の種類を考慮に入れ、一般に動物に適用される製剤を利用して投与することができる。発毛を促進するための、結晶形態の本化合物の他の適用は、本出願の開示内容を基にすれば当業者には容易に明白であり、そのような適用は特許請求の範囲に包含されると考えるべきである。
【0052】
一般的な指針として、結晶形態の本化合物から製造される製剤は、局所的に投与される。それらは発毛促進が必要な皮膚の部位に直接適用される。
【0053】
H)医薬製剤
必要に応じて、結晶形態の本化合物を、担体無しに直接投与することができる。
しかし、投与を容易にするために、それは、一般的には少なくとも1つの薬学的又は美容的に許容される担体(総称して「担体」と記す)を用いて製剤にされるであろう。同じように、それらは、最も一般的には皮膚用又は化粧用の担体に処方される。本出願において、用語の「皮膚用担体」及び「化粧用担体」は、互換的に使われる。それらは、皮膚又は毛髪に直接投与するために設計された製剤を言う。本明細書に使われる用語の「担体」は、哺乳類に投与するために好適な、1つ又はそれ以上の適合する固体又は液体の充填剤、稀釈剤、媒体或いはカプセル化物質を意味する。本明細書に使われる用語の「適合する」は、組成物の成分が、通常の使用状況下において、組成物の有効性を実質的に低減する相互作用が無い様態で、本明細書に記載される化合物と、及び互いに、混じり合える事を意味する。担体は、勿論、治療する哺乳類(好ましくはヒト)への投与に好適ならしめるために、十分に高い純度と十分に低い毒性のものでなければならない。担体それ自体は、不活性であっても良いし、又は独自の薬学的及び/又は美容的な便益を有しても良い。
【0054】
結晶形態の本化合物は、様々な好適な形態、例えば、経口、局所又は非経口投与の形態の製剤にすることができる。Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Company, Easton, PA. (1990)に記載されている様な、標準の医薬製剤技術が使われる。
【0055】
特定の投与経路によって、業界で公知の種々の担体が使われる。それらには、固体又は液体の充填剤、稀釈剤、乳化剤、界面活性剤及びカプセル化物質が含まれる。本発明の方法で使われる本化合物の活性を実質的に妨害しない、任意の薬学的又は美容的に活性な物質が含まれてもよい。本発明の方法で使われ本化合物と併せて用いられる担体の量は、本化合物の単位投与量当たりの投与に対して、実質的な物質量を与えるのに十分な量である。本発明の方法において有用な剤形を作るための技術及び組成物は、以下の文献に記載されている:Modern Pharmaceutics, Chapters 9 and 10, Banker & Rhodes, eds. (1979); Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1981); 及びAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 2nd Ed., (1976) 。
【0056】
一般に、結晶形態の本化合物は局所的に投与される。局所用組成物中の担体は、本化合物が毛包の付近に到達するための、皮膚への浸透を援助する。その様な局所用組成物は、例えば、溶液、オイル、クリーム、軟膏、ジェル、ローション、泥膏、シャンプー、保護(leave-on)及び洗い流し(rinse-out)用髪コンディショナー、乳液、洗剤、湿潤剤、噴霧剤、エアロゾル、皮膚用パッチ剤などを含む、どのような形態であっても良い。
【0057】
当業界周知の局所適用のための種々の担体物質、例えば、水、アルコール、アロエジェル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びBオイル、鉱油、プロピレングリコールなどは、その様な製剤を製造するために使用することができる。上記で論じた文献には、その様な局所剤形を製造するために使用できる多数の賦形剤が開示されている。
【0058】
本化合物は、又、小単層小胞、大単層小胞及び多重層小胞などのリポソーム(脂質性被膜粒子)送達システムの形態で、局所的に投与してもよい。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成する事ができる。本発明の方法に使われる本化合物の、局所的送達の可能性を持つ製剤には、Dowton et al., “Influence of Liposomal Composition on Topical Delivery of Encapsulated Cyclosporin A: I. An in vitro Study Using Hairless Mouse Skin”, S.T.P. Pharma Sciences, Vol. 3, pp. 404-407 (1993); Wallach and Philippot, “New Type of Lipid Vesicle: Novasome(R)”, Liposome Technology, Vol. 1, pp. 141-156 (1993); 米国特許第4,911,928号;及び米国特許第5,834,014号に記載されている様なリポソームが使用される。
【0059】
全身投与のための担体としては、例えば、糖、澱粉、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張生理食塩水及び発熱物質不含水が挙げられる。非経口投与に好適な担体には、例えば、プロピレングリコール、オレイン酸エチル、ピロリドン、エタノール及びごま油が挙げられる。
【0060】
錠剤、カプセル、顆粒及び原末などの固形物の形態を含めた各種の経口剤形を使うことができる。これらの経口形態は、有効量の、通常少なくとも約5%の、本化合物を含む。錠剤は、好適な結合剤、滑剤、稀釈剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘起剤及び溶解剤を含む、圧縮錠剤、粉薬錠剤、腸溶性錠剤、糖衣錠剤、被膜錠剤、又は多重圧縮錠剤にすることができる。液体の経口剤形には、好適な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、稀釈剤、甘味料、溶解剤、着色剤及び着香剤を含む、水溶液、エマルジョン、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成した溶液及び/又は懸濁液、及び発泡性顆粒から再構成した発泡性製剤が挙げられる。
【0061】
経口的に投与される組成物には、同様に液体の溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、シロップ等が挙げられる。それらの組成物の製造に好適な担体は、当業界で公知である。シロップ、エリキシル、エマルジョン及び懸濁液の担体の代表的な成分には、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ショ糖、ソルビトール及び水が挙げられる。懸濁液のための、代表的な懸濁剤として、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、Avicel RC-591、トラガカントガム及びアルギン酸ナトリウムが挙げられ;代表的な湿潤剤として、レシチン及びポリソルベート80が挙げられ;そして代表的な防腐剤としては、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口的な液体組成物は、上記のように、甘味料、着香剤又は着色剤などの1つ又はそれ以上の成分を含んでもよい。
【0062】
本発明の方法に有用な本化合物の、全身的な送達を行うために有用な他の組成物には、舌下、口腔及び鼻腔の剤形が挙げられる。その様な組成物には、一般に1つ又はそれ以上の、ショ糖、ソルビトール及びマンニトールなどの可溶性充填物質;アカシアゴム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤が含まれる。上記の流動促進剤、滑剤、甘味料、着色剤、酸化防止剤及び着香剤も含まれる。
【0063】
局所製剤は、しばしばエマルジョンの形態で製造される。本明細書で使われる用語の「エマルジョン」は、例えば、連続相及び分散相の形態にある2つ又はそれ以上の液体の混合物を言う。典型的なエマルジョンは、クリーム、ローション、軟膏、ジェルなどの形態であり、例えば、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン、多層エマルジョン及び微細エマルジョンが含まれる。これらの製剤は、約0.001〜10質量%の本化合物を含む様に製造されるであろう。次いで、これらの製剤は、1日に1〜4回、目的の部位に投与されるであろう。或いは、これらの製剤は、より少ない頻度で、即ち、1週間に1〜5回、所望する部位に投与される。
【0064】
一般に、結晶形態の本化合物は、局所投与に好適な担体に組み込まれる。上述の、又は業界で公知の局所製剤のどれを使ってもよい。その様な局所製剤の例には、ローション、噴霧剤、クリーム、軟膏、油薬、ジェルなどが挙げられる。局所製剤を製造する実際の方法は、当業者に公知であるか又は明白であり、その詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1990 (上記); 及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th ed., Williams & Wilkins (1995)に記載されている。
【0065】
結晶形態の本化合物から製造した製剤は、日光又は紫外線誘発損傷から防護する日焼け止め剤(UVA又はUVB遮断剤)と併用して使うこともできる。
【0066】
更なる実施態様において、上記の製剤は小売流通用の包装(即ち、キット又は製品)にしてもよい。包装には、発毛を促進させるための本製品の使い方を患者に助言する説明文が含まれる。その様な説明文は、箱の上への印刷、切り離した説明書又は製剤を入れた容器の側面への印刷などであっても良い。
【実施例】
【0067】
本発明を更に詳細に説明するために、以下の実施例を提示する。それらは、決して本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0068】
[実施例1]
本化合物のエタノール溶媒和物の製造
この実施例は、(3S,4R)−[6−(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−4−(2−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロピリダジン−6−イル−オキシ)−3−クロマノールのエタノール溶媒和物を製造する一つの代替方法について説明する。
【0069】
【化2】

【0070】
化合物1(92.97g、202mmol)、1−メチル−3,6−(1H,2H)−ピリダジンジオン(76.4g、605mmol)及びトリエチルアミン(TEA)(85mL、605mmol)を1口の2L丸底フラスコ内でイソプロピルアルコール(IPA)(550mL)に溶解し、混合物を28時間還流した後、20℃に冷却した。
残っているTBDMS保護基を除去するために、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)のTHF溶液(1M、200mL)を添加し、混合物を室温で30分間攪拌した。これでTBDMS保護基の除去を完了し、真空下で溶媒を除去して得られた濃い暗褐色の油状物を酢酸エチル(2L)に溶解し、得られた混合物を水で洗浄(1.5Lで1回、500mLで3回)し、各洗浄工程後の水相は廃棄した。最後の水洗後、有機相を飽和食塩水(500mL)で洗浄した。有機相をエルレンマイヤーフラスコに移し、MgSO4(50g)を加えて室温で15分間乾燥した。減圧下で溶媒を除去し、得られた95.5gの暗褐色の固形物をクロマトグラフィー(3kgのシリカゲル;移動相:ACN(アセトニトリル)、ACN/MeOH(99:1、体積/体積)、ACN/MeOH(98.5:1.5、体積/体積))で精製し、57.6gのベージュ色の固形物を得た。ベージュ色の固形物を溶媒のCH2Cl2(200mL)に溶解し、セライト(20g)を詰めた粗いガラスろ過器でろ過して不溶性の粒子を除いた。減圧下で溶媒を除去して生じた固形物を95%エタノールに溶解し、粗いガラスろ過器でろ過して不溶性の物質を除去した後、17トールの減圧下でのロータリー・エバポレーター内で最終液量約200mLに濃縮した。溶液にエタノール溶媒和物の結晶の種をいくつか加え、フラスコを−5℃の冷凍室に20時間置いた。得られた固形物は600mL容積の粗いガラスろ過器でろ過した後、20mLの冷エタノール(5℃)で2回洗浄し、ろ過器上でプレス乾燥して、本化合物(25.87g)を灰色を帯びた固形物として得た。母液を非常に少量(約75mL)に濃縮し、エタノール溶媒和物の結晶の種をいくつか加えて、フラスコを同じ冷凍室に20時間置いた。上記と同じ分離手法を行って、本化合物(7.61g)を灰色を帯びた固形物として得た。
【0071】
[実施例2]
本化合物の二水和物結晶形態の製造
実施例1で製造したエタノール溶媒和物(320.27g)を、6.4Lの水(エタノール溶媒和物1gに対して20mLの水)中50℃で激しく攪拌し、スラリーにした。泡状の物質が水の層の上に残った。2日後、ピペットでサンプルを抜き取り、未だ温かい間に直ちにろ過し、真空オーブン内で、22℃、17トールで1時間乾燥した。サンプルのpXRD分析を前記のように実施した結果は、完全に二水和物形態に変換している事を示した。前記のようにして実施したサンプルのTGA分析の結果は、理論的な親化合物1モル当たり水分子2モルに近似した値を示した。二水和物形態への完全な変換を確認するために、混合物を同じ条件下で更に4日間攪拌した。加熱を停止し、フラスコを氷片の入った水浴に入れ、その内容物の温度を20℃にした。懸濁液をろ過し、固形物をろ過器上でプレス乾燥し、次いで、二水和物の組成に影響を及ぼさずに表面の水を除去するために、22℃の真空オーブンに24時間置いた。TGA分析の結果は、親化合物1モル当たり水約2モルを示した。
【0072】
[実施例3]
本化合物の無水物結晶形態の製造
本化合物の無水物結晶形態は、エタノール溶媒和物をスラリーにして二水和物にし、次いで、二水和物を脱水して無水結晶形態にする事により、エタノール溶媒和物から製造した。
【0073】
二水和物1gをペトリ皿に取り、常圧のオーブン内で、窒素雰囲気下で乾燥した。温度は、18℃から120℃まで、0.1℃/分でゆっくり上昇させた。120℃における乾燥状態は、pXRD及びmDSCで監視した。
【0074】
最初のサンプルを40時間後に採取した。それはpXRD及びmDSCで測定した通り、無水物の結晶であった。推定結晶化度は、92%〜96%であった。
【0075】
乾燥を継続し、64時間後及び88時間後にサンプルを採取した。顕著な変化は認められなかった。この物質を1℃/分で25℃まで冷却した。最終試験では、結晶化度は94%〜96%であった。
【0076】
[実施例4]
本化合物の無水物結晶形態の製造
本化合物の無水物結晶形態は、温度を約40℃から約130℃まで上昇させる事によって製造される。昇温速度は約0.1℃/分〜約10℃/分が使われてよい。サンプルは、常圧から約3トールの真空までの範囲の圧力下で乾燥してよい。
【0077】
本化合物の無水物結晶形態は、実施例2で製造した白色固形物を、トレー上で60℃、高真空(3トール)下で、21時間乾燥させることによって製造した。トレーを秤量して、オーブンに戻し、更に26時間乾燥した。重量の変化は観察されなかった。本化合物(285.33g)が、白色粉末状固形物として得られた。白色粉末状固形物の結晶化度は、mDSCで測定して、およそ60%の無水結晶形態の本化合物及び約40%の非晶質形態の本化合物であった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】無水結晶形態の本化合物の粉末X線回折パターンを示す。
【図2】二水和物結晶形態の本化合物の粉末X線回折パターンを示す。
【図3】エタノール溶媒和物の本化合物の粉末X線回折パターンを示す。
【図4】無水結晶形態、二水和物結晶形態及びエタノール溶媒和物の本化合物の粉末X線回折パターンの比較を示す。
【図5】二水和物結晶形態の本化合物のDSCを表す。
【図6】二水和物結晶形態の本化合物の熱重量分析(TGA)を表す。
【図7】無水結晶形態の本化合物のDSCを表す。
【図8】無水結晶形態の本化合物のTGAを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水結晶の6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノン。
【請求項2】
粉末X線回折パターンが図1のパターンと実質的に類似する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
10.5°、15.0°、17.2°及び22.8°から成るグループから選択される2θ概略値に、少なくとも1つの特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
10.5°及び17.2°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
10.5°及び22.8°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項6】
10.5°、17.2°及び22.8°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
二水和物の6−[[(3S,4R)−3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−6−[(3−ヒドロキシフェニル)スルホニル]−2,2,3−トリメチル−2H−1−ベンゾピラン−4−イル]オキシ]−2−メチル−3(2H)−ピリダジノン。
【請求項8】
結晶形態である、請求項7に記載の二水和物。
【請求項9】
図2のパターンと実質的に類似する粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項10】
9.2°、20.1°、24.0°及び25.4°から成るグループから選択される2θ概略値に、少なくとも1つの特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項11】
9.2°及び20.1°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項12】
9.2°及び24.0°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項13】
9.2°、20.1°及び24.0°の2θ概略値に特徴的なピークを有する実験的粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶形態から製造される製剤を哺乳類に投与することを含む、発毛促進の方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶形態の有効量から、少なくとも1つの薬学的に許容される担体との混合物として製造される医薬製剤。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶形態の有効量を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体との混合物として含む医薬製剤。
【請求項17】
二水和物結晶形態の本化合物を製造すること、適切な条件下で二水和物を脱水して無水結晶形態を製造することを含む、無水結晶の本化合物の製造法。
【請求項18】
二水和物形態の本化合物を、約0.1℃/分〜約10℃/分の昇温速度と、約40℃〜約120℃までの範囲の温度で脱水すること、そして得られた化合物を最終温度に約48時間まで保持することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
二水和物形態の本化合物を、約0.1℃/分の昇温速度と、約18℃〜約120℃までの範囲の温度で、常圧下で脱水すること、そして得られた化合物をおよそ常圧下で約48時間保持することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
二水和物形態の本化合物を、3トールの真空下で約60℃に加熱することにより脱水すること、そして得られた化合物を約48時間まで3トールの減圧下に保持することを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−506682(P2008−506682A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520920(P2007−520920)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002150
【国際公開番号】WO2006/008641
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】