説明

発毛抑制剤及びこれを配合してなる化粧料

【課題】皮膚に対する負担が少なく、使用が簡便で効果の高い発毛抑制剤及びこれを配合してなる化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ及びセードロ、セードロ等・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン等から選ばれる植物の抽出物からなる発毛抑制剤及び化粧料。
下記一般式(1)で表わされる化合物からなる発毛抑制剤及び化粧料。


[R1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基であり、R2,R3独立に、水素原子、ハロゲン原子又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で示される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足や腕等の発毛を抑制し、毛再生の遅延効果を有する発毛抑制剤及びこれを配合してなる化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、頭皮上の毛髪は豊かであることが望まれているのに対し、腕、足、腋、顔等における体毛は、美的外観上好ましくないとされる傾向が高まっている。そのため、好ましくない体毛等を除去する方法が開発され、利用されている。具体的には、カミソリやシェーバーによる剃毛、抜毛器等を用いて体毛を毛根から抜去し、脱毛する方法、除毛剤(例えば、特許文献1:特開平4−173725号公報等参照)を用いて、その化学的作用により体毛を除去し、除毛する方法等が提案されている。
【0003】
しかしながら、ムダ毛の処理は次に挙げるような欠点を有している。剃毛については皮膚に微小な傷が多数生じること、脱毛については処理に技術を要し痛みが伴う他、高周波装置を用いる場合は非常に高価である。また、除毛剤については化学物質により毛を溶解することから皮膚刺激を伴う場合がある。髭剃りについてもムダ毛の処理同様、カミソリによる微小な傷が生じ、またカミソリ負けのような皮膚の炎症が起こることもある。さらに、剃毛・除毛は皮膚表面部の毛を除去したにすぎず、脱毛しても時間経過と共に、ムダ毛が再生するため、上記の処理を繰り返すことになる。さらに、ムダ毛の処理は、毛成長に対する刺激作用が強いため、成長速度を高めたり、休止期毛を活性化させるという問題がある。このように、上記処理では、皮膚に対する負担が大きいこと、処理自体の手間や経費の問題があった。
以上により、皮膚に対する負担が少なく、使用が簡便で効果の高い発毛抑制剤が望まれていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平4−173725号公報
【特許文献2】特開平8−81336号公報
【特許文献3】特開平10−139639号公報
【特許文献4】特表2000−515511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、皮膚に対する負担が少なく、使用が簡便で効果の高い発毛抑制剤及びこれを配合してなる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、[I]アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ、セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン、アメリカデイゴ、キュアルバ、センボウ、ジョテイシ、リュウキド、ゴカヒ、キュウサイシ、セッコク、チチタ、カマンブ、セドリロ、ペロア、痩花香茶叶、大叶虎皮楠、スルビナ(SURUBINA)、ファエイラ(Faeira)及びミスヤー(MISYER)から選ばれる植物の抽出物、ならびに[II]下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基であり、R2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で示される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。]で表わされる化合物が、毛乳頭細胞の細胞死(アポトーシス)を選択的に誘導し、優れた発毛抑制効果を示すことを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記[I]及び[II]の発明を提供する。
[I]アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ、セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン、アメリカデイゴ、キュアルバ、センボウ、ジョテイシ、リュウキド、ゴカヒ、キュウサイシ、セッコク、チチタ、カマンブ、セドリロ、ペロア、痩花香茶叶、大叶虎皮楠、スルビナ(SURUBINA)、ファエイラ(Faeira)及びミスヤー(MISYER)から選ばれる植物の抽出物からなる発毛抑制剤、ならびにこれを配合してなる化粧料。
[II]下記一般式(1)
【化2】

[式中、R1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基であり、R2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で示される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。]で表わされる化合物からなる発毛抑制剤、ならびにこれを配合してなる化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚に対する負担が少なく、使用が簡便で効果の高い発毛抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ、セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン、アメリカデイゴ、キュアルバ、センボウ、ジョテイシ、リュウキド、ゴカヒ、キュウサイシ、セッコク、チチタ、カマンブ、セドリロ、ペロア、痩花香茶叶、大叶虎皮楠、スルビナ(SURUBINA)、ファエイラ(Faeira)及びミスヤー(MISYER)から選ばれる植物の抽出物からなる発毛抑制剤である。
【0010】
本発明で用いられる植物は、アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ、セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン、アメリカデイゴ、キュアルバ、センボウ、ジョテイシ、リュウキド、ゴカヒ、キュウサイシ、セッコク、チチタ、カマンブ、セドリロ、ペロア、痩花香茶叶、大叶虎皮楠、スルビナ(SURUBINA)、ファエイラ(Faeira)及びミスヤー(MISYER)であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0011】
アブリコー・ド・パラー(学名:Mammea americana)は、フクギ科に属し、西インド諸島や南米北部に自生しているのを見ることができる。アブリコー・ド・パラーは生食のほかマーマレード等に加工されている。
アレクリン・ピメンタ(学名:Lippia alnifolia)は、クマツヅラ科に属し、ブラジルに自生しているのを見ることができる。
セードロ、セードロ・ローザ(学名:Cedrela fissilis、Cedrela odorata)は、センダン科に属し、熱帯アメリカで自生しているのを見ることができる。
マサランヅーバ(学名:Manilkara huberi)は、アカテツ科に属し、ブラジル北部に分布し、とりわけベレン周辺に多く自生しているのを見ることができる。主に建材として利用されている。
【0012】
カツアバ(学名:Erythroxylum catuaba)はコカノキ科に属し、主にアマゾン川流域、パラ州、ペルナンブスコ州、バイーア州、マランハオ州、アンゴラス州辺りで自生しているのを見ることができる。ブラジルのハーブ医療では、カツアバは中枢神経刺激作用があると考えられており、樹皮を煎じたお茶が神経衰弱、健忘症等の治療に用いられている。
ジャトバ(学名:Hymenaea courbaril)はマメ科に属し、主にアマゾン熱帯雨林と中米の熱帯気候の地域に自生しているのを見ることができる。ブラジルのハーブ医療では樹液が気管支炎や咳に、樹皮が水虫や胃の薬として使われている。
【0013】
キケン(学名:Siegesbeckis orientalis)は、キク科のメナモミの生薬名であり、山麓の荒地などに自生している。キケンは腫れ物の解毒や鎮痛に用いられている。
アメリカデイゴ(学名:Erythrina cristagalli)は、マメ科に属し、アルゼンチンやボリビアにかけて自生している。
【0014】
キュアルバ(学名:Vochysia maxima)は、ヴォキシア科に属し、主にブラジルで自生している。
センボウ(学名:Curculige orchioides Gaertner.)は、ヒガンバナ科のキンバイザサの根茎である。インドや中国では強精薬として使用されている。
ジョテイシ(学名:Ligustrum japonicum)は、モクセイ科に属し、強精薬として用いられている。
リュウキド(学名:Siphonostegia chinensis)は、ゴマノハグサ科に属し、止血、痛み止めに用いられている。
【0015】
ゴカヒ(学名:Acanthopanax gracilistylus)は、ウコギ科に属し、鎮痛、解熱薬として用いられている。
キュウサイシは、ユリ科(Liliaceae)のニラの熟成種子を乾燥したものをいう。東アジア各地で栽培され、中国では河北、山西、吉林、江蘇、山東、河南省等で多く産出され、主に強精、興奮薬として、小便頻数、遺尿、婦人のこしけ、夢精等に応用されている。
セッコク(学名:Dendrobium Loddigesii)は、ラン科に属する。
チチタ(学名:Lethraea chichita)は、主にパラグアイに自生している。
【0016】
カマンブ(学名:Physalis visdosa)は、ナス科に属し、主にパラグアイで自生している。
セドリロ(学名:Guarea silvicola)は、センダン科に属し、主にパラグアイで自生しているのを見ることができる。
ペロアは主に南米、特にブラジルに存在する。
【0017】
痩花香茶叶(学名:Rabdosia rosthornii)、大叶虎皮楠(学名:Daphni phyllam majorum)。
スルビナ(SURUBINA)は主に南米、特にブラジルに存在する。
ファエイラ(Faeira)(学名:Roupala montana)はヤマモガシ科の植物である。
ミスヤー(MISYER)は主に南米、特にブラジルに存在する。
【0018】
植物の抽出物はいずれも上記植物そのもの又はその同属の植物を、乾燥あるいは直接粉砕し、その後溶媒抽出することにより得ることができる。その抽出部位は特に限定されず、全草、葉、根、果実、種子、及び花等を組み合わせて用いることができる。
【0019】
抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類、酢酸エチル等のエステル、アセトン等のケトン又はエーテル類等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。抽出条件としては、通常3〜70℃、好ましくは20〜50℃で、1〜5日間抽出するのが好ましい。これらの方法で得られた抽出物は、そのまま用いてもよく、あるいは希釈液としたり、濃縮乾燥することによって乾燥粉末物としたり、ペースト状に調製して用いてもよい。
【0020】
抽出物より有効成分を分離精製して用いることもできる。この場合、抽出条件は限定されるものではないが、無水エタノールで抽出後、濃縮し、それからさらに酢酸エチルで抽出した後、減圧乾燥して粉末抽出物としたものを用いることが好ましい。分離精製の方法としては、溶媒抽出物をカラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーで精製する方法が挙げられる。
【0021】
第2の発明は、下記一般式(1)で表わされる化合物からなる発毛抑制剤。
【化3】

[式中、R1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基であり、R2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で示される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。]
【0022】
1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基である。フェニル基又は9H−フルオレン基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、フェニル基、下記構造式(3),(4)で表されるものが挙げられる。
−C(=O)−NH−(CH2n−NR56 (3)
(式中、R5,R6はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、nは0又は1〜4の整数を示す。)
−(CH2p−O−(CH2q−Fe (4)
(式中、pは0又は1〜3の整数、qは0又は1〜4の整数を示す。Feはフェニル基を示し、水素原子の一部又は全部が、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は−N+(=O)−O-等の基で置換されていてもよい。)
なお、上記置換基で置換された水素原子以外の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はアルデヒド基等で置換されていてもよい。
【0023】
1としては、9H−フルオレン基、置換基で置換された下記フェニル基が好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で表される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示し、アルキル基としては炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基としては炭素数2〜18、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。R4のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基は、水素原子の一部又は全部は、水酸基、カルボキシル基、オキソ基又はアルデヒド基等で置換されていてもよい。
【0026】
2,R3としては、下記式で示されるものが好ましい。
−(CH22−CH3
−(CH23−CH3
−(CH24−CH3
−O−CH3
−O−CH2−CH3
−O−(CH22−CH3
−O−(CH23−CH3
−O−(CH24−CH3
−N−C(=O)−CH3
−N−C(=O)−(CH22−CH3
−N−C(=O)−(CH23−CH3
−N−C(=O)−(CH24−CH3
−C(=O)−CH3
−C(=O)−(CH22−CH3
−C(=O)−(CH23−CH3
−C(=O)−(CH24−CH3
【0027】
下記一般式(1)で表わされる化合物はTripos社の化合物ライブラリーから得ることができる。
【0028】
本発明の特定植物の抽出物は、ケラチノサイト等の細胞死を誘導することなく、毛乳頭細胞の細胞死を選択的に誘導する誘導剤としての作用を有する。この作用により、毛乳頭細胞が細胞死することによって、優れた発毛抑制効果が得られ、かつ皮膚に対する負担が少ないものである。
【0029】
本発明の化合物は、p53タンパク質の発現量を増加させ、毛乳頭細胞の細胞死を誘導する誘導剤としての作用を有する。この作用により、毛乳頭細胞が細胞死することによって、優れた発毛抑制効果が得られ、かつ皮膚に対する負担が少ないものである。
【0030】
本発明の発毛抑制剤は、発毛抑制作用を有する他の成分を任意に配合して用いることができる。発毛抑制作用を有する成分としては、リモネン、ネロリドール、ラパマイシン、ファルネサール、ファルネソール、イソフィトール、ニコチン酸メチル、エンメイソウ抽出物、クララ抽出物等を例示することができる。
【0031】
本発明の発毛抑制剤は、皮膚に対して大きな負担をかけることなく体毛の成長を効果的に抑制して、除毛処理回数を減少させることのできる、優れた発毛抑制効果を有する。発毛抑制剤は、そのまま又はアルコールや水等に希釈して使用することができるが、化粧料に配合して利用することができる。化粧料としては、特に、除毛、脱毛又は髭剃り化粧料等に好適に用いられるものである。具体的には、ペースト状、クリーム状、エアゾール状等の除毛剤、ワックス状、ジェル状、シート状等の脱毛剤、除毛又は脱毛の後処理に用いるローション、クリーム等の後処理料、プレシェーブローション等の髭剃り前処理料、シェービングクリーム等の髭剃り料、アフターシェーブローション等の髭剃り後処理料等が挙げられ、洗浄剤や入浴剤等に配合して全身のムダ毛に対して簡便に、かつ効果的に作用させることもできる。また、女性においては腋のムダ毛処理が広く行われており、夏場には制汗剤も一般的に使用されていることから、制汗剤等に本発明の発毛抑制剤を配合することによって、手軽で効率的なケアをすることも可能である。なお、化粧料の適用部位としては、効果の点から、頭髪以外の全身、具体的には、足、腕、背中、腹部、胸部等に好適である。
【0032】
第1の発明の場合、植物の抽出物の配合量は、化粧料の製品形態、使用頻度により異なり、適宜選定されるが、抽出物の固形分として、通常、化粧料中0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。配合量が少なすぎると十分な発毛抑制効果が期待できない場合があり、一方、多すぎても発毛抑制効果が頭打ちになったり、製剤の安定性の面で不具合が発生する。
【0033】
第2の発明の場合、一般式(2)で表わされる化合物の配合量は、化粧料中0.000001〜0.01質量%が好ましく、より好ましくは0.00001〜0.001質量%である。
【0034】
本発明の発毛抑制剤を配合してなる化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、水、アルコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の他、薬効成分を必要に応じて適宜配合することができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。薬効成分としては、抗菌剤、抗炎症剤、保湿剤、及びスキンケアに使用されうる各種プロテアーゼ等が挙げられる。抗菌剤としては、ヒノキチオール、ピロクトンオラミン、塩化ベンザルコニウム等、抗炎症剤としては、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、アラントイン、インドメタシン、フェニルブタゾン、イブプロフェン及びこれらの誘導体等、保湿剤としては、ヒアルロン酸及びその塩、グリセリン、プロピレングリコール、プロテアーゼとしては、パパイン、ブロメライン等が挙げられる。この中でも、ピロクトンオラミン、β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、パパイン等が好ましい。
【0035】
本発明の発毛抑制剤を配合してなる化粧料の剤型は特に限定されず、その剤型の常法により得ることができる。剤型としては特に限定されず、均一溶液、ローション、ジェル、ペースト、クリーム、ワックス、シート、エアゾール等が挙げられる。エアゾールにする場合には、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ブタン、プロパン、イソブタン、液化石油ガス、ジメチルエーテル等の可燃性ガス、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等の圧縮ガスを配合することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、抽出物の配合量は、乾燥固形分としての値で示した。
【0037】
[調製例1]
セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、キュアルバ、ジャトバ、セドリロ、ペロア、大叶虎皮楠、カマンブ、アレクリン・ピメンタ、アメリカデイゴ、スルビナ、ファエイラ、ミスヤーは樹皮の部分を用いた。各植物の樹皮の部分をミキサーにより破砕し、粉末を70%エタノール水溶液に浸漬し、3日間、30℃で撹拌して抽出した。抽出液をろ過したあと、凍結乾燥により粉末状にし抽出物を得た。抽出物は使用時まで冷暗所で保存した。
【0038】
[調製例2]
カツアバ、チチタ、リュウキド、瘻花香茶叶は葉の部分を用いた。葉の部分をミキサーにより切り刻み、得られた粉末を70質量%エタノール水溶液に浸漬し、一晩、30℃で撹拌して抽出した。抽出液をろ過したあと、凍結乾燥により粉末状にし抽出物を得た。抽出物は使用時まで冷暗所で保存した
【0039】
[調製例3]
アブリコー・ド・パラー、ジョテイシは果実の部分を用いた。果実を水洗、カッターで細切りした後、ミキサーですりつぶすかプレスにより圧搾し、エタノールと混合し、一晩室温で撹拌して抽出した。抽出液をろ過したあと、凍結乾燥により粉末状にし抽出物を得た。抽出物は使用時まで冷暗所で保存した。
【0040】
[調製例4]
センボウ、ゴカヒ、キケン、セッコクは根茎の部分を用いた。根の部分を水洗し、ミキサーにより破砕後、粉末を水で3日間攪拌し、含有物を抽出した。抽出液をろ過したあと、凍結乾燥により粉末状にし、使用時まで冷暗所で保存した。
【0041】
[調製例5]
キュウサイシは乾燥したニラの熟成種子のことをいう。ニラの熟成種子をミキサーにより破砕後、粉末をエタノールで3日間、30℃で撹拌して抽出した。抽出液をろ過し抽出物を得た。抽出物は使用時まで冷暗所で保存した。
【0042】
各抽出物の抽出原料の量及び抽出物量を下記に示す。
【表1】

【0043】
[試験例1]
毛乳頭細胞死誘導試験
毛乳頭細胞(TOYOBO)と、正常ヒトケラチノサイト(クラボウ(倉敷紡績(株))製)とを、24穴マルチウェルプレート(スミロン;住友ベークライト製)に、それぞれ20000cells/ウェルで播種した。培地は、毛乳頭細胞は、10%FBS含有DMEM(FBS;Biowest社製、DMEM;シグマ社製)、ケラチノサイトは、Hu−media KG2(クラボウ製)を用いた。調製例で得られた植物抽出物の固形物を100mg/mLの濃度で100%エタノールに溶解した。このように調製した植物抽出物を、終濃度が100μg/mLとなるように、毛乳頭細胞とケラチノサイトにそれぞれ、細胞播種のあとすぐに添加し、37℃・5%CO2条件下で24時間後の細胞の生死を判別した。また、比較例として終濃度が0.10質量%になるようにエタノールを添加し、細胞の生死を判別した。結果を表2に示す。上記植物抽出物は毛乳頭細胞の細胞死を選択的に誘導した。従って、上記記載の植物エキスは、皮膚に対して負担が少なく、効果的にも優れた発毛抑制剤である。
【0044】
【表2】

【0045】
[試験例2]
マウス発毛試験
調製例で得られた植物抽出物を用いて、下記方法によりマウス発毛試験を行った。
毛周期が休止期にある生後53日齢のC57BL/6マウスの背部を、電気バリカン及び電気シェーバーを用い、皮膚を傷つけないように除毛した。翌日より除毛部位に表3に記載した検体を0.1mLずつ、1日1回塗布した。対照は溶媒のみを塗付したものとした。比較例として50.0質量%エタノール水溶液を用いた。
各検体の発毛効果は、発毛面積を測定し、除毛した面積に対する比率が50%となる日を50%発毛日として、除毛から50%発毛日までに要した日数をもとめ、検体の効果はそれぞれの対照塗布群の50%発毛日との差、即ち発毛日の遅れによって評価した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
図にカマンブ(図1)、アレクリン・ピメンタ(図2)、セードロ(図3)、カツアバ(図4)及び50.0質量%エタノール水溶液(図5)を19日間塗布した後の写真を示す。これらの結果から、上記植物抽出物を塗布することで発毛が遅延していることが分かる。
[試験例3]
ヒト頭皮由来毛乳頭細胞を用いた細胞死(アポトーシス)誘導試験
ヒト頭皮由来毛乳頭細胞(TOYOBO)を、24穴マルチウェルプレート(スミロン;住友ベークライト製)に20000cells/ウェルで播種して、37℃・5%CO2条件下で24時間培養した。培地は10%FBS含有DMEM(FBS;Biowest社製、DMEM;シグマ社製)を用いた。
被験試料として対象化合物1−3、化合物1−7をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、終濃度が10-4M(mol/L)となるようにヒト頭皮由来毛乳頭細胞に添加した。化合物を添加後、37℃・5%CO2条件下で24時間後のアポトーシス誘導率を測定した。アポトーシス抑制効果は、アポトーシス発症の指標であるp53タンパク質の発現を指標にELISA法により測定した。ELISA法にはHuman p53 ELISA Module set (Bender Medsystems社)を用いた。
表4中には、p53タンパク質の発現量から、下記式に基づいてNT−4:アポトーシス誘導タンパク質(Neurotropin−4)との比較による誘導率(%)を算出し、下記基準で示した。
(C−A)/(B−A)×100(%)
A:DMSOのみ添加した場合のp53発現量
B:NT−4;10μg/mLを添加した場合のp53発現量
C:被験試料を添加した場合のp53発現量
<基準>
◎:100−70%
〇:69−40%
△:39−10%
×:9%
【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
【表4】

【0052】
[試験例4]
マウス発毛抑制試験
毛周期が休止期にある生後53日齢のC3H/HeNマウスの背部を、電気バリカン及び電気シェーバーを用い、皮膚を傷つけないように除毛し、1群6匹として実験に供した。翌日より除毛部位に表5に記載した検体(表中の濃度を50質量%エタノール水溶液に溶かしたもの)を0.1mLずつ、1日1回塗布した。対照群は溶媒のみを塗付する群とした。
各検体の発毛効果は、発毛面積を測定し、除毛した面積に対する比率が50%となる日を50%発毛日として、除毛から50%発毛日までに要した日数をもとめ、検体の効果はそれぞれの対照塗布群の50%発毛日との差、即ち発毛日の遅れによって評価した。
表5に示すとおり、試験例3で細胞死を誘導した化合物については、明らかな発毛遅延が認められた。
【0053】
【表5】

【0054】
以下、本発明に係る化粧品の処方例を示す。
[処方例1]発毛抑制ローション
組成(質量%)
カツアバのエタノール抽出物 1.0
スタノロン 0.2
ソルビタンモノオレイン酸 2.0
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
エタノール 40.0
精製水 残部
計 100.0
【0055】
[処方例2]発毛抑制クリーム
組成(質量%)
セードロの50%エタノール抽出物 0.1
ステアリルアルコール 6.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
オクチルドデカノール 10.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
グリセリン 3.0
POE(25)セチルエーテル 3.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
エチルパラベン 0.1
ブチルパラベン 0.1
精製水 残部
計 100.0
【0056】
[処方例3]発毛抑制クリーム
組成(質量%)
アレクリン・ピメンタの50%エタノール抽出物 0.01
セチルアルコール 5.0
ステアリン酸 3.0
ワセリン 5.0
スクワラン 9.0
オクチルドデカノール 10.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
PEG1500 4.0
POE(25)セチルエーテル 3.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
エチルパラベン 0.1
ブチルパラベン 0.1
精製水 残部
計 100.0
【0057】
[処方例4]発毛抑制ジェル
組成(質量%)
アメリカデイゴのエタノール抽出物 1.0
ジャトバのエタノール抽出物 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.7
ポリビニルピロリドン 2.0
POE(20)セチルエーテル 3.0
グリセリン 5.0
PEG1500 4.0
エタノール 20.0
精製水 残部
計 100.0
【0058】
[処方例5]発毛抑制フォーム
組成(質量%)
(原液)
カマンブの1,3−ブチレングリコール抽出物 1.0
ゴカヒのエタノール抽出物 1.0
POE(20)ソルビタンモノステアリン酸 2.0
グリセロールモノステアリン酸エステル 2.0
ホホバ油 3.0
ジプロピレングリコール 5.0
グリセリン 7.0
メチルパラベン 0.1
エタノール 30.0
精製水 残部
計 100.0
(充填用希釈液)
上記原液 90.0
LPG(噴射剤) 10.0
計 100.0
【0059】
[処方例6]発毛抑制スプレー
組成(質量%)
(原液)
ジョテイシのエタノール抽出物 0.2
キュウサイシのエタノール抽出物 0.2
POE(20)セチルエーテル 3.0
プロピレングリコール 3.0
エタノール 60.0
精製水 残部
計 100.0
(充填用希釈液)
上記原液 60.0
LPG(噴射剤) 40.0
計 100.0
【0060】
上記処方例1〜5の各製剤において、上記マウス発毛抑制試験を行ったところ、明確な発毛抑制効果が認められた。
【0061】
[処方例7〜16]
表6,7に示す組成の発毛抑制ローション(処方例7〜11)、発毛抑制クリーム(処方例12〜16)を、常法に基づいて調製した。
【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】試験例2におけるカマンブを塗布(19日後)したマウス背中の写真である。
【図2】試験例2におけるアレクリン・ピメンタを塗布(19日後)したマウス背中の写真である。
【図3】試験例2におけるセードロを塗布(19日後)したマウス背中の写真である。
【図4】試験例2におけるカツアバを塗布(19日後)したマウス背中の写真である。
【図5】試験例2における50%エタノール水溶液を塗布(19日後)したマウス背中の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブリコー・ド・パラー、アレクリン・ピメンタ、セードロ、セードロ・ローザ、マサランヅーバ、カツアバ、ジャトバ、キケン、アメリカデイゴ、キュアルバ、センボウ、ジョテイシ、リュウキド、ゴカヒ、キュウサイシ、セッコク、チチタ、カマンブ、セドリロ、ペロア、痩花香茶叶、大叶虎皮楠、スルビナ(SURUBINA)、ファエイラ(Faeira)及びミスヤー(MISYER)から選ばれる植物の抽出物からなる発毛抑制剤。
【請求項2】
下記一般式(1)で表わされる化合物からなる発毛抑制剤。
【化1】

[式中、R1は置換もしくは非置換のフェニル基又は9H−フルオレン基であり、R2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルデヒド基又は下記構造式(2)
−(A)m−R4 (2)
(式中、AはO、NH又はCH2、mは0又は1である。R4は置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基又はフェニル基を示す。)
で示される基を示し、R2及びR3のうち1つは上記構造式(2)で示される基である。]
【請求項3】
請求項1又は2記載の発毛抑制剤を配合してなる化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145738(P2007−145738A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340149(P2005−340149)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】