説明

発泡シート

【課題】水蒸気透過度に優れ、農業用被覆シートとして好適な発泡シートを提供する。
【解決手段】エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる、厚さ100〜500μmの発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン系樹脂からなる発泡シートは、適度の柔軟性、緩衝性、断熱性等を有することから、家電製品の包装資材や農業用被覆シート等、多くの分野で使用されている。特に農業用被覆シートとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする発泡シートが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−108234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡シートを農業用被覆シートとして用いる場合には、発泡シートで農作物を覆ったときに水蒸気がこもらないようにするため、水蒸気透過度が高いことが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載されたような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体とからなる発泡シートにおいては、水蒸気透過度の向上が求められている。かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、水蒸気透過度が改良された発泡シートを提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、水蒸気透過度が改良された発泡シートを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる、厚さ100〜500μmの発泡シートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる、厚さ100〜500μmの発泡シートである。
【0008】
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0010】
エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量を100重量%とするとき、通常50〜99重量%である。炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量を100重量%とするとき、通常1〜50重量%である。
【0011】
エチレン−α−オレフィン共重合体は長鎖分岐を有するものであり、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、流動の活性化エネルギー(Ea)が高い。本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーは、通常40kJ/mol以上であり、より発泡倍率の高い発泡シートが得られることから、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、機械強度及び水蒸気透過度に優れる発泡シートを得るためには、該Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜10g/10分である。押出機の負荷を低減し、加工しやすくするため、MFRは0.3g/10分以上であることが好ましい。また、得られる発泡シートの強度の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRは好ましくは8g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される。
【0013】
エチレン−α−オレフィン共重合体のスウェル比(以下、「SR」と記載することがある。)は、好ましくは1.2以上である。スウェル比が小さすぎると、発泡倍率の高い発泡シートや、適切な厚みの発泡シートを得にくくなる傾向がある。また、該スウェル比は、発泡シート表面の平滑性を高める観点からは、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.8以下である。該スウェル比は、メルトフローレート(MFR)を測定する際に、温度190℃、荷重21.18Nの条件でオリフィスから、15〜20mm程度の長さで押出したエチレン−α−オレフィン共重合体のストランドを、空気中で冷却し、得られた固体状のストランドについて、押出し上流側先端から約5mmの位置でのストランドの直径D(単位:mm)を測定し、その直径Dをオリフィス径2.095mm(D0)で除した値(D/D0)である。
【0014】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、発泡シートの軽量性の観点から好ましくは950kg/m3以下であり、より好ましくは940kg/m3以下であり、更により好ましくは930kg/m3以下である。また、ベタツキ感の少ない発泡シートが得られることから、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は好ましくは890kg/m3以上であり、より好ましくは900kg/m3以上である。なお、該密度はJIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0015】
エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5以上である。該分子量分布は、発泡シートを製造する際の加工性の観点から、好ましくは6以上である。また、該分子量分布は、発泡シートの機械強度の観点から、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは17以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0016】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトテンション(以下、「MT」と記載することがある。)は、好ましくは2.0cN以上50cN以下であり、より好ましくは2.5cN以上40cN以下である。メルトテンションが前記した条件を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることにより、発泡倍率と水蒸気透過度の優れた発泡シートを製造することができる。
【0017】
分子量分布が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、好適には、微粒子状担体に触媒成分が担持されてなる固体触媒成分を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。該固体触媒成分としては、例えば、触媒成分にメタロセン系錯体を用いる場合は、活性化助触媒成分(例えば、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物など)を微粒子状担体に担持させてなる助触媒担体などを用いることができる。
【0018】
微粒子状担体としては、多孔性の物質が好ましく、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土や粘土鉱物;ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機ポリマーなどが使用される。該微粒子状担体の50%体積平均粒子径は、通常、10〜500μmであり、該50%体積平均粒子径は、光散乱式レーザー回折法などで測定される。また、該微粒子状担体の細孔容量は、通常0.3〜10ml/gであり、該細孔容量は、主にガス吸着法(BJH法)で測定される。該微粒子状担体の比表面積は、通常、10〜1000m2/gであり、該比表面積は、主にガス吸着法(BET法)で測定される。
【0019】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、特に好適には、下記の助触媒担体(A)と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン系錯体(B)と、有機アルミニウム化合物(C)とを接触させてなる重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0020】
上記の助触媒担体(A)は、成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水、成分(d)無機微粒子状担体および成分(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させて得られる担体である。
【0021】
成分(b)のフッ素化フェノールとしては、ペンタフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール等をあげることができる。フッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いてもよく、例えば、ペンタフルオロフェノール/3,4,5−トリフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール/2,4,6−トリフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール/3,5−ジフルオロフェノールなどの組み合せがあげられ、好ましくはペンタフルオロフェノール/3,4,5−トリフルオロフェノールの組み合せである。
【0022】
成分(d)の無機微粒子状担体としては、好ましくはシリカゲルである。
【0023】
成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水の各成分の使用量は特に制限はないが、各成分の使用量のモル比率を成分(a)ジエチル亜鉛:成分(b)フッ素化フェノール:成分(c)水=1:x:yのモル比率とすると、xおよびyが下記式を満足することが好ましい。
|2−x−2y|≦1
上記式のxとしては、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0024】
また、成分(a)ジエチル亜鉛に対して使用する成分(d)無機微粒子状担体の量としては、成分(a)ジエチル亜鉛と成分(d)無機微粒子状担体との接触により得られる粒子に含まれる成分(a)ジエチル亜鉛に由来する亜鉛原子が、得られる粒子1gに含まれる亜鉛原子のモル数にして、0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)無機微粒子状担体に対して使用する成分(e)トリメチルジシラザンの量としては、成分(d)無機微粒子状担体1gにつき成分(e)トリメチルジシラザン0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0025】
アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン系錯体(B)の金属原子としては、周期律表第IV属原子が好ましく、ジルコニウム、ハフニウムがより好ましい。また、配位子としては、インデニル基、メチルインデニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基が好ましく、架橋基としては、エチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチルシリレン基が好ましい。更には、金属原子が有する残りの置換基としては、ジフェノキシ基やジアルコキシ基が好ましい。メタロセン系錯体(B)として好ましくは、エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドをあげることができる。
【0026】
有機アルミニウム化合物(C)として、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムである。
【0027】
メタロセン系錯体(B)の使用量は、助触媒担体(A)1gに対し、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物(C)の使用量として、好ましくは、メタロセン系錯体(B)の金属原子モル数に対する有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子のモル数の比(Al/M)で表して、1〜2000である。
【0028】
上記の助触媒担体(A)とメタロセン系錯体(B)と有機アルミニウム化合物(C)とを接触させてなる重合触媒においては、必要に応じて、助触媒担体(A)とメタロセン系錯体(B)と有機アルミニウム化合物(C)とに、電子供与性化合物(D)を接触させてなる重合触媒としてもよい。該電子供与性化合物(D)として、好ましくはトリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミンをあげることができる。
【0029】
得られるエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布を大きくする観点からは、電子供与性化合物(D)を使用することが好ましく、電子供与性化合物(D)の使用量としては、有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子のモル数に対して、0.1mol%以上であることがより好ましく、1mol%以上であることが更に好ましい。なお、該使用量は、重合活性を高める観点から、好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは5mol%以下である。
【0030】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、微粒子状担体に触媒成分が担持されてなる固体触媒成分を用いて、少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)して得られた予備重合固体成分、例えば、助触媒担体とメタロセン系錯体と他の助触媒成分(有機アルミニウム化合物などのアルキル化剤など)とを用いて少量のオレフィンを重合して得られた予備重合固体成分を、触媒成分または触媒として用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法が好ましい。
【0031】
予備重合で用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどをあげることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、予備重合固体成分中の予備重合された重合体の含有量は、固体触媒成分1g当たり、通常0.1〜500gであり、好ましくは1〜200gである。
【0032】
予備重合方法としては、連続重合法でもバッチ重合法でもよく、例えば、バッチ式スラリー重合法、連続式スラリー重合法、連続気相重合法である。予備重合を行う重合反応槽に、助触媒担体、メタロセン系錯体、他の助触媒成分(有機アルミニウム化合物などのアルキル化剤など)などの各触媒成分を投入する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で投入する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で投入する方法が用いられる。
【0033】
予備重合において、各触媒成分を重合反応槽に投入する方法としては、得られるエチレン−α−オレフィン共重合体の組成分布を狭くし、耐疲労性を高める観点から、助触媒担体とメタロセン系錯体との接触処理物に他の助触媒成分を接触処理してなる接触処理物が予備重合触媒となるように各触媒成分を投入することが好ましく、例えば、(1)助触媒担体とメタロセン系錯体とを重合反応槽に投入した後、他の助触媒成分を重合反応槽に投入する方法、(2)助触媒担体とメタロセン系錯体とを予め接触させ、該接触により得られた接触処理物を重合反応槽に投入し、次いで、他の助触媒成分を重合反応槽に投入する方法、(3)助触媒担体とメタロセン系錯体とを予め接触させ、該接触により得られた接触処理物を、既に他の助触媒成分が投入されている重合反応槽に投入する方法、(4)助触媒担体とメタロセン系錯体とを接触させた後に、該接触により得られた接触処理物に他の助触媒成分を接触させて、助触媒担体とメタロセン系錯体と他の助触媒成分との接触処理物を予め調製し、次に、該接触処理物を重合反応槽に投入する方法、などがあげられる。また、予備重合での重合温度は、通常、予備重合された重合体の融点よりも低い温度であり、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは10〜70℃である。
【0034】
予備重合をスラリー重合法で行う場合、溶媒としては、炭素数20以下の炭化水素があげられる。例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素があげられ、これらは単独あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0035】
エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合方法が好ましく、例えば、連続気相重合法、連続スラリー重合法、連続バルク重合法であり、好ましくは、連続気相重合法である。該重合法に用いられる気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0036】
予備重合された予備重合固体成分をエチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。
【0037】
エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合の重合温度としては、通常、エチレン系共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。さらに好ましくは90℃よりも低温の具体的には70℃〜87℃の範囲である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加してもよい。そして、混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。なお、予備重合固体成分を用いる場合、適宜、有機アルミニウム化合物等の助触媒成分を用いてもよい。
【0038】
また、本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、発泡性を高めるという観点から、重合により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体を、(1)伸長流動混練ダイ(例えば、Utracki等により開発された米国特許5、451、106号公報に記載されているダイ。)を備えた押出機、(2)ギアポンプを有する異方向二軸スクリューを備えた押出機(スクリュー部からダイまでの間に滞留部があることが好ましい。)などの押出機で、溶融混練処理する工程を有することが好ましい。
【0039】
本発明の発泡シートは、GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる。このような発泡シートは、例えば前記エチレン−α−オレフィン共重合体と、発泡剤とを用いて製造することができる。発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の物理発泡剤や熱分解型発泡剤が使用できるが、熱分解型発泡剤が好ましい。また複数の発泡剤を併用してもよい。
【0040】
物理発泡剤としては、空気、酸素、チッソ、二酸化炭素、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロテトラフルオロエタン等が挙げられる。この中でも二酸化炭素、窒素、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタンまたはイソペンタンを用いることが経済性、安全性の観点から好ましい。
【0041】
熱分解型発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等の無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスブチロニトリル、ニトロジグアニジン、N,N-ジニトロペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセルカルバジド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、5-フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤等が挙げられる。これらの中でもアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを用いることが経済性、安全面の観点から好ましい。
【0042】
熱分解型発泡剤を用いる場合、通常は分解温度が120〜240℃である熱分解型発泡剤が用いられる。分解温度が200℃より高い熱分解型発泡剤を使用する場合には、発泡助剤を併用することにより分解温度を200℃以下に下げて使用することが好ましい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類をあげることができる。
【0043】
熱分解型発泡剤として、熱分解型発泡剤と発泡助剤と樹脂等から構成されるマスターバッチを用いることもできる。マスターバッチに用いられる樹脂の種類は本発明の効果が阻害されなければ特に限定はされないが、発泡シートを構成するエチレン−α−オレフィン共重合体、または高圧法低密度ポリエチレンであることが好ましい。マスターバッチに含有される熱分解型発泡剤および発泡助剤の合計量は、該マスターバッチを構成する樹脂を100重量%とするとき、通常5〜90重量%である。
【0044】
より微細な気泡を有する発泡シートを得るためには、発泡核剤を併用することが好ましい。発泡核剤としてはタルク、シリカ、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミノシリケート、クレー、石英粉、珪藻土類の無機充填剤;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンからなる粒径100μm以下のビーズ;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属塩を例示することができ、これらを2種類以上組み合わせてもよい。
【0045】
発泡剤の量は、発泡シートを製造する際に原料として使用する樹脂組成物に含まれる樹脂成分を100重量部とするとき、0.05〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40である。
【0046】
本発明の発泡シートは、分子量分布が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体が架橋されている発泡シートであってもよい。架橋手段としては公知の方法を挙げることができ、電離性放射線や架橋剤を用いる方法が挙げられる。
【0047】
電離性放射線を照射して架橋を行う場合、エチレン−α−オレフィン共重合体と熱分解型発泡剤とを含む樹脂組成物を、熱分解型発泡剤が分解しない温度で混練し、シート状に押出した後に電離性放射線を照射し、その後オーブンなどで加熱し発泡させる。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが挙げられる。これらのうちコバルト−60のγ線、または電子線が好ましい。
【0048】
架橋剤により架橋を行う場合、エチレン−α−オレフィン共重合体、熱分解型発泡剤および架橋剤を含む樹脂組成物を、熱分解型発泡剤および架橋剤が分解しない温度で混練し、シート状に押出した後にオーブンなどで加熱し発泡させる。架橋剤としては樹脂組成物に含まれる樹脂成分の流動開始温度以上の分解温度を有する有機過酸化物が好適に用いられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α,α−ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどをあげることができる。架橋剤の配合割合は、発泡シートを製造する際に原料として使用する樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量を100重量部として、通常、0.01〜10重量部である。
【0049】
本発明の発泡シートは、分子量分布が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体と、該エチレン−α−オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーとを併用して製造されていてもよい。該熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーとしては、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物などのスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・66などのポリアミド類、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、エチレン・プロピレン共重合ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。好ましい樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。
【0050】
エチレン−酢酸ビニル共重合体と高圧法低密度ポリエチレンの流動の活性化エネルギー(Ea)は、得られる発泡シートの発泡倍率の観点から、好ましくは40kJ/mol以上であり、より好ましくは45kJ/mol以上であり、さらに好ましくは50kJ/mol以上である。また、得られる発泡シートの引張破壊強度の観点から、該Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0051】
エチレン−酢酸ビニル共重合体と高圧法低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、通常、0.1〜60g/10分である。押出機の負荷を低減し、加工しやすくするため、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは0.3g/10分以上であることが好ましい。また、得られる発泡シートの強度の観点から、好ましくは40g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される。
【0052】
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンに基づく単量体単位と、酢酸ビニルに基づく単量体単位とを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体であって、該エチレン−酢酸ビニル共重合体重量を100%としたときの酢酸ビニルに基づく単量体単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルに基づく単量体単位の含有量は、発泡シートの柔軟性を高める観点から、より好ましくは4wt%以上であり、さらに好ましくは5wt%以上である。
【0053】
高圧法低密度ポリエチレンの密度は、発泡シートの軽量性の観点から、好ましくは935kg/m3以下であり、より好ましくは、930kg/m3以下である。また、ベタツキ感の少ない発泡シートが得られることから、好ましくは900kg/m3以上であり、より好ましくは、905kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0054】
エチレン−酢酸ビニル共重合体および高圧法低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、発泡シートの加工性の観点から、通常3以上であり、好ましくは4以上である。また、該分子量分布は、機械強度の観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは17以下であり、更に好ましくは15以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0055】
発泡シートが、分子量分布が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体以外の成分を含む場合、その割合は、発泡シートを構成する樹脂成分を100重量%とするとき、前記エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が90〜10重量%であることが好ましく、90〜25重量%であることがより好ましく、90〜30重量%であることがさらに好ましく、90〜40重量%であることがよりさらに好ましく、90〜50重量%であることが最も好ましい。
【0056】
本発明の発泡シートは、必要に応じ、耐熱安定剤、耐候安定剤、顔料、充填剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
本発明の発泡シートの厚みは、発泡シート強度の観点から、100μm以上であることが好ましい。より好ましくは150μm以上であり、更に好ましくは200μm以上である。また、発泡シートの水蒸気透過度の観点から、500μm以下が好ましく、より好ましくは450μm以下であり、更に好ましくは400μm以下である。
【0058】
発泡シートを製造する原料として、エチレン−α−オレフィン共重合体と、他の樹脂や添加剤とを用いる場合には、これらを予め混練して樹脂組成物として用いることができる。混練においては公知の方法、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合した後、更に単軸押出機や多軸押出機などにより溶融混練する方法、またはニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練する方法などがあり、これらにより樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
本発明の発泡シートは、公知のシート成形方法により成形することができる。公知のシート成形方法としては、例えば、インフレーション成形法、Tダイキャスト成形法等が挙げられる。
【0060】
本発明の発泡シートの製造方法として好ましくは、分子量分布が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体と、分解温度が120〜240℃である熱分解型発泡剤とを含む樹脂組成物をインフレーション成形する方法が挙げられる。
【0061】
本発明により得られる発泡シートは、緩衝材、保温保冷材等に好適に用いられる。本発明の発泡シートは、保温性と水蒸気透過性に優れるため、特に農業用被覆シートとして好適である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例で用いた樹脂組成物は以下の通りである。各物性を表1および表2に示す。
【0063】
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
(1)密度(単位:kg/m3)
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、測定試料は、ブラベンダー社のブラベンダープラストグラフを用いて、160℃、60rpmの条件で混練を行ったものを用いた。ただし測定前にアニーリングは行っていない。
【0064】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。
【0065】
(3)スウェル比(SR)
(2)のメルトフローレートの測定において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、オリフィスから15〜20mm程度の長さで押出したエチレン−α−オレフィン共重合体のストランドを、空気中で冷却し、固体状のストランドを得た。次に、該ストランドの押出し上流側先端から約5mmの位置でのストランドの直径D(単位:mm)を測定し、その直径Dをオリフィス径2.095mm(D0)で除した値(D/D0)を算出し、スウェル比とした。
【0066】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(8)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを求めた。クロマトグラム上のベースラインは、試料溶出ピークが出現するよりも十分に保持時間が短い安定した水平な領域の点と、溶媒溶出ピークが観測されたよりも十分に保持時間が長い安定した水平な領域の点とを結んでできる直線とした。
(1)装置:Waters製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6−HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折計
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0067】
(5)メルトテンション(MT、単位:cN)
東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、190℃の温度および0.32g/分の押出速度で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからエチレン−α−オレフィン共重合体を溶融押出し、該押出された溶融したエチレン−α−オレフィン共重合体を引取ロールにより6.3(m/分)/分の引取上昇速度でフィラメント状に引取り、引取る際の張力を測定した。引取開始からフィラメント状のエチレン−α−オレフィン共重合体が切断するまでの間の最大張力をメルトテンションとした。
【0068】
(6)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.2〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素下
【0069】
(7)発泡シート密度(単位:kg/m3)
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、発泡体試料は、測定前にアニーリングは行っていない。
【0070】
(8)発泡倍率(単位:倍)
上記の(1)密度の方法で求めた樹脂の密度と(7)で求めた発泡シート密度から、下記式により算出した。
発泡倍率=樹脂密度/発泡シート密度
【0071】
(9)発泡シート厚み(単位:μm)
デジタルアップライトダイヤルゲージを用いて発泡シートの少なくとも4箇所以上で厚みを測定し、平均値を求めた。
【0072】
(10)水蒸気透過度(単位:g/m・24h)
JIS Z 0208(カップ法)に準拠して、恒温恒湿装置の条件B(40℃、90%RH)で測定した。
【0073】
[実施例1]
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(PE1)の調製
【0074】
実施例1
(1)固体触媒成分の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。
【0075】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50重量%)1.73kgとヘキサン1.02kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール0.78kgとトルエン1.44kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、22℃に冷却し、H2O0.11kgを反応器の温度を22℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体触媒成分を得た。
【0076】
(2)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付き反応器に、常温下でブタン80リットルを投入し、次に、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド32.4mmolを投入した。その後、反応器内の温度を50℃まで上昇させ、2時間攪拌した。反応器内の温度を30℃まで降温し、エチレンを0.1kg、水素を常温常圧として0.1L投入した。次に、実施例1(1)で調製した、固体触媒成分697 gを投入した。その後、トルエン300mlに溶解したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド2.59mmolを投入した。系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム140mmolを投入して重合を開始した。
【0077】
重合開始後、反応器内の重合温度を30℃で0.5時間運転を行い、その後30分かけて50℃まで昇温して、その後は50℃で重合を行った。最初の0.5時間は、エチレンを0.6kg/hrで供給し、水素を常温常圧として0.7リットル/hrの速度で供給し、重合開始後0.5時間からは、エチレンを3.2kg/hr、水素を常温常圧として9.6リットル/hrの速度で供給し、合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、反応器内圧力を0.6MPaGまでパージし、スラリー状予備重合触媒成分を乾燥器に移送して、窒素流通乾燥を実施して、予備重合触媒成分を得た。該予備重合触媒成分中のエチレン重合体の予備重合量は、粒子状固体触媒成分1g当り21.3gであり、予備重合触媒成分の嵩密度は461kg/m3であった。
【0078】
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体の製造
上記で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を80℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を0.4%、エチレンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ヘキセンモル比を1.6%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−α−オレフィン共重合体(PE1)を得た。得られた共重合体の物性を表1に示した。
【0079】
(4)発泡シートの製造
樹脂成分としてPE(1)100重量部、熱分解型発泡剤(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクMB2022)4重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料をスクリュー径50mmφのインフレーションフィルム成形機に供給し、スクリュー回転数が30rpm、混練部の設定温度が190℃の条件で混練した。また成形機の先端には、外径が125mm、リップのクリアランスが0.8mmのスパイラルダイが設置してあり、該ダイ部の設定温度が160℃、BURが2.0の条件で溶融状態の発泡樹脂を押出した。ピンチロールにより4m/minの速度で引き取り、発泡シートを得た。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例2]
PE1が50重量%、市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製 エバテート F1103−1)[物性を表1に示した。]が50重量%となるように混合したものを樹脂成分100重量部とした以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表2に示す。
【0081】
[比較例1]
樹脂成分としてPE1の替わりに市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製 エバテート F1103−1)を100重量部とした以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
樹脂成分としてPE1の替わりに市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製 エバテート D2011)[物性を表1に示した。]を100重量部とし、ピンチロールの引き取り速度を3m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表2に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
[実施例3]
PE1が75重量%、市販の高圧法低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製 スミカセン G201)[物性を表1に示した。]が25重量%となるように混合したものを樹脂成分100重量部とし、スクリュー回転数を31rpm、ピンチロール引取り速度を3.8m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表3に示す。
【0086】
[実施例4]
PE1が50重量%、市販の高圧法低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製 スミカセン G201)が50重量%となるように混合したものを樹脂成分100重量部とし、スクリュー回転数を31rpm、ピンチロール引取り速度を3.5m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表3に示す。
【0087】
[実施例5]
PE1が25重量%、市販の高圧法低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製 スミカセン G201)が75重量%となるように混合したものを樹脂成分100重量部とし、スクリュー回転数を31rpm、ピンチロール引取り速度を3.5m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表3に示す。
【0088】
[比較例3]
市販の高圧法低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製 スミカセン G201)を樹脂成分100重量部とし、スクリュー回転数を31rpm、ピンチロール引取り速度を3.3m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表3に示す。
【0089】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて得られる、厚さ100〜500μmの発泡シート。
【請求項2】
エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が5以上であり、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体と、分解温度が120〜240℃である熱分解型発泡剤とを含む樹脂組成物をインフレーション成形して得られる請求項1に記載の発泡シート。
【請求項3】
農業用被覆シートである請求項1または2に記載の発泡シート。

【公開番号】特開2011−102379(P2011−102379A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139071(P2010−139071)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】