説明

発泡ブロー成形方法

【課題】発泡倍率の高いプラスチックのブロー成形体を製造する方法を提供する。
【解決手段】プラスチックが発熱性発泡剤を含み、型締め後、第1段階としてパリソン1と金型2,3の間のキャビティ4内の空気を吸引して減圧し、同時に大気に連通するブローピン7からパリソン1内部に空気を吸い込ませて、パリソン1を金型2,3の内面に密着するまで膨らませる。続いて、キャビティ4内の減圧を継続しながら、第2段階としてブローピン7からパリソン1内部の空気を吸引し、パリソン1内部を減圧する。キャビティ4内及びパリソン1内部の減圧状態を維持したままパリソン1を冷却させ、最後に減圧状態を解除し、型開きして製品を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ブロー成形では、発泡剤を混入したプラスチックを押出ダイから押し出し、押し出されたパリソンを一対の金型で挟み、ブローピンからパリソン内部に加圧エアを吹き込んで、ブロー成形を行っている。
発泡剤には、発泡時に化学反応を伴う化学発泡剤と、化学反応を伴わない物理発泡剤があり、前者の例として無機炭酸塩(重曹など)、クエン酸、アゾジカーボンアミド等があり、後者の例として脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、アルコール類、エーテル類、二酸化炭素、窒素、水、炭酸水等がある。
【0003】
パリソンは押出機のダイから押し出された時点で発泡を開始する。発泡ブロー成形では、例えば特許文献1に記載されているように、通常のブロー成形より低い圧力でエアを吹き込んで成形しているが、パリソンが金型の内面に密着すると、エア圧により気泡が潰れて(小さくなって)発泡倍率が低下し、肉厚がブロー前のパリソンの2/3〜1/2に減ってしまうという問題がある。
一方、発泡倍率を低下させないため、加圧エアを吹き込む代わりに、パリソンと金型の間のキャビティ内を吸引して大気圧以下のエア圧に保ち、同時期にパリソン内部の吸引を開始して大気圧以下のエア圧とすることが、例えば特許文献2〜4に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−285964号公報
【特許文献2】特開昭60−11330号公報
【特許文献3】特開2000−280332号公報
【特許文献4】特開2001−18283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
押出機のダイから押し出されたパリソンは高温であり、パリソンの内外表面も高温の空気に包まれているため、押出直後のパリソンでは発泡セルの成長が進行している。一方、型締め後、パリソンと金型の間のキャビティ内の空気を吸引して減圧すると、パリソン周囲の高温の空気が排出され、かつ断熱膨張が行われることにより、パリソン周囲の空気の温度が低下し、さらにパリソンが膨張して金型内面に密着すると、パリソン表面は急激に冷却固化する。このため、型締め後のパリソンの温度が急激に下がり、その結果、発泡セルの増加及び成長が止まり、パリソン内外を大気圧より低いエア圧に保つにも関わらず、パリソンの発泡倍率が十分に上がらない。
【0006】
本発明は、このように型締め後のパリソン内外のエア圧を大気圧以下に保つ発泡ブロー成形方法において、パリソンの発泡倍率を上げ、結果的に発泡倍率の高いプラスチックのブロー成形体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラスチックの発泡ブロー成形方法において、前記プラスチックが発熱性発泡剤を含み、型締め後、第1段階としてパリソンと金型の間のキャビティ内の空気を吸引して減圧し、同時に大気に連通するブローピンからパリソン内部に空気を吸い込ませて、パリソンを前記金型の内面に密着するまで膨らませた後、前記キャビティ内の減圧を継続しながら、第2段階として前記ブローピンからパリソン内部の空気を吸引しパリソン内部を減圧することを特徴とする。
前記第2段階においてパリソン内部の減圧レベルをキャビティ内の減圧レベル以上(より高い真空度)とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラスチックが発熱性発泡剤を含むこと、及び型締め後一度もパリソン内部を大気圧以上に加圧せず、パリソンが金型内面に密着後はパリソン内部を減圧することにより、発熱性発泡剤を用いないブロー成形に比べ、発泡倍率を高くすることができる。
また、型締め後も発泡が一定程度継続することにより、未発泡の発泡剤の残留を少なくすることができ、その結果、2次発泡が生じにくくなり、バリ等をリサイクルした場合でも発泡倍率や肉厚が安定しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る発泡ブロー成形方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る発泡ブロー成形方法において、プラスチック材料は発熱性発泡剤を含む。発熱性発泡剤としては、アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルフォニルヒドラジン、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジン等が挙げられる。発熱性発泡剤とともに、重曹等の他の化学発泡剤や物理発泡剤を併用することもできる。発熱性発泡剤は、押出ダイから押し出されたパリソンの温度を上昇させ、型締め後もパリソンの冷却を防止又は緩和し、若しくは温度を上昇させる作用を有する。
発熱性発泡剤の量が過剰だと、パリソンの発泡時に大きいドローダウンや発泡セルの縦長化が生じ、あるいは未発泡の発泡剤の残留量が多くなる。逆に過少だと発熱量が不足し発泡倍率が向上しない。この観点で適宜の量を添加する。
【0011】
本発明に係る発泡ブロー成形方法では、型締め後、第1段階としてパリソンと金型の間のキャビティ内の空気を吸引して減圧し、同時に大気に連通するブローピンからパリソン内部に空気を吸い込ませて、パリソンを前記金型の内面に密着するまで膨らませる。
なお、本発明のブロー成形方法におけるブローピンは、パリソン内部に加圧エアを吹き込むものではないが、一般的なブロー成形方法におけるブローピンと同様の装置であるので、同じくブローピンと称している。
【0012】
図1に示すように、型締め後、パリソン1と金型2,3の間のキャビティ4内の空気は、金型2,3に形成されたベント穴5から、減圧用配管6を介して、図示しない真空ポンプで吸引され、これにより前記キャビティ4内が減圧される。キャビティ4内の減圧に伴い、ブローピン7からパリソン1内に外気が吸い込まれ、これによりパリソン1がキャビティ4内で膨らみ、ついには金型2,3の内面に密着する。図1は密着する前の状態を示す。前記キャビティ4内の減圧レベルは、例えば0.4気圧以下という高い真空状態であることが望ましい。なお、減圧用配管6及びブローピン7は、図示しない切換弁により大気開放側又は真空ポンプ側に切換可能とされている。
【0013】
キャビティ4内が減圧されることに伴い、パリソン1の外表面を包む高温の空気が排出され、かつキャビティ4内の断熱膨張により、パリソン1の外部の空気の温度が低下する。同時に、パリソン1内部に外気が吸い込まれることにより、パリソン1の内部の空気が外気と混じって冷却する。このようなパリソン1の周囲の空気の温度低下は、いずれもパリソン1の表面の冷却要因である。続いてパリソン1が金型内面に密着すると、パリソン1の外表面は急激に冷却される。
【0014】
一方、パリソン1は発熱性発泡剤を含み、この発熱性発泡剤はパリソン1が図示しない押出ダイから押し出されて以降反応して発熱し、パリソン1の温度を上昇させる作用を有する。このため、発熱性発泡剤の含有量にもよるが、型締め後にもパリソン1の冷却が防止又は緩和され、若しくはパリソン1の温度が上昇する。パリソン1が金型2,3に密着すると、金型2,3の冷却作用は大きいのでパリソン1の外表面(表皮)は直ちに冷却固化し、そこからパリソン1の肉厚内部に冷却が浸透していく。ただし、発熱性発泡剤の発熱作用及び発泡セルの断熱作用により、パリソン1の肉厚内部及び内表面の温度低下は発熱性発泡剤を使用しない場合に比べて緩やかで、パリソン1の発泡がその分継続する。さらに温度低下に伴って及び/又は発泡剤の消費により発泡は停滞、停止する。
【0015】
続いて、本発明に係る発泡ブロー成形方法では、キャビティ4内の減圧をそのまま継続しながら、パリソン1を金型2,3の内面に密着させた状態で、第2段階として、ブローピン7を大気側から図示しない真空ポンプ側に連通させ、ブローピン7からパリソン1内部の空気を吸引しパリソン1内を減圧する。この減圧により、それまでパリソン1内に形成されていた発泡セルが膨張し、かつ潰れることなく維持され、パリソン1のその時点での温度及び発泡剤の残留量によってはさらに発泡が継続し、これにより発泡倍率が向上する。
【0016】
パリソン1内部の減圧レベルは適宜設定できるが、キャビティ4内の減圧レベルと同様になるべく高い真空状態であることが望ましく、必要に応じて、キャビティ4内の減圧レベルと同等又はそれ以上(より高い真空度)とすることができる。仮にパリソン1内部の減圧レベルをキャビティ4内より上げても、パリソン1の外側表皮が金型2,3の内面に密着して冷却固化し、また発泡倍率が上がってパリソン1の肉厚が増し、パリソン1の剛性が上がっていることから、パリソン1が全体として潰れる(ひしゃげる)のを防止することが可能である。
【0017】
キャビティ4内及びパリソン1内部の減圧状態は、パリソン1(製品)が冷却固化し、減圧状態を解除しても発泡セルを現状維持できるようになるまで継続される。続いてキャビティ4内及びパリソン1内部を大気開放し、型開きして製品を取り出す。
【符号の説明】
【0018】
1 パリソン
2,3 金型
4 キャビティ
5 ベント穴
7 ブローピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックの発泡ブロー成形方法において、前記プラスチックが発熱性発泡剤を含み、型締め後、第1段階としてパリソンと金型の間のキャビティ内の空気を吸引して減圧し、同時に大気に連通するブローピンからパリソン内部に空気を吸い込ませて、パリソンを前記金型の内面に密着するまで膨らませた後、前記キャビティ内の減圧を継続しながら、第2段階として前記ブローピンからパリソン内部の空気を吸引しパリソン内を減圧することを特徴とする発泡ブロー成形方法。
【請求項2】
前記第2段階においてパリソン内部の減圧レベルをキャビティ内の減圧レベル以上とすることを特徴とする請求項1に記載された発泡ブロー成形方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−817(P2012−817A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136622(P2010−136622)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(390040958)みのる化成株式会社 (36)
【Fターム(参考)】