説明

発泡充填用組成物、発泡充填部材および充填用発泡体

【課題】発泡倍率を低下させることなく、発泡後の臭気を低減させることができる発泡充填用組成物、その発泡充填用組成物を備える発泡充填部材、および、発泡倍率の低下が少なく、臭気が低減された充填用発泡体を提供すること。
【解決手段】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを配合して、発泡充填用組成物を調製する。得られた充填発泡用組成物に、取付部材を装着して、中空部材の内部空間に取り付けるための充填発泡部材を作製する。そして、充填発泡部材を中空部材の内部空間に取り付けて、加熱により、発泡させて、充填用発泡体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の部材の間や中空部材の内部空間などを充填するために用いられる充填用発泡体、および、その充填用発泡体を形成するための発泡充填部材および発泡充填用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のピラーなどの閉断面として形成される中空部材には、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを防止するために、充填材として発泡体を充填することが知られている。
【0003】
このような発泡体を形成するための発泡充填用組成物として、例えば、発泡性ポリマー、発泡剤および塩基性酸化物を含有する充填発泡用組成物が提案されており、これを加熱して発泡させることにより、中空部材の内部空間を充填している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−97586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記した特許文献1に記載の充填発泡用組成物では、発泡剤として、スルホニルヒドラジド化合物やアゾ化合物を使用している。
【0006】
そのため、このような充填発泡用組成物を加熱すると、発泡剤が分解して、アンモニアなどの臭気を有するガスが発生し、中空部材から漏れ出す場合がある。
【0007】
一方、発泡剤に起因する臭気を低減させるために、炭酸水素ナトリウムのような、臭気を有するガスを発生させない無機系発泡剤を使用することが検討される。
【0008】
しかし、無機系発泡剤では、発泡性ポリマーを高発泡倍率で発泡させることが困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、発泡倍率を低下させることなく、発泡後の臭気を低減させることができる発泡充填用組成物、その発泡充填用組成物を備える発泡充填部材、および、発泡倍率の低下が少なく、臭気が低減された充填用発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の発泡充填用組成物は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを含有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の発泡充填用組成物は、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴムが、ジエン成分としてビニル基含有ノルボルネンを含有していることが好適である。
【0012】
また、本発明の発泡充填用組成物は、前記SiH基含有化合物が、1分子あたり6つ以上のSiH基を含有していることが好適である。
【0013】
また、本発明の発泡充填部材は、前記発泡充填用組成物と、前記発泡充填用組成物に装着され、中空部材の内部空間に取り付け可能な取付部材とを備えることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の充填用発泡体は、前記発泡充填用組成物を発泡させることによって得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発泡充填用組成物によれば、エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを含有している。
【0016】
そのため、発泡倍率を低下させることなく、発泡充填用組成物を加熱したときに、アンモニアなどの臭気を有するガスの発生を抑制することができる。
【0017】
その結果、本発明の発泡充填用組成物および発泡充填部材では、発泡倍率を低下させることなく、臭気が低減された充填用発泡体を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の充填発泡用組成物、充填発泡部材および充填用発泡体を用いて、自動車のピラーの内部空間を充填する方法の一実施形態の工程図であって、(a)は、充填発泡用組成物に取付部材を装着して充填発泡部材を作製し、これをピラーに設置する工程、(b)は、加熱により充填発泡用組成物を発泡、架橋および硬化させることにより、充填用発泡体によってピラーの内部空間を充填する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発泡充填用組成物は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを必須成分として含有するポリマーと、必須成分として、架橋剤としてのSiH基含有化合物と、発泡剤としての炭酸水素アルカリ金属塩とを含有している。
【0020】
ポリマーは、必須成分として、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有している。
【0021】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、エチレンと、プロピレンと、二重結合を有するジエン成分との共重合体である。
【0022】
ジエン成分としては、例えば、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなど、末端にビニル基を有するビニル基含有ノルボルネン、例えば、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど、ビニル基以外の不飽和炭化水素基を含有する環状ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの鎖状ジエンが挙げられ、好ましくは、ビニル基含有ノルボルネンが挙げられる。
【0023】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムのエチレン含量は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム中において、例えば、40〜80重量%、好ましくは、50〜60重量%である。
【0024】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムのジエン成分含量は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム中において、例えば、0.25〜7.0重量%、好ましくは、1.0〜5.0重量%である。
【0025】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムのヨウ素化(JIS K 0070)は、例えば、0.7〜15g/100g、好ましくは、2.5〜12g/100gである。
【0026】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムのムーニー粘度(ML1+4、at100℃)は、例えば、20〜60、好ましくは、30〜50である。
【0027】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、10〜50重量部、好ましくは、20〜40重量部の割合で配合される。
【0028】
また、ポリマーは、任意成分として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム以外に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系ポリマーなどを含有してもよい。
【0029】
ポリマーの任意成分は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、ポリマーの任意成分は、その目的および用途により、適宜選択し、配合することができる。
【0030】
ポリマーの任意成分は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、2〜15重量部、好ましくは、5〜10重量部の割合で配合される。また、ポリマーの任意成分は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、5〜50重量部、好ましくは、10〜30重量部の割合で配合される。
【0031】
SiH基含有化合物は、SiH基(すなわち、ケイ素原子に直結した水素原子)を含有しており、エチレン・プロピレン・ジエンゴムと反応し、架橋剤として作用する。SiH基含有化合物の分子構造は、特に限定されず、例えば、線状、環状、分岐状構造、三次元網目状構造などが挙げられる。
【0032】
SiH基含有化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
【0033】
一般式(1):
SiO(4−b−c)/2
(式中、Rは、脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1〜10の置換または非置換の1価炭化水素基を示す。)
一般式(1)において、bは、例えば、0≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、より好ましくは1.5≦b≦2である。
【0034】
一般式(1)において、cは、例えば、0<c≦3、好ましくは0.002≦c<2、より好ましくは、0.01≦c≦1である。
【0035】
また、一般式(1)において、b+cは、例えば、0<b+c≦3、好ましくは、1.5<b+c≦2.7である。
【0036】
一般式(1)においてRで示される1価炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基、例えば、上記アルキル基の水素原子が臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などのハロゲン原子に置換された炭素数1〜10の直鎖または分岐ハロゲノアルキル基、例えば、フェニル基などのアリール基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1〜3の直鎖アルキル基、トリフロロプロピル基、フェニル基、より好ましくは、メチル基、フェニル基が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)で示されるSiH基含有化合物としては、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサンなどのシロキサンオリゴマー、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、例えば、RHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、任意にRSiO1/2単位、RSiO2/2単位、RHSiO2/2単位、HSiO3/2またはRSiO3/2単位を含有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0038】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0039】
一般式(2):
SiO−(SiHRO)−SiR
(式中、dは、2以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0040】
一般式(3):
SiO−(SiRO)−(SiHRO)−SiR
(式中、eは、1以上の整数であり、fは、2以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0041】
一般式(4):
HOSiRO−(SiHRO)−SiROH
(式中、Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0042】
一般式(5):
HOSiRO−(SiRO)−(SiHRO)−SiROH
(式中、eは、1以上の整数であり、fは、2以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
【0043】
一般式(6):
HSiRO−(SiRO)−SiR
(式中、eは、1以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
【0044】
一般式(7):
HSiRO−(SiHRO)−SiR
(式中、eは、1以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下記一般式(8)で示される化合物が挙げられる。
【0045】
一般式(8):
HSiRO−(SiRO)−(SiHRO)−SiR
(式中、eおよびhは、それぞれ1以上の整数である。Rは、上記一般式(1)のRと同意義を示す。)
SiH基含有化合物のSiH基含有量は、SiH基含有化合物1分子中に、例えば、2個以上、好ましくは、架橋密度を向上させる観点から、6個以上、より好ましくは、8〜15個、より一層好ましくは、10〜12個である。
【0046】
SiH基含有化合物は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、1〜5重量部、好ましくは、2〜4重量部の割合で配合される。また、SiH基含有化合物は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、5〜20重量部、好ましくは、8〜15重量部の割合で配合される。
【0047】
炭酸水素アルカリ金属塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0048】
炭酸水素アルカリ金属塩は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、5〜20重量部、好ましくは、10〜15重量部の割合で配合される。また、炭酸水素アルカリ金属塩は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、20〜70重量部、好ましくは、35〜60重量部の割合で配合される。
【0049】
本発明の発泡充填用組成物は、上記した必須成分の他に、任意成分として、触媒、架橋抑制剤、充填材、軟化剤、滑剤などを含有することができる。
【0050】
触媒は、付加反応触媒であって、エチレン・プロピレン・ジエンゴムの不飽和二重結合への、SiH基含有化合物のSiH基の付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素よりなる付加反応触媒(周期律表8族金属、8族金属錯体、8族金属化合物等の8族金属系触媒)、例えば、ルイス酸、例えば、コバルトカルボニルなどが挙げられ、好ましくは、白金系触媒が挙げられる。
【0051】
白金系触媒としては、例えば、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−トリフェニルフォスフィン錯体、白金−アルコール錯体、アルミナやシリカなどの担体に白金を担持させたものなどが挙げられ、好ましくは、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−トリフェニルフォスフィン錯体が挙げられる。
【0052】
触媒は、白金として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、0.01〜0.3重量部、好ましくは、0.15〜0.25重量部の割合で添加される。触媒を、白金として、0.3重量部を超える割合で添加すると、コストが高くなる。
【0053】
架橋抑制剤としては、例えば、エチニルシクロヘキサノール、アセチルアルコール、2−メチル−3−ブチン−2−オールなどのアルコール、例えば、マレイン酸ジメチルなどのエステル化合物、例えば、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−p−フタル酸ジアミドなどのアミド化合物、例えば、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、その他、例えば、アクリロニトリル、ベンゾトリアゾール、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0054】
架橋抑制剤は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、001〜1重量部、好ましくは、0.1〜0.3重量部の割合で添加される。架橋抑制剤の添加量が、1重量部より多いと、発泡充填用組成物を発泡させた発泡体が架橋しにくくなり、高い発泡倍率を得ることが困難になる場合がある。架橋抑制剤の添加量が、0.01重量部より少ないと、発泡充填用組成物を発泡させた発泡体の架橋反応が速くなり、高い発泡倍率を得ることが困難になる場合がある。
【0055】
充填材としては、例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラック、例えば、シランカップリング剤などにより表面処理が施されている上記カーボンブラック、例えば、微粉ケイ酸、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカなどのシリカ、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレ
ーなどが挙げられる。
【0056】
充填材は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、充填材の配合量は、その目的および用途により、適宜選択することができる。
【0057】
充填材は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、0〜70重量部、好ましくは、30〜60重量部の割合で配合される。また、充填材は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、0〜200重量部、好ましくは、100〜180重量部の割合で配合される。
【0058】
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、例えば、コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤、例えば、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、例えば、トール油、例えば、サブ、例えば、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、例えば、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩、例えば、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質が挙げられ、好ましくは、石油系軟化剤が挙げられる。
【0059】
軟化剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、軟化剤の配合量は、その目的および用途により、適宜選択することができる。
【0060】
軟化剤は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、0〜50重量部、好ましくは、10〜30重量部の割合で配合される。また、軟化剤は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、0〜120重量部、好ましくは、50〜100重量部の割合で配合される。
【0061】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸やそのエステル類などが挙げられる。滑剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、滑剤の配合量は、その目的および用途により、適宜選択することができる。
【0062】
滑剤は、発泡充填用組成物100重量部中に、例えば、0.01〜1重量部、好ましくは、0.1〜0.5重量部の割合で配合される。また、滑剤は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部の割合で配合される。
【0063】
また、本発明において、発泡充填用組成物には、例えば、発泡助剤、その他の架橋剤、加工助剤、安定剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防カビ剤、難燃剤など、公知の添加剤を適宜含有させることができる。
【0064】
そして、本発明の発泡充填用組成物は、上記した各成分を、上記した配合量において配
合し、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などに
よって、発泡剤の分解が少ない温度条件下で、混練して、混練物として調製することがで
きる。
【0065】
また、この調製においては、得られた混練物のフローテスター粘度(60℃、40Kg荷重)が、例えば、1×10〜1×10Pa・s、好ましくは、2×10〜5×10Pa・sとなるように調製する。混練物の粘度を、このような範囲とすることによって、混練物を、適正な体積発泡倍率(後述)で発泡させることができる。
【0066】
さらに、この調製においては、得られた混練物を、所定形状に成形することにより予備成形物(プリフォーム)として調製することもできる。
【0067】
混練物の成形は、特に限定されないが、例えば、混練物を、ペレタイザーなどによってペレット化し、このペレットを発泡剤の分解が少ない温度条件下で、射出成形機または押出成形機などによって所定形状に成形するか、あるいは、カレンダー成形やプレス成形によって、直接、所定形状に成形すればよい。
【0068】
そして、このようにして調製される本発明の充填発泡用組成物を、適宜の条件下で加熱して、発泡、架橋および硬化させることにより、本発明の充填用発泡体を形成することができる。
【0069】
このようにして得られる本発明の充填用発泡体は、その密度(発泡体の重量(g)/発泡体の体積(g/cm))が、例えば、0.05〜0.8g/cm、好ましくは、0.08〜0.2g/cmであり、また、発泡時の発泡倍率(体積発泡倍率)が、例えば、1.5倍以上、好ましくは、2〜15倍である。このような発泡倍率であれば、中空部材の内部空間を、たとえその内部空間が複雑な形状であっても、充填用発泡体によって隙間なく充填することができる。
【0070】
また、このようにして得られる本発明の充填用発泡体は、各種の部材に対する、補強、制振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密など、種々の効果を付与することができるので、各種の部材の間や中空部材の内部空間に充填する、例えば、補強材、防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材など、各種の産業製品の充填材として、好適に用いることができる。
【0071】
なお、各種の部材の間や中空部材の内部空間に充填するには、特に限定されないが、例えば、隙間の充填を目的する部材の間や中空部材の内部空間に、充填発泡用組成物を設置して、その後、設置された充填発泡用組成物を加熱し、発泡、架橋および硬化させることにより充填用発泡体を形成し、その充填用発泡体によって、部材の間や中空部材の内部空間を充填すればよい。
【0072】
より具体的には、例えば、中空部材の内部空間を充填する場合には、まず、充填発泡用組成物に取付部材を装着して充填発泡部材を作製し、その充填発泡部材の取付部材を、中空部材の内部空間に取り付けた後、加熱により発泡させて、充填用発泡体を形成すれば、その充填用発泡体によって、中空部材の内部空間を充填することができる。
【0073】
そのような中空部材としては、自動車のピラーを例示することができ、本発明の充填発泡用組成物から、充填発泡部材を作製して、ピラーの内部空間に取り付けた後、発泡させれば、充填用発泡体により、ピラーの補強を十分に図りつつ、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを有効に防止することができる。
【0074】
次に、本発明の充填発泡用組成物、充填発泡部材および充填用発泡体の実施態様の一例
として、これらを用いて自動車のピラーの内部空間を充填する方法について説明する。
【0075】
この方法では、まず、図1(a)に示すように、所定形状に成形された充填発泡用組成物1をピラー2内に設置する。充填発泡用組成物1をピラー2内に設置するには、例えば、取付部材3を充填発泡用組成物1に取り付けて、充填発泡部材Pを作製し、その充填発泡部材Pの取付部材3をピラー2の内周面に取り付ければよい。取付部材3を充填発泡用組成物1に取り付けるには、例えば、取付部材3を、成形された充填発泡用組成物1に取り付ける他、充填発泡用組成物1の成形時に混練物とともにインサート成形してもよい。また、取付部材3をピラー2の内周面に取り付けるには、例えば、ピラー2の内周面に係止溝を形成して、取付部材3を差し込むことにより係止させるか、あるいは、取付部材3を吸盤または磁石などから構成して、吸着または磁力により固定するか、さらには、取付部材3を金属板から構成して、溶接により取り付ければよい。
【0076】
また、この取り付けにおいては、取付部材3によって、充填発泡用組成物1とピラー2の内周面とが間隔を隔てて配置されるように、つまり、充填発泡用組成物1が防錆処理前のピラー2の内周面と直接接触しないように対策される。
【0077】
なお、このピラー2は、断面略凹状のインナパネル4およびアウタパネル5から構成されており、まず、充填発泡用組成物1をインナパネル4に設置した後に、これらインナパネル4およびアウタパネル5の両端部を対向当接させて、溶接により接合することによって、閉断面として形成される。なお、このようなピラー2は、より具体的には、車両ボディのフロントピラー、サイドピラーあるいはリヤピラーとして用いられる。
【0078】
その後、この方法では、ピラー2の内周面に、防錆処理を施した後に、図1(b)に示すように、例えば、その後の焼付塗装時の乾燥ライン工程での加熱(例えば、110〜190℃)によって、充填発泡用組成物1を発泡、架橋および硬化させることにより充填用発泡体6を形成し、この充填用発泡体6によってピラー2の内部空間を隙間なく充填する。
【0079】
なお、充填発泡用組成物1の形状、設置位置、配置方向および配置数などは、ピラー2の形状などに応じて適宜選択される。
【0080】
そして、このような本発明の発泡充填用組成物によれば、エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを含有している。
【0081】
そのため、発泡倍率を低下させることなく、発泡充填用組成物を加熱したときに、アンモニアなどの臭気を有するガスの発生を抑制することができる。
【0082】
その結果、本発明の発泡充填用組成物および発泡充填部材では、発泡倍率を低下させることなく、臭気が低減された充填用発泡体を成形することができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例、および、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(発泡充填用組成物の調製)
各実施例および各比較例の発泡充填用組成物を、表1に示す配合処方によって調製した。具体的には、まず、ポリマーとしてエチレン・プロピレン・ジエンゴムおよびポリエチレンと、充填材と、軟化剤と、滑剤と、架橋抑制剤と(比較例2においては、さらに、発泡助剤と)を、1Lの加圧ニーダーを用いて120℃で混練し、室温まで冷却した。次いで、架橋剤、触媒および発泡剤を添加し、6インチのミキシングロールを用いて、60℃で混練した。その後、60℃のプレス機でプレス成形し、厚み3mmのシート状に成形し、各実施例および各比較例の発泡充填用組成物を得た。
(発泡充填用組成物の発泡)
得られた各実施例および各比較例の発泡充填用組成物を、50mm×50mmの正方形に切り出し、オーブンを用いて、160℃で20分間加熱し、発泡させて、各実施例および各比較例の発泡体を得た。
(発泡倍率の測定、および、臭気の確認)
得られた各実施例および各比較例の発泡体の体積発泡倍率を、体積発泡倍率=発泡前の密度/発泡後の密度、から算出した。
【0084】
また、得られた各実施例および各比較例の発泡体の臭気について、試験者の嗅覚による官能試験を実施した。
【0085】
これらの結果を表1中に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
*1 EPDM:エチレン・プロピレン・ジエンゴム
(三井化学社製、ジエン成分:5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、エプタイロPX−052、ムーニー粘度(ML1+4、at100℃):38、VNB含量:1.5重量%、ヨウ素価:4g/100g)
*2 EPDM:エチレン・プロピレン・ジエンゴム
(三井化学社製、ジエン成分:5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、エプタイロPX−046、ムーニー粘度(ML1+4、at100℃):44、VNB含量:4.5重量%、ヨウ素価:10g/100g)
*3 ミラソン67(三井化学社製)
*4 #50(旭カーボン社製)
*5 重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)
*6 プロセスオイルPW−380(出光興産社製)
*7 粉末ステアリン酸(日本油脂社製)
*8 セルボンFE−507(永和化成工業社製)
*9 OBSH:4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)
(セルマイクSX、三協化成社製)
*10 ADCA:アゾジカルボンアミド
(ビニホールAC#LQ、永和化成工業社製)
*11 セルペーストK5(永和化成工業社製)
*12 SiH基含有化合物
(信越化学社製、SiH基含有量:12個/1分子)
*13 SiH基含有化合物
(信越化学社製、SiH基含有量:6個/1分子)
*14 SiH基含有化合物
(信越化学社製、SiH基含有量:3個/1分子)
*15 白金系触媒(三井化学社製)
*16 アセチルアルコール(信越化学社製)
表1から、エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを含有した各実施例は、ほとんど臭気を有さず、しかも、各比較例と比べて、発泡倍率が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 充填発泡用組成物
6 充填用発泡体
P 充填発泡部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムと、架橋剤としてSiH基含有化合物と、発泡剤として炭酸水素アルカリ金属塩とを含有することを特徴とする、発泡充填用組成物。
【請求項2】
前記エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、ジエン成分としてビニル基含有ノルボルネンを含有していることを特徴とする、請求項1に記載の発泡充填用組成物。
【請求項3】
前記SiH基含有化合物は、1分子あたり6つ以上のSiH基を含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の発泡充填用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発泡充填用組成物と、前記発泡充填用組成物に装着され、中空部材の内部空間に取り付け可能な取付部材とを備えることを特徴とする、発泡充填部材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の発泡充填用組成物を発泡させることによって得られることを特徴とする、充填用発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−144226(P2011−144226A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4390(P2010−4390)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】