説明

発泡性エアゾール組成物

【課題】本発明は、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡し、さらに泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制できる発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】界面活性剤を含有する水性原液70〜98重量%、沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテル0.5〜20重量%、および沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素0.5〜10重量%を含有する発泡性エアゾール組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。詳細には、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡するものであり、また泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制できる発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シェービングフォーム等のエアゾール組成物として、水性原液および液化ガスからなる発泡性エアゾール組成物が種々開発されている。これらの発泡性エアゾール組成物としては、ゲル状の状態で吐出され、ゲルを指で塗り伸ばすと徐々に発泡する後発泡性エアゾール組成物が知られている。
【0003】
後発泡性エアゾール組成物としては、例えば、ゲル化剤、界面活性剤、水、後発泡剤、有効成分およびアルコール類からなり、常温大気圧下で少なくとも30秒間ゲル状を保ち、かつ、せん断応力を加えると発泡し、さらにせん断応力をかけ続けると短時間で消泡する、後発泡性ゲル組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。後発泡剤としては、イソペンタンおよびノルマルペンタンから選ばれる成分80重量%以上と、イソブタン、ノルマルブタン、プロパンおよびジメチルエーテルから選ばれる成分20重量%以下からなるものが開示されている。
【0004】
また、水、石鹸、後発泡剤および特定の高級アルコールを含有する後発泡性エアゾール組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。該後発泡性エアゾール組成物は、エアゾール容器からゲル状物質の状態で吐出され、その後徐々に発泡してフォームを形成するものである。後発泡剤としては、沸点が−0.5〜36.5℃である低沸点有機液体が開示されており、具体的には、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルブタンが開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1、2の後発泡性エアゾール組成物に用いられる後発泡剤としては、炭素数が3〜5個の脂肪族炭化水素やジメチルエーテルが開示されているが、実施例においては、イソペンタン、n−ペンタン、または、イソペンタンを主成分とするイソペンタンとn−ブタンの混合物が用いられているのみである。該炭素数が5個の脂肪族炭化水素の沸点は約28〜36℃であるため、実施例で用いられているような後発泡剤は、吐出直後は液体状態でゲルに分散しており、吐出したゲルに指でせん断を加えたり、皮膚からの熱により気化して発泡するものである。そのため一般的なゲルに比べて皮膚上で塗り伸ばしやすい、というメリットがあるものの、前述の脂肪族炭化水素はほとんどが皮膚上で気化するため刺激が強いという問題があった。さらに、ゲル状で吐出するため、エアゾール組成物を吐出する吐出部材の通路内にゲルが残りやすく、残ったゲルが後で発泡するアフタードローが発生し、吐出部材を汚すなどの問題があった。
【0006】
また、陰イオン性界面活性剤を含有した水性原液と液化ガスとが特定の割合で乳化したエアゾール組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。該エアゾール組成物は、脂肪酸のケン化物等の陰イオン性界面活性剤を含有する水性原液を用いるものであり、泡状で吐出され、経時的に泡の形状が変化する(増大する)ものである。また、液化ガスとしては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、フロン類が開示されており、その20℃での蒸気圧が0.1〜0.5MPaであることが好ましいことが開示されている。
【0007】
しかし、特許文献3のエアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとの重量比が10/90〜60/40であり、液化ガスの割合が高いため、泡の比重が0.001〜0.005g/mlと非常に軽いものとなり、皮膚や頭髪上では塗り伸ばしにくいという問題があった。
【0008】
したがって、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡し、さらに泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制でき、かつ皮膚への刺激がほとんどない発泡性エアゾール組成物はいまだ無いのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平3−31389号公報
【特許文献2】特開平7−163861号公報
【特許文献3】特開2003−81763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡し、さらに泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制でき、かつ皮膚への刺激がほとんどない発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、界面活性剤を含有する水性原液70〜98重量%、沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテル0.5〜20重量%、および沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素0.5〜10重量%を含有する発泡性エアゾール組成物に関する。
【0012】
界面活性剤の配合量が、水性原液中0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0013】
脂肪族炭化水素の20℃での蒸気圧が、0.4〜0.7MPaであることが好ましい。
【0014】
ハイドロフルオロエーテルと脂肪族炭化水素との配合比が、30/70〜90/10(重量比)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発泡性エアゾール組成物は、界面活性剤を含有する水性原液、沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテル、および沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素を特定の割合で含有することにより、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡するため塗り伸ばしやすく、さらに泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制できるものである。また、皮膚への刺激がほとんどないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発泡性エアゾール組成物は、界面活性剤を含有する水性原液70〜98重量%、沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテル0.5〜20重量%、沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素0.5〜10重量%を含有することにより、泡状で吐出することができ、泡を指などで塗り伸ばすと徐々に起泡するため塗り伸ばしやすく、さらに泡状で吐出するため吐出部材の通路内に残る量が少なく、アフタードローを抑制でき、かつ皮膚への刺激がほとんどないものである。
【0017】
(A)水性原液
前記水性原液は、エアゾール容器内部では後述するハイドロフルオロエーテルと脂肪族炭化水素と乳化しており、大気中に吐出されると脂肪族炭化水素やハイドロフルオロエーテルの気化により起泡して泡(フォーム)を形成し、泡の液膜部分となる。
【0018】
水性原液の配合量は、エアゾール組成物中70〜98重量%であり、75〜95重量%であることが好ましい。水性原液が70重量%未満であると泡密度が小さくなりすぎ、使いにくくなる傾向があり、98重量%よりも多いと起泡が不充分で液密度が大きくなりすぎ、特に低温時はほとんど起泡せずに液状になる傾向がある。
【0019】
前記水性原液には、ハイドロフルオロエーテルと脂肪族炭化水素と乳化させるために、界面活性剤を含有している。
【0020】
前記界面活性剤としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル、ラウリルグルコシド、デシルグルコシドなどのアルキルポリグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、デカなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルキロールアミド、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などの非イオン性界面活性剤や、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの炭素数が10〜20個の脂肪酸を、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤でケン化した脂肪酸石鹸、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩;N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN−アシルグリシン塩;N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニントリエタノールアミンなどのN−アシルアラニン塩;などのアミノ酸石鹸、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体などの高分子乳化剤(前記アルカリ剤で中和したものを含む)、などがあげられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ハイドロフルオロエーテルとの乳化安定性に優れている点から、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸アルキロールアミド、脂肪酸石鹸、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
【0021】
前記界面活性剤の配合量は、水性原液中0.1〜20重量%であることが好ましく、0.1〜15重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%であることがさらに好ましく、1〜10重量%であることが特に好ましい。前記界面活性剤の配合量が0.1重量%未満であると乳化力および起泡力が弱くなり、吐出時に安定した泡を形成しにくくなる傾向があり、20重量%より多いとべたつき感が強くなる、乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下する傾向がある。
【0022】
前記水性原液は、前記界面活性剤とともに、用途や目的などに応じて有効成分、アルコール類、水溶性高分子、油性成分、粉末などを適宜選択し、水に配合することにより調製することができる。
【0023】
前記有効成分は、用途や目的などに応じた効果を付与するために用いられる。前記有効成分としては、例えば、アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、グルタミンなどのアミノ酸;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、およびこれらの混合物などのビタミン;l−メントール、カンフルなどの清涼剤;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン・メタクリルアミド・N−ビニルイミダゾール共重合体などのノニオン性ポリマー、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(ポリクオタニウム11)、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体メチル硫酸塩などの他のカチオン性ポリマーなどのスタイリング成分;サリチル酸メチル、カンフル、ジフェンヒドラミン、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェン、クロタミトンなどの消炎鎮痛剤;アラントイン、グリチルレチン酸、アズレンなどの抗炎症剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤;塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェミラミンなどの抗ヒスタミン剤;フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料;パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノールなどの防腐剤などがあげられ、これらを用途や目的などに応じて単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
前記有効成分の配合量は、水性原液中0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。前記有効成分の配合量が0.1重量%未満であると有効成分濃度が低くなるため所望の効果を得るためには使用量が多くなる傾向があり、20重量%より多いと、有効成分濃度が高くなりすぎ、使用上限を超えて塗布しやすくなる。
【0025】
前記アルコール類は、起泡状態や泡の持続性、消泡性などの発泡性を調整するためや、水に溶解しにくい有効成分などを配合するためなどの目的で用いられる。
【0026】
前記アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの2〜3価のアルコールがあげられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、吐出時の起泡性および泡の持続性に優れ、さらにハイドロフルオロエーテルにより起泡しやすい点から、2〜3価のアルコールが好ましい。
【0027】
前記アルコール類を配合する場合の配合量は、水性原液中0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜25重量%であることがより好ましい。アルコール類の配合量が0.5重量%未満であると、アルコール類を配合する効果が得られにくい傾向があり、30重量%よりも多いと、起泡しにくくなるなど、発泡性が低下しやすくなる傾向がある。
【0028】
前記水溶性高分子は、水性原液の粘度を調整して、脂肪族炭化水素やハイドロフルオロエーテルとの乳化を安定化する、泡の硬さや弾力性、持続性、消泡性を調整するなどの目的で用いられる。
【0029】
前記水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトルセルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース類;キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアガムなどのガム類;寒天、デキストリン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどがあげられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
前記水溶性高分子を配合する場合の配合量は、水性原液中0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがより好ましい。水溶性高分子の配合量が0.01重量%未満であると、水性原液の粘度を調整する効果が得られにくい傾向があり、5重量%よりも多いと、水性原液の粘度が高くなりすぎ、脂肪族炭化水素やハイドロフルオロエーテルとの乳化が困難になるなど、取り扱いにくくなる傾向がある。
【0031】
前記油性成分は、肌触りを良くする、すべりや櫛通りを良くする、保湿性を向上させる、ツヤを出すなど、使用感を向上させる目的で用いられる。
【0032】
前記油性成分としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン・ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン・フェニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン・コポリオールクロスポリマーなどのシリコーンエラストマー;スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、イソパラフィンなどの液状の炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸などの脂肪酸;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール;アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂;ミツロウ、ラノリンロウ、キャンデリラロウ、パラフィンワックスなどのロウ類などがあげられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。なお、前記油性成分のうち常温で固体であるものを用いることで泡の硬さや弾力性、持続性を調整することができる。
【0033】
前記油性成分を配合する場合の配合量は、水性原液中0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。油性成分の配合量が0.1重量%未満であると、油性成分の配合効果が得られにくい傾向があり、10重量%よりも多いと、水性原液が分離しやすく、さらに水性原液と脂肪族炭化水素、ハイドロフルオロエーテルとが分離しやすくなる傾向がある。
【0034】
前記水は水性原液の主溶媒であり、水としては、例えば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。なお、水に前記アルコール類を添加して水性溶媒として用いてもよい。
【0035】
水の配合量は、水性原液中60〜98重量%であることが好ましく、70〜95重量%であることがより好ましい。水の配合量が60重量%未満であると、起泡性および泡の安定性が低下しやすい傾向があり、98重量%よりも多いと、界面活性剤や他の成分の配合量が少なくなって、所望の効果が得られにくい傾向がある。
【0036】
前記水性原液は、界面活性剤や有効成分などを水に配合することにより調製することができる。なお、水に溶解しにくい、あるいは水に溶解しない有効成分や油性成分などは、アルコール類に可溶化してから添加してもよく、原液の状態で水と乳化させてもよい。
【0037】
(B)ハイドロフルオロエーテル
前記沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテルは、泡を塗り伸ばしたときに大部分が気化して起泡を継続させる、刺激を低下させて、感じないようにするなどの目的で用いられ、例えば、メチルパーフルオロブチルエーテル(沸点61℃)、エチルパーフルオロブチルエーテル(沸点76℃)、およびこれらの混合物などがあげられる。これらの中でも、泡を塗り伸ばしたときに起泡を継続させやすい点からメチルパーフルオロブチルエーテルが好ましい。
【0038】
前記ハイドロフルオルエーテルの沸点は50〜80℃であり、60〜80℃であることが好ましい。沸点が50℃未満であると、体温や外気温により気化しやすくなり刺激が強くなる傾向があり、80℃よりも高いと、指などでマッサージしても気化しにくくなり起泡が継続しにくい傾向がある。
【0039】
前記ハイドロフルオロエーテルの配合量は、エアゾール組成物中0.5〜20重量%であり、1〜20重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましい。ハイドロフルオロエーテルの配合量が0.5重量%未満であると、起泡が持続しにくくなる傾向があり、20重量%よりも多いと、起泡の持続が長くなりすぎ、逆に泡が消えにくくなる傾向がある。
【0040】
(C)脂肪族炭化水素
前記沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素は、吐出時に気化してエアゾール組成物を泡状で吐出するために用いられる。沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素を含むことで、泡状で吐出することができるためアフタードローを抑制することができる。
【0041】
前記脂肪族炭化水素の沸点は、−50〜5℃であるが、−50〜0℃であることが好ましく、−45〜−5℃であることがより好ましい。脂肪族炭化水素の沸点が−50℃未満であると、蒸気圧が高くなりすぎ、吐出時に飛散しやすくなる傾向があり、5℃よりも高いと、皮膚の表面温度や周囲の温度により皮膚上で気化しやすく、皮膚への刺激が強くなる傾向がある。
【0042】
沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン(沸点−42.0℃)、ノルマルブタン(沸点−0.5℃)、イソブタン(沸点−11.7℃)などの炭素数が3〜4個の脂肪族炭化水素、およびこれらの混合物などがあげられる。
【0043】
なお、脂肪族炭化水素は前記成分を混合して所望の蒸気圧に調整され、特に吐出時の起泡性および発泡の継続性に優れる点から、20℃での蒸気圧が0.4〜0.7MPaであるものを用いることが好ましく、0.45〜0.6MPaであるものを用いることがより好ましい。なお、脂肪族炭化水素が前記蒸気圧の範囲内になるよう調整するために、プロパンを脂肪族炭化水素中40〜90重量%、さらには45〜80重量%含有するものが好ましい。
【0044】
前記脂肪族炭化水素の配合量は、エアゾール組成物中0.5〜10重量%であり、1〜8重量%であることが好ましい。脂肪族炭化水素の配合量が0.5重量%未満であると、吐出時の起泡性が小さく泡密度が大きくなるため泡状で吐出しにくく、またアフタードローが多くなりやすい傾向がある。10重量%よりも多いと、起泡性が大きく泡密度が小さくなるため粗い泡になり、さらに起泡が継続しにくくなる傾向がある。
【0045】
なお、前記ハイドロフルオルエーテルと脂肪族炭化水素との配合比は、30/70〜90/10(重量比)であることが好ましく、40/60〜80/20であることがより好ましい。配合比が30/70未満であると、起泡が継続しにくくなる傾向があり、90/10よりも大きいと、吐出時の起泡が弱く、泡状で吐出しにくくなる傾向がある。
【0046】
このように構成される本発明の発泡性エアゾール組成物は、前記界面活性剤、必要に応じて配合される有効成分、水溶性高分子などを水性溶媒に配合して水性原液を調製し、得られた水性原液をハイドロフルオロエーテル、脂肪族炭化水素とともにエアゾール用容器に充填し、水性原液にハイドロフルオロエーテルと脂肪族炭化水素とを乳化することにより調製することができる。なお、水性原液とハイドロフルオロエーテルを予め乳化したものをエアゾール容器内に充填し、これに脂肪族炭化水素を添加して乳化させても良い。
【0047】
得られた発泡性エアゾール組成物は、エアゾール容器から大気中に放出されると、脂肪族炭化水素が気化して水性原液を発泡させて泡状になる。得られた泡を皮膚や頭髪に塗布し、さらに指先やブラシなどを用いて塗り伸ばす、あるいはカミソリで剃るとハイドロフルオロエーテルがゆっくりと気化して起泡するため塗布面上で塗り伸ばしやすいものである。
【0048】
本発明の発泡性エアゾール組成物は、シェービングフォーム、洗顔フォーム、クレンジングフォーム、スキンケア用フォーム、鎮痒剤用フォーム、消炎鎮痛剤用フォームなどの皮膚用製品や、スタイリングフォーム、トリートメントフォーム、ワックスフォームなどの頭髪用製品などに用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
評価方法を下記に示す。
【0051】
<吐出状態>
エアゾール容器にスパウトを装着し、エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に1時間保持してエアゾール組成物を吐出し、以下の基準により評価した。
○:発泡した状態で吐出され、泡を指で塗り拡げると再度発泡した。
△1:吐出時の発泡は小さいが、泡を指で塗り拡げると再度発泡した。
△2:発泡した状態で吐出されるが、泡を指で塗り拡げたときの再発泡が小さい。
×1:ほとんど発泡せずに液体状態で吐出され、指で塗り拡げると発泡した。
×2:発泡した状態で吐出されるが、泡を指で塗り拡げても再発泡しない。
【0052】
<泡の伸展性>
吐出した泡を手のひらで拡げてから頬に塗布し、指先で塗り拡げたときの状態を、以下の基準により評価した。
○:泡が滑らかに伸び、途切れることなく薄く伸ばすことができる。
△:泡は伸びるが、途切れる部分がある。
×:泡が伸びにくく、途切れる。
【0053】
<皮膚への刺激>
泡を頬に塗布したときの刺激の有無を、以下の基準により評価した。
○:刺激は感じられない。
×:刺激が感じられる。
【0054】
<アフタードロー>
泡を吐出した後、スパウトの吐出孔から吐出される残留物(アフタードロー)の有無を、以下の基準により評価した。
○:アフタードローはほとんどない。
△:少量のアフタードローがある。
×:長時間に渡ってアフタードローが続く。
【0055】
実施例1
下記の水性原液を調製し、水性原液69.6gとエチルパーフルオロブチルエーテル8.0gを乳化させた。次いで、この乳化物77.6gをアルミニウム製耐圧容器に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを固着した。さらにバルブから液化石油ガスを2.4g充填し、容器を上下に振って乳化させ、エアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0056】
<水性原液>
ラウリン酸スクロース(*1) 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
アクリレーツ・アクリル酸アルキル
(C10−30)クロスポリマー(*2) 0.4
2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール 0.3
メチルパラベン 0.2
フェノキシエタノール 0.2
精製水 83.9
合計 100.0(重量%)
【0057】
<エアゾール組成物>
上記水性原液 87.0
エチルパーフルオロブチルエーテル(*3) 10.0
液化石油ガス(*4) 3.0
合計 100.0(重量%)

*1:コスメライクL−160A(商品名)、第一工業製薬(株)製
*2:ベミュレンTR−1(商品名)、NOVEON製
*3:CF−76(商品名)、住友スリーエム(株)製
*4:20℃での蒸気圧が0.54MPa
プロパン:イソブタン:ノルマルブタン=60:10:30(重量比)
【0058】
実施例2(洗顔フォーム)
下記の水性原液を調製し、水性原液69.6gとメチルパーフルオロブチルエーテル8.0gを乳化させた。次いで、この乳化物77.6gをアルミニウム製耐圧容器に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを固着した。さらにバルブから液化石油ガス(脂肪族炭化水素)2.4gを充填し、容器を上下に振って乳化させ、エアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0059】
<水性原液>
パルミチン酸(*5) 10.0
グリセリン(*6) 10.0
トリエタノールアミン 5.5
コカミドDEA(*7) 3.0
メチルパラベン 0.1
精製水 71.4
合計 100.0(重量%)
【0060】
<エアゾール組成物>
上記水性原液 87.0
メチルパーフルオロブチルエーテル(*8) 10.0
液化石油ガス(*4) 3.0
合計 100.0(重量%)

*5:ルナックP−95(商品名)、花王(株)製
*6:濃グリセリン(商品名)、花王(株)製
*7:アミゾールCDE(商品名)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、川研ファインケミカル(株)製
*8:CF−61(商品名)、住友スリーエム(株)製
【0061】
実施例3
実施例2の液化石油ガス(*4)の代わりに、20℃での蒸気圧が0.47MPaである液化石油ガス(*9)を用いた以外は実施例2と同様にしてエアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
*9:20℃での蒸気圧が0.47MPa
プロパン:イソブタン:ノルマルブタン=50:12.5:37.5(重量比)
【0062】
実施例4
実施例2の液化石油ガス(*4)の代わりに、20℃での蒸気圧が0.39MPaである液化石油ガス(*10)を用いた以外は実施例2と同様にしてエアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
*10:20℃での蒸気圧が0.39MPa
プロパン:イソブタン:ノルマルブタン=35:16.2:48.8(重量比)
【0063】
実施例5
実施例2の水性原液69.6g(87重量%)、メチルパーフルオロブチルエーテル2.4g(3重量%)、液化石油ガス(*4)8.0g(10重量%)を用いて、実施例2と同様にしてエアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
実施例2のメチルパーフルオロブチルエーテルの代わりにイソペンタン(脂肪族炭化水素、沸点27.9℃)を用いた以外は実施例2と同様にしてエアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例2
実施例2の水性原液72.0g(90重量%)とメチルパーフルオロブチルエーテル8.0g(10重量%)とを乳化させた。次いで、この乳化物80gを二重エアゾール容器の内袋に充填し、外容器と内袋の間の空間に窒素ガスを充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを固着した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例3
実施例2の水性原液76.0g(95重量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを固着した。さらにバルブから液化石油ガス(*4)4.0g(5重量%)を充填し、容器を上下に振って乳化させ、エアゾール組成物を製造した。得られたエアゾール組成物の評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有する水性原液70〜98重量%、
沸点が50〜80℃であるハイドロフルオロエーテル0.5〜20重量%、および
沸点が−50〜5℃である脂肪族炭化水素0.5〜10重量%
を含有する発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
界面活性剤の配合量が、水性原液中0.1〜20重量%である請求項1記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項3】
脂肪族炭化水素の20℃での蒸気圧が、0.4〜0.7MPaである請求項1または2記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項4】
ハイドロフルオロエーテルと脂肪族炭化水素との配合比が、30/70〜90/10(重量比)である請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性エアゾール組成物。

【公開番号】特開2008−230982(P2008−230982A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69251(P2007−69251)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】