説明

発泡性エアゾール製品および該発泡性エアゾール製品を用いた薬効付与方法

【課題】対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、泡が弾けるように破泡し、薬剤による化学的な作用だけでなく、物理的な作用を加えて対象物に効果を発揮しやすい発泡性エアゾール製品を提供すること。
【解決手段】起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有する発泡性エアゾール製品であって、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成する発泡性エアゾール製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール製品および該発泡性エアゾール製品を用いた薬効付与方法に関する。さらに詳しくは、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、泡が弾けるように破泡する発泡性エアゾール製品および該発泡性エアゾール製品を用いた薬効付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、噴射させたときに泡状となり、破泡させなくとも自ら消泡する起泡性エアゾール組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、スプレー塗布した際に持続性のない発泡を生じるスプレー式洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3558393号公報
【特許文献2】特開2000−273497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、泡が対象物と接触する部分から消泡し、泡が収縮するように消泡する。また特許文献2に記載の発明では、塗布面に付着した時点から消泡が始まり、泡と泡が消泡した液とが一緒になってすぐに垂れ落ちる。そのため、塗布面に持続的に薬効を与えることは困難である。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、泡が弾けるように破泡し、薬剤による化学的な作用だけでなく、物理的な作用を加えて対象物に効果を発揮しやすい発泡性エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡性エアゾール製品は、起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有し、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成することが好ましい。
【0008】
前記起泡剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
【0009】
前記水溶性溶剤が、炭素数2または3の1価アルコールと、ポリオールを含有することが好ましい。
【0010】
前記エアゾール組成物を噴射する噴射孔の直径が0.3〜0.6mmであり、厚さが0.1〜1mmであることが好ましい。
【0011】
洗浄用エアゾール製品であることが好ましい。
【0012】
殺菌用エアゾール製品であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の発泡性エアゾール製品を用いた薬効付与方法は、(1)起泡剤、水溶性溶剤、水、油分とを含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有するエアゾール製品を移動させながら対象物に噴射する工程と、
(2)該対象物で平面状のフォームを形成する工程と、
(3)フォームが弾けるように破泡する工程とからなる。
【0014】
前記破泡する工程(3)が、フォームが次々と弾けるように破泡する工程であることが好ましい。
【0015】
前記破泡する工程(3)が、フォームが一気に弾けるように破泡する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡性エアゾール製品によれば、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成するため、泡中の薬剤による作用だけでなく破泡時の物理的な作用が得られ、たとえば、ガラスやタイルなどの対象物に付着した汚れや、人体に付着した汚れや雑菌などを除去しやすくする発泡性エアゾール製品を提供することができる。特に、エアゾール製品を移動させながら噴射すると、対象物に平面状に付着した泡が、次々と弾けるように、もしくは、一気に弾けるように破泡するため、破泡時の物理的な作用が得られやすい。また、泡が一気に破泡する場合は、対象物上での泡残りが少ないために、汚れや雑菌などを同時に洗い流しやすくなるという効果が得られやすい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発泡性エアゾール製品は、起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有する発泡性エアゾール製品であって、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成することを特徴としている。
【0018】
前記起泡剤としては、たとえば、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POEラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などの非イオン系界面活性剤あげられる。また、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤や、サーファクチンナトリウム、シクロデキストリン、水添酵素大豆レシチンなどの天然系界面活性剤や、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウムおよびN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、N−ステアロイル−L−グルタミン酸などのN−アシルグルタミン酸、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN−アシルグリシン塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニントリエタノールアミンなどのN−アシルアラニン塩、などのアミノ酸系界面活性剤などがあげられる。これらの中でも、使用者への刺激が少なく、金属容器への腐食性が少ない点から非イオン性界面活性剤が好ましく、特に、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成しやすい点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがさらに好ましい。
【0019】
前記界面活性剤の配合量は、水性原液中0.1〜5重量%、さらには0.3〜3重量%であることが好ましい。界面活性剤の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は、水性原液と液化ガスとの乳化安定性が悪くなり、かつ、泡立ちにくい傾向があり、5重量%よりも多い場合は噴射物が必要以上に安定な泡を形成するため破泡しにくく、泡残りが多くなり、残留物が多くなる傾向がある。
【0020】
前記水溶性溶剤は発泡性および破泡性を調整するために用いられ、たとえばエタノール、イソプロパノールなどの炭素数2または3の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの2〜3価のポリオールなどを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいが、特に破泡性を調整しやすい点から炭素数2または3の1価アルコールとポリオールとを混合して用いることが好ましい。
【0021】
前記水溶性溶剤の配合量は、水性原液中3〜45重量%、さらには5〜40重量%であることが好ましい。水溶性溶剤の配合量が3重量%よりも少ない場合は、破泡性が充分でなく、物理的な作用が得られにくい傾向がある。一方、45重量%よりも多い場合は噴射物が泡立ちにくい傾向がある。なお、前記1価アルコールとポリオールの配合比(1価アルコール/ポリオール)は2〜10、特に3〜9であることが好ましい。前記配合比が2よりも小さい場合は弾けるように破泡しにくくなり、10よりも大きい場合は発泡しにくくなる。
【0022】
前記水は水性原液の主溶媒である。前記水としては、たとえば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。
【0023】
前記水の配合量は、水性原液中50〜95重量%、さらには60〜90重量%であることが好ましい。水の配合量が50重量%よりも少ない場合は発泡しにくくなり、95重量%よりも多い場合は破泡しにくくなる。
【0024】
前記油分は消泡性を調整するために用いられ、たとえば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィン、リモネンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルなどのエステル油、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、オレイン酸、イソステアリン酸などの液状脂肪酸、アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂、油溶性香料など、常温で液体であるものがあげられる。
【0025】
前記油分の配合量は、水性原液中0.01〜5重量%、さらには0.05〜3重量%であることが好ましい。油分の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は弾けるように破泡しにくく、5重量%よりも多い場合は泡立ちにくくなる。
【0026】
前記水性原液は、必要に応じてpH調整剤、キレート剤、有効成分、水溶性高分子、パウダーなどを配合することができる。
【0027】
前記pH調整剤は水性原液のpHを調整して、容器への腐蝕や人体への刺激を抑制する、洗浄効果を調整するなどの目的で用いられる。前記pH調整剤としては、たとえば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどの有機アミン、クエン酸、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられる。
【0028】
前記キレート剤は水性原液を安定化させるなどの目的で用いられる。前記キレート剤としては、たとえば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA−2Na)などのエチレンジアミン四酢酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどがあげられる。
【0029】
前記有効成分としては、たとえば、ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、たとえば2−メチルベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチルベンズイソチアゾリン−3−オン、N−エチル、N−n−プロピル、N−n−ペンチル、N−n−ヘキシル、N−シクロプロピル、N−イソブチルベンズイソチアゾリン−3−オンおよび1,2−ベンゾチアゾリン−3−オンなどの防カビ剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤、クエン酸三ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウムなどの防錆剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドンなどの浸透剤、クロタミトン、d−カンフルなどの鎮痒剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィン、およびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの塩、などの抗真菌剤、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどの殺菌・消毒剤、l−メントール、カンフルなどの清涼剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素などの保湿剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、などがあげられる。
【0030】
前記有効成分を配合する場合の配合量は、水性原液中0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%配合される。有効成分の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は、有効成分の効果が充分に発揮できない傾向があり、20重量%よりも多い場合は、有効成分濃度が高くなりすぎ、有効成分によっては人体へ悪影響を及ぼす場合がある。
【0031】
前記水溶性高分子は水性原液の粘度を調整して破泡状態を調整する、などの作用がある。
【0032】
前記水溶性高分子としては、たとえば、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系高分子;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどがあげられる。
【0033】
前記水溶性高分子を配合する場合の配合量は、水性原液中0.01〜3重量%、さらには0.05〜2重量%であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が0.01重量%よりも少ない場合は前述の効果が得られにくく、3重量%を超える場合は水性原液の粘度が高くなりすぎ、破泡しにくくなる。
【0034】
前記パウダーは、泡が弾けるように破泡するときの物理的な作用に加え、汚れを擦りとる(スクラビング効果)などの目的で用いられる。
【0035】
前記パウダーとしては、たとえば、シリカ、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライトなどがあげられる。
【0036】
前記パウダーを配合する場合の配合量は、水性原液中0.01〜5重量%であり、0.03〜3重量%であることが好ましい。パウダーの配合量が0.01重量〜5重量%を外れる場合、前述の効果が得られにくくなる。
【0037】
前記水性原液の配合量は、エアゾール組成物中60〜97重量%であり、65〜95重量%であることが好ましい。水性原液の配合量が60重量%より少ない場合は、対象物に付着しにくくなり飛散が多く使用者が吸引しやすくなる。97重量%よりも多くなると弾けるように破泡しにくくなる。
【0038】
前記液化ガスは、エアゾール容器内では液体であり、外部に噴射すると気化して水性原液を発泡させてフォームを形成する。
【0039】
前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(HFO−1234ze)、トランス−2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(HFO−1234yf)などのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物などが挙げられる。また液化ガス中にノルマルペンタン、イソペンタンを配合してもよい。
【0040】
前記液化ガスの蒸気圧(20℃)は0.2〜0.55MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることが好ましい。蒸気圧が0.2MPaよりも低い場合は弾けるように破泡しにくくなり、0.55MPaよりも高い場合は対象物に付着しにくくなり、飛散して使用者が吸引しやすくなる。
【0041】
前記液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中3〜40重量%であり、5〜35重量%であることが好ましい。液化ガスの配合量が3重量%より少ない場合は弾けるように破泡しにくくなり、40重量%よりも多い場合は対象物に付着しにくくなり飛散が多く使用者が吸引しやすくなる。
【0042】
前記エアゾール組成物は、耐圧容器に水性原液、液化ガスを充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを固着してエアゾール容器を密封し、水性原液と液化ガスを混合することにより製造することができる。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けることによりエアゾール製品となる。
【0043】
エアゾール製品を移動させながらスプレー状に噴射する場合、噴射部材はメカニカルブレークアップ機構を備え、噴射孔の大きさは直径が0.3〜0.6mmであることが好ましく、特に0.4〜0.5mmであることが好ましい。直径が0.3mmよりも小さい場合は噴射角度が小さくなりやすいため対象物に平面状のフォームが得られにくく、次々と破泡しにくくなる傾向があり、0.6mmを超える場合はスプレー状に噴射されにくい傾向がある。さらに、噴射孔の厚さは0.1〜0.8mmであることが好ましい。0.1mmよりも薄いと飛散しやすく対象物に付着しにくくなる傾向があり、0.8mmよりも厚い場合は飛散しやすくなる。
【0044】
また、エアゾール製品を移動させずに手のひらなどに泡状で噴射する場合、立体的なフォームを形成しやすい点から噴射部材の噴射孔の大きさは直径が1〜10mmであることが好ましい。直径が1mmよりも小さい場合、噴射の勢いが強く付着しにくくなる傾向があり、10mmよりも大きい場合は通路の空間が大きくなり、通路内で破泡は始まりやすい。
【0045】
前記エアゾールバルブは特に限定されないが、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で弾けるように破泡するフォームを形成しやすい点から、ステム孔の直径が0.3〜0.5mmであり、ハウジングのアンダータップ孔の直径が1.0〜2.0mm、ベーパータップ孔を備えていないものを用いることが好ましい。なお、ステム孔は複数個設けてもよい。
【0046】
次に、本発明のエアゾール製品を用いた薬効付与方法について説明する。
【0047】
本発明の薬効付与方法は、
(1)起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有するエアゾール製品を移動させながら対象物に噴射する工程と、
(2)該対象物で平面状のフォームを形成する工程と、
(3)フォームが弾けるように破泡する工程とからなる。
【0048】
すなわち、(1)起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有するエアゾール製品を移動させながら対象物に噴射すると、(2)該対象物で平面状のフォームを形成する。そして(3)フォームが弾けるように破泡する。(1)、(2)により、対象物を平面状のフォームで覆い、フォームの薬液を対象物に付着させ、薬剤の効果が得られる。さらに(3)により、フォームが弾けるように破泡することで物理的な作用が得られ、たとえば洗浄効果や殺菌効果を高くする。平面状のフォームは前記エアゾール製品を横方向や、上下方向あるいは、Z字状に移動させながらスプレー状に噴射することで、対象物上で発泡して厚さ1cm未満のフォームが得られる。平面状のフォームにすることで、フォームが次々と弾けるように、もしくは、一気に弾けるように破泡しやすくなる。フォームが、次々と弾けるように、もしくは、一気に弾けるように破泡することが、破泡時の物理的な作用がより得られやすい点から好ましい。また、泡が一気に破泡する場合は、泡残りがなく、破泡した泡がすぐに液状になり汚れや雑菌を取り込むため、洗い流しやすい、拭き取りが不要になるという点から好ましい。
【0049】
本発明の薬効付与方法に用いられる起泡剤、水溶性溶剤、水、油分、液化ガスとしては、前述のものと同じものを同様の配合量で使用することができる。
【0050】
対象物としては特に限定されず、ガラス面、タイル、各種金属面、各種合成樹脂面、人工皮革、タイヤ、布帛や、人体にも塗布することができる。
【0051】
本願の発泡性エアゾール製品は、薬剤による作用だけでなく、弾けるように破泡による物理的な作用が得られるため、洗浄用エアゾール製品や殺菌用エアゾール製品として好適である。また、本発明のエアゾール製品に添加する有効成分によっては、洗浄用エアゾール製品、殺菌用エアゾール製品のほかに、清涼剤、消炎鎮痛剤などの各種薬効を示すエアゾール製品とすることも可能である。
【0052】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
評価方法を下記に示す。
1.泡切れ試験(固定)
エアゾール製品を金属面に噴射し、破泡状態をデジタルビデオで撮影した。
◎:弾けるように破泡した。
○:やや弱いが弾けるように破泡した。
△:弾けが弱く、弾け始めるまでに時間がかかった。
×:すぐに破泡しない。
2.泡切れ試験(移動)
エアゾール製品を横方向に移動させながら金属面に噴射し、破泡状態をデジタルビデオで撮影した。
◎1:平面状のフォームを形成し、泡が次々と弾けるように破泡した。
◎2:平面状のフォームを形成し、泡が一気に弾けるように破泡した。
○:平面状のフォームを形成し、やや弱いが泡が次々と弾けるように破泡した。
△:平面状のフォームを形成したが、弾けが弱く、弾け始めるまでに時間がかかった。
×:平面状のフォームを形成したが、すぐに破泡しない。
3.官能評価(ムセ具合)
金属面に噴射したときの付着状態を評価した。
○:大部分が付着し、飛散によるムセはなかった。
△:飛散により息苦しい感じがした。
×:飛散が多くムセた。
4.洗浄効果
洗浄用エアゾール製品を浴室タイルに噴射して放置し、タイル表面の汚れの洗浄効果を確認した。
○:こすらなくても汚れを除去できた。
×:汚れが残った。
5.泡残り評価
破泡後の泡残りを、目視にて評価した。
◎:ほとんど全部が液状化して、泡残りがない。
○:一部泡残りしたが、拭き取りが不要。
×:泡残りが多く、拭き取りが必要。
【実施例】
【0054】
実施例1〜3
表1に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、2箇所、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。さらに、噴射部材(噴射孔径:φ0.5、噴孔の厚さ:0.2mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表2に示す。また、実施例1の発泡性エアゾール製品の泡切れ試験結果を表3に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
表3に示されるように、1箇所に噴射した場合(泡切れ試験(固定))には、立体的なフォームを形成し、約0.1秒後にはフォーム全体が破泡した。一方、広域に噴射した場合(泡切れ試験(移動))には、0.03秒後の写真に示されるように、先に噴射した箇所から破泡が始まり、移動するように次々と破泡が連鎖した。
【0059】
実施例4
噴射部材として、(噴射孔径:φ0.4、噴孔の厚さ:0.2mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けたこと以外は実施例1と同様にして発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表4に示す。
【0060】
実施例5
噴射部材として、(噴射孔径:φ0.4、噴孔の厚さ:0.9mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けたこと以外は実施例1と同様にして発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
実施例6〜8
表5に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、2箇所、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。さらに、噴射部材(噴射孔径:φ0.5、噴孔の厚さ:0.2mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表6に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
実施例9〜12
表7に記載の配合により水性原液を調製したこと以外は実施例6と同様にして発泡性エアゾール組成物を製造した。評価結果を表8に示す。
【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
実施例13
液化ガスとして20℃での蒸気圧が0.29MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は実施例1と同様にして発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表9に示す。
【0069】
実施例14
液化ガスとして20℃での蒸気圧が0.49MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は実施例1と同様にして発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表9に示す。
【0070】
実施例15
液化ガスとして20℃での蒸気圧が0.59MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は実施例1と同様にして発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表9に示す。
【0071】
【表9】

【0072】
実施例16
実施例1の水性原液を160g(80重量%)、液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を40g(20重量%)充填したこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。評価結果を表10に示す。
【0073】
実施例17
実施例1の水性原液を140g(70重量%)、液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を60g(30重量%)充填したこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。評価結果を表10に示す。
【0074】
実施例18
実施例1の水性原液を120g(60重量%)、液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を80g(40重量%)充填したこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。評価結果を表10に示す。
【0075】
【表10】

【0076】
比較例1〜3
表11に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、2箇所、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。さらに、噴射部材(噴射孔径:φ0.5、噴孔の厚さ:0.2mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、発泡性エアゾール製品を製造した。評価結果を表12に示す。
【0077】
【表11】

【0078】
【表12】

【0079】
実施例19〜20および比較例4 洗浄用エアゾール製品
表13に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、2箇所、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。噴射部材(噴射孔径:φ0.5、噴孔の厚さ:0.2mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、洗浄用エアゾール製品を製造した。評価結果を表14に示す。
【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
実施例21 洗浄用エアゾール製品
表15に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。噴射部材(噴射孔径:φ0.38、噴孔の厚さ:1.4mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、洗浄用エアゾール製品を製造した。評価結果を表19に示す。
【0083】
【表15】

【0084】
実施例22 洗浄用エアゾール製品
表16に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.39MPa)を20g(10重量%)充填した。噴射部材(噴射孔径:φ0.4、噴孔の厚さ:0.9mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、洗浄用エアゾール製品を製造した。評価結果を表19に示す。
【0085】
【表16】

【0086】
実施例23 洗浄用エアゾール製品
表17に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.5、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.25MPa)を16g(8重量%)とジメチルエーテルを4g(2重量%)充填した。噴射部材(噴射孔径:φ0.4、噴孔の厚さ:0.9mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、洗浄用エアゾール製品を製造した。評価結果を表19に示す。
【0087】
【表17】

【0088】
実施例24 洗浄用エアゾール製品
表18に記載の配合により水性原液を調製し、水性原液180g(90重量%)をブリキ製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブ(ステム孔径:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.5、ベーパータップ孔:なし)を固着し、液化ガスとして液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.40MPa)20g(10重量%)を充填した。噴射部材(噴射孔径:φ0.5、噴孔の厚さ:0.8mm、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付け、洗浄用エアゾール製品を製造した。評価結果を表19に示す。
【0089】
【表18】

【0090】
【表19】

【0091】
【表20】

【0092】
表20には実施例23の洗浄用エアゾール製品を広域に噴射(泡切れ試験(移動))した場合の泡切れ試験結果を示す。0.5秒後の写真に示されるようにフォーム全体が同時に弾けるように破泡した。さらに、2秒後にはほぼ全ての泡が液状化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有する発泡性エアゾール製品であって、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、弾けるように破泡するフォームを形成する発泡性エアゾール製品。
【請求項2】
前記起泡剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項3】
前記水溶性溶剤が、炭素数2または3の1価アルコールと、ポリオールを含有する請求項1または2いずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項4】
前記エアゾール組成物を噴射する噴射孔の直径が0.3〜0.6mmであり、厚さが0.1〜1mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項5】
洗浄用エアゾール製品である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール製品。
【請求項6】
殺菌用エアゾール製品である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール製品。
【請求項7】
(1)起泡剤、水溶性溶剤、水、油分を含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を含有するエアゾール製品を移動させながら対象物に噴射する工程と、
(2)該対象物で平面状のフォームを形成する工程と、
(3)フォームが弾けるように破泡する工程とからなる薬効付与方法。
【請求項8】
前記破泡する工程(3)が、フォームが次々と弾けるように破泡する工程である請求項7記載の薬効付与方法。
【請求項9】
前記破泡する工程(3)が、フォームが一気に弾けるように破泡する工程である請求項7記載の薬効付与方法。

【公開番号】特開2012−46725(P2012−46725A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107562(P2011−107562)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】