説明

発泡性スチレン系樹脂粒子およびその発泡成形体

【課題】 残存スチレンモノマーが少なく低VOC化が可能で、シックハウス症候群への対応がなされた建材用途に適し、また融着性がよく、外観が良好であり、経時による寸法変化率の小さい発泡倍率5〜40倍に適した発泡性スチレン系樹脂粒子を得る。
【解決手段】 懸濁重合法によって得られたポリスチレン樹脂粒子に発泡剤を含浸して得られ、粒子径が300〜800μm、残存スチレン系モノマーの含有量が500ppm以下の発泡性樹脂粒子であって、発泡剤として3〜7重量%のブタンを含有し、かつ溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤を0.2〜2.0重量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。詳しくは懸濁重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を分級して、発泡剤を含浸して得られる発泡性スチレン系樹脂粒子に関する。更に詳しくは、スチレン系モノマーの含有量が少なく融着性がよく、また外観が良好である発泡倍率5〜40倍に適した発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、軽量性、断熱性、強度、衛生性に優れ、食品容器、緩衝材、断熱材等に広く利用されている。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は5〜40倍の発泡倍率に好適である。
近年の住宅建材分野では、建材に含まれる揮発性有機化合物(VOC)が原因であると一般にいわれているシックハウス症候群問題が大きく取り上げられ、原料の低VOC化が強く求めらてきている。
一方、床暖房用パネルとして発泡性スチレン系樹脂粒子を使用する場合、粒子径が200〜600μm、残存スチレン系モノマーの含有量が1000ppm以下であって、発泡剤として2〜6重量%のブタンを含有した発泡性スチレン系樹脂粒子が、特許文献1で提案されている。この発泡性スチレン系樹脂粒子を、床暖房用パネルのような建材用途に使用した場合、予備発泡能力が小さく外観が不良となり、粒子同士の融着が悪く、また発泡成形体の経時による寸法変化率が大きかった。
一方、低中倍率発泡可能な発泡性スチレン系樹脂粒子として、発泡助剤に沸点50℃以上の炭化水素類を使用することが特許文献2において提案されている。しかし、分子量が大きい炭化水素類はVOCの発生物質にも挙げられているために好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−155870
【特許文献2】特開平11−286571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、残存スチレンモノマーが少なく低VOC化が可能で、シックハウス症候群への対応がなされた建材用途に適し、また融着性がよく、外観が良好であり、経時による寸法変化率の小さい発泡倍率5〜40倍に適した発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、懸濁重合法によって得られたポリスチレン樹脂粒子に発泡剤を含浸して得られ、粒子径が300〜800μm、残存スチレン系モノマーの含有量が500ppm以下の発泡性樹脂粒子であって、発泡剤として3〜7重量%のブタンを含有し、かつ溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤を0.2〜2.0重量%含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を使用することで、発泡倍率5〜40倍の発泡成形体は、経時による寸法変化率が小さく寸法安定性に優れ、粒子間の融着が良好で、外観に優れ、十分な強度を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
なかでも特に本発明は、懸濁重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を300〜800μmの間の篩で分級し、発泡剤の沸点以上の温度で含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子であって、JIS標準篩による粒子径分布が、0.425〜0.71mmの範囲で80%以上であり且つ平均粒子径が0.45〜0.65mmである場合、成形品の寸法変化率が小さく、建材用途などの薄い肉厚を持った金型への充填性が良好である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、懸濁重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸して得られ、粒子径が300〜800μm、残存スチレン系モノマーの含有量が500ppm以下の発泡性樹脂粒子であって、発泡剤として3〜7重量%のブタンを含有し、かつ溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤を0.2〜2.0重量%含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率5〜40倍に予備発泡し、成形して得られる発泡成形体は、経時による寸法変化率が小さく寸法安定性に優れ、粒子間の融着が良好で、外観に優れ、十分な強度を有する発泡成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において用いられるスチレン系樹脂粒子は、通常の懸濁重合法によって製造されたものが用いられる。スチレンを主成分とするものであり、スチレンを50%以上含む単量体の重合体または共重合体である。スチレンと共重合可能な単量体は、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。またジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用してもよい。
【0009】
本発明において、単量体を水性媒体中に懸濁させるために用いられる懸濁安定剤としては、従来、懸濁重合において一般に使用されている公知の、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、リン酸三カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。難水溶性無機化合物を用いる場合には、通常ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン界面活性剤が併用される。
【0010】
本発明において、粒子径を揃えたポリスチレン系樹脂粒子を得るには、例えば0.475〜0.63mmの篩において懸濁重合で得られたポリスチレン系樹脂粒子を分級して使用する。その篩い分けられたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸することにより、目的とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
【0011】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、300〜800μmである。粒子径が300μmを下回ると、含浸時の合着が多くなり好ましくなく、800μmを超えると建材用途などの薄い肉厚を持った金型への充填性が悪くなる傾向にあり好ましくない。
【0012】
また、JISの標準篩による粒度分布が、0.425〜0.71mmが80%以上である。好ましくは95%以上、より好適には100%である。JISの標準篩による粒度分布が、80%未満となると、発泡性スチレン系樹脂粒子の粒度分布が広くなるために、予備発泡時に発泡倍数の変動が大きくなり好ましくない。また、発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径は0.45〜0.65mmである。平均粒子径が0.45mmよりも小さいと、発泡剤の使用量が多くなるために、成形品の寸法変化率が大きくなる。0.65mmよりも平均粒子径が大きいと建材用途などの薄い肉厚を持った金型への充填性が悪くなる傾向にあり好ましくない。
【0013】
ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量は通常200000〜350000、好ましくは220000〜320000の範囲である。
【0014】
本発明における重合開始剤としては、スチレンの懸濁重合において一般に使用されるラジカル発生型重合開始剤を用いることができ、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は単独でまたは2種以上併用して使用できる。通常は分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50〜80℃の範囲にある重合開始剤と、分解温度が80〜120℃の範囲にある異なる重合開始剤が併用される。
【0015】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子中に含有する残存スチレン量は500ppm以下である。好ましくは残存スチレン量は200ppm以下、最適には160ppm以下である。残存スチレン量が500ppmを超えると、予備発泡し、成形して得られる建材用成形品において室内に放散されるスチレン量が多くなるため好ましくない。発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量を500ppm以下に下げる方法としては分解温度が80〜120℃の範囲に重合開始剤を0.03重量部以上使用して、110℃以上の温度で1時間以上、残存スチレン低減の工程を確保することでなし得る。
【0016】
本発明における発泡剤としては、ブタンが用いられるが、沸点が重合体の軟化点以下である揮発性を有する、プロパン、ペンタン等の炭化水素を併用しても差し支えない。本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子中のブタンの含有量は3〜7重量%、好ましくは3.5〜6重量%である。3重量%より少ないと、予備発泡時間が長くなるとともに成形時の融着が悪くなり、7重量%を超えると発泡時の粒子間の発泡ばらつきが大きくなるとともに成形時の冷却時間がのび生産性が損なわれるために好ましくない。また、ブタンの組成については、重量比でイソブタンの割合が10〜45重量%である。イソブタンの重量比が10重量%未満では、成形体の粒子間隙が多くまた成形時の融着が悪くなり、45重量%を超えると成形品の経時による寸法収縮率が大きくなるために好ましくない。
【0017】
本発明においては、反応器として撹拌機のついた耐熱・耐圧のジャケット付きのオートクレーブを使用する。発泡剤についてのオートクレーブへの添加方法は、常温・常圧で気体であるブタンを、系内が20〜130℃の温度で、液体のまま添加する。気体のまま添加するとオートクレーブ系内の圧力上昇が大きく発泡剤がオートクレーブ内に添加しにくくなるため好ましくない。
【0018】
本発明においては、発泡性スチレン系樹脂粒子を5〜45倍に予備発泡した発泡粒子は、20℃で24時間経過した発泡粒子中の発泡剤として1〜6重量%のブタンを含有している。発泡粒子中のブタンの含有量が1重量%未満では成形体の粒子間隙が多くまた成形時の融着が悪くなり、6重量%を超えると成形品の経時による寸法収縮率が大きくなるとともに成形時の冷却時間がのび生産性が損なわれるために好ましくない。また、発泡粒子の粒子径は、500〜3000μmである。発泡粒子の粒子径が500μm未満では、成形時の融着が悪くなり、3000μmを超えると建材用の薄い金型への発泡粒子の充填性が悪くなるために好ましくない。
【0019】
本発明における可塑剤は、溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤を0.2〜2.0重量%含有している。可塑剤については、例えば、アジピン酸エステル類ではアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、フタル酸エステル類ではフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸エステル類ではセバシン酸ジブチル、などの1種又は2種以上が挙げられ、特にアジピン酸ジイソブチルが好ましい。
また上記可塑剤としては、SP値(Solubility parameter)が8.3以上9.4以下の有機物、好ましくはSP値が8.5以上9.2以下である、アジピン酸エステル類が挙げられ、特に好ましくはアジピン酸ジイソブチル(DIBA)(SP値=8.9)、アジピン酸イソノニル(DINA)が好ましい。本発明のSP値は1分子の単位体積あたりの蒸発エネルギーΔEおよびモル容積Vを次式に代入することにより算出される。
(SP)=ΔE/V
【0020】
可塑剤については、0.2〜2.0重量%含有している。好ましくは、0.5〜1.5重量%である。0.2重量%未満では、成形体の粒子間隙が多くまた成形時の融着が悪くなり、2.0重量%を超えると、予備発泡時に発泡粒子どおしの合着が多くなりまた成形時の冷却時間がのび生産性が損なわれるために好ましくない。
また、可塑剤については、1気圧の沸点が150℃以上を使用する。好ましくは、1気圧の沸点が200℃以上である。1気圧の沸点が150℃未満では、発泡成形後の成形体よりその可塑成分が逸散するのでVOC物質として捉えられるために好ましくない。
【0021】
本発明において、発泡剤、可塑剤以外に発泡セル造核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、架橋剤等の発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に用いられる添加剤を、必要に応じ適宜添加してもよい。
【0022】
なお、本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、表面被覆を行ってもよい。被覆剤は発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に必要に応じてミキサー等で混合し付着させることができる。被覆剤としては、例えば、ジンクステアレート等の粉末状金属石けん類、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油、アミド化合物、シリコン類、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法および製造条件を以下で説明する。
【0024】
(実施例1)
(ポリスチレン系樹脂粒子の作成)
内容積100リットルの撹拌機付オートクレーブ(以下、反応器ともいう)にリン酸三カルシウム(太平化学社製)120gと、亜硫酸水素ナトリウム0.2g及び過硫酸カリウム0.2gを加え、更に過酸化ベンゾイル(純度75%)136g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン40kgを投入した後、撹拌下で溶解および分散させて懸濁液を形成した。
次に200rpmの撹拌下でスチレンを90℃、6時間、更に125℃で2時間重合反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、オートクレーブから内容物を取り出し、脱水・乾燥を行い、その後、0.475〜0.63mmにて分級して、粒子径が0.355〜0.71mmで重量平均分子量が30万のスチレン系重合体種粒子を得た。
【0025】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作成)
次いで、内容積100リットルの撹拌機付オートクレーブに上記のスチレン系樹脂粒子42kg、蒸留水36kg、ピロリン酸マグネシウム168g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8gを入れ、140rpmで撹拌し懸濁させ、その後100℃まで昇温した。
この後、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gに可塑剤としてジイソブチルアジペート(DIBA)420gを加えてホモミキサーで撹拌することで調整し懸濁液を反応器内に圧入した。その後、発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比35%)3108gを液の状態で反応器内に圧入した。その後反応器内部を100℃で2時間保持し、20℃まで冷却して粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、0.355〜0.71mmの粒度分布を持っていた。更に予備発泡後の発泡粒子の気泡径が完全に安定するまで15℃で3日間熟成させて、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡剤含有量については、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造後、15℃で3日間熟成させた後に測定した。
【0026】
(発泡性粒子の被覆)
この発泡性スチレン系樹脂粒子5kgを松坂貿易社製レーディゲミキサーM20型(内容量20リットル)に投入した。次いで、ステアリン酸マグネシウム4g、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド18g、炭酸カルシウム4g、ステアリン酸モノグリセライド2gを順次投入し、230rpmで3分間撹拌した。次いで重量平均分子量300であるポリエチレングリコール1.5g、100csであるジメチルポリシロキサン2gを投入し230rpmで5分間撹拌し、発泡性スチレン系樹脂粒子表面を被覆した。
【0027】
(発泡成形)
この被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子を内容量40リットルの小型バッチ式予備発泡機を用いて、常圧下でゲージ圧力0.05MPaの水蒸気で加熱し嵩倍数20倍に予備発泡した。
得られた予備発泡粒子を20℃で24時間放置し、乾燥、熟成させた。この後、発泡剤量の測定を行った後に、発泡成形機(積水工機社製 商品名「ACE−3SP」)の金型内に充填し、水蒸気を用いて二次発泡させることによって、縦300mm×横400mm×高さ10mmの板状の発泡成形体を得た。
【0028】
(発泡粒子の嵩倍数の測定)
1リットルのメスシリンダーを用意し、発泡粒子をメスシリンダーの1リットルの標線まで充填し、充填された発泡粒子の重量(g)を0.1gの位まで秤量した。得られた1リットルあたりの発泡粒子の重量より、発泡粒子の嵩倍数(リットル/g)を求めた。
【0029】
(発泡剤含有量の測定)
試料である発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子(製造後20℃にて24時間保管したもの)10〜20mgを20ml専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンスエルマー社製ヘッドスペースサンプラーTurboMatrixHS40にセットし、160℃で30分間加熱後、パーキンスエルマー社製ガスクロマトグラフClarus500GC(検出器:FID)を用いて定量した。ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.08分、トランスファーライン温度160℃、ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製DB−1(0.25mmφ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で10分間、20℃/分で270℃まで昇温、270℃で1分間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18psiで10分間、0.5psi/分で24psiまで増量)、注入口温度(200℃)とした。測定値を樹脂重量100質量部に対する値に換算した。
【0030】
(残存スチレン単量体の測定)
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子1gを精秤し、この1gの発泡性スチレン系樹脂粒子に、0.1体積%のシクロペンタノールを含有するジメチルホルムアミド溶液1ミリリットルを内部標準液として加えた後、更に、ジメチルホルムアミドを加えて25ミリリットルの測定溶液を作製した。そして、この測定溶液1.8マイクロリットルをガスクロマトグラフ(島津製作所製 商品名「GC−14A」)に供給して下記測定条件にて測定し、測定溶液中の化合物のチャートを得た。そして、予め測定しておいたスチレン単量体の検量線に基づいて、測定溶液中のスチレン単量体の量を算出することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子の全重量に対する残存スチレン単量体(ppm)を算出し、その結果を表1に示した。
【0031】
検出器 : FID
カラム : ジーエルサイエンス社製(内径3mm×2.5m)
液相(PEG−20M PT 25%)
担体(Chromosorb W AW−DWCS)
メッシュ:60/80
カラム温度 : 100℃
DET温度 : 230℃
検出器温度 : 230℃
キャリアーガス : 窒素
キャリアーガス流量 : 40ミリリットル/分
【0032】
(アジピン酸エステル量の測定)
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子2mgを精秤し、トルエン1ミリリットルに溶解させてトルエン溶液を作製する。更に、ピレン1000μg/ミリリットルを含有するメタノール溶液1マイクロリットルを上記トルエン溶液に添加して試験液を作製する。一方、アジピン酸エステル及びピレンを含有し且つアジピン酸エステル濃度を変化させた複数種類の標準溶液を用意し、この標準溶液をガスクロマトグラフに供給してアジピン酸エステルの検量線を作成する。
そして、上記試験液をガスクロマトグラフに供給してアジピン酸エステルのチャートを得、このチャートから上記検量線に基づいて、アジピン酸エステルの総量を算出する。このアジピン酸エステルの総量から、発泡性スチレン系樹脂粒子1g当たりに含有されているアジピン酸エステルの量を算出することができる。
なお、予備発泡粒子の表面部におけるアジピン酸エステルの量は、具体的には、島津製作所社から商品名「GCMS QP5000」で市販されているガスクロマトグラフを用いて、下記条件にて測定することができる。なお、カラムオーブンは、70℃から15℃/分の昇温速度で昇温され、260℃からは10℃/分の昇温速度で昇温され、300℃で3分間保持される。
分離カラム:J&W製 商品名「DB−1」(1μm ×0.25mmφ×60m)
キャリアーガス:ヘリウム
He流量:1ミリリットル/分
注入口温度:240℃
インターフェース温度:260℃
スプリット比:10
【0033】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径の測定)
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子をJISの標準篩に基づき各粒度に篩分けを行った。表1において平均粒子径とは、累積重量パーセントで50%に相当する点での粒子径である。0.425〜0.71mmの重量%は、0.425〜0.500mm、0.500〜0.600mm、0.600〜0.710mm各々の重量%を合計した値である。
【0034】
(発泡成形体の融着率の評価)
得られた板状発泡成形品を衝撃によって破断させ、その破断面の発泡粒子を100〜150個を含む任意の範囲について、全粒子数(A)と粒子内で破断している粒子数(B)を計数し、以下の式により融着率(%)を算出する。
融着率=(B)×100/(A)
融着率の評価は70%以上を良好、70重量%未満を不良とする。
【0035】
(発泡成形体ののびの評価)
得られた板状発泡成形品の外観を目視にて評価する。具体的には、成形体表面の発泡粒子が接合した境界部分が平滑である場合を良好、境界部分に凹凸があり平滑性が劣る場合を不良とする。
【0036】
(発泡成形体の総合評価)
上記融着率とのびの評価において、70%以上かつ良好である場合を○とし、それ以外を×とする。
【0037】
(発泡成形体の寸法変化率の測定)
発泡成形した縦300mm×横400mm×高さ10mmの板状の発泡成形体を、23℃で2日間放置後、縦120mm×横120mm×高さ10mmの直方体状の試験片を切り出し、この試験片について、23℃にて672時間に亘って放置した後の変化率をJIS K6767:1999に準拠して測定した。寸法変化率が±0.5%以内の場合を「○」とし、寸法変化率が−0.5%を下回るか或いは0.5%を上回っている場合を「×」とした。
【0038】
各種測定結果を、表1及び表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
(実施例2)
発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比35%)を2016g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(実施例3)
発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比35%)を4116g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(実施例4)
可塑剤であるジイソブチルアジペート(DIBA)を210gを加えたこと以外は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(実施例5)
可塑剤であるジイソブチルアジペート(DIBA)を630gを加えたこと以外は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
【0042】
(実施例6)
予備発泡粒子の嵩倍数を10倍にする以外は実施例1と全く同様にして板状の発泡成形体を得た。
(実施例7)
予備発泡粒子の嵩倍数を35倍にする以外は実施例1と全く同様にして板状の発泡成形体を得た。
【0043】
(比較例1)
発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比35%)を1200g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例2)
発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比35%)を4510g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例3)
発泡剤であるブタン(イソブタンの重量比50%)を3108g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例4)
発泡剤であるノルマルブタン(イソブタンの重量比0%)を3108g使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
【0044】
(比較例5)
懸濁重合で得られたポリスチレン系樹脂粒子を篩い分ける網サイズを0.355〜0.475mmに変更し、平均粒子径を0.40mmに変更した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例6)
懸濁重合で得られたポリスチレン系樹脂粒子を篩い分ける網サイズを0.63〜0.85mmに変更し、平均粒子径を0.68mmに変更した以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例7)
可塑剤であるジイソブチルアジペート(DIBA)を1050gを加えてのとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例8)
可塑剤であるジイソブチルアジペート(DIBA)を67gを加えてのとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例9)
可塑剤をアジピン酸ジイソブチルの代わりにフタル酸ジメチル(SP値=10.7)と
したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例10)
可塑剤をアジピン酸ジイソブチルの代わりに流動パラフィン(SP値=7.5)と
したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
(比較例11)
残スチレン処理剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート4gとなるように変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子、板状発泡成形体を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
【0045】
(比較例12)
予備発泡粒子の嵩倍数を45倍にする以外は実施例1と全く同様にして板状の発泡成形体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、床暖房用パネル等の住宅建材分野のほか、特に5〜40倍の発泡倍率に好適な食品容器、緩衝材、断熱材等に広く利用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁重合法によって得られたポリスチレン樹脂粒子に発泡剤を含浸して得られ、粒子径が300〜800μm、残存スチレン系モノマーの含有量が500ppm以下の発泡性樹脂粒子であって、発泡剤として3〜7重量%のブタンを含有し、かつ溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤を0.2〜2.0重量%含有し、かつ、該発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡および成形して得られる発泡成形体の発泡倍率が5〜40倍であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
発泡剤としてのブタンは、重量比でイソブタンが10〜45重量%であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
反応器として、攪拌機のついた耐熱・耐圧のオートクレーブを用い、常温・常圧で気体である発泡剤であるブタンを、系内が20〜130℃の温度で、液体のまま添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
懸濁重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を300〜800μmの間の篩で分級し、発泡剤の沸点以上の温度で含浸させた発泡性スチレン系樹脂粒子であって、JIS標準篩による粒子径分布が、0.425〜0.71mmの範囲で80%以上であり且つ平均粒子径が0.45〜0.65mmである請求項1〜3のいすれかの項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を5〜45倍に予備発泡した発泡粒子であって、20℃で24時間経過した発泡粒子中の発泡剤として1〜6重量%のブタンを含有し、かつ発泡粒子の粒子径が500〜3000μmである発泡粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、成形して得られる発泡成形体。

【公開番号】特開2011−46791(P2011−46791A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194723(P2009−194723)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】