説明

発泡性スラリーおよび該発泡性スラリーによって作られた建築パネル

水と、水硬性成分の乾燥重量を基準として少なくとも50%の焼き石膏を含む水硬性成分と、発泡体と、消泡剤と、オレフィン系不飽和モノカルボン酸部分および(ポリ)オキシアルキレン部分を有するポリカルボキシレート分散剤と、遅延剤の第一部分と、遅延剤の第二部分とを包含する石膏スラリーについて述べる。本発明のある実施の形態においては、石膏スラリーに添加される前に、消泡剤は分散剤と組み合わされる。消泡剤および分散剤は物理的な混合、すなわち消泡剤が分散剤のポリマー上に付着した状態として、または、これらの組み合わせとして添加され得る。ある実施の形態においては、該石膏スラリーから石膏建築パネルが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性石膏スラリーに関する。より具体的には、気泡の分布を作り出す消泡剤を含む発泡性石膏スラリーに関する。該石膏スラリーは、建築パネルを製造するのに有用である。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年6月9日に出願された、同時係属中の米国特許出願第11/449924号(「Gypsum Products Utilizing A Two−Repeating Unit Dispersant And A Method For Making Them」)の一部継続出願であり、該出願は、2005年6月14日に出願され、現在は取り下げられた米国特許出願第11/152418号(「Gypsum Products Utilizing A Two−Rpeating Unit Dispersant And A Method For Making Them」)の一部継続出願である。これらの出願は、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、さらに、本出願と同時に出願された、米国特許出願第11/894029号(代理人整理番号:PF(59988))(「A Liquid Admixture Composition」)に関連する。該出願は、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
石膏の建築パネルは、建物のスペースの仕上げに安価であるため、高性能の製品である。硫酸カルシウム二水和物としても知られている石膏は、加熱し水分を失わせると、無水硫酸カルシウムおよび/または硫酸カルシウム半水和物を作り出す。これらは、焼き石膏(スタッコ)または焼き石膏(calcined gypsumもしくはPlaster of Paris)としても知られる。建築パネルは、乾燥焼き石膏(乾燥スタッコ)と水とを組み合わせて作られる。焼き石膏と水とを組み合わせると、石膏の結晶の連結マトリックスが形成される。焼き石膏の水和反応の後、過剰な水は熱により取り除かれ、その結果比較的強固なパネルが得られ、該パネルの表面は塗装や壁紙のような装飾の仕上げを行うのに良い表面となる。
【0005】
石膏の建築パネルは費用効果は高いが、比較的重い。該パネルは、その重さのため小規模の束で動かさなければならない。パネルを持つ作業者は、ボードを持ち上げ安定した場所まで運ぶのに疲労してしまう。さらに、重いパネルは運搬にも費用がかかってしまう。製品の密度を調整するための一つの方法は、石鹸ベースの発泡体を液状スラリーに添加することによる。すると、石膏マトリックスの中に空隙が作られ、気泡の周囲において焼き石膏(スタッコ)が硬化する。パネルが好ましくない特性となることを避けるため、気泡サイズを調整することが重要である。もし気泡が小さすぎれば、密度を変化させる効果を得るためには小さい気泡が多数必要となる。限られた空間において多数の気泡が存在する場所では、その結果として、石膏マトリックスは低い圧縮強度を有することになる。大きすぎる気泡は、強度の減少を引き起こし、さらに化粧紙の下で不体裁なふくれを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空隙サイズを混合させて石膏を形成すると、強固さを持ち表面の欠陥もない建築パネルを製造することが可能であることがわかった。種種の石鹸は、異なる特性を有する気泡を作り出す。いくつかの石鹸が形成する気泡は、壊れたり合体したりすることがほとんどなく、とても強固で分解しにくい。本発明の目的のために、安定性のある石鹸とは、空気の分散化を最大化し、石膏スラリーにおける使用量を最小化するよう発展されたものと定義する。他の石鹸は安定性が低く、発泡体を形成するが、石膏の存在下ではさらに不安定となる。安定した発泡体を形成する石鹸と、不安定な発泡体を形成する石鹸とを組み合わせると、石膏スラリー中において、より大きい発泡体の空隙の形成の調整を可能にする。本発明による実施の形態においては、米国特許第5643510号に記載の石鹸を組み合わせて利用しており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0007】
石膏を製造するために必要な水の量の削減もまた望ましい。焼き石膏を水和するために必要な水に過剰な分は、炉焼きによって取り除かれる。同様の流動特徴を維持しながら、石膏スラリー中の水の量を減らすと、炉焼きするために必要な燃料の費用の点で有利となる。
【0008】
ポリカルボキシレート分散剤を使用することで水の使用量を削減させる試みにおいて、ポリカルボキシレート分散剤は、所望の気泡サイズ分布を妨げ、より大きい空隙の形成を調整する能力も妨げるということがわかった。とても安定し小さい気泡の形成により、パネルの強度が損なわれた。従来のポリカルボキシレート分散剤の添加では、明らかに気泡の表面の化学的性質を変え、所望するコア構造を得難くする。所望するコア構造とは、スラリー中の気泡分布、または、多くの大きい空隙を含む硬化石膏中の空隙分布を有するように設計されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載するスラリーおよび方法によって、これらの課題のうちの少なくとも一つを除き、または弱める。特に本発明は、水と、水硬性成分の乾燥重量を基準として少なくとも50%の焼き石膏を含む水硬性成分と、発泡体と、消泡剤と、ポリカルボキシレート分散剤とを包含する、改良された石膏スラリーを提供する。該分散剤は、第一の繰り返し単位および第二の繰り返し単位から成り、前記第一の繰り返し単位は、オレフィン系不飽和モノカルボン酸繰り返し単位またはそのエステルもしくはその塩、あるいは、オレフィン系不飽和硫酸繰り返し単位またはその塩であり、前記第二の繰り返し単位は、一般式(I)、
【化1】

で表される。式I中、Rは、
【化2】

で表され、式I中、Rは水素またはC〜Cの脂肪族炭化水素基である。式II中Rは非置換または置換のアリール基、好ましくはフェニル基であり、Rは水素、あるいは、C〜C20の脂肪族炭化水素基、C〜Cの脂環式炭化水素基、C〜C14のアリール基または式、
【化3】

に属する基である。式III中、RおよびRは互いに独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を表し、Rは二価のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルカリール基である。pは包括的に0、1、2、3であり、mおよびnは独立して包括的に2、3、4、5の整数であり、xおよびyは独立して包括的に1〜350の整数であり、zは包括的に0〜200である。
【0010】
石膏スラリーにおける水を削減する方法は、水、焼き石膏、消泡剤および上述した分散剤を含む石膏スラリーを調合する工程を含む。遅延剤の第一部分がスラリーに添加され、該遅延剤の第一部分は実質上充分に攪拌機内における石膏の結晶の形成を妨げうる量である。遅延剤の第二部分もまたスラリーに添加され、該遅延剤の第二部分は前記遅延剤の第一部分の添加によって得られるより超えて、スラリーの流動性を充分に増加できる程の量である。
【0011】
遅延剤の両部分の添加は、攪拌機での石膏の固体化を防ぐだけでなく、スラリーの流動能力を増加させる。スラリーの流動性は一定を維持することが望ましいため、流動能力の増加は、同レベルの分散剤における水の削減、または同量の水の使用による分散剤の削減として現実化され得る。どちらの場合でも、生の材料の削減および費用削減の可能性という結果につながる。
【0012】
ある実施の形態では、消泡剤および分散剤がスラリーに添加される前に、消泡剤と併合された分散剤とを混合または組み合わせる工程を含む。本発明の少なくとも一つの実施の形態においては、消泡剤とスラリーとが物理的混合において組み合わされる。他の少なくとも一つの実施の形態においては、消泡剤は分散剤のポリマー構造上に付着される。消泡剤の物理的混合と付着との組み合わせもまた有用である。
【0013】
さらに、消泡剤が分散剤と一緒に発泡性スラリーに添加されれば、流動性が向上する。この流動能力の増加は、流動能力を与えるためにスラリーに添加する水量の削減、または、分散剤の量の削減という結果につながる。どちらの場合であっても、乾燥させるための燃料の使用量の削減または直接的な分散剤の使用量の削減から、費用の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】二つの異なる分散剤での空隙の直径に対する空隙量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の一つは、石膏スラリーとして示される。スラリーは、水と、水硬性成分と、発泡体と、消泡剤と、ポリカルボキシレート分散剤とを含む。他に記載がない限り、スラリーの構成成分は、全乾燥水硬性成分の重量を基準とした重量によって計量される。
【0016】
水硬性成分は、乾燥水硬性成分の重量を基準として、少なくとも50%の重量で焼き石膏を含む。好ましくは、水硬性成分中の焼き石膏の量は50%より大きい。本発明の他の実施の形態では、乾燥水硬性成分の重量を基準として65%より大きい、または、80%より大きい焼き石膏を含む水硬性成分を利用する。多くのウォールボードの形態において、水硬性材料は実質的に全てが焼き石膏である。α型またはβ型焼き石膏(スタッコ)も含むがこれらに限らず、任意の形態の焼き石膏が使用され得る。無水硫酸カルシウム、合成石膏または粉末石膏(ランドプラスター)の使用もまた意図している。セメントおよびフライアッシュを含むその他の水硬性材料を、任意にスラリー中に含有させてもよい。
【0017】
発泡体は、最終製品の密度を調整するためにスラリーに加えられる。発泡性石膏製品の作製において有用であることが公知である、任意の従来の発泡剤を使用することができる。そのような発泡剤の多くはよく知られており、容易に市販のものを入手することができる。例えば、HYONICラインの石鹸製品(GEO Specialty Chemicals社、ペンシルバニア州アンブラー)を入手することができる。発泡体および発泡石膏製品を調製するための方法は、米国特許第5683635号に開示されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。該特許によって、第一の発泡剤と第二の発泡剤との割合を変えることによって、発泡体サイズ分布において大きい気泡が包含されることが教示される。発泡体の気泡サイズを調整することは、完成パネル製品の強度にとって重要である。第一の発泡剤は、全発泡体のトータルの重量を基準として、約65%〜約85重量%である。
【0018】
第一の発泡剤は、例えば、不安定な気泡を発生させるものが有用であり、以下の式で表される。
【0019】
【化4】

【0020】
Xは2〜20までの数であり、Yは0〜10の数であり少なくとも該発泡剤の50重量%は0より大きく、Mはカチオンである。
【0021】
第二の発泡剤は、例えば、安定な気泡を発生させるものが有用であり、以下の式で表される。
【0022】
【化5】

【0023】
R’は2〜20の炭素原子を含むアルキル基であり、Mはカチオンである。好ましくは、R’は8〜12の炭素原子を含むアルキル基である。第一または第二の発泡剤のそれぞれのカチオンは独立に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、四級アンモニウムおよびこれらの混合物のうちの少なくとも一つを含む。
【0024】
ポリカルボキシレート分散剤と一以上の消泡剤とを添加すると、さらに気泡のサイズを変えられることを発見し、これにより、大きい空隙が形成を調整できることがわかった。焼き石膏(スタッコ)が硬化する際、硫酸カルシウム二水和物の結晶の連結マトリックスは周囲に気泡を形成し、硬化した材料中に空隙を残す。以下の説明では、石膏パネルコアに適用するときの典型的な空隙サイズ分布が考察される。しかし、本発明のスラリーは、他の石膏を基とする製品において有用となり得ることが容認される。
【0025】
図1は、分散剤による空隙のサイズ分布の変化の様子の例である。ポリカルボキシレート分散剤を使用した場合、スラリー中において、小さく安定した気泡が多数形成される。これは、グラフ中「356」として示すMELFLUX PCE 356 L/35%NDを用いて作られた、石膏製品の空隙サイズ分布のグラフに見られる。石膏製品中に消泡剤および任意の界面活性剤を包含させ、「410」として示されている(MELFLUX PCE 410 L/35%FFを用いて作られた)製品は、小さい空隙の数が減少しており、空隙の直径に広い分布が見られ、大きい空隙の数が増加している。空隙の直径に広い分布を持つ石膏製品は、密度が同じで小さい空隙を多数持つ石膏製品よりも強固である。
【0026】
本発明のある実施の形態では、安定な石鹸および不安定な石鹸のブレンドを使用する。少なくとも一つの実施の形態においては、安定な石鹸は8〜12の炭素原子の長さのアルキル鎖、および、1〜4単位の長さのエトキシ基の鎖を持つ従来の石鹸である。不安定な石鹸の一例では、6〜16の炭素単位の長さのアルキル鎖を持つエトキシ化されていない石鹸がある。ある実施の形態においては、圧倒的な量の安定な石鹸を利用する。
【0027】
発泡体が製品に添加されるとき、ポリカルボキシレート分散剤は計量水と発泡水との間で任意に分けられる。または、二つの異なる分散剤が、計量水および発泡水において使用される。これらは硫酸カルシウム半水和物を加える前に行う。この方法は、同時係属中の米国特許出願第11/152404号(「Effective Use of Dispersants in Wallboard Containing Foam」)に開示されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0028】
考えられる分散剤は、ポリカルボキシレート分散剤である。使用される分散剤の範囲は、水硬性成分の含有量を基準として、約0.01重量%〜約1.0重量%の固体分散剤である。ある実施の形態においては、ポリカルボキシレート分散剤はエーテル結合したポリオキシアルキレン鎖を多数含有する。二つの有用なポリカルボキシレート分散剤の例は、MELFLUX 1641F(「1641」)分散剤およびMELFLUX 2641F(「2641」)分散剤である。どちらもBASF Construction Polymers GmbH社(ドイツ国トロストベルグ)から入手できる。1641分散剤は、米国特許第5798425号に記載されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。この分散剤は、二つのモノマーからなるコポリマーであり、ビニルエーテルとオレフィン系不飽和エステル基とを有する。他の適したクラスのポリカルボキシレート分散剤は、2641分散剤に例される三つのモノマーからなるものである。このコポリマーおよびその製法は、米国特許第6777517号に記載されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0029】
スラリーのある実施の形態において使用される別の分散剤は、二つの繰り返し単位を含む。第一の繰り返し単位は、オレフィン系不飽和モノカルボン酸繰り返し単位、または、そのエステルもしくはその塩、あるいは、オレフィン系不飽和硫酸繰り返し単位またはその塩である。第一の繰り返し単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アリールスルホン酸およびビニルスルホン酸が挙げられる。一価または二価の塩が、この酸基の水素の位置に適切である。水素を炭化水素基に置き換えて、エステルを形成することも可能である。好ましくは、繰り返し単位には、アクリル酸またはメタクリル酸を含む。
【0030】
第二の繰り返し単位は、式Iを満たす。
【0031】
【化6】

【0032】
は、式IIによる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル基から引き出される。
【0033】
【化7】

【0034】
式IおよびIIを参照すると、このアルケニル繰り返し単位は、ポリマー主鎖とエーテル結合との間に、C〜Cの任意のアルキル基を含む。pの値は包括的に0、1、2、3である。好ましくは、pは0または1である。Rは、水素原子またはC〜Cの脂肪族炭化水素基であり、この脂肪族炭化水素基は直鎖であっても分岐していても、飽和であっても不飽和であってもよい。Rは、非置換または置換アリール基、好ましくはフェニルである。好ましくは、例えば、繰り返し単位はアクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0035】
式IIにおけるポリエーテル基は、酸素原子によって結合された、少なくとも二つのアルキル基を含む、C〜Cの複数のアルキル基を含む。mおよびnは独立して包括的に2、3、4、5の整数であり、好ましくはmおよびnの少なくとも一つは2である。xおよびyは独立して包括的に1〜350の整数である。zの値は包括的に0〜200である。Rは水素、または、C〜C20の脂肪族炭化水素基、C〜Cの脂環式炭化水素基、C〜C14の置換アリール基もしくは少なくとも式III(a)、III(b)およびIII(c)に属する基である。
【化8】

【0036】
上記式において、RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を表す。Rは二価のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基である。
【0037】
このグループの分散剤は、「Melflux PCE」分散剤として言及される。ウォールボードにおいて有用であると知られているこのシリーズにおけるポリマーには、MELFLUX PCE 211 L/35%ND、MELFLUX PCE 239 L/35%ND、MELFLUX PCE 267 L/35%NDおよびMELFLUX PCE 356 L/35%NDが含まれる。このクラスの分散剤およびこれらの製造方法については、2006年6月12日に出願された米国特許出願第11/451625号(「Polyether−Containing Copolymer」)にさらに記載されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。別の好ましい分散剤は、MELFLUX PCE 410 L/35%FF(「410」)であり、本出願と同時に出願された、米国特許出願第11/894029号(代理人整理番号:PF(59988))によって製造され、前述したように参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0038】
分散剤の分子量は、好ましくは約20000〜約60000ダルトンである。驚くべき事に、さらに低い分子量の分散剤は、60000ダルトンよりも分子量が大きい分散剤よりも、より長い硬化時間の遅延を引き起こすことがわかった。しかし、石膏の試験では、分散剤の分子量が60000ダルトンを超えると、分散剤の効果は低下することが示されている。
【0039】
多くのポリマーは、同じ二つの繰り返し単位を用い、それらの配分を変化させて作製することができる。酸含有繰り返し単位とポリエーテル含有繰り返し単位との比率は、直接的に電荷密度に関係する。好ましくは、コポリマーの電荷密度は、約300〜約3000μ当量電荷/gコポリマーの範囲内である。しかし、電荷密度の増加は、さらに分散剤の遅延効果の増加をもたらすことも発見された。電荷密度の低い分散剤は、電荷密度の高い分散剤よりも、硬化時間の遅延が小さい。硬化時間の遅延は、高電荷密度の分散剤により得られる効果の増加と共に増加するため、少ない水、優れた流動性および合理的な硬化時間でスラリーを作製するには、電荷密度を中くらいの範囲にしておく必要がある。より好ましくは、コポリマーの電荷密度は、約600〜約2000μ当量電荷/gコポリマーの範囲内である。
【0040】
このMelflux PCE分散剤は、特に石膏での使用によく適している。理論に制約されることは望まないが、酸性の繰り返し単位が半水和物結晶に結合し、骨格上の第二繰り返し単位の長いポリエーテル鎖が分散機能を果たすものと考えられる。ポリエーテル鎖の長さ、全体の分子量および電荷密度のバランスをとることが、石膏用の分散剤の重要な要素である。Melflux PCEは他の分散剤よりも遅延性が小さいので、石膏製品の製造工程において支障をきたす可能性が少ない。この分散剤は、任意の有効量で使用される。大抵の場合、選択される分散剤の量はスラリーの所望の流動性による。水の量が減少すると、一定のスラリーの流動性を保つために、より多くの分散剤が必要となる。好ましくは、焼き石膏(スタッコ)の乾燥重量を基準として、分散剤は約0.01%〜約0.5%において使用される。さらに好ましくは、同様の基準において、分散剤は約0.05%〜0.2%において使用される。液状の分散剤を計量する際、分散剤の分量としてポリマー固形分のみを考慮し、分散剤からの水は水/焼き石膏(スタッコ)の比率を計算する際に考慮する。この分散剤は、ボードの少なくとも50%以上が10分以内に硬化する、高速ウォールボード製造工程を可能にする。促進剤の非存在下でさえも、少なくとも50%の硬化は10分以内に達成可能である。
【0041】
コポリマー分散剤を作製するための繰り返し単位の重合は、当業者にとって公知の任意の方法によって実行される。好ましい重合方法は、2006年6月12日に出願し、2006年12月14日に公開された米国特許第2006/0281886号公報(「Polyether−Containing Copolymer」)で教示されており、参照されることにより本明細書に取り込まれる。
【0042】
一以上の消泡剤が、気泡の安定性を減らすためにスラリーに加えられると、それにより気泡サイズ分布が増加する。ポリカルボキシレート分散剤への一以上の消泡剤の添加は、活性型の気泡を作り出すことがわかった。活性型の気泡は、気泡サイズ分布を維持しながら継続的に合体する。焼き石膏(スタッコ)が硬化する際、硫酸カルシウム二水和物の結晶の連結マトリックスは周囲に気泡を形成し、硬化材料中において空隙を残す。エチレンオキシド/プロピレンオキシド−(PO−EO)−単位(ダウ社(ミシガン州ミッドランド)のDowfax)を含むコポリマー、EO−PO−EOもしくはPO−EO−POのブロックポリマー(それぞれ、BASF社のPLURONIC)、または、Wacker Chemie AG社のシロキサンのようなポリシロキサンの分散系のような非イオン性の界面活性剤を含むスラリーに、任意の消泡剤が添加され得る。
【0043】
ある実施の形態では、分散剤と離して添加され、シリコン化合物は安定した乳状液の形状における重合可能なシロキサンである。ある実施の形態では、攪拌機においてスラリーに添加される。その後、スラリーは形づくられ、高架橋結合のシリコン合成樹脂を形成するためのシロキサンの重合を促進させる環境において乾燥される。好ましくは、高架橋結合のシリコン合成樹脂を形成するためのシロキサンの重合を促進する触媒も、スラリーに添加する。
【0044】
シロキサンは多くの場合、流動的な直線状の水素修飾シロキサンであるが、環状の水素修飾シロキサンもあり得る。これらようなシロキサンは、高架橋結合のシリコン樹脂を形成することができる。これらの流動体は、当業者によく知られており、市販のものを入手できる。典型的には、有用な直線状の水素修飾シロキサンは、次の一般式で表される。
R”HSiO2/2
【0045】
R”は、飽和または不飽和の一価の炭化水素基を表す。好ましい実施の形態においては、R”はアルキル基を表し、最も好ましくはR”はメチル基を表す。
【0046】
スラリーの形成に使用される水とシロキサン乳状液とが、完全に混合するために充分な時間を供給するため、好ましくは、スラリーが形成される前にシロキサン乳状液を計量水に添加しておく。好ましくは、シロキサン乳状液は計量水への添加より前に安定させておき、スラリー中ではよく分散させておく。特に、続く任意の添加物の添加および続く工程に進む間より前に安定させておく。1〜2分の間の高強度の攪拌機でのシロキサン流動体と少量の水との結合によって、安定したシロキサン/水乳状液は任意に調製される。化学乳化剤は必要ない。このように形成された乳状液は充分に安定しており、シリコン流動体は計量水と混合し、重合が起こっている間分散したままである。あらかじめ作ったシシロキサン流動体もまた有用である。
【0047】
本発明のある実施の形態では、メチルハイドロジェンポリシロキサン流動体を使用する。これは、Wacker−Chemie GmbH社でSILRES BS−94という名前のシロキサンとして販売されている。好ましくは、焼き石膏(スタッコ)の乾燥重量を基準として、0.3〜約1.0重量%のBS−94流動体を使用する。少なくとも一つの実施の形態では、同様の基準において、約0.4〜約0.8重量%の量のシロキサン流動体を使用する。WACKER BS Powder AおよびWACKER BS Powder Gのような、粉末のメチルハイドロジェンポリシロキサンもまた有用である。
【0048】
ハイドロジェンポリシロキサンは、反応性のシラノール化合物を形成することによって硬化する。本来の場所におけるシロキサン重合はゆっくりと進行し、完全に硬化するのに何日も何週間もかかる。触媒の追加はシロキサンの硬化率を改善する。アルカリ土類酸化物および水酸化物を含む従来の技術において知られている任意の触媒が有用である。少なくともある実施の形態においては、硬焼または燃焼させたマグネシウム酸化物の触媒を使用する。Baymag 96(Baymag、Ink.、カナダ国アルバータ州カルガリー)は、市販で入手でき、触媒として向いている硬焼したマグネシウム酸化物である。
【0049】
比較的少量の触媒が必要である。焼き石膏の乾燥重量を基準として約0.1〜約0.5重量%、好ましくは0.2〜約0.4重量%が使用される。好ましくは、触媒は点火による消失が0.1重量%よりも小さく、少なくとも0.3m/g以上の表面の領域を有する。シロキサン硬化のためのマグネシウム酸化物触媒の使用方法におけるさらなる追加情報は、2006年2月16日に公開された米国特許出願第2006/0035112号公報に教示されており、参照されることにより本明細書に取り込まれる。
【0050】
消泡剤は、かなり多くの異なった方法において、任意にスラリーに添加される。少なくとも一つの実施の形態では、消泡剤および分散剤は個別の化合物として分離して添加される。分散剤の消泡剤に対する重量比率は、約1000:1から約1:1まで幅がある。ポリカルボキシレート分散剤と混合したスラリーへの消泡剤の添加も考えられる。しかし、発泡水への消泡剤の添加もまた可能である。
【0051】
本発明の他の実施の形態においては、消泡剤は、石膏スラリーに加えられる前に、分散剤と液体状混合物中の任意の界面活性剤と組み合わされる。MELFLUX PCE 410 L/35%FF(BASF Construction Polymers GmbH社)は、消泡剤、任意の界面活性剤および水と組み合わされる分散剤の例であり、長時間にわたって改善された安定性を供給し、ウォールボード製品中において均等に分散させることを可能にする。任意の界面活性剤は、水溶性の混合物中において消泡剤を安定化させるのに有益である。有益な界面活性剤には、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロックのコポリマー、アルコールエチルオキシドR13−(EO)−H(R13は、1〜20の炭素原子を持つ脂肪族炭化水素基、アセチレニックジオール、モノアルキルポリアルキレン、エトキシレイトノニルフェノール、アルキルエーテルスルフォネイトおよびこれらの組み合わせからなる基から選ばれる)、スチレン/マレイン酸のコポリマー、2〜20の炭素原子の長さの炭素鎖を持っている脂肪族アルコールアルコキシレートまたはアルコール、ならびに、ポリアルキレン基を含む。これらの界面活性剤の組み合わせを使用するのも考えられる。界面活性剤に対する分散剤の重量比率は、約1000:1〜約1:1である。
【0052】
本発明のさらなる実施の形態においては、消泡剤の第一部分が分散剤の鎖に付着し、一方消泡剤の第二部分は付着しないことによる場合も考えられる。これは、例えば、消泡剤の第一部分のみ分散剤のポリマー鎖への付着が成功する場合に起こるのだろう。消泡剤の第二部分は、付着した消泡剤による消泡機能に加えた消泡機能を供給するため、水溶性の混合物中に存在し得る。もし水溶性の混合物中に存在しているのなら、付着していない消泡剤は物理的に混合液中に分散しているのだろう。もし石膏スラリー中に存在しているのなら、付着していない消泡剤は実質的にスラリー中に分散しているのだろう。
【0053】
分散剤に付着する第三部分の消泡剤がある場合、追加のモノマーはコポリマー中の約5mol%までか、または、約0.05〜約3mol%に相当すべきである。第三部分は、例えば式IV(a)およびIV(b)の構造を含む。
【化9】

【0054】
式IV(a)において、Rは、構造単位がアクリル酸であるかメタクリル酸であるかによって、HまたはCHになることが可能である。式IV(b)において、Rは水素、1〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8の炭素原子を有する環式脂肪族炭化水素基、または、6〜14の炭素原子を有するアリール基であり、該炭素原子は置換されていてもよい。Sは、−H、−COOMまたは−COOR11でも可能である。aは1/2または1である。Mは、水素、一価もしくは二価の金属カチオン、アンモニウムイオン、または、有機アミン基である。R11は、3〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8の炭素原子を有する環式脂肪族炭化水素基または6〜14の炭素原子を有するアリール基である。脂肪族炭化水素基は、直鎖であっても分岐していても、飽和であっても不飽和であってもよい。好ましくは、環式脂肪族炭化水素基はシクロペンチルまたはシクロヘキシル基である。好ましくは、アリール基はフェニルまたはナフチル基である。T=−COORの場合は、S=COOMまたは−COORである。TおよびSの両方が−COORの場合には、一致する構造単位はジカルボキシルエステルから得られる。構造単位の約0.1〜5mol%が消泡剤部分である。
【0055】
これらのエステル基から離れて、構造単位はその他の疎水性構造の成分もまた含んでもよい。これらは、式Vで表す、ポリプロピレンオキサイドまたはポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド誘導体を含む。
【化10】

【0056】
xは1〜150であり、yは0〜15である。ポリプロピレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド)誘導体は、Uを介して式IV(a)と一致する構造単位のエチル基と結合し、U=−CO−NH−、−O−または−CH−O−である。構造単位はこのように、式IV(a)の構造単位と一致するアミド、ビニルエーテルまたはアリールエーテルとなる。R10はR(上述)と同様に決め得る。
【化11】

【0057】
=−NH−CO−、−O−または−OCH−であり、Sは上述のように決められる。これらの化合物は、式IV(a)と一致する二官能性のアルケニル化合物の、ポリプロピレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド)誘導体である。
【0058】
さらに、疎水性構造の成分であるため、式IV(a)の化合物はポリジメチルシロキサン基を含んでもよく、その場合式IV(a)において、T=−W−Rとなる。Wは、以下のように表される。
【化12】

【0059】
(ポリジメチルシロキサン基については、後に示す。)RはRと同様に決め得る。nは、2〜100が可能である。
【0060】
ポリジメチルシロキサン基は、式IV(a)のエチレン基に直接結合し得るだけでなく、−CO−[NH−(CH]−W−R12または−CO−O(CH)−W−R12を経由しても結合し得る。R12は好ましくはRと同様に決められ、s=1または2であり、z=0〜2である。R12は、以下の式の基でもよい。
【化13】

【0061】
化合物は、式IV(a)の二官能性のエチレン化合物であり、それぞれアミドまたはエステル基を介し、共重合した一つのエチレン基において互いに結合する。
【0062】
同様の状況が式IV(a)の化合物の、T=(CH)z−V−(CH)z−CH=CH−Rに適用され、該式においてz=0〜4、Vはポリジメチルシロキサン基Wまたはa−O−CO−C−CO−O−基のどちらかであり、Rは上述した通り決められる。これらの化合物は、ジアルキルフェニルジカルボン酸エステルまたはジアルキレンポリジメチルシロキサン誘導体から得ることができる。
【0063】
代替として、スチレンやアクリルアミドのような他のモノマーを、最初の二つのモノマーと共重合させてもよい。疎水性の化合物を使用してもよい。エステル構造単位、ポリプロピレンオキサイド、または、ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド(PO/PE)、ポリブチレンオキサイド−ポリオキシエチレン(PB/PE)もしくはポリスチレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド(PS/PE)単位が好ましい。米国特許第5798425号および米国特許第6777517号に開示されている化合物もまた、好ましい。
【0064】
好ましくは、水溶性混合物は、水を発泡させる攪拌機に入れる前の計量水に、または離れた流れとして攪拌機に添加する。他の工程の間における水溶液の添加もまた考えられる。
【0065】
水は、スラリーが流動可能となる任意の量を加える。使用される水の量は、スラリーが使用される用途、使用される正確な分散剤、使用される焼き石膏(スタッコ)および添加物の特性によって大きく変化する。焼き石膏(スタッコ)に対するウォールボードの水の比率(「WSR」)は、好ましくは、焼き石膏(スタッコ)の乾燥重量を基準として、約0.1〜約0.9である。一般に、約0.2〜0.85のWSRが好ましい。床用組成物は約0.17〜約0.45のWSRが好ましく、さらに好ましくは約0.17〜約0.34のWSRを使用する。成形または鋳造可能な製品は、好ましくは約0.1〜約0.3の、さらに好ましくは約0.16〜約0.25のWSRで水を使用する。WSRは、Melflux PCE分散剤の適切な添加に基づく実験室試験においては、0.1以下まで減らすことができる。
【0066】
スラリーを作製するために使用される水は、スラリーおよび硬化石膏の両方の特性を最大限制御するために、できるだけ純粋でなければならない。促進剤から硬化抑制剤までの多岐にわたる塩および有機化合物は、スラリーの硬化時間を改善することが周知である。ある不純物は、二水和物結晶の連結マトリックスが形成するときに不規則を引き起こして、硬化製品の強度を低下させる。製品強度および堅さはそれゆえ、できるだけ汚染物質を含まない水の使用によって向上できる。
【0067】
驚くべき事に、分散剤のMelflux PCEファミリーと一緒に遅延剤を使用すると、分散剤の効果が期待以上に増加することがわかった。通常、攪拌機中でスラリーの連結部分に結合し、固体が成長するのを防ぐため、遅延剤の最初の一部分がスラリーに添加される。もし焼き石膏が硬化し始めれば、二水和物結晶がスラリーの連結部分に結合して攪拌機の内側に析出する。いくつかの遅延剤は結晶化の始まりを遅延させ、それによってスラリーが攪拌機中にある間、石膏が硬化しスラリーの連結部分に結合した塊を形成するのを防ぐ。スラリーの塊は、壊れやすくなり、製品および/または該製品の生産に、負の衝撃を与える。硬化遅延剤の第一の部分は、通常最大約1lb/MSF(4.9g/m)である。特有のスラリーに使用される正確な遅延剤の量は、石膏およびその他の使用される生の材料の特性、算出方法、添加物の量およびタイプによって、大きく変化する。
【0068】
しかし、攪拌機を清潔を保ち、実質的な石膏の固体化防止の必要性を超え、スラリーを流動化させるために、Melflux PCE分散剤の存在下では、遅延剤の第二の部分によって、必要な水、分散剤またはその両方の量を削減することが可能となるようである。さらに、遅延剤の量を直線的に追加した場合、PCEの削減量は非直線的に変化する。例えば、VERSENEX 80E Chelating Agent(Dow Chemical Co.、ミシガン州ミッドランド)とMelflux 410 L/35%FF分散剤とを相乗的に使用したら、一定の流動性および同様の硬化特徴のスラリーを基準として、分散剤の量が37%まで減少した。本発明のある実施の形態では、遅延剤の第一の部分に加え、遅延剤の第二の部分は約0.05〜0.3lb/MSFである。ある実施の形態では、遅延剤の第二の部分の範囲は、約0.05〜0.5lb/MSF、または、約0.5〜1lb/MSFである。工程で生じる問題を克服する必要がある場合には、より多い第二の部分が使用され得る。もし、製品がナイフで切るのに軟らかすぎる場合、特定量の促進剤を遅延剤を打ち負かすために添加したらよい。
【0069】
遅延剤の第一の部分および遅延剤の第二の部分は、それぞれ個々にスラリーに添加されるか、または組み合わせた量として添加される。遅延剤は、遅延剤の第一の部分でも、遅延剤の第二の部分でも、または両方でも、いずれであっても有用である。本発明のある実施の形態では、ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)分散剤を利用する。少なくとも一つの実施の形態では、VERSENEX 80Eとして知られている、ペンタナトリウムDTPAを使用する。他の遅延剤は、アミノトリ(メチレンホスホン酸)五ナトリウム塩(Dequest 2006分散剤、Thermphos Trading GmbH社)、酒石酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸およびこれらと対応する塩(Na、K、NH、Li)を含む、PCEの効力と同様の効力を見せると期待できる遅延剤である。
【0070】
石膏スラリーが用いられる特定の用途において典型的であるが、スラリーにはさらなる添加物も加えられる。乾燥促進剤(最大約45lb./MSF(219g/m))を加えることによって、水和反応の起こる比率が調整される。「CSA」は、95%の硫酸カルシウム二水和物を5%の糖とともに粉砕し、250°F(121℃)まで加熱して糖をカラメル化させた硬化促進剤である。CSAは、United State Gypsum Company、Southard、OK plantから入手可能であり、米国特許第3573947号に従って製造され、参照されることにより本明細書に組み込まれる。硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムおよび重硫酸ナトリウムは、他の好ましい促進剤である。HRAは、硫酸カルシウム二水和物100ポンド当たり、糖約3〜25ポンドの比率で糖とともに粉砕した硫酸カルシウム二水和物である。これは、さらに、米国特許第2078199号に記載されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。米国特許第4019920号に教示されているように、デンプンを糖の代わりに使用してもよく、参照されることにより本明細書に組み込まれる。他の促進剤として、本技術の当業者に公知のものを使用してもよい。
【0071】
湿潤石膏促進剤またはWGAとして公知である、別の促進剤も好ましい促進剤である。湿潤石膏促進剤の使用および湿潤石膏促進剤の作製方法は、米国特許第6409825号に教示されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。本促進剤は、有機ホスホン化合物、ホスフェート含有化合物またはその混合物からなる群より選択される、少なくとも一つの添加物を含む。湿潤石膏促進剤は、ボード製品の1000平方フィート当たり約5〜約80ポンド(24.3〜390g/m)の範囲の量で使用される。
【0072】
本発明のある実施の形態では、最終製品の一つ以上の特性を改良するために、添加物が石膏スラリーに含まれる。添加物は当分野で公知である様式および量において使用される。濃度は、完成ボードパネルの1000平方フィートあたりの量(「MSF」)で報告される。ガラス繊維または紙繊維は、任意でスラリーに添加される。完成石膏ボードパネルの耐水性を改良するために、ワックスエマルジョンまたはシロキサンが添加される。
【0073】
ある実施の形態においては、製品の強度を向上させ、硬化石膏の垂れ下がり抵抗(sag resistance)を改良させるために、石膏スラリーにトリメタリン酸化合物を添加する。好ましくは、トリメタリン酸化合物の濃度は、焼き石膏の重量を基準として、約0.004%〜約2.0%である。トリメタリン酸化合物を含む石膏組成物は、米国特許第6342284号および第6632550号に開示されており、両方参照されることにより本明細書に組み込まれる。例示的なトリメタリン酸塩は、Astaris、LLC.(ミズーリ州セントルイス)から入手可能な、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が含まれる。スラリーのpHを上昇させる石灰または他の改質剤と共にトリメタリン酸を使用するときは、注意を払わなければならない。約9.5のpHを上回ると、トリメタリン酸はその製品を強化する能力を失い、スラリーはひどく遅延性となる。
【0074】
かび、白かびおよび菌類の成長を抑えるための、ウォールボードへの他の潜在的な添加物は、殺生物剤である。選択する殺生物剤およびウォールボードの使用目的に応じて、被覆剤、石膏コアまたは両方に殺生物剤を添加することができる。殺生物剤の例には、ホウ酸、ピリチオン塩および銅塩が含まれる。殺生物剤は、被覆剤または石膏コアのどちらかに添加することができる。使用する際には、500ppm未満の量で、殺生物剤を被覆剤中で使用する。
【0075】
さらに、石膏組成物は、アルファ化デンプンまたは酸修飾デンプンのような、デンプンを任意に含むことができる。アルファ化デンプンを含むと、硬化し乾燥させた石膏鋳造物の強度が増加し、紙の剥離の危険性が最小限に抑えられる、または回避される。例えば、少なくとも約185°F(85℃)の温度の水中で生デンプンを調理することや他の方法等、生デンプンをアルファ化する方法が当業者には理解されるだろう。アルファ化デンプンの適切な例には、Bunge Milling Inc(ミズーリ州セントルイス)から入手可能なPCF1000デンプンと、Archer Daniels Midland Companyから入手可能なAMERIKOR818およびHQM PREGELデンプンが含まれるが、これらに限定されない。含まれている場合、アルファ化デンプンは任意の適切な量で存在する。例えば、含まれている場合でも、乾燥粉末中または液体中にアルファ化デンプンが、焼き石膏(スタッコ)の重量の約0.5%〜約1.5%の固体状の量で存在するように、硬化石膏組成物を形成するために使用される混合物に添加され得る。
【0076】
製品の特定の特性を修正するために、必要に応じて他の公知の添加物を使用することもできる。ボード端部のペーパーボンドを改良するためには、デキストロースのような糖類を使用する。剛性が必要な場合には、一般にホウ酸を添加する。バーミキュライトの添加によって難燃性を向上させることができる。これらの、また他の公知の添加物が、本発明のスラリーおよびウォールボード調合物において有用である。
【0077】
操作にあたって、焼き石膏はコンベヤーで攪拌機に向かって運ばれる。攪拌機に入る前に、乾燥硬化促進剤などの乾燥添加物は、粉末状焼き石膏に添加される。他の添加物も水に加えておいてもよい。これは、該添加物が液体形状の場合、特に都合がよい。ほとんどの添加物では、スラリーに添加物を加えることに関する制限はなく、添加物は好都合であるどの機材または方法を使用して添加してもよい。Melflux PCE分散剤を使用した場合、焼き石膏の添加の前に、該分散剤を水に添加することが重要である。
【0078】
発泡性スラリーは、軟らかく柔軟なブーツ(boot)の中で、紙表面のシート上に置かれ、該シートの幅にわたって広がってボードラインに向かって進む。二番目の紙表面シートが任意にスラリー上に配置され、連続的な石膏ボードのサンドイッチを形成する。サンドイッチは成形プレートの下に供給され、成形プレートは軟らかいスラリーの表面を押しつけ、成形ボードを一貫した厚さになるようにする。
【0079】
ある実施の形態では、空隙サイズ分布の優れた調整をするために、石膏製品は反復の工程によって製造される。特定の製品にとっての最適な空隙サイズ分布とは、いくつかの場合、ローカルマーケットによって部分的に決められる。生の材料または他の工程の状況の変化においても、空隙サイズ分布に影響を与え得る。所望の空隙サイズ分布を得るには、または条件の変化の元でも分布を維持するには、空隙サイズ分布に変化または修正を作ることが有利である。ある実施の形態では、ポリカルボキシレート分散剤および消泡剤の量および種類を決めた後でさえも、空隙サイズ分布は変更可能である。この方法を用いて調整が行われている際、他の工程の条件、特に焼き石膏(スタッコ)に対する水の比率は実質的に一定を保っていると考えられる。
【0080】
この方法では、一以上の石鹸による水溶性石鹸混合物の最初の濃度、および、発泡水に変化をもたせる。種種の実施の形態における、水溶性石鹸混合物中の石鹸の重量濃度の有用な範囲は、約0.1%〜約2%、約0.1%〜約1.5%、約0.2%〜約1%、約0.15%〜約0.75%、約0.3%〜約0.75%、約0.25%〜約0.5%、約0.2%〜約0.4%、および、約1%〜約2%である。
【0081】
発泡体は、水溶性石鹸混合物から予め生成させる。発泡体を作る一つの方法は、石鹸の溶液と空気とを混ぜる発泡体発生器を使用することである。攪拌、乱流および混合を含む、石鹸と空気を結合させ、気泡を形成させる任意の混合方法を使用することができる。水および空気の量は、特定の濃度の発泡体を生成するように調整される。発泡体のボリュームの調整は、乾燥製品全体の重量の調整が利用される。
【0082】
そのような発泡体混合物は、前もって「オフライン」でブレンドされ得る。換言すれば、発泡性石膏製品の調製工程から分かれている。しかし、好ましくは、混合工程の完全な「オンライン」工程のように、第一および第二の発泡体を同時に連続的にブレンドする。これは、例えば、異なる発泡体の分かれた流れをポンピングし、これらの流れを一緒にまたは丁度前に、水溶性発泡体の流れを発生させるために用いられる発泡体発生装置を持ってくることによって達成し得る。その後、該水溶性発泡体の流れは焼き石膏スラリーの中に入れられ混合される。このようにブレンドすることによって、ブレンド中における第一および第二の発泡体の比率は単純かつ効果的に、(例えば、分かれた流れの一つまたは両方の流動率を変えることによって)発泡性硬化石膏製品における所望の空隙特徴を達成するように調節され得る。そのような調整が必要かどうかを決めるためには、完成製品での実験において、そのような調整がなされ得るだろう。そのような「オンライン」のブレンドおよび調整のさらなる記載は、前述したように参照されることによって組み入れた、米国特許第5643510号および第5683635号によって見ることができる。
【0083】
石膏スラリーは、計量水、水硬性成分、消泡剤およびポリカルボキシレート分散剤を組み合わせ、均一なスラリーが得られるまでこれらを混合することにより調製される。好ましくは、分散剤は、計量水に、発泡水に、計量水と発泡水とに分け、または、攪拌機に直接添加される。乾燥組成物は焼き石膏(スタッコ)と組み合わされ、コンベヤーによって攪拌機に動かされる。コンベヤーが動く際に、粘土および硬化促進剤を含む任意の乾燥組成物が、焼き石膏(スタッコ)に添加されてもよい。乾燥組成物および計量水は、石膏スラリーを形成するために、連続的に、高剪断攪拌機に加えられる。垂れ下がり抵抗(anti−sag)剤および硬化遅延剤のような、任意の湿潤組成物は、直接攪拌機に加えられる。計量水、分散剤または両方の量は、以下に詳細に記載するスランプパティー(slump patty)の一定のサイズを維持するために変化する。
【0084】
スラリーおよび予め発生させた発泡体は、発泡性石膏コアを作るために組み合わされる。石膏スラリーおよび予め発生させた発泡体の組み合わせ方法の一つは、発泡体を加圧し、無理にスラリーの中に入れることである。少なくとも一つの実施の形態においては、発泡体を分配するためのフォームリングを使用する。フォームリングは、流れるスラリーが該フォームリングを通ることができるような形状をした装置である。スラリーがリングを通った時に、スラリーの中の加圧された発泡体を流出させるため、フォームリングは一以上の射出口(jet)または小さい穴(slot)を含んでいる。フォームリングの使用については、米国特許第5683635号に開示されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。発泡体およびスラリーの別の結合方法は、発泡体の直接的な攪拌機への追加である。
【0085】
発泡性石膏コアの空隙サイズ分布は、最終的に、水溶性石鹸混合物中における石鹸濃度の調節によって調整することが可能である。発泡性石膏コアを調整した後に、石膏コアの内部を点検することで空隙構造が明らかになる。最初のまたは先の濃度から、石鹸濃度を変化させることによって、空隙サイズ分布の変化を作り出す。もし、内部における小さい空隙の分画が大きすぎるのなら、水溶性石鹸混合物における石鹸濃度は減らされる。もし、とても大きい長方形または不規則な形状の空隙がかなり多く見つけられた場合、石鹸濃度は増加させるべきである。最適な空隙サイズ分布は、製品、位置または生の材料によって変えてもよいが、どのように決められるかにかかわらず、この工程の技術は所望の空隙サイズ分布に向けて調整するために有用である。ある実施の形態における、所望の空隙サイズ分布は、石膏製材に使用されるための高い強度のコアを作り出すものである。
【0086】
例えばある実施の形態においては、発泡性石膏コアは、0.25mmよりも小さい空隙の累積量が、0.25mmよりも大きい空隙の累積量よりも少ない空隙サイズ分布を有するべきである。実質的に、空隙の全ての合計量は、直径が約1.4mmより小さいまたは約1.4mmに等しくあるべきである。これらの基準に合っていない場合、水溶性石鹸混合物の中の石鹸濃度は調整され、さらにサンプル試験される。もし、0.25mmよりも小さい空隙の累積量が大きすぎる場合、水溶性石鹸混合物の中の石鹸濃度は減らされるべきである。もし、空隙の合計量の重要な分画が、空隙において、1.4mmより大きい直径を有していた場合には、水溶性石鹸混合物の中の石鹸の濃度を増加させるべきである。しかし、上記のように示した基準は、いくつかの特定の実施の形態の最適なコア構造のうちの二つの面である。
【0087】
この工程は、所望の空隙サイズ分布を作り出し、または維持する必要があるまで、何度も繰り返すことが可能である。空隙サイズ分布をしっかりと制御するには、分散剤の量のタイプを変えたり、発泡体濃度または不安定な石鹸に対する安定な石鹸の比率を変えたりするような、空隙サイズ分布を変える他の方法を組み合わせることもまた有用である。
【0088】
(実施例1)
ナフタレンスルホン酸縮合物分散剤(「NS」)とポリカルボキシレート分散剤とを比較するための工場試験が行われた。試験の間、石膏建築パネルは一定のラインスピードである215ft/minにおいて製造されていた。それぞれのサンプルにおいて使用された組成物および工程状況は、下記の表1に示す。他に記載がない限り、残りの組成物のそれぞれの量は、建築パネル製品の1000平方フィート当たりのポンドで示してある。「WSR」は、焼き石膏(スタッコ)に対する水の比率であり、当該水には発泡水、付加的な水および計量水の両方が含まれている。ガラス繊維は、焼き石膏(スタッコ)の重量を基準として、全てのサンプルに0.32%の比率において添加される。デキストロースは、焼き石膏(スタッコ)の重量を基準として、0.17%の比率において添加された。これら二つの組成物は、それぞれのサンプルに添加された。
【0089】
二つのポリカルボキシレート分散剤が使用された。MELFLUX PCE 356 L/35%ND(「356」)は、消泡剤および任意の界面活性剤なしの水中における分散剤である。MELFLUX PCE 410 L/35%FFは、ポリカルボキシレート分散剤、消泡剤、界面活性剤および水からなる、水性混合物である。
【0090】
使用されたNS分散剤は、Diloflo−CAである(Geo Specialty Chemicals社、インディアナ州ラファイエット)。発泡体の調製においては、Polystep B25およびSteol CS230石鹸(Stepan Company、イリノイ州ノースランド)が使用された。
【0091】
スラリーを調製する間に、スランプ試験によって測定された実質上均一の流動性のスラリーを作るために、分散剤の量を変えた。HRAの量は、ナイフで切断される丁度良い固さの最小の量に調整した。
【表1】

【0092】
焼き石膏(スタッコ)、HRA、デンプンおよび粘土を含む乾燥組成物は、攪拌機へ連続的に添加する前に、組み合わせておいた。計量水および分散剤は、連続的に攪拌機に添加した。一方、石鹸は、攪拌機の外部において発泡体を発生させるために、発泡水と組み合わせておいた。スラリーが連続的に攪拌機から流出されている際、発泡体はスラリーの中において、圧力の下で圧迫されていた。板を形成するための軟らかいホースをスラリーが下っていく際の乱流は、発泡体とスラリーとがブレンドされるのに充分であった。
【0093】
板を形成する際、スラリーは表面仕上げ用紙の上に置かれた。「サンドイッチ」されたボードを作るために、スラリーの表面に表面仕上げ用紙の二番目のシートを置いた。用紙の幅を横切ってスラリーの分布を均等にするため、および、均一の厚さのサンドイッチを作るため、その後サンドイッチは形成プレートの下を通過させた。繋がったサンドイッチは、その後、ナイフによってパネルに切断され、窯で乾燥させた。
【0094】
表1からわかるように、ポリカルボキシレート分散剤を含んでいるサンプルにおいては、NS分散剤と比較すると、使用されている分散剤が少ない。さらに、消泡剤および界面活性剤を含む410分散剤は、ポリカルボキシレート分散剤の単独よりも、低い添加量において使用され得ている。反復の製造工程部分として、遅延剤および石鹸の量は、時々ポリカルボキシレート分散剤とともに減らした。分散剤の量を減らすことは、結果としてそれによってコスト削減を可能とする。
【0095】
(実施例2)
0.64の焼き石膏(スタッコ)に対する水の比率(WSR)を有するスラリーを作るため、西部の石膏資源からの焼き石膏約600グラムが使用された。MELFLUX PCE 410 L/35%FFは、スランプ試験において一定のパティーサイズを供給する量を添加した。
【0096】
発泡体は、分離発泡体発生装置において発生させ、混合時間における最終部分の間に攪拌機に添加した。発泡体は、発泡体発生装置において、石鹸と、約0.75%の石鹸を含む発泡水との混合組成物から調製した。石鹸は、HYONIC PFM−33(GEO Specialty Chemicals社、ペンシルバニア州アンブラー)とSteol CS−330(Stepan Co.、イリノイ州ノースフィールド)との90:10のブレンドのものを使用した。続く手順は、残りの工程の条件によって示している。
【0097】
混合順序および手順は、次のように続く。1.水、分散剤および添加物を、Hobart攪拌機ボウルの中に入れ、その後手で混合した。2.促進剤および特定の添加物をブレンドする前の焼き石膏(スタッコ)を、ボウルに加え、機械的な混合が始まる前に少しの時間浸潤させた。3.混合の間、密度を調整するために発泡体が添加された。発泡体の添加量は、所望する密度によって変えた。4.発泡体の添加が終わった後、スラリーをさらなる時間混合した。5.その後、スランプ、硬化時間、密度およびコア構造において、スラリーの試験が行われた。
【0098】
試験において本当に分散剤の添加量を減少できていたかを確かめるため、遅延剤の量を変える際、他のパラメータを調整する必要があった。水/焼き石膏(スタッコ)の比率、スランプ、硬化時間および乾燥密度は一定を保っていた。スランプ試験については、2006年12月14日に公開された米国特許公報第2006−0281837号に記載されており、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0099】
水/焼き石膏(スタッコ)の比率を同じ比率を確保するために、全ての試験は同じ水の量において実行した。もし、発泡体の量が変われば、合計の水の量が一定となるように、計量水の量を調整した。遅延剤の量を変えた後に、所望するスランプの値である18±0.5cmを維持するよう、分散剤の量を調節した。
【0100】
遅延剤の増加は、時々硬化時間の長くする結果となり、そのような場合には、一定の硬化時間である100±5秒を維持するために促進剤の量を調節した。表2において、「添加量」はlbs/MSFでの遅延剤の量を示しており、「硬化」は秒での硬化時間を示しており、「CSA」はグラムでのCSA促進剤の量を示している。
【0101】
PCEは、グラムにおけるMELFLUX PCE 410 L/35%FF分散剤の量を示し、一方「添加量」は、乾燥焼き石膏の重さの重量パーセントによる、乾燥させたものを基準とした分散剤の量である。分散剤の量の変更はスラリーの発泡性の特徴を変え得るため、所望する石膏ギプスの乾燥密度である37±1lb/ftを維持するよう、発泡体の量を変更した。このギプスの鋳型は、計量207ml、高さ9.1cmのカップであり、いっぱいに満たした。もし、ギプスが硬化している間、スラリーがカップの縁から2mm以上積もったら、発泡体は充分に安定しておらず、試験は安定した石鹸のさらに高い濃度においてやり直した。石膏ギプスの内部の点検によって、気泡の構造を明らかにした。もし、全てのサンプルが小さい気泡を有していたら、試験はさらに低い石鹸濃度においてやり直した。もし、とても大きい長方形または不規則な形状の気泡が見つかったら、試験をさらに高い石鹸濃度においてやり直した。石鹸、分散剤および促進剤の調整をギプスが実質的に同様になるように行っている際、コントロールのサンプルのPCEの使用量に対するパーセンテージでのPCEの使用量の差異として、「%PCE削減」を計算した。
【表2】

【0102】
これらの試験において示される「%PCE削減」は、非直線的であり、この遅延剤と、消泡剤成分が付着した分散剤との間に、相乗的効果があることを指し示している。
【0103】
(実施例3)
0.730の焼き石膏(スタッコ)に対する水の比率(WSR)を有するスラリーを作るため、西部の石膏資源からの焼き石膏約600グラムが使用された。このWSRは、分散剤や遅延剤なしに、18±0.5cmのスランプパティーサイズを満たすために選択された。発泡体は、分離発泡体発生装置において発生させ、混合時間における最終部分の間に攪拌機に添加した。発泡体は、発泡体発生装置において、石鹸と、約0.75%の石鹸を含む発泡水との混合組成物から調製した。石鹸は、全ての場合において同様のコアの空隙分布を作るために、HYONIC PFM−33(GEO Specialty Chemicals社、インディアナ州ラファイエット)とSteol CS−330(Stepan Co.、イリノイ州ノースランド)との種種のブレンドのものを添加した。続く手順は、残りの工程の条件によって示している。
【0104】
混合順序および手順は、次のように続く。1.水、任意の分散剤および添加物を、Hobart攪拌機ボウルの中に入れ、その後手で混合した。2.促進剤および特定の添加物をブレンドする前の焼き石膏(スタッコ)を、ボウルに加え、機械的な混合が始まる前に少しの時間浸潤させた。3.混合の間、密度を調整するために発泡体が添加された。発泡体の添加量は、所望する密度によって変えた。4.発泡体の添加が終わった後、スラリーをさらなる時間混合した。5.その後、スランプ、硬化時間、密度およびコア構造において、スラリーの試験が行われた。
【0105】
本試験一式には、スラリーに四つの条件を含有させ、遅延剤の有無および分散剤の有無を含めた。それぞれの条件において、次のパラメーターは実質的に一定を維持させた。該パラメーターは、硬化時間、所望する乾燥密度、スランプパティーサイズおよびコアの空隙分布である。スランプ試験については、2006年12月14日に公開された米国特許公報第2006−0281837号に記載されており、前述したように参照されることにより本明細書に組み込まれている。
【0106】
もし、所望の密度を満たすために発泡体の量を変えた場合、発泡水中における変化のバランスをとるために計量水を調節する。遅延剤を含有させ作ったスラリーと遅延剤を含有させずに作ったスラリーとの比較における、試験3と試験4とでは、分散剤の量は一定とした。同様に、分散剤を含有させ作ったスラリーと分散剤を含有させずに作ったスラリーとの比較における、試験2と試験4とでは、遅延剤の量は一定とした。
【0107】
所望する硬化時間である115±5秒を満たすために促進剤の量を調節し、所望のスランプの値である18±0.5cmを調査の間ずっと維持するために、WSRは調節した。
【0108】
分散剤の量またはWSRにおける変化は、スラリーの発泡性の特徴を変え得るため、所望する乾燥密度である41±1lbs/ftを満たすよう、発泡体の量を変更した。計量207ml、高さ9.1cmのカップを満たすよう、スラリーの一部が使用された。もし、ギプスが硬化している間、スラリーがカップの縁から2mm以上積もったら、発泡体は充分に安定しておらず、試験は安定した石鹸のさらに高い濃度においてやり直した。石膏ギプスの内部の点検によって、気泡の構造を明らかにした。もし、全てのサンプルが小さい気泡を有していたら、試験はさらに低い石鹸濃度においてやり直した。もし、とても大きい長方形または不規則な形状の気泡が見つかったら、試験をさらに高い石鹸濃度においてやり直した。石鹸、促進剤および水における調整は、それぞれの条件の製品が実質的に同様になるまで行われた。試験1のコントロールサンプルに対して、それぞれの条件におけるWSRの差異を比較することにより、「WSR削減」を計算した。
【0109】
以下に示す表3において、「遅延剤」はlbs/MSFでの遅延剤の量を示しており、「硬化」は秒での硬化時間を示しており、「CSA」はグラムでのCSA促進剤の量を示している。
【0110】
「分散剤」は分散剤の種類を指し示し、一方「分散剤(g)」は、35%固形体で湿った主成分における分散剤の量を示している。「添加量」は、乾燥焼き石膏の重さの重量パーセントによる、乾燥させたものを基準とした分散剤の量である。
【0111】
PCE−410分散剤および遅延剤を用いた試験4のWSR削減は、0.095であった。これは、試験2(遅延剤単独の影響である0.010WSR削減)および試験3(PCE単独の影響である0.075WSR削減)の個々の効果の合計よりも大きいことになる。これは、この遅延剤と、消泡成分が付着した分散剤との間に相乗効果があることを証明しえいる。
【0112】
発泡性スラリーおよび該発泡性スラリーから製造された建築パネルの特定の実施の形態を示し、説明してきたが、本発明から逸脱することなしに、幅広い態様において、特許請求の範囲で述べるように、変更および修正が行われ得ることが、当業者によって認識されるであろう。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、硫酸カルシウム半水和物、消泡剤および分散剤を含む石膏スラリーを調合する工程と、
実質上充分に攪拌機内における石膏の結晶の形成を妨げうる量である遅延剤の第一部分を、前記スラリーに添加する工程と、
前記遅延剤の第一部分の添加によって得られるより超えて、前記スラリーの流動性を充分に増加できる程の量である遅延剤の第二部分を、前記スラリーに添加する工程と、
を備え、
前記分散剤は、本質的に第一の繰り返し単位および第二の繰り返し単位から成り、前記第一の繰り返し単位は、オレフィン系不飽和モノカルボン酸繰り返し単位またはそのエステルもしくはその塩、あるいは、オレフィン系不飽和硫酸繰り返し単位またはその塩であり、前記第二の繰り返し単位は、一般式(I)、
【化1】

で表され、式中、Rは、
【化2】

で表され、式中、Rは水素またはC〜Cの脂肪族炭化水素基であり、Rは非置換または置換のアリール基、好ましくはフェニル基であり、Rは水素、あるいは、C〜C20の脂肪族炭化水素基、C〜Cの脂環式炭化水素基、C〜C14のアリール基または式、
【化3】

に属する基であり、式中、RおよびRは互いに独立にアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を表し、Rは二価のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルカリール基であり、pは包括的に0、1、2、3であり、mおよびnは独立して包括的に2、3、4、5の整数であり、xおよびyは独立して包括的に1〜350の整数であり、zは包括的に0〜200であることを特徴とする石膏スラリーにおける水を削減する方法。
【請求項2】
さらに、前記分散剤との組み合わせによって、流動性が相乗的に増加する前記遅延剤を選択する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遅延剤の第一部分を添加する工程と、前記遅延剤の第二部分を添加する工程とが併合していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遅延剤の第一部分を添加する工程の前記遅延剤は、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遅延剤は、ナトリウム塩を包含することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遅延剤の第二部分を添加する工程の前記遅延剤は、ジエチレントリアミン五酢酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩もしくはリチウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)五ナトリウム塩、酒石酸、コハク酸、クエン酸、あるいは、マレイン酸を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遅延剤は、ナトリウム塩を包含することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
硫酸カルシウム半水和物と、
水と、
実質上充分に攪拌機内における石膏の結晶の形成を妨げうる量である、遅延剤の第一部分と、
前記遅延剤の第一部分の添加によって得られるより超えて、スラリーの流動性を充分に増加できる程の量である、遅延剤の第二部分と、
消泡剤と、
分散剤と、
を備え、
前記分散剤は、本質的に第一の繰り返し単位および第二の繰り返し単位からなり、前記第一の繰り返し単位は、オレフィン系不飽和モノカルボン酸繰り返し単位またはそのエステルもしくはその塩、あるいは、オレフィン系不飽和硫酸繰り返し単位またはその塩であり、前記第二の繰り返し単位は、一般式(I)、
【化4】

で表され、式中、Rは、
【化5】

で表され、式中、Rは水素またはC〜Cの脂肪族炭化水素基であり、Rは非置換または置換のアリール基、好ましくはフェニル基であり、Rは水素、あるいは、C〜C20の脂肪族炭化水素基、C〜Cの脂環式炭化水素基、C〜C14のアリール基または式、
【化6】

に属する基であり、式中、RおよびRは互いに独立にアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基を表し、Rは二価のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルカリール基であり、pは包括的に0、1、2、3であり、mおよびnは独立して包括的に2、3、4、5の整数であり、xおよびyは独立して包括的に1〜350の整数であり、zは包括的に0〜200であることを特徴とする石膏スラリー。
【請求項9】
前記遅延剤の第一部分は、約0.1〜約1lb/MSFであることを特徴とする請求項8に記載のスラリー。
【請求項10】
前記遅延剤の第二部分は、約0.05〜約0.3lb/MSFであることを特徴とする請求項8に記載のスラリー。
【請求項11】
前記スラリーに添加されるよりも前に、前記消泡剤は前記分散剤と組み合わされていることを特徴とする請求項9に記載のスラリー。
【請求項12】
前記消泡剤は、共通のキャリア内において、前記分散剤とブレンドされていることを特徴とする請求項11に記載のスラリー。
【請求項13】
前記消泡剤は、物理的または化学的に、前記分散剤に付着していることを特徴とする請求項11に記載のスラリー。
【請求項14】
前記消泡剤は、前記分散剤の構造における、三番目の構成部分であることを特徴とする請求項13に記載のスラリー。
【請求項15】
前記遅延剤の第一部分および前記遅延剤の第二部分のうち少なくとも一つは、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩であることを特徴とする請求項9に記載のスラリー。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536606(P2010−536606A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521084(P2010−521084)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/072217
【国際公開番号】WO2009/025989
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】