説明

発泡成形食品製造用ダイス

【課題】低水分で嵩密度が低く嗜好性が良好な発泡成形食品を好適に製造することができる発泡成形食品製造用ダイスを提供すること。
【解決手段】本発明の発泡成形食品製造用ダイスは、発泡成形食品を押出成形によって製造するときに使用され、原料が押し出される押出流路2を備えている。押出流路2に、原料の流入口2Aから流出口2Bに向けて断面が漸次縮小する縮小部21と、縮小部21の最縮小部211から段差を有して断面が拡大し該断面が一定長さ維持されている拡大部22とが設けられている。縮小部21よりも拡大部22の動摩擦係数が低い材料で形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形食品を押出成形によって製造するときに使用される発泡成形食品製造用ダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットブームを背景に、近年、多種多様のペットフードが提供されている。これらの中でも、栄養補強のための補助食品、飼い主とペットとのコミュニケーションを図れる等の観点から、ジャーキーに代表されるおやつの形態のペットフードの需要が高まっている。
【0003】
上述のおやつの形態のペットフードは、硬いものよりも柔らかいもののほうが好まれている。柔らかいペットフードは、原料を膨化させたり、最終的な水分量を多くすることで製造されているが(特許文献1参照)、水分量を多くすると膨化させることが困難になるほか、保存性も低下し、逆に、水分量を少なくすると膨化させ易くなるが、食感が硬くなって嗜好性が悪くなること、表面の外観が良好なペットフードが得られないことが課題となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−158265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低水分で嵩密度が低く嗜好性が良好、また表面の外観も良好な発泡成形食品を押出成形によって製造するときに好適に使用される発泡成形食品製造用ダイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発泡成形食品を押出成形によって製造するときに使用されるダイスであって、原料が押し出される押出流路を備えており、前記押出流路に、原料の流入口から流出口に向けて断面が漸次縮小する縮小部と、該縮小部の最縮小部から段差を有して断面が拡大し該断面が一定長さ維持されている拡大部とが設けられている発泡成形食品製造用ダイスを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、上記本発明のダイスを使用し、前記押出流路に原料を通して押出成形する工程を具備する発泡成形食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低水分で嵩密度が低く嗜好性が良好で、なおかつ表面の外観が良好な発泡成形食品を好適に安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、発泡成形食品をペット用発泡成形食品とした場合の、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の発泡食品製造用ダイス(以下、単にダイスともいう。)の一実施形態を示したものである。図1において、符号1はダイスを示している。
【0010】
本実施形態のダイス1は、ペット用発泡成形食品を押出成形によって製造するときに使用されるものであり、原料が押し出される押出流路2を備えている。
【0011】
押出流路2には、原料の流入口2Aから流出口2Bに向けて断面が漸次縮小する縮小部21と、縮小部21の最縮小部211から段差212を有して断面が拡大し該断面が一定長さ維持されている拡大部22とが設けられている。ダイス1では、流入口2Aから縮小部21までは同じ断面が一定長さ維持されている。
【0012】
ダイス1は、縮小部21の最小径部211の円相当直径D211と拡大部22の円相当直径D22とが、D211/D22=0.1〜0.8であることが好ましい。円相当直径の比が斯かる範囲であると、低水分で嵩密度が低く嗜好性が良好で、なおかつ表面の外観が良好なペットフードを得ることが出来る。ここで、円相当直径とは、最小径部211及び拡大部22の断面と同じ面積を有する円の直径をいう。円相当直径D211は、食しやすい発泡成形食品の太さや膨化率などを考慮すると、2〜10mmが好ましく、3〜8mmがより好ましい。円相当直径D22は、食しやすい発泡成形食品の太さや膨化率などを考慮すると、3〜40mmが好ましく、5〜20mmがより好ましい。縮小部21のテーパー角θは、混練物の流動性等を考慮すると、15〜75度が好ましく、25〜60度がより好ましい。押出流路2の断面形状に特に制限はないが、発泡成形食品のバリエーション等を考慮すると、円形、楕円形、四角形、三角形等の断面形状が好ましい。
ここで、膨化率とは、押出成形によって製造されたペットフードの直径を縮小部21の最小径部211の円相当直径D211で除した値のことをいう。
【0013】
また、ダイス1は、押出方向における縮小部21の長さL21と拡大部22の長さL22とは、L21/L22=0.1〜1.0であることが好ましい。長さの比が斯かる範囲であると、低水分で嵩密度が低く嗜好性が良好で、なおかつ表面の外観が良好なペットフードを得ることができる。縮小部21の長さL21は、混練物の流動性等を考慮すると、3〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。拡大部22の長さL22は、膨化後の成形性等を考慮すると、3〜50mmが好ましく、7〜20mmがより好ましい。
【0014】
ダイス1は、縮小部21よりも拡大部22の動摩擦係数が低い材料で形成されていることが好ましい。縮径部21の動摩擦係数は、高い膨化率を得るための製造条件等を考慮すると、0.4以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。また、拡大部22の動摩擦係数は、発泡成形食品の表面の滑らかさや外観を考慮すると、0.3以下が好ましく、0.1以下がより好ましい。縮小部及び拡大部の動摩擦係数は、摩擦摩耗試験機(イワタニ エレクトロニクス社製)により測定することができる。
【0015】
上述の動摩擦係数を有していれば、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよいが、ダイスの製造コストや食品に接触すること等を考慮すると、縮小部21は、ステンレス、アルミ等の金属材料で形成することが好ましく、拡大部22は、フッ素系樹脂、アクリル等の樹脂材料で形成することが好ましい。
【0016】
本実施形態のダイス1は、縮小部21を備えた筒状部品1Aと拡大部22を備えた筒状部品1Bとが押出流路2を形成するように組み合わされて構成されており、エクストルーダー(加熱加圧押出成形機)のシリンダーバレルの先端部のダイプレート3に取り付けられる。これにより、各部品が損傷したり、或いは設計変更を要する場合が生じても容易に対応することができる。
【0017】
次に、本発明の発泡成形食品の製造方法を、ペット用発泡成形食品(以下、ペットフードという。)の製造に適用した好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0018】
本実施形態のペットフードは、前記ダイス1をシリンダーバレルのダイプレート3に装着したエクストルーダー(図示せず)を使用し、押出成形によって製造される。使用するエクストルーダーは、混練用のスクリューを2本備えたいわゆる二軸型のエクストルーダーを使用することが好ましい。
【0019】
本実施形態のペットフードの製造に際しては、先ず、エクストルーダーのフィーダーから後述する原料混を投入し、当該エクストルーダーのシリンダーバレル内に供給する。シリンダーバレル内に供給する原料は予め縦型混合機等の混合機で予め予備混合して原料混合物とすることが好ましい。そして、前記原料混合物を前記シリンダーバレル内で加熱・加圧しながらスクリューによって混練し、前記ダイス1の流入口2Aを通じて押出流路2内に供給された原料混合物を、前記縮小部21で原料混合物を絞り込んだ後、前記拡大部22で一気に膨化させてから当該拡大部22内で成形体の外径を安定させ、流出口2Bを通じて装置外に押し出す。
【0020】
シリンダーバレルの温度は、余熱バレルで20〜100℃、中間バレルで80〜180℃、先端バレルで100〜300℃、ダイプレート100〜200℃であることが好ましい。また、スクリューの回転速度は、スクリュー径50mm、スクリューの長さと径との比(スクリュー長さ/スクリュー径)が16程度であれば、50〜300r/minであることが好ましい。なお、後述するように、原料に含まれる油脂等成分の酸化を抑制する目的で、製造過程において、窒素等の不活性ガスによる置換や、脱気を行いながら製造することは、特に加熱工程で有効であるため好ましい。押し出されたペットフードの連続体は、その後所定の長さに切断される。
【0021】
本実施形態のペットフードの原料混合物としては、後述する、タンパク質源、炭水化物源及び油脂源に、必要に応じて任意の含有成分を含有させたものを、所定の水分量に調整して混合したものが使用される。タンパク質源は、嗜好性、発泡性、発泡後の強度維持等の点から含有される。炭水化物源は、発泡性、成形性、食感を高める等の点から含有される。油脂源は、嗜好性を高めたり、多価不飽和脂肪酸の供給の点から含有される。原料混合物の水分量は、30%以下、さらには10〜28%、特には15〜25%とすることが、発泡させ易さ、発泡後に再収縮しないだけの強度を付与する点から好ましい。
【0022】
本実施形態のペットフードには、前記タンパク質源として鶏正肉が好ましく使用される。該タンパク質源として使用される鶏正肉とは、鶏胸肉、鶏もも肉、鶏ささみ等の鶏の骨格筋をいい、内臓、骨、頭、足、羽、その他副産物を含まない。鶏正肉は、生品及び乾燥品の何れを使用してもよい。本実施形態のペットフードは、鶏正肉を固形分として、8質量%(以下、単に%と記載する。)以上、好ましくは8〜50%、さらに好ましくは10〜40%、特に好ましくは12〜30%、ことさら好ましくは15〜25%含有していることが、嗜好性の向上、発泡のさせ易さの点から好ましい。ここで固形分とは、水分以外の部分をいい、油脂が含まれる場合には、これも固形分として換算する。例えば、鶏正肉を135℃にて2時間乾燥させた後のものを固形分とすることができる。
【0023】
鶏正肉は、生肉(生品)及び/又は乾燥品をそのまま使用してもよく、冷蔵又は冷凍保存したものを使用してもよい。原料に生品を使用する場合には、生品の水分量が70〜80%であるため、前述のように鶏正肉を固形分で8%以上含有させるには乾燥工程が必要であるが、鶏正肉の乾燥品と組み合わせたり、水分が一定の範囲の乾燥品のみを使用したりする等することが、製造工程の簡略化、低コスト化の点で好ましい。乾燥品は、予めオーブン等の加熱手段によって水分を調整しておくことが好ましい。鶏正肉の乾燥品を単独で使用する場合の水分量、又は鶏正肉の生品と乾燥品とを組み合わせた後の水分量は、20〜70%、さらには30〜65%、特には40〜60%であることが、発泡のし易さ、発泡後のなお、使用前には予めミンチにしておくことが配合のし易さ、混合の均一化の点から好ましい。鶏正肉の乾燥品を使用する場合、その水分量は、5〜30%、さらには8〜25%、特には10〜20%であることが、発泡させ易さ、発泡後の強度維持、成形し易さ等の点から好ましい。
【0024】
本実施形態のペットフードは、前記タンパク質源として、粗タンパク質を20%含有させることが嗜好性、発泡性、発泡後の強度維持等の点から好ましい。粗タンパク質の含有量は、さらに22〜50%、特に25〜35%とすることが好ましい。ペットフードに含有している粗タンパク質は、ケルダール法により定量することができる。
【0025】
粗タンパク質源としては、前記の鶏正肉以外の動物性タンパク質、植物性タンパク質が挙げられる。該動物性タンパク質としては、カゼイン等の乳タンパク質;鶏正肉以外の鶏肉、牛、豚、羊、うさぎ、カンガルー等の畜肉及び獣肉、並びにその副生成物及び加工品;七面鳥、うずら等の鳥肉並びにその副生成物及び加工品、白身魚等の魚肉並びにその副生成物及び加工品等が挙げられる。植物性タンパク質としては、大豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦グルテン、コーングルテン等が挙げられる。これらの中でも、小麦タンパク質である小麦グルテンが成形のし易さ、発泡後に再収縮しないだけの強度付与、食感を高める等の点から好ましい。小麦グルテンを用いる場合は、ペットフード中に好ましくは5〜40%、より好ましくは7〜35%、さらに好ましくは8〜30%含有していることが、成形しやすさ、発泡後に再収縮しないだけの強度付与、食感を高める等の点から好ましい。本実施形態のペットフードにおいては、上述のタンパク質源から一種又は二種以上の組み合わせを選択して使用することができる。
【0026】
本実施形態のペットフードに含有させる前記炭水化物源としては、穀物類、デンプン類、糖類、食物繊維等が挙げられる。
【0027】
前記穀物類としては、小麦、大麦、ライ麦、コーン、ソルガム、マイカ、米、ひえ、あわ、アマランサス、キヌアなどが挙げられる。
【0028】
大麦は、二条大麦又は六条大麦のどちらを使用することもでき、これらの大麦の混合物で飼料用として使用されているものを使用することもできる。大麦は、炭水化物源中に好ましくは3%以上、より好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜70%含有していることが、経済性、食後の血糖値上昇抑制、食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から好ましい。
【0029】
コーンとは、通常のトウモロコシをいうが、これを粉にしたトウモロコシ粉のみならず、コーンスターチも含まれる。コーンは、炭水化物源中に好ましくは3%以上、より好ましくは3〜60%、さらに好ましくは10〜70%含有させることが、経済性、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から好ましい。
【0030】
ソルガムは、イネ科の植物であり、別名コウリャンと称されるもののほか、別名ホウキモロコシと称されるブルームコーン、別名差トウモロコシと称されるスウィートソルガム、別名マイロと称されるグレインソルガムなどが挙げられる。ソルガムは、炭水化物源中に3%以上、さらには3〜60%、特には5〜50%含有していることが、経済性、食後の血糖値上昇抑制、食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から好ましい。
【0031】
前記デンプン類としては、前記穀物類の何れかを原料としたもののほか、それらにさらに加工を加えた加工デンプン、高アミロースデンプン等が挙げられる。これらの中でも、加工デンプン及び高アミロースデンプンから一種又は二種以上の組み合わせを選択して使用することが好ましい。
【0032】
加工デンプンとは、ワキシーコーンデンプン、コーンデンプン、小麦デンプン、米デンプン、糯米デンプン、馬鈴薯デンプン、甘露デンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン等の通常のデンプンに、化学的処理や化学修飾等の加工を施したものをいう。加工デンプンは、炭水化物源中に3%以上、さらには3〜30%、特に3〜20%含有しているのが、経済性、食後の血糖値上昇抑制、食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から好ましい。
【0033】
具体的な加工デンプンとしては、アセチル化デンプン、オクテニルコハク酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸化デンプン、酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等が挙げられる。これらの中でも、デンプンから簡単な工程で、高純度で比較的安価に製造できる点、食後の血糖値上昇抑制、食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂取性、安全性の点から、アセチル化デンプン、オクテニルコハク酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンが好ましい。
【0034】
アセチル化デンプンは、デンプン又は加工デンプンを通常の方法によりアセチル化することにより得ることができる。具体的には、無水酢酸、又は酢酸ビニルをデンプンに反応させることにより得ることができる。また、Z−700(タピオカ由来、アセチル化、日澱化学社)、MT−01B(タピオカ由来、アセチル化、日本食品化工)、ADIX−H(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)、マプス#449(ワキシーコーン由来、アセチル化、日本食品化工)等の市販のアセチル化デンプンを使用することもできる。アセチル化の程度は、アセチル価(デンプン中の無水グルコース1残基の数)で0.001〜1が好ましく、0.005〜0.5がより好ましく、0.01〜0.1がさらに好ましい。
【0035】
オクテニルコハク酸化デンプンは、デンプン又は加工デンプンを通常の方法によりオクテニルコハク酸化することにより得ることができる。具体的には、オクテニルコハク酸無水物をデンプンに反応させることにより得ることができる。また、アミコール乳華(タピオカ由来、オクテニルコハク酸化、日澱化学社)等の市販のオクテニルコハク酸化デンプンを使用することもできる。オクテニルコハク酸化の程度は、オクテニルコハク酸価(デンプン中の無水グルコース1残基当たりのオクテニルコハク酸基の数)で0.001〜1が好ましく、0.005〜0.5がより好ましく、0.01〜0.1がさらに好ましい。
【0036】
ヒドロキシプロピル化デンプンは、デンプン又は加工デンプンを通常の方法によりヒドロキシプロピル化することにより得ることができる。具体的には、プロピレンオキサイドをデンプンに反応させることにより得ることができる。また、ナショナルフリジェニックス(タピオカ由来、ナショナルスターチアンドケミカル社)、ナショナル1658(コーン由来、ナショナルスターチアンドケミカル社、サームフロー(ワキシーコーン由来、ナショナルスターチアンドケミカル社)、サームテックス(ワキシーコーン由来、ナショナルスターチアンドケミカル社)等の市販のヒドロキシプロピル化デンプンを使用することもできる。ヒドロキシプロピル化の程度は、置換度(デンプン中の無水グルコース1残基当たりのヒドロキシプロピル基の数)で0.001〜1が好ましく、0.05〜0.5がより好ましく、0.1〜0.3がさらに好ましい。
【0037】
前記加工デンプンは、それぞれ他の加工処理を組み合わせることにより、別の加工デンプンとすることもできる。組み合わせることのできるデンプンの加工処理としては、酢酸、リン酸等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化、カルボキシメチルエーテル化等によるエーテル化処理、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オキシ塩化リン、アジピン酸、エピクロルヒドリン等の通常の架橋剤を使用した架橋化処理、酸化処理、酸処理、漂白処理、湿熱処理、熱処理、酵素処理等が挙げられる。これらの加工処理の1種又は2種以上の組み合わせを選択して採用することもできる。これらの中でも、エステル化処理が好ましく、リン酸化処理、特にリン酸架橋処理が好ましい。リン酸化処理の程度は、摂取性等の点から、結合リン含量で0.0001〜2%が好ましく、0.0001〜0.5%がより好ましく、0.0001〜0.2%がさらに好ましい。
【0038】
高アミロースデンプンとは、アミロース含量が40〜99%であるデンプンをいう。本実施形態のペットフードにおいて好ましく使用される高アミロースデンプンとしては、ハイアミロースコーンスターチ、六条皮麦のGlacier AC38、su2トウモロコシ等が挙げられる。ハイアミロースコーンスターチの市販品としては、日本食品化工社製、ハイアミロースコーンスターチアミロメイズV(アミロース含量50〜60%)、アミロメイズVI(アミロース含量60〜70%)及びアミロメイズVII(アミロース含量70〜80%)、並びに日澱化学社製、ファイボーズ(アミロース含量70%)等が挙げられる。
【0039】
これらの高アミロースデンプンは、本実施形態のペットフード中に好ましくは5〜50%、より好ましくは8〜40%、さらに好ましくは10〜30%含有していることが経済性、食後の血糖値上昇抑制、食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂取性及び便の点から好ましい。
【0040】
前記糖類としては、単糖類、オリゴ糖類、多糖類が挙げられる。また、前記食物繊維とは、動物の消化酵素では分解されない成分をいう。食物繊維には水不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とが含まれ、前者の具体例としては、セルロース、ヘミセルロース等を含有したビートファイバー、ピーファイバー、チコリ根、アルファルファミール、小麦ふすま等が挙げられ、後者の具体例としては、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖、サイリム種皮、グルコマンナン、寒天、水溶性大豆多糖類、水溶性コーンファイバー、イヌリン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸等が挙げられる。中でも、水不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とを両方含んだビートパルプが好ましい。
【0041】
炭水化物は、本実施形態のペットフード中に20〜70%、さらには25〜65%、特には30〜60%含有していることが、膨化成形性の点から好ましい。ペットフード中の炭水化物の含有量は、全体より粗蛋白、粗脂肪、粗繊維、灰分及び水分を減算することにより測定することができる。
【0042】
前記油脂源としては、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ひまわり油、亜麻仁油、ごま油等の植物性油、ラード、牛脂、魚油、乳脂等の動物性油が挙げられる。本実施形態のペットフードに含有される油脂は、これらの油脂源として含有させたもののほかに、原料に含まれる動物性や植物性の原料に含有されている油脂も含まれる。
【0043】
油脂は、本実施形態のペットフード中に1〜30%、さらには2〜25%、特には3〜20%含有していることが、嗜好性を良くすること、多価不飽和脂肪酸の供給、発泡のし易さ等の点で好ましい。
【0044】
油脂を含有させる場合、全油脂中にジアシルグリセロールを15%以上含有していることが好ましい。ジアシルグリセロールは、全油脂中に15〜85%、さらには20〜50%していることが、食後の血中インシュリン濃度の上昇を抑制する点、肥満防止効果の点から好ましい。ジアシルグリセロールは、本実施形態のペットフード中0.5%以上、さらには0.5〜30%、特に1〜20%、ことさらには1〜10含有しているのが好ましい。
【0045】
ジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸の80〜100%が不飽和脂肪酸(UFA)であることが好ましく、90〜100%がより好ましく、93〜100%がさらに好ましく、94〜100%がことさらに好ましい。
【0046】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量は、肥満防止効果及び摂取性の点から、20〜65%、さらには25〜60%、特には30〜50%、ことさら30〜45%であるのが好ましい。
【0047】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、リノール酸の含有量は、肥満防止効果及び摂取性の点から、15〜65%、さらには20〜60%、特には30〜55%、ことさら35〜50%であるのが好ましい。
【0048】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のリノール酸/オレイン酸の含有比は、酸化安定性、肥満防止効果の点から、0.01〜2.0、さらには0.1〜1.8、特には0.3〜1.7であることが好ましい。
【0049】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、リノレン酸の含有量は、肥満防止効果、摂取性及び酸化安定性の点から、15%未満、さらには0〜13%、特には1〜10%、ことさら2〜9%であるのが好ましい。
【0050】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸(SFA)の含有量は、肥満防止効果、摂取性及び酸化安定性の点から、20%未満、さらには0〜10%、さらには0〜7%、特には2〜7%、ことさら2〜6%であるのが好ましい。
【0051】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中、炭素数12以下の脂肪酸の含有量は、風味、摂取性の点から5%以下、さらには0〜2%、特には0〜1%、実質的に含まないのがことさら好ましい。残余の構成脂肪酸は、炭素数14〜24、特に16〜22であることが好ましい。
【0052】
また、使用するジアシルグリセロール中の1,3−ジアシルグリセロールの割合は、血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果の点から、50%以上、さらには52〜100%、特には54〜90%、ことさら56〜80%であることが好ましい。
【0053】
本実施形態のペットフードは、上述した天然油脂中に含まれるジアシルグリセロールを含有していても良いが、ジアシルグリセロールの含有量を調整するために、上述した油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステルか反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応等によって得られたジアシルグリセロールを含有していることが好ましい。ジアシルグリセロールは、アルカリ触媒等を用いた化学反応によっても得ることができるが、1,3−位選択的リパーゼ等の酵素を経て温和な条件の反応によって得られたものであることが、酸化安定性、嗜好性の点で好ましい。
【0054】
本実施形態のペットフードに、油脂を含有させる場合には、その他に、トリアシルグリセロールが含まれ、また、若干のモノアシルグリセロール、遊離脂肪酸等が含まれていても良い。これらは、上述した天然油脂中に含まれているものの他、製造したジアシルグリセロール含有油脂、配合される植物原料、又は動物原料中に含まれる油脂中に含まれているものも含む。
【0055】
本実施形態のペットフードは、任意の含有成分として、植物ステロールを含有していてもよい。植物ステロールは、ペットフード中に、コレステロール低下効果の点で0.1%以上、さらには0.5%以上含有していることが好ましい。また、植物ステロールの含有量の上限は30%までであればよい。ここで植物ステロールとしては、例えば、α−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。
【0056】
また、本実施形態のペットフードは、任意の含有成分として、グリセリン、糖アルコール、ぬか類、粕類、野菜、ビタミン類、ミネラル類、乳製品、アミノ酸類、L−カルニチン、アルファリポ酸、コエンザイムQ10等を含有させることができる。グリセリン、糖アルコールの含有量は、ペットフード中に4%以上、さらには6%以上、特には8%以上とすることが、好ましい物性とする点から好ましい。ぬか類としては、米ぬか、ふすま等が、粕類としては、大豆粕等が挙げられる。野菜類としては、乾燥野菜、野菜エキス等が挙げられる。ビタミン類としては、A、B1、B2、D、E、ナイアシン、パントテン酸、カロチン等が挙げられる。ビタミン類は、ペットフード中に0.01〜10%含有していることが好ましい。乳製品としては、チーズ、バター及びその加工品等が挙げられる。アミノ酸類としては、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン等が挙げられる。このほか、本実施形態のペットフードは、一般的にペットフードに使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等の成分も任意の含有成分として含有させることができる。
【0057】
本実施形態のペットフードの水分量は、20%以下、さらには5〜20%、特には7〜18%、ことさらには8〜17%であることが、嗜好性及び食感の向上等の点から好ましい。
また、本実施形態のペットフードの水分活性は、0.79以下、さらには0.4〜0.79、特には、0.45〜0.75、ことさら0.5〜0.7であることが、保存性の良さ、菌繁殖抑制の点から好ましい。ここで、水分活性は、検体を測定用秤皿に2g採り、水分活性測定器により測定することができる。
【0058】
本実施形態のペットフードの嵩密度は、嗜好性、発泡性、低カロリーとする等の点から、0.15〜0.7g/cm3、さらには0.17〜0.6g/cm3、特には0.2〜0.5g/cm3とすることが好ましい。
【0059】
本実施形態のペットフードは、破断歪みが、4mm以上、さらには5mm以上、特には6mm以上であることが、低水分で且つ嵩密度が低いにもかかわらず脆くない物性を有し、食感に影響する物性の変化を抑制する等の点から好ましい。前記破断歪みは、製造後又は製造品を密封しこれを開封後、温度20℃、相対湿度45%の環境に24時間放置した厚さ8mmのサンプルを、20mm間隔のスリット上に載置し、くさび型プランジャー(例えば、幅20mmのもの)をサンプル中央部に垂直になるように50mm/分の速度で上から下降させ、サンプルが破断する際の歪みを測定することによって得られる。また、前記破断歪みが4mmの時の応力が0.6N/mm2以下であることが、低水分で且つ嵩密度が低いにもかかわらず脆くない物性を有し、食感に影響する部性の変化を抑制する等の点から好ましい。前記歪みが5mmの時の応力は、さらには0.6N/mm2以下、特には0.01〜0.6N/mm2、ことさら0.02〜0.4N/mm2であることが好ましい。
【0060】
本実施形態のペットフードの形態は、嗜好性が高く、家の番やしつけの際にほめ与えるもの最適である点から、ジャーキー等のおやつの形態が好ましい。一般的にジャーキーとは、獣肉の乾燥物をいうが、ペット用に関しては、獣肉と炭水化物源とを混合したものもジャーキーに含まれる。
【0061】
本実施形態のペットフードの形状は、断面積が5〜700mm2、長さが15〜200mmの棒状であることが、給餌のし易さ、取り扱いやすさ、保存性等の点から好ましい。断面積は、さらに8〜500mm2、特に10〜200mm2であることが好ましく、長さは、さらに20〜170mm、特に30〜150mmであることが好ましい。断面の形状は、前記ダイス1の押出経路の断面に応じて任意の形状とすることができるが、円形又は四角形とすることが、成形のし易さ、発泡させ易さの点から好ましい。
【0062】
本実施形態のダイス1及びこれを使用したペットフードの製造方法によれば、前記特性を有するペットフードを好適に製造することができる。
【0063】
本発明は、前記実施形態に何ら制限されない。
本発明のダイスは、前記実施形態のダイス1ように、縮小部21及び拡大部22を備えた個別の部品によって構成し、シリンダーバレルの先端部のダイプレートに組み込んで使用する形態とすることが好ましいが、縮小部21及び拡大部22を備えた一つの部品(ダイプレート)で構成し、それ自体を直接シリンダーバレルの先端部分に取り付ける形態とすることもできる。
【0064】
また、前記実施形態のダイス1では、流入口2Aから縮小部21までは同じ断面が一定長さ維持されているが、この部分は省略することもできる。
【0065】
本発明のダイスは、押出流路を所定間隔おきに複数備えていてもよい。
【0066】
本発明のダイスは、前記実施形態のように、ペット用発泡成形食品の製造に好適であるが、ペット用以外の発泡成形食品の製造にも適用することができる。
【0067】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、本実施例に何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0069】
工業的に安定した発泡成形食品を得ることに対する本願技術の有効性を評価するため、下記実施例及び比較例のようにしてペットフードを作製し、得られたペットフードの製造中の安定性を下記のように評価した。詳述すると、表1に示した組成を用いてエクストルーダー((株)スエヒロEPM製 α―600)で、ダイス形状の違いによるペットフードの直径及び嵩密度の製造中の変動を評価した。
【0070】
【表1】

【0071】
〔実施例〕
<ダイス>
図1に示すダイスを前記エクストルーダーのダイプレートに15mm間隔で6個上下二列(合計12個)それぞれ装着したものを使用した。
<ダイスの仕様>
縮小部の形態:ステンレス(SUS303)製、動摩擦係数0.6、断面形状(円形)、円相当直径(D211)4mm、長さ(L21)7mm、テーパー角(θ)32度
拡大部の形態:テフロン(登録商標)製、動摩擦係数0.1、断面形状(円形)、円相当直径(D22)8mm、長さ(L22)13mm
【0072】
<原料調製>
表1に示した組成の原料を縦型ミキサーへ投入し、十分撹拌混合して原料混合物を調製し、原料混合物を下記条件で押出成形し、長さ約120mmに切断して所望のペットフードを製造した。その製造時の変化の状態を嵩密度、製品直径にて評価した。
【0073】
<成形条件>
エクストルーダー:(株)スエヒロEPM製、α−600
原料混合物供給量:350kg/h
スクリュー径:180mm
スクリュー長さ:2880mm
スクリュー回転速度:50r/min
シリンダーバレル温度(余熱バレル):100℃
シリンダーバレル温度(中間バレル):125℃
シリンダーバレル温度(先端バレル):120℃
ダイプレート温度:130℃
【0074】
〔比較例〕
ダイスを下記の仕様のものを使用した以外は実施例と同様にして、ペットフードを製造した。
<ダイスの形態>
縮小部及び拡大部を有さない、断面形状が一定のダイスを使用。
断面形状(円形)、円相当直径8mm、長さ15mm、ステンレス(SUS303)製、動摩擦係数0.6
【0075】
〔実施例で製造されたペットフードの評価〕
図2に示すように、嵩密度/製品直径とも長時間にわたり安定したペットフードを得ることができた。得られたペットフードの外観も良好であり、嵩密度も前述の好ましい範囲に入っており、当該ダイスの優位性が確認された。
【0076】
〔比較例で製造されたペットフードの評価〕
ダイスからの吐出されたペットフードの吐出速度が安定せず、吐出の途中で切断されたり、切断されなかった場合であっても、嵩密度及び直径が大きく変化し、所望のペットフードを得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明のダイスの一実施形態の断面を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明のダイスで製造された発泡成形したときの評価の結果を図示したものである。
【符号の説明】
【0078】
1 ダイス
2 押出流路
21 縮小部
22 拡大部
3 ダイプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形食品を押出成形によって製造するときに使用されるダイスであって、
原料が押し出される押出流路を備えており、
前記押出流路に、原料の流入口から流出口に向けて断面が漸次縮小する縮小部と、該縮小部の最縮小部から段差を有して断面が拡大し該断面が一定長さ維持されている拡大部とが設けられている発泡成形食品製造用ダイス。
【請求項2】
前記縮小部よりも前記拡大部の動摩擦係数が低い材料で形成されている請求項1に記載の発泡成形食品製造用ダイス。
【請求項3】
前記縮小部がステンレスで形成され、前記拡大部がフッ素樹脂で形成されている請求項1又は2に記載の発泡成形食品製造用ダイス。
【請求項4】
前記押出流路を所定間隔おきに複数備えている請求項1〜3の何れかに記載の発泡成形食品製造用ダイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の発泡成形食品製造用ダイスを使用し、前記押出流路に原料を通して押出成形する工程を具備する発泡成形食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−153508(P2009−153508A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338948(P2007−338948)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】