説明

発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材及びその製造方法

【課題】断熱性並びに耐久性に優れた発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フレーム5、6とバックプレート3、4と金型7、8とからなる発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材において、フレーム5、6を、断熱を目的とした多孔質体50に、消失模型鋳造法により形成された金属製の壁面51、61が鋳ぐるみで接合されたものとする。蒸気室構成部材の製造方法は、フレーム5、6の壁面51、61を形成するための消失模型を多孔質体50に接合した後、溶湯を前記消失模型に流し込んで、フレーム5、6の壁面51、61を多孔質体50に鋳ぐるむことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームの持つ熱エネルギーのロスを低減することができる発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡樹脂成形機は、例えば図1に示すような構造のものである。すなわち、固定側ダイプレート1には、バックプレート3とフレーム5(固定側)とが取り付けられ、フレーム5には、センタープレート71を介して凹金型(固定側)7が取り付けられている。バックプレート3とフレーム5とセンタープレート71と凹金型7は、蒸気室9を構成している。バックプレート3には、背面から原料充填機11とエジェクトピン12が、蒸気室9を貫通して設けられている。フレーム5には、冷却水導入部13とスチーム導入部15が設けられ、冷却水導入部13に、冷却水配管17が接続されている。
【0003】
一方、移動側ダイプレート2には、バックプレート4とフレーム6(移動側)とが取り付けられ、フレーム6には、センタープレート81を介して凸金型(移動側)8が取り付けられている。バックプレート4とフレーム6とセンタープレート81と凸金型8は、蒸気室10を構成している。フレーム6には、冷却水導入部14とスチーム導入部16が設けられ、冷却水導入部14に、冷却水配管18が接続されている。凹金型7と凸金型8とが合体されてキャビティ19が形成される。
【0004】
以上のような発泡樹脂成形機を用いて成形体を成形するには、原料充填機11を用いてキャビティ19内に発泡性樹脂からなる原料を充填する。次いで、スチーム導入部15、16から蒸気室9、10内にスチームを導入し、さらに、凹金型8、凸金型9に設けたスチーム孔(図示していない)よりキャビティ19内にスチームを導入することによって、原料を加熱し発泡溶着させて、所望の成形体を形成する。このとき、金型7、8やフレーム5、6などは120℃程度の高温にまで加熱される。
【0005】
その後、冷却水導入部13、14より冷却水配管17、18を介して冷却水を供給し、ノズル21、22より凹金型7、凸金型8の背面に冷却水を噴霧することにより、キャビティ19内の成形体20を冷却する。金型7、8やフレーム5、6は40℃程度の低温まで冷却される。冷却完了後凹金型7、凸金型8を分割して開きエジェクトピン12で押し出すことによって、成形体20を取り出すことができる。
【0006】
上記成形工程においては、蒸気室9、10に導入されたスチームは、キャビティ19内の原料を充填するだけではなく、蒸気室9、10を構成しているバックプレート3、4と、フレーム5、6と、センタープレート71、81と、凹金型7、凸金型8をも加熱している。また、キャビティ19内の成形体20を冷却する際には、ノズル21、22から噴霧された水により凹金型7、凸金型8とともに、バックプレート3、4、フレーム5、6、センタープレート71、81も同時に冷却される。しかしながら、これらの蒸気室構成部材のうち凹金型7、凸金型8以外は、成型体品質に何ら影響を与えず、加熱、冷却の繰り返しのたび毎にスチームの熱エネルギーを無駄に消費している。すなわち、スチームの熱エネルギーのかなりの部分がフレーム5、6などの加熱に費やされている。
【0007】
以上のようなスチームの熱エネルギーの浪費を低減するために、特許文献1、2には、凹金型7、凸金型8を除くバックプレート3、4と、フレーム5、6と、センタープレート71、81の蒸気室側の面に、ゴムライニングや熱硬化型水溶性樹脂を熱硬化させた被覆層を形成したものが開示されている。このものは、ゴムライニング層や被覆層により断熱してスチームの熱エネルギーの浪費を低減することはできる。しかしながら、ゴムライニング層や樹脂製の被覆層は、加熱、冷却の繰り返しによる熱応力による変形、剥離が避けられず、剥離部分にスチームが侵入して断熱効果が低下するので、繰り返し使用に対する寿命が短いものであった。
【特許文献1】特開平5−212810号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−212814号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、断熱性並びに耐久性に優れた発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材は、フレームとバックプレートと金型とからなる発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材において、フレームを、断熱を目的とした多孔質体に、消失模型鋳造法により形成された壁面が鋳ぐるみで接合されたものとしたことを特徴とするものである。なお、多孔質体として、多孔質金属又は多孔質セラミックを用いることができる。
【0010】
また、本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法は、フレームの壁面を形成するための消失模型を多孔質体に接合した後、溶湯を前記消失模型に流し込んで、フレームの壁面を多孔質体に鋳ぐるむことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法は、溶湯に溶解可能な素材によりフレーム壁面の消失模型を形成する第1工程と、この消失模型を多孔質体に接合する第2工程と、多孔質体と消失模型との接合体を鋳造容器内に埋入する第3工程と、溶湯を消失模型に流し込んでフレームの壁面を多孔質体に鋳ぐるむ第4工程とからなることを特徴とするものである。
【0012】
上記した発明において、多孔質体として、多孔質金属又は多孔質セラミックを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材は、フレームやバックプレートなどの蒸気室構成部材を、多孔質体にフレームやバックプレートを構成する壁面が鋳ぐるみで接合されて一体に形成されたものであるので、多孔質体の有する断熱効果によりスチームの熱エネルギーを無駄に消費することがない。また、樹脂製被覆層などのように変形、剥離することがないので、経年劣化により断熱効果が低減することがない。
【0014】
また、本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法は、消失模型を用いて多孔質体にフレームやバックプレートなどの壁面を鋳ぐるんで一体に形成するので、断熱性と耐久性に優れた蒸気室構成部材を簡便に製造することができるという大きな利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本願発明が実施される発泡樹脂成形機の基本構造を、図1に基づき説明する。
本願発明が実施される発泡樹脂成形機は、基本構造において従来のものと特に変わるところはない。すなわち、固定側ダイプレート1には、バックプレート3とフレーム5とセンタープレート71と凹金型7によって、蒸気室9が構成されている。バックプレート3には、原料充填機11とエジェクトピン12とが、蒸気室9を貫通して設けられている。フレーム5には、冷却水導入部13とスチーム導入部15が設けられ、冷却水導入部13に、冷却水配管17が接続されている。
【0016】
移動側ダイプレート2には、バックプレート4とフレーム6とセンタープレート81と凸金型8によって、蒸気室10が形成されている。フレーム6には、冷却水導入部14とスチーム導入部16が設けられ、冷却水導入部14に、冷却水配管18が接続されている。凹金型7と凸金型8とによりキャビティ19が形成される。
【0017】
以上のような構成の発泡樹脂成形機において、図2に示すように、フレーム5、6を多孔質体50に消失模型鋳造法により形成された金属製の壁面51、61が鋳ぐるみで接合されたものとした。多孔質体50は壁面51、61によりサンドイッチ状態で内包されているが、多孔質体50の片面のみに壁面51、61を接合してもよいものである。
【0018】
また、バックプレート3、4は、平板状の多孔質体50にアルミニウム板41が両面にネジや接着材により接合されたサンドイッチ構造のものとしてある。このバックプレート3、4も消失模型を用いてアルミニウム板41を多孔質体50に鋳ぐるみで接合することもできる。
【0019】
以上のようなフレーム5、6は、フレーム5、6の壁面を形成するための消失模型を多孔質体50に接合した後、溶湯をこの消失模型に流し込むことによって、多孔質体が鋳ぐるまれたフレーム5、6を製造することができる。
【0020】
即ち、本発明に係る発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法は、溶湯に溶解可能な素材によりフレーム壁面の消失模型を形成する第1工程と、この消失模型を多孔質体に接合する第2工程と、多孔質体と消失模型との接合体を鋳造容器内に埋入する第3工程と、溶湯を消失模型に流し込んでフレームの壁面を多孔質体に鋳ぐるむ第4工程とからなるものとすることができる。
【0021】
第1工程においては、発泡樹脂などの溶湯に溶解可能な素材を接着、組立などしてフレーム壁面の消失模型を形成する。消失模型は内壁のみ、または外壁のみ、または内壁と外壁の両方を作成することができる。消失模型を形成する原料として、例えばメチルメタクリルート/スチレン系発泡性共重合樹脂を用いることができる。発泡スチロール模型に比べて燃焼性がよくスス欠陥、浸炭量を少なくすることができる。消失模型の製造は、金型に原料を充填して、加熱、冷却、放冷、取り出しのプロセスにより行う。
【0022】
第2工程においては、多孔質体50に第1工程において製造したフレーム壁面の消失模型を接着して組み立てる。接着にはホットメルトなどの接着剤を用いることができる。以上のようにして構成された多孔質体50と消失模型60からなるフレーム形成用接合体を、図3に示す。
【0023】
第3工程においては、多孔質体50と消失模型60との接合体を鋳造容器65内の鋳物砂66内に埋入する。その埋入状態を図4に示す。
【0024】
そして、第4工程においてアルミニウムなどの溶湯を湯口67から消失模型に流し込んで消失模型を溶解してフレームの壁面51、61を多孔質体に鋳ぐるむ。多孔質体50として発泡アルミニウムを用い、溶湯として溶融アルミニウムを用いた場合には、注入された溶湯が発泡アルミニウムを溶かすので、一体に接合することができる。また、多孔質体50の面には、独立した気泡によって形成された凹部が多数存在しているので、溶湯がこれらの凹部に流れ込むので、多孔質体50にフレームの壁面を強固に接合することができる。図5には、鋳ぐるみ鋳造後のフレームの一例を示す。
【0025】
なお、多孔質体として、多孔質金属又は多孔質セラミックを用いることができる。また、多孔質金属として、上記した発泡アルミニウムのほかに、発泡マグネシウム等を用いることができる。
【0026】
以上のようにして、多孔質体をフレームに鋳ぐるむことによってフレームの断熱性を高めることができ、その結果、昇温、冷却に要するサイクルタイムの短縮、スチーム使用量の低減を図ることができた。また、軽量化による電力消費量の低減による効果も相まって大幅なコストダウンを図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】発泡樹脂成形機の概略構成図である。
【図2】多孔質金属に壁面が鋳ぐるみで接合されたフレームを備えた発泡樹脂成形機の概略構成図である。
【図3】多孔質体と消失模型からなるフレーム形成用接合体の外観写真である。
【図4】フレーム形成用接合体の鋳物砂内への埋入状態の説明図である。
【図5】鋳ぐるみ鋳造されたフレーム断面の部分拡大写真である。
【符号の説明】
【0028】
3、4 バックプレート、5、6 フレーム、7、8 金型、50 多孔質体、51、61 フレームの壁面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームとバックプレートと金型とからなる発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材において、フレームを、断熱を目的とした多孔質体に、消失模型鋳造法により形成された壁面が鋳ぐるみで接合されたものとしたことを特徴とする発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材。
【請求項2】
多孔質体として、多孔質金属又は多孔質セラミックを用いる請求項1に記載の発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材。
【請求項3】
フレームの壁面を形成するための消失模型を多孔質体に接合した後、溶湯を前記消失模型に流し込んで、フレームの壁面を多孔質体に鋳ぐるむことを特徴とする発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法。
【請求項4】
溶湯に溶解可能な素材によりフレーム壁面形成用の消失模型を製造する第1工程と、この消失模型を多孔質体に接合する第2工程と、多孔質体と消失模型との接合体を鋳造容器内に埋入する第3工程と、溶湯を消失模型に流し込んでフレームの壁面を多孔質体に鋳ぐるむ第4工程とからなることを特徴とする発泡樹脂形成機の蒸気室構成部材の製造方法。
【請求項5】
多孔質体として、多孔質金属又は多孔質セラミックを用いる請求項3又は4に記載の発泡樹脂成形機の蒸気室構成部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−172785(P2009−172785A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11447(P2008−11447)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(591209361)DAISEN株式会社 (9)
【Fターム(参考)】