説明

発泡樹脂製容器用のドレン弁及びドレン弁付容器

【課題】簡単な構造で容易に開閉することができ、蓋体の紛失等が生じず、外見から開閉の判別が容易にできるので、排水を失念したり、排水を不用意に撒き散らす等のトラブルを防止できる、ドレン弁及び該ドレン弁を用いたドレン弁付容器を提供する。
【解決手段】内部に排水路2bを有する円筒状の縦管2aの下端付近から取っ手部が横設されたL字状部材2からなり、前記縦管2aの管壁に排水入口2cが穿設又は切設されていることを特徴とする発泡樹脂製容器用のドレン弁1B及びこのドレン弁を用いたドレン弁付容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷等を投入して内容物を保冷しながら保管、運搬するための発泡樹脂製容器に適したドレン弁及び該ドレン弁を用いたドレン弁付容器に係り、詳しくは、容易に弁を開閉することができ、しかも部品の紛失等が生じず、外側から容易に弁の開閉を判別できるので排水を失念したり、排水を不意に撒き散らす事故を防止できるドレン弁及び該ドレン弁を用いたドレン弁付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料物や魚介類等、ブロッコリー等の野菜を保冷して保管や運搬する際に、発泡合成樹脂製の断熱容器に氷を投入し、この氷で対象物を保冷する方法が多用されている。この方法では氷が溶けた水の処理に際し、容器を傾けて水だけを排出したり、或いはドレン弁を取り付けた容器を用い、ドレン弁から排水する方法が使用されている。
【0003】
しかしながら、保冷対象物が収納されるとともに氷や氷が溶けた水の入った容器は非常に重く、このような容器を傾けて水を排出するには多大の労力と時間を必要とし、特に容器の数が多い場合は全ての容器から水を排出するのは極めて重労働である。また、保冷対象物である荷物の荷崩れや、荷物が誤って容器から出ないように注意する必要があり、非常に面倒で煩雑である。
【0004】
水を排出するためのドレン構造を容器に設けると、上記のような煩雑な重労働からは解放される。最も単純で安価なドレン構造としては、容器の側壁の下方に横孔をあけ、ここに円錐台形状の栓を嵌めたものがある(特許文献1参照)。
しかしながら、このような単純な栓の場合、容器内の水圧が高まったり、或いは栓に物が接触した場合など、栓が不用意に外れてしまい、排水が撒き散らされる場合がある。また、これを防ぐために栓を横孔に強く押し込むと、栓が横孔の中に入り込んで外せなくなったり、又は横孔を押し広げすぎて容器の側面が裂け容器を破損することもある。さらに、排水中に取り外した栓を紛失してしまう恐れもある。
【0005】
その他のドレン構造として、例えば排水筒に栓蓋を螺着し、栓蓋を締め又は緩めることにより止水、排水を制御するドレン弁を設ける方法がある(特許文献2参照)。
しかしながら、このようなドレン弁は螺合の締め付け又は緩めることにより栓蓋を開閉するため時間が掛かるばかりでなく、排水筒から螺離した栓蓋を紛失し易く、更に、容器を運搬する際に周囲の物に接触して破損しやすく、また、構造も複雑で高価にならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−225965号公報
【特許文献2】特開平10−17034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解消し、栓の開閉が容易で、部品の紛失等が生じず、開閉の確認が容易で排水を失念したり、排水を所定外の場所で撒き散らすようなトラブルを防止できるドレン弁及びこのドレン弁を有する容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、内部に排水路を有する円筒状の縦管の下端付近から取っ手部が横設されたL字状部材からなり、前記縦管の管壁に排水入口が穿設又は切設されていることを特徴とする発泡樹脂製容器用のドレン弁を内容とする。
【0009】
本発明の請求項2は、縦管が上部縦管と該上部縦管よりも拡径の下部縦管からなり、上部縦管に排水路及び排水入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁を内容とする。
【0010】
本発明の請求項3は、縦管の外周に膨出部が周設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁を内容とする。
【0011】
本発明の請求項4は、縦管に回動可能に外嵌された外管を有し、該外管の管壁には縦管の排水入口と連通可能な連通口が穿設又は切設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁を内容とする。
【0012】
本発明の請求項5は、請求項1乃至4のいずれかに記載のドレン弁と発泡樹脂製の容器本体及び蓋体からなるドレン弁付容器であって、前記容器本体の側面と底面の境界付近には少なくともドレン弁の取っ手部を収納できる程度の切欠き部が凹設されるとともに、該切欠き部の上面にドレン弁の縦管を挿入するための縦孔が穿設され、前記縦孔と容器本体内部の間に通液用の横孔が穿設され、前記取っ手部を操作して縦管を中心にしてL字状部材を回動させることにより、前記排水入口と横孔を連通状態又は非連通状態に切り替え可能であることを特徴とするドレン弁付容器を内容とする。
【0013】
本発明の請求項6は、容器本体に取り付けられたL字状部材の取っ手部が切欠き部内に収まっている状態では容器本体の横孔とL字状部材の排水入口が連通せず排水不能であり、取っ手部を切欠き部から引き出した状態では容器本体の横孔とL字状部材の排水入口が連通して排水可能であることを特徴とする請求項5に記載のドレン弁付容器を内容とする。
【0014】
本発明の請求項7は、縦孔は容器本体の上面から下面まで貫通しており、蓋体には蓋孔が穿設されるとともに、該蓋孔は閉蓋時に前記縦孔と連通し且つ容器本体を蓋体上に積み重ねた際に縦孔と連絡する位置に穿設されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のドレン弁付容器を内容とする。
【0015】
本発明の請求項8は、請求項5乃至7のいずれかに記載の発泡樹脂製の容器本体を製造するための金型であって、 キャビティ金型がドレン弁の取っ手部を収納する切欠き部及びドレン弁の縦管を挿入する縦孔を形成するための金型部を備え、
コア金型が前記縦孔と容器本体内部の間に通液用の横孔を穿設するための成形駒を出入可能に備えていることを特徴とする成形金型を内容とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるドレン弁は、簡単な構造であるので安価であり、また、容器に容易に取り付けられる。更に、取っ手部により回動させることによりワンタッチで開閉、即ち、排水可能の状態又は排水不能の状態とすることができる。
また、ドレン弁の開閉が一目瞭然であるので排水を失念したり、排水を不用意に撒き散らすといったトラブルが防止される。
また、外管を有するドレン弁は、ドレン弁の回動を繰り返しても容器とのシール性が低下することがないので、ドレン弁付容器を長期に亘って繰り返し使用することができ経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明のドレン弁の一実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は平面図である。
【図2】図2は図1(b)のA−A断面図である。
【図3】図3は本発明のドレン弁の別の実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。
【図4】図4は図3(b)のB−B断面図である。
【図5】図5(a)は本発明のドレン弁(L字状部材)の別の実施例を示す図であり、(b)は(a)のL字状部材の縦管に外嵌可能な外管の正面図である。
【図6】図6(a)は図5(a)のL字状部材に図5(b)の外管を外嵌してなるドレン弁の正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は(a)のC−C断面図であり、(d)は(b)のD−D断面図である。
【図7】図7(a)は本発明のドレン弁付容器における切欠き部、縦孔、容器本体内部、横孔の関係を示す断面図であり、(b)は(a)の縦孔に図1に記載のドレン弁を挿入した様子を示す断面図である。
【図8】図8はL字状部材の回動による連通状態又は非連通状態に切り替えた様子を示す説明図断面図であり、(a)は非連通状態を、(b)は連通状態を示す。
【図9】図9(a)は本発明の別のドレン弁付容器における切欠き部、縦孔、容器本体内部、横孔、蓋孔の関係を示す断面図であり、(b)は(a)の縦孔に図1に記載のドレン弁を挿入した様子を示す模式断面図である。
【図10】図10は図9(b)に示すドレン弁付容器を積み重ねた様子を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1であるドレン弁1Bは、図1及び図2に代表例を示すように、内部に排水路2bを有する円筒状の縦管2aの下端付近から取っ手部2eが横設されたL字状部材2からなり、前記縦管2aの管壁に排水入口2cが穿設又は切設されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第2であるドレン弁付容器1Aは、図7〜図10に代表例を示すように、前記の如きドレン弁1Bと発泡樹脂製の容器本体4及び蓋体5からなり、前記容器本体4の側面4aと底面4bの境界付近には少なくともドレン弁1Bの取っ手部2eを収納できる程度の切欠き部4dが凹設されるとともに、該切欠き部4dの上面にドレン弁1Bの縦管2aを挿入するための縦孔4eが穿設され、前記縦孔4eと容器本体内部4cの間に通液用の横孔4fが穿設され、前記取っ手部2eを操作して縦管2aを中心にしてL字状部材2を回動させることにより、前記排水入口2cと横孔4fを連通状態又は非連通状態に切り替え可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明のドレン弁1Bは、図1及び図2に示すように、実質的に円筒状の縦管2aの下端付近から取っ手部2eが横設されたL字状部材2からなる。縦管2aの内部には容器本体内部4cに生じる排水を容器本体4の外に排出するため排水路2bが設けられているとともに、縦管2aの管壁には排水入口2cが穿設又は切設(図1及び図2に示した例では切設)されている。なお、排水出口2fは縦管2aの下端に設けられている。
【0021】
縦管2aは、内部が排水路2bとされていると共に、その管壁には排水入口2cが穿設又は切設されており、容器本体4の横孔4fから排水入口2cに流れ込んだ排水が排水路2bを通って流れ落ち、排水出口2fから排出されるようになっている。なお、この縦管2aは使用時には容器本体4に設けられた縦孔4eに挿入される部分である。
縦管2aの形状は実質的に円筒状であって縦孔4eに挿入できる形状である限り特に限定されず、例えば、縦孔4eに挿入しやすくするために、上端付近を若干細くしたテーパ状とすることもできる。
【0022】
また、縦管2aを上部縦管2aHと下部縦管2aLから構成し、下部縦管2aLのみを拡径することにより、上部縦管2aHと下部縦管2aLの間に段差を形成してもよい。この場合、段差部分を切欠き部4dの下面又は別途縦孔4e内に設けられた段差に押し付けることによりシール機能を持たせることができ、これにより液垂れを防ぐことができる。また、この段差部分が切欠き部4dの上面又は縦孔4e内に別途設けられた段差等に突き当たり、それ以上深く縦管2aを縦孔4eに挿入できないので、縦管2aを深く挿入しすぎたり、逆に浅すぎることによる排水入口2cと横孔4fとのズレを防止することができる。
【0023】
本発明においては、縦管2aが縦孔4eから抜け出るのを防ぐために、縦管2aの外周に膨出部2dを設けることもできる。縦孔4eに膨出部2dが設けられた縦管2aを挿入する場合、膨出部2dの突出高さを小さくし挿入方向側の斜面をなだらかにすれば、膨出部2dに対応する窪み等が縦孔4eに設けられていなくても容易に圧入することができる。また、挿入方向と逆側の斜面を急角度にすれば、縦管2aが縦孔4eから抜け出しにくくなる。
【0024】
なお、容器本体4の縦孔4eを発泡樹脂の弾性を利用して押し拡げながら膨出部2dが圧入された後の部分は、当該樹脂の弾性復元力により膨らみ元の形状に戻ろうとするので、縦管2aは縦孔4eに圧入された状態が維持され不用意に抜け出ることはない。また、縦管2aが発泡樹脂の弾性復元力により縦孔4eの孔壁に圧接されているので、縦管2aを回動させても良好なシール性が維持される。
膨出部2dの形状は、縦孔4e内での縦管2aの回動を妨げない形状である限り特に限定されないが、図1、図2に示すような凸状型や、図3、図4に示すような所謂タケノコ型が例示できる。
【0025】
本発明における取っ手部2eは、縦孔4e内の縦管2aを回動させてドレン弁1Bの排水入口2cと容器本体4の横孔4fの位置関係を変化させ、連通状態(排水状態)と非連通状態(止水状態)を切り替える操作をするための部分である。この取っ手部2eの形状は前記縦管2aの下端付近から横設され、この取っ手部2eを持って縦管2aを回動させることができる形状である限り特に限定されない。
【0026】
上記したような、縦管2aと取っ手部2eからなるL字状部材2は単独でドレン弁1Bとして使用することも可能であるが、図5及び図6に示したように、連通口3aが穿設又は切設された外管3を縦管2aに回動可能に外嵌したものをドレン弁1Bとして使用することもできる。図5、図6に示した例では、外管3の下端入口にスリットが入れられ、また、内側に窪みが設けられており、図6に示すように、L字状部材2の縦管2aに外嵌する際には外管3の下端入口のスリットが開いて縦管2aの膨出部2dを容易に受け入れるとともに、受け入れた後は該膨出部2dが窪みと嵌合しL字状部材2の外管3からの脱落が防止される。
【0027】
このような外管3を用いたドレン弁1Bは、縦管2aに外管3が外嵌されたまま縦孔4eに圧入し、必要に応じて外管3と容器本体4の縦孔4eの間を接着剤等を用いて接着した状態で使用する。これにより、L字状部材2を回動させても外管は回動せず、連通口3aと横孔4fが常に連通している状態となる。このようなドレン弁1Bの取っ手部2eを操作すれば、外管3のなかでL字状部材2だけが回動し、L字状部材2の角度によって連通口3aと排水入口2cの位置関係により連通状態又は非連通状態を切り替えることができる。
外管3を設けない図1、2や図3、4のドレン弁1Bの場合は、回動により連通状態又は非連通状態を繰り返すうちにドレン弁1Bと容器本体4の縦孔4eとのシール性が低下する場合があるのに対し、外管3を設けたドレン弁1Bの場合は、外管3は容器本体4の縦孔4eの中で移動せず固定された状態にあるので、回動による連通状態又は非連通状態を繰り返したとしても縦孔4eとのシール性が低下しない利点があり、ドレン弁付き容器1Aを長期間に亘って使用することができ、経済的である。
【0028】
本発明のドレン弁1Bは、図7に記載されているように、発泡樹脂製であって、切欠き部4d、縦孔4e、横孔4fが設けられた容器本体4に取り付けられ、ドレン弁付容器1Aとして用いられる。
上記のような切欠き部4d及び縦孔4eは外側のキャビティ金型の形状により容易に形成されるが、成形後に熱した棒やドリル等で穿設することもできる。また、横孔4fは内側のコア金型内に設けたルーズコアやスライドコアやシリンダーに取り付けた横孔4fの成形駒の出入操作により成形されるが、成形後に熱した棒やドリル等で穿設することもできる。
尚、切欠き部4d及び縦孔4e、及び横孔4fを有する容器本体4を金型により製造する場合は、切欠き部4d及び縦孔4eを形成するための金型部を備えたキャビティ金型と、横孔4fを穿設するための成形駒を出入可能に備えたコア金型とを用いることにより容易且つ効率的に成形することができる。
【0029】
本発明において、縦管2aは、排水入口2cの高さが横孔4fの高さと略同じになる程度まで、縦孔4e内に挿入される。このようにすれば、図8に示したように、ドレン弁1Bの角度を変えることにより、排水入口2cと横孔4fを連通状態又は非連通状態に切り替えることができる。
【0030】
また、取っ手部2eが切欠き部4dの中に納まっている状態では横孔4fと排水入口2cが連通せず(図8(a)参照)、取っ手部2eが切欠き部4dの外に引き出された状態では横孔4fと排水入口2cが連通する(図8(b)参照)ように構成すれば、取っ手部2eが切欠き部4dから突出しているか否かを見ることにより、横孔4fと排水入口2cが連通しているか(即ち、排水可能であるか)又は連通していないか(即ち、排水不能であるか)を容易に識別することができるので、排水し忘れたり、或いは排水を不用意に撒き散らしたりする恐れがなくなる。尚、図8(a)に示すように、切欠き部4d′を設けると、取っ手部2eが切欠き部4d′に当接することにより過度の(無駄な)回動の規制部として機能するので好ましい。
【0031】
なお、切欠き部4dから取っ手部2eが飛び出した状態では、作業環境によっては作業中に取っ手部2eが作業機械等に当接し、不用意に連通状態又は非連通状態に切り替わってしまうことも考えられるが、そのような環境で使用する場合には、連通状態及び非連通状態のときに取っ手部2eが切欠き部4d内に収まるようにするとともに、例えば、取っ手部2eを表裏別の色に着色するなど、色で識別できるようにすることも可能である。
【0032】
本発明のドレン弁付容器1Aは、多数積み重ねた状態で上位の容器1Aから排水しても、下位の容器1Aの外側を汚さないようにすることもできる。
この場合、図9(a)に示すように、縦孔4eを容器本体4の下面から上面まで貫通させるとともに、蓋体5にも縦孔4eと連通する蓋孔5aを穿設し、さらに、蓋孔5aが蓋体5の上に積み重ねた容器1Aの縦孔4eと連絡するようにすればよい。尚、蓋孔5aの上部は上位の容器1Aの排水出口2fからの排水を受け易いように逆台形状(ロート状)に形成されている。
このようにすれば、図9(b)に示すように、上位の容器1Aから出る排水が下位の容器1Aの縦孔4eを通って排水されるので、下位の容器1Aの外壁が汚される等の心配がない。
尚、切欠き部4d及び容器本体4の下面から上面まで貫通した縦孔4e、及び横孔4fを有する容器本体4を金型により製造する場合は、切欠き部4d及び容器本体4の下面から上面まで貫通した縦孔4eを形成するための金型部を備えたキャビティ金型と、横孔4fを穿設するための成形駒を出入可能に備えたコア金型とを用いることにより容易且つ効率的に成形することができる。
【0033】
なお、下位の容器1Aでは縦孔4eの中を複数の容器から出た排水が流れるので、流量が多すぎて逆流し、蓋孔5aから排水があふれたり、上位の容器1Aから流れ出た排水が排水入口2cから下位の容器1A内に入り込んだりする恐れがあるが、このような場合は、図10に示したように、上位の容器1Aのドレン弁1Bのみを開き、下位の容器1Aのドレン弁1Bは閉めるか又は開度を小さくしてて流量を調節することができる。
【0034】
本発明において、ドレン弁1Bの材質については、適当な強度を有する限り特に限定されないが、強度、軽量性、成型のし易さを備えている点で樹脂が好ましく、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン- スチレン共重合樹脂)、AAS樹脂(アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニリデン樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート/スチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PE樹脂(ポリエチレン樹脂)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)およびPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等の合成樹脂や、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド11、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等が使用可能である。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0035】
また、容器本体4及び蓋体5は、軽量性、保温性を考慮して発泡樹脂が使用されるが、この発泡樹脂の材質としては、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂),PE樹脂(ポリエチレン樹脂)等の合成樹脂や上記した生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックが好適に用いられる。
生分解性プラスチックを用いた場合は、化石資源の使用を減少させ、特に、バイオマスプラスチックは植物由来の素材からなるので焼却処分しても植物が固定したCO2 が排出されるだけであるので、CO2 排出量が増えないカーボンニュートラルが達成され、環境に優しく地球温暖化防止に寄与する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0036】
叙上のとおり、本発明のドレン弁及びドレン弁付容器によれば、構造が簡単でワンタッチで容易に開閉でき、しかも部品の紛失等が生じず、また、外側から容易に弁の開閉を判別できるので排水を失念したり、排水を不用意に撒き散らす等の事故を防止できる。従って、内容物を氷等で保冷しながら保管や輸送するための保冷容器用のドレン弁及びドレン弁付容器として頗る有用である。
【符号の説明】
【0037】
1A ドレン弁付容器
1B ドレン弁
2 L字状部材
2a 縦管
2aH 上部縦管
2aL 下部縦管
2b 排水路
2c 排水入口
2d 膨出部
2e 取っ手部
2f 排水出口
3 外管
3a 連通口
4 容器本体
4a 側面
4b 底面
4c 容器本体内部
4d、4d′ 切欠き部
4e 縦孔
4f 横孔
5 蓋体
5a 蓋孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に排水路を有する円筒状の縦管の下端付近から取っ手部が横設されたL字状部材からなり、
前記縦管の管壁に排水入口が穿設又は切設されていることを特徴とする発泡樹脂製容器用のドレン弁。
【請求項2】
縦管が上部縦管と該上部縦管よりも拡径の下部縦管からなり、上部縦管に排水路及び排水入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁。
【請求項3】
縦管の外周に膨出部が周設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁。
【請求項4】
縦管に回動可能に外嵌された外管を有し、該外管の管壁には縦管の排水入口と連通可能な連通口が穿設又は切設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡樹脂製容器用のドレン弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のドレン弁と発泡樹脂製の容器本体及び蓋体からなるドレン弁付容器であって、
前記容器本体の側面と底面の境界付近には少なくともドレン弁の取っ手部を収納できる程度の切欠き部が凹設されるとともに、該切欠き部の上面にドレン弁の縦管を挿入するための縦孔が穿設され、
前記縦孔と容器本体内部の間に通液用の横孔が穿設され、
前記取っ手部を操作して縦管を中心にしてL字状部材を回動させることにより、前記排水入口と横孔を連通状態又は非連通状態に切り替え可能であることを特徴とするドレン弁付容器。
【請求項6】
容器本体に取り付けられたL字状部材の取っ手部が切欠き部内に収まっている状態では容器本体の横孔とL字状部材の排水入口が連通せず排水不能であり、
取っ手部を切欠き部から引き出した状態では容器本体の横孔とL字状部材の排水入口が連通して排水可能であることを特徴とする請求項5に記載のドレン弁付容器。
【請求項7】
縦孔は容器本体の上面から下面まで貫通しており、
蓋体には蓋孔が穿設されるとともに、該蓋孔は閉蓋時に前記縦孔と連通し且つ容器本体を蓋体上に積み重ねた際に縦孔と連絡する位置に穿設されていることを特徴とする請求項5又6に記載のドレン弁付容器。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の発泡樹脂製の容器本体を製造するための金型であって、
キャビティ金型がドレン弁の取っ手部を収納する切欠き部及びドレン弁の縦管を挿入する縦孔を形成するための金型部を備え、
コア金型が前記縦孔と容器本体内部の間に通液用の横孔を穿設するための成形駒を出入可能に備えていることを特徴とする成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173629(P2011−173629A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40082(P2010−40082)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502135923)大西化成興業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】