説明

発熱体の冷却装置

【課題】 車室内空気と共に液体が発熱体に飛散するのを防止できる発熱体の冷却装置の提供。
【解決手段】 リアパーシェル9の開口部10を介して流入した液体をトラップ部16に流入させて排出パイプ15から車外へ排出する一方、リアパーシェル9の開口部10を介して流入した車室内空気を開口部10から吸気ダクト4内に流入させることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車等には、電動機(主に走行用モータ)に電気を供給するためのバッテリが搭載されると共に、このバッテリには、繰り返し充放電が可能なニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、またはリチウムイオン電池等の二次電池の採用が検討・実施されている。
ところで、バッテリは、内部の化学反応によって発熱して高温になると充放電効率が低下してしまうため、車室内空気を筐体内に収容されたバッテリに通過させて該バッテリを冷却する技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−205953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、車室内空気と共に液体(例えば飲料物、車室内清掃用洗剤等)が筐体内に流入した場合には、液体がバッテリに飛散して電気絶縁不良、腐食、詰まり等の不具合が生じて、バッテリの性能が低下する虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車室内空気に混入した液体が発熱体に飛散するのを防止できる発熱体の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、車室内空気を発熱体に通過させることにより、該発熱体を冷却するようにした発熱体の冷却装置において、車室内と発熱体に連通され、車室内空気を発熱体に導く管状の接続手段と、上記接続手段の車室内側端部に設けられ、車室内から車室内空気と共に液体が接続手段内に流入するのを防止可能な防止手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、接続手段の車室内側端部に設けられ、車室内から車室内空気と共に液体が接続手段内に流入するのを防止可能な防止手段を備える。
これにより、車室内空気と共に液体が接続手段内に流入して発熱体へ飛散するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、実施例1では発熱体を車両用バッテリに適用した例を説明する。
図1は実施例1のバッテリ冷却装置を説明する全体図、図2は実施例1の要部拡大断面図、図3は図2のS3−S3線における断面図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、実施例1の発熱体の冷却装置が採用されたバッテリ冷却装置1は、ブロアファン2と、バッテリパック3と、吸気ダクト4と、接続ダクト5等が備えられ、これらは、例えばハイブリッド自動車の電動機(主に走行用モータ)へ電気を供給するためのバッテリとして車両後方のトランクルームの側方から下部に亘って配置される。
【0010】
ブロアファン2は、車室内6の空気(以下車室内空気と称す)を後述する吸気ダクト4を介して吸入した後、接続ダクト5を介してバッテリパック3へ冷却風として供給するためのファンであって、バッテリパック3の上部に配置されている。
【0011】
バッテリパック3は、横長で箱状の筐体3aと、この筐体3a内に収容されたバッテリ3b等とから構成されている。
筐体3aの側方上部には、接続ダクト5を介して冷却風を筐体3a内に導入するための導入口3cが設けられる一方、この導入口3cの下方には排気ダクト3dを介して筐体3a内の冷却風を図外のトランクルームまたは車外へ排出するための排出口3eが設けられている。
【0012】
バッテリ3bは、筐体3aの長手方向に並設された複数(4個のみ図示)のバッテリモジュール3fで構成されると共に、隣り合うバッテリモジュール3f間には所定の隙間が設けられている。
各バッテリモジュール3fは、公知のものと同様に、繰り返し充放電が可能なニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、またはリチウムイオン電池等の二次電池が採用される他、これらは図示を省略する接続配線で互いに電気的に直列または並列に接続されている。
【0013】
また、筐体3a内には、吸気ダクト4、ブロアファン2、及び接続ダクト5を介して導入口3cから導入された冷却風がバッテリモジュール3fの外周面に沿って流れる上部通路3gと、この上部通路の冷却風が隣り合うバッテリモジュール3f間の隙間を通過するバイパス通路3hと、このバイパス通路3hを通過後の冷却風が排出口3eへ向かう下部通路3iとが形成されている。
これにより、筐体3a内を通過する冷却風と各バッテリモジュール3fを熱交換させて各バッテリモジュール3fを冷却できるようになっている。
【0014】
以下、吸気ダクト4について詳述する。
図1に示すように、吸気ダクト4は樹脂製で管状に形成される他、その一端側部7がブロアファン2に連通接続される一方、他端部8が車室内6に連通されている。
具体的には、図2に示すように、車室内後席の後方に設けられたリアパーシェル9(請求項の車室内の仕切部に相当)には上下方向に開口された円形状の開口部10が形成され、ここに、複数の連通孔11を有する略円盤状のキャップ12が嵌合した状態で装着されている。
【0015】
一方、吸気ダクト4の他端部8は、開口部10の下方位置で上方へ向けて配置される他、その上部8aは外側へ突出した鍔状の鍔部13を有して閉塞されると共に、その外周部8bには矩形状の開口部14(請求項の車室内空気用開口部に相当)が複数設けられている。
また、図3に示すように、実施例1では、開口部14を吸気ダクト4の外周上の4箇所に設けているが、この限りではない。
【0016】
さらに、吸気ダクト4の他端部8の外周部8bには、開口部14よりも低い位置に底部15を有して上方に開口された有底筒状のトラップ部16が設けられている。
トラップ部16の上端部には、環状のシール部材17がリアパーシェル9との間に介装された状態で固定され、これにより、トラップ部16内がリアパーシェル9の下部空間と仕切られている。
一方、トラップ部16の底部15には下方へ突出した排出パイプ18(請求項の排出部に相当)がトラップ部16内に連通した状態で接続されている。
なお、図示を省略するが、排出パイプ18の下端開口部には、車外に連通したホース(図示せず)が接続される。
【0017】
次に、作用を説明する。
[バッテリ冷却時における車室内空気の導入について]
このように構成されたバッテリ冷却装置1では、バッテリ冷却時において、ブロアファン2が作動し、車室内空気を吸気ダクト4の他端側開口部8から吸入した後、ブロアファン2に導く。
その後、ブロアファン2に導かれた車室内空気は、冷却風として接続ダクト5からバッテリパック3内に導入される。
この際、図2に示すように、車室内風(図中破線矢印で図示)は、キャップ12の連通穴11を介してトラップ部16内に流入した後、各開口部14から吸気ダクト4内に流入させることができる(図3参照)。
【0018】
[バッテリ冷却時における液体の流入について]
ここで、従来の発明にあっては、車室内空気と共に液体(例えば飲料物、車室内清掃用洗剤等)が筐体3a内に流入した場合には、液体がバッテリ3bに飛散して電気絶縁不良、腐食、詰まり等の不具合が生じて、バッテリ3bの性能が低下する虞があった。
これに対し、実施例1では、図2に示すように、キャップ12の連通穴11を介して車室内空気と共に流入した液体(図中一点鎖線矢印で図示)は、先ず、他端部8の上部8aに落下した後、鍔部13からトラップ部16の底部15に落下する。
その後、トラップ部16の底部15に落下した液体は排出パイプ18から排出される(図3参照)。
従って、車室内空気と液体を完全に分離して車室内空気のみを吸気ダクト4内に流入させることができ、液体がバッテリ3bに飛散するのを防止できる。
また、液体が開口部14から吸気ダクト4内に流入するのを鍔部13によって防止できる。
【0019】
[バッテリ非冷却時における液体の流入について]
一方、バッテリ非冷却時、即ち、ブロアファン2が停止していて、吸気ダクト4内に車室内空気の流れがない場合に、液体が吸気ダクト4内に流入した際にも前述した場合と同様にトラップ部16で液体を受け取った後、排出パイプ18を介して車外へ排出できる。
【0020】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1では、吸気ダクト4の他端部8を車室内6と連通するリアパーシェル9の開口部10(詳細にはキャップ12の連通穴11)を介して他端部8側に流入した液体と車室内空気を分離して車室内空気のみを吸気ダクト4に流入させることができ、液体が吸気ダクト4を介してバッテリ3bに飛散するのを防止できる。
【実施例2】
【0021】
以下、実施例2を説明する。
実施例2において、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
図4は実施例2の要部拡大断面図である。
【0022】
図4に示すように、実施例2では、実施例1で説明したキャップ12の底部に下方へ環状に突出した環状突起部12aに嵌合された略円盤状のフィルタ部材20(請求項のフィルタ手段に相当)が吸気ダクト4の上部8aに当接した状態で設けられているという点が実施例1と異なる。
なお、フィルタ部材20の材質や固定方法については適宜設定できる。
【0023】
従って、実施例2では、キャップ12の連通穴11を介して流入した車室内空気(図中破線矢印で図示)と液体(図中一点鎖線矢印で図示)は、共にフィルタ部材20を通過した後、実施例1と同様に、車室内空気は各開口部14を介して吸気ダクト4内に流入する一方、液体は排出パイプ18から車外に排出される。
これにより、車室内空気または液体に異物が混入していた場合に、異物をフィルタ部材20で捕らえることができる。
また、フィルタ部材20は、キャップ12をリアパーシェル9から外せば、簡単に脱着して清掃・交換できる。
【実施例3】
【0024】
以下、実施例3を説明する。
実施例3において、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
図5は実施例3の要部拡大断面図である。
【0025】
図5に示すように、実施例3では、実施例1で説明した吸気ダクト4の他端部8がリアパーシェル9の開口部10と隙間30を有して上方へ向けて貫通した状態で配置されている。
【0026】
また、吸気ダクト4の他端部8は上方に開口されて、ここに、開口部10よりも大きな外縁で下方へ低く湾曲した鍔部31aを有するキャップ31が嵌合した状態で装着されている。
また、開口部14は他端部8の開口端に形成されて車室内と直接連通されている。なお、開口部14の下端は鍔部31aの下端よりも高い位置に配置されている。
さらに、吸気ダクト4の他端部8の内周には内側へ環状に突出した環状突起部32が形成され、ここにフィルタ部材33が嵌合した状態で介装されている。
【0027】
従って、車室内空気(図中破線矢印で図示)を吸気ダクト4の開口部14及びフィルタ部材33を介して吸気ダクト4内に流入させることができるようになっている。
また、液体(図中一点鎖線矢印で図示)をキャップ31の鍔部31aからリアパーシェル9に落下させた後、さらに、隙間30を介してトラップ部16内に落下させて排出パイプ18から車外へ排出させることができるようになっている。
この際、開口部14の下端は、鍔部31aの下端よりも高い位置に配置されて、ラビリンス構造が形成されているため、液体が開口部14を介して吸気ダクト4内に流入する虞はない。
【0028】
また、フィルタ部材33で車室内空気に混入する異物を捕らえることができ、バッテリ3b側への異物の混入を防止できる。
さらに、フィルタ部材33は、キャップ31を吸気ダクト4の他端部8から外せば車室内6側から脱着でき、簡単に清掃・交換できる。
【実施例4】
【0029】
以下、実施例4を説明する。
実施例4において、上記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
図6は実施例4の要部拡大断面図である。
【0030】
図6に示すように、実施例4では、実施例1で説明した吸気ダクト4の上部8aを円錐形状に形成することにより、外側に行くにつれて低くなる傾斜面40(請求項の誘導手段に相当)を備えるという点が実施例1と異なる。
従って、キャップ12の連通穴11を介して上部8aに落下した液体(図中一点鎖線矢印で図示)を傾斜面40に沿わせてトラップ部16内に誘導でき、好適となる。
なお、実施例4では、吸気ダクト4の上部8aを円錐形状にしたが、液体をトラップ部16内に誘導可能な傾斜面を備えていれば良く、その他の形状も考えられる。
【0031】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、バッテリパック3内の構成については適宜設定できる。
また、吸気ダクト4の他端部8の周辺における各部の形成位置、形成数、開口面積、寸法、及び固定方法等についても適宜設定できる。
また、吸気ダクト4は樹脂で一体的に形成する必要はなく、部位毎に別体で製造した後で溶着することもできる。
また、前述した実施例では、発熱体を車両用バッテリに適用した例を説明したが、走行用モータのインバータ回路やその他の電気機器に適用しても良い。
【0032】
さらに、図7に示すように、トラップ部16の上端をキャップ12の環状突起部12aの一部等に嵌合させて固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1のバッテリ冷却装置を説明する全体図である。
【図2】実施例1の要部拡大断面図である。
【図3】図2のS3−S3線における断面図である。
【図4】実施例2の要部拡大断面図である。
【図5】実施例3の要部拡大断面図である。
【図6】実施例4の要部拡大断面図である。
【図7】その他の実施例の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 バッテリ冷却装置
2 ブロアファン
3 バッテリパック
3a 筐体
3b バッテリ
3c 導入口
3d 排気ダクト
3e 排出口
3f バッテリモジュール
3g 上部通路
3h バイパス通路
3i 下部通路
4 吸気ダクト
5 接続ダクト
6 車室内
7 一端部
8 他端部
8a 上部
8b 外周部
9 リアパーシェル
10 (リアパーシェルの)開口部
11 連通孔
12 キャップ
12a 環状突起部
13 鍔部
14 (吸気ダクトの)開口部
15 底部
16 トラップ部
17 シール部材
18 排出パイプ
20 フィルタ部材
30 所定隙間
31 キャップ
32 環状突起部
33 フィルタ部材
40 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内空気を発熱体に通過させることにより、該発熱体を冷却するようにした発熱体の冷却装置において、
車室内と発熱体に連通され、車室内空気を発熱体に導く管状の接続手段と、
前記接続手段の車室内側端部に設けられ、車室内から車室内空気と共に液体が接続手段内に流入するのを防止可能な防止手段を備えることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の発熱体の冷却装置において、
前記防止手段は、前記液体を受け取って車外へ排出することにより、車室内から車室内空気と共に液体が接続手段内に流入するのを防止することを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の発熱体の冷却装置において、
前記防止手段は、前記液体または車室内空気に混入した異物を捕らえるフィルタ手段を備えることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項4】
請求項3記載の発熱体の冷却装置において、
前記フィルタ手段は、防止手段と着脱可能に構成されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれかに記載の発熱体の冷却装置において、
前記発熱体は、車両用バッテリであることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれかに記載の発熱体の冷却装置において、
前記防止手段は、前記接続手段の他端部を車室内の仕切り部に設けられた開口部の下方位置で上方へ向けて配置し、
前記接続手段の他端部の上部を閉塞すると共に、その外周部に車室内空気用開口部を設け、
前記接続手段の他端部の外周部に前記車室内空気用開口部よりも低い位置に底部を有して上方へ開口する有底筒状のトラップ部を設け、
前記トラップ部の底部に車外に連通した排出部を設け、
前記開口部を介して車室内空気を車室内空気用開口部から接続手段内に流入させる一方、前記開口部を介して液体をトラップ部内に流入させた後、排出部から車外へ排出するようにしたことを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項7】
請求項6記載の発熱体の冷却装置において、
前記他端部の上部に設けられ、外周部側に行くにつれて低くなる傾斜状の誘導部を備えることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜5のうちのいずれかに記載の発熱体の冷却装置において、
前記防止手段は、前記接続手段の他端部を車室内の仕切り部に設けられた開口部と所定隙間を有して上方へ貫通した状態で上方へ向けて配置し、
前記接続手段の他端部の上部を閉塞すると共に、その外周部に車室内空気用開口部を設け、
前記接続手段の他端部の外周部の前記開口部よりも低い位置に該開口部の外縁よりも大きな外縁を有して上方へ開口する有底筒状のトラップ部を設け、
前記トラップ部の底部に車外に連通した排出部を設け、
車室内空気を車室内空気用開口部から接続手段内に流入させる一方、前記開口部を介して液体をトラップ部内に流入させた後、排出部から車外へ排出するようにしたことを特徴とする発熱体の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−161062(P2009−161062A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1247(P2008−1247)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】