説明

発熱体ユニット及び加熱装置

【課題】本発明は、被加熱体を所望の配熱分布で、高温度で加熱することができる効率の高い熱源としての発熱体ユニット及び加熱装置を、安全性及び信頼性が高く、容易に製造することができる構成とすることを目的とする。
【解決手段】発熱体ユニットは、炭素系物質を含む材料によりフィルムシート素材で形成され、二次元的等方向性の熱伝導を有する帯状の発熱体2を容器1内に封入し、発熱体2の端部の発熱体保持部2aを保持具3により保持するように形成し、当該保持具3は、発熱体保持部2aが巻き付けられる掛止受部3aと、発熱体保持部2aを挟んで掛止受部3aに装着される掛止部3bと、掛止受部3aから延設され発熱保持部2aを係止する係止部3cとを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関し、特に、炭素系物質を主成分としてフィルムシート状に形成された発熱体を有する発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関する。本発明に係る加熱装置としては、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置、及び電気暖房機器、調理機器、乾燥機等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器が含まれる。
【背景技術】
【0002】
長尺形状の熱源となる従来の発熱体ユニットには、円筒状のガラス管内部に細長いコイル状のタングステン線、又は棒状若しくは板状の炭素系焼結体が発熱体として封入されて構成されていた。最近、これらの発熱体に代わって、被加熱体をより均一に、且つ更に高温度に加熱することができる汎用性の高い発熱体ユニットとして、炭素系物質を主成分とした繊維を樹脂で含浸し温度処理を施した細長いシート状(帯状)の発熱体を用いたものが提供されている。
【0003】
発熱体ユニットにおいて、ガラス管内部に収納される発熱体の両端部分には、電源を供給するための部材(電力供給部材)が取り付けられており、この電力供給部材は発熱体に対して確実に装着されるとともに、効率高く電力を供給できるように構成することが必要である。また、発熱体ユニットにおける発熱体と電力供給部材は、細く破損しやすいガラス管の内部の所定位置に配置され封入される構成であるため、発熱体ユニットの製造においては、発熱体と電力供給部材を容易に、且つ確実にガラス管内部に組み込むことができる、作業性の優れた構造を有することが必要である。更に、熱源として使用される発熱体ユニットにおいては、安全性が高く、長期間の使用に耐える信頼性の高い装置であることが絶対的な条件である。
【特許文献1】特開2004−193130号公報
【特許文献2】特開2006−040898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭素系物質を主成分とした繊維を樹脂で含浸し温度処理を施した細長いシート状(帯状)の発熱体を用いた従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体の両端部分を貴金属で被覆し、その被覆部分を金属スリーブで覆い、金属スリーブと被覆部分とを金属ロウによりロウ付けしたものがあった(特許文献1参照。)。このような金属ロウにより発熱体と金属スリーブを溶着する方法は、発熱体が高温度(例えば、1100℃)となる発熱体ユニットにおいて、発熱体からの熱伝導によりロウ付け部分が溶融してしまい、場合によっては発熱体が外れるという安全性の点で大きな問題があった。
【0005】
また、従来の発熱体ユニットにおいては、細長いシート状の発熱体の両端部分に電力供給部材を圧着した構成ものがあった(特許文献2参照。)。このように構成された従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体として複数の炭素繊維を樹脂によりシート状に固着して形成したものが用いられていた。このように形成された従来の発熱体ユニットにおけるシート状の発熱体は、その表面が滑らかであるため、電力供給部材が強い挟着力を有しない場合には、発熱体が電力供給部材から脱落するおそれがあり、信頼性に欠けるという問題があった。
【0006】
本発明者らは、従来に用いられていた炭素系物質を主成分としたシート状の発熱体とは、材料及び製造方法において全く異なる新たなフィルムシート状の材料を発熱材料として発熱体に適用し、新たな熱源としての発熱体ユニットの開発に取り組んできた。そのような発熱体ユニットに用いる発熱体に適用しようとする新たなフィルムシート状の材料は、従来の発熱体の表面より更に滑らかな表面を有し、且つ柔軟性を持っている。また、このフィルムシート状の材料は、強度的には強いものではなく、大きな力を受けると、裂けて破壊されるおそれがあった。このため、新たなフィルムシート状の材料を発熱体として用いて前述のような従来の発熱体ユニットにおける電力供給部材の構成をそのまま適用して、発熱体ユニットを構成することは安全性及び信頼性の点で問題があった。
【0007】
本発明は、被加熱体を所望の配熱分布で、且つ高温度に加熱することができる効率の高い熱源としての発熱体ユニット及び加熱装置を、安全性及び信頼性が高く、容易に製造することができる構成とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の観点の発熱体ユニットは、
炭素系物質を含む材料によりフィルムシートで形成され、2次元的等方向性の熱伝導を有する帯状の発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体と前記電力供給部の一部を内包する容器と、を具備する発熱体ユニットであって、
前記容器の内部における前記電力供給部は、前記発熱体の両端にある発熱体保持部を保持する保持具と、前記保持具に接続された内部リード線部と、を有し、前記保持具は、前記発熱体保持部が巻き付けられる掛止受部と、前記掛止受部から延設されて前記発熱体を係止する係止部と、前記発熱体保持部を挟んで前記掛止受部に装着される掛止部と、を有して構成されている。このように構成された本発明に係る第1の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を所望の配熱分布で、且つ高温度に加熱することができ、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源となり、製造の容易な構成となる。
【0009】
本発明に係る第2の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1の観点の前記掛止受部において、前記発熱体保持部を受ける部位が前記発熱体の長手方向に直交する幅方向に延設されている。このように構成された本発明に係る第2の観点の発熱体ユニットにおいては、発熱体が保持具に確実に掛け止めされて抜け落ちることがなく、簡単な構成で安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0010】
本発明に係る第3の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第2の観点の前記発熱体保持部に孔又は切り欠きが形成され、前記孔又は切り欠きの内部に前記係止部が配置されている。このように構成された本発明に係る第3の観点の発熱体ユニットにおいては、簡単な構成を有しており、製造の容易な熱源となる。
【0011】
本発明に係る第4の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第3の観点の前記孔又は切り欠きの内部に配置された前記係止部が前記内部リード線部に接合されている。このように構成された本発明に係る第4の観点の発熱体ユニットは、簡単な構成を有し、製造容易な熱源となる。
【0012】
本発明に係る第5の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第4の観点の前記掛止受部と前記係止部が線材により一体的に形成され、前記掛止受部が前記線材を屈曲させて前記発熱体保持部が巻き付けられるよう構成され、前記係止部が前記内部リード線部に繋がるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第5の観点の発熱体ユニットは、簡単な構成を有し、製造容易な熱源となる。
【0013】
本発明に係る第6の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第4の観点の前記掛止受部と前記係止部が線材により一体的に形成され、前記発熱体保持部の幅方向の縁部に形成された切り欠きの内部に前記係止部が配置されている。このように構成された本発明に係る第6の観点の発熱体ユニットは、簡単な構成を有しており、製造容易な熱源となる。
【0014】
本発明に係る第7の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第6の観点の前記掛止受部と前記係止部が一本の線材により形成され、前記線材を屈曲させて前記掛止受部と前記係止部が形成されている。このように構成された本発明に係る第7の観点の発熱体ユニットは、簡単な構成を有しており、製造容易な熱源となる。
【0015】
本発明に係る第8の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第7の観点の前記掛止部が弾性材で形成され、前記掛止受部に対して弾性力により装着されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第8の観点の発熱体ユニットは、掛止受部に発熱体を容易に、且つ確実に固定することができ、安全性及び信頼性の高い熱源を容易に製造することができる。
【0016】
本発明に係る第9の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第8の観点の前記掛止受部が導電性材料で形成されている。このように構成された本発明に係る第9の観点の発熱体ユニットは、発熱体への電力供給が確実なものとなり信頼性の高い熱源を提供することができる。
【0017】
本発明に係る第10の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第9の観点の前記保持具は、前記発熱体を前記容器の内部の所定位置に配置するための位置規制機能を有し、前記保持具における端部が前記容器の内面に近接して配置される。このように構成された本発明に係る第10の観点の発熱体ユニットは、発熱体が容器内の所望の位置に配置され、安全性及び信頼性の高い熱源を提供することができる。
【0018】
本発明に係る第11の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第10の観点の前記発熱体が発熱体自体における熱収縮及び熱膨張を吸収する弾性力を有する構造を持ち、前記保持具に電力を供給する前記内部リード線部に弾性構造を有しない構成である。このように構成された本発明に係る第11の観点の発熱体ユニットは、発熱体を簡単な構成で容器内の所望の位置に確実に配置されるため、信頼性及び効率の高い熱源となる。
【0019】
本発明に係る第12の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第11の観点の前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有する。このように構成された本発明に係る第12の観点の発熱体ユニットは、高温度に加熱することができ、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源となる。
【0020】
本発明に係る第13の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第12の観点の前記容器は、耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管により形成され、不活性ガスが充填されて前記電力供給部において封止されている。このように構成された本発明に係る第13の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を均一に、且つ高温度に加熱することができ、安全性及び信頼性が高い熱源となる。
【0021】
本発明に係る第14の観点の加熱装置は、前記第1乃至第13の観点の発熱体ユニットを熱源として装備しているため、安全性及び信頼性が高く、容易に製造することができる構成となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源となる発熱体ユニットを構成することができるとともに、簡単な構成を有しているため、作業効率が高く優れた生産性を有する製造の容易な発熱体ユニットを提供することができる。また、本発明によれば、上記の効果を有する発熱体ユニットが熱源として加熱装置に組み込まれているため、安全性及び信頼性が高く、効率の高い加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットについて図1乃至図4を用いて説明する。図1は実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す平面図である。図1においては、当該発熱体ユニットが長尺形状であるため、その中間部分を破断して省略し、両端部分近傍を示している。図2は図1に示した発熱体ユニットの正面図である。
【0025】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、耐熱性を有する細長い容器1の内部にフィルムシート状で帯状の発熱体2が配置されている。帯状の発熱体2は容器1の長手方向に沿って延設され配置されている。実施の形態1の発熱ユニットにおいては、容器1が透明な石英ガラス管により形成されており、石英ガラス管の両端部分が平板状に溶着されて容器1が構成されている。発熱体2を収容する容器内部には、不活性ガスとしてのアルゴンガスが封入されている。容器内部に封入可能な不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されるものではなくアルゴンガスの他に、窒素ガス、又はアルゴンガスと窒素ガス、アルゴンガスとキセノンガス、アルゴンガスとクリプトンガス等の混合ガスを用いても本願発明と同様の効果を奏し、封入すべき不活性ガスとしては目的に応じ適宜選択することが可能である。容器1の内部に不活性ガスを封入するのは、高温度で使用した際において、容器内部の炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。なお、容器1の材料としては、耐熱性、絶縁性及び熱透過性を有する材料であれば用いることができ、例えば石英ガラスの他に、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等のガラス材、セラミック材等から適宜選択される。
【0026】
図1及び図2に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットは、容器1と、熱輻射膜体としての細長い帯状の発熱体2と、この発熱体2を容器内の所定位置に保持するために発熱体2の長手方向の両端部分に設けられ、発熱体2に電力を供給するための第1及び第2の電力供給部10a,10bと、を備えている。
【0027】
発熱体2の両端に設けられた第1及び第2の電力供給部10a,10bは、発熱体2の両端に取り付けられた保持具3を含んでいる。保持具3において、一方の保持具3(図1においては左側の保持具3)には第1の内部リード線部11aが取り付けられており、他方の保持具3(図1においては右側の保持具3)には第2の内部リード線部11bが取り付けられている。第1の内部リード線部11a及び第2の内部リード線部11bのそれぞれは、容器1の両端部分の封着部分(溶着部分)に埋設されたモリブデン箔8を介して、容器1の両端から容器外部に導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
【0028】
図1及び図2に示すように、第1の電力供給部10aは、保持具3、モリブデン箔8、外部リード線9、及び第1の内部リード線部11aを有して構成されている。一方、第2の電力供給部10bは、保持具3、モリブデン箔8、外部リード線9、及び第2の内部リード線部11bを有して構成されている。
【0029】
第1の内部リード線部11aは、発熱体2の一端(図1における左端)に装着された保持具3に接合された固定部5と、螺旋状に形成され長手方向に弾性を有するスプリング部6と、モリブデン箔8に接合された内部リード線7とにより構成され、固定部5とスプリング部6と内部リード線7とは一本の線材、例えばモリブデン線、により一体的に形成されている。
【0030】
また、第2の内部リード線部11bは、発熱体2の他端(図1における右端)に装着された保持具3に接合された固定部5と、発熱体2を容器内の所定位置に保持するための位置規制部4と、モリブデン箔8に接続された内部リード線7とにより構成され、固定部5と位置規制部4と内部リード線7とは一本の線材、例えばモリブデン線、により一体的に形成されている。実施の形態1における第1の内部リード線部11a及び第2の内部リード線部11bは、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした弾性を有する金属線(丸棒形状又は平板形状)を用いて形成してもよい。
【0031】
以上のように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、保持具3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第1の内部リード線部11aにより構成された第1の電力供給部10aと、保持具3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第2の内部リード線部11bにより構成された第2の電力供給部10bとにより、発熱体2が容器内に張設されている。
【0032】
なお、第1の内部リード線部11aにおけるスプリング部6は、発熱体2に対して張力を与えるものであり、発熱体2を常に容器内の所望の位置で直線的に配置するものである。実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、スプリング部6が発熱体2を容器内の所定の位置に配置するための位置規制部材としての機能も有する。スプリング部6の外周部分は容器1の内周面に近接した位置にあり、スプリング部6が配設されることにより、発熱体2は容器1に接触しない位置に確実に配置される。実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の長手方向が容器1の長手方向に延びる略中心軸上となるよう配置され、発熱体2が容器1に接触しないよう配置されている。また、内部リード線7と固定部5との間にスプリング部6を設けることにより、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収することが可能となる。
【0033】
発熱体2における膨張収縮による変化に対し、発熱体2の材料自体が持つ伸縮率又は発熱体2の形状による伸縮率が大きく、発熱体2自体が弾性を有する場合には、発熱体2の両側にあるそれぞれの内部リード線部11a,11bにはスプリング部6を設ける必要がない。
【0034】
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の両端に異なる構成の第1の内部リード線部11a及び第2の内部リード線部11bを設けた例で説明するが、本発明の発熱体ユニットでは発熱体2の両端に第1の内部リード線部11aと同様、若しくは第2の内部リード線部11bと同様の構成部材を配設してもよく、その発熱体ユニットが用いられる加熱装置の製品仕様及び用途等に応じて適宜変更される。発熱体2のいずれか一端側にスプリング部6を有する第1の内部リード線部11aを配設する構成とすれば、発熱体2の位置規制及び膨張収縮による変化の吸収は可能であるが、発熱体2の両側に第1の内部リード線部11aを配設する構成とすれば発熱体2の両端側において位置規制及び変化吸収を行うことができる構成となり、さらなる効果が期待できる。
【0035】
実施の形態1の発熱体ユニットの長手方向が鉛直方向となるように加熱装置に当該発熱体ユニットが組み込まれた場合、スプリング部6が発熱体2より上側に配置されると発熱体2の温度でスプリング部6が伸張されて加熱され、弾性限度を超えて熱膨張を吸収できなくなるおそれがある。このため、スプリング部6を発熱体2の下側に配置して圧縮された状態で使用する方が好ましい。
【0036】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、第1の内部リード線部11aの固定部5、スプリング部6及び内部リード線7、並びに第2の内部リード線部11bの固定部5、位置規制部4及び内部リード線7を一体的に構成した例で説明したが、各々を別部材で構成してそれぞれが電気的に接合されていれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0037】
図3及び図4は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2の両端部分に装着される保持具3等を示す図である。図3は発熱体2が装着された保持具3等の平面図であり、図4は発熱体2が装着された保持具3等の正面図である。
【0038】
実施の形態1の発熱体ユニットに用いられている保持具3は、導電性及び耐熱性を有する金属材料、例えばモリブデンの線材で形成された棒状の掛止受部3aと、掛止受部3aが嵌め込まれる掛止部3bと、掛止受部3aから延設された係止部3cとで構成されている。図3及び図4に示すように、棒状の掛止受部3aには発熱体2の端部である発熱体保持部2aが折り返されるように巻き付けられている。発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられた掛止受部3aには、掛止部3bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部3bは弾性部材で形成され、掛止受部3aを握着するよう構成されている。掛止部3bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状の掛止受部3aが嵌め込まれて、掛止受部3aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0039】
保持具3の掛止受部3aの中央の位置(発熱体2の長手方向と平行な中心軸の位置)から内部リード線部11a,11bの方へ導出するように係止部3cが延設されている。掛止受部3aから延設された係止部3cは内部リード線部11a,11bの固定部5に繋がっている。したがって、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、掛止受部3aと係止部3cとにより、いわゆるT字形状が構成されている。
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、係止部3cと固定部5が1本の線材により一体的に構成された例で説明するが、それぞれを別部材で形成して接合して構成してもよい。
【0040】
上記のように構成された保持具3により保持される発熱体2の発熱体保持部2aには、貫通孔が形成されている。発熱体保持部2aが掛止受部3aに折り返されるように巻き付けられるとき、発熱体保持部2aの貫通孔には、掛止受部3aの中央から固定部5へ延設された係止部3cが貫通した状態となる。この状態において、掛止受部3aに掛止部3bが発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。したがって、発熱体2は保持具3から外れることがなく、確実に保持される。
【0041】
上記のように、本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の端部である発熱体保持部2aの貫通孔には保持具3の係止部3cが挿入され、発熱体保持部2aが掛止受部3aに巻き付けられ、掛止部3bが掛止受部3aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aは確実に保持される。このように発熱体保持部2aを保持する保持具3には、第1の内部リード線部11a及び第2の内部リード線部11bにより張力が加えられて、発熱体2を容器内の所定位置で直線状に張設される。
【0042】
保持具3が発熱体2を保持して、容器内で発熱体2が張設された状態において、掛止受部3aにおける発熱体保持部2aが折り返されるように巻き付けられる部位は、発熱体2の長手方向に直交する幅方向に配置される。即ち、発熱体保持部2aが巻き付けられる棒状体の掛止受部3aの軸方向は、発熱体2の長手方向に直交する方向である。
実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、保持具3が発熱体2を容器1の内面に接触せず、所定の位置に直線状に張設するため、掛止受部3aの両端部が容器1の内面に近接する位置に配置される。したがって、棒状の掛止受部3aの長さが発熱体2の幅より長く、且つ容器1の内径より小さく設定されている。
【0043】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において各層が互いに空隙をなすように一部が固着された積層構造で、優れた二次元的等方向性の熱伝導を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルムシート状の材料で形成されている。したがって、帯状の発熱体2は温度ムラがなく均一に発熱する熱源となる。
【0044】
発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上であり、600から950W/m・Kの特性を有する。このように、実施の形態1において用いた発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する。
【0045】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導率が略同じであることを示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向である1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向である2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではなく、フィルムシート状の発熱体2における面方向において同じ性質を持つことを言う。
【0046】
本発明において用いられる発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面或いは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルムシート素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。即ち、発熱体2は、炭素系物質を含む材料により形成された複数の膜体が積層されて、積層方向が一部固着された層間構造を有しており、厚み方向に柔軟性を有するフィルムシート素材である。したがって、本発明における発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、前述のように、面方向の熱伝導率が略同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する材料であるとともに図4に示すように掛止受部3aの外面に沿って巻き付けることが可能となる。
【0047】
前述のように製造されたフィルムシート素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などと、グリコール、グリセリン類との反応により得られるポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0048】
前記フィルムシート素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルムシート状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルムシート状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルムシート状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルムシート状の発熱体を本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2として用いる。
【0049】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。即ち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助けるものである。フィラーはこのように均一発泡状態を作り出すのに役立つ。
【0050】
上記のように製造されたフィルムシート素材は、例えばトムソン型やピナクル型の抜き型、ロータリーダイカッタ等の鋭利な刃物、若しくはレーザー加工等により所望の形状に加工される。
【0051】
実施の形態1における発熱体2は、厚み(t)が100μmであり、幅(W)が6.0mmであり、発熱部2bの長さ(L)が300mmである。なお、発熱体2の長さや幅及び厚みについては、入力電圧及び発熱温度等により決定されるものであり、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての製品仕様及び用途に応じて適宜変更が可能である。
【0052】
図3に示すように、実施の形態1における発熱体2の発熱部分である発熱部2bには、複数の溝が発熱体2の長手方向に直交する方向に延設された溝パターンが形成されている。発熱部2bに形成されている複数の溝は、発熱部2bにおける電流の流れ方向を規制し、抵抗値を調整するものである。発熱部2bに形成される溝形状としては、その発熱体ユニットが用いられる製品仕様及び用途等に応じて貫通した溝(スリット)や、有底の溝(凹部溝)等がある。また、凹部溝においては、その厚み方向の深さを変更することにより発熱部2bの抵抗値を調整することが可能である。
【0053】
実施の形態1の発熱体2の発熱部2bには、例えば図3に示す溝パターンが繰り返して形成されている。即ち、発熱体2の発熱部2bには、その長手方向と平行な両側縁部分の対向する位置から長手方向と直交して中心側へ延びる端溝2dと、長手方向と直交して発熱部2bの中央部分に形成された中央溝2eと、が長手方向に交互に形成されている。発熱部2bにおいて対向する端溝2d,2dの中央側の対向端部は、第1の所定距離(図3においてL1で示す距離)を有しており、発熱部2bの中央部分に通電径路を形成している。また、中央溝2eの両端部である縁側端部は、発熱部2bの幅方向の縁部分からそれぞれ同じ第2の所定距離(図3においてL2で示す距離)を有しており、発熱部2bの両側縁部分近傍に通電径路を形成している。さらに、発熱体2の発熱部2bにおいて、端溝2dと中央溝2eとの長手方向の間隔が第3の所定距離(図3においてL3で示す距離)を有しており、端溝2dと中央溝2eとの間に発熱体2の長手方向と直交する方向に流れる電流経路を形成している。
【0054】
実施の形態1の発熱体2においては、端溝2dと中央溝2eとの長手方向の間隔である第3の所定距離L3は第2の所定距離L2と同じ距離に設定されており、第1の所定距離L1は第2の所定距離L2及び第3の所定距離L3の2倍に設定されている。このように溝パターンが形成された発熱体2の発熱部2bにおいては、蛇行した電流径路が形成されており、電流の流れに対して直交する断面積が略同じとなり、抵抗値の計算が容易となり、均一した温度分布を形成することができる。なお、発熱体2の面方向の熱伝導率が、例えば600W/m・K以上の特性を有する材料であれば、第2の所定距離L2が第1の所定距離L1の1/2でなくても均一な温度分布(配熱分布)に大きな影響を与えることはない。好ましくは、第2の所定距離L2を第1の所定距離L1の1/2以上に設定することにより、発熱体ユニットに加わる衝撃に対する発熱体2の機械的強度を高めることができる。
【0055】
また、発熱部2bに形成される溝形状のスリットや凹部溝は、当該発熱体ユニットが用いられる製品仕様や用途に応じて適宜選択することにより、発熱部2bの温度分布(配熱パターン)を所望のパターンとすることが可能である。
【0056】
さらに、発熱部2bにおいて、端溝2dと中央溝2eとの長手方向における間隔L3は、発熱体2の長手方向の端部、即ち発熱体保持部2aに近づくほど徐々に広くすることにより、発熱部2bにおける電流径路の抵抗率を徐々に変化させて、発熱部2bの温度分布(配熱パターン)を中央部分が高熱となるように変更することが可能となる。勿論、当該発熱体ユニットが用いられる製品仕様や用途に応じて上記間隔L1、L2及びL3を適宜変更することにより、所望の配熱パターンを有する熱源とすることが可能である。
【0057】
実施の形態1における発熱体2には、発熱体保持部2aから発熱部2bに繋がる放熱領域2cが放熱機能を有する。この放熱機能を有する放熱領域2cには前述のような溝は形成されておらず、広い電流径路が形成されている。このため、この放熱領域2cおいては、発熱部2bから伝導した熱が放熱されて、発熱体2における熱ストレスの低減及び長寿命化が図られている。
【0058】
なお、実施の形態1における発熱体2においては、発熱体保持部2aの幅と発熱部2bの幅が同じ幅に形成されているが、発熱体保持部2aの幅を発熱部2bの幅より狭く形成することも可能である。その場合には、発熱体保持部2aから発熱部2bへ繋がる放熱領域2cの縁形状は、集中荷重が加わり破損を防止するために曲面形状で構成することが好ましい。
【0059】
また、製品仕様により発熱部2bの温度が高い場合、発熱部2bから発熱体保持部2aへの放熱領域2cにおける幅を徐々に狭くすることにより、放熱領域2cに温度勾配を設けて発熱体保持部2aへの熱ストレスを低減することが可能となる。
さらに、発熱体2において、第1の所定距離L1及び第2の所定距離L2の長さを両側の発熱体保持部2aに近づくに従い徐々に長くすることにより、発熱部2bに温度勾配を設けることができるとともに、耐衝撃性及び耐振動性を有する機械的強度の強い構造となる。
【0060】
上記のように構成された発熱体2において、電流の流れを阻害する複数の溝を有する溝パターンが発熱部2bに形成されているため、発熱部2bの全体形状に規制されずに所望の電流径路を設定できる。この結果、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、製品仕様及び用途に応じて所望の発熱分布を設定することが可能であり、多方面の熱源として利用できる。
【0061】
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、プレス加工により帯状に形成して、溝加工したが、レーザーを用いて所望の形状に加工することも可能である。例えば、レーザー加工の一例として、発熱体2の面方向の熱伝導率が200W/m・K以上となるとCOレーザー(波長10600nm)等の熱加工作用を主体としたレーザー加工を用いた場合には、発熱体2に熱を奪われてしまい、加工できないという問題がある。しかしながら、非熱加工作用を主体とした波長1064から380nmのレーザー加工、例えば、呼称1064nmの短波長レーザー加工を用いることにより所望の形状を精度高く加工することが可能となる。
【0062】
特に、実施の形態1における発熱体2を形成する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることにより、高精度に加工できることを発明者らは確認した。実施の形態1における発熱体2の材料は、フィルムシート素材であり、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートを材料としている。そして、発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する材料で形成されている。このような材料から、例えば、厚み(t)が100μm、幅(W)が6.0mm、長さ(L)が300mmの発熱体2を加工する場合、又は前述のように発熱部2bに溝(スリット)等の複雑な形状に加工する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることが望ましい。
【0063】
なお、好ましいレーザー加工方法は、発熱体2の材料、即ち面方向の熱伝導率及び形状によって、前述の非熱加工作用を主体としたレーザー加工波長(1064から380nm)を持つ加工方法から適宜選択し得ることは言うまでもない。さらに、上記説明した発熱体2を加工するためのレーザー加工方法は後述の他の実施の形態における発熱体ユニットの発熱体の加工においても採用できることは言うまでもない。
【0064】
以上のように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、帯状の発熱体2の両端部分が簡単な構成の保持具3により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的接続状態が保持されている。このように、実施の形態1の発熱体ユニットは、発熱体2が保持具3により容器内の所定位置に確実に保持されているため、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を構成することができる。また、実施の形態1の発熱体ユニットは、簡単な構成であるため、作業効率が高く優れた生産性を有する発熱体ユニットを提供することができる。
【0065】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットについて図5乃至図10を用いて説明する。実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、発熱体2の両端に取り付けられる保持具の構成及び形状である。
【0066】
実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、構成及び形状が異なる保持具に関する6種類の具体的な実施例について説明する。実施の形態2の各実施例において、各発熱体ユニットにおける保持具以外の構成は、実施の形態1の発熱体ユニットと同じである。このため、実施の形態2の各実施例の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
【0067】
実施例1
以下、実施の形態2の発熱体ユニットにおける実施例1の保持具13の構成について図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例1の保持具13が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0068】
図5に示すように、保持具13は、導電性を有する金属材料、例えばモリブデンの線材で形成された棒状の掛止受部13aと、掛止受部13aに嵌め込まれる掛止部13bと、掛止受部13aから延設された係止部13cとで構成されている。棒状の掛止受部13aには、前述の実施の形態1と同様に、発熱体2の端部である発熱体保持部2aが折り返されるように巻き付けられる。また、実施の形態1と同様に、発熱体保持部2aには貫通孔が形成されており、掛止受部13aの中央から延設され、固定部5に繋がる係止部13cが挿入されている。
【0069】
発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部13aには、掛止部13bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部13bは弾性部材で形成され、掛止受部13aを握着するよう構成されている。掛止部13bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状の掛止受部13aに嵌め込まれて、掛止受部13aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0070】
図5に示すように、掛止部13bには発熱体2の長手方向と平行な切り込み13dが形成されている。この切り込み13dには掛止受部13aの中央から固定部5の方へ延設された係止部13cが配置される。実施例1の保持具13においては、掛止部13bが、例えば厚み0.2mmのモリブデン板により形成されている。
なお、掛止部13bの材料として前述のモリブデン以外でもタングステン、ニッケル、ステンテス等の耐熱性を有する材料を使用してもよい。
【0071】
図5に示すように、掛止受部13aの中央部分は屈曲して凹みが形成されており、その凹みの中央(発熱体2の長手方向と平行な中心軸の位置)には内部リード線部11a,11bの固定部5に繋がる係止部13cが接合(例えば、スポット溶接)されている。なお、実施例1においては、係止部13cと固定部5は1本の線材により形成した例で説明するが、それぞれを別部材で形成して接合し、保持具13を構成してもよい。
【0072】
上記のように、保持具13により保持される発熱体保持部2aには、貫通孔が形成されており、この貫通孔に係止部13cが挿入され、発熱体保持部2aが掛止受部13aに巻き付けられた状態で、掛止部13bが掛止受部13aに嵌め込まれる。このとき、掛止部13bの切り込み13dには掛止受部13aの中央から突設された係止部13cが配置される。したがって、発熱体2は保持具13から外れることがなく、確実な保持状態となる。
【0073】
保持具13が発熱体2を保持して、容器内で発熱体2が張設された状態において、掛止受部13aにおける発熱体保持部2aが折り返されるように巻き付けられる部位は、発熱体2の長手方向に直交する幅方向に配置される。即ち、発熱体保持部2aが巻き付けられる棒状体の掛止受部13aの軸方向は、発熱体2の長手方向に直交する方向である。
【0074】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に掛止受部13aから延設された係止部13cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが掛止受部13aに折り返して巻き付けられた状態で、掛止部13bが掛止受部13aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着されている。
【0075】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、実施例1の保持具13を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具13により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0076】
実施例2
以下、実施の形態2における実施例2の保持具23の構成について図6を用いて説明する。図6は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例2の保持具23が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0077】
実施例2の保持具23においても、実施例1の保持具13と同様に、掛止受部23aと、掛止受部23aに嵌め込まれる掛止部23bと、掛止受部23aから延設された係止部23cとで構成され、実施例1の保持具23におけるそれぞれの材料と同じ材料により形成されている。図6に示すように、保持具23の掛止受部23aは、導電性を有する線材を屈曲させて形成したものである。実施例2の保持具23の掛止受部23aと係止部23cは、2本の棒状の線材の端部を略90度に折り曲げて、L字状に形成して構成されている。それぞれの先端部分が互いに逆方向(180度)に突出するよう配置して、掛止受部23aが構成されている。したがって、保持具23の掛止受部23aは、屈曲された先端部分であり、互いに逆方向に突設された2本の線材により直線状に配置されて構成されている。この掛止受部23aに発熱体2の発熱体保持部2aが折り返すように巻き付けられる。
また、保持具23の係止部23cは、発熱体2の端部である発熱体保持部2aに形成された長孔状の貫通孔に挿入されるよう構成されている。
【0078】
図6に示すように、掛止受部23aから固定部5に繋がる2本の線材を並設して構成された係止部23cにおいては、符号Xで示す2箇所の位置で並設された線材がスポット溶接されている。
発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部23aには、掛止部23bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部23bは弾性部材で形成され、掛止受部23aを握着するよう構成されている。掛止部23bはその中央に長孔状の貫通孔が形成されており、その貫通孔には掛止受部23aから固定部5に繋がる2本の線材で構成された係止部23cが予め挿入されている。掛止部23bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状の掛止受部23aに嵌め込まれて、掛止受部23aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0079】
なお、掛止部23bの中央に貫通孔を形成した例で説明したが、貫通孔の代わりに切り込みを形成して、その切り込みに掛止受部23aから固定部5に繋がる係止部23cが配置される構成でもよい。
実施例2の保持具23においては、2本の線材で構成された係止部23cが固定部5に接合される構成であるが、係止部23cと固定部5を同じ構成で一体的に形成してもよい。
【0080】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に係止部23cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが保持具23の掛止受部23aに巻き付けられた状態で、掛止部23bが掛止受部23aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着される。
【0081】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、実施例2の保持部23を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具23により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0082】
実施例3
以下、実施の形態2における実施例3の保持具33の構成について図7を用いて説明する。図7は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例3の保持具33が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0083】
実施例3の保持具33においても、実施例1の保持具13と同様に、掛止受部33aと、掛止受部33aに嵌め込まれる掛止部33bと、掛止受部33aから延設された係止部33cとで構成され、実施例1の保持具13におけるそれぞれの材料と同じ材料により形成されている。図7に示すように、保持具33の掛止受部33aと係止部33cは、導電性を有する1本の線材を屈曲させて形成したものである。実施例3の保持具33の掛止受部33aは、1本の棒状の線材を2つ折りにした後に両端部分を略90度に折り曲げて形成されている。図7に示すように、それぞれの先端部分が互いに逆方向(180度)に突出するよう配置して掛止受部33aが構成されている。したがって、保持具33の掛止受部33aは、1本の線材の両端部分が直線状に配置されて構成されている。この掛止受部33aには発熱体2の発熱体保持部2aが折り返すように巻き付けられる。また、保持具33の係止部33cは、発熱体2の端部である発熱体保持部2aに形成された長孔状の貫通孔に挿入されるよう構成されている。
【0084】
図7に示す、掛止受部33aからの導出部分である係止部33cは、固定部5と接合されており、例えば、カシメや溶接等により電気的及び機械的に接続されている。
発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部33aには、掛止部33bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部33bは弾性部材で形成され、掛止受部33aを握着するよう構成されている。掛止部33bはその中央部分に切り込み33dが形成されており、掛止部33bが掛止受部33aを握着したとき、切り込み33d内に掛止受部33aから固定部5に繋がる係止部33cが配置される。掛止部33bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、掛止受部33aに嵌め込まれて、掛止受部33aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0085】
なお、掛止部33bの中央(発熱体2の長手方向の中心軸の位置)に切り込み33dを形成した例で説明したが、切り込み33dの代わりに貫通孔を形成して、その貫通孔に係止部33cが挿入される構成でもよい。
【0086】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に係止部33cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが保持具33の掛止受部33aに巻き付けられた状態で、掛止部33bが掛止受部33aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着される。
【0087】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおける実施例3の保持部33を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具33により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0088】
実施例4
以下、実施の形態2における実施例4の保持具43の構成について図8を用いて説明する。図8は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例4の保持具43が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0089】
実施例4の保持具43においても、実施例1の保持具13と同様に、掛止受部43aと、掛止受部43aに嵌め込まれる掛止部43bと、掛止受部43aから延設された係止部43cとで構成され、実施例1の保持具13におけるそれぞれの材料と同じ材料により形成されている。図8に示すように、保持具43の掛止受部43aと係止部43cは、導電性を有する線材を屈曲させて形成したものである。実施例4の保持具43の掛止受部43aと係止部43cは、1本の棒状の線材の端部を略90度に折り曲げて、L字状に形成して構成されている。したがって、保持具43の掛止受部43aは、屈曲された先端部分で構成され、その先端部分に発熱体2の発熱体保持部2aが巻き付けられる。また、保持具43の係止部43cは、発熱体2の端部である発熱体保持部2aに形成された貫通孔に挿入されるよう構成されている。
【0090】
図8に示すように、発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部43aには、掛止部43bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部43bは弾性部材で形成され、掛止受部43aを握着するよう構成されている。掛止部43bはその中央(発熱体2の長手方向の中心軸の位置)に貫通孔43dが形成されており、その貫通孔43dに掛止受部43aから固定部5に繋がる係止部43cが挿入される。掛止部43bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状の掛止受部43aに嵌め込まれて、掛止受部43aの外面に巻き付けられた発熱体保持部2aを介して握着する。
【0091】
なお、掛止部43bの中央に貫通孔43dを形成した例で説明したが、貫通孔43dの代わりに切り込みを形成して、その切り込みに係止部43cが配置される構成でもよい。
実施例4の保持具43においては、保持具43と固定部5が線材により一体的に形成された構成で説明したが、固定部5と保持具43のそれぞれを別部材で形成して接合する構成でもよい。
【0092】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に係止部43cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが保持具43の掛止受部43aに巻き付けられた状態で、掛止部43bが掛止受部43aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着されている。
【0093】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおける実施例4の保持部43を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具43により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0094】
実施例5
以下、実施の形態2における実施例5の保持具53の構成について図9を用いて説明する。図9は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例5の保持具53が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0095】
実施例5の保持具53は、前述の実施例4の保持具43の変形例であり、発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられる掛止受部53aと、掛止受部53aに嵌め込まれる掛止部53bと、掛止受部53aから延設された係止部53cと、掛止受部53aから固定部5に繋がる導出部53eとで構成されている。図9に示すように、保持具53の掛止受部53aと係止部53cと導出部53eは、固定部5に繋がる導電性を有する1本の線材を折り曲げて形成したものである。掛止受部53aは、発熱体2の長手方向と直交する方向に直線状に形成されており、その直線状の部分に発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられている。
【0096】
実施例5の保持具53においては、掛止受部53aの一端から固定部5に繋がる導出部分である導出部53eが、発熱体保持部2aの幅方向の縁から導出する構成である。一方、掛止受部53aの先端である係止部53cが、発熱体保持部2aの中央(発熱体2の長手方向の中心軸の位置)に形成された貫通孔から突出する構成である。したがって、掛止受部53aの係止部53cは、発熱体2の長手方向の中心軸上で固定部5が配設されている方向に突出するよう構成されている。
【0097】
図9に示すように、発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部53aには、掛止部53bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部53bは弾性部材で形成され、掛止受部53aを握着するよう構成されている。掛止部53bはその中央に貫通孔53dが形成されており、その貫通孔53dから掛止受部53aの先端である係止部53cが突出している。掛止部53bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状部分の掛止受部53aに嵌め込まれて、掛止受部53aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0098】
なお、実施例5の保持具53においては、保持具53と固定部5が1本の線材により一体的に形成された例で説明したが、保持具53と固定部5のそれぞれを別部材で形成して接合する構成でもよい。
【0099】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に掛止受部53aの先端である係止部53cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが保持具53の掛止受部53aに巻き付けられた状態で、掛止部53bが掛止受部53aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着されている。
【0100】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおける実施例5の保持部53を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具53により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0101】
実施例6
以下、実施の形態2における実施例6の保持具63の構成について図10を用いて説明する。図10は、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施例6の保持具63が発熱体2を保持している状態を示す平面図である。
【0102】
実施例6の保持具63は、前述の実施例4の保持具43の変形例であり、発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられる掛止受部63aと、掛止受部63aに嵌め込まれる掛止部63bと、掛止受部63aから延設された係止部63cと、掛止受部63aから固定部5に繋がる導出部63eとで構成されている。図10に示すように、保持具63の掛止受部63aと係止部63cと導出部63eは、導電性を有する1本の線材を折り曲げて形成したものである。掛止受部63aは、発熱体2の長手方向と直交する方向に直線状に形成されており、その直線状の部分に発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられている。
【0103】
実施例6の保持具63においては、掛止受部63aの一端から固定部5に繋がる導出部分である導出部63eが、発熱体保持部2aの幅方向の両側の縁に形成された切り込み63dの一方から導出する構成である。一方、掛止受部63aの先端である係止部63cは、発熱体保持部2aの幅方向の縁に形成された他方の切り込み63dから突出するよう形成されている。したがって、掛止受部63aにおいては、発熱体2の幅方向における両側の縁に形成された切り込み63d,63dの間の領域が接触する。
【0104】
図10に示すように、発熱体保持部2aが巻き付けられた掛止受部63aには、掛止部63bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部63bは弾性部材で形成され、掛止受部63aを握着するよう構成されている。掛止部63bはその両側に切り込み63d,63dが形成されている。したがって、切り込み63d,63dの一方には固定部5への導出部分である導出部63eが配置され、他方には掛止受部63aの先端である係止部63cが突出する。掛止部63bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状部分の掛止受部63aに嵌め込まれて、掛止受部63aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0105】
なお、実施例6の保持具63においては、保持具63と固定部5が1本の線材により一体的に形成された例で説明したが、保持具63と固定部5のそれぞれを別部材で形成して接合する構成でもよい。
【0106】
上記のように、発熱体2の端部である発熱体保持部2aは、その貫通孔に掛止受部63aの先端である係止部63cが挿入されて係止され、且つ発熱体保持部2aが保持具63の掛止受部63aに巻き付けられた状態で、掛止部63bが掛止受部63aに嵌め込まれて、発熱体保持部2aが挟着されている。
【0107】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおける実施例6の保持部63を用いることにより、帯状の発熱体2の両端部分が保持具63により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置で電気的及び機械的接続状態を信頼性高く維持することができる。
【0108】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットについて図11を用いて説明する。図11は実施の形態3の発熱体ユニットの構造を示す平面図であり、当該発熱体ユニットの左側部分を示している。実施の形態3の発熱体ユニットは、長尺形状であり、左右の両側は同じ構成を有している。
【0109】
実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、発熱体2の両端に取り付けられる保持具73を含む電力供給部20の構成である。実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
【0110】
図11に示すように、実施の形態3の発熱体ユニットは、容器1と、熱輻射膜体としての細長い帯状の発熱体2と、この発熱体2を容器内の所定位置に保持するために発熱体2の長手方向の両端部分に設けられ、発熱体2に電力を供給するための電力供給部20と、を備えている。
【0111】
発熱体2の両端に設けられた電力供給部20は、発熱体2の両端に取り付けられた保持具73と、内部リード線21と、モリブデン箔8と、外部リード線9とを含んで構成されている。発熱体2の両端を保持する保持具73には、内部リード線21が接合されており、内部リード線21は容器1の両端部分の封着部分(溶着部分)に埋設されたモリブデン箔8を介して、容器1の両端から容器外部に導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
【0112】
実施の形態3の発熱体ユニットに用いられている保持具73は、前述の実施の形態1と同様に、導電性を有する線材で形成された棒状の掛止受部73aと、掛止受部73aが嵌め込まれる掛止部73bと、掛止受部73aから延設され内部リード線21に繋がる係止部73cとで構成されている。
【0113】
保持具73の係止部73cは、掛止受部73aの中央(発熱体2の長手方向と平行な中心軸の位置)から内部リード線21の方へ導出するように延設されている。係止部73cは内部リード線21に接合されている。したがって、実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、掛止受部73aと係止部73cとにより、いわゆるT字形状が構成されている。
【0114】
棒状の掛止受部73aには発熱体2の端部である発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられる。このとき、掛止受部73aから延設された係止部73cは発熱体保持部2aに形成された貫通孔を貫通している。発熱体保持部2aが折り返して巻き付けられた掛止受部73aには、掛止部73bが発熱体2の発熱体保持部2aを挟着するように嵌め込まれる。掛止部73bにも貫通孔が形成されており、この貫通孔も係止部73cは貫通している。掛止部73bは弾性部材で形成され、掛止受部73aを握着するよう構成されている。掛止部73bは、挟着する発熱体2の長手方向における断面形状がC字状であり、棒状の掛止受部73aが嵌め込まれて、掛止受部73aの外面を発熱体保持部2aを介して握着する。
【0115】
保持具73が発熱体2を保持して、容器内で発熱体2が張設された状態において、掛止受部73aにおける発熱体保持部2aが折り返されるように巻き付けられる部位は、発熱体2の長手方向に直交する幅方向に配置される。即ち、発熱体保持部2aが巻き付けられる棒状体の掛止受部73aの軸方向は、発熱体2の長手方向に直交する方向である。
【0116】
以上のように、実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、保持具73が発熱体保持部2aを係止するとともに、発熱体保持部2aを挟着しているため、発熱体2は保持具73から外れることがなく、確実に保持される。
【0117】
実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、保持具73の掛止受部73aの両端部が容器1の内面に近接して配置されている。したがって、掛止受部73aの長さ(発熱体2の長手方向に直交する方向の長さ)が発熱体2の幅より長く、容器1の内径より少し短く設定されている。このため、掛止受部73aが発熱体2に対する容器内の位置規制機能を有している。したがって、実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、保持具73を用いることにより、発熱体2が容器1に接触することなく容器内の所定位置に確実に保持され、位置規制機能としての位置規制部材(図1の位置規制部4を参照)をあらためて設ける必要のない構成となる。
【0118】
さらに、実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、発熱体2が前述の実施の形態1において説明したように発熱体2の長手方向に弾性力を有し、発熱体2が容器内で張設された状態で両側からの張力に耐える構成とすることにより、図1の実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いたスプリング部6が実施の形態3の発熱体ユニットにおいては不要となる。この結果、実施の形態3の発熱体ユニットは、電力供給部の構成が簡単なものとなり、前述の各実施の形態における効果に追加して、製造コストの大幅な低減を図ることが可能となる。
【0119】
(実施の形態4)
本発明に係る実施の形態4の加熱装置ついて図12を用いて以下に説明する。
図12は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した発熱体ユニットを装備した加熱装置の一例を示す斜視図である。
【0120】
図12に示した加熱装置は、本発明の加熱装置の一例として暖房用の加熱機器81を示している。この加熱機器81の内部には、実施の形態1から実施の形態3で説明した本発明の発熱体ユニットが装備されている。なお、実施の形態4においては発熱体ユニットに符号82を付して説明する。実施の形態4の加熱機器81には、温度コントローラー83、反射板84、保護用のカバー85等の一般的な暖房用の加熱機器に用いられる構成部材が設けられている。
【0121】
このように構成された加熱機器81において、発熱体ユニット82に定格の電圧を印加することにより、所定の電流が発熱体ユニット82内の発熱体2に流れて発熱し、早い立ち上がりで温度が上昇する。実施の形態4の加熱機器81は、温度コントローラー83による温度制御により、ユーザが望む所定の温度に確実に保持される。また、発熱体ユニット82には、平面を有する帯状の発熱体2が熱源として用いられている。このため、その平面から輻射される熱は指向性を有している。実施の形態4の加熱機器81においては、発熱体ユニット82の発熱体2の平面部分が正面側と背面側に向くよう配設されている。このため、発熱体2の正面側から輻射された熱は、加熱機器81の正面側にある被加熱領域を加熱し、発熱体2の背面側から輻射された熱は反射板84により反射されて被加熱領域を加熱する。なお、発熱体2はフィルムシート素材で帯状に形成されているため、発熱体2の側面側から輻射される熱量は非常に少なく、正面側(背面側)から輻射される熱量に比べて無視できる程小さいものである。このため、実施の形態4の加熱機器81においては、高い指向性を有して、被加熱領域を効率高く加熱することができる。
【0122】
本発明の加熱装置に装備された発熱体ユニット82は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した発熱体2を有しており、この発熱体2は、面方向の熱伝導率が同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有するフィルムシート素材で形成されており、熱容量が小さいため立ち上がりが早く、且つ突入電流が少ない特性を有している。このため、本発明の発熱体ユニットを熱源として装備した加熱機器は、素早く加熱することが可能となる優れた応答性を有し、所定の領域を熱効率が高く加熱することができる優れた特徴を有する暖房機器となる。
【0123】
なお、本発明の発熱体ユニットは、暖房機器以外でも多種多様な電子/電気機器の熱源として用いることができ、例えば高温度の発熱体を装備している複写機、ファクシミリ、プリンタ等のOA機器、及び調理機器、乾燥機、加湿器等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を構築することができるとともに、作業効率が高く優れた生産性を有する発熱体ユニット及び加熱装置を提供することができるため、熱源を必要とする電子/電気機器分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す平面図
【図2】図1に示した発熱体ユニットの正面図
【図3】実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に取り付けられた保持具3等を示す平面図
【図4】実施の形態1の発熱体ユニットにおける保持具3等の正面図
【図5】本発明に係る実施の形態2における実施例1の保持具13が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図6】実施の形態2における実施例2の保持具23が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図7】実施の形態2における実施例3の保持具33が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図8】実施の形態2における実施例4の保持具43が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図9】実施の形態2における実施例5の保持具53が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図10】実施の形態2における実施例6の保持具63が発熱体2に装着された状態を示す平面図
【図11】本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットの構造を示す平面図
【図12】本発明に係る実施の形態4の加熱装置の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0126】
1 容器
2 発熱体
2a 発熱体保持部
2b 発熱部
3 保持具
3a 掛止受部
3b 掛止部
3c 係止部
4 位置規制部
5 固定部
6 スプリング部
7 内部リード線
8 モリブデン箔
9 外部リード線
10a 第1の電力供給部
10b 第2の電力供給部
11a 第1の内部リード線部
11b 第2の内部リード線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系物質を含む材料によりフィルムシートで形成され、2次元的等方向の熱伝導を有する帯状の発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体と前記電力供給部の一部を内包する容器と、を具備する発熱体ユニットであって、
前記容器の内部における前記電力供給部は、前記発熱体の両端にある発熱体保持部を保持する保持具と、前記保持具に接続された内部リード線部と、を有し、前記保持具は、前記発熱体保持部を受ける掛止受部と、前記掛止受部から延設されて前記発熱体を係止する係止部と、前記発熱体保持部を挟んで前記掛止受部に装着される掛止部と、を有して構成された発熱体ユニット。
【請求項2】
前記掛止受部において、前記発熱体保持部を受ける部位が前記発熱体の長手方向に直交する幅方向に延設された請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記発熱体保持部に孔又は切り欠きが形成され、前記孔又は切り欠きの内部に前記係止部が配置された請求項2に記載の発熱体ユニット。
【請求項4】
前記孔又は切り欠きの内部に配置された前記係止部が前記内部リード線部に接合された請求項3に記載の発熱体ユニット。
【請求項5】
前記掛止受部と前記係止部が線材により一体的に形成され、前記掛止受部が前記線材を屈曲させて前記発熱体保持部が巻き付けられるよう構成され、前記係止部が前記内部リード線部に繋がるよう構成された請求項4に記載の発熱体ユニット。
【請求項6】
前記掛止受部と前記係止部が線材により一体的に形成され、前記発熱体保持部の幅方向の縁部に形成された切り欠きの内部に前記係止部が配置された請求項4に記載の発熱体ユニット。
【請求項7】
前記掛止受部と前記係止部が一本の線材により形成され、前記線材を屈曲させて前記掛止受部と前記係止部が形成された請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項8】
前記掛止部が弾性材で形成され、前記掛止受部に対して弾性力により装着されるよう構成された請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項9】
前記掛止受部が導電性材料で形成された請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項10】
前記保持具は、前記発熱体を前記容器の内部の所定位置に配置するための位置規制機能を有し、前記保持具における端部が前記容器の内面に近接して配置される請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項11】
前記発熱体が発熱体自体における熱収縮及び熱膨張を吸収する弾性力を有する構造を持ち、前記保持具に電力を供給する前記内部リード線部に弾性構造を有しない構成とした請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項12】
前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項13】
前記容器は、耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管により形成され、不活性ガスが充填されて前記電力供給部において封止された請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の発熱体ユニットを熱源として装備した加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−272222(P2009−272222A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123396(P2008−123396)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】