説明

発熱部冷却装置、及び液晶プロジェクタ装置

【課題】平板状発熱体が複数並列に配置された構造体の動作時の温度を低減するときに、従来の空冷よりも温度を低減させることが可能で、それを小型、低騒音、低価格で実現する冷却装置を提供する。
【解決手段】液晶ユニットなどの平板状発熱体に、発熱体幅の0.8倍以下の幅を有する複数の異なる方向の噴出口からの送風により、2つの発熱体の隙間空間で送風を衝突させて冷却する構成を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の発熱部材、および電子投影装置に関し、特に複数の並列する平板に対し、複数の方向から送風することにより冷却する発熱部冷却装置、及び液晶プロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における電子機器は、高機能を要求されるとともに、小型化も同時に求められている。そのため、高密度実装により発熱密度の高い電子機器が数多く開発され、冷却技術の向上が求められている。
【0003】
特に液晶プロジェクタ装置はより明るく、より鮮明な映像を実現させるために高輝度化が進められており、光の照射により発熱する光学部品の寿命維持のため、冷却方法の改善が求められている。
【0004】
図14から図17に、従来の液晶プロジェクタ装置の構造と冷却方式を示す。図14は、一般的な液晶プロジェクタ装置の概観図である。
【0005】
また、図15は液晶プロジェクタ装置の内部構造を示す図である。図16は、液晶プロジェクタ装置の内部の模式的構成図を示す。
【0006】
図16に示すように、液晶プロジェクタ装置1の筐体内には、液晶ユニット部2を強制空冷するための冷却ファン3と空冷ダクト4が実装されており、この他にも光源5や電源ユニット10などを冷却するためのランプ用冷却ファン7や、筐体排気用の排気ファン9などが必要に応じて設けられている。
【0007】
個々で、液晶プロジェクタ装置1の液晶ユニット部2の一般的な冷却方法について、図17を用いて説明する。図17は、液晶プロジェクタ装置の液晶ユニット冷却部の構成図である。
【0008】
図17において、入射側偏光板12、液晶パネル13、および出射側偏光板14から構成される液晶ユニット部2は、R/G/Bの色光ごとに設けられており、その下方に、冷却ファン3と空冷ダクト4とからなる空冷装置15が配置されている。
【0009】
空冷装置15の動作中は、図17に示すように、冷却ファン3からの送風16を空冷ダクト4に用意された吐出口17を介して、液晶ユニット部2の下端から各液晶ユニット部2を構成する入射側偏光板12、液晶パネル13、出射側偏光板14の間の空間に通風して強制空冷を行っている。
【0010】
近年、液晶プロジェクタ装置に対しては、その利用方法の多様化に合わせて、小型・高輝度化への要求が高まってきている。このような要求に応えるために、ランプ出力の増加と表示デバイスの小型化が進められ、その結果、液晶ユニット部へ入射する光の光束密度が増大し、液晶ユニット部2を構成する各ユニットの熱負荷は上昇の一途をたどっており、従来の空冷方式では冷却が困難になってきている。
【0011】
強制空冷で熱伝達率を大きくする手法としては、衝突噴流が挙げられる。衝突噴流冷却は、発熱面に対して垂直に冷媒(空気)を衝突させることで、温度境界層を破壊して局所的に熱伝達率を高める効果があり、流れを高乱流化して冷却性能を改善する方法である。
【0012】
しかしながら、プロジェクタ装置の液晶ユニットのように板間の狭い状態(以下、狭板間)で平行配置された発熱体(液晶パネルや偏光板)を冷却する場合、従来の空冷方法では、発熱面に平行に空気が流れて層流が形成されるため、風速増加に対する冷却性能の改善が十分ではなかった。
【0013】
そこで、例えば特許文献1には、図18に示すような液晶ユニット近傍において液晶パネル、偏光板などが形成する板間に対して異なる2方向から送風し、発熱面近傍で風を衝突させることにより、光の透過を妨げることなく、発熱面に垂直へ向かう空気流れを形成して局所熱伝達率を向上させる技術について開示されている。
【特許文献1】特開2008−107387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、従来の空冷方法に比べて高い冷却性能を提供するものであるが、異なる方向から狭い板間に通風して、発熱面上で送風を衝突させる構成をとるため、発熱面サイズと噴流の大きさ(すなわちダクト幅)の組み合わせによって、その冷却性能が左右される。
【0015】
したがって、どのような発熱面サイズにおいても、常に従来の空冷方法より優れた冷却性能を発揮できるような衝突噴流冷却の構成を採用することは、設計の汎用性を高めて、開発コストとリードタイムを縮小しコスト競争力を高めることができるようになるとともに、高熱負荷の電子機器に対する優れた冷却ソリューションを提供することに貢献する。
【0016】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、発熱面サイズに依存せず、常に優れた冷却性能を発揮するような衝突噴流冷却の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明における発熱部冷却装置は、面内方向が同じとなるように並列されて、面の内部に発熱部を有する1つ以上の平板状発熱部品群と、平板状発熱部品群に対して異なる方向から送風を行い、平板状発熱部品群の1つ以上の隙間において1箇所以上の空気衝突部を発生させる2つ以上の空冷手段と、空冷手段は、空気を噴出する少なくとも1つ以上の噴出口の幅が、平板状発熱部品の噴出口から平板状発熱部品群へ向かって吐出される空気の流れの方向に対して直交する向きの平板状発熱部品の最大幅に対して0.8倍以下である空気噴出手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
空気噴出手段は、噴出口の幅が平板状発熱部品群の形成する異なる隙間の両側の平板状発熱部品の最大幅が異なる場合、小さい方の平板状発熱部品の最大幅に対して、0.8倍以下であること特徴とする。
【0019】
空冷手段は、少なくとも1つが冷却ファンと空冷ダクトを有することを特徴とする。
【0020】
空冷手段は、少なくとも1つの空冷ダクトが途中分岐する構造を有し、2つ以上の空気噴出口を有することを特徴とする。
【0021】
空気衝突部は、他の空気衝突部から発生した2次流れの送風による衝突であることを特徴とする。
【0022】
平板状発熱部品群は、衝突部を有する隙間と、衝突部を有しない隙間とを混在して備えることを特徴とする。
【0023】
空気噴出手段は、噴出口の幅が、噴出口から平板状発熱部品群へ向かって吐出される空気流れの方向に対して直交する向きの平板状発熱部品の最大幅に対して0.8倍以上であり、衝突部を有しない隙間に対して、一方向から送風して冷却することを特徴とする。
【0024】
また、本発明における液晶プロジェクタ装置は、上記いずれかに記載の発熱部冷却装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、噴出口の幅が、平板状発熱部品の最大幅に対して0.8倍以下の幅になる構成をとることで、衝突噴流方式の冷却効率を高くすることができ、さらに衝突後の2次流れを活用してさらに衝突させることにより、発熱領域が分散している場合でも少ない数の冷却ファンで効率的に冷却することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、衝突噴流の性能を発揮する構造を見出すために、衝突噴流で冷却性能が上げられる理由と、衝突噴流が一般的な一方向空冷と異なる特性について以下に説明する。
【0027】
衝突噴流では、狭板間における空気の流れの挙動を解明する必要がある。そこで、流れと温度の可視化手法のひとつである、熱流体の数値シミュレーションを用いて解析を行う。
【0028】
図1は、従来の一方向送風によるパネル空冷時の、送風方向に平行なパネル中央断面(AA断面)の流速ベクトルの分布を示したものである。図18で示すように、パネル流入直後の板間の流速分布は一定に近いが、流入直後から徐々に流れの後方に行くに従って、流速分布は放物線分布に近くなっていく。
【0029】
パネルから空気へ伝わる熱量は、パネル壁面近傍の流速勾配で決まり、流速勾配が大きいほど伝わる熱量が大きく放熱性能が高い。従って、従来の一方向送風では、流れの後方に行くに従い、徐々に放熱性能が悪くなり、図の上部のパネル温度が高くなってしまう。なお、この傾向は、送風時の流速に依存しない。
【0030】
図2は、上下の二方向送風によりパネル板間の中央付近で空気が衝突する場合の流速ベクトルを示したものである。AA断面は、衝突する前までのパネル中央付近の流速ベクトルであり、放物線分布で中央に向かう空気流れが確認される。
【0031】
一方、BB断面は、衝突した後の左右方向に流れる衝突後の流速ベクトルを示したものである(表示の都合上、上下に示している)。衝突後の左右への2次流れの流速ベクトルは、衝突前の放物線分布とは異なり、ほぼ一定分布となる。これは、衝突後、乱流状態が激しくなり、乱流状態を維持したまま左右に流れるためである。
【0032】
このことより、衝突後の左右への2次流れはパネルから空気に伝わる熱量が大きく、高い放熱性能が得られる。これが、狭い板間で二方向の送風で衝突させることにより、パネルの温度(最高温度)を低くできる最大の理由である。
【0033】
次に、衝突冷却の特性を明らかにするために、送風のダクト幅の影響について説明する。図3は、パネル幅サイズ20mmのパネルに対して、ダクト幅10mmと20mmの結果を、従来の一方向方式と衝突方式、それぞれについて示したものである。
【0034】
左図は、パネル温度分布を示し、右図は、左図のABCの線上の温度分布を示す図であ
る。ここで、ABCは流れ方向における初期、中期、後期の点を示し、一方向方式と衝突方式とではCの位置が異なり、衝突方式では、左右の中央端部がC点となる。
【0035】
まず、一方向方式の温度分布は、図1で説明したように空気流れの後方に行くに従い、流速分布が放物線分布となるため、パネル温度が高くなっている。また、ダクト幅が狭くなると、空気が流れにくいパネルの左右両側の温度が中央よりも高くなり、パネルの右上、左上の位置での温度が高くなってしまう。このように、一方向方式の場合には、ダクト幅はパネル幅に近い方がよい。
【0036】
一方、衝突方式の場合は、この傾向が逆になる。すなわち、衝突方式における放熱性能は、ダクト幅がパネル幅よりも狭いほうが高くなる。衝突方式においては、中央での衝突後、左右に2次流れが発生し、しかも2次流れの放熱性能が高いため、パネル全体で空気が流れにくい場所が無く、パネル全面を安定して冷却できる。このとき、ダクト幅をパネル幅に等しくなるまで広げると、流速の低下が著しくなり、冷却性能が低下する傾向を示す。
【0037】
以上のように、衝突噴流冷却では、従来の冷却方法とは異なり、ダクト幅をパネル幅より狭く設定したほうが冷却性能を高く保つことができる。
【0038】
続いて、衝突方式においてダクト幅を狭くするための具体的なパネル(発熱部品)の大きさとダクト(噴出口)の幅の関係について説明する。
【0039】
図4は、板間を1.5mm空けて並列した発熱部20を内蔵する複数の平板状発熱部品群18に対し、特定のP−Q(静圧−流量)特性を与えた冷却ファンからの空気をダクトから送風する際の概観図である。
【0040】
発熱部20を内蔵する二つの並列した平板状発熱部品郡18は、断熱材21に囲まれており、板間に面した放熱面22からのみ放熱することができる。
【0041】
衝突噴流を用いる場合は、平板状発熱部品群18に対して、冷却ファンおよびダクトは、上下1対にて第1の空冷手段、及び第2の空冷手段として備えられる。第1の空冷手段と第2の空冷手段の組み合わせは、第1の空冷手段が第1の冷却ファン23aと第1の空冷ダクト19aから構成され、第2の空冷手段が第2の冷却ファン23bと第2の空冷ダクト19bから構成される。
【0042】
第1の冷却ファン23aと第2の冷却ファン23bは、同じP−Q特性を有し、一方向からの強制空冷で用いた冷却ファンと比べて静圧(P)は同じであるが、流量(Q)を半分としている。そのため、第1の冷却ファン23aと第2の冷却ファン23bは一方向からの強制空冷に用いた冷却ファンをそれぞれ二手に分けたものと同じP−Q特性となる。
【0043】
図5は、図4で示す構成において、平板状発熱部品群(幅20mm)から15mm離れた位置に設けられた噴出口の幅dの変化に対する、並列した平板状発熱部品群に形成された板間に流入する空気の流速の特性図を示す。
【0044】
一方向からの送風については実線、衝突噴流における結果を点線で示している。衝突噴流においては、横軸のダクト噴出口の幅dの値が大きくなるにつれて、板間への流入速度が著しく減少し、さらに、発熱部品長さLの値が小さくなるにつれて、板間への流入速度は減少することになる。
【0045】
衝突噴流においては、対向する風と狭い板間で衝突させるため、衝突した風によって圧
力が増加し、空気が板間へ流入しづらくなるため、ダクトの構成条件によっては流入する風速が下がりやすくなる。
【0046】
図6は、図4で示す構成と同様の冷却ファン、空冷ダクト形状を用いて単位体積当たり同等の発熱量を有し、板間2.5mmの空間を設けて並列する平板状発熱部品群を空冷した際の、構成要素から15mm離れた位置に設定された噴出口の幅dの変化に対する、平板状発熱部品群の表面温度上昇の最高値をプロットしたものを発熱部長さLの変化ごとに並べたものである。
【0047】
図6(a)〜(d)で示すLの値は、それぞれ(a):10mm、(b):15mm、(c):20mm、(d):30mmである。いずれも温度変化の傾向は似ており、噴出口の幅dが大きくなるにつれ、衝突噴流の温度上昇は大きくなり、一方向からの強制空冷は、温度上昇が低減される。
【0048】
図7は、発熱部品の最高温度に与える影響を、噴出口幅と発熱部品長さのそれぞれについて発熱部品幅で無次元化してプロットしたグラフである。
【0049】
図7を参照にして、発熱部品の最高温度に噴出口幅が与える影響を見ると、噴出口幅/発熱部品幅の値が0.8を境界にして、それよりも噴出口幅が小さいと、発熱部品の長さに依存して最高温度が変化することになる。すなわち、噴出口幅/発熱部品幅の値が0.8以下では、発熱部品の最高温度を効率的に低下させることができる。このような傾向を示す理由は、噴出口幅/発熱部品幅の値が0.8よりも小さくなると、噴出口での流速の増加が顕著になり、結果として温度が低下するためである。
【0050】
衝突方式の前述のような現象と特性を活用すると、衝突箇所を複数個設けて平板状発熱部品を効率的に冷却することも可能である。比較的面積が広く隙間が狭い平板状発熱部品、例えば電子機器のプリント基板が複数枚搭載された構造においては、衝突の場所が複数個あることにより、プリント基板全体を均一に冷却することが可能となる。
【0051】
また、プリント基板も、そこに搭載される部品の種類によって、発熱量の大きな部品が複数箇所に散らばっている場合もあり、できるだけ少ない数の送風により衝突箇所を増やしたい要求もある。この場合、衝突後に発生する2次流れを次の衝突に活用することにより、少ない数の冷却ファンあるいはダクトでも、効率的に冷却することが可能となる。
【0052】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における電子機器の発熱部冷却装置の構成と動作について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、理解を容易にするために、電子機器を液晶プロジェクタ装置の液晶型画像表示器とし、平板状発熱部品を、液晶ユニット部を構成する入射側偏光板、液晶パネル、および2枚の出射側偏光板として説明する。しかし、この形態に限定されるものではなく、間隔をおいて互いに対向する面をそれぞれが備え、互いに対向する面の少なくともいずれかが発熱部である複数の平板状発熱部品を備える電子機器の冷却装置などとしても適用可能である。
【0053】
図8は、本発明の第1の実施形態における液晶画像表示器の発熱部冷却装置の模式的分解斜視図である。
【0054】
冷却装置24は、R/G/Bの色光ごとに用意された、入射側偏光板25、液晶パネル26、及び出射側偏光板27、28のそれぞれをユニットとして構成する液晶ユニット部の上下端に対向するように配置され、第1の冷却ファン29と第1の空冷ダクト30からなる第1の空冷部31と、同じく第2の冷却ファン32と第2の空冷ダクト33からなる
第2の空冷部34とから構成される。
【0055】
次に、図9を用いて本実施形態における冷却装置24による冷却作用について説明する。図9は液晶プロジェクタが有するR/G/Bの3つの液晶パネルうち1つの色光部分の液晶ユニット部を取り出した断面図である。
【0056】
第1の送風35は、液晶ユニット部の下方から入射側偏光板25と液晶パネル26との空間、及び液晶パネル26と出射側偏光板A27との空間、出射側偏光板A27と出射側偏光板B28との空間から上方へ向かって送り出される。
【0057】
同様に、第2の送風36は、入射側偏光板25と液晶パネル26との空間、及び液晶パネル26と出射側偏光板A27との空間、出射側偏光板A27と出射側偏光板B28との空間から下方へ向かって送り出される。
【0058】
第1の送風35と第2の送風36とは、第1の冷却ファンと第2の冷却ファンとの送風量が等価で、かつ第1の空冷ダクト30と第2の空冷ダクト33の通風抵抗が等しい場合は、各ユニット間の空間の中央(衝突面a−a’)で対向する状態で衝突する。
【0059】
また、第1の送風を送り出すダクトの噴出口37と第2の送風を送り出すダクトの噴出口38の偏光板の面内方向の幅は10mmである。液晶パネル26のサイズは0.7インチを使用しており、入射側偏光板25、出射側偏光板A27、出射側偏光板B28にもほぼ同サイズの偏光フィルムが20mm×20mmの放熱用ガラス基板に取り付けられている。
【0060】
図10は、図9で示す風の衝突部の拡大図を示す。図10(a)は、出射側偏光板A27と、出射側偏光板B28との空間を拡大したものである。
【0061】
第1の送風25と第2の送風36は、ユニット間の空間の中央(衝突面a−a’)で衝突し、出射側偏光板A27と出射側偏光板B28のそれぞれの光透過面へ向かう旋回流が発生し、光の通過を妨げることなく垂直な噴流を発生させ冷却する。このとき、ダクト噴出口幅は10mmであり、出射側偏光板Aと出射側偏光板Bの幅は20mmであるため、ダクト噴出口幅は出射側偏光板AおよびBの幅の0.5倍となる。この状態での出射側偏光板AおよびBの最高温度は低く抑えられていることが確認された。
【0062】
一方、図10(b)は、入射側偏光板25と液晶パネル26との空間を拡大したものである。第1の送風35と第2の送風36は、ユニット間の空間の中央(衝突面a−a’)で衝突し、入射側偏光板25と液晶パネル26のそれぞれの光透過面へ向かう旋回流が発生し、光の通過を妨げることなく垂直な噴流を発生させ冷却する。
【0063】
このとき、ダクト噴出口幅は10mmであり、入射側偏光板25と比べて図中奥行き方向のサイズの小さい液晶パネル26の幅は14mmであるため、ダクト噴出口幅は液晶パネルの幅の約0.7倍となる。この状態での出射側偏光板AおよびBの最高温度は低く抑えられていることが確認された。液晶パネル26の放熱面22は凹部にあり、一方向からの強制空冷では風が届きにくいが衝突噴流は旋回流が発生するため、風が届きやすく衝突噴流のほうが有利である。
【0064】
以上より、噴出口の幅が平板状発熱部品の最大幅の0.8倍よりも小さいと、発熱部品の温度を低く抑えられることが確認された。
【0065】
なお、プロジェクタ装置などにおいては、複数の平板状発熱部品が形成する板間が狭い
場合(5mm程度まで)に大きな効果が得られる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における冷却装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0067】
図11は、本発明における第2の実施形態の模式図であり、冷却ファン39から送り込まれる風は、第1の空冷ダクト40と、その途中から分岐している第2の空冷ダクト41により2方向に分けて液晶ユニット部2へと送風される。
【0068】
本実施形態によれば、第1の空冷ダクト39による液晶ユニット部2の下方から上方へ通風させる第1の送風42と、液晶ユニット部2の側方から通風される第2の送風43とが、液晶ユニット部2の間の各空間において、2つの異なるベクトル(直交ベクトル)を持つ送風としての衝突が生じるため、高い冷却効果を得ることが可能となる。
【0069】
本構成のように空冷ダクトを途中から分岐させると、ファン実装個数を削減して低コスト化と低騒音化を図れるとともに、空冷ダクトも小さくできるため小型のプロジェクタ装置に適用することが容易になる。
【0070】
なお、上記冷却構造において、ダクト噴出口幅は、第1の空冷ダクト40、第2の空冷ダクト41ともに10mmであり、液晶ユニット部2の最小のサイズのパネルである液晶パネルの幅は14mmである。このときのダクト噴出口幅は、液晶パネルの幅の約0.7倍となる。この状態において、液晶パネルの最高温度は低く抑えられていることが確認された。
【0071】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態における冷却装置について、図面を参照して詳細に説明する。図12は、本発明の第3の実施形態における冷却装置の模式図である。
【0072】
液晶ユニット部2に対して、下側には、それぞれ共通のダクトから分岐した第1の空冷ダクト44と第2の空冷ダクト45が配置され、上側には、それぞれ共通のダクトから分岐した第3の空冷ダクト46と第4の空冷ダクト47が配置される。
【0073】
第1の空冷ダクト44からの送風と、第3の空冷ダクト46からの送風は、液晶ユニット部2の隙間の空間において第1の衝突48を起こし、右側へと第1の2次流れ49を発生させる。
【0074】
一方、第2の空冷ダクト45からの送風と、第4の空冷ダクト47からの送風は、液晶ユニット部2の隙間の空間において第2の衝突50を起こし、左側へと第2の2次流れ51を発生させる。
【0075】
お互い対面する方向の第1の2次流れ49と第2の2次流れ51により、液晶ユニット部2の中央付近の隙間の空間において、2次流れ同士の衝突である第3の衝突52が発生する。
【0076】
衝突部およびその結果生じる2次流れは、液晶ユニット部2から空気に伝わる熱を大きくする効果があるが、本実施形態においては、第1および第2の実施形態において1箇所であった衝突部が3箇所になっているため、液晶ユニット部2の放熱効率は増加し、さらに各パネル内での放熱効率の均一化も可能である。
【0077】
なお、液晶ユニット部2内の最小のサイズである液晶パネルの最大幅は14mmであり、第1から第4の4つの空冷ダクトの噴出口の幅は2mmで構成される。このとき、噴出口の幅は、液晶パネル最大幅の0.14倍になり、0.8倍よりも小さい値である。このように噴出口の幅を0.8倍よりも小さくすることにより、衝突噴流の流速を上げることが可能になり、液晶ユニット部2の冷却効率を高められることが確認された。
【0078】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態における冷却装置について、図面を参照して詳細に説明する。図13は、本発明の第4の実施形態における冷却装置の模式図である。
【0079】
図13において、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は下面図を示す。本冷却装置は、図13(a)に示すように、入射光側(図の右側)から入射側偏光板25、液晶パネル26、出射側偏光板A27、出射側偏光板B28の4枚の平板が並行に備えられる。
【0080】
また、前記4枚の平板に対して、下側には第1の空冷ダクト53が設置され、上側には第2の空冷ダクト54が設置される。
【0081】
前記4枚の平板中、液晶パネル26は他の3枚の平板よりも発熱量が大きい。そこで、液晶パネルの冷却に関係する2つの隙間空間(1つは入射側偏光板25と液晶パネル26の隙間空間、もう1つは液晶パネル26と出射側偏光板A27の隙間空間)は衝突噴流による空冷を用いて、液晶パネルの冷却に関係しない出射側偏光板A27と出射側偏光板B28の隙間空間は、一方向方式による空冷を用いる。
【0082】
図13(b)は、図13(a)の中央AA断面から下側を見た図である。図13(b)において、斜線部は第1の空冷ダクト53の噴出口を示す。第1の空冷ダクト53の噴出口は、衝突噴流用のダクトであり、液晶パネルの冷却に関係する2つの隙間空間(1つは入射側偏光板25と液晶パネル26の隙間空間、もう1つは液晶パネル26と出射側偏光板A27の隙間空間)に空気が流れるように形成されている。
【0083】
液晶パネルの最大幅は14mmであり、第1の空冷ダクト53の噴出口の幅は6mmである。このとき、第1の空冷ダクト53の噴出口の幅は、液晶パネルの最大幅の0.43倍であり、0.8倍よりも小さいため衝突噴流の冷却効率が高い。
【0084】
図13(c)は、図13(a)の中央AA断面から上側を見た図である。図13(c)において、斜線部は第2の空冷ダクト54の噴出口を示す。第2の空冷ダクト54の噴出口は、衝突噴流冷却用の領域(図の右側)と一方向冷却用の領域(図の左側)の2つの領域から成る。
【0085】
衝突噴流冷却用の領域(図の右側)は、液晶パネルの冷却に関係する2つの隙間空間(1つは入射側偏光板25と液晶パネル26の隙間空間、もう1つは液晶パネル26と出射側偏光板A27の隙間空間)に送風できる位置にあり、噴出口の幅(図における縦の長さ)は6mmであり、液晶パネルの最大幅の0.43倍であり、0.8倍よりも小さい。
【0086】
一方、第2の空冷ダクト54の一方向冷却用の領域(図の左側)は、出射側偏光板A27と出射側偏光板B28に送風できる位置にあり、噴出口の幅は20mmであり、出射側偏光板A27と出射側偏光板B28の幅である20mmの1倍である。このため、一方向の空冷として冷却性能が高くなっている。
【0087】
このように、4つの平板状発熱部品があり、それぞれの発熱量に応じてダクト噴出口の幅を各隙間空間によって変えることにより、全体として最適、且つ最大の冷却性能を実現
することが可能である。
【0088】
以上、第1〜第4の実施形態では、液晶プロジェクタ装置の液晶ユニット部の冷却装置を例として述べてきたが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、他の電子機器における平板状発熱部品郡の空冷方法に本発明を適用しても同様の効果が得られることは明白である。
【0089】
例えば、データセンターに設置される大型サーバは、実装密度を上げるためにCPU、メモリ、ハードディスク、電源などを搭載したボードを数cmのピッチで複数枚並べた構成を採るもの(一般的に、ブレードサーバと呼ぶ)があるが、この場合にもボードあるいは部品間の隙間は小さく、従来の一方向の空冷では冷却性能に限界がある。このため、本発明のように、送風の噴出口幅をボードの最大幅の0.8倍よりも小さくした2つ以上の空冷手段を持つ衝突噴流冷却は非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の作用の有効性を示すために比較として示した従来の一方向空冷のパネル板間の流速ベクトル分布を示す図である。
【図2】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷におけるパネル板間の流速ベクトル分布を示す図である。
【図3】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷におけるパネル温度分布図である。
【図4】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷における各種影響を示すパネル周辺基本構造図である。
【図5】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷における噴出口幅と流速の関係を示す図である。
【図6】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷における噴出口幅と温度の関係を示す図である。
【図7】本発明の作用の有効性を示すための衝突空冷におけるパネル最高温度の噴出口幅と発熱部品長さ依存性示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の液晶プロジェクタ装置の発熱部冷却装置の模式的分解斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の基本態様における衝突噴流冷却を用いた液晶プロジェクタの液晶ユニット部の模式的断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の出射側偏光板と出射側偏光板の空間(a)と入射側偏光板と液晶パネルの空間(b)を拡大した図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の基本態様における衝突噴流冷却を用いた液晶プロジェクタの液晶ユニット部の模式的断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態の基本態様における衝突噴流冷却を用いた液晶プロジェクタの液晶ユニット部の模式的断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態の基本態様における衝突噴流冷却を用いた液晶プロジェクタの液晶ユニット部の模式的断面図である。
【図14】一般的な液晶プロジェクタ製品の外観図である。
【図15】一般的な液晶プロジェクタ装置の内部構造図である。
【図16】一般的な液晶プロジェクタ装置の内部の模式的構成図である。
【図17】従来の液晶プロジェクタ装置の液晶ユニット部の冷却部の構成図である。
【図18】液晶ユニット冷却の従来例を示す冷却部の構成の模式図である。
【符号の説明】
【0091】
1 液晶プロジェクタ装置
2 液晶ユニット部
3 冷却ファン
3a 第1の冷却ファン
3b 第2の冷却ファン
4 空冷ダクト
5 光源
6 リフレクタ
7 ランプ用冷却ファン
8 ランプ用冷却ダクト
9 排気ファン
10 電源ユニット
11 投写レンズ
12 入射側偏光板
13 液晶パネル
14 出射側偏光板
15 空冷装置
16 送風
17 吐出口
18 平板状発熱部品郡
19a 第1の空冷ダクト
19b 第2の空冷ダクト
20 発熱部
21 断熱材
22 放熱面
23a 第1の冷却ファン
23b 第2の冷却ファン
24 冷却装置
25 入射側偏光板
26 液晶パネル
27 出射側偏光板A
28 出射側偏光板B
29 第1の冷却ファン
30 第1の空冷ダクト
31 第1の空冷部
32 第2の冷却ファン
33 第2の空冷ダクト
34 第2の空冷部
35 第1の送風
36 第2の送風
37 第1のダクト噴出口
38 第2のダクト噴出口
39 冷却ファン
40 第1の空冷ダクト
41 第2の空冷ダクト
42 第1の送風
43 第2の送風
44 第1の空冷ダクト
45 第2の空冷ダクト
46 第3の空冷ダクト
47 第4の空冷ダクト
48 第1の衝突
49 第1の2次流れ
50 第2の衝突
51 第2の2次流れ
52 第3の衝突
53 第1の空冷ダクト
54 第2の空冷ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内方向が同じとなるように並列されて、面の内部に発熱部を有する1つ以上の平板状発熱部品群と、
前記平板状発熱部品群に対して異なる方向から送風を行い、前記平板状発熱部品群の1つ以上の隙間において1箇所以上の空気衝突部を発生させる2つ以上の空冷手段と、
前記空冷手段は、空気を噴出する少なくとも1つ以上の噴出口の幅が、前記平板状発熱部品の前記噴出口から前記平板状発熱部品群へ向かって吐出される空気の流れの方向に対して直交する向きの平板状発熱部品の最大幅に対して0.8倍以下である空気噴出手段と、を有することを特徴とする発熱部冷却装置。
【請求項2】
前記空気噴出手段は、噴出口の幅が前記平板状発熱部品群の形成する異なる隙間の両側の平板状発熱部品の最大幅が異なる場合、小さい方の平板状発熱部品の最大幅に対して、0.8倍以下であること特徴とする請求項1記載の発熱部冷却装置。
【請求項3】
前記空冷手段は、少なくとも1つが冷却ファンと空冷ダクトを有することを特徴とする請求項1又は2記載の発熱部冷却装置。
【請求項4】
前記空冷手段は、少なくとも1つの空冷ダクトが途中分岐する構造を有し、2つ以上の空気噴出口を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項5】
前記空気衝突部は、他の空気衝突部から発生した2次流れの送風による衝突であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項6】
前記平板状発熱部品群は、衝突部を有する隙間と、衝突部を有しない隙間とを混在して備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置。
【請求項7】
空気噴出手段は、噴出口の幅が、前記噴出口から前記平板状発熱部品群へ向かって吐出される空気流れの方向に対して直交する向きの平板状発熱部品の最大幅に対して0.8倍以上であり、
前記衝突部を有しない隙間に対して、一方向から送風して冷却することを特徴とする請求項6記載の発熱部冷却装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の発熱部冷却装置を備えることを特徴とする液晶プロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−32922(P2010−32922A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197017(P2008−197017)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】