説明

発現の向上したベクター並びにその製造および使用方法

【課題】発現の向上したベクター並びにその製造および使用方法を提供する。
【解決手段】 特定の表現型を有する細胞中の少なくとも一つの第一の核酸分子の発現を向上させるポックスウイルスベクターであって、該ベクターが、第一のポックスウイルスプロモーターに操作可能に結合した第一の核酸分子と、第二のプロモーターに操作可能に結合しかつポックスウイルス転写因子またはポックスウイルス転写因子および翻訳因子をコードする少なくとも一つの第二の核酸分子とを含むように修飾されており、前記第二のポックスウイルスプロモーターが前記第一のポックスウイルスプロモーターと同じ感染段階の間に機能し、該ポックスウイルスベクターでの前記細胞の感染後、該細胞の表現型に関して前記第一と第二の核酸分子の実質的に同時の発現があり、それによって、該第二の核酸分子の発現が、転写または転写と翻訳を向上させることにより、前記第一の核酸分子の発現を向上させることを特徴とするポックスウイルスベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
ここに引用する、Tartaglia等の「Vectors Having Enhanced Expression, And Methods of Making and Uses Thereof」と題する本願と同時に出願された米国特許出願第08/815,809号を参照する。また、Paoletti等の同時係属出願である、米国特許出願第08/417,210号、同第08/303,275号、同第08/709,209号、同第08/184,009号(米国特許第5,378,457号がそれから発行された米国特許出願第07/805,567号を引用している)および同第08/521,016号、並びに米国特許第5,378,457号、同第5,225,336号、同第5,453,364号、同第5,494,807号、同第5,505,941号、および同第5,110,587号を参照する。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明は、向上したベクター、並びにその製造および使用方法に関するものである。本発明のベクターは、向上した転写または翻訳もしくは向上した転写および翻訳および/または発現、例えば、関心のあるヌクレオチド配列からの向上した転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を有することができる。
【0003】
いくつかの出版物がこの出願において参照されている。これらの出版物の完全な引用が、引用されている箇所または請求の範囲の直前の明細書の最後もしくは出版物が述べられている箇所に見られる。これらの出版物の各々をここに引用する。これらの出版物は、本発明の関する最先端の技術に関連しているが、これらのうちどの出版物も実際の従来技術であるとは認められない。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
プラスミドまたは裸のDNAのようなDNA、およびウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスおよびごく最近にはその他のポックスウイルスのような他のベクターが、異種遺伝子からの挿入および発現に用いられてきた。異種遺伝子を生感染性ポックスウイルス中に挿入する基本技術としては、供与体プラスミド中の異種遺伝要素に隣接したポックスDNA配列と、供与体プラスミド中に存在する同種配列と、レスキューポックスウイルス中に存在する同種配列との間の組換えが挙げられる(Piccini等、1987)。組換えポックスウイルスは、特許文献1から5で知られている、またそこに記載されている方法と同等の工程で構築される。これらの特許をここに引用する。ベクターを開発する目的は、例えば、安全性の向上した、例えば、そのベクターを免疫組成物またはワクチン組成物に用いてもよいような弱毒化ベクターにある。
【0005】
例えば、ワクシニアのコペンハーゲン株から特定の毒性および宿主範囲遺伝子を欠失することにより誘導したNYVAC(Tartaglia等、1992)が、発現された異種抗原に対して防御免疫応答を誘発する組換えベクターとして有用であることが証明された。同様に、カナリアポックスウイルスのワクチン株であるALVACベクターもまた、組換えウイルスワクチンベクターとして効果的であることが証明された(Perkus等、1995)。非鳥類宿主において、これら両方のベクターは、生産的に増殖しない(NYVACに関していくつかの例外がある)。全てのポックスウイルスは、細胞質中で増殖し、ウイルス転写に必要とされるタンパク質の全てではないかもしれないがそのほとんどをコードするので(Moss 1990)、ポックスウイルスプロモーターの制御下で適切に操作された異種暗号配列は、ウイルスが生産的に増殖されないときに転写され、翻訳される。
【0006】
向上したベクター、例えば、向上した転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を有するベクター、例えば、弱毒化されたベクターを提供することは、最先端の技術より優れた改良であろう。特に、弱毒化により、発現レベルおよび/または持続性(persistence)の問題が増大するかもしれないので、そのような問題に対処することは進歩であろう。
【特許文献1】米国特許第4,769,330号明細書
【特許文献2】米国特許第4,772,848号明細書
【特許文献3】米国特許第4,603,112号明細書
【特許文献4】米国特許第5,505,941号明細書
【特許文献5】米国特許第5,494,807号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的および概要
ワクシニア増殖についての最近の研究により、ウイルス転写および翻訳の調節において役割を果たすあるポックスウイルスコード機能が明らかにされた(Moss, 1990; Moss, 1992で概説されている)。驚くべきことに、これらのワクシニアコード機能のいくつか(例えば、E3L、K3L、H4L、およびそれらの組合せ)を用いて、ベクター(例えば、NYVACおよびALVACベクター)中の遺伝子発現(例えば、異種遺伝子発現)のレベルおよび持続性を増大させた。これらの機能は、本発明のベクターおよび方法の例である。
【0008】
本発明の目的は、ベクターによる暗号ヌクレオチド配列のような、ベクターによる少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列からの転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を増大させる方法を提供すること;向上した転写または翻訳もしくは転写および翻訳を有するベクター;向上した転写または翻訳もしくは転写および翻訳を有するベクターを産生する方法を提供すること;ベクターからの転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を向上させる方法を提供すること;ポックスウイルスベクターのような改良ベクター、例えば、改良NYVAC、ALVACまたはTROVACベクターを提供すること;およびそれからの産生物のうちの少なくとも一つを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、少なくとも一つの第一のヌクレオチド配列の向上した発現のためのベクターを提供する。このベクターは、転写因子または翻訳因子もしくは転写因子および翻訳因子をコードする少なくとも一つの第二のヌクレオチド配列を含むように修飾されている。そのベクターは、前記第一のヌクレオチド配列を含むように修飾されていても差し支えない。これら第一と第二のヌクレオチド配列からの発現は、実質的に同時に起きる。その発現は、特定の表現型を有する細胞内で起こり、好ましくは、第一と第二のヌクレオチド配列の発現は、その細胞の表現型に関するものである。したがって、第二のヌクレオチド配列の発現は、転写または翻訳もしくは転写および翻訳を向上させることにより、第一のヌクレオチド配列の発現を向上させる。
【0010】
前記第一のヌクレオチド配列は第一のプロモーターに操作可能に結合されていても差し支えなく、前記第二のヌクレオチド配列は第二のプロモーターに操作可能に結合されていても差し支えなく、これら第一と第二のプロモーターは、好ましくは、実質的に同時に機能的である。したがって、これら第一と第二のヌクレオチド配列は、前記ベクター内の異なる遺伝子座にあっても差し支えない。該第一と第二のヌクレオチド配列は、前記第一と第二のプロモーターを用いることにより、または第一と第二のヌクレオチド配列をあるプロモーターに操作可能に結合させることにより、ベクター内の同一遺伝子座にあっても差し支えない。
【0011】
前記転写因子は、例えば、ワクシニアウイルスからの、ポックスウイルス起源であっても差し支えない。この転写因子は、H4L、D6、A7、G8R、A1L、A2L、H5R、およびこれらの組合せからなる群より選択されるオープンリーディングフレームからのものであっても差し支えない。前記翻訳因子は、eIF−2αリン酸化反応の阻害またはPKRリン酸化反応の阻害、もしくはそうでなければPKRを活性化するのに必要な濃度を実際に増大させるdsRNAの隔離を行うことができる。この翻訳因子は、K3Lオープンリーディングフレーム、E3Lオープンリーディングフレーム、ウイルス関連RNA I(VAI)、EBER RNA、シグマ3オープンリーディングフレーム、TRBPオープンリーディングフレーム、およびそれらの組合せからなる群より選択されても差し支えない。
【0012】
前記第一のヌクレオチド配列は、外因性、例えば、関心のあるエピトープ、生体応答調整物質、成長因子、認識配列、治療(therapeutic)遺伝子、融合タンパク質またはそれらの組合せをコードするものであっても差し支えない。
【0013】
前記ベクターは、ポックスウイルスのような組換えウイルス、例えば、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルス、または鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、好ましくは、弱毒化ポックスウイルスのような弱毒化ウイルス、例えば、NYVAC、ALVAC、またはTROVACであっても差し支えない。
【0014】
本発明はさらに、前記ベクターを前記少なくとも一つの第二のヌクレオチド配列を含むように修飾することを含む本発明のベクターを産生する方法を提供する。本発明の方法はまた、前記少なくとも一つの第一のヌクレオチド配列を含むように前記ベクターを修飾する工程も含んでも差し支えない。好ましくは、このベクターは、第一と第二のヌクレオチド配列の発現が実質的に同時に起こるように修飾されている。より好ましくは、そのベクターは、この発現が前記細胞の表現型に関するように修飾されている。本発明の方法は、前記第一のヌクレオチド配列を第一のプロモーターに、前記第二のヌクレオチド配列を第二のプロモーターに操作可能に結合させ、ここで、これら第一と第二のプロモーターが実質的に同時に機能的である工程を含んでも差し支えない。本発明の方法はまた、第一と第二のヌクレオチド配列をあるプロモーターに操作可能に結合する工程を含んでも差し支えない。
【0015】
本発明はさらに、少なくとも一つの本発明のベクターおよび薬剤的に許容されているキャリヤまたは希釈剤を含む免疫、ワクチンまたは治療組成物を提供する。
【0016】
本発明はさらにまた、宿主(動物、ヒト、脊椎動物、哺乳類等)に少なくとも一つの本発明の組成物を投与する工程を含む、該宿主内に免疫または治療応答を生じさせる方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、少なくとも一つの第一のヌクレオチド配列の発現を、この第一のヌクレオチド配列を含むベクターにより増大させる方法を提供する。この方法は、前記ベクターを、転写因子または翻訳因子もしくは転写因子および翻訳因子をコードする少なくとも一つの第二のヌクレオチド配列を含むように修飾する工程を含む。好ましくは、これら第一と第二のヌクレオチド配列の発現は、実質的に同時に起こる。発現は、特定の表現型を有する細胞内で行われても差し支えなく、その発現がこの細胞の表現型に関するものであることがより好ましい。前記第二のヌクレオチド配列の発現は、転写または翻訳もしくは転写および翻訳を向上させることにより、前記第一のヌクレオチド配列の発現を向上させる。本発明の方法はさらに、前記ベクターを、関心のある第一のヌクレオチド配列を含むように修飾する工程を含んでも差し支えない。
【0018】
本発明はさらなる実施の形態において、適切な細胞を少なくとも一つの本発明のベクターで感染させる、またはトランスフェクションさせる工程を含む、少なくとも一つの遺伝子産物をインビトロ(in vitro)で発現する方法を提供する。それから発現された産物は、治療、免疫またはワクチン組成物を配合する上で、またはモノクローナル抗体のような抗体を産生するのに、例えば、抗体を検出するための、診断組成物のようなアッセイ、キット、試験等において有用である、関心のあるエピトープまたは免疫原であっても差し支えない。
【0019】
したがって、本発明は、インビトロで、少なくとも一つの本発明のベクターを含む、転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を行う組成物および方法、例えば、遺伝子産物(治療、免疫またはワクチン組成物、または診断または検出キット、アッセイまたは方法、例えば、抗体の存在または不在を確認するため、またはモノクローナル抗体のような抗体を産生するため、例えば、診断または検出キット、アッセイまたは方法における免疫原またはエピトープとして使用することのできる)を産生する方法、および/または半ビボで少なくとも一つの本発明のベクターを含む、転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を行う組成物および方法、例えば、宿主(例えば、動物、哺乳類、脊椎動物、ヒト)中の自己輸血(reinfusion)のために細胞を刺激する遺伝子産物を産生する方法を提供することができる。
【0020】
さらに、さらなる実施の形態において、本発明は、少なくとも一つの本発明のベクターを宿主(ヒト、動物、脊椎動物、哺乳類等)に投与することを含む、インビトロで少なくとも一つのヌクレオチド配列(例えば、少なくとも一つの第一のヌクレオチド配列)を発現する方法を提供する。このヌクレオチド配列は、免疫原または関心のあるエピトープを発現することができる。本発明の方法は、抗体を得ることができる。抗体を産生することにより、モノクローナル抗体を産生することができる。または、抗体は、例えば、抗原を検出するための、アッセイ、キット、試験または診断組成物に有用である。
【0021】
本発明は、したがって、インビボ(in vivo)で、本発明のベクターを含む、転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を行う方法および組成物、例えば、少なくとも一つの本発明のベクターまたは少なくとも一つの本発明のベクターを含む組成物、例えば、少なくとも一つの本発明のベクターおよび適切なキャリヤまたは希釈剤(例えば、家畜またはヒトの医薬に適した)を含む治療、免疫またはワクチン組成物を投与する方法および組成物を提供する。
【0022】
これらと他の実施の形態が、以下の詳細な説明に開示されているか、またはそれから明らかであり、それに包含されている。
【0023】
以下の詳細な説明は、例としてであって、本発明を記載された特定の実施の形態に限定することを意図したものではなく、ここに引用する図面とともに理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここに引用するPaoletti等への米国特許第5,494,807号は、弱毒化された毒性および向上した安全性を有するように、不活化されたウイルスコード遺伝子機能を有する修飾組換えウイルスに関するものである。Paoletti等の特許に開示されたウイルスは、ポックスウイルス、例えば、鶏痘ウイルスおよびカナリア痘ウイルス、例えば、NYVAC、ALVACおよびTROVACのようなワクシニアウイルスまたはアビポックスウイルスであっても差し支えない。ALVACは、ブダペスト条約の条件下で、米国、20852、メリーランド州、ロックビル、12301パークローンドライブのアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に、ATCCアクセス番号VR−2547で寄託された。TROVACも同様に、ブダペスト条約の条件下で、ATCCアクセス番号2553で寄託された。そして、NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lreverse、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBも、ブダペスト条約の条件下で、それぞれ、ATCCアクセス番号 、および で寄託された。
【0025】
Paoletti等に発行された米国特許のように、1994年4月24日に出願された米国特許出願第08/235,392号に基づく、1995年11月9日に出願されたFalkner等の国際特許公開第WO95/30018号(両方ともここに引用する)は、毒性に関連する遺伝機能の遺伝子座(すなわち、「基本的」機能の遺伝子座)が外因性DNAの挿入に用いられるポックスウイルスに関するものである。
【0026】
さらに、組換え体が、初期(DNA)および後期欠損突然変異体(Condit and Niles,"Orthopoxvirus Genetics"pp 1-39, In: Poxviruses, Edited by R.W.Moyer and P.C.Turner (Springer-Verlag, 1990),およびその中に引用された文献を参照のこと、これらここに引用する)から、または後期に不稔(abortive)であると言われているMVAから作成することができる。欠損突然変異体、不稔後期ウイルス、基本的遺伝機能が欠失または中断されたウイルス、または生産的複製のない発現を有するウイルス(例えば、哺乳類系におけるALVAC)からの組換え体は、弱毒化されていると言ってもよい。
【0027】
弱毒化ベクター、例えば、NYVACおよびALVACベクターのようなあるベクターは、哺乳類細胞内の後期遺伝子発現において遮断または制限されている。したがって、初期プロモーターは、異種遺伝子産物からの発現のために、そのようなベクター、例えば、NYVACまたはALVACベースの組換えインビボで通常用いられる。
【0028】
ワクシニアは、初期ウイルス転写に必要とされることが示されたH4Lと称されるオープンリーディングフレーム(ORF)をコードする(Ahn and Moss 1992, Zhang等, 1994)。このH4L ORFは、ウイルス性DNA複製の開始後に発現される(後期機能)94kDaの必須タンパク質をコードする。このH4Lタンパク質は、ウイルス性RNAポリメラーゼ複合体と密接に関連することが分かっており、ワクシニア初期転写因子(VETF)とともに機能して初期ウイルス性メッセージを開始し、転写すると考えられている(Ahn and Moss, 1992)。
【0029】
H4Lは、後期に発現されるが、初期に必要とされる。これは、VETFについて観察されるウイルス粒子と同様のウイルス粒子中にパッケージされているタンパク質と一致する。このことにより、感染後の初期に存在するH4Lの量は少なく、おそらく制限されていることが示唆された。それゆえ、不稔初期ベクター内で異種遺伝子発現、例えば、ウイルス−宿主相互作用を増大させる手法の一つは、内因性後期プロモーターよりもむしろワクシニア初期/後期プロモーターを用いてH4L ORFを発現することにより、初期相中に得られるH4Lタンパク質の量を増大させることである。H4Lからの初期発現は、異種遺伝子トランスクリプト(transcript)のレベルを増大させるだけでなく、全タンパク質レベルを増大させるかもしれない他のワクシニア初期遺伝子(例えば、E3L)のレベルも増大させるかもしれない。
【0030】
他のウイルス性転写因子もある;例えば、ポックスウイルス起源の初期および/または後期ウイルス性転写因子;例えば、ワクシニアD6、ワクシニアA7、ワクシニアG8R、ワクシニアA1L、ワクシニアA2L、またはワクシニアH5Rからのもの(VLTF−1、−2、−3、−4、P3、VLTF−X;Kovacs等, J. Virology, October 1996, 70(10):6796-6802、およびその中に引用された文献を参照のこと、これらをここに引用する)。これらと他の転写因子、およびそのヌクレオチド配列またはその相同体、例えば、別のポックスウイルスからのものが、本発明を実施する上で有用である。
【0031】
適切な転写因子の選択は、当業者の範囲内である。例えば、当業者は、ベクターの不稔表現型に基づいて転写因子を選択することができる。例えば、MVAは、後期不稔であると言われており、後期または初期もしくは初期/後期転写因子をこのベクターに用いてもよい。ALVACは、初期不稔であり、初期または初期/後期転写因子をこのベクターに用いてもよい。そのベクターは、ts(温度感受性)突然変異体であっても差し支えない(本発明の実施に使用できる初期(DNA-)および後期欠損突然変異体に関する。前出のCondit and Nilesを参照のこと)。このように、転写および/または翻訳因子および少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列を、前記ベクターの表現型に対して、初期、後期(中間を含む)、または初期/後期に発現することが好ましい。
【0032】
異種遺伝子発現を増大させる別の手段としては、翻訳、例えば、ウイルスmRNA翻訳のようなmRNAの翻訳の全体的効率を向上させることが挙げられる。二つのワクシニアコード機能(E3LおよびK3L)が、ウイルス翻訳の規制にある役割を果たすものとして最近同定された(Beattie等, 1995a, 1995b, 1991; Chang等, 1992; Davies等, 1993)。両方の機能は、二本鎖RNA(dsRNA)により活性化されたときに、翻訳開始因子eIF−2αをリン酸化し、mRNA翻訳の開始を阻害することとなる細胞タンパク質キナーゼ(PKR)の作用を阻害することができる(Jacobs and Langland, 1996で検討されている)。したがって、ウイルス転写中のdsRNAを産生するワクシニアウイルスは、eIF−2αへのPKRの負の作用をブロックする機能を発展させ、ウイルスmRNAを効率的に翻訳することができる(非対称転写がdsRNAを生じる;どのようなウイルス感染またはプラスミド由来発現もそれを生じる;dsRNAがPKRを活性化させる;PKRが自動的にリン酸化されて、eIF−2αがリン酸化される)。
【0033】
前記ワクシニアK3L ORFが、eIF−2αに対する著しいアミノ酸相同性を有することが示された(Goebel等, 1990; Beattie等, 1991; 米国特許第5,378,457号; Beattie等, 1995a, 1995bも参照のこと)。このタンパク質は、PKRの偽性基質として機能すると考えられ、eIF−2α結合部位に関して競合する(Carroll等, 1993; Davies等, 1992)。このK3L遺伝子産物は、活性化されたPKRと結合することができ、したがって、翻訳開始への結果としての負の影響によりeIF−2αのリン酸化を阻害することができる。
【0034】
前記ワクシニアE3L遺伝子は、dsRNAに特異的に結合できるタンパク質をコードする(Watson and Jacobs, 1991; Chang等, 1992)。これは、感染細胞中のdsRNAの量を低下させ、したがって、活性化PKRのレベルを減少させる傾向にある。E3Lがワクシニアから欠失されたときに、得られたウイルスは、このキナーゼ阻害機能を失い、さらに、2’5’オリゴアデニレートシンセターゼ/RNase L経路を活性化し、その結果として、rRNAの分解を増大させることができる(Beattie等, 1995a, 1995b)。このように、E3Lは、二つのレベル;mRNA安定性およびeIF−2αリン酸化の制限で、ワクシニア感染細胞中の効率的なmRNA翻訳に関して重大であるように思われる。
【0035】
前記ALVACゲノムが、塩基配列決定され、E3L/K3Lに対する、または既知のdsRNA結合モチーフに対する相同性について研究された。その結果は、これら二つのワクシニアORFに対するALVAC ORFの著しい相同性も、dsRNA結合モチーフの存在も示さなかった。
【0036】
したがって、組換えALVACベクター中の発現レベルを改良する手法の一つは、初期ワクシニアプロモーターの制御下においてALVAC内でワクシニアE3L/K3L ORFを発現することであった。感染細胞中のPKRの阻害により、異種遺伝子発現のレベルおよび持続性を増大させることができた。
【0037】
それゆえ、本発明のベクターおよび方法の実施例として、転写または翻訳もしくは転写および翻訳レベルで異種遺伝子発現を向上させるために、ここに論じたNYVACおよびALVAC組換え体を産生した。
【0038】
したがって、挿入された異種遺伝子の発現のレベルまたは持続性を向上または増大させるために、初期発現H4L ORFを有するNYVAC組換え体およびワクシニアE3L/K3L遺伝子からの発現を有するALVAC組換え体をここに例示する。異種遺伝子発現のアップ調節(up-regulation)には、これら新しいベクター由来の組換え体が投与または接種された宿主内の治療または免疫応答の誘発に深い影響があり、それによって、免疫応答、例えば、防御応答が向上したり、治療応答が向上したりすることがある。
【0039】
本発明の範囲、すなわち、転写および/または翻訳因子、例えば、H4L、E3LおよびK3Lからの発現を操作して、それによって、転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現の効率を向上させることが、他の真核ベクター系(すなわち、DNA、ウイルス)に拡張することができる。
【0040】
実際、他の科のウイルスも、PKR活性化により翻訳ダウン調節(down-regulation)の細胞抗ウイルス応答を克服する機構を発展させた。アデノウイルスにおいて、RNA pol IIIにより転写されたVAI RNAが、よく特徴付けられ、PKRに直接的に結合し、したがって、dsRNAによりその活性化を妨げることが示された(Mathews and Shenk, 1991)。このアデノウイルスゲノムからVAIを欠失することにより、複製が乏しく、後期遺伝子発現のレベルが不足した突然変異体が得られる(Thimmappaya等, 1982)。同様に、ヘルペスウイルスであるエプスタイン−バーウイルスが、キナーゼに直接結合することによりPKR活性化を妨げるように機能する、EBERと呼ばれる相同性RNAを有する(Clark等, 1991; Sharp等, 1993)。レオウイルスシグマ3遺伝子産物が、dsRNAと結合し、したがって、PKRの活性化を妨げる上で、ワクシニアE3Lと同様な様式で機能することが示された(Imani and Jacobs, 1988; Beattie等, 1995aも参照のこと)。実際に、ある研究により、前記レオウイルスシグマ3遺伝子は、部分的に、E3Lの欠失したワクシニア組換え体を補えることが示された(Beattie等, 1995a)。さらに、HIV感染の際に活性化された細胞タンパク質(TRBP)が、PKRの活性を阻害することが示された(Park等, 1994)。
【0041】
したがって、本発明は、広く、発現の操作に関し、好ましくは、少なくとも一つの転写因子、例えば、少なくとも一つの初期および/または後期ウイルス転写因子、または少なくとも一つの翻訳因子、例えば、真核ベクター系内のPKR活性化により翻訳ダウン調節の細胞抗ウイルス応答を克服する産物をコードするヌクレオチド配列、または少なくとも一つの転写因子および少なくとも一つの翻訳因子を用いて、発現を向上または増大させることによる発現の操作に関するものである。そして、本発明は、プラスミドまたは裸DNAベクター、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス等のようなウイルスベクターを含むベクター系に関するものである。したがって、前記ヌクレオチド配列は、例えば、前記ベクター系の観点から適切なRNAまたはDNAであっても差し支えない。
【0042】
したがって、本発明は、少なくとも一つの転写因子、少なくとも一つの翻訳因子、または少なくとも一つの転写因子および少なくとも一つの翻訳因子をコードする少なくとも一つのヌクレオチド配列を含むように修飾されたベクター;ベクターにより転写および/または翻訳および/または発現を増大させるまたは例えば、本発明のベクターを前記少なくとも一つのヌクレオチド配列を含むように修飾することにより本発明のベクターを調製する方法に関するものである。
【0043】
これらの方法は、(i)少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列を含む第一のヌクレオチド配列および(ii)転写因子をコードする少なくとも一つのヌクレオチド配列、または翻訳因子をコードする少なくとも一つのヌクレオチド配列または転写因子および翻訳因子をコードする少なくとも一つのヌクレオチド配列を含む第二のヌクレオチド配列:から実質的に同時の発現を含んでも差し支えない。前記ベクターは、前記少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列を含むように修飾しても差し支えない。該少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列は、少なくとも一つの暗号ヌクレオチド配列であっても差し支えない。前記ベクターは、好ましくは、前記第一と第二のヌクレオチド配列の実質的に同時のまたは同時の発現を有している。
【0044】
この実質的に同時の発現は、ほぼ同じ時期または段階の感染で機能的な前記第一と第二のヌクレオチド配列のためのプロモーターを用いることにより行うことができる。したがって、この関心のあるヌクレオチド配列および前記因子をコードするヌクレオチド配列は、前記ベクター中の異なる遺伝子座に位置することができる。あるいは、実質的に同時の発現は、前記第一と第二のヌクレオチド配列を同一の遺伝子座内に位置させることにより行うことができる。したがって、実質的に同時の発現は、前記関心のあるヌクレオチド配列および/または前記関心のあるヌクレオチド配列、転写因子をコードするヌクレオチド配列、翻訳因子をコードするヌクレオチド配列、または転写因子および翻訳因子をコードするヌクレオチド配列に操作可能に結合したプロモーターに操作可能に結合することにより行うことができる。
【0045】
前記転写因子は、いかなる適切な系からのものであっても差し支えない。好ましくは、その転写因子は、ポックスウイルス源のものであり、例えば、ワクシニアウイルスからのものである。該転写因子は、H4L、D6、A7、G8R、A1L、A2L、H5R、その相同体およびそれらの組合せからなる群より選択されたオープンリーディングフレームからの発現からのものであっても差し支えない。また、転写因子をコードするヌクレオチド配列を含む実施の形態がポックスウイルスベクター系を含むことが好ましい。
【0046】
前記翻訳因子も同様に、いかなる適切な系からのものであっても差し支えない。好ましくは、その翻訳因子は、eIF−2αリン酸化の阻害またはPKRリン酸化の阻害を行うか、もしくはそうでなければ、dsRNAの効果的な濃度を減少させる細胞dsRNA含有量を減少させることができる。この翻訳因子は、K3Lオープンリーディングフレーム、E3Lオープンリーディングフレーム、VAI RNA、EBER RNA、シグマ3オープンリーディングフレーム、TRBPオープンリーディングフレーム、その相同体、およびそれらの組合せからなる群からの発現より選択することができる。dsRNA濃度に関する「効果的」という用語は、PKRおよび/またはeIR−2αリン酸化を活性化させるdsRNAの量を意味する(このdsRNAは、そのための形態にある)。RNAベースの因子、例えば、VAI RNA、EBER RNAに関して、当業者は、不必要な実験を行わずに、DNAベクター系中に使用するためにそのRNAから適切なDNAを得ることができる。そして、DNAベースの因子に関して、当業者は、不必要な実験を行わずに、RNAベクター系中に使用するためにそこから適切なRNAを得ることができる。
【0047】
「実質的に同時の発現」という用語は、前記転写または翻訳もしくは転写および翻訳の因子をコードするヌクレオチド配列が、前記少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列とほぼ同じ感染段階中に発現されることを意味する。
【0048】
例えば、ポックスウイルス遺伝子は、時間的様式で調節されている(Coupar等, Eur. J. Immunol., 1986, 16:1479-1487, at 1479)。したがって、感染の直後に、「初期」遺伝子の一群が発現される(同著者)。「初期遺伝子」は、感染の「後期」段階(DNA複製の開始)の前の感染後の時間で発現されるのをやめる(すなわち、初期プロモーターが機能をやめる)。チミジンキナーゼ(「TK」)遺伝子およびTKプロモーターは、直ちに「初期」の遺伝子およびプロモーターの例である(Hruby等, J. Virol., 1982, 43(2):403-409, at 403)。このTK遺伝子は、感染から約4時間後に「オフ」に切り換えられる。「後期遺伝子」は、DNA複製が開始されるまで発現されない遺伝子の一群である(Coupar等、前出)。Coupar等により用いられたPL11プロモーターは、「後期」プロモーターの例である。このように、Coupar等において、PL11プロモーターにより調節されたHA遺伝子発現は、TK領域内にあるにもかかわらず、DNA複製後まで行われなかった。
【0049】
規範的な「初期」遺伝子および「後期」遺伝子とは対照的に、7.5kD遺伝子および7.5kDプロモーターは、「初期および後期」遺伝子およびプロモーターの例である。「調節転写に対する明らかな例外である」(Davison and Moss, "Structure of Vaccinia Virus Early Promoters" J. Mol. Biol., 210-69, 249-69 (1989) at 749)7.5kDプロモーターは、「初期および後期両方の転写に関する調節信号を含有している」(Coupar等、前出)。実際に、「7.5kD遺伝子のプロモーター領域内に独立した初期および後期RNA開始部位」がある(Cochran等, J. Virol., 59(1): 30-37 (April, 1985))。
【0050】
Coupar等は、「プロモーターPF[初期]、P7.5[初期および後期]およびPL11[後期]によるHA発現の時間調節が、それらプロモーターが転移されて、[ワクシニアウイルス]のTK遺伝子を妨げたときに維持された」ことを観察した(同著者、at 1482)。すなわち、Corpar等は、初期ワクシニアプロモーターの制御下の異種遺伝子発現が「初期」に起こり、後期ワクシニアプロモーターの制御下の異種遺伝子発現が「後期」に起こり、初期および後期ワクシニア7.5kDプロモーターの制御下の異種遺伝子発現が初期および後期の両方で起こったことを観察した(同著者、at 1479: "[p]romoter sequences transposed to within the thymidine kinase (TK) gene continue to function in a temporally regulated manner" (引用省略))。
【0051】
したがって、転写または翻訳もしくは転写および翻訳因子をコードするヌクレオチド配列は、第一の種類のプロモーターの制御下にあっても差し支えなく、前記少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列または前記暗号ヌクレオチド配列は、第二の種類のプロモーターの制御下にあっても差し支えなく、ここで、これら第一と第二のプロモーターは、両方とも初期、両方とも後期(中間を含む)、または両方とも初期および後期である;または第一のプロモーターが初期または後期であっても差し支えなく、第二のプロモーターが初期および後期であり;または第一のプロモーターが初期および後期であっても差し支えなく、第二のプロモーターが初期または後期であっても差し支えない。前記関心のあるヌクレオチド配列および転写または翻訳もしくは転写および翻訳因子をコードするヌクレオチド配列は、同一の遺伝子座または異なる遺伝子座、または同一のプロモーターの制御下にあっても差し支えない。
【0052】
したがって、本発明は、転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現の向上したベクターを調製する方法、または少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列への操作可能な結合を含む、ベクター内で転写または翻訳もしくは転写および翻訳および/または発現を増大または向上させる方法、または少なくとも一つの転写および/または少なくとも一つの翻訳因子に関する少なくとも一つのヌクレオチド配列、例えば、転写因子に関する少なくとも一つのヌクレオチド配列、または翻訳因子に関する少なくとも一つのヌクレオチド配列または転写因子および翻訳因子に関する少なくとも一つのヌクレオチド配列に操作可能に結合したプロモーターに関するものである。好ましくは、前記翻訳因子は、eIF−2αリン酸化の阻害を行うおよび/またはPKRのリン酸化の阻害を行うおよび/またはeIF−2αのリン酸化の原因である細胞キナーゼの阻害を行うおよび/またはdsRNAの濃度を効果的にする。したがって、本発明はまた、そのような方法からのベクターに関するものである。
【0053】
あるいは、本発明の方法は、ベクター内で、少なくとも一つの関心のあるヌクレオチド配列を第一の種類のプロモーターに操作可能に結合させることおよび少なくとも一つの転写および/または翻訳因子をコードする少なくとも一つの第二のヌクレオチド配列を第二の種類のプロモーターに操作可能に結合することを含み、ここで、該第一と第二のプロモーターが、感染の同じ時期または同じ段階で両方とも機能的であり、例えば、第一と第二のプロモーターが、両方とも初期、両方とも後期(中間を含む)、または両方とも初期および後期、もしくは第一のプロモーターが初期または後期であり、第二のプロモーターが初期および後期であり、もしくは第一のプロモーターが初期および後期であり、第二のプロモーターが初期または後期である。もちろん、前記第一と第二のプロモーターは、二つ以上の異なる遺伝子座で同一プロモーターであっても、一つの遺伝子座で同一プロモーターであっても差し支えない。そして、本発明は、そのような方法からのベクターに関するものである。
【0054】
そして、ここで用いている「ヌクレオチド配列」という用語は、核酸分子を意味することができる。したがって、ヌクレオチド配列は、単離された核酸分子、例えば、外因性DNAであっても差し支えない。
【0055】
したがって、本発明は、好ましくは、少なくとも一つの関心のあるエピトープ、および少なくとも一つの転写因子または少なくとも一つの翻訳因子もしくは少なくとも一つの転写因子および少なくとも一つの翻訳因子をコードする、少なくとも一つの外因性ヌクレオチド配列を含有するように修飾されたベクターであって、ここで、前記外因性ヌクレオチド配列および前記因子が実質的に時間的に共に発現される(実質的に同時に発現される)ベクター、およびそのようなベクターを製造および使用する方法並びにそれからの産生物を提供する。向上または増大した発現が、本発明のベクターおよび方法により得られる。この向上または増大した発現は、発現の向上したレベルおよび/または持続性を意味する。
【0056】
本発明は、挿入されたヌクレオチド配列、例えば、異種遺伝子のレベルおよび/または持続性を向上および/または増大させる手段として、初期に不稔であるベクター、例えば、初期に発現された転写因子、例えば、初期に発現されたH4Lオープンリーディングフレームを有するポックスウイルスベクター、例えば、NYAVC、ALVACまたはTROVAC組換え体(またはその相同体、例えば、ワクシニア以外のようなポックスウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン−バー、アデノウイルス、プラスミドまたは裸DNA等のような別のベクター系からのもの)を提供する。本発明はまた、挿入されたヌクレオチド配列、例えば、異種遺伝子のレベルおよび/または持続性を向上および/または増大させる手段として、後期に不稔である(中間の不稔を含む)ベクター、例えば、後期に発現された転写因子、例えば、発現されたG8R、A1L、A2L、H5R(VLTF−1、−2、−3、−4、P3、VLTF−X)オープンリーディングフレームを有するポックスウイルスベクター、例えば、MVA組換え体(またはその相同体、例えば、ワクシニア以外のようなポックスウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン−バー、アデノウイルス、プラスミドまたは裸DNA等のような別のベクター系からのもの)を提供する。
【0057】
本発明はさらに、挿入されたヌクレオチド配列、例えば、異種遺伝子のレベルおよび/または持続性を向上および/または増大させる手段として、ベクター、例えば、ワクシニアE3Lおよび/またはK3Lからの発現を有するポックスウイルスベクター、例えば、ALVACまたはTROVAC組換え体(またはその相同体、例えば、ワクシニア以外のようなポックスウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン−バー、アデノウイルス、プラスミドまたは裸DNA等のような別のベクター系からのもの:PKR活性化による翻訳ダウン調節の細胞抗ウイルス応答を克服するウイルス機構の前出の議論を留意のこと)を提供する。
【0058】
さらに、本発明は、挿入されたヌクレオチド配列、例えば、異種遺伝子のレベルおよび/または持続性を向上および/または増大させる手段として、初期に発現された転写因子、例えば、初期に発現されたH4Lオープンリーディングフレーム(またはその相同体)および/または初期に発現された転写因子、例えば、発現されたG8R、A1L、A2L、H5R(VLTR−1、−2、−3、−4、P3、VLTR−X)(またはその相同体)、例えば、後期に不稔(中間に不稔を含む)、例えば、MVA組換え体、およびワクシニアE3Lおよび/またはK3L(またはその相同体)からの発現を有するベクター、例えば、ポックスウイルスベクター、例えば、NYVAC、ALVACまたはTROVAC組換え体を提供する。
【0059】
以下の実施例に示したように、前記K3L/E3L因子を含有するALVAC−HIV組換え体vCP1452は、vCP1433またはvCP300と比較して、ヒトの細胞に向上した発現を有した。実際に、向上した発現が、ヒトおよびイヌの細胞中のE3L/K3L翻訳因子に観察される。
【0060】
E3L/K3Lのような翻訳因子により向上した発現は、細胞の種類に依存しているかもしれない。例えば、E3L/K3Lにより向上した発現は、ヒトおよびイヌの細胞中に観察されるけれども、マウスおよびネコの細胞中には観察されない。この開示および従来技術の知識から、当業者は、不必要な実験を行わずに、特定の細胞の種類に使用するのに適した翻訳因子を選択することができる。例えば、当業者には細胞間の差が分かることは言うまでもない。したがって、翻訳因子は、向上した発現が観察される細胞中で発現される、例えば、使用する翻訳因子は細胞に関することが好ましい。
【0061】
さらに、マウスの予備免疫原性研究により、E3L/K3L翻訳因子により向上した免疫原性の証拠は示されていない。このことは、マウス細胞中で向上した発現が観察されないことに対応している。したがって、この開示および従来技術の知識から、当業者は、不必要な実験を行わずに、所望の動物中で向上した免疫原性を提供する翻訳因子を提供することができる。向上した発現が特定の翻訳因子により特定の細胞系統中に、例えば、ヒトまたはイヌの細胞中のE3L/K3L中にインビトロで観察された場合には、当業者は、前記細胞がその特定の翻訳因子により由来された動物(ヒトを含む)中にインビボで向上した免疫原性、例えば、前記E3L/K3L翻訳因子からのヒトおよびイヌ中の向上した免疫原性を予測することができる。
【0062】
さらに、マウス細胞において、ALVAC発現の制限因子が転写レベルにある。したがって、適切な転写因子を使用することにより、マウス系において向上した発現を観察できないことを克服することができる。それゆえ、細胞の起源は、ベクターの性質、例えば、ベクターの表現型であるように、本発明のインビトロまたはインビボ用途における因子であるかもしれない(H4データを留意のこと)。しかし、細胞およびベクター表現型並びに因子および異種および/または外因性DNAからの発現の時間の適切な選択は、不必要な実験の必要なく、この開示および従来技術の知識から、当業者の範囲に含まれる。
【0063】
また、以下の実施例は、NYVAC組換え体cVP1380が、vP994と比較して向上した発現レベルを有することを示している。おそらく、vP1380中の向上したレベルの一部は、vP1380中の発現に含まれる転写および翻訳が向上しているように、E3Lのようなウイルス特異的産物からの向上した転写および発現によるものであろう。ベクターがより大きいレベルの発現およびより持続性の高いレベルの発現を得る本発明によれば、外因性DNAから、vP1380中でより持続性の高いレベルの発現が多くある。
【0064】
vP994よりもマウス中でより免疫原性であるvP1380により示されるように、マウス系中の向上した発現プロフィール(profile)が、マウス中の向上した免疫原性を提供した。向上プロフィールがここに記載した不稔初期NYVAC組換え体中の制限初期細胞内に見られたけれども、このプロフィールは、生産的複製のあった細胞、例えば、VEROまたはCEFには観察されなかった。これは、前記因子および異種DNAが実質的に同時に発現されることが好ましいかもしれず、すなわち、好ましくは、実質的に同一の時期または段階で共発現が行われ、発現の時間、例えば、初期、後期、初期および後期が、前記ベクターの表現型(例えば、初期に不稔、後期に不稔)と合わせられるべきである、すなわち、ウイルス複製が損なわれていない系(許容系)、または発現がベクターの表現型に合わせられていないときに複製が中止される系は最適発現を得られないかもしれないことを示唆している。したがって、ALVACまたはNYVACのような初期に不稔の系において、好ましくは、外因性DNAおよび転写または翻訳もしくは転写および翻訳因子を初期に発現し、後期に不稔の系においては、好ましくは、外因性DNAおよび転写または翻訳もしくは転写および翻訳因子を後期または初期および後期に発現する(初期のみの発現は、許容系における発現と似ているかもしれない、すなわち、最適な発現が必ずしも得られないかもしれない)。
【0065】
ベクターまたは組換え体を産生する方法は、米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、同第5,174,993号、同第5,505,941号、同第5,338,683号、同第5,494,807号、および同第4,733,848号、国際特許公開第WO95/30018号、Paoletti, "applications of pox virus vectors to vaccination: An update," PNAS USA 93:11349-11353, October 1996, Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93:11341-11348, October 1996, Smith et al., 米国特許第4,745,051号(recombinant baculovirus), Richardson, C.Dl.(Eiditor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovivurs Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.), Smith et al., "Production of Huma Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector," Molecular and Cellular Biology, Dec., 1983, Vol.3, No.12, p.2156-2165; Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia Coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector," Molecular and Cellular Biology Mar. 1984, Vol.4, No.3, p.399-406; ヨーロッパ特許公開第370573号、1986年10月16日に出願された米国特許出願第920197号、ヨーロ
ッパ特許公開第265785号、米国特許第4,769,331号(recombinant herpesvirus), Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 94:11307-11312, October 1996, Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimantal brain tumors," PNAS USA 93:11313-11318, October 1996, Robertson et al., "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes," PNSA USA 93:11334-11340, October 1996, Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93:11371-11377, October 1996, Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991; 米国特許第5,591,439号、同第5,552,143号, Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol.3) p.237-52, 1993, Ballay et al. EMBO Journal, vol.4, p.3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990, Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 429-434, 国際特許公開第WO91/11525号, Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561, Science, 259:1745-49, 1993 and McClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease," PNAS USA 93:11414-11420, October 1996, および特にDNA発現ベクターに関する米国特許第5,591,639号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号に開示されている方法またはその同等物によるものであっても差し支えない。また、アデノウイルスベクターを含むベクターに関する、米国特許出願第08/675,566号および同第08/675,556号も参照のこと。
【0066】
本発明のベクター中に挿入された核酸分子、例えば、異種遺伝子に関して、本発明のベクター中の異種または外因性核酸分子、例えば、DNAは、好ましくは、関心のあるエピトープ、生体応答調整物質、成長因子、認識配列、治療遺伝子または融合タンパク質を含む発現産物をコードする。これらの用語に関しては、以下の議論、並びに広くKendrew, THE ENCYCLOPEDIA OF MOLECULAR BIOLOGY (Blackwell Science Ltd., 1995) および Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1982を参照のこと。
【0067】
関心のあるエピトープは、例えば、獣医学またはヒトの関心のある病原または毒素からの、抗原または免疫原またはその免疫学的活性断片の免疫学的関連領域である。
【0068】
関心のあるエピトープは、病原または毒素の抗原から、もしくは、前記病原に関する応答を誘発する別の抗原または毒素から、もしくは、例えば:麻疹ウイルス属抗原、例えば、HAまたはFのようなイヌジステンパーウイルスまたは麻疹または牛疫抗原;狂犬病糖タンパク質、例えば、狂犬病糖タンパク質G;鳥類インフルエンザ抗原、例えば、ヌデオタンパク質(nudeoprotein:NP)のようなニワトリ/ペンシルバニア/1/83インフルエンザ抗原、シチメンチョウインフルエンザHA;ウシ白血病ウイルス抗原、例えば、gp51、30エンベロープ;ニューカッスル病ウイルス(NDV)抗原、例えば、HNまたはF;ネコ白血病ウイルス抗原(FeLV)、例えば、FeLVエンベロープタンパク質;RAV−1;感染性気管支炎ウイルスのマトリクスおよび/またはプレプロマー(preplomer);ヘルペスウイルス糖タンパク質、例えば、ネコヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス、HSV、マレック病ウイルス、またはサイトメガロウイルスからの糖タンパク質;フラビウイルス抗原、例えば、日本脳炎ウイルス(JEV)抗原、黄熱病抗原、またはデング熱ウイルス抗原;マラリア(プラスモディウム)抗原、免疫不全ウイルス抗原、例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗原またはサル免疫不全ウイルス(SIV)抗原またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原;パルボウイルス抗原、例えば、イヌパルボウイルス、ウマインフルエンザ抗原;ポックスウイルス抗原、例えば、エクトロメリア抗原、カナリアポックスウイルス抗原または鶏痘ウイルス抗原;または感染性包性病ウイルス抗原、例えば、VP2、VP3、VP4のような、前記病原に関する応答を誘発する別の抗原または毒素から調製することができる。
【0069】
関心のあるエピトープは、ヒトの病原または毒素の抗原から、または該病原に関する応答を誘発する別の抗原または毒素、または、例えば:麻疹ウイルス抗原、例えば、HAまたはFのような麻疹ウイルス抗原;狂犬病糖タンパク質、例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G;インフルエンザ抗原、例えば、インフルエンザウイルスHAまたはN;ヘルペスウイルス抗原、例えば、単純性疱疹ウイルス(HSV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、エプスタイン−バー;フラビウイルス抗原、JEV、黄熱病ウイルスまたはデング熱ウイルス抗原;肝炎ウイルス抗原、例えば、HBsAg;免疫不全ウイルス抗原、例えば、gp120、gp160のようなHIV抗原;ハンターン(Hantaan)ウイルス抗原;C.tetani抗原;おたふくかぜ抗原;肺炎球菌抗原、例えば、PspA;ボレリア属抗原、例えば、ボレリアブルグドルフェリ、ボレリアアフゼリおよびボレリアガリニイのようなライム病に関連するボレリア属のOspA、OspB、OspC;水痘(水痘−帯状疱疹)抗原;またはプラスモディウム抗原のような前記病原に関する応答を誘発する別の抗原または毒素からのものであっても差し支えない。
【0070】
もちろん、上述した列記は、前記関心のあるエピトープはどのような獣医学またはヒトの病原の抗原から由来していても差し支えないので、典型的な例を意図したものである。さらに、関心のあるエピトープを得るために、(本発明が少なくとも一つの抗原をコードする関心のある前記外因性または異種核酸分子を包含するように)どのような獣医学またはヒトの病原の抗原を発現することができる。
【0071】
前記異種DNAは成長因子または治療遺伝子であっても差し支えないので、本発明の組換え体を遺伝子療法に使用することができる。遺伝子療法は、遺伝情報の伝達を含む。遺伝子療法および免疫療法に関して、米国特許第5,252,479号およびその中に引用された文献、並びに国際特許公開第WO94/16716号および1994年1月19日に出願され、許可された米国特許出願第08/184,009号およびその中に引用された文献を参照のこと。これらの文献をここに引用する。前記成長因子または治療遺伝子は、例えば、闘病(disease-fighting)タンパク質、癌を治療する分子、腫瘍抑制遺伝子、サイトカイン(cytokines)、腫瘍関連抗原、またはインターフェロンをコードすることができる。そして、この成長因子または治療遺伝子は、例えば、アルファグロブリン、ベータグロブリン、ガンマグロブリンをコードする遺伝子、顆粒細胞マクロファージ−コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒細胞コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、肥満細胞成長因子、腫瘍抑制遺伝子p53、網膜芽細胞腫、インターフェロン、メラノーマ関連抗原またはB7からなる群より選択することができる。
【0072】
本発明はさらに、本発明のベクターおよび許容されるキャリヤまたは希釈剤(例えば、獣医学的に許容される、または薬剤的に許容される)を含有する免疫原性、または免疫またはワクチン組成物に関するものである。前記ベクター(またはその発現産物)を含有する免疫組成物は、局所的または全身の免疫応答を誘発する。この応答は、必要ではないが、防御的であり得る。前記本発明の組換え体(またはその発現産物)を含有する免疫原性組成物は、同様に、必要ではないが、防御的であり得る局所的または全身の免疫応答を誘発する。ワクチン組成物は、局所的または全身の防御応答を誘発する。したがって、「免疫組成物」および「免疫原性組成物」という用語は、(これら二つの用語は防御組成物であり得るので)「ワクチン組成物」を含む。
【0073】
したがって、本発明は、宿主脊椎動物に、本発明の組換えウイルスまたはベクターおよび許容されるキャリヤまたは希釈剤を含む免疫原性、免疫またはワクチン組成物を投与することを含む、該動物中に免疫応答を誘発する方法も提供する。この明細書の目的に関して、「動物」は、ヒトを除く全ての脊椎動物を含み、「脊椎動物」は、動物(ここで用いられているような「動物」)およびヒトを含む全ての脊椎動物を含む。もちろん、「動物」の部分集合は「哺乳類」であり、これは、この明細書の目的に関して、ヒトを除いた全ての哺乳類を含む。
【0074】
ヒトへの投与に関して、本発明の組換え体またはベクターは、生産的複製を必要とせずに、発現の利点を提供することができる。したがって、このことにより、免疫無防備状態の個体に本発明の組換え体を使用する能力が提供され、そして、本発明の組換え体と接触した作業者に対してあるレベルの安全性が提供される。したがって、本発明は、宿主に組換えウイルスまたはベクターを投与または接種することにより、タンパク質を増幅または発現させ、それによって、その宿主が前記組換えウイルスまたはベクターの自然の宿主ではなく、生産的複製の必要のない発現がある方法を包含する。
【0075】
前記外因性または異種DNA(またはワクチンウイルスに対して異種のDNA)は、列記した、上述した関心のあるエピトープのいずれをコードするDNAであっても差し支えない。この点に関して、ボレリア属DNAについては、米国特許第5,523,089号、国際特許公開第WO93/08306号、国際特許出願第PCT/US/08697号、Molecular Microbiology (1989), 3(4), 479-486, および国際特許公開第WO93/04175号、並びに国際特許公開第WO96/06165号を参照のこと。これらをここに引用する。
【0076】
関心のある肺炎球菌エピトープに関しては、Briles等の国際特許公開第WO92/14488号を、腫瘍ウイルスに関しては、Molecular Biology of Tumor Viruses, RNA TUMOR VIRUSES (Second Edition, Edited by Weiss et al., Cold Spring Harbor Laboratory 1982) (e.g., page 44 et seq. - Taxonomy of Retroviruses)を参照のこと。これらをここに引用する。
【0077】
関心のあるエピトープをコードするDNAに関しては、ここに引用した文献、前出と後出の引用文献:例えば、米国特許第5,174,993号および同第5,505,941号(例えば、組換えアビポックスウイルス、ワクシニアウイルス;狂犬病糖タンパク質(G)、遺伝子、シチメンチョウインフルエンザ血球凝集素遺伝子、gp51、ウシ白血病ウイルスの30エンベロープ遺伝子、ニューカッスル病ウイルス(NDV)抗原、FelVエンベロープ遺伝子、RAV−1 env遺伝子、NP(ニワトリ/ペンシルバニア/1/83インフルエンザウイルスのヌデオタンパク質遺伝子)、感染性気管支炎ウイルスのマトリクスおよびプレプロマー;HSV gD)、米国特許第5,338,683号(例えば、組換えワクシニアウイルス、アビポックスウイルス;特にヘルペスウイルス糖タンパク質をコードするDNA)、米国特許第5,494,807号(例えば、組換えワクシニア、アビポックス;特に、狂犬病、B型肝炎、JEV、YF、デング熱、麻疹、仮性狂犬病、エプスタイン−バー、HSV、HIV、SIV、EHV、BHV、HCMV、イヌパルボウイルス、ウマインフルエンザ、FeLV、FHV、ハンターン、C.テタニ(tetani)、鳥類インフルエンザ、おたふくかぜ、NDVをコードする外因性DNA)、米国特許第5,503,834号(例えば、組換えワクシニア、アビポックス、麻疹ウイルス属、例えば、特に、麻疹F、血球凝集素)、米国特許第4,722,848号(例えば、組換えワクシニアウイルス;特に、HSV tk、HSV糖タンパク質、例えば、gB、gD、インフルエンザHA、B型肝炎、例えば、HBsAg)、イギリス国特許第2269820B号および米国特許第5,514,375号(組換えポックスウイルス;フラビウイルス構造タンパク質);国際特許公開第WO92/22641号および米国特許出願第08/417,210号および同第08/372,664号(例えば、組換えポックスウイルス;特に、免疫不全ウイルス、HTLV)、国際特許公開第WO93/03145号および許可された米国特許出願第08/204,729号および同第08/303,124号(例えば、組換えポックスウイルス;特に、IBDV)、国際特許公開第WO94/16716号および1994年1月19日に出願された、許可された米国特許出願第08/184,009号(例えば、組換えポックスウイルス;特に、サイトカインおよび/または腫瘍関連抗原)、米国特許出願第08/469,969号(狂犬病組合せ組成物)、米国特許出願第08/746,668号(レンチウイルス、レトロウイルスおよび/または、特に、ネコ免疫不全ウイルスを含む、免疫不全ウイルス)、米国特許第5,529,780号および許可された米国特許出願第08/413,118号(イヌヘルペスウイルス)、米国特許出願第08/471,025号(ネコカリチウイルス)、国際特許公開第WO96/3941号および米国特許出願第08/658,665号(サイトメガロウイルス)、および国際特許出願第PCT/US94/06652号(マラリア原虫の生活周期の各々の段階からのようなプラスモディウム抗原)を参照のこと。
【0078】
ワクチンまたは免疫組成物に使用する抗原に関しては、ここに引用した文献に述べられた文献および議論を参照のこと(例えば、前出の文献を参照のこと)。また、Stedman's Medical Dictionary (24th edition, 1982, e.g., definition of vaccine)も参照のこと(ワクチン配合物に使用される抗原のリストに関して、そのような抗原またはそれらの抗原からの関心のあるエピトープは、本発明の組換えウイルスまたはベクターの発現産物として、または本発明の組換えウイルスまたはベクターもしくはそれからの発現産物を含有する多価組成物中のいずれかで本発明に使用することができる)。
【0079】
関心のあるエピトープに関して、当業者は、不必要な実験を行わずに、アミノ酸およびペプチドまたはポリペプチドの対応するDNA配列の知識から、並びに特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷等)およびコードン辞書から、ペプチドまたはポリペプチドのエピトープまたは免疫優性領域、それゆえ、その暗号DNAを決定することができる。
【0080】
タンパク質のどの部分を免疫組成物に使用するかを決定する一般的な方法は、関心のある抗原のサイズおよび配列に焦点を当てている。「一般的に、大きいタンパク質は、それらがより多くの潜在的な決定基を有しているので、小さなものよりも良好な抗原である。抗原がより異種であるほど、すなわち、耐性を誘発する自己形状と似ていないほど、免疫応答を引き起こす上でより効果的である。」Ivan Roitt, Essential Immunology, 1988。
【0081】
サイズに関して、当業者は、ウイルスベクター中に挿入すべきDNA配列によりコードされるタンパク質のサイズを最大化させることができる(そのベクターのパッケージング制限を心に留めておくこと)。発現されるタンパク質のサイズを最大にしながら、挿入されるDNAを最小にするために、そのDNA配列は、イントロン(転写されるが、その結果として一次RNAトランスクリプトから切除される遺伝子の領域)を除外することができる。
【0082】
最小で、前記DNA配列は、少なくとも8または9のアミン酸長のペプチドを暗号化することができる。これは、CD8+T細胞応答(ウイルス感染細胞または癌細胞を認識する)を刺激するためにペプチドが必要とする最小長さである。13から25までのアミノ酸の最小ペプチド長さは、CD4+T細胞応答(病原を飲み込んだ細胞を示す特定の抗原認識する)を刺激するのに有用である。前出のKendrewを参照のこと。しかしながら、これらは最小長さであるので、これらのペプチドは、免疫応答、すなわち、抗体またはT細胞応答を産生する傾向にあり、しかし、防御応答(ワクチン組成物からのような)に関しては、より長いペプチドが好ましい。
【0083】
前記配列に関して、DNA配列は、好ましくは、少なくとも、抗体応答またはT細胞応答を産生するペプチドの領域をコードする。TおよびB細胞エピトープを決定する方法の一つには、エピトープ遺伝子図作製がある。関心のあるタンパク質を、タンパク質分解酵素でオーバーラップペプチドに断片化する。次いで、個々のペプチドを、自然のタンパク質により誘発される抗体に結合する能力もしくはT細胞またはB細胞の活性化を誘発する能力について試験する。この手法は、前記T細胞が、MHC分子と複合体を形成した短い線状ペプチドを認識するので、T細胞エピトープの遺伝地図作製の際に特に有用であった。この方法は、B細胞エピトープはしばしば線状アミノ酸ではなくむしろ折り畳まれた三次元タンパク質の三次構造から生じるので、B細胞エピトープを決定するのにはそれほど効果的ではない。Janis Kuby, Immunology, (1992) pp.79-80。
【0084】
関心のあるエピトープを決定する別の方法は、親水性のタンパク質の領域を選択することである。親水性残基は、しばしば、そのタンパク質の表面上にあり、したがって、しばしば、抗体に接触可能なタンパク質の領域である。Janis Kuby, Immunology, (1992) p.81。
【0085】
関心のあるエピトープを決定するさらに別の方法は、抗原(全長)−抗体複合体のX線結晶構造解析を行うことである。Janis Kuby, Immunology, (1992) p.80。
【0086】
T細胞応答を生じることのできる関心のあるエピトープを選択するさらに別の方法は、前記タンパク質配列から、MHC分子に結合しやすいことが知られているペプチド配列である潜在的なHLAアンカー結合モチーフを同定することである。
【0087】
T細胞応答を生じる、推定上の関心のあるエピトープであるペプチドは、MHC複合体中に表されるべきである。そのペプチドは、好ましくは、前記MHC分子に結合するための適切なアンカーモチーフを含有し、十分に高い結合力で結合して免疫応答を生じるべきである。考えられる要因としては:免疫することが予測される患者(脊椎動物、動物またはヒト)のHLA種類、適切なアンカーモチーフの存在および他の生命細胞中のペプチド配列の発生が挙げられる。
【0088】
免疫応答は、一般的に、以下のように生じる:T細胞が、タンパク質を、そのタンパク質がより小さなペプチドに開裂され、別の細胞の表面上に位置する「主要組織適合性複合体MHC」と呼ばれる複合インビボに提示されたときのみ認識する。MHC複合体には二つのクラス−クラスIおよびクラスIIがあり、各々のクラスは、多くの異なる対立遺伝子から構成されている。異なる患者は、異なる種類のMHC複合体対立遺伝子を有しており、それらは、「異なるHLA型」を有すると言われている。
【0089】
クラスIのMHC複合体は、実質的に全ての細胞上に見つかり、その細胞の内側で産生されたタンパク質からのペプチドを提示する。したがって、クラスIのMHC複合体は、ウイルスに感染したときに、または癌遺伝子の発現の結果としてガン細胞となったときにその細胞を殺すのに有用である。それら表面にCD8と呼ばれるタンパク質を有するT細胞は、T細胞受容体を介してMHCクラスI/ペプチド複合体に特異的に結合する。これにより、細胞溶解エフェクター活性が生じる。
【0090】
クラスIIのMHC複合体は、抗原提示細胞上のみに見つかり、それら抗原提示細胞によりエンドサイトーシスが行われた循環病原からのペプチドを提示するのに用いられる。CD4と呼ばれるタンパク質を有するT細胞は、T細胞受容体を介してMHCクラスII/ペプチド複合体に結合する。これにより、免疫応答を刺激する特定のサイトカインが合成される。
【0091】
あるタンパク質が、T細胞応答を刺激する関心のあるエピトープであるかを決定する上でのガイドラインとして、ペプチド長さが挙げられる。そのペプチドは、クラスIのMHC複合体中に適合するには、少なくとも8または9のアミノ酸長さ、クラスIIのMHC複合体中に適合するには少なくとも13-25のアミノ酸長さであるべきである。この長さは、前記ペプチドが前記MHC複合体に結合するのに最小である。細胞が、発現されたペプチドを切断するかもしれないので、それらペプチドが、これらの長さよりも長いことが好ましい。前記ペプチドは、そのペプチドを免疫応答を生じるのに十分に高い特異性で様々なクラスIまたはクラスIIの分子に結合させることのできる適切なアンカーモチーフを含有すべきである(Bocchia, M. et al, Specific Binding of Leukemia Oncogene Fusion Protein Peptides to HLA Class I Molecules, Blood 85:2680-2684; Englehard, VH, Structure of peptides associated with class I and class II MHC molecules Ann. Rev. Immunol. 12:181 (1994))。これは、不必要な実験を行わずに、関心のあるタンパク質の配列を、MHC分子に関連するペプチドの公表されている構造と比較することにより行うことができる。T細胞受容体により認識されるタンパク質エピトープは、そのタンパク質分子の酵素分解により生じたペプチドであり、クラスIまたはクラスIIのMHC分子に関連する細胞表面上に提示される。
【0092】
さらに、当業者は、そのタンパク質配列をタンパク質データベースに列記された配列と比較することにより、関心のあるエピトープを確認することができる。
【0093】
さらにまた、別の方法として、単に、関心のあるタンパク質の一部を産生または発現し、関心のあるタンパク質のその部分に対する単クローン性抗体を産生し、それらの抗体が、そのタンパク質が由来された病原のインビトロ増殖を阻害するか否かを確認することがある。当業者は、それに対する抗体がインビトロ増殖を阻害するか否かの分析のために関心のあるタンパク質の一部を産生または発現する、この開示および従来技術に述べられた他のガイドラインを用いても差し支えない。例えば、当業者は:タンパク質の8から9または13から25のアミノ酸長さ部分を選択する、親水性領域を選択する、抗原(全長)−抗体複合体のX線データから結合することが示された部分を選択する、他のタンパク質とは配列の異なる領域を選択する、潜在的なHLAアンカー結合モチーフを選択する、もしくはこれらの方法または従来技術で知られている他の方法の組合せにより、関心のあるタンパク質の一部を産生することができる。
【0094】
抗体により認識されるエピトープは、タンパク質の表面上に発現される。抗体応答を最も刺激しそうなタンパク質の領域を決定するために、当業者は、好ましくは、上述した一般的な方法、または従来技術で知られている他の遺伝地図作製方法を用いて、エピトープの遺伝地図を作製することができる。
【0095】
上述したことから分かるように、この開示および従来技術の知識から、不必要な実験を行わずに、当業者は、T細胞、B細胞および/または抗体応答を得るために、関心のあるエピトープのアミノ酸および対応するDNA配列を確認することができる。さらに、1991年5月28日に発行されたGefter等の米国特許第5,019,384号およびそれに引用された文献を参照のこと(特に、この特許の「関連する文献」のセクション、並びに「多数のエピトープが、関心のある様々な生物について定義されている。特に、中和抗体が関連するそれらのエピトープに関心が持たれている。そのようなエピトープが、関連する文献のセクションに引用された文献の多くに開示されている。」ことを開示しているこの特許の第13段落に留意する)。これらをここに引用する。
【0096】
生体応答調整物質に関して、1993年9月30日に発行されたWohlstadterの「選択方法」と題する国際特許公開第WO93/19170号およびそこに引用された文献を参照のこと。これらをここに引用する。
【0097】
例えば、生体応答調整物質は、生物活性を調整する。例えば、生体応答調整物質は、非NMDA興奮性アミノ酸に関連する、AMPA結合の結合性をアロステリック的に調節する高分子量タンパク質のような調整成分である(Kendrew、前出参照のこと)。本発明の組換え体は、そのような高分子量タンパク質を発現することができる。
【0098】
より一般的に、自然は、生体応答調整物質の多数の先例を提供している。活性の調整は、単純な存在/不在系、例えば、発現/分解系に対するアロステリック誘発された四次変化と同じくらい複雑で込み入った機構により行われるかもしれない。実際に、多くの生体分子の発現の抑制/活性は、それ自体、その活性が様々な機構により調整することのできる分子により媒介されている。
【0099】
73頁のNeidhardt等のPhysiology of the Bacterial Cell (Sinauer Associates Inc., Publishers, 1990)の表2には、細菌タンパク質に対する化学修飾が列記されている。その表に示されているように、ある修飾は適切なアセンブリ中に含まれ、他の修飾は含まれないが、いずれの場合においても、そのような修飾は、機能を調整することができる。その表から、他の細胞のタンパク質に関する類似の化学修飾を、不必要な実験を行わずに決定することができる。
【0100】
ある場合には、生体機能の修飾は、単に、分子の適切/不適切な局在により媒介されるかもしれない。分子は、それらが特定の位置を対象としている場合のみに、成長利点または欠点を提供するように機能するかもしれない。例えば、ある分子は、典型的に、ある細胞により、その分子の機能が、分解に関する酵素の分泌によってその細胞により最初に分解されるので、摂取されたり、使用されたりしないかもしれない。したがって、組換え体によって酵素が産生されることにより、細胞による分子の使用または摂取を調節することができる。同様に、その組換え体は、分子の摂取または使用に必要な前記酵素に結合する分子を発現し、それによって、同様にその摂取または吸収を調節することができる。
【0101】
信号ペプチドの開裂により行われるタンパク質を対象とする局在は、別の種類の修飾または調節である。この場合、前記組換え体により、特定のエンドプロテアーゼ触媒活性を発現することができる。
【0102】
機能の修飾が行われるかもしれない機構の他の例は、RNAウイルスポリタンパク質、アロステリック効果、および一般的な共有結合と非共有結合の立体障害である。HIVは、非機能的ポリタンパク質構築物を発現するRNAウイルスのよく研究された例である。HIVにおいて、「gag、pol、およびenvのポリタンパク質は、それぞれ、ウイルス構造タンパク質p17、p24、およびp15−−逆転写酵素およびインテグラーゼ−−並びに二つのエンベロープタンパク質gp41およびgp120を産生するように処理される」(Kohl et al., PNSA USA 85:4686-90 (1988))。前記ポリタンパク質の適切な開裂は、ウイルスの複製にとって必須であり、不活性突然変異体HIVプロテアーゼを担持するウイルス粒子は非感染性である(同著者)。これは、それらの活性をダウン調節するタンパク質の融合の別の例である。したがって、あるタンパク質の自然の発現を阻害または向上させるために(干渉または開裂を向上させることにより)、エンドプロテアーゼと干渉する、またはエンドプロテアーゼを提供する分子を発現する組換えウイルスを構築することができる。
【0103】
酵素の機能的有用さもまた、反応を触媒できるそれらの能力を変更することにより調節されるかもしれない。修飾分子の例としては、チモーゲン、多重サブユニット機能的複合体の形成/分解、RNAウイルスポリタンパク質鎖、アロステリック相互作用、一般的な立体障害(共有結合および非共有結合)並びにリン酸化、メチル化、アセチル化、アデニル化、およびウリデニル化のような様々な化学修飾が挙げられる(前出のNeidhardtの315頁の表1および73頁の表2を参照のこと)。
【0104】
チモーゲンは、酵素活性の調節を行う天然に生じるタンパク質融合の例である。チモーゲンは、制限されたタンパク質分解により活性状態に転化されるタンパク質の一つのクラスである。Reich, Proteases and Biological Control, Vol.2 (1975) at page 54の表3を参照のこと。自然は、トリプシンのようなある酵素の活性をダウン調節する機構を、アミノ末端に追加の「リーダー」ペプチド配列を有するこれら酵素で発現することにより発生させている。余分なペプチドにより、その酵素は、不活性チモーゲン状態にある。この配列が開裂されることにより、このチモーゲンは、酵素活性状態に転化される。このチモーゲンの全体の反応速度は、「対応する酵素のものの約10−10倍も遅い」(前出のReichの54頁の表3を参照のこと)。
【0105】
したがって、単に、その末端の一つにペプチド配列を追加することにより、ある酵素の機能をダウン調節することができる。例えば、この特性の知識により、組換え体は、一方または両方の末端に追加のアミノ酸を含有するペプチド配列を発現することができる。
【0106】
多重サブユニットの酵素の形成または分解は、調節が行われるかもしれない別の方法である。異なる機構が、多重サブユニット酵素の形成または分解の際に活性の調節の原因であるかもしれない。
【0107】
したがって、適切な特定のサブユニット相互作用を立体的に妨げることにより、その酵素活性がダウン調節される。したがって、本発明の組換え体は、生体機能を調節するように、天然に生じる酵素または酵素複合体を立体的に妨げる分子を発現することができる。
【0108】
ある酵素阻害因子は、共有結合立体障害または修飾により、機能的ダウン調節の良好な例を与える。活性部位において触媒的に重要なアミノ酸で酵素の活性部位に不可逆的に結合する自殺(suicide)基質は、酵素活性部位を立体的に遮断する共有結合修飾の例である。自殺基質の例は、キモトリプシンのTPCKである(Fritsch, Enzyme Structure and Mechanism, 2nd ed; Freeman & Co. Publishers, 1984)。この種の修飾は、適切な自殺基質を発現し、それによって、生体応答を調節する組換え体により機能である(例えば、酵素活性を制限することにより)。
【0109】
多くの抑制因子分子を含む非共有結合立体障害の例もある。本発明の組換え体は、立体的に妨げることができ、したがって、特定のDNA−RNAポリメラーゼ相互作用を妨げることによりDNA配列の機能をダウン調節することのできる抑制因子分子を発現することができる。
【0110】
アロステリック効果は、ある生体系で修飾が行われる別の方法である。アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼは、よく特徴付けられたアロステリック酵素である。調節領域は、触媒サブユニットと相互作用する。CTPまたはUTPに結合することにより、その調節サブユニットは、ホロ酵素内の四次構造変化を誘発して、触媒活性のダウン調節を行うことができる。これとは対照的に、ATPが調節サブユニットに結合すると、触媒活性のアップ調節を行うことができる(Fritsch、前出)。本発明の方法を使用することにより、結合し、調節の四次または三次変化を生じることのできる分子を発現することができる。
【0111】
さらに、様々な化学修飾、例えば、リン酸化、メチル化、アセチル化、アデニル化、およびウリデニル化が、機能を調節するように行われるかもしれない。これらのような修飾が、多くの重要な細胞成分の調節において重要な役割を果たすことが知られている。前出のNeidhardtの73頁の表2には、そのような修飾を受ける異なる細菌酵素が列記されている。そのリストから、当業者は、同一または同様の修飾を受ける他の系の他の酵素を不必要な実験を行わずに確認することができる。さらに、ヒトの病気に関連する多くのタンパク質もそのような化学修飾を受ける。例えば、多くの癌遺伝子が、リン酸化により修飾される、またはリン酸化または脱リン酸化により他のタンパク質を修飾することが分かった。したがって、本発明により与えられる、機能を調節または変更できる調整物質、例えば、リン酸化を発現する能力は重要である。
【0112】
上述したことから、当業者は本発明を用いて、不必要な実験を行わずに、生体応答調整物質を発現することができる。
【0113】
本発明の組換え体による融合タンパク質の発現に関して、Sambrook, Fritsch, Maniatis, Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL (2d Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) (especially Volume 3), およびKendrew、前出を参照のこと。これらをここに引用する。Sambrook等の教示は、この開示から、不必要な実験を行わずに、当業者が融合タンパク質を発現する組換え体またはベクターを産生するために適切な変更しても差し支えない。
【0114】
遺伝子療法および免疫療法に関して、米国特許第4,690,915号および同第5,252,479号とそこに引用されている文献、並びに国際特許公開第WO94/16716号および1994年1月19日に出願された米国特許出願第08/184,009号とそこに引用された文献を参照のこと。これらをここに引用する。
【0115】
成長因子は、組織および機能の個体発生および維持の両方を制御する、多機能性の局所的に作用する細胞間信号ペプチドとして定義することができる(前出のKendrew、特に455頁以下を参照のこと)。
【0116】
この成長因子または治療遺伝子は、例えば、闘病(desease-fighting)タンパク質、癌を治療する分子、腫瘍抑制遺伝子、サイトカイン、腫瘍関連抗原、またはインターフェロンをコードすることができ;その成長因子または治療遺伝子は、例えば、アルファグロブリン、ベータグロブリン、ガンマグロブリンをコードする遺伝子、顆粒細胞マクロファージ−コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、インターロイキン(例えば、インターロイキン1から14、または1から11、もしくはそれらの組合せから選択されるインターロイキン)、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒細胞コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、肥満細胞成長因子、腫瘍抑制遺伝子p53、網膜芽細胞腫、インターフェロン、メラノーマ関連抗原またはB7からなる群より選択することができる。米国特許第5,252,479号には、遺伝療法のためにアデノウイルス系内で発現できるタンパク質のリストが提供されており、当業者にはその開示が分かる。国際特許公開第WO94/16716号および1994年1月19日に出願された許可された米国特許出願第08/184,009号は、サイトカインおよび腫瘍関連抗原の遺伝子並びに半ビボ方法を含む免疫療法の方法を提供するものであり、当業者には、その開示が分かる。
【0117】
したがって、当業者は、不必要な実験を行わずに、この開示および従来技術の知識から、成長因子または治療遺伝子を発現する組換え体またはベクターを産生し、その組換え体またはベクターを使用することができる。
【0118】
さらに、上述したことおよび従来技術の知識から、当業者が、関心のあるエピトープ、生体応答調整物質、成長因子、認識配列、治療遺伝子、または融合タンパク質を発現する本発明の組換え体またはベクターを構築する、もしくは、当業者がそのような組換え体またはベクターを使用するのには、不必要な実験は必要ない。
【0119】
本発明の組換え体またはベクターは、インビトロで遺伝子産物を発現するのに用いることができるので、タンパク質精製技術を本発明の実施に用いても差し支えなく、そのような技術は一般的に、以下を含む。
【0120】
手短に言うと、細胞を分裂させ、関心のあるタンパク質を水性「抽出物」中に放出する。細胞を崩壊させる方法は数多くあり、それらの方法は、比較的穏やかな条件から激しい条件にまで亘り、方法の選択は供給材料に依存する。動物組織は、非常に壊れやすい赤血球から、血管および他の平滑筋組織中に見られるような丈夫な膠原材料にまで及ぶ。細菌は、消化酵素または浸透圧衝撃により壊れることのあるかなり脆い微生物から、崩壊のために激しい機械的処理を必要とする、厚い細胞壁を有するより弾性力のある種までに及ぶ。
【0121】
穏やかな技術としては、細胞溶解、酵素消化、化学的可溶化、手動の均質化およびきざみ(または粉砕)が挙げられ;細胞崩壊の中位の技術としては、羽根均質化および研磨材料、すなわち、砂またはアルミナによる研磨が挙げられ;激しい技術としては、フレンチプレス、超音波、ビーズミルまたはManton-Gaulinの均質化が挙げられる。上述した技術の各々が従来技術で認識されており、出発材料、並びにこの中と従来技術の教示に基づいて、細胞崩壊の適切な方法を決定するには、当業者の知識の範囲内にある。
【0122】
細胞崩壊後に、不溶性材料を遠心分離して除くことにより、抽出物を調製する。この段階で、関心のあるタンパク質をできるだけ多く含有する抽出物が調製され、適切な場合には、微粒子およびほとんどの非タンパク質材料が除去されているので、精製方法を行ってもよい。
【0123】
様々な塩濃度での関心のあるタンパク質の溶解性を用いることによる沈殿、有機溶剤、高分子および他の材料による沈殿、親和性沈殿および選択的変性;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換、アフィニティー、イムノアフィニティーまたは色素−リガンドクロマトグラフィーを含むカラムクロマトグラフィー;イムノプレシピテーションおよびゲル濾過の使用、電気泳動法、限外濾過および等電点電気泳動法を含む、タンパク質精製の標準技術を用いて、関心のあるタンパク質をさらに精製してもよい。上述した方法の各々が当業者の知識に含まれ、上述したものと文献に概説した標準的方法論、並びに以下の実施例の教示を用いて、本発明の組換え体またはベクターの発現から関心のあるエピトープまたはタンパク質を精製するのに不必要な実験は必要ない。
【0124】
発現産物は抗原、免疫、または防御(ワクチン)応答を提供できるので、本発明はさらに、それからの産生物、すなわち、抗原およびその使用に関するものである。特に、前記発現産物は、それら産物の投与またはそれら産物を発現する組換え体またはベクターの投与により抗体を誘発することができる。その抗体は、単クローン性抗体であっても差し支えなく、抗体または発現産物は、キット、アッセイ、試験および結合を含む同等物に用いることができ、したがって、本発明は、これらの使用にも関する。さらに、本発明の組換え体またはベクターを用いて、DNAを複製することができるので、本発明は、ベクターとしての本発明の組換え体、および細胞をその組換え体に感染またはトランスフェクションさせ、そこからDNAを収穫することによりDNAを複製する方法に関するものである。得られたDNAは、プローブまたはプライマーとしてまたは増幅に用いることができる。
【0125】
本発明の組換え体またはベクターまたはそれからの発現産物、免疫、抗原またはワクチン組成物もしくは治療組成物のような本発明の組成物の投与方法は、非経口経路(皮内、筋肉内または皮下)によるものであっても差し支えない。そのような投与により、全身の免疫応答が可能となる。投与は、粘膜経路、例えば、経口、鼻、陰部等によるものであっても差し支えない。そのような投与により、局所的免疫応答が可能となる。
【0126】
より一般的に、本発明の抗原、免疫またはワクチン組成物または治療組成物は、薬剤、医学または獣医学の当業者によく知られた標準技術に従って調製することができる。そのような組成物は、特定の患者の品種または種属、年齢、性別、体重、および状態、並びに投与経路のような要因を考慮に入れて、医学または獣医学の当業者によく知られた技術により、所定の投与量で投与することができる。それら組成物は、単独で投与しても差し支えなく、もしくは本発明の他の組成物とともに、または他の免疫、抗原またはワクチンまたは治療組成物とともに、同時にまたは続いて投与しても差し支えない。そのような他の組成物は、精製された天然の抗原またはエピトープ、または本発明の組換え体またはベクターもしくは別のベクター系による発現からの精製された抗原またはエピトープを含み、上述した要因を考慮に入れて投与される。
【0127】
本発明の組成物の例としては、懸濁液、シロップまたはエリキシルのような、開口部、例えば、口、鼻、肛門、陰部、例えば、膣等の投与のための液体製剤;無菌懸濁液または乳濁剤のような、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈投与(例えば、注射)のための製剤が挙げられる。そのような組成物において、前記組換え体またはベクターは、無菌水、生理食塩水、グルコース等のような、適切なキャリヤ、希釈剤、または賦形剤との混合物内にあってよい。
【0128】
抗原、免疫またはワクチン組成物は、典型的に、アジュバントおよび所望の応答を誘発する量の前記組換え体またはベクターもしくは発現産物を含有することができる。ヒトを対象とする用途において、ミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)が典型的なアジュバントである。サポニンとその精製成分であるQuil A、フロイント完全アジュバントおよび研究および獣医学用途で用いられている他のアジュバントは、ヒト用のワクチンへの潜在的な使用を制限する毒性を有している。ムラミルジペプチドのような化学的に定義された製剤、モノホスホリルリピドA、Goodman-Snitkoff et al. J. Immunol. 147:410-415 (1991)により記載され、ここに引用されるもののようなリン脂質、Miller et al., J. Exp. Med. 176:1739-1744 (1992)により記載され、ここに引用されるようなプロテオリポソーム内の前記タンパク質の被包、およびNovasome(商標)リピド小胞(ニューハンプシャー州、ナシュアのMicro Vescular Systems, Inc.,)のようなリピド小胞中の前記タンパク質の被包を用いても差し支えない。
【0129】
前記組成物は、非経口(すなわち、筋肉内、皮内または皮下)投与または開口部投与、例えば、舌下(すなわち、口)、胃内、口内、肛門内、膣内を含む粘膜等の投与による免疫のために一回の供与量の形態で包装してもよい。再度、効果的な供与量および用途経路は、前記組成物の性質により、前記発現産物の性質により、前記組換え体が直接用いられる場合の発現レベルにより、そして、宿主の品種または種属、年齢、性別、体重、状態および性質のような既知の要因、並びにLD50および知られている他のスクリーニング方法により決定され、不必要な実験を必要としない。発現産物の供与量は、数マイクログラムから数百マイクログラム、例えば、5μgから500μgまでに亘っても差し支えない。本発明の組換え体またはベクターは、これらの供与量レベルでの発現を達成するのに適した量で投与することができる。本発明のウイルス組換え体は、約103.5pfuの量で投与することができる。そして、本発明のウイルス組換え体は、好ましくは、少なくともこの量で;より好ましくは、約10pfuから約10pfuまでの量で投与される。しかしながら、約10pfuから約1010pfuまで、例えば、約10pfuから約10pfuまで、例えば、約10pfuから約10pfuまでのようなより高い供与量を用いても差し支えない。プラスミドまたは裸DNA組成物中の本発明のプラスミドまたは裸DNAの適切な量は、1μgから100mg、好ましくは、0.1mgから10mgまでであるが、0.1mgから2mgまでまたは好ましくは1-10μgのようなより低いレベルを用いてもよい。他の適切なキャリヤまたは希釈剤は、防腐剤の有無にかかわらず、水または緩衝生理食塩水であっても差し支えない。前記発現産物または組換え体もしくはベクターは、投与時に再懸濁のために凍結乾燥されていてもよく、または溶液状態であっても差し支えない。
【0130】
前記キャリヤは、高分子により放出が遅延される系であってもよい。合成高分子は、放出の制御された組成物を配合するのに特に有用である。この初期の例は、Kreuter, J., Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacology, M. Donbrow (Ed). CRC Press, P.125-148に報告されている、1ミクロン未満の直径を有する球体中にメタクリル酸メチルを重合させて、ナノ粒子を形成することであった。
【0131】
微小被包は、微小被包された薬剤の注射に適用されて、放出を制御してきた。多数の要因が、微小被包のための特定の高分子の選択に寄与する。高分子合成および微小被包方法の再現性、微小被包材料および方法のコスト、毒性学の概要、変動性の放出運動学の必要条件および前記高分子と抗原との物理化学的相溶性が、考慮しなければならない全ての要因である。有用な高分子の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオルトエステルおよびポリアミド、特に、生分解性のものが挙げられる。
【0132】
薬剤用の、ごく最近には、抗原用のキャリヤとして、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)が頻繁に選択される。これは、受食性(erodible)縫合、骨板および毒性を示していない他の一時的人工装具における医学用途に長い歴史のある生分解性ポリエステルである。ペプチドおよび抗原を含む様々な薬剤がPLGAマイクロカプセル中に配合されてきた。例えば、Eldridge, J.H., et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 1989, 146:59-66により概説されているように、抗原の制御された放出へのPLGAの適用について多数のデータが蓄積されている。直径が1から10ミクロンまでのPLGA微小球体中への抗原の捕捉には、口から投与を行うときに著しいアジュバント効果があることが示された。このPLGA微小被包方法では、油中水型乳剤の相分離を用いている。関心のある化合物を水溶液として調製し、PLGAを塩化メチレンおよび酢酸エチルのような適切な有機溶剤中に溶解させる。これら二つの不混和性溶液は、高速撹拌により共に乳化される。次いで、高分子の非溶剤を加え、水性液滴の周りにこの高分子を析出させて、胚体マイクロカプセルを形成する。このマイクロカプセルを採集し、試薬(ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース)の組合せのうちの一つにより安定化させ、真空乾燥または溶剤抽出のいずれかにより、溶剤を除去する。
【0133】
このように、固体含有液体を含む、固体、液体、およびゲル(「ゲルキャップ」を含む)組成物が考えられる。
【0134】
さらに、本発明のベクターまたは組換え体は、所望の免疫または投与処方;例えば、獣医学の従来技術におけるような毎年のワクチン接種またはヒトの医学の従来技術におけるような周期的なワクチン接種のような周期的なワクチン接種の一部として、もしくは本発明のベクターまたは組換え体が、関心のある同一または異なるエピトープの、またはそのような関心のある同一または異なるエピトープを発現する組換え体またはベクター(そのような関心のある同一または異なるエピトープを発現する本発明の組換え体またはベクターを含む)の投与の前後いずれかに投与される最初の追加免疫処方に用いることができる。例えば、米国特許出願第08/746,668号のようなここに引用されている文献を参照のこと。
【0135】
さらに、本発明のベクターまたは組換え体並びにそれからの発現産物は、動物中に免疫または抗体応答を刺激することができる。従来技術でよく知られた技術により、それらの抗体から単クローン性抗体を調製することができ、それらの単クローン性抗体を既知の抗体結合アッセイ、診断キットまたは試験に用いて、抗原の存在または不在、そしてそれよりその抗原の天然の原因物質の存在または不在を決定する、もしくはその物質または抗原に対する免疫応答が単に刺激されたか否かを決定することができる。
【0136】
単クローン性抗体は、ハイブリドーマ細胞により産生された免疫グロブリンである。単クローン性抗体は、一つの抗原決定基と反応し、従来の血清由来抗体よりも優れた特異性を提供する。さらに、多数の単クローン性抗体をスクリーニングすることにより、所望の特異性、結合活性およびイソタイプを有する個々の個体を選択することが可能になる。ハイブリドーマ細胞系統は、化学的に同一の抗体の一定の安価な供給源を提供し、そのような抗体の調製は、容易に標準化することができる。単クローン性抗体を産生する方法は、当業者、例えば、1989年4月1日に発行された、Koprowski, H.等の米国特許第4,196,265号によく知られている。この特許をここに引用する。
【0137】
単クローン性抗体を使用することが知られている。そのような使用の一つは、診断方法、例えば、1983年3月8日に発行された、David, G.およびGreene, H.の米国特許第4,376,110号によるものがある。この特許をここに引用する。
【0138】
単クローン性抗体は、免疫吸着クロマトグラフィー、例えば、Milestein, C., 1980, Scientific American 243:66, 70による材料に回収にも用いられてきた。この文献をここに引用する。
【0139】
さらに、本発明の組換え体またはベクターもしくはそれからの発現産物を用いて、患者に続いて自己輸血するために、インビトロまたは半ビボで細胞中の応答を刺激するのに使用することができる。その患者が血清反応陰性である場合には、その自己輸血は、免疫応答、例えば、活性免疫のような免疫または抗原応答を刺激する。血清反応陽性である個体においては、その自己輸血は、病原に対する免疫系を刺激または追加免疫する。
【0140】
本発明の組換え体またはベクターは、ハイブリッド可能なDNAの存在または不在を検出するまたはDNAを増幅する、例えば、試料中の病原を検出するのに使用できるPCRプライマーのまたはプローブのDNAを産生するのに、またはDNAを増幅するのに有用である。複製に必要なウイルスタンパク質を産生するために、ウイルスにはウイルスmRNAの翻訳が必要であるので、感染細胞中のPKRの作用を遮断する機能には、ウイルスタンパク質の発現に正の効果があることが明白である。したがって、前記ワクシニアE3L/K3L遺伝子産物、もしくはE3Lおよび/またはK3Lの相同体の同一様式の共発現(co-expression)により、一般的なベクターにより、異種遺伝子産物の発現レベルを向上させる一般機構が提供されるかもしれない。E3L/K3Lまたは同種機能は、天然抗PKR機構を向上または増大させ、したがって、タンパク質の発現レベルおよび/または持続性を増大させる。これにより、免疫ビヒクルのような真核ウイルス系の効率を最適化することに対する有用な要素が提供される。この手法はさらに、DNAベースの免疫原、例えば、裸DNAまたはプラスミドDNAベクター系の改良にまで拡大しても差し支えない。さらに、転写因子、例えば、初期および/または後期ウイルス転写因子のヌクレオチド配列を用いることを、翻訳因子のヌクレオチド配列を用いることにより翻訳を向上させることと組み合わせると、転写および翻訳を増大または向上させることにより、発現を向上または増大させることができる。したがって、発現のレベルまたは残存率を増大または向上させることができる。
【0141】
本発明およびその多くの利点が、図面により与えられた以下の非制限実施例からよりよく理解される。
【実施例】
【0142】
実施例1−H4Lを含有するNYVAC組換え体
プラスミドplacZH6H4LおよびplacZH6H4Lreverse(ATCC寄託番号 )を、レスキューウイルスvP994(ATCC寄託番号 ;ここに引用した米国特許第5,494,807号;ワクシニアH6プロモーター/HIV1 NM env-noncleavable, secreted gp140, in HA insertion site)とのインビボ組換えの供与体プラスミドとして用いた。これらの供与体プラスミドは、同種組換えにより、H4Lの暗号配列および異種プロモーターを置換するように設計した。得られた組換えウイルスは、vP1379およびvP1380と称した。vP1379は、頭対頭の形状でH6lacZ/H6H4Lカセットを含有し、vP1380は、頭対尾の形状でH6lacZ/H6H4Lを含有する(配列番号 ;図1)。
【0143】
前記プラスミドを以下のように構築した:
H4L発現カセット
Goebel等,1990におけるように非線状構造にされたH4Lオープンリーディングフレーム(orf)は、コペンハーゲン(ワクチン)株ワクシニアウイルスゲノム配列中の位置94830-92446に対応している。pSD404VCは、pUCベクターのバックグラウンド中に挿入されたコペンハーゲンワクシニアウイルスの8.6kbのHindIII H断片を含有している。pSD404VCを、PvuIIで消化し、前記H4L暗号配列および隣接(flanking)配列を含有する3860bp断片を単離した。この3860bp断片をpBSecogpt(pBS SKベクター中のコペンハーゲンの制御下にある大腸菌gpt遺伝子(ATCC番号37145)(Stratagene La Jolla, CA.))の鈍端にされたBamHI部位中に挿入し、プラスミドpRW935を得た。
【0144】
pRW935をEcoRIで線状にし、DraIで部分的に消化して、H4L暗号配列の5’末端を含有する970bpの断片を除去した。一連のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、H4L暗号配列を再度操作して、修飾ワクシニアH6プロモーターの制御下においた(Perkus等 1989)。PCR増幅において、プラスミド鋳型pRW935およびプライマー対RW500/RW502とRW501/RW503を用いて、5’H4L配列を再生した。さらに、オリゴヌクレオチドRW502が、前記予測したアミノ酸配列を変更せずに、H4L暗号配列(ATGのAから位置341-348)をTTTTTTTTからTTTTCTTCに修飾して、初期転写停止信号を除去した(Yuan,L. and Moss, B., 1987)。前記修飾H6プロモーターを、オリゴヌクレオチドRW504およびRW507を用いてプラスミド鋳型pRW936から増幅した。相補配列を有するオリゴヌクレオチドRW505およびRW506を直接的にPCR増幅した。四つのPCR反応をプールし、プライマー対RW500およびRW505を用いてさらに増幅した。得られたPCR断片をDraIおよびEcoRIで消化し、DraIおよびEcoRIで消化したpRW935中にクローニングして、pRW939を産生した。pRW939の暗号領域の5’末端におけるPCR導入による誤りを修正して、プラスミドpRW947を得た。具体的には、pRW939中に導入されたPCR誤り(H4Lコードン155はAAAであり、正しいコードンはGAAであるべきである)は、600bpのpRW939 AflIII−EcoRI断片を、pRW935からの同等の断片と置き換えることにより修正して、pRW939を産生した。上述のように同定したオリゴヌクレオチド(RW500およびRW501からRW507;配列番号:)の各々のオリゴヌクレオチド配列は以下のとおりである:

プラスミドpRW947をXhoIで消化して、二つの断片を産生した。pBSSKベクターのバックグラウンド中にH6促進(promoted)H4Lを含有する7036bpの断片を精製し、自己ライゲーションして、プラスミドpH6H4Lを得た。ワクシニアH6プロモーターの制御下でLacZ発現カセットを含有するプラスミドpRW973AをHindIIIで切断した。この3.3Kbpの断片を精製し、HindIII消化されたpH6H4L中にライゲーションし、それによって、pLACZH6H4Lreverse(頭対尾の形態にあるH6促進LacZおよびH6促進H4L遺伝子)、およびplacZH6H4L(頭対頭の形態にあるH6促進lacZ遺伝子およびH6促進H4L遺伝子)を産生した。
【0145】
実施例2−ALVAC組換え体
pMPC6H6K3E3(ATCC番号 )をレスキューウイルスvCP205(ATCC番号 ;米国特許出願第08/417,210号、これをここに引用する;HIV発現カセット−ワクシニアH6プロモーター/HIV切形env MN株、ALVAC C3挿入部位にプロテアーゼを有するI3Lgag)とのインビボ組換えにおいて供与体プラスミドとして用い(Piccini等, 1987)、得られた組換え体をvCP1431A(C6遺伝子座におけるE3LカセットおよびワクシニアH6/K3L)と称した。
【0146】
pC8H6H4をvCP205とのインビボ組換えにおける供与体プラスミドとして用い、得られた組換えウイルスをvCP1435(C3遺伝子座でのHIVカセットおよびC8遺伝子座でのワクシニアH6/H4L発見カセット;図2に示したALVAC C8挿入部位配列(配列番号: )が隣接したH6/H4L発現カセット)と称した。
【0147】
vCP1431Aも、プラスミドpC8H6H4を用いたインビボ組換えにおけるレスキューウイルスとして用いて、vCP11437A(C3遺伝子座でのHIVカセット、C6遺伝子座でのH6/K3LおよびE3Lカセット、およびC8遺伝子座でのワクシニアH6/H4Lカセット)と称する組換え体を産生した。ALVAC C6挿入部位配列が隣接した外因性プロモーターを有するワクシニアE3L遺伝子およびH6/K3L発現カセットについて、図3(配列番号: )を参照のこと。
【0148】
pC3H6FHVB(ATCC番号 ;図5の配列番号: ;ALVAC C3遺伝子座の左および右のアームが隣接した5’および3’末端両方で初期転写および翻訳停止信号を有するH6促進FHV gBオープンリーディングフレーム)をALVAC(ATCC番号VR−2547)とのインビボ組換えに用いて、vP1459(脱オープンリーディングフレームされたC3挿入遺伝子座におけるH6促進FHV gB発現カセット)を産生した。二つの内部T5NTモチーフが突然変異誘発されているFHV−1 gB暗号領域に関しては、図4(配列番号: )を参照のこと。
【0149】
pC3H6FHVBをvCP1431Aとのインビボ組換えで用いて、vCP1460(脱オープンリーディングフレームされたC3挿入遺伝子座におけるH6促進FHV gB発現カセットおよびC6遺伝子座におけるワクシニアE3L/K3L遺伝子)を産生した。
【0150】
pC3H6FHVBをvCP1437とのインビボ組換えで用いて、vCP1464(脱オープンリーディングフレームされたC3挿入遺伝子座におけるH6促進FHV gB発現カセット、C6遺伝子座におけるワクシニアE3L/K3L遺伝子およびC8遺伝子座におけるH6促進ワクシニアH4Lオープンリーディングフレーム)を産生した。
【0151】
pMPC5H6PN(ALVAC C5遺伝子座におけるHIV pol/nef「一連のビーズ(string of beads)」カセット)をvCP205との組換えに用いて、vCP1433(ATCC寄託番号 )を得た。このようにして、C5として知られている挿入部位で、既知のPol CTLエピトープの全て(Nixson and McMichael; 1991)および既知のヒトNef CTLエピトープの全てを含有する合成ポリペプチドをコードする発現カセットをvCP205中に挿入することにより、組換え体ALVAC−MN120TMGNPst(vCP1433)を産生した。
【0152】
pMPC6H6K3E3(ATCC寄託番号 ;ALVAC C6挿入部位配列が隣接した外因性プロモーターを有するワクシニアE3L遺伝子およびワクシニアH6/K3L発現カセットを含有する)をvCP1433との組換えに用いて、vCP1452を得た。図6および7が、vCP1433およびvCP1452挿入物のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示している。図8は、vCP1452におけるC6中のK3L E3Lを示している。vCP1452は、IIIB単離体由来のHIV1型gagおよびプロテアーゼ遺伝子、MN単離体由来のgp120エンベロープ配列、およびHIV−1 NefおよびPolからの既知のヒトCTLエピトープを包含するポリペプチドをコードする配列(Nef1およびNef2 CTLエピトープ、およびPol1、Pol2およびPol3 CTLエピトープ)を含有している。この発現されたgp120部分は、エンベロープ糖タンパク質の膜内外(TM)アンカー配列(28アミノ酸)に連結されている。HIV暗号配列に加えて、vCP1452は、C6部位に挿入されたワクシニアウイルスE3LおよびK3L暗号配列を含有している。この構築物の挿入部位およびプロモーター結合が以下の表に示されている。
【表1】

【0153】
vCP300は、米国特許出願第08/417,210号に記載されているように、HIVgp120TM(MN)、gag/pro(IIIB)(C3遺伝子座)、Nef(C6遺伝子座)、およびPol(C5遺伝子座)を含有するALVAC組換え体である。この出願をここに引用する。
【0154】
これらの組換え体を調製するプラスミドを以下のように調製した:
ALVAC中へのワクシニアH4L発現カセット
プライマー対H4AおよびH4Bを用いて、pBAMM11.6(pBSSKベクターバックグラウンド中のALVAC11.6kb BamHI M断片)からの900bp断片を増幅し、プライマー対H4CおよびH4D(配列番号:)を用いて、pBAMM11.6からの940bp断片を増幅することにより、pCPM6LDELを産生した。
【0155】

【0156】
増幅からのPCR産物およびプライマー対H4AとH4Dを用いた融合PCR反応により、1840bpのPCR融合断片を得て、次いで、これを配列を確認するために、T/Aクローニングベクター中にクローニングした。この配列は、位置8054でPCR欠失を有することが分かった。前記1840bp断片を、BamHIによる消化により、このT/Aベクターから除去した。次いで、この断片をBamHI消化されたpBSSK ΔEcoRI−SmaIベクター中にクローニングした。前記欠失は、前記構築物をHindIIIで消化して、右アームの250bp断片を除去し、再度ライゲーションして、pCPM6LDELを得ることにより修復した。
【0157】
placZH6LreverseをPspAIおよびAsp700で消化して、H6プロモーターおよびH4L遺伝子の5’の1780bpを含有する1920bp断片を得た。H4L遺伝子の残りの590bpを、プライマー対H4AおよびH4Bを用いたプラスミド鋳型placZH6H4LreverseからのPCR増幅により産生した。プライマー対H4AおよびH4Bのオリゴヌクレオチド配列(配列番号:)は以下のとおりである:
オリゴヌクレオチド配列

【0158】
この590bpのPCR断片をゲル精製し、配列を確認するためにTAクローニングベクター(Invitrogen San Diego, CA. 98121)中にクローニングした。3’のH4L配列を含有するこの590bpの挿入物を、PspAIおよびAsp700での消化によりTAベクターから切除した。前記1920bpおよび590bp断片を、PspAI消化したpCPM6LDELプラスミドベクター(脱オープンリーディングフレームされたALVAC M6L挿入部位を含有する)中に方向性クローニングして、M6L挿入部位でALVAC配列に隣接したH6/H4L発現カセットを含有するプラスミドpM6LDELH6H4を産生した。
【0159】
ALVAC pC8挿入ベクターは以下のようにして産生した:前記C8 ORFおよび隣接配列を含有するPCR J36を、ALVAC DNAにJP121(CAT−CAT−GAG−CTC−ACT−TAT−TAC−ATC−CTA−CT)およびJP122(TAC−TAC−GGT−ACC−TTT−AAT−AAG−CAA−TCA−CT)(配列番号:)を用いて産生した。得られた約1.7kbのバンドをAsp718/SacIで消化し、Asp718/SacI消化したpBSSK+中にライゲーションさせた。配列分析により確認した後、得られたプラスミドをpCPF85S3Lと称した。C8 ORFのほとんどを除去し、転写および翻訳停止をMCSとともにpCPF85S3L中に導入するために、このプラスミドをSnaBI/HindIIIで消化し、約115bpのPCR J618I SnaBI/HindIII断片にライゲーションさせて、pC8を産生した。PCR J618Iは、プライマーJP516(TAG−GAA−GAT−ACG−TAT−TAT−TTT−ATA−C)およびJP519(ATC−CCA−TTA−TGA−AAG−CTT−ATA−G)を用いたPCR J616およびJ617の融合PCR産物である。PCR J616は、プラスミドpCPF85S3LにおいてプライマーJP516およびJP517(CTC−GAG−CTG−CAG−GAT−ATC−ATC−GAT−GGA−TCC−TTT−TTA−TAG−CTA−ATT−AGT−CAC−GTA−CCT−TTA−TCA−TTA−GTA−ACA−AAT)を用いて産生した。PCR J617は、プラスミドpCPF85S3LにおいてプライマーJP518(GGA−TCC−ATC−GAT−GAT−ATC−CTG−CAG−CTC−GAG−TTT−TTA−TGA−CTA−GTT−AAT−CAC−GGC−CGC−TCA−ATA−TTG−TAT−TGG−ATG−GTT−AG)およびJP519を用いて産生した。C8挿入プラスミドであるプラスミドpC8を配列分析により確認した。このプラスミドは、約440bpの左アーム、約1162bpの右アーム、転写および翻訳停止配列の両方が隣接した、独特のBamHI、ClaI、EcoRV、PstI、およびXhoI部位を有するMCSを含有している。
【0160】
前記プラスミドpM6LDELH6H4から、SmaIで2.5KbpのH6/H4発現カセットを切除し、得られた2.5KbpのSmaI断片を精製し、EcoRV部位でALVAC pC8ベクター中に挿入し、pC8H6H4を産生した。
【0161】
K3L発現カセット
K3L暗号配列を、米国特許第5,378,457号に記載されているように、鋳型としてコペンハーゲンワクシニアHindIII K断片を含有するpSD407VCを用いて、PCR増幅により合成した。これらオリゴヌクレオチドMPSYN763およびMPSYN764(配列番号:)は、PCR反応のプライマーとして用いた。
【0162】

【0163】
約325bpのPCR断片をXbaIおよびEcoRIで消化して、315bpの断片を産生した。この325bp断片をアガロースゲルからの単離により精製し、XbaIおよびEcoRIで消化したpBSSK+ベクター(Stratagene LA Jolla, CAからの)にライゲーションした。この核酸配列を、修飾T7ポリメラーゼ(Tabor, S. and Richardson, C. C. 1987)およびシーケナーゼ(U.S. Biochemicals Cleveland, OH.からの)を用いて、Hattori, M. and Sakaki, Y., 1986に記載されているようにアルカリ変性プラスミド鋳型から直接確認した。このプラスミドをpBS 763/764と称した。pBS 763/764をNruIおよびXhoIで消化することにより、K3L遺伝子を含有するpBS 763/764からの340bp断片がH6プロモーターの隣に指向性に向けられて、pMPTKH6K3Lを産生できるように、NruI(部分的)およびXhoIでの消化により調製した、NYVACtk−挿入ベクターバックグラウンド内の不適切な遺伝子を制御するワクシニアH6プロモーターを有するカセットを含有するプラスミドベクターpMM154中へのクローニングのために、340bp断片を単離した。昆虫ポックス42kプロモーターの制御下で優性選択性マーカーEco gpt遺伝子を含有するプラスミドpMP42GPT(pRATT d. AND sUBRAMANI s. 1983)をSmaIおよびBamHIで消化して、0.7Kbpの42k−Eco gpt発現カセットを産生した。この0.7Kbpの断片を精製し、SmaIおよびBamHIで切断したpMPTKH6K3L中にライゲーションして、プラスミドpMPTKH6K3Lgptを産生した。このプラスミドをXhoIで消化して、H6/K3Lおよび42k/Ecogpt発現カセットを含有する1.2Kbp断片を産生し、次いで、これをゲル精製した。この1.2Kbp断片を、(米国特許第5,494,807号に記載された)ALVAC C6挿入プラスミドpC6LのXhoI部位に挿入して、pMPCH6HK3Lgptを産生した。
【0164】
E3L/K3L ALVAC発現カセット
E3L遺伝子全体は、コペンハーゲンワクシニアからのHindIII E断片のクローンを含有した、pSD401VCから単離した2.3KbpのEcoRI断片内に含まれている。この2.3KbpのEcoRI断片を、EcoRIで部分的に消化されたpMPC6H6K3Lgpt中に挿入して、プラスミドpMPC6H6K3E3gptを産生した。このプラスミドpMPCH6K3E3gptをXhoIで消化し、得られた6.8Kbpのベクター断片を精製し、自己ライゲーションさせて、プラスミドpMPC6E3を得た。プラスミドpMPTKH6K3LをPspAIで消化し、H6/K3L発現カセットを含有する得られた560bp断片を、PspAIで消化したpMPC6E3中にライゲーションさせて、プラスミド構築物pMPC6H6K3E3を得た。
【0165】
H6促進FHV qB供与体プラスミドの構築
ネコ1型ヘルペスウイルス糖タンパク質gB(FHV−1 gB)の全暗号領域が、pJCA079(5’および3’のT5NT配列が突然変異誘発されてアミノ酸配列に影響を与えずに初期転写停止信号が変更されたFHV gB暗号領域;I3LワクシニアプロモーターがgN ORFの5’末端に連結されている;図4を参照のこと、配列番号: )のPstIでの消化と、アガロースゲルからの3Kbpの断片の単離により得られた。精製したPstI断片を、PstIで消化されたALVAC C3挿入プラスミド(pVQH6CP3LSA)中にクローニングした(pVQH6CP3LSA中の特異的なBamHI部位は、BamHIでの消化、クレノーポリメラーゼによる端部の鈍端化および再ライゲーションにより以前に不活化された;pVQH6CP3LSAは、米国特許第5,494,807号に論じられたpVQH6CP3LのNotIおよびNsiIでの消化により得た。そこから6623bpの断片を単離し、アニールされたオリゴヌクレオチドCP34(5’GGCCGCGTCGACATGCA3’)およびCP35(5’TGTCGACGC3’)にライゲーションした(配列番号:))。得られたプラスミドpRAC5を、H6プロモーターに関するgB暗号領域の適切な方向についてスクリーニングした。H6プロモーターをFHV gB開始コードンに適切に連結するために、オリゴヌクレオチドRG789(配列番号:)(5’−TTTCATTATCGCGATATC−CGTTAAGTTTGTATCGTAATGTCCACTCGTGGCGATC−3’)およびRG787(配列番号:)(5’−GGAGGGTTTCAGAGGCAG−3’)を用いて、pJCA079から800bpのPCR断片を増幅した。この精製した断片をNruI/BamHIで消化し、NruI/BamHIで消化したpRAC5中にライゲーションした。得られたプラスミドは、FHV gB供与体プラスミドpC3H6FHVBであった。
【0166】
「一連のビーズ」のカセット
nefおよびpol CTLエピトープの「一連のビーズ」の発現カセット(H6/Pol 3/Nef C末端/Pol 2/Nef 中央/Pol 1)を、polエピトープに関して鋳型pHXBD2およびNefエピトープに関して鋳型2−60−HIV.3を用いて、以下に詳述するようにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により産生した。最初のアセンブリは2部であった:(1)H6(部分プロモーター)/Pol 3/Nef C末端(Nef 2);(2)pBSSK中のPol 2/Nef 中央(Nef 1)/Pol 1。これらを組み合わせ、次いで、H6プロモーター全体のアセンブリのためにpBSH6−11に移動させ、次いで、H6/HIVカセットをC5挿入プラスミドに移動させた。
【0167】
(1) H6/Pol 3/Nef C末端(Nef 2)
230bp断片(A)をPCRにより誘導して、合成オリゴヌクレオチドMPSYN783およびMPSYN784(配列番号:)並びに鋳型pHXBD2を用いて、H6結合(linkage)およびPol3を得た。pHXBD2を、ラムダ−J1(Shaw et al., 1994)中にクローニングしたHTLV−III感染したH9細胞からのXbaI消化されたDNAの組換えファージライブラリーからのNIH/NCI(Dr. Nancy Miller)で誘導した。このプラスミドは、HIV IIIB単離体の全プロウイルスDNA配列を含有している。
【0168】
110bp断片(B)を、PCRにより誘導して、オリゴヌクレオチドMPSYN785/MPSYN786(配列番号:)並びに鋳型p2−60−HIV.3を用いてNef2を得た(米国特許出願第417,210号に記載されているように)。
【0169】
PCR断片AおよびBをPCR中で鋳型として組み合わせて、外部プライマーMPSYN783/MPSYN786(配列番号:)を用いてH6結合/Pol3/Nef2を含有する300bp断片を得た。この300bpの断片をXhoI/HindIIIで消化し、290bpの断片を単離し、同様に消化したpBSSKとライゲーションして、pBS783/786を産生した。その配列を確認した。
【0170】
(2) 2/Nef 中央 (Nef 1)/Pol 1
Pol2を含有する210bp断片(C)を、合成オリゴヌクレオチドMPSYN787/MPSYN788(配列番号:)および鋳型pHXBD2を用いてPCRにより誘導した。
【0171】
Nef1を含有する270bp断片(D)を、合成オリゴヌクレオチドPMSYN789/MPSYN790(配列番号:)および鋳型p2−60−HIV.3を用いてPCRにより誘導した(米国特許出願第08/417,210号に記載されている)。
【0172】
Pol1を含有する170bp断片(E)を、プライマーMPSYN791/MPSYN792(配列番号:)および鋳型pHXBD2を用いてPCRにより誘導した。
【0173】
断片CおよびDを、外部プライマーMPSYN787/MPSYN790(配列番号:)を用いて、Pol2/Nef1に関するPCRにおいて鋳型として組み合わせ、460bpのPCR産物(C+D)を得た。
【0174】
断片DおよびEを、外部プライマーMPSYN789/MPSYN792(配列番号:)を用いて、Nef1/Pol1に関するPCRにおいて鋳型として組み合わせ、420bp断片(D+E)を単離した。
【0175】
断片(C+D)および(D+E)を、外部プライマーMPSYN787/MPSYN792(配列番号:)によるPCRにおける鋳型として組み合わせて、Pol2/Nef1/Pol1を含有する610bp断片を得た。この610bp断片をHindIII/PstIで消化した。得られた590bp断片を、HindIII/PstIで切断したpBSSKとライゲーションして、pBS787/792を産生した。その配列を確認した。
【0176】

【0177】
カセット全体のアセンブリ
590bpのHindIII/PstI断片をpBS787/792から単離し、HindIII/PstIで切断したベクターpBS783/786とライゲーションして、pBS783/792を産生した。pBS783/792をEcoRVおよびPstIで切断して、880bpの断片を産生し、次いで、これを同様に切断したベクターpBSH6−1とライゲーションして、pBSH6PNを産生した。プラスミドpBSH6PNをBamHIで消化し、1060bpの断片を単離した。総称的なC5供与体プラスミドであるpVQC5LSP1をBamHIで消化し、pBSH6PNからの1060bp断片とライゲーションした。得られたプラスミドpMPC5H6PNは、ALVAC C5遺伝子座においてHIV pol/nef「一連のビーズ」カセットを含有している。
【0178】
実施例3−発現研究
実施例3.1−NYVAC発現結果
細胞の融合性単層を含有する皿を2の感染多重度(moi)で感染させた。特定の期間に亘る保温後、1時間に亘り細胞を標識培地内で保温した。この保温の終わりに、記載したイムノプレシピテーション分析(Harlow, E and Lane, D (1988); Langone, J. (1982))のために細胞を収穫した。
【0179】
細胞を2pfu/細胞のmoiで感染させ、特定の期間に亘り保温した。感染後の適切な時間で、細胞溶解産物をRNA分析のために調製した。培地を吸引し、細胞を収穫した。RNAを単離し、TRI−試薬(Molecular Research Center Inc. Cincinnati, OH. 45212)を製造業者の指示にしたがって用いて、調製し、スロットブロットにより分析した。放射線標識されたDNAプローブを用いて、特定のRNA種を検出した。
【0180】
HIV env切形(truncated)MN株の発現への、親ウイルスvP994と比較したvP1379およびvP1380の効果を、CEF細胞についての感染後の特定の時間での放射線標識付けにより研究した。HIV env切形MN株(mAb K3A)に対する単クローン性抗体に関するIP分析により、vP994親ウイルスまたはvP1379いずかれと比較して、感染後の初期でのvP1380感染細胞に関するデノボ合成が著しく増大したことが分かった。同様の傾向が、感染後の後期にも観察される。ウサギ抗H4L抗血清(Dr. S. Shuman, Sloan-Kettering Institute, NYにより提供された)に関するIP分析は、vP1380感染細胞のみが感染の初期にH4L産物を発現したことを示している。vP994またはvP1379のいずれに感染した細胞も、感染の初期にはH4Lを発現しなかった。全ての試料は、感染の後期のH4Lのデノボ合成を示しているが、発現率は、vP994またはvP1379感染細胞いずれかの場合よりもvP1380感染細胞のほうが高い。構成ワクシニアタンパク質であるE3L産物のIP分析は、デノボ合成が、vP994またはvP1379感染細胞のいずれかにおけるよりも、vP1380感染細胞において、感染後の全ての時で高い率で生じることを示している。
【0181】
これらの結果は、vP1379が、感染後の初期および後期にH4Lを発現するvP1380とは異なり、親ウイルスと同一の発現パターンを有する欠損組換え体であることを示している。この初期H4L発現は、明らかに、感染後の初期での研究されている前記タンパク質(HIV envおよびE3L)の向上した発現と相関関係にある。
【0182】
以下の研究は、vP1379が感染後の初期にH4L産物を発現しないので、vP1380およびvP994について行った。HeLa細胞(非許容系)における感染後の異なる時期での発現率をIP分析により研究した。抗H4Lに関するIP研究は、vP1380感染細胞が、感染後の全ての時期(3、6、24および48時間)でH4L産物を発現したことを示している。vP994感染細胞においては、感染後のいずれの時期においても産物は検出されなかった。時間とともに増大する持続性デノボ合成が観察される。HIV Env産物の分析は、産物発現レベルは、vP994感染細胞に対してvP1380感染細胞のほうが全ての時期で高いけれども、最も著しい差は、24および48時間の後期に見られることを示しており、H4Lの発現がHIV Env産物の発現についてあるレベルで影響がなければならないことを示唆している。E3L産物の発現も、vP994と比較するとvP1380感染細胞において増大している。
【0183】
L929細胞について行った実験も同様の結果を示した。最も著しい差は、感染後の全ての時期でH4L産物の発現率は非常に低いけれども、HIV Env成分のデノボ合成率において劇的な差があることであった。Env合成率の差は24時間でピークに達し、vP994と比較して、vP1380感染細胞においては5から10倍増大した。
【0184】
H4L産物は初期転写因子であるので、発現レベルで得られた結果が、vP1380感染細胞におけるH4Lメッセージにおける増加と相関関係にあるか否かを決定するのに関心のあるものである。スロットブロットによるRNA分析は、H4Lメッセージが、vP1380感染細胞において感染後の全ての時期において検出可能であり、感染から6時間後に安定した状態を達成したことを示している。
【0185】
HIV Envメッセージレベルは、感染から3時間後に安定状態のレベルまで急速に増大し、vP1380感染細胞において全ての時期でそれらのレベルで維持された。一方で、vP994感染細胞は、感染から6時間後にHIV envメッセージのピークを示し、12時間後に低下し始めた。vP1380感染細胞におけるE3Lメッセージが、vP994感染細胞と比較して、感染後の全ての時期で高いレベルで存在する。RNAレベルのこのパターンは、前記タンパク質レベルでデノボ合成率のパターンと矛盾がない。
【0186】
マウスを0日目と28日目に腹腔内経路により免疫した。最初の免疫前に始まり、その免疫後に2週間間隔で、マウスより眼後方そう(retroorbital plexus)から採血した。血清を、標準的な凝固技術により採取した血液から調製し、HIVエンベロープ糖タンパク質に対して反応性の抗体に関する速度論ELISAに使用するまで−20℃で冷凍貯蔵した。
【0187】
高供与量のvP994またはvP1380が同様のレベルの抗体を誘発した(以下の表)。しかしながら、最低の供与量、5×10pfuでは、vP1380のみがHIV抗体を産生することができた。さらに、その低供与量により誘発された抗体のレベルは、最高の供与量、5×10pfuにより誘発された抗体のレベルに匹敵した。
【0188】
ワクシニアH4を欠如しているが、vP1380に対してはその他の全ての点で同一のvP994が抗体応答を誘発するのに低すぎる供与量では、vP1380は、試験した最高供与量により誘発されたものと同等の抗体応答を誘発した。したがって、NYVACにおけるワクシニアH4Lの過剰発現により、体液性応答を誘発する潜在能力が増大するかもしれない。
【表2】

【0189】
上述したように、おそらくは、vP1380中の向上したレベルの一部は、E3Lのようなウイルス特異性産物の向上した転写および発現によるものであり、したがって、vP1380における発現に向上した転写および翻訳が含まれる。ベクターがより大きいレベルの発現およびより持続性のレベルの発現を得ている本発明によれば、vP1380においてはより持続性のレベルで外因性DNAの発現が多かった。マウスにおいてvP994よりも免疫性であるvP1380により示されているように、マウス系における向上した発現プロフィールは、マウスにおける向上した免疫原性を提供した。向上したプロフィールは、ここでの不稔初期ALVAC組換え体中の制限初期細胞内に見られたが、生産的複製があった細胞、例えば、VEROまたはCEFにおいてはそのプロフィールは観察されず、前記因子および異種DNAは、好ましくは、実質的に同時に発現されるべきであることを示唆している、すなわち、好ましくは、実質的に同時または同じ段階で共発現があるべきであり、発現の時期、例えば、初期、後期、初期および後期が、ベクターの表現型(例えば、初期に不稔、後期に不稔)と一致すべきであり、すなわち、ウイルス複製が損なわれていない系(許容系)または発現がベクターの表現型と一致していないときに複製が不稔である系においては、最適な発現が得られないかもしれないと示唆していることが観察されている。したがって、ALVACまたはNYVACのような初期に不稔の系においては、好ましくは、外因性DNAおよび転写または転写および翻訳因子を初期に発現し、後期に不稔の系においては、好ましくは、外因性DNAおよび転写または転写および翻訳因子を後期または初期および後期に発現する(初期のみの発現は、許容系における発現に類似しているかもしれない、すなわち、必ずしも最適発現を得られないかもしれないので)。
【0190】
実施例3.2−ALVAC発現結果
ALVAC−HIV組換え体
イムノプレシピテーション(IP)を用いて、MRC−5感染細胞中のALVAC組換え体に含まれたHIV−Iカセットの時間的発現の半定量比較を提供した。HIV患者からの熱不活化血清を得て、本発明の方法に記載したようにIPに用いた。この抗血清は、120KDaのenvタンパク質およびgagタンパク質前駆体からの様々な開裂産物を沈殿させる。このIPデータの分析において、E3L/K3Lカセットを含有するALVAC組換え体vCP1431AおよびvCP1437Aは、E3L/K3Lカセットを含まないALVAC組換え体vCP205と比較した場合、感染後の全ての時期で発現のレベルが著しく増大したことが明らかである。
【0191】
面白いことに、vCP1431AおよびvCP1437Aは同様の発現プロファイルを有した。ALVAC E3L/K3Lバックグラウンド中へのH6/H4Lの挿入により、発現をE3L/K3Lより上に向上させず、ワクシニアH4Lは必ずしもALVACにおいては機能的ではないことを示唆している。しかし、ALVAC転写因子の操作により向上した発現が導かれるであろう。カナリアポックスにおいてワクシニア転写因子の相同体があるけれども、カナリアポックス中の必要条件は生化学的に異なっているかもしれない。しかし、これらの差は、この開示および従来技術の知識から、不必要な実験を行わずに、当業者により確かめることができる。さらに、本発明は、ワクシニアウイルスを用いて、カナリアポックスまたは鶏痘における転写分析のためのインビトロ系を提供する。
【0192】
RNAスロットブロットを用いて、ALVAC組換え体vCP205およびvCP4131AおよびvCP1437Aに感染したMRC−5細胞における時間的転写発現を評価した。この分析において、envおよびgagタンパク質をコードするHIV−Iカセットから転写されたmRNAのレベルについて比較を行った。E3L/K3Lカセットを含有するALVAC組換え体(vCP1431AおよびvCP1437A)は、ALVAC組換え体vCP205のものよりも高いenvおよびgag遺伝子に関するmRNAのレベルで著しい増大を示さなかった。
【0193】
ワクシニア感染細胞においてPKRをダウン調節し、それによって、翻訳を変調させる上でのE3L/K3Lの果たす前述した役割は、ワクシニアE3L/K3L機能を含有するALVAC組換え体においても機能するように思われる。前記データは、前記E3L/K3L遺伝子を含有するALVAC組換え体に感染した細胞中で翻訳が著しく向上するが、転写レベルの著しい増大は検出されていないことを示している。これは、E3L/K3L発現のポックスウイルス感染細胞における翻訳効率への影響を例示するものである。
【0194】
前述したように(Taylor et al., 1990)、ALVAC親ウイルス、ALVAC−MN120TMG(vCP205)、ALVAC−MN120TMGNPst(vCP1433)、vCP1452およびvCP300に感染したCEF細胞由来の放射線標識した溶解産物を用いて、イムノプレシピテーションを行った。ヒトの血清は、HIV血清陽性の個体から誘導した(抗HIV)。この分析により、前記親ウイルスではなく組換え体において、120kDaの分子量を有するエンベロープ配列および55kDaの分子量を有するGag前駆体タンパク質の発現が確認された。しかしながら、本発明によれば、vCP300はvCP1452と比較して、減少した発現を示した、すなわち、vCP1452は驚くべきことに、転写および/または翻訳因子の発現のために向上した発現を示した。
【0195】
ヒト抗HIV抗体についてのFAC走査分析は、ALVAC−MN120TMGNPst(vCP1433)に感染したHeLa細胞の表面にgp120の発現を示した。ALVAC親ウイルスに感染した細胞上には、蛍光が検出されなかった。
【0196】
さらに、挿入されたHIV遺伝子の適切な発現を、vCP1433またはvCP1452に感染したMRC5細胞の放射線標識付け溶解産物について行ったイムノプレシピテーション分析(HIVに感染した個体からの多クローン性血清プールを用いた)により確認した。この分析により、vCP1452において、120kDaの分子量を有するエンベロープ配列および55kDaの分子量を有するGag前駆体タンパク質の発現を確認した。
【0197】
vCP1452は、vCP1433およびvCP300と比較してヒト細胞の発現を向上させた。実際に、向上した発現が、ヒトおよびイヌの細胞において、E3L/K3L翻訳因子について観察された。
【0198】
マウスにおける予備免疫原性研究は、E3L/K3L翻訳因子による向上した免疫原性の証拠を示さなかった。このことは、マウス細胞中で向上した発現が観察されなかったことに対応している。
【0199】
さらに、マウス細胞において、ALVAC発現の制限因子が転写レベルにある。したがって、適切な転写因子を使用することにより、マウス系において向上した発現が観察できないことを克服することができる。したがって、細胞の起源は、ベクターの性質、例えば、ベクターの表現型(例えば、不稔、および初期に不稔、後期に不稔のような時期に関する不稔)のように、本発明のインビトロまたはインビボ用途(上述したH4データに留意のこと)における重要な要因であるかもしれない。しかし、細胞およびベクターの表現型並びに因子および異種および/または外因性DNAの発現の時期の適切な選択は、不必要な実験を行わずに、この開示および従来技術の知識から、当業者の範囲に含まれる。
【0200】
ALVAC−FHV qB組換え体
vCP1459、vCP1460およびvCP1464に関する発現の分析を、ヒツジ抗FHV gB多クローン性血清を用いたイムノプレシピテーション分析により行った。ヒトMRC−5細胞に、時間0にmoi=5で接種し、この接種から3、6、24、48および72時間後に、35S標識付けメチオニンで1時間に亘りパルスした。沈殿したタンパク質をSDS−PAGEゲル上で分離した。これらのIPのオートラジオグラフを濃度計を用いて走査した。使用したこれらの方法により、特定の時点でのFHV gB発現の半定量分析を提供する。
【0201】
結果は、全ての組換え体が、適切なサイズの全長グリコシル化FHV gBポリペプチド(約115kDaの見かけ分子量)を発現することを示している。しかしながら、組換え体vCP1460およびvCP1464は、vCP1459と比較して、gBタンパク質の量が著しく増大した(約5倍)ことを示している。さらに、これらの発現レベルは、接種から72時間後でさえも持続している。したがって、ALVAC中のワクシニアE3L/K3Lの発現は、FHV gB発現のレベルおよび持続性に著しい影響を与えるようである。
【0202】
実施例4−追加のベクター
ここに引用した文献および上述した実施例を含むここの教示を用いて、プラスミドおよび裸DNA、並びにポックスウイルス、例えば、NYVAC、TROVAC、ALVAC、MVA、ts(温度感受性)突然変異体、または初期(DNA)および後期欠損突然変異体、アデノウイルス、例えば、CAV2のようなCAV、ヘルペスウイルス、例えば、エプスタインバーを含む追加のウイルスベクターを、向上した転写または翻訳もしくは転写および翻訳により、例えば、H4L、ワクシニアD6、ワクシニアA7、ワクシニアG8R、ワクシニアA1L、ワクシニアA2L、ワクシニアH5R(VLTF−1、−2、−3、−4、P3、VLTF−X)E3L、K3L、VAI、EBER、シグマ3、TRBP、またはこれらの組合せを用いて、前記ベクターを少なくとも一つの転写因子または少なくとも一つの翻訳因子もしくは少なくとも一つの転写因子および少なくとも一つの翻訳因子を含むように修飾することにより産生する。したがって、外因性暗号核酸分子(ここに引用した、またはそうでなければ従来技術において知られているような文献から、もしくはそれらの教示をここの教示とともに適用することから得られるものを含む外因性暗号核酸分子のような)の向上した発現が得られる。
【0203】
本発明の好ましい実施の形態を詳細に記載してきたけれども、請求の範囲により定義された本発明は、その多くの明らかな変更例が本発明の精神および範囲から逸脱せずに可能であるので、上述した記載に述べられた特定の詳細に限定されるものではないことが理解されよう。
【参考文献】
【0204】




【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1−1】H6プロモーターの元で突然変異誘発されたH4LorfおよびlacZ orfを含有するvP1380中の挿入物のヌクレオチド配列(配列番号)を示す。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図1−3】図1−2の続きである。
【図2−1】H6/H42発現カセットを含有するALVAC C8挿入部位のヌクレオチド配列(配列番号)を示す。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図3−1】H6/K3LおよびE3L発現カセットを含有するALVAC C6部位のヌクレオチド配列(配列番号)を示す。
【図3−2】図3−1の続きである。
【図4−1】修飾T5NTモチーフを有するFHV gBの暗号領域のDNA配列(配列番号)を示す。
【図4−2】図4−1の続きである。
【図5−1】H6プロモートFHV gB供与体プラスミドpC3H6FHVBのDNA配列(配列番号)を示す。
【図5−2】図5−1の続きである。
【図5−3】図5−2の続きである。
【図6−1】vCP1433中の挿入物のDNAおよびアミノ酸配列(配列番号)を示す。
【図6−2】図6−1の続きである。
【図7−1】vCP1452中の挿入物のDNAおよびアミノ酸配列(配列番号)を示す。
【図7−2】図7−1の続きである。
【図7−3】図7−2の続きである。
【図7−4】図7−3の続きである。
【図8−1】vCP1452中のK3L E3LのDNA配列(配列番号)を示す。
【図8−2】図8−1の続きである。
【図8−3】図8−2の続きである。
【図8−4】図8−3の続きである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の表現型を有する細胞中での少なくとも一つの第一の核酸分子の発現を向上させるポックスウイルスベクターであって、該ベクターが、第一のポックスウイルスプロモーターに操作可能に結合した第一の核酸分子と、第二のプロモーターに操作可能に結合しかつポックスウイルス転写因子またはポックスウイルス転写因子および翻訳因子をコードする少なくとも一つの第二の核酸分子とを含むように修飾されており、前記第二のポックスウイルスプロモーターが前記第一のポックスウイルスプロモーターと同じ感染段階の間に機能し、該ポックスウイルスベクターでの前記細胞の感染後、該細胞の表現型に関して前記第一と第二の核酸分子の実質的に同時の発現があり、それによって、該第二の核酸分子の発現が、転写または転写と翻訳を向上させることにより、前記第一の核酸分子の発現を向上させることを特徴とするポックスウイルスベクター。
【請求項2】
前記第一と第二の核酸分子が前記ベクター内の異なる遺伝子座にあることを特徴とする請求項1記載のポックスウイルスベクター。
【請求項3】
前記第一と第二の核酸分子が前記ベクター内の同じ遺伝子座にあることを特徴とする請求項1記載のポックスウイルスベクター。
【請求項4】
前記転写因子が、H4L、D6、A7、G8R、A1L、A2L、H5R、およびこれらの組合せからなる群より選択されるオープンリーディングフレームからのものであることを特徴とする請求項1記載のポックスウイルスベクター。
【請求項5】
前記第二の核酸分子が、少なくとも一つの転写因子および少なくとも一つの翻訳因子を含むことを特徴とする請求項1記載のポックスウイルスベクター。
【請求項6】
前記翻訳因子が、eIF−2アルファリン酸化の阻害またはPKRリン酸化の阻害を行って、もしくはそうでなければ、dsRNAを隔離して、dsRNAの有効濃度を増大させることを特徴とする請求項5記載のポックスウイルスベクター。
【請求項7】
前記少なくとも一つの第二の核酸分子が、K3Lオープンリーディングフレーム、E3Lオープンリーディングフレーム、VAI RNAフレーム、EBER RNA、シグマ3オープンリーディングフレーム、TRBPオープンリーディングフレーム、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項6記載のポックスウイルスベクター。
【請求項8】
前記第一の核酸分子が、関心エピトープ、生体応答調整物質、成長因子、認識配列、治療遺伝子および融合タンパク質からなる群より選択される分子をコードすることを特徴とする請求項1記載のポックスウイルスベクター。
【請求項9】
請求項1記載のポックスウイルスベクターおよび製剤的に許容されるキャリヤまたは希釈剤を含む、免疫組成物、ワクチン組成物または治療組成物。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図7−3】
image rotate

【図7−4】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図8−3】
image rotate

【図8−4】
image rotate


【公開番号】特開2008−307056(P2008−307056A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212589(P2008−212589)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願平10−539564の分割
【原出願日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【出願人】(398007818)ヴァイロジェネティクス コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】