説明

発酵堆肥化処理法及び装置

【課題】オープン式発酵槽を用い、高含水有機質廃物を発酵堆肥化するに当たり、水分調整材の使用量を少なくして堆肥の生産コストを低下し、高温発酵を維持して長期に亘り連続生産できるようにした発酵堆肥化処理法を提供する。
【解決手段】高含水有機質廃物に水分調整材を混入し発酵に適した含水量に調整した被処理物をオープン式発酵槽1内に投入し、少なくとも1mの高さに堆積した堆積物を基層として用意し、この発酵中の基層の上面に散布機3により高含水有機質廃物を散布すること、次いで、撹拌機2により該堆積物と該含水有機質廃物とを撹拌することを繰り返し乍ら、この混合堆積物の発酵を行うに当たり、該散布機3により高含水有機質廃物を散布すると同時に該散布機3に設けた撹拌機により堆積物の上層部を撹拌すること、次いで、該撹拌機2により該堆積物の該上層部と下層部から成る堆積層全体を撹拌することを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵堆肥化処理法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜の糞尿を堆肥化処理するには、含有する水分と有機質分解エネルギーにより左右される。
また、これらを発酵堆肥化するには、糞尿にオガ屑、籾殻、麦稈などの水分調整材を添加混合して、発酵に適した含水量60〜65%程度に調整することが必要である。これを発酵堆肥化処理するには、古くからエンドレス式発酵装置が使用されている。該装置は、平行する高さ0.6〜0.7M(メートル)、長さ100Mを有する長円形の立壁とその中心線上に両端にターンテーブルを具備した直線立壁とに跨る台車上に撹拌機と糞尿散布機を搭載して成る撹拌散布機をその直進走行した後、その各端のターンテーブルで夫々180°旋回し方向転換し、周回走行せしめるようにしたもので、上記の水分調整された糞尿を発酵堆肥化するには該長円立壁のピット底面に台車を回動走行させて、先ず該糞尿散布機により所望の厚さに糞尿を散布し、その後、撹拌機により発酵中の糞尿散布層を撹拌し、以下糞尿散布と撹拌を繰り返し、その堆積物が高さ0.5M程度となるまで行い、その後、堆肥として取り出すものである。
一方、最近、キシエンジニアリング株式会社は、発酵槽の高さが高くエンドレス式発酵槽より多量の水分調整された糞尿を一度に投入堆積できるばかりでなく、有機質廃物の発酵処理槽を容易且つ安価に構築でき、更には、その被処理物の投入堆積及び発酵処理済みの堆肥の取り出しをどの位置からも行えるようにしたオープン式発酵処理装置を特開2001-47013号公報で開示した。その後、本願出願人は、その改良装置を特開2001-079527号公報、同2001-198445号公報、同2002-079213号公報などに開示した。
このオープン式発酵処理装置の構成とこれを用いて有機質廃物の発酵堆化処理する方法は、特に、特開2001-47013号公報に詳細に記載されているように、その図1〜図5に記載のように、処理すべき有機質廃物に水分調整材を添加混合し、発酵に適した含水率に調整した後、これを、オープン式発酵槽内にその長尺開放側面を介して一端から他端まで順次投入堆積し、1M以上の高さに堆積したものを発酵させることと、正,逆回転撹拌機を適時往復走行して発酵中の堆積物を撹拌し、水分を蒸発させることを所要時間繰り返す発酵堆肥化処理を行い、発酵処理済みの堆肥を該長尺開放側面を介してショベル車により取り出すようにしたものである。
【特許文献1】特開2001-47013号公報
【特許文献2】特開2001-79527号公報
【特許文献3】特開2001-198445号公報
【特許文献4】特開2002-79213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし乍ら、上記のエンドレス式発酵装置を用い、その発酵槽の高さが0.6〜0.7Mと低いピット内に糞尿の散布と撹拌を繰り返し行い、最高、高さ0.5Mの堆積物を最も発酵条件の悪い酷寒の冬季において、発酵堆肥化処理する場合、豚や鶏の糞尿は、易分解性の有機質を比較的多く含み分解エネルギーが比較的多量に発生する繊維質の上記水分調整材を添加混合し水分60〜65%程度に調整しても、上記の発酵堆肥化処理法で60℃以上の高温発酵を維持し堆肥化処理することができるが、乳牛の糞尿、木材廃棄物、都市ゴミ、下水汚泥、浄化処理した汚泥、製紙スラッジ、し尿処理済みの汚泥、食品製造カス、家庭用廃棄物、これらの混合物などの高含水有機質廃物は本来、易分解性の有機質が少なく難分解性の繊維質が多く分解エネルギーが少ない上に、更に水分調整材を添加混合し、発酵に適した60〜65%の水分含有量に調整したものを、散布と撹拌を繰り返し乍ら発酵堆肥処理を行うときは、その発酵堆肥化処理の過程で、その堆積物は、外気の影響を受け易く、而も、エンドレス式発酵槽では、堆積物の高さは、最高でも0.5M程度と低いので、温度が40℃以下に低下し、発酵が停止し、発酵堆肥化処理を円滑に行うことができない不都合をもたらした。
また、一方、エンドレス式発酵装置により、豚や鶏の糞尿を発酵堆肥化処理する都度、水分調整材を添加混合し、発酵に適する55〜65%程度の水分含有量に調整する必要があるため、年間を通じての水分調整材の使用量は莫大なものとなり、それだけ経費がかかり、堆肥の生産コストを増大する不都合をもたらす。
また、一方、従来のオープン式発酵装置により、豚や鶏の糞尿、肉牛、乳牛の糞尿、汚泥、スラッジ、生ゴミなどの高含水有機質廃物を発酵堆肥化処理を行う場合にも、その都度、オガ屑、籾殻、麦稈などの水分調整材を添加混合し、発酵に適した55〜65%程度の含水率に調整することが必要であり、年間を通じての使用量は莫大なものがある。水分調整材として、四季に影響されず、一年を通じて常に入手し得るオガ屑が好ましく使用されているが、例えば、100頭の乳牛の生糞7t/日を発酵に適した、例えば、約65%の含水率に調整するには、3t/日のオガ屑が必要であり、年間を通じての使用量と経費は莫大なものとなり、従って、堆肥の生産コストは極めて高いものとなる不都合を伴う。
本願の発明者は、かゝる従来の高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理における上記の課題を解消するべく、鋭意、試験、研究を重ねて来た結果、オープン式発酵槽を利用し、水分調整材の使用量を減少でき、或いは全く使用せずに発酵堆肥化処理を行い、堆肥の生産コストを低下でき、安価な堆肥を生産することができる高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理法及び発酵堆肥化処理装置を開発し、特願2007-053981として出願した。(以下、これを先願と称する)。
【0004】
即ち、該先願の基本的な発明において、高含水有機質廃物に水分調整材を混入し発酵に適した含水量に調整した被処理物をオープン式発酵槽内に投入し、少なくとも1Mの高さに堆積した堆積物を基層として用意し、この発酵中の基層の上面に散布機により高含水有機質廃物を散布することと、次いで、撹拌機により該堆積物と該含水有機質廃物とを撹拌混合することとを繰り返し乍ら、この混合堆積物の発酵を行うことを繰り返し行うことを特徴とする発酵堆肥化処理法を提案した。
また、先願において、上記の発酵堆肥化処理法に適用する発酵堆肥化処理装置の基本的な発明として、該オープン式発酵槽に該散布機と該撹拌機を各別に、且つ夫々往復動走行自在に配設したことを特徴とする装置を提供した。
【0005】
上記の先願の発明に係る基本的な発酵堆肥化処理法及び装置によれば、前記特許文献1〜4に記載の上記の課題が解決され、水分調整材を殆ど使用せずに高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理を行うことができ、製造コストの低下した安価な堆肥をもたらし、その発明の目的を達成し得るが、該散布機により、該混合堆積物の上面に高含水有機質廃物を散布することと、該撹拌機により該堆積物の全体を撹拌することとを繰り返すうちに、該混合堆積物の表層は、水分含有量が約75%以上の混合堆積層が形成されて、発酵が阻害され、高温発酵による堆肥生産ができなくなる不都合を生ずることが判明した。この不都合な現象を検討したところ、該撹拌機により混合堆積物の上面に散布された高含水有機質廃物は、該撹拌機の回転パドルの遠心力により基層の堆積物の粉粒と混ざり乍ら掬い上げられ、前進する撹拌機の後方へ飛ばされ落下集積する際、発酵に適した水分量の少ない比較的軽量な混合物は早く落下集積し、高含水有機質廃物が混ざった水分量の多い重い混合物は遠くへ飛ばされ、遅く落下集積するため、上記の散布と撹拌を繰り返すうちに、遂には、該混合堆積物の表層は含水率が発酵を妨げる75%以上の混合堆積物が生成することとなり、これにより、長期に亘る高含水有機質廃物の高温発酵による堆肥化処理が不可能となる課題を伴うことが判明した。
本発明は、先願の発明の上記の目的を達成すると共に、上記の課題を解決した散布した高含水有機質廃物を常に混合堆積物中に均一に混在し、混合堆積物の全体が常に発酵に適した含水量の状態に保ち円滑に、長期に亘る高含水有機質廃物の発酵堆肥化の連続生産性を可能にした発酵堆肥化処理法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理法は、請求項1に記載の通り、高含水有機質廃物に水分調整材を混入し発酵に適した含水量に調整した被処理物をオープン式発酵槽内に投入し、少なくとも1Mの高さに堆積した堆積物を基層として用意し、この発酵中の基層の上面に散布機により高含水有機質廃物を散布することと、次いで、撹拌機により該堆積物と該含水有機質廃物とを撹拌混合することとを繰り返し乍ら、この混合堆積物の発酵を行うようにしたことを繰り返し行うようにした発酵堆肥化処理法において、該散布機により高含水有機質廃物を散布すると同時に該散布機に設けた撹拌機により該堆積物の上層部を撹拌すること、次いで、該撹拌機により該堆積物の堆積層全体を撹拌することを繰り返すことを特徴とする。
更に本発明は、上記の発酵堆肥化処理法に適用する発酵堆肥化処理装置を提供するもので、請求項2に記載の通り、該オープン式発酵槽に該散布機と該撹拌機を各別に、且つ夫々往復動走行自在に配設し、該散布機は、往復動走行自在の台車上に傾動自在の高含水有機質廃物用容器を具備して成る発酵堆肥化処理装置において、該散布機に、その台車の幅方向の左右から下垂する支持部材に回転自在に且つ水平方向に支持されたロータリー式回転軸の全長に亘り且つその周面に所望の間隔を存して、多数本の撹拌爪を配設して成る該堆積物の上層部を撹拌するためのロータリー式撹拌機を設けると共に、該台車上に設けた撹拌用モータにより伝導装置を介し、該ロータリー式撹拌機を正逆回転し得るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、該分散兼撹拌機により、該基層から成る堆積物の上面に高含水有機質廃物を散布すると同時に撹拌するので、該高含水有機質廃物は、堆積物の上層部の堆肥と均一に撹拌され全体として発酵を阻害しない発酵に適した含水率の混合堆肥の上層部が形成される。その後、撹拌機により、かゝる上層部と発酵に適した基層から成る下層部とから成る全層を撹拌すると、全体が発酵に適した混合堆積物が得られ、上記先願の課題が解消される。
請求項2に係る発明によれば、該散布兼撹拌機の往動走行において該散布機により高含水有機質廃物を該堆積物の上面に散布させると同時に、該撹拌用モータにより該ロータリー式回転軸を正回転させて多数の撹拌爪により該堆積物の上層部を撹拌することにより、該高含水有機質廃物を水分の少ない発酵に適した発酵の上層部の堆肥と混ぜることができ、これにより発酵を阻害しない混合堆肥から成る堆肥の上層部が得られる。次いで、該撹拌機によりかゝる堆積物の全層を撹拌することにより、該上層部と該下層部を混合することができ、更に均一な発酵に適した含水率の混合堆積物が得られる。かくして、先願の上記課題を解決し、常に良好な発酵堆肥化処理を円滑に長期に亘り行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態例を、添付図面を参照し、以下詳述する。
本発明の高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理法は、繊維質が少なく、有機質に富み、発酵時に発生するエネルギーが大きい鶏糞や豚糞、下水汚泥などの高含水有機質廃物にも適用できるが、特に、繊維質が多く、有機質質が少なく、発酵時に発生するエネルギーが少ないため、特に、冬季においては、該気温度の低下による影響を受け易く、発酵不可能となる乳牛の糞尿、活性化処理済みの汚泥、各種食品生産加工業者や家庭などから廃棄される都市ゴミ、食品製造かすなどの高含水有機質廃物に適する。
以下の実施形態例は、乳牛の牛舎から出る乳牛の糞尿(含水率約88%)を発酵堆肥化処理する場合につき説明する。
乳牛の牛舎には、通常敷料として、オガ屑や麦稈を床面に敷いているので、乳牛の糞尿を掃除し牛舎から取り出すと、これら敷料が混じった生糞として回収される。通常、乳牛1等当たりの1日の糞尿は60Kgであるが、この中に10Kgの敷料が混在しているので、回収した生糞は70Kgである。
今、牛舎に100頭の乳牛を飼育している場合を考慮すると、6000Kgの糞尿に1000Kgの敷料と混在した7000Kgの生糞が回収される。糞尿の88%は水分、敷料の30%は水分であるから、生糞の水分は約80%である。
この高含水有機質廃物7000Kg/日を毎日発酵堆肥化処理する方法の本発明の実施形態の1例を、発酵堆肥化条件の最も悪い、冬季の酷寒を考慮し、天日蒸発量0と仮定して以下説明する。
【0009】
図1及び図2は、本発明の発酵堆肥化処理法を実施するための本発明の発酵堆肥化処理装置Aの1例を示すが、本発明の高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理法とその装置は、上記先願の発明の基本的構成を前提条件とするので、先ず、この先願の発明につき以下説明し、その後、その課題を解消する本発明の特徴構成につき説明する。
参照符号1は、上記の特許文献1〜4において公知の形式のオープン式発酵槽を示す。該オープン式発酵槽1は、平面から見てコ字状のコンクリート製発酵槽から成り、その長さ方向の立壁1aの高さは1.9M(メートル)、全長約63M(メートル)とし、その両端の幅方向に延びる立壁1b,1bは夫々高さの1.9M、幅10Mとし、その図面で右側の立壁1bの内側には、長さ方向に約4Mのスペース空間上に撹拌機2を待機位置として配置し、その左側の立壁1bの内側には、長さ方向に約4Mのスペース空間上に散布機3を待機位置として配置すると共に、該撹拌機2及び該散布機3は、その夫々の前後左右に配設した車輪2a,2a,…及び車輪3a,3a,…を該オープン式発酵槽1の長さ方向の立壁1a上に設置したレール4上と該長尺開放側面1c側の床面a上を転動走行するようにし、両機2,3は夫々各別に該オープン式発酵槽1の長さ方向に往復動走行自在とした。かくして、その両機2,3間の立壁1aの長さ55Mに対応するスペース空間をその長尺開放側面1cを介して被処理物の投入堆積用空間とした発酵堆肥化処理装置に構成した。尚、電槽の底面aは、図示しないが、コンクリート舗装面とし、周知の手段でエアー吹き出し供給管を多数配設しておくことが好ましい。
【0010】
上記の7000Kgの生糞を発酵堆肥化処理するため、好気性細菌による発酵に適した含水率55〜70%の被処理物にすることが好ましい。特に高温発酵に適した55〜68%の範囲の例えば、含水率65%とするため、3000Kgのオガ屑を7000Kgの生糞に添加し、撹拌混合し、10000Kgの被処理物を作製する。該被処理物10000Kgは容量に換算すると10000Kg÷0.76=13.15m3となる。かくして、毎日、上記のように水分調整して成る10000Kgの被処理物を調整し、上記のオープン式発酵槽1の投入堆積用空間にショベル車により毎日、その左端から右端に順次投入堆積することを57日間行えば、オープン式発酵槽1内に57000Kgの堆積物、容積として749m3(堆積高さ1.7M×幅8M×長さ55M)の堆積物が該投入堆積用空間全面に堆積収容される。この堆積物を図4及び図5ではBとして表示した。
上記の投入堆積作業の間に、毎日投入堆積された各被処理物は発酵を開始するが、撹拌機2を往復動走行させて撹拌することにより、堆積物全体をならすと共に、外気(酸素)を導入供給し、好気的細菌の発酵作用、即ち、有機質分解作用を促進させ、これに伴う分解エネルギーにより通常60〜75℃、最高85℃の高温発酵をもたらし、また、発酵による水分の蒸発をもたらす。上記の堆積物3の高さは1.7Mを有するので、冬季においても60〜75℃の高温発酵を維持でき、本発明の特徴とする下記する発酵堆肥化処理を可能とする。
【0011】
先願の発明によれば、更に上記の被処理物の堆積作業を終了後、上記の発酵中の堆積物を基層とし、その上面に高含水有機質廃物の所定量をオープン式発酵槽に配置した散布機により散布することと、次いで、撹拌機により散布された高含水有機質質廃物と該発酵中の堆積層とを撹拌混合して、混合堆積物の高温発酵を維持し、好気的細菌による散布された高含水有機質廃物の分解、その分解エネルギーと水分の蒸発とを繰り返すことにより、水分調整材を全く使用しないで堆肥化処理を行い、生産コストの低下した堆肥が得られるようにしたものである。
【0012】
上記の実施例では、散布される高含水有機質廃物の所定量は、前記のように、100頭の乳牛が1日に排出する6000Kgの糞尿に1000Kgの敷料が混入した7000Kg(水分80%)の生糞である。而して、上記のように、オープン式発酵槽内に投入された70℃以上に発酵中の水分65%を含有する堆積物を基層Bとし、その上面に、上記の7000Kgの生糞(水分80%)を散布機3を往復動走行させて散布する。即ち、該基層Bの面積55M×8M=440m2を有する上面に7000Kgの生糞を均一に散布する。即ち、7t×830Kg/m3(容積重)=8.44m3を散布する。次いで、撹拌機2により撹拌することにより、該発酵中の堆積物、即ち、基層B中に該生糞が分散混入し、この混合堆積物の状態で静置し、24時間発酵させる。この撹拌時に、厳冬の冬季では、冷たい外気が混合堆積物中に混入し、一時的に発酵温度が30℃に低下するが、堆積物の高さが1.7Mと高く且つ新しく供給された生糞が混在するので、酸素供給と併せて、好気的細菌の活性を促進し、直ちに60℃以上の高温発酵温度に回復し、散布混在された生糞の発酵分解が活発に行われることとなる。混入時の混合堆積物の水分は65.18%となるが、発酵に適した含水率が維持されている。かくして、発酵条件が最低の24時間の発酵過程で天日蒸発0リットル/m2の場合でも、水分0.2%程度蒸発し、再び混合堆積物の含水率は65%に戻っている。この発酵中の混合堆積物の上面に、再び散布機3により生糞7000Kgを散布し、次いで、撹拌機2により生糞と混合堆積物とを撹拌混合し、24時間放置する。このようにして、毎日、7000Kgの生糞を毎日散布と撹拌とを繰り返す。かくして、散布開始から40日を経過すると、生産された堆肥の混合堆積物B′の高さは、図5に示すように、1.9Mとなり、少なくともその翌日まで放置し、発酵を続け、堆肥化処理を終了する。図2で生糞の散布分のみで1.7Mから1.9Mに高くなった混合堆肥の増量分を便宜上bで示した。かくして、該オープン式発酵槽A内に品温60℃〜75℃、しばしば80℃以上を有し、含水率65%の堆肥の堆積物が得られるので、その長尺開放側面のどこからでも生産された堆肥をショベル車で取り出すことができる。また、このようにして得られた堆肥は、アンモニアガス、その他の有害ガスが除去され、且つ被処理物中に含まれている種子、害虫の死滅した良質の堆肥として得られる。
尚、上記先願の発明の実施形態例では、散布機3により毎日散布し、ついで撹拌機2により堆積物を撹拌した実施例を示したが、散布機3により例えば2〜3日散布し、次いで撹拌機2により撹拌するようにしてもよいことは言うまでもない。
このように、本発明の上記の発酵堆肥化処理法によれば、従来の生糞7000Kgに3000Kgの、即ち、生糞に対し約43%のオガ屑を混合した被処理物を高さ1.9M×幅8M×長さ55Mに投入堆積した堆積物を発酵堆肥化処理するに比し、水分調整材の使用量を著しく少なくでき、堆肥の生産コストを低減でき、経費の観点からみるときは、例えば、一年を通じて使用される水分調整材に要する経費を著しく低減できる。
【0013】
上記の発酵堆肥化処理法に従い、堆肥化を終了した堆積物は、その全部を取り出し、これを生産品とし出荷したり、或いは、更に発酵熟成させるために別室に設けた二次発酵用のオープン式発酵槽に堆積して更に高温発酵を継続させた堆肥とするようにしてもよい。
一方、空になった上記のオープン式発酵槽に、再び上記の第1実施形態例と同じようにして、生糞に水分調整材を混合したものを投入堆積して基層Bを設けるようにしてもよいが、上記の方法で生産した1.9Mの高さを有する堆肥堆積物の一部を元の1.7Mの高さとなるまで取り出し、図1及び図2に示す1.7Mの高さとした発酵中の堆肥の堆積物をそのまま基層Bとして利用し、この基層Bの上面に、以降は、先の第1実施例と同じ方法で、散布機による生糞などの高含水有機質廃物の散布と撹拌機による撹拌混合とを上記と同様にその堆積物の高さが1.9Mとなるまで40日繰り返す発酵堆肥化処理を行い、堆肥を生産するようにすることが好ましい。
この発酵堆肥化処理法によれば、始めから全く水分調整材を使用しなくてすむ高含水有機質廃物の堆肥化処理ができる。従って、これに伴い、上記の第1実施形態例の場合と異なり、高含水有機質廃物の水分調整作業を必要とせず、従って、作業能率の向上と共に、第1実施例に引き続き連続して堆肥化処理を行うことができ、堆肥の生産コストを更に低下でき、より安価な堆肥が得られる効果をもたらす。
かくして、発酵中の混合堆積物の高さが再び1.9Mとなったとき、再び一部の堆肥を取り出し、1.7Mの発酵中の基層とし、その上面に上記の生糞の散布、撹拌を繰り返し連続的に発酵堆肥化処理を行う。このように、散布と撹拌の都度新たな生糞が1.7M以上の高さの堆積物が供給されるので、分解エネルギーを生じると共に、外気に影響されることなく、常に60℃以上の高温発酵を維持した堆肥を得ることができるので、天日蒸発量0/m2の冬季などにおいても、堆肥の連続生産が可能となる。
【0014】
上記第2実施形態例における上記の堆肥堆積物の一部取り出しは、上記の増量分に対応する量を該堆肥堆積物の所望の1個所から取り出してもよいが、図6に示すように、55Mの該堆肥堆積物の長さ方向に間隔を存して複数個所で部分的に取り出す。参照符号Cは、取り出した跡の空所を示す。その取り出し総量が上記の増量分と等しく取り出すことにより、もとの1.7Mの高さの基層に戻すようにすることが好ましい。この堆肥取り出し後、堆積物全体を往復動走行する撹拌機により撹拌することにより、1.7Mの高さに均一にならし、基層の上面を平坦にならすことができる。
【0015】
要するに、本発明の発酵堆肥化処理法は、発酵中の基層が有する有機質分解エネルギーを利用して、散布混入された高含水有機質廃物の分解と水分の蒸発を行われるようにし、その混合堆積層の有機質分解エネルギーによりその上面に散布された高含水有機質廃物の有機質分解と水分蒸発を行なわれるようにすればよい。
上記の実施例において、被処理物の基槽の高さを1.7Mと設定した理由は、多くの試験研究により、最も気温の低い冬季の場合の天日蒸発0リットル/m2を想定し、基層自身の有機質分解エネルギーにより60〜75℃の高温発酵を維持するには、その基槽の高さが1.7Mあれば最も安定した高温発酵を維持することができることを知見したことに基づく。
而して、1.7Mの高さがあれば、撹拌機により撹拌されたとき、冷気が基層又は混合堆積層に入って発酵温度は一旦急激に下がるが、直ちに高温発酵に回復するので、差支えがないことが確認された。
尚、その発酵に適した水分含有量は、約65%に限定されないことは勿論であり、55〜70%の範囲であればよい。
従って、冬季よりは気温の高い春、夏、秋の場合には、基層の堆積高さは1.7M以下でもよく、1Mまで低くしてもよいが、1.2〜1.5Mが安定した発酵堆肥処理ができ好ましい。尚、季節や気温により天日蒸発は1〜5リットル/m2と異なるので、これに伴い、発酵期間や最終的に目標とする堆肥の分解率や含水率を適当に選択する。
【0016】
尚、乳牛糞やオガ屑、籾殻、麦稈などの水分調整材は難分解性物質が多いため、その分解率は低く、中央畜産会文献によれば、乳牛の分解率は1%/日、平均0.5/日〜0.7%/日、水分調整材は0.3〜0.4%とされている。従って、これらは、長期間に亘り徐々に分解エネルギーを発生続ける性質を有するので、上記の方法で生産した堆肥を用いても、未だ発酵中の堆肥である限り基層として使用でき、この基層の上面に易分解性と難分解性の混じった高含水有機質廃物を該基層の高温発酵作用を妨げない程度の量を新しく散布供給し撹拌混合することにより、混合堆積物の分解率は向上し、高温発酵を維持することができることとなることが判る。
【0017】
上記の実施例では、オープン式発酵槽1として、基層の堆積物を収容する立壁1aの長さ55M(左右端の撹拌機及び散布機を待機させる夫々の長さ方向の寸法約4M,4Mを含まない)高さ1.9M、幅10Mのものを示したが、これに限定されないことは勿論であり、毎日処理すべき被処理物の量の大小に応じて、オープン式発酵槽の寸法は、その長さ、高さ、幅の異なる種々のものを設備し、使用することができる。例えば、上記実施例より大規模なオープン式発酵槽としては、長さ100M、高さ1.5M、幅10Mのもの、長さ100M、高さ1.8M、幅6Mのものなどを適宜設備し、使用できる。
また、従来から一般に行われているように、オープン式発酵槽の底面には、図示しないが、その長さ方向に間隔を存して無数の小孔を穿設した通気用支管の多数本を幅方向に延びる凹溝内に配設し、オープン式発酵槽の外部の主管に接続せしめた通気装置を配設し、適時、発酵槽内の発酵中の堆積物内にその下面のこれら通気用支管から圧縮空気を吹き込み酸素を供給するようにしてもよい。
【0018】
更に先願の発明によれば、第3実施形態例として次のような発酵堆肥化処理法を行ってもよい。即ち、上記の第1実施形態例や第2実施形態例で生産した堆肥の一部分を適時ショベル車で取り出し、搬送し、別に設けたオープン式発酵槽内に所望の高さに投入堆積して発酵中の堆肥堆積物から成る基層を作成用意し、この発酵中の該堆肥基層の上面に、乳牛の生糞、汚泥、生ゴミ、豚の生糞、鶏の生糞などの高含水有機質廃物を散布機を走行させ乍ら散布し、その後、撹拌機を走行させて散布された高含水有機質廃物の散布層と該基層とを撹拌して混合堆積物とし、以降は、上記の散布、撹拌を繰り返すことを所望日数行う発酵堆肥化処理を行うことにより、堆肥を生産する。かくして、全く初めから水分調整材を全く使用しない安価な堆肥を生産することができる。
上記の堆肥基層は、未だ完熟したものではないため、発酵エネルギーを有し、その上面に高含水有機質廃物が散布され、撹拌により堆肥中に混在されるため、その混合堆肥堆積層の高温発酵が行われ、水分調整材を要しない経済的な堆肥が得られる。
【0019】
図示の該撹拌機2では、基本構造を具備した上記の特許文献1に記載の撹拌機と同じ構成を有するものを使用したが、特許文献2〜4に記載の撹拌機、その他の所望の撹拌機を使用してもよいことは勿論である。
即ち、図7及び図8において、撹拌機2はロータリー式撹拌機を示し、そのロータリー式回転軸5は該撹拌機2の台車6の下面に平行に幅方向に架設され、可逆モータ7により伝導装置8を介し、夫々正,逆回転自在に駆動される。
該台車6は、H形鋼材で形成された長矩形状の囲枠6aと図7示において、該囲枠6aの左側の枠部材により支持され、レール4上に載置される前後の車輪2a,2aと該囲枠6aの右側の枠部材から下垂するH形鋼材で形成された前後の脚6b,6bに支持され、床面a上に載置された前後の車輪2a,2aとから成り、左右の車輪2a,2aは該囲枠6a上に設置された左右の可逆モータ9,9により伝導装置10,10を介し、夫々往復動走行自在に駆動される。該撹拌機2の走行速度は、20〜50cm/分、そのロータリー式回転軸5の回転速度は25〜40回転/分で一般に運転される。
該回転軸5には、その長さ方向に且つ周面に多数本のパドル11,11,…を螺旋状に配設した。各パドル11は、適当に広幅で板状又は角型の長杆から成り、その長さは、床面aに摺接する程に長手であり、その先端には、堆積物を掬い上げる板状、爪状などの掬い上げ部材11aを有し、且つ相隣るパドル11,11の掬い上げ部材11a,11aの対向端側は、互いに重なるような位置に存し、かくして、床面a上の堆積物をその幅全長に亘り隙間なく掬い上げることができるようにした。図面で、12はケーブル、13はケーブルリール、14はコントロールボックスを示す。尚、コントロールボックス14の内部には、タイマー、変流器、撹拌機起動用インバータ、メーターリレー、シーケンサー、ノイズフィルターなどの各種電気・電子機器から成る種々の自動制御装置が内蔵され、電源ランプ、起動ボタン、自動運転用ボタン、非常停止ボタンなどの所望の操作用ボタン(図示しない)を外部から操作できるような構成が配備されている。
該撹拌機2を待機位置から長さ55Mを往復動させるため、その台車6の囲枠6aのレール側の枠部材より該長手の立壁1aの上方を横断し外方へ突設した支持基板15から下垂せしめて前側の反転リミットスイッチ15aと後側の全停止リミットスイッチ15bを配設する一方、図3に明示するように、予め、該立壁1aの外壁面に、その撹拌機2の待機位置側に該後側の全停止リミットスイッチ15bと当接する位置に支点側接触子16bと該撹拌機2が55Mを往動走行した時点で、該反転リミットスイッチ15aが当接する位置に終点側接触子16aとを突出配設しておき、該コントロールボックス14に設けてあるスタートボタンを押すことにより、該撹拌機2を往動走行せしめ、長さ55mを走行した時点で、該前側反転リミットスイッチ15aが該立壁1aの外面に突設している終点側の接触子16aに当接し、これにより、該撹拌機2は逆方向に、復動走行を開始し、55M走行し、該後側の全停止リミットスイッチ15bが該支点側の接触子16bと当接することにより、該撹拌機2は停止し、かくして、1回の往復動走行が行われるように構成されている。
【0020】
図9乃至図13は、散布機3を示す。該散布機3は、台車20と高含水有機質廃物から成る原料を受容するためのタンク21とから成る。該台車20は、囲枠20aと図9において、H形鋼により形成された長矩形状の該囲枠20aのオープン側の枠部材から下垂して設けた形鋼により十字格子状に形成された脚部20bと、その下端枠部材に配設され、床面a上に載置された前後の車輪3a,3aと、該囲枠20aのレール側の枠部材20cと、その前後に延設されたH形鋼から成る枠部材20d,20dとに配設され、レール4上に載置された3個の車輪3a,3a,3aとから成る。床面a上の該前後の車輪3a,3aは、該脚部20bの前後の空間内に配設した走行用可逆モータ22,22により夫々該オープン式発酵槽1の長尺開放面1c側の床上を往復動走行自在に伝導装置23,23を介し駆動される一方、レール4上の前後の車輪3a,3aは、可逆モータ24,24により、夫々、伝導装置25,25を介して往復動走行自在に駆動される。その中間の車輪3aは、前側の車輪3aとの間に差し渡された伝導ベルト26により接続されており、前側の車輪3aの駆動に連動して往復動走行自在に駆動されるようにした。該散布機3の走行速度は1.3〜2M/分の範囲から適宜選択される。
【0021】
該タンク21は、台車20の該長矩形の囲枠20aの上面にH形鋼材により形成した長矩形状の支持囲枠27内の空間内に回転傾動自在に設けられる。散布機の1回の走行で一度に散布すべき発酵処理すべき原料の容量や負荷に応じて、タンク21の数や容量は定められる。該台車20の該支持囲枠27内の空間に、少なくとも1つのタンク21を設けるが、図示の例では、2個を左右に配設し、各タンク21の原料に対する負荷を軽減したものである。更に詳細には、各タンク21は、容量約4m3を有する容器から成り、その形状は方形の筐形でもよいが、図示の例では、半円筒状とした。両タンク21,21の合計の容量約8m3とし、前記した発酵堆肥化処理済みの実施例に適するように、乳牛から搬出される1日分の生糞7000Kg(即ち、容量8.44m3)が両タンク21,21内に投入し得るものに形成すると共に、各タンク21の負荷を軽減せしめた。
各タンク21は、該半円筒状の容器の中心軸線上に配置した回転軸21aの両端を該容器の両端壁の外面に突出させ、その軸の両端を夫々軸受け21b,21bにより回転自在に支持せしめた。その各タンク21の該両端の軸受け21b,21bは、該長矩形支持囲枠27aの前後の形鋼から成る部材27a,27a間に差し渡された形鋼から成る支持枠部材27b,27b,27bに支持されている。
【0022】
左右タンク21,21の外側に位置して、該支持囲枠27上に設けた前記の左右の支持囲枠27上にタンク回転用可逆モータ28,28を夫々設け、これら左右のタンク回転用モータ28,28により、夫々の左右のタンク21,21を正,逆回転せしめるようにした。
更に詳細には、各タンク21はカップリング29を介し、減速機30に接続され、該減速機30は、チェーンスプロケット伝導装置31を介しタンク回転駆動軸32に接続し、更に、該タンク回転駆動軸32の中間に各タンク21の左右端に対応する位置に夫々配設した各一対のタンク回転用スプロケット33,33及び33,33は、図14に明示のように、各タンク21の円弧状底面に突出させた円弧状リブ21c,21cへの側面に沿い配設した各一対のタンク回転用チェーン34,34との噛み合い連結するようにした。32aは、軸受けを示す。
かくして、左右のタンク回転用可逆モータ28,28により、これら連結伝導機構を介して、夫々のタンク21,21が、図14(a)に示す原料、即ち、高含水有機質廃物の積み込み時の開口面が真上に向いた状態から、回転傾動し、図14(b)に示す同原料の散布終了時の該開口面が斜め下向きに傾斜した状態に、図示の例では、120°の範囲で回転傾動するようにした。34aは該チェーン34の張りを調節するテンション装置を示す。
【0023】
該散布機3により、原料である高含水有機質廃物の散布を行う場合に、該原料中に、団塊物が混入していることが多い。従って、原料の散布作業において、各タンク21から基層又は散布後の撹拌堆積物の上面に落下する以前に、団塊を細かく切砕する細砕装置35を設けることが好ましい。該細砕装置35は、図に示す実施例では、左右の各タンク21が回動傾動したとき、原料が落下する側に、その各タンク21の縁に沿い幅方向全長に亘り中実又はパイプなどの中空の長手の回転体35aとその全長及び全外周に亘り多数の突設した所望形状の細砕爪35b,35b,…とから成り、その長手の回転体35aの両端は各タンク21の両端壁の前側の両隅角部に対向配設したベアリング36,36により回転自在に支持せしめ、左右の各タンク21の該長手の回転体35aが位置する側と反対側の位置に該タンク21の両端壁の後側の両隅角部に配設した細砕装置回転用可逆モータ37により該モータ37と該長手の回転体35aとの間に差し渡した伝導ベルト38を介して該長手の回転体35a、即ち、細砕装置35を高速回転させるようにした。図で39は、該伝導ベルト38の張りを調節するテンション装置を示す。
かくして、各該タンク21内の原料がタンク21の下向きに回転傾動して落下する過程で、その高速回転する長手の回転体35aの多数の破砕爪35b,35b,…により、原料中に含まれる団塊は細砕され、均一な散布層bを形成することができるようにした。
尚、該散布機3の全ての運転は、コントロールボックス40内の自動制御装置により所定のプログラムに従って自動制御が行われる。41は、ケーブルリールを示す。
該散布機3の左右のタンク21,21は、同時に正,逆いずれの方向にも回転傾動されるようにし、120度回転し、散布し終わった55M走行したところで、センサー(図示しない)により、自動的に復動走行して出発時の元の位置に戻り停止し、次の原料の受け入れ状態となるように、プログラム制御されている。
【0024】
図14は、タンク21の作動の説明を便利にするため、該タンク21に設置されている該タンク回転用可逆モータ28を省いている。
同図において、HLSはタンク21側に設けた水平接触子HCに対向する位置で、該支持囲枠27側に設けた水平位置リミットスイッチ、ICは該水平接触子HCから120°の回転角度位置に、該タンク21の該円弧状底面から突出させて設けた傾斜接触子、ITLSは該支持囲枠27側に設けた傾斜ターンリミットスイッチを示す。
左右のタンク21,21は、該コントロールボックス40のスタートボタンを押すことにより、該コントロールボックス40内のシーケンサーを介し同期して作動され、その各タンク21は、図14(a)の実線示から図14(b)の鎖線示まで120°回転したところで、該傾斜接触子ICは該傾斜ターンリミットスイッチITLSに当接し、該タンク21を反転回動し、該水平接触子HSLが水平となり、該水平位置リミットスイッチHLSと接触したところで、該タンク21は停止するように作動する。
尚、上記実施例の場合には、該コントロールボックス41内の自動制御装置により該タンク21の始動に同期して該細砕装置35の回転体35aの回転が始まり、該タンク21が55M走行し終わった時点で、120°の回転傾動による原料の散布が終わるようにし、そのタンク21の反転回動が開始された時点で、該細砕装置35の回転体35aの回動は休止するようにプログラム制御されている。
【0025】
尚、該コントロールボックス40内には、散布機3の往復動走行とタンク21,21の所定角度の往復回転動とが同期するなどの種々のシーケンサープログラム自動制御装置を具備する。
該散布機3を待機位置から長さ55Mを往復動させるため、次のような機構を具備している。即ち、その台車20の囲枠20aのレール側の枠部材20cより該長手の立壁1aの上方を横断し外方へ突出した前側の支持基板42と後側の支持基板42から夫々下垂せしめて前側の反転リミットスイッチ42aと後側の全停止リミットスイッチ42bを配設する一方、図3に示すように、予め、該立壁1aの外壁面に、その待機位置側に、該後側の全停止リミットスイッチ42bと当接する位置に始点側接触子43aと該散布機3が55Mを往動走行した時点で、該反転リミットスイッチ42aが当接する位置に終点側接触子43bとを突出配設しておき、該コントロールボックス40に設けてあるスタートボタンを押すことにより、該散布機3を往動走行せしめ、長さ55Mを走行した時点で、該前側の反転リミットスイッチ42aが該立壁1aの外面に突設している終点側の接触子43bに当接し、これにより、該散布機3は逆方向に復動走行を開始し、55M走行し、該全停止リミットスイッチ42bが該始点側接触子43aに当接することにより、該散布機3は停止し、かくして、1回の往復動走行が行われるように構成されている。
【0026】
尚、図8及び図11に示すように、該撹拌機2の上記の自動往復動走行を円滑に行わせるため、その前後の反転リミットスイッチ15a及び全停止リミットスイッチ15bが、その走行途上で該散布機3の終点側の接触子43bと当接しないように、該終点側の接触子43bを予め該撹拌機2の反転リミットスイッチ15aと全停止リミットスイッチ15bの走行軌道から外れた位置に、例えば、その走行軌道の外側又は内側に設置して置くようにし、同様に、該散布機3の上記の自動往復動走行を円滑に行わせるため、その走行途上でその前後の反転リミットスイッチ42a及び全停止リミットスイッチ42bが、該撹拌機2の終点側の接触子16aに当接しないように、該終点側の接触子16aを、予め該散布機3の反転リミットスイッチ42aと全停止リミットスイッチ42bの走行軌道から外れた位置に、例えば、その走行軌道の外側又は内側に設置して置くようにする。図示の例では、該撹拌機2の該反転リミットスイッチ15a及び全停止リミットスイッチ15bの走行軌道の外側に該散布機3の接触子43bを設置し、該散布機3の該反転リミットスイッチ42a及び全停止リミットスイッチ42bの走行軌道の内側に該撹拌機2の終点側の接触子16aを設置した。
【0027】
以上のように、先願の発明に従い、該散布機3により該基層Bの上面に高含水有機廃物を散布することと、次いで、該撹拌機2により撹拌することを繰り返すうちに、図22に示すように、前進する撹拌機2の後方に水分の少ない軽い混合物は早く落下堆積して混合堆積層B′を形成し、水分80〜85%の高含水有機質廃物の混ざった水分の多い混合物は、該混合堆積物B′の表層を形成することとなる。この表層Cは、水分75%以上の堆積物であるため、それ以後、該混合堆積物B′の高温発酵が阻止されるので、長期間の連続した発酵堆肥化処理が不可能となる不都合を生じた。図面でWは、高含水有機質廃物の散布層を示す。
【0028】
本発明によれば、上記の課題を解決するため、該散布機により高含水有機質廃物を散布すると同時に該散布機に設けた撹拌機により該堆積物の上層部を撹拌すること、次いで、該撹拌機により該堆積物の堆積層全体を撹拌することを繰り返すことを特徴とする発酵堆肥化処理法に存する。
次に、本発明の特徴とする上記の処理法と該処理法を実施するに適した発酵堆肥化処理装置の実施の形態例につき以下詳述する。
【0029】
該散布機3の台車20の幅方向の左右から下垂する支持部材50,50に、回転自在に且つ水平方向に支持されたロータリー式回転軸51の全長に亘り、且つその全周に所望の間隔を存して多数本の撹拌爪52,52,…を配設して成る堆積物の上層部を撹拌するためのロータリー式撹拌機53を設ける一方、該台車20上に設けた撹拌用モータ54により、伝導装置55を介して、図示の例では、チェーンスプロケット式伝導装置55を介して、該ロータリー式撹拌機53を正逆回転し得るようにした。
該台車20から下方に横設する該ロータリー式撹拌機53は、堆積物の上層部を撹拌するに適するように、該台車20から下方に横設されるが、堆積物の上層部とは、例えば、堆積物の全高に対しその表面から約3分の1までの深さを意味するが、この値に勿論限定するものではない。この場合の該堆積物とは、先の実施例に例をとれば、予め、発酵に適した含水率に調製した被堆肥化処理物を所望の高さ、実施例では1.7Mの高さに堆積して成る基層Bや該基層の上面に散布機3により散布を繰り返し、最終の予定の高さ、実施例1では1.9Mの高さの堆肥化済みの堆積物を得るまでの混合堆積物を意味する。
該撹拌爪52の回転数は、コントロールボックス40内に設けたインバータ制御により、毎分80〜150回転の範囲とし、堆積物の混合状態により、回転数を選択できるようにした。
また、該ロータリー式回転軸51に配設した多数本の撹拌爪52,52,…は、その正回転及び逆回転において夫々該上層部の堆積物を撹拌するに適するように、図12に明示するように、互いに反対方向に弯曲せしめた正回転時の撹拌爪52,52,…と逆回転時の撹拌爪52,52,…とを夫々該ロータリー式回転軸51の全周面に且つ長さ方向に渦旋状に配設せしめ、これにより、該散布機3の往動走行時に該上層部を撹拌するばかりでなく、その復動走行において該上層部を再び撹拌するようにし、糞尿に含まれる団塊の粉砕と共に、糞尿の発酵堆積物の粉粒との混合とを2度行い、該上層部に良好な混合堆積物が得られるようにした。
【0030】
図面において、56は、該ロータリー式回転軸51を支持部材50,50に回転自在に支持するための軸受け、57は、各撹拌爪52の爪ホルダーを示す。該チェーンスプロケット装置55は、該撹拌用モータ54側のスプロケット55aとロータリー式回転軸51側のスプロケット55bと、これらスプロケット間55a,55bに跨るローラーチェーン55cとから成る。58aは、モータ側のスプロケットカバー、58bは、ロータリー回転軸側のスプロケットカバーを示す。59は、撹拌用モータ座、60は、テンションボルトを示す。
【0031】
次に、該オープン式発酵槽1の一端に該ロータリー式撹拌機53を具備した該散布機3を配置し、その他端に該撹拌機2を配置した本発明の高含水有機質廃物の発酵堆肥化処理装置Aによる発酵堆肥化処理方法の実施例を図20及び図21を参照し、説明する。
該散布機3を該オープン式発酵槽1の一端から往動走行させると共に、該タンク21を下向きに回動傾動させて糞尿の落下を開始する。この場合、同時に、該細砕装置35を作動させることが好ましい。かくして、水分約65%の堆積物から成る基層Bの上面に糞尿の散布を開始する一方、同時に該ロータリー式撹拌機53を正回転させ、この状態で該散布機3を往動走行させる。然るときは、図20に示すように、正回転するロータリー回転機53の撹拌爪52,52,…により、その前方の該基層Bの上面に散布された糞尿層Wは、該基層Bの該上層部Uと撹拌混合され乍ら後方に送られて発酵に適した水分66%程度の混合堆積物WBとなるため、該上層部Uは、該下層部Lと共に、高温発酵による堆肥化処理が円滑に行われる。一方、同時に、該ロータリー回転機53の回転撹拌により、糞尿にしばしば混入している団塊も粉砕され、該上層部Uの堆積物の粉粒と混合され、発酵性能の向上した均一な細粒から成る混合堆積物WBが得られる。該散布機3が該オープン式発酵槽1の近傍に達し、糞尿の散布を終了したとき、該散布機3の復動走行が開始されるが、この復動走行において、該ロータリー式撹拌機53を逆回転させて、元のスタート位置まで走行させるが、その間、この逆回転時にその撹拌爪52,52,…により、該上層部Uの混合堆積物WBは、再び撹拌されるので、更に微細な混合堆積物となり、更に均一で且つ更に発酵分解性能が向上した混合堆積物WBが得られる。かくして、散布機3による糞尿散布を繰り返しても、発酵が阻止されることがなく、先願の発明の課題が解決される。
次いで、図21に示すように、該オープン式発酵槽1の他端に配置の該撹拌機2を往動走行させ、そのロータリー式撹拌機5を正回転させることにより、該上層部Uの混合堆積物WBとその下層部Lの基層堆積物Bから成る堆積物の堆積層全体を掬い上げるように撹拌するときは、該上層部Uと該下層部Lとは混合状態でその後方に堆積し、全体として水分約62〜63%程度の混合堆積物Eが得られるので、良好な高温発酵が維持される。その後、この混合堆積物Eの上面に上記と同様の該散布機3による糞尿散布と同時に糞尿層Wと該混合堆積物Eの上層部の撹拌混合を行うことと、次いで、該撹拌機2による該上層部と下層部とから成る堆積物の堆積層全体を撹拌することとを繰り返し行うことにより、常に、高温発酵の堆肥化を円滑に且つ所望の長期間に亘り継続して行うことができる。このようにして、所定の高さの堆肥化処理済みの堆積物が得られたときに発酵堆肥化処理作業を終了する。
尚、夏季や冬季の気温の変化、発酵状態などの状況を見て、該散布機3の往動走行における散布と撹拌を同時に行うことを毎日行う必要はなく、所望により2日〜4日程度連続して行い、次いで、該撹拌機2による全体撹拌を行うようにしても良い。
尚また、実施例においては、オープン式発酵槽1の長さ、高さなどの規模や該散布機2のタンク21の容量或いは発酵状況などを考慮し、該散布機2の復動走行時においても、糞尿の散布と同時に上層部の撹拌を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の発酵堆肥化処理装置の1例を示す平面図。
【図2】同装置の正面図。
【図3】同装置の背面図。
【図4】オープン式発酵槽内に所定の高さまで発酵に適した基層を設けた本発明の発酵堆肥化処理法の第1処理工程を済ませた状態を示す平面図。
【図5】図4示の状態におけるオープン式発酵槽の幅方向の拡大截断面図。
【図6】該基層上面に所定の高さまで高含水有機質廃物の散布と撹拌を繰り返し、堆肥化処理済みの堆積物を得る第2処理工程を済ませた状態を示す図4に類似の拡大断面図。
【図7】発酵堆肥化処理済みの堆肥の一部をオープン発酵槽から図1に示す元の堆積高さになるまで取り出した状態を示す平面図。
【図8】図1のI-I線矢示方向から見た撹拌機の拡大正面図。
【図9】図8示の撹拌機の右側面図。
【図10】図8示の撹拌機の背面図。
【図11】図1のII-II線矢示方向に見た本発明の撹拌機を設けた散布機の一部を截除した拡大正面図。
【図12】図11示の該散布機の一部を截除した左側面図。
【図13】図11示の該散布機の右側面図。
【図14】図11示の該散布機の平面図。
【図15】図11示の該散布機の一部を截除した背面図。
【図16】該散布機の原料タンクの回転作動状態を示し、図16(a)は高含水有機質廃物の積込み時の状態を示す図、図16(b)は散布終了時の状態を示す図。
【図17】図11の該散布機の左端側の拡大正面図。
【図18】図11の該散布機の右端側の拡大正面図。
【図19】図11のA-A線裁断拡大図。
【図20】本発明の発酵堆肥化処理法の第1処理工程における該散布機の作動状態を示す図。
【図21】本発明の発酵堆肥化処理法の第2処理工程における該散布機の作動状態を示す図。
【図22】先願の発明の発酵堆肥化処理装置を用いた発酵堆肥化処理法の第2処理工程における該撹拌機の作動状態を示す図。
【符号の説明】
【0033】
A 発酵堆肥化処理装置
1 オープン式発酵槽
2 撹拌機
3 散布機
4 レール
B 堆積物、基層
B′ 混合堆積物
b 散布層分の高さ
20 台車
21 タンク
35 細砕装置
50 支持部材
51 ロータリー式回転軸
52 撹拌爪
53 ロータリー式撹拌機
54 撹拌用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水有機質廃物に水分調整材を混入し発酵に適した含水量に調整した被処理物をオープン式発酵槽内に投入し、少なくとも1Mの高さに堆積した堆積物を基層として用意し、この発酵中の基層の上面に散布機により高含水有機質廃物を散布することと、次いで、撹拌機により該堆積物と該含水有機質廃物とを撹拌混合することとを繰り返し乍ら、この混合堆積物の発酵を行うようにしたことを繰り返し行うようにした発酵堆肥化処理法において、該散布機により高含水有機質廃物を散布すると同時に該散布機に設けた撹拌機により該堆積物の上層部を撹拌すること、次いで、該撹拌機により該堆積物の堆積層全体を撹拌することを繰り返すことを特徴とする発酵堆肥化処理法。
【請求項2】
該オープン式発酵槽に該散布機と該撹拌機を各別に、且つ夫々往復動走行自在に配設し、該散布機は、往復動走行自在の台車上に傾動自在の高含水有機質廃物用容器を具備して成る発酵堆肥化処理装置において、該散布機に、その台車の幅方向の左右から下垂する支持部材に回転自在に且つ水平方向に支持されたロータリー式回転軸の全長に亘り且つその周面に所望の間隔を存して、多数本の撹拌爪を配設して成る該堆積物の上層部を撹拌するためのロータリー式撹拌機を設けると共に、該台車上に設けた撹拌用モータにより伝導装置を介し、該ロータリー式撹拌機を正逆回転し得るようにしたことを特徴とする発酵堆肥化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−23858(P2009−23858A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186823(P2007−186823)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(502110252)
【Fターム(参考)】