説明

発電システム

【課題】余分な二酸化炭素を排出することなく太陽光発電で用いられる熱媒体の温度低下を防止することができる発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム1は、ガスタービン11を駆動して発電を行うガスタービン発電機10と、ガスタービン11の排熱を回収して作動媒体の蒸気を生成する排熱回収ボイラ20と、太陽熱を収集して熱媒体を加熱するとともに熱媒体と作動媒体との間で熱交換を行って作動媒体の蒸気を生成する太陽熱収集装置50と、排熱回収ボイラ20及び太陽熱収集装置50で生成される蒸気で低圧蒸気タービン31a及び高圧蒸気タービン31bを駆動して発電を行う蒸気タービン発電機30と、排熱回収ボイラ20に導かれるガスタービン11の排熱を用いて作動媒体との間で熱交換が行われた熱媒体を加熱する低温域過熱器27及び高温域過熱器28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼熱と太陽熱とを複合的に用いて発電を行う発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱効率を高めて排熱エネルギーの低減を図るべく、内燃力発電と汽力発電とを組み合わせ、内燃力発電の排熱で汽力発電を行う複合発電(所謂、コンバインドサイクル発電)が実現されている。具体的に、コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電設備で生ずる排熱をHRSG(排熱回収ボイラ)で回収して蒸気を生成し、蒸気タービン発電設備を駆動することにより、双方の発電設備で複合的に発電を行うものである。
【0003】
また、近年では、上記の燃焼熱を用いるコンバインドサイクル発電と太陽熱を用いて発電を行う太陽熱発電とを組み合わせた発電システムの開発が盛んに行われている。これらを組み合わせることにより、夜間や曇天の日に十分な発電量を得ることができないという太陽熱発電の欠点を補うことができるとともに、更なる熱効率の向上及び排熱エネルギーの低減を図ることができる。
【0004】
以下の特許文献1には、ガスタービン発電機を太陽熱利用プラントと組み合わせ、ガスタービンの排熱ガスを蒸気の過熱及び供給水の加熱のみに利用し、太陽熱加熱器を供給水の沸騰又は蒸発のためにだけに利用する発電システムが開示されている。以下の特許文献2には、太陽熱収集装置と既存の火力発電発電機とを組み合わせた発電システムが開示されている。以下の特許文献3には、HRSGで回収されるガスタービンの排熱と集熱装置で収集される太陽熱とによって蒸気を生成し、蒸気タービンを駆動するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−514149号公報
【特許文献2】特表平10−501600号公報
【特許文献3】特許第4322902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したコンバインドサイクル発電と太陽熱発電とを組み合わせた発電システムでは、太陽光が照射されない夜間に、太陽熱で加熱される熱媒体から熱が放出されて熱媒体の温度が低下する。熱媒体の温度低下が生ずると、太陽熱発電設備の起動に要する時間が延びてしまい、温度低下の度合いによっては熱媒体が凍結する事態が生ずることもある。かかる事態を防止するために、従来の発電システムでは、熱媒体を加熱する助燃バーナ等の加熱装置を設置する等の対策が施されている。尚、加熱装置による熱媒体の加熱は、夜間のみならず昼間の日照量が不安定な場合にも行われることがある。
【0007】
ここで、太陽熱発電は、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO)を殆ど放出することなく発電できる点が最大の利点である。コンバインドサイクル発電と太陽熱発電とを組み合わるのは、熱効率の向上及び排熱エネルギーの低減を図ることのみならず、二酸化炭素の排出量を低減するためでもある。助燃バーナ等の加熱装置によって太陽熱発電で用いられる熱媒体の加熱によって余分な二酸化炭素が排出されてしまい、二酸化炭素の排出量低減という太陽熱発電の利点が没却されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、余分な二酸化炭素を排出することなく太陽光発電で用いられる熱媒体の温度低下を防止することができる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の発電システムは、ガスタービン(11)を駆動して発電を行う第1発電装置(10)と、前記ガスタービンの排熱を回収して作動媒体の蒸気を生成する排熱回収装置(20)と、太陽熱を収集して熱媒体を加熱するとともに該熱媒体と前記作動媒体との間で熱交換を行って前記作動媒体の蒸気を生成する太陽熱収集装置(50)と、前記排熱回収装置及び前記太陽熱収集装置で生成される蒸気で蒸気タービン(31a、31b)を駆動して発電を行う第2発電装置(30)とを備える発電システム(1)において、前記排熱回収装置に導かれる前記ガスタービンの排熱、或いは前記排熱回収装置から外部に排出される排熱を用いて、前記作動媒体との間で熱交換が行われた前記熱媒体を加熱する加熱装置(27、28)を備えることを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記加熱装置が、前記排熱回収装置から外部に排出される排熱の温度域である第1温度域の排熱を用いて前記熱媒体を加熱する第1加熱装置(27)と、前記第1温度域よりも高い温度域であって、前記熱媒体の最高使用可能温度よりも低い温度域である第2温度域の排熱を用いて熱媒体を加熱する第2加熱装置(28)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記作動媒体との間で熱交換が行われた前記熱媒体を、前記第1,第2加熱装置に導くか否かを制御する制御装置(64)を備えることを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記熱媒体の温度を検出する温度計(62、63)を備えており、前記制御装置が、前記熱媒体の温度が予め設定された第1閾温度を下回った場合に、前記熱媒体を前記第1加熱装置に導く制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記制御装置が、前記太陽熱収集装置が起動される場合に、前記熱媒体を前記第2加熱装置に導く制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記制御装置が、前記太陽熱収集装置が動作状態にある場合に、前記熱媒体の温度が前記第1閾温度よりも高く前記熱媒体の最高使用可能温度よりも低い第2閾温度以上であるときには前記第1,第2加熱装置への前記熱媒体の供給を停止する制御を行い、前記熱媒体の温度が前記第1閾温度以上であって前記第2閾温度未満であるときには前記熱媒体を前記第2加熱装置に導く制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記制御装置が、前記熱媒体の温度が前記第2閾温度を超えている場合には、前記熱媒体の温度が最高使用可能温度を超えないように前記熱媒体の流量制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の発電システムは、前記制御装置が、前記太陽熱収集装置が停止される場合に、前記第2加熱装置への前記熱媒体の供給が行われている場合には、該供給を予め設定されたタイミングで停止する制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排熱回収装置に導かれるガスタービンの排熱、或いは排熱回収装置から外部に排出される排熱を用いて、太陽熱収集装置で用いられる熱媒体であって、蒸気タービンを駆動する蒸気を生成するために用いられる作動媒体との間で熱交換が行われた熱媒体を加熱しているため、余分な二酸化炭素を排出することなく太陽光発電で用いられる熱媒体の温度低下を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による発電システムが備える制御系の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による発電システムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による発電システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の発電システム1は、ガスタービン発電機10(第1発電装置)、排熱回収ボイラ20(排熱回収装置)、蒸気タービン発電機30(第2発電装置)、凝縮器40、及び太陽熱収集装置50を備えており、燃焼熱と太陽熱とを複合的に用いて発電を行う。
【0013】
ガスタービン発電機10は、ガスタービン11及び発電機12を備えており、燃料の反応熱等で生成された高温のガスでガスタービン11を回転駆動して得られる回転力によって発電機12を駆動することにより発電を行う。排熱回収ボイラ20は、カスタービン11の排熱を回収して凝縮器40から供給される作動媒体の蒸気を生成する。ガスタービン11から排熱回収ボイラ20に導かれる排熱の温度は500℃程度であり、排熱回収ボイラ20から外部に排出される排熱の温度域は100〜150℃程度の温度域(第1温度域)である。
【0014】
具体的に、排熱回収ボイラ20は、低圧節炭器21、低圧蒸発器22、低圧過熱器23、高圧節炭器24、高圧蒸発器25、及び高圧過熱器26に加えて低温域加熱器27(加熱装置、第1加熱装置)及び高温域加熱器28(加熱装置、第2加熱装置)を備える。尚、ここにいう「低圧」とは1MPa程度の圧力を超えない圧力(例えば、0.6MPaの圧力)をいいい、「高圧」とは1MPa程度の圧力を越える圧力(例えば、4.7MPaの圧力)をいう。
【0015】
低圧節炭器21は、ボイラ効率を高めるべく、温度域が100〜150℃程度の排熱を用いて凝縮器40から供給される作動媒体を加熱する。低圧蒸発器22は、低圧節炭器21で加熱された作動媒体を加熱して作動媒体の低圧蒸気を生成する。低圧過熱器23は、低圧蒸発器22で生成された作動媒体の低圧蒸気を更に加熱して200℃程度の過熱蒸気を生成する。低圧加熱器23で生成された過熱蒸気は蒸気タービン発電機30が備える低圧蒸気タービン31aに供給される。
【0016】
高圧節炭器24は、ボイラ効率を高めるべく、温度が250℃程度の排熱を用いて低圧蒸発器22を介した作動媒体を加熱する。高圧蒸発器25は、高圧節炭器24で加熱された作動媒体を加熱して作動媒体の高圧蒸気を生成する。高圧過熱器26は、高圧蒸発器25で生成された作動媒体の高圧蒸気を更に加熱して420℃程度の過熱蒸気を生成する。高圧加熱器26で生成された過熱蒸気は蒸気タービン発電機30が備える高圧蒸気タービン31bに供給される。
【0017】
低温域加熱器27は、排熱回収ボイラ20の内部であって排熱が排出される排出口の近傍に設けられ、100〜150℃程度の温度域(第1温度域)の排熱を用いて太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体(太陽熱により加熱される熱媒体)を加熱する。この低温域加熱器27は、例えば太陽光が照射されない夜間おいて、熱媒体の温度が低下して熱媒体が凍結するのを防止するために設けられる。尚、低温域加熱器27は、100〜150℃程度の温度域の排熱が得られる排出口の近傍であれば排熱回収ボイラ20の外部に設けられていても良い。
【0018】
高温域加熱器28は、高圧節炭器24と高圧蒸発器25との間に設けられ、300〜350℃(第2温度域)の排熱を用いて太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体(太陽熱により加熱される熱媒体)を加熱する。高温域加熱器28は、加熱する熱媒体の温度を300℃程度まで上昇させることができるように設計されている。この高温域加熱器28は、太陽熱収集装置50の起動に要する時間を短縮し、また、太陽熱収集装置50で収集される太陽熱が十分でない場合に熱媒体を加熱する熱量を補うために設けられる。尚、高温域加熱器28が設けられる場所は、高圧節炭器24と高圧蒸発器25との間に限られる訳ではなく、排熱回収ボイラ20から排出される排熱の温度域である100〜150℃程度の温度域よりも高く、熱媒体の最高使用可能温度(例えば、400℃)よりも低い温度の排熱が得られる場所であれば良い。
【0019】
蒸気タービン発電機30は、低圧蒸気タービン31a、高圧蒸気タービン31b、及び発電機32を備えており、排熱回収ボイラ20から供給される過熱蒸気で低圧蒸気タービン31a及び高圧蒸気タービン31bを回転駆動して得られる回転力によって発電機32を駆動することにより発電を行う。凝縮器40は、低圧蒸気タービン31aを介した蒸気及び高圧蒸気タービン31bを介した蒸気を、冷却水等の冷却媒体にて冷却して凝縮させる。
【0020】
太陽熱収集装置50は、ソーラーフィールド51、蒸気発生器52、タンク53、バルブ54a〜54c、及びポンプ55を備えており、太陽熱を収集して熱媒体を加熱するとともに、熱媒体と凝縮器40から供給される作動媒体との間で熱交換を行って作動媒体の蒸気を生成する。ソーラーフィールド51は、太陽熱を収集する多数の集熱装置51aと熱媒体を循環させる複数の配管とが配設されており、集熱装置で収集された太陽熱によって熱媒体を加熱する数百メートル四方の敷地である。
【0021】
蒸気発生器52は、凝縮器40から供給される作動媒体とソーラーフィールド51を介した熱媒体とが供給されており、これら作動媒体と熱媒体との間で熱交換を行って作動媒体の蒸気を生成する。蒸気発生器52で生成された蒸気は、排熱回収ボイラ20が備える高圧過熱器26に供給される。タンク53は、蒸気発生器52を介した熱媒体(熱交換が行われて温度が低下した熱媒体)を一時的に蓄える。このタンク53の出力端は、配管によってバルブ54a並びに排熱回収ボイラ20に設けられた低温域加熱器27及び高温域加熱器28に接続されている。
【0022】
バルブ54aは、タンク53とポンプ55とを接続する配管に設けられており、これらの間の流路を開閉する。バルブ54bは、低温域加熱器27とポンプ55とを接続する配管に設けられており、これらの間の流路を開閉する。バルブ54cは、高温域加熱器28とポンプ55とを接続する配管に設けられており、これらの間の流路を開閉する。尚、詳細は後述するが、これらバルブ54a〜54cの開閉は制御装置によって制御される。ポンプ55は、バルブ54a〜54cが設けられた流路を介した熱媒体を加圧してソーラーフィールド51に向けて送出することにより、太陽熱収集装置50内で熱媒体を循環させる。
【0023】
次に、太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体の循環を制御する制御系について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による発電システムが備える制御系の要部構成を示す図である。尚、図2においては、図1に示した構成と同じ構成については同一の符号を付してある。図2に示す通り、太陽熱収集装置50は、図1を用いて説明したソーラーフィールド51〜ポンプ55(図2においては、タンク54の図示を省略している)に加えて、バルブ61、温度計62,63、制御装置64、及びバルブ65を備える。
【0024】
尚、凝縮器40から蒸気発生器52を介して排熱回収ボイラ20に至る作動媒体の流路には、ポンプ71、予備加熱器72、バルブ73、液面調節計74、過熱器75、バルブ76、及び圧力調整計77が設けられている。まず、これらポンプ71〜圧力調整計77について簡単に説明する。
【0025】
ポンプ71は、凝縮器40から供給される作動媒体を太陽熱収集装置50に導くために、凝縮器40からの作動媒体を加圧して蒸気発生器52に向けて送出する。予備加熱器72は、蒸気発生器52を介した熱媒体を用いて、ポンプ71から蒸気発生器52に向けて送出される作動媒体の予備加熱を行う。バルブ73は、予備加熱器72と蒸気発生器52とを接続する配管に設けられており、液面調節計74の制御の下でこれらの間の流路を開閉する。液面調節計74は、蒸気発生器52に供給される作動媒体の液面を計測し、その計測結果に基づいてバルブ73を制御する。
【0026】
過熱器75は、ソーラーフィールド51を介した熱媒体を用いて、蒸気発生器52で生成された作動媒体の蒸気を更に加熱する。バルブ76は、過熱器75と排熱回収ボイラ20とを接続する配管に設けられており、圧力調整計77の制御の下でこれらの間の流路を開閉する。圧力調整計77は、排熱回収ボイラ20に供給される作動媒体の蒸気の圧力を計測し、その計測結果に基づいてバルブ76を制御する。
【0027】
次に、上述したバルブ61〜バルブ65の詳細について説明する。バルブ61は、ポンプ55とソーラーフィールド51とを接続する配管に設けられており、制御装置64の制御の下でこれらの間の流路を開閉する。このバルブ61は、制御装置64の制御の下でソーラーフィールド51に向けて送出される熱媒体の流量を可変するために設けられる。温度計62は、ポンプ55とバルブ54a〜54cとを接続する配管に取り付けられており、ソーラーフィールド51に供給される熱媒体の温度を計測する。
【0028】
温度計63は、ソーラーフィールド51と過熱器75とを接続する配管に取り付けられており、ソーラーフィールド51から排出される熱媒体の温度を計測する。これら温度計62,63の検出結果を示す信号は、制御装置64に出力される。尚、バルブ65は、ソーラーフィールド51と過熱器75とを接続する配管に設けられており、不図示のコントローラの制御の下でこれらの間の流路を開閉する。
【0029】
制御装置64は、温度計62,63の検出結果に基づいてバルブ54a〜54c及びバルブ61開閉状態を制御することにより、熱媒体を低温域加熱器27及び高温域加熱器28に導くか否かを制御する。ここで、太陽熱収集装置50には複数の運転モードが予め用意されており、制御装置64は太陽熱収集装置50の運転モードに応じた制御を行う。具体的に、太陽熱収集装置50の運転モードには、「凍結防止運転モード」、「起動準備モード」、「通常運転モード」、及び「停止準備モード」があり、各々の運転モードにおいて制御装置64は以下に示す制御を行う。
【0030】
[凍結防止運転モード]
「凍結防止運転モード」は、例えば太陽光が照射されない夜間おいて、熱媒体の凍結を防止するための運転モードである。この運転モードにおいて、制御装置64は、温度計62,63で計測される温度の少なくとも一方が予め設定された凍結防止閾温度(例えば、100℃:第1閾温度)を下回った場合に、バルブ54bを開状態にして熱媒体(蒸気発生器52を介した熱媒体)を低温域加熱器27に導く制御を行う。尚、本動作モードでは、バルブ54a,54cは閉状態にされる。
【0031】
[起動準備モード]
「起動準備モード」は、例えば早朝において、停止状態にある太陽熱収集装置50、或いは「凍結防止運転モード」にある太陽熱収集装置50を起動するための運転モードであり、太陽熱収集装置50の起動に要する時間を短縮するために設けられる。この運転モードにおいて、制御装置64は、予め設定されたタイミングでバルブ54cを開状態にして熱媒体を高温域加熱器28に導く制御を行う。また、制御装置64は、例えば温度計62,63で計測される温度の双方が120℃を上回った場合にバルブ54bを閉状態にする制御を行う。
【0032】
以上の制御が終了した後に、太陽光がソーラーフィールド51に照射されるにつれて熱媒体の温度が上昇し、これに伴って温度計63で計測される温度も上昇する。制御装置64は、温度計63で計測される温度が、例えば380℃に到達した場合に、熱媒体の温度が目標温度(例えば、360℃:第2閾温度)となるように、バルブ54cの開度を制御する。
【0033】
[通常運転モード]
「通常運転モード」は、例えば太陽光が照射されている日中において、必要となる電力を発電させる運転モードである。この運転モードでは、制御装置64は、温度計63で計測される温度が目標温度に保たれるようにバルブ61の開度を制御する。このとき、制御装置64は、バルブ54b,54cの双方を閉状態にするとともにバルブ54aを開状態にし、熱媒体が低温域加熱器27及び高温域加熱器28の双方に導かれずに直接ポンプ55に導かれるようにして上記の制御を行う。尚、温度計63で計測される温度が目標温度を超えている場合には、制御装置64は、熱媒体の温度が最高使用可能温度を超えないように熱媒体の流量制御を行う。尚、流量制御に代えて、或いは流量制御とともにソーラーフィールド51の集熱量を低下させる制御を行っても良い。
【0034】
日照量の低下によって熱媒体の温度を目標温度以上に維持できない場合には、制御装置64は、バルブ54cを開状態にして熱媒体を高温域加熱器28に導く制御を行う。つまり、熱媒体を高温域加熱器28に導いて加熱することで、ソーラーフィールド51で不足する熱媒体を加熱するための熱量を補う制御を行う。ここで、制御装置64は、バルブ54cの開度を制御して高温域加熱器28に導かれる熱媒体の流量を変えることにより、熱媒体の温度が一定の温度(例えば、目標温度)に維持されるように制御する。
【0035】
[停止準備モード]
「停止準備モード」は、例えば夕方において、太陽熱収集装置50を停止させ、或いは「凍結防止運転モード」に移行させる運転モードである。上述の通り、熱媒体の温度を目標温度以上に維持できない場合には、制御装置64の制御によってバルブ54cが開状態にされて熱媒体が高温域加熱器28に導かれて加熱される。日没によりソーラーフィールド51に太陽光が照射されていない状態で、熱媒体を高温域加熱器28で加熱したままにするとヒートロスが大きくなって効率が悪くなる。このため、本運転モードに移行したときに熱媒体が高温域加熱器28に導かれている状態にある場合には、制御装置64は、予め設定されたタイミングでバルブ54cを閉状態にする制御を行い、太陽熱収集装置50を停止させ、或いは「凍結防止運転モード」に移行させる。
【0036】
次に、上記構成における発電システム1の動作について説明する。まず、太陽熱収集装置50の運転モードが「通常運転モード」であるとすると、制御装置64の制御によってバルブ54b,54cが閉状態にされるとともにバルブ54aが開状態にされる。これにより、太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体は、ソーラーフィールド51、バルブ65、過熱器75、蒸気発生器52、予備加熱器72、バルブ54a、ポンプ55、及びバルブ61を順に介してソーラーフィールド51に戻る流路を循環することになる。
【0037】
温度計62,63の計測結果に基づいて、制御装置64によりバルブ61の開度が制御されることにより、ソーラーフィールド51から排出される熱媒体の温度は、最高使用可能温度未満の温度であって目標温度以上の温度に維持される。ソーラーフィールド51から排出された熱媒体が蒸気発生器52に導かれると、凝縮器40から蒸気発生器52に導かれた作動媒体との間で熱交換が行われて作動媒体の蒸気が生成される。
【0038】
蒸気発生器52で生成された蒸気は、排熱回収ボイラ20を介して蒸気タービン発電機30に導かれて高圧蒸気タービン31bを回転駆動し、これにより蒸気タービン発電機30で発電が行われる。これと並行して、ガスタービン発電機10においても燃料の反応熱等で生成された高温のガスでガスタービン11が回転駆動されることにより発電が行われる。また、ガスタービン11から排出される排熱を排熱回収ボイラ20で回収することにより生成された作動媒体の蒸気が、蒸気タービン発電機30に導かれて低圧蒸気タービン31a及び高圧蒸気タービン31bを回転駆動することによっても蒸気タービン発電機30で発電が行われる。
【0039】
ここで、日照量が低下して熱媒体の温度を目標温度以上に維持できない場合には、制御装置64の制御によってバルブ54cが開状態にされ、熱媒体が高温域加熱器28に導かれて加熱される。これにより、ソーラーフィールド51で不足する熱量が補われ、熱媒体の温度が一定に維持される。尚、温度計63で計測される温度が目標温度を超えている場合には、熱媒体の温度が最高使用可能温度を超えないように、制御装置64による熱媒体の流量制御、或いはソーラーフィールド51の集熱量を低下させる制御が行われる。
【0040】
日没により太陽熱収集装置50の運転モードが「停止準備モード」になった場合に、バルブ54cが開状態であるときには、制御装置64の制御によりバルブ54cが予め設定されたタイミングで閉状態にされ、高温域加熱器28への熱媒体の供給が停止される。そして、太陽熱収集装置50を停止させ、或いは「凍結防止運転モード」に移行させる制御が行われる。
【0041】
仮に、太陽熱収集装置50の運転モードが「凍結防止運転モード」に移行したとすると、温度計62,63で計測される温度の少なくとも一方が予め設定された凍結防止閾温度を下回ったか否かが制御装置64によって判断される。ここで、凍結防止閾温度を下回ったと判断されると、制御装置64の制御によってバルブ54a,54cが閉状態にされるとともにバルブ54bが開状態にされる。
【0042】
これにより、太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体は、ソーラーフィールド51、バルブ65、過熱器75、蒸気発生器52、予備加熱器72、低温域加熱器27、バルブ54b、ポンプ55、及びバルブ61を順に介してソーラーフィールド51に戻る流路を循環することになる。すると、上記の流路を循環する熱媒体は低温域加熱器27で加熱されるため、数百メートル四方の敷地であるソーラーフィールド51内に配設された集熱装置51aを循環させても凍結が防止される。
【0043】
次いで、太陽熱収集装置50の運転モードが「起動準備モード」に移行したとすると、制御装置64の制御によって予め設定されたタイミングでバルブ54cが開状態にされ、熱媒体が高温域加熱器28に導かれる。これにより、太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体は、ソーラーフィールド51、バルブ65、過熱器75、蒸気発生器52、及び予備加熱器72を順に介した後に、低温域加熱器27及び高温域加熱器28の双方を介し、更にバルブ54b、ポンプ55、及びバルブ61を順に介してソーラーフィールド51に戻る流路を循環することになる。
【0044】
熱媒体は、低温域加熱器27を介する流路のみならず高温域加熱器28を介する流路も循環することになるため、過度に急激な温度上昇が生ずるのを防止することができる。バルブ54cが開状態にされると、温度計62,63で計測される温度の双方が120℃を上回ったか否かが制御装置64によって判断される。ここで、計測温度の双方が120℃を上回ったと判断されると、制御装置64の制御によってバルブ54bが閉状態にされる。これにより、熱媒体の温度を目標温度に近い温度(例えば、300℃)程度まで上昇させることができる。
【0045】
以上の制御が終了した後に、ソーラーフィールド51に対する太陽光の照射量が増加して熱媒体の温度が上昇すると、これに伴って温度計63で計測される温度も上昇する。すると、温度計63で計測される温度が、例えば380℃に到達したか否かが制御装置64により判断される。380℃に達したと判断されると、制御装置64によって熱媒体の温度が目標温度となるようにバルブ54cの開度が制御される。かかる制御が開始されると、太陽熱収集装置50の運転モードは「通常運転モード」に移行し、前述した制御が行われる。
【0046】
以上説明した通り、本実施形態では、排熱回収ボイラ20に低温域加熱器27を設け、排熱回収ボイラ20に導かれるガスタービン11の排熱、或いは排熱回収ボイラ20から外部に排出される排熱を用いて、上記発生器52を介した熱媒体を加熱するようにしている。このため、余分な二酸化炭素を排出することなく太陽熱収集装置50で用いられる熱媒体の温度低下を防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記の低温域加熱器27に加えて高温域加熱器28を設け、上記発生器52を介した熱媒体をこれら低温域加熱器27及び高温域加熱器28に導くか否かを制御している。このため、太陽熱収集装置50の運転状態に応じて熱媒体の加熱状態を切り替えることにより、余分な二酸化炭素を排出することなく太陽熱収集装置50の運転状態に応じて必要となる熱媒体の加熱を効率的に行うことができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態による発電システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、排熱回収ボイラ20が低温域加熱器27と高温域加熱器28とを備える態様について説明したが、排熱回収ボイラ20はこれらのうちの何れか一方のみを備える態様であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 発電システム
10 ガスタービン発電機
11 ガスタービン
20 排熱回収ボイラ
27 低温域加熱器
28 高温域加熱器
30 蒸気タービン発電機
31a 低圧蒸気タービン
31b 高圧蒸気タービン
50 太陽熱収集装置
62,63 温度計
64 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンを駆動して発電を行う第1発電装置と、前記ガスタービンの排熱を回収して作動媒体の蒸気を生成する排熱回収装置と、太陽熱を収集して熱媒体を加熱するとともに該熱媒体と前記作動媒体との間で熱交換を行って前記作動媒体の蒸気を生成する太陽熱収集装置と、前記排熱回収装置及び前記太陽熱収集装置で生成される蒸気で蒸気タービンを駆動して発電を行う第2発電装置とを備える発電システムにおいて、
前記排熱回収装置に導かれる前記ガスタービンの排熱、或いは前記排熱回収装置から外部に排出される排熱を用いて、前記作動媒体との間で熱交換が行われた前記熱媒体を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記排熱回収装置から外部に排出される排熱の温度域である第1温度域の排熱を用いて前記熱媒体を加熱する第1加熱装置と、
前記第1温度域よりも高い温度域であって、前記熱媒体の最高使用可能温度よりも低い温度域である第2温度域の排熱を用いて熱媒体を加熱する第2加熱装置と
を備えることを特徴とする請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記作動媒体との間で熱交換が行われた前記熱媒体を、前記第1,第2加熱装置に導くか否かを制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項2記載の発電システム。
【請求項4】
前記熱媒体の温度を検出する温度計を備えており、
前記制御装置は、前記熱媒体の温度が予め設定された第1閾温度を下回った場合に、前記熱媒体を前記第1加熱装置に導く制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載の発電システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記太陽熱収集装置が起動される場合に、前記熱媒体を前記第2加熱装置に導く制御を行うことを特徴とする請求項4記載の発電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記太陽熱収集装置が動作状態にある場合に、前記熱媒体の温度が前記第1閾温度よりも高く前記熱媒体の最高使用可能温度よりも低い第2閾温度以上であるときには前記第1,第2加熱装置への前記熱媒体の供給を停止する制御を行い、前記熱媒体の温度が前記第1閾温度以上であって前記第2閾温度未満であるときには前記熱媒体を前記第2加熱装置に導く制御を行うことを特徴とする請求項5記載の発電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記熱媒体の温度が前記第2閾温度を超えている場合には、前記熱媒体の温度が最高使用可能温度を超えないように前記熱媒体の流量制御を行うことを特徴とする請求項6記載の発電システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記太陽熱収集装置が停止される場合に、前記第2加熱装置への前記熱媒体の供給が行われている場合には、該供給を予め設定されたタイミングで停止する制御を行うことを特徴とする請求項5から請求項7の何れか一項に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41889(P2012−41889A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185281(P2010−185281)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】