説明

発電機用無効電力補償装置

【課題】 誘導電動機が発する無効電力の量に応じて、適切な量の進相コンデンサを同電位の時に接続及び解放し、誘導電動機の力率を1〜任意の値に制御して消費電力を削減する発電機用無効電力補償装置の提供。
【解決手段】 誘導電動機の消費する無効電力を計測し、必要な進相コンデンサ12容量を演算して、誘導電動機の力率を1〜任意の値に制御することを特徴とする発電機用無効電力補償装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電機電源を用いて誘導電動機を運転する場合の始動電力低減を可能とした発電機用無効電力補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導電動機を運転した場合、始動時に定格の7〜10倍もの非常に大きな電流が流れる。
【0003】
この始動電流を抑える為に、一般的にスターデルタ始動、リアクトル始動などが挙げられるが、この場合でも定格の3〜5倍ほどの電流を流して、誘導電動機を運転する。
【0004】
この誘導電動機の始動電力グラフを図2に示す。
【0005】
このグラフから分るように、誘導電動機の始動時は、非常に大きな無効電力が発生し、始動電流の大きくなる要素は、この無効電力の発生によるものであることが推測できる。
【0006】
このように発電機電源で誘導電動機を運転する為に必要な電源容量を選定する場合、誘導電動機の始動時に発生する大きな無効電力を含めた皮相電力分を供給可能な発電機を選定する必要がある。一般的には電動機の出力(馬力)に対し、3倍の容量の発電機を選定しているのが現状である。
【0007】
ところで、電動機において、力率制御,力率改善,始動方法,および始動電力を配慮して進相コンデンサにより無効電力補償するものが知られている(例えば、特許文献1,2,3および4参照。)。
【特許文献1】特開平09−215360号公報
【特許文献2】特開平07−107671号公報
【特許文献3】特開2001−145265号公報
【特許文献4】特開2000−224767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上の技術によれば、誘導電動機の無効電力を相殺する為に接続される進相コンデンサは、運転中の無効電力を改善する事を目的として使用される為、固定容量のコンデンサを電源に接続する。この時、誘導電動機が停止中は進相コンデンサに進み電流が流れ、やはり無効電力が発生し、コンデンサの性質上、電源系統との共振による高調波の発生や、電源電圧上昇などの二次的な電源障害を招く可能性がある。また、誘導電動機の負荷率や滑りの状態によって誘導電動機が生ずる無効電力は変動する為、固定コンデンサのみで誘導電動機より発生する無効電力を改善するには限界がある。
【0009】
さらに、進相コンデンサを電源に接続する場合、電源の瞬時電圧と進相コンデンサの端子電圧が同電位の時に接続しないと開閉サージ電圧が発生してノイズ障害などを引き起こす可能性がある。
【0010】
誘導電動機が発する無効電力を相殺するには、電力用進相コンデンサを電源に接続する事で可能であるが、誘導電動機が発する無効電力の量と等しくなるコンデンサの容量を選定する必要がある。
【0011】
発電機電源にて誘導電動機を運転する場合、この始動時に発生する無効電力分を相殺することで、無効電力分の電流を少なくし、始動に必要な皮相電力を有効電力とほぼ同じ量にする事が出来れば、結果として発電機の容量を小さくする事が可能である。
【0012】
そこで、本発明は、誘導電動機が発する無効電力の量に応じて、適切な量の進相コンデンサを同電位の時に接続及び解放し、誘導電動機の力率を1〜任意の値に制御して消費電力を削減する発電機用無効電力補償装置を提供することを課題とする。
【0013】
なお、力率とは、有効電力÷皮相電力 の比率で、1に近ければ無効電力が少ないという目安となり、また、皮相電力とは、無効電力と有効電力の和である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以上の課題を解決するために、つぎの(1)〜(3)に示すとおりの構成を備える。
【0015】
(1)誘導電動機の消費する無効電力を計測し、必要な進相コンデンサ容量を演算して、誘導電動機の力率を1〜任意の値に制御することを特徴とする発電機用無効電力補償装置。
【0016】
(2)進相コンデンサの接続タイミングを電源の瞬時電圧とコンデンサ端子電圧が同電位の時にサイリスタを点弧し、サージ電圧の発生を抑制することを特徴とする前記(1)記載の発電機用無効電力補償装置。
【0017】
(3)発生する無効電力と等価のコンデンサ容量を選択できるように、コンデンサの容量を10,20,40,80とある容量おきに区切り、必要なコンデンサを組み合わせて細かなコンデンサ容量を選択可能とすることを特徴とする前記(1)記載の発電機用無効電力補償装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誘導電動機の始動力率及び運転中に生ずる無効電力は、発電機用無効電力補償装置によって改善され、電源容量を小さくする事が可能となる。
【0019】
そして、誘導電動機は、回転機などの機械に使用されており、特に、建設現場などの電源として発電機電源を使用した場合、発電機の容量を小さくする事が可能で、使用燃料やコストの削減が可能となる。
【0020】
また、使用燃料を削減する事により、温室効果ガスの抑制にも期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態を、図1に示す。
【0022】
発電機電源と誘導電動機の間に発電機用無効電力補償装置を挿入する接続形式となる。
【0023】
図面について、1は発電機電源、2は電源接続端子で、発電機の出力を接続する端子、3は負荷接続端子で電動機などの負荷を接続する。4はアナログ−ディジタル変換器で、電気信号を変換する回路、5は制御装置で、有効電力や無効電力を計算して、適切なコンデンサ容量を算出し、サイリスタの制御信号を発生させる装置、6は誘導電動機組み込みの回転機器で、無効電力を生ずる負荷機器、7は変流器で、電流検出器を構成する。8は変成器で電圧検出器を構成する。9はコンデンサユニットを示し、10,20,40,80と段階的に大きな容量のコンデンサユニットを配置し、きめの細かいコンデンサを電源に接続できる。10は遮断器で、故障時に作動し、異常回路を発電機電源から切り離す役割を果たす。11はサイリスタで、高速でコンデンサを発電機電源1に接続するために使用される半導体スイッチ制御装置からの制御信号によりオン・オフされる。12は電力用進相コンデンサで、電動機より生ずる無効電力を相殺する為に使用される。13は電力演算器で、電圧・電流・有効電力・皮相電力・無効電力・力率・周波数等を計算する。14は投入指令演算器を示し、無効電力を相殺するために必要なコンデンサ容量を計算し、必要なコンデンサユニットを振り分ける。15はパルス分配器で、コンデンサユニットに配置されたサイリスタを電源電圧とコンデンサ端子電圧が同電位の時に点弧させる機能を有する。
【0024】
つぎに本発明の動作フローを説明する。
【0025】
・回転機器6が始動、及び運転した場合、無効電力を含む電力が消費される。このとき、負荷接続端子3の地点では、図2に示すような無効電力を含む大きな電力が必要となる。
【0026】
・検出器7,8より、電源電圧及び電流をA/D変換器4を通じて電力演算器13にて現在の電圧、電流、周波数、有効電力、無効電力、皮相電力、力率等を計算する。この電力演算器13で計算された無効電力に対し、無効電力を相殺するために必要なコンデンサ容量を投入指令演算器14にて計算し、コンデンサユニット9を選択する。前記投入指令演算器14で選択されたコンデンサユニット9は、パルス分配器15によりオン・オフ制御される。
【0027】
・回転機器6より発生した無効電力は、電力用進相コンデンサ12により相殺され、電源接続端子2の地点では図3のように無効電力が減少されて、発電機電源1が負担する電力は小さくなる。
【0028】
この実施形態によれば、誘導電動機が生ずる無効電力は発電機用無効電力補償装置Aにより消費電力が改善され、発電機電源1にかかる消費電力は軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態を示す結線図である。
【図2】誘導電動機が消費する電力を示したグラフである。
【図3】発電機用無効電力補償装置を使用した場合の消費電力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 発電機電源
4 アナログ−ディジタル変換器
5 制御装置
6 誘導電動機組み込みの回転機器
9 コンデンサユニット
11 サイリスタ
12 電力用進相コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導電動機の消費する無効電力を計測し、必要な進相コンデンサ容量を演算して、誘導電動機の力率を1〜任意の値に制御することを特徴とする発電機用無効電力補償装置。
【請求項2】
進相コンデンサの接続タイミングを電源の瞬時電圧とコンデンサ端子電圧が同電位の時にサイリスタを点弧し、サージ電圧の発生を抑制することを特徴とする請求項1記載の発電機用無効電力補償装置。
【請求項3】
発生する無効電力と等価のコンデンサ容量を選択できるように、コンデンサの容量を10,20,40,80とある容量おきに区切り、必要なコンデンサを組み合わせて細かなコンデンサ容量を選択可能とすることを特徴とする請求項1記載の発電機用無効電力補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−311686(P2006−311686A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129991(P2005−129991)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(505158921)株式会社ピーエフ (1)
【Fターム(参考)】