説明

白内障および緑内障を診断および治療するための、sgk遺伝子ファミリーの使用

本発明は、白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防のための医薬品製造における、hsgk1もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1もしくはhsgk3遺伝子負の転写調節因子の使用に関する。本発明のその他の形態は、白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害の形成に対する素因の診断における、登録番号NM005627に記載のhsgk1配列もしくはそのフラグメントの1つを含む、または、登録番号AF169035に記載のhsgk3配列もしくはそのフラグメントの1つを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用に関し、それに加えて、白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害の形成に対する素因を診断するための、上述の核酸を含むキットに関する。本発明はさらに、複数の試験物質の中から、白内障、緑内障または糖尿病性神経障害から選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するための治療上有効な物質を同定し、特徴付けるための様々なスクリーニング方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防のための医薬を生産するための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用に関する。
【0002】
その他の形態において、本発明は、白内障、緑内障、および/または、糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、受託番号NM005627に記載のhsgk1配列を包含する一本鎖または二本鎖核酸、またはそのフラグメントの1つ、または、受託番号AF169035に記載のhsgk3配列を包含する一本鎖または二本鎖核酸、もしくはそのフラグメントの1つの使用に関し、同様に、白内障、緑内障、および/または、糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するためのキット(本キットは、上述の核酸を含む)に関する。
【0003】
その上、本発明は、多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるための様々なスクリーニング方法に関し、前記治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害から選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられる。
【背景技術】
【0004】
血清および糖質コルチコイド誘導性キナーゼhsgk1は、もともと、糖質コルチコイド感受性遺伝子としてクローニングされた[Webster等.Characterization of sgk,a novel member of the serine/threonine protein kinase gene family which is transcriptionally induced by glucocorticoids and serum.Mol Cell Biol 1993年;13:2031−2040]。
【0005】
それに続く観察により、hsgk1は、多数の刺激の影響下にあることが明らかになっており[Lang F,Cohen P.Regulation and physiological roles of serum− and glucocorticoid−induced protein kinase isoforms.Science STKE.2001年11月13日;2001年(108):RE17]、このような刺激としては、特に、鉱質コルチコイドの刺激が挙げられる[Chen等.Epithelial sodium channel regulated by aldosterone−induced protein sgk.Proc Natl Acad Sci USA 1999年;96:2514〜2519,Naray−Fejes−Toth等.sgk is an aldosterone−induced kinase in the renal collecting duct.Effects on epithelial Na+ channels.J Biol Chem 1999年;274;16973〜16978;Shigaev等.Regulation of sgk by aldosterone and its effects on the epithelial Na(+)channel.Am J Physiol 2000年;278:F613〜F619;Brenan FE,Fuller PJ.Rapid upregulation of serum and glucocorticoid−regulated kinase(sgk)gene expression by corticosteroids in vivo.Mol Cell Endocrinol.2000年;30;166:129〜36;Cowling RT,Birnboim HC.Expression of serum− and glucocorticoid−regulated kinase(sgk)mRNA is up−regulated by GM−CSF and other proinflammatory mediators in human granulocytes.J Leukoc Biol.2000年:67:240〜248]。
【0006】
hsgk1は、インスリン様成長因子IGF1によって、インスリンによって、ならびに、シグナルカスケードを経た、ホスホイノシトール−3−キナーゼ(PI3キナーゼ)、および、ホスホイノシトール依存性キナーゼPDK1による酸化的ストレスによってによって刺激される[Park等.Serum and glucocorticoid−inducible kinase(SGK)is a target of the PI3−kinase−stimulatd signaling pathway,EMBO J 1999年;18:3024〜3033;Kobayashi等.Characterization of the structure and regulation of two novel isoforms of serum− and glucocorticoid−induced protein kinase.Biochem.J.1999年;344:189〜197]。PDK1によるhsgk1活性化は、422位のセリンのリン酸化を伴う。このセリンからアスパラギン酸への突然変異(S422DSGK1)により、構成的に活性なキナーゼが生じる[Kobayashi T,Cohen P:Activation of serum− and glucocorticoid−regulated protein kinase by agonists that activate phosphatidylinositide 3−kinase is mediated by 3−phosphoinositide−dependent protein kinase−1(PDKl)and PDK2.Biochem J.1999年;339:319〜328]。
【0007】
初期の研究が示すように、hsgk1は、腎臓上皮性Na+チャネルの協力な刺激物質である[De la Rosa等.The serum and glucocorticoid kinase sgk increases the abundance of epithelial sodium channels in the plasma membrane of Xenopus oocytes.J Biol Chem 1999年;274:37834〜37839;Boehmer等.The Shrinkage−activated Na+Conductance of Rat
Hepatocytes and its Possible Correlation to rENaC.Cell Phys Biochem.2000年;10:187〜194;Lang等.Deranged transcriptional regulation of cell volume sensitive kinase hsgk in diabetic nephropathy.Proc Natl Acad Sci USA 2000年;97:8157〜8162]。hsgk1は、上皮性Na+チャネルENaCを発現しない多数の組織で見出されているため、hsgk1の機能を、Na+チャネルを調節する機能に限定すべきではない[Klingel等.Expression of the cell volume regulated kinase h−sgk in pancreatic tissue.Am J Physiol(Gastroint.Liver−Physiol.)2000年;279:G998〜G1002;Waldegger等.Cloning and characterization of a putative human serine/threonine protein kinase transcriptionally modified during anisotonic and isotonic alterations of cell volume.Proc Natl Acad Sci USA 1997年:94:4440〜4445;Waldegger等.h−sgk Serine−Threonine protein kinase gene as early transcriptional target of TGF−β in human intestine.Gastroenterology 1999年;116:1081〜1088]。
【0008】
hsgk1は、まだ解明されていない様式で、その他の多数のシグナル伝達経路またはこれら経路の構成要素を調節する可能性があるということから、hsgk1およびそのヒト相同体は、多数の病気を診断するかなりの可能性を有すると予測される。特にDE19708173(A1)により、hsgk1は、多くの病気(例えば高ナトリウム血症、低ナトリウム血症、糖尿病、腎機能不全、過剰代謝、肝性脳症、および、細菌またはウイルス感染、この場合、細胞容量の変化が、重要な病態生理学的な役割を果たす)に関する診断に用いることができることは明らかである。
【0009】
WO00/62781では、hsgk1は、内皮性Na+チャネルを活性化し、それにより、腎臓のNa+再吸収の増加が起こることが報告されている。この腎臓のNa+再吸収の増加は高血圧を伴うため、この文献において、hsgk1の発現の増加が高血圧をもたらし、一方、hsgk1の発現の減少が最終的には低血圧をもたらすと予想されていた。
【0010】
DE10042137はまた、ヒト相同体hsgk2およびhsgk3の過剰発現または過剰活性、ENaCの過活性化、それにより生じる腎臓のNa+再吸収の増加、および、それにより発症する高血圧に、同様の関連性があることを報告している。その上、この文献では、hsgk2およびhsgk3キナーゼが、動脈性高血圧に関して診断上の可能性があることをすでに論じている。
【0011】
WO02/074987A2は、hsgk1遺伝子における個々のヌクレオチドの2つの異なる多型(単一ヌクレオチド多型(SNP))の存在と、遺伝学的に決定された高血圧に関する素因との関連を開示している。これら多型は、hsgk1遺伝子において、イントロン6における多型(T→C)と、エキソン8における多型(C→T)である。
【0012】
sgk1は多数の組織で発現され、sgk1は多数の未知の基質を有すると推測されるため、sgkファミリーのヒト相同体、特にhsgk1遺伝子(NM005627)、hsgk2遺伝子およびhsgk3遺伝子(AF169035)の機能と、その他の病気の発症との間には、さらなる相関性があると予測することができる。これらsgk1が関与するその他の特定の病気の相関を発見することにより、sgkファミリーのヒト相同体の遺伝子の多型領域を含む核酸が得られる可能性があり、このような領域は、対応するsgkタンパク質の機能または発現に影響を与え、これらその他の病気に関する素因を診断するのに用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえに、本発明の目的は、sgkファミリーのヒト相同体の機能と、新しい病気との間のさらなる相関性を発見することであり、これにより、sgkファミリーのヒト相同体の遺伝子の多型領域を含む核酸の診断的な使用に関する新規な可能性を提供することができる。
【0014】
この目的は、hsgk1およびhsgk3が、グルコース輸送体Glut1を強力に刺激するという驚くべき発見によってによって達成された(図1を参照)。特に、グルコース輸送体Glut1は、特に眼の様々な細胞へのグルコースの取り込みを介在する[Busik等.Glucose−induced activation of glucose uptake in cells from the inner and outer blood−retinal barrier.Invest Ophthalmol Vis Sci.2002年;43:2356〜63;Takata K,Kasahara T,Kasahara M,Ezaki O,Hirano H.Ultracytochemical localization of the erythrocyte/HepG2−type glucose transporter(GLUT1)in the ciliary body and iris of the rat eye.Invest Ophthalmol Vis Sc.1991年;32:1659〜66]。浸透圧により水分がグルコースと一緒に取り込まれるが、これは、Glut1活性の増加が、細胞の膨張に至ることを意味する。その結果として、Glut1活性の増加は、白内障の発症に至る可能性がある[Gong等.Development of cataractous macrophthalmia in mice expressing an active MEK1 in the lens.Invest Ophthalmol Vis Sci.2001年:42:539〜48]。これに加えて、Glut1の過剰発現は、結合組織のタンパク質の形成と沈着を促進することが示されている[Ayo等.Increased extracellular matrix synthesis and mRNA in mesangial cells grown in high−glucose medium.Am J Physiol.1991年;260:F185〜191;Heilig等.Overexpression of glucose transporters in rat mesangial cells cultured in a normal glucose milieu mimics the diabetic phenotype.J Clin Invest.1995年;96:1802〜1814]。このような結合組織のタンパク質の沈着は、眼の流体の流通を妨害し、眼内の圧力の増加に至り、その結果として網膜にダメージを与える[Fingert等.Evaluation of the myocilin(MYOC)glaucoma gene in monkey and human steroid−induced ocular hypertension.Invest Ophthalmol Vis Sci.2001年:42(1):145〜52,Ueda等.Distribution of myocilin and extracellular matrix components in the juxtacanalicular tissue of human eyes.Invest Ophthalmol Vis Sci.2002年:43:1068〜76]。実際に、糖質コルチコイドは、SGK1の発現を刺激し(上記を参照)、同時に緑内障の発症を引き起こす[Fingert等.2001年]。しかしながら、これまで、hsgk1が原因となる役割を有すると考えられることは決してなかった。
【0015】
上述の妨害は、hsgk1活性が増加したあらゆる状況において、すなわち上述のホルモンのいずれかが過剰に存在する場合に生じると予想される。血圧の増加と相互関係を示すhsgk1遺伝子の特定の多型[Busjahn等.Serum− and glucocorticoid−regulated kinase(SGK1)gene and blood pressure.Hypertension 40(3):256〜260,2002年]は、同時に、白内障および緑内障の発症の増加をもたらす可能性がある。また、同じ遺伝子改変が、早期に出現する白内障および/または緑内障と関連性を示すはずである。
【0016】
本発明の発見により、グルコース輸送体Glut1の調節における全く新規なメカニズムが明らかになる。それゆえに、hsgk1活性の増加は、細胞へのグルコースの取り込みの増加をもたらすと予測される。hsgk1の転写は、以下のものによって刺激される:血清[Webster等.1993年]、糖質コルチコイド[BrenanおよびFuller 2000年,Webster等.1993年]、鉱質コルチコイド[Chen等.1999年,Naray−Fejes−Toth等.1999年,Shigaev等.2000年,BrennanおよびFuller 2000年,CowlingおよびBirnboim 2000年]、ゴナドトロピン[Alliston等.Follicle stimulating hormone−regulated expression of serum/glucocorticoid−inducible kinase in rat ovarian granulosa cells:a functional role for the Sp1 family in promoter activity.Mol Endocrinol.1997年;11:1934〜1949;Alliston等.Expression and localization of serum/glucocorticoid−induced kinase in the rat ovary:relation to follicular growth and differentiation.Endocrinology.2000年:141:385〜395;Gonzalez−Robayna等.Follicle−Stimulating hormone(FSH)stimulates phosphorylation and activation of protein kinase B(PKB/Akt)and serum and glucocorticoid−Induced kinase(Sgk):evidence for A kinase−independent signaling by FSH in granulosa cells.Mol Endocrinol.2000年;14:1283〜1300,Richards等.Ovarian cell differentiation:a cascade of multiple hormones,cellular signals,and regulated genes.Recent Prog Horm Res.1995年:50:223〜254]、および、多数のサイトカイン[LangおよびCohen 2001年]、特にTGF−β[Fillon S.等.Expression of the Serine/Threonine kinase hsgk1 in chronic viral hepatitis.Cell Physiol Biochem 2002年:12:47〜54:Lang等.2000年,Waldegger等.1999年,Waerntges S等.Excessive transcription of the human serum and glucocorticoid dependent kinase hsgk1 in lung fibrosis.Cell Physiol Biochem 2002年,12:135〜142]。これに加えて、Waldegger等.1997年の論文(上記ですでに引用した)によって示されるように、hsgk1の転写は、細胞の収縮によって増加する。糖尿病で生じるように、グルコース濃度が増加すると、細胞の収縮、および/または、TGF−βの産生の増加によってhsgk1の発現が刺激される[Lang等.2000年]。発現されたhsgk1は、インスリン様成長因子IGF1、インスリンまたは酸化的ストレスによって活性化される[KobayashiおよびCohen 1999年,Park等.1999年,Kobayashi等.1999年]。
【0017】
本発明に係る発見によれば、増加したhsgk1の発現は、グルコース輸送体Glut1の活性を増加させる。結果として、より多くのグルコースが細胞へ取り込まれ、それに続いて浸透性によって取り込まれた水が、細胞の膨潤の原因となる。これは、水が高いレベルで角膜とレンズに取り込まれる様式であり、それにより、透明度が減少し、白内障が起こる[Gong等.2001年]。
【0018】
緑内障はまた、同様の様式で発症する可能性があり、それに加えて、結合組織の取り込みによって発症する可能性がある[Fingert等.2001年]。
【0019】
また、細胞の膨張は、糖尿病性神経障害における原因であるとも疑われている[Burg等,Sorbitol,osmoregulation,and the complications of diabetes.J Clin Invest 1988;81:635〜40]。しかしながら、Glut1活性の増加は、糖尿病においてだけでなく、糖質コルチコイドの影響下でも、または、遺伝学的に決定されたhsgk1の過剰活性を示す患者においても起こると予測される[Busjahn等,Serum− and glucocorticoid−regulated kinase(SGK1)gene and blood pressure.Hypertension 40(3):256〜260,2002年]。実際に、糖質コルチコイドは、緑内障を発生させる[Fingert等.2001年]。糖質コルチコイド投与に関連する緑内障の発症に関与するメカニズムは、これまでわかっていない。特に、hsgk1がこのメカニズムにおいて役割を果たし、それゆえに、緑内障を診断および治療するための標的タンパク質として使用するのに適していることは、これまでわかっていない。
【0020】
その結果として、驚くべきことに、本発明に係る観察は、hsgk1およびhsgk3は、非上皮性のグルコース輸送を増加させ、同様に、上皮性Na+チャネルを増加させることを実証する。結果として、hsgk1およびhsgk3は、重要な診断および治療/予防の結果を伴うはずの、全く新規な病態生理学的な意義を有することが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は、細胞の膨張を減少させるための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用に関する。
【0022】
その上、本発明は、白内障、緑内障または糖尿病性神経障害を治療および/または予防するための医薬を製造するための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用に関する。
【0023】
この、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤は、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の正常な生理活性を阻害する性質のいずれかを有する化学物質であり得る。hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤は、好ましくは、低分子量の化学物質(「小分子」)、または、タンパク質もしくはペプチドである。特に、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤は、これら酵素のアンタゴニストであることが可能であり、このようなアンタゴニストは、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の基質結合部位をブロックするが、同時に、hsgk1またはhsgk3によるいかなる触媒的な変換も受けない。このような場合に適切なアンタゴニストは、好ましくは、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の天然基質に構造的に類似している分子、すなわち、特に、リン酸化可能なアミノ酸のセリンおよびスレオニンに構造的に類似している分子である。
【0024】
スタウロスポリンおよびケレリトリンは、hsgk1の2種の既知の機能的な阻害剤である。それゆえに、特に好ましい実施形態において、スタウロスポリンまたはケレリトリンのいずれかが、病気(白内障、緑内障および糖尿病性神経障害)の少なくとも1つの治療および/または予防のためのhsgk1またはhsgk3の機能的な阻害剤として用いられる。
【0025】
hsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子は、転写レベルでhsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の発現を活性化する物質と定義される。
【0026】
実際の活性化合物、すなわちhsgk1もしくはhsgk3の機能的な阻害剤、または、hsgk1もしくはhsgk3の転写の負の調節因子に加えて、白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防のための本発明に係る医薬はまた、安定剤および/またはキャリアー物質を含んでもよく、これらとして、例えば、スターチ、ラクトース、ステアリン酸、脂肪、ワックス、アルコール またはその他の添加剤、例えば保存剤、色素または矯味矯臭剤が挙げられる。
【0027】
本医薬は、あらゆる様式で投与することができ、特に、錠剤、顆粒またはカプセルの形態で、または、溶液として経口投与することができる。その他の特に適切な投与形態は、軟膏、チンキまたはスプレーの形態での直接投与(例えば皮膚または眼への)、または、あらゆるタイプの注射(例えば皮下または静脈内)、または、点滴に関する。
【0028】
その上、本発明は、白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、受託番号NM005627に記載のhsgk1配列、またはそのフラグメントの一つを包含する一本鎖または二本鎖核酸の使用に関する。これに関連して、一本鎖または二本鎖核酸が包含し得るhsgk1フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対、好ましくは少なくとも15個のヌクレオチド/塩基対、特に、少なくとも20個のヌクレオチド/塩基対である。
【0029】
これに関連して、一本鎖または二本鎖核酸は、好ましくは、hsgk1遺伝子の少なくとも1つの多型ヌクレオチド、特に、hsgk1遺伝子の単一ヌクレオチド多型(SNP)を包含する。
【0030】
特に好ましい実施形態において、一本鎖または二本鎖核酸は、これに関連して、少なくとも1つの以下のhsgk1遺伝子のSNPを包含する:
−hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのGの挿入、
−hsgk1遺伝子のイントロン6における2071位でのT/C置換(WO02/074987A2)、
−hsgk1遺伝子のエキソン8における2617位でのT/C置換(WO02/074987A2)。
【0031】
上述の一本鎖または二本鎖核酸は、好ましくは、以下の方法によって、患者のゲノムDNAまたはcDNAにおける上記hsgk1遺伝子のSNPを検出するのに用いることができる:
−上記核酸を用いてゲノムDNAまたはcDNAを直接配列解析すること、
−ゲノムDNAまたはcDNAと上記核酸とを特異的にハイブリダイズさせること、
−PCRオリゴヌクレオチド伸長分析、または、ライゲーション分析。
【0032】
これに関連して、患者のゲノムDNAまたはcDNAは、好ましくは、患者から、特に唾液、血液、組織または細胞から採取された生体サンプルから単離される。
【0033】
発現されたhsgk1遺伝子の活性は、患者のhsgk1遺伝子におけるこの多型のバージョンに依存すること、および、その結果として、これら多型の少なくとも1つを含む核酸は、特に、白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するのによく適していること、が考えられる。
【0034】
その上、本発明は、白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、受託番号AF169035に記載のhsgk3配列、またはそのフラグメントの一つを包含する一本鎖または二本鎖核酸の使用に関する。これに関連して、一本鎖または二本鎖核酸が包含し得るhsgk3フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対、好ましくは少なくとも15個のヌクレオチド/塩基対、特に、少なくとも20個のヌクレオチド/塩基対である。
【0035】
これに関連して、一本鎖または二本鎖核酸は、好ましくは、hsgk3遺伝子の少なくとも1つの多型ヌクレオチド、特に、hsgk3遺伝子の単一ヌクレオチド多型(SNP)を包含する。
【0036】
上述の一本鎖または二本鎖核酸に加えて、sgkファミリーのヒト相同体の基質、特にhsgk1およびhsgk3の基質に対する特定の抗体も、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害の病気の少なくとも1つを発症させる素因を診断するのに適している。これら診断用の抗体は、好ましくは、基質のリン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含む、sgkファミリーの(特に、hsgk1およびhsgk3の)ヒト相同体のエピトープに対するものである。
【0037】
例えば、hsgk1遺伝子の個々の遺伝学的な構成によって起こるhsgk1タンパク質の過剰発現により、hsgkの基質の変換の増加、すなわちhsgk1による基質の酵素的リン酸化の増加が起こる可能性がある。同時に、hsgk1タンパク質の過剰発現により、グルコース輸送体Glut1の刺激が起こると予想され、それにより、最終的に、眼の細胞への高レベルのグルコース取り込み、それに続く浸透性による高レベルの水の取り込みが引き起こされ、結果として、最終的に、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害を発症させる素因が生じる。hsgk1のリン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型)を含む対象の基質の領域に対する抗体によって、hsgk1基質のより高頻度のリン酸化を検出することは、結果として、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断する代表的な方法ともいえる。
【0038】
好ましい実施形態において、ユビキチンタンパク質リガーゼNedd4−2(受託番号BAA23711)が、sgkファミリーのヒト相同体の基質として用いられる。このユビキチンタンパク質リガーゼは、sgkファミリーのヒト相同体によって特異的にリン酸化されたタンパク質である[Debonneville等,Phosphorylation of Nedd4−2 by Sgk1 regulates epithelial Na(+)channel cell surface expression.EMBO J.,2001年;20:7052〜7059;Snyder等,Serum and glucocorticoid−regulated kinase modulates Nedd4−2−mediated inhibition of the epithelial Na(+)channel.J.Biol.Chem.,2002年,277:5〜8]。hsgk1のリン酸化部位は、コンセンサス配列(RXRXXS/T)を有し、式中、Rはアルギニン、Sはセリン、Tはスレオニン、Xはいずれかの任意のアミノ酸である。Nedd4−22(受託番号BAA23711)において、上述のコンセンサス配列とマッチする2つの可能性のあるhsgk1のリン酸化部位、すなわちアミノ酸位置382におけるセリン、および、アミノ酸位置468におけるセリンが存在する。
【0039】
それゆえに、上述の、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害の病気の少なくとも1つを発症させる素因を診断するための抗体は、好ましくは、基質Nedd4−2、特に好ましくは、hsgk1の可能性のあるリン酸化部位の配列、すなわちコンセンサス配列(RXRXXS/T)を有するNedd4−2タンパク質の領域に対するものである。特に、これらの抗体は、2つの可能性のあるリン酸化部位の少なくとも1つ、すなわちアミノ酸位置382におけるセリン、および/または、アミノ酸位置468におけるセリンを包含するNedd4−2タンパク質領域に対するものである。
【0040】
その上、本発明は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害の病気の一つを診断するためのキットに関し、本キットは、少なくとも1つの以下の構成要素を含む:
−hsgk1またはhsgk3に対して向けられた抗体、
−一本鎖または二本鎖核酸(ストリンジェントな条件下で、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子、または、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子とハイブリダイズできる);特に、hsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の多型ヌクレオチド、特に「SNP」を包含する一本鎖または二本鎖核酸、
−sgkファミリーのヒト相同体の基質に対する抗体;好ましくは、この基質のリン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型)に対する抗体;特に、Nedd4またはNedd4−2のリン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型)に対する抗体。
【0041】
本発明はまた、多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるためのスクリーニング方法に関し、前記治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられ、本方法は、以下の工程を含む:
a)以下を細胞中で異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
b)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つを培養する工程(前記少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、細胞のアリコートのインデックス1〜Xに対応して異なっている)、および、試験物質の非存在下で、コントロール細胞のアリコートBを培養すること、
c)細胞のアリコートA1〜Axにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を、コントロール細胞のアリコートBにおけるグルコース輸送体Glut1の活性と比較して測定すること。
【0042】
「多様な試験物質」として、物質ライブラリー、好ましくは小分子ライブラリー、またはタンパク質ライブラリーなどを用いることができる。
【0043】
工程a)において、適切な細胞、好ましくは哺乳動物細胞または細胞系、特にヒト細胞または細胞系は、標準的な方法(例えばエレクトロポレーション、CaPO4沈殿、リポフェクションなど)を用いて、Glut1ならびにhsgk1および/またはhsgk3を発現させるのに適した発現カセットを含む適切な発現ベクターでトランスフェクトされる。このような発現カセットは、対象の細胞型において活性であり、標的遺伝子を適切な量で発現することができる適切なプロモーターの制御下で、関連のある標的遺伝子(Glut1、hsgk1またはhsgk3)のゲノムDNAまたはcDNAを含む。発現ベクターは、選択マーカーをさらに含んでもよい。
【0044】
次に、トランスフェクトされた細胞は、標的遺伝子i)およびii)が発現可能な条件下で培養される。
【0045】
工程b)において、a)のトランスフェクトされた細胞は、異なる細胞のアリコートA1〜Ax、および、コントロール細胞のアリコートBに分配される。細胞のアリコートA1〜Axは、それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で培養される。それぞれの場合において細胞のアリコートA1〜Axに加えられる試験物質は、互いに異なる(それぞれの細胞のアリコートA1〜Axのインデックス1〜Xに対応して)。その一方で、コントロール細胞のアリコートBは、試験物質の非存在下で培養される。
【0046】
工程c)において、細胞のアリコートA1〜Axにおけるグルコース輸送体Glut1の活性は、コントロール細胞のアリコートBにおけるグルコース輸送体Glut1の活性と比較して定量的に測定される。Glut1活性に関して、コントロール細胞のアリコートBで測定される値より顕著に低い値が測定される細胞のアリコートA1〜Axには、hsgk1またはhsgk3を機能的に阻害することができる試験物質、または、それらの発現を減少させることができる試験物質が加えられていることとなる。このような物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害の病気の少なくとも1つを治療するのに適する可能性がある。
【0047】
その代わりの実施形態は、多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるための、本発明に係るスクリーニング方法であり、前記治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つの治療および/または予防するのに用いられ、本方法は、以下の工程を含む:
d)細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つにおいて、以下を異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
および、
細胞のアリコートB1〜Bxの少なくとも1つにおいて、以下を異種発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、
e)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜AxおよびB1〜Bxを培養する工程(前記少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、細胞のアリコートのインデックス1〜Xに対応して異なっている)、
f)細胞のアリコートA1〜Axと細胞のアリコートB1〜Bxにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を比較して測定する工程。
【0048】
個々の工程a)〜c)に関して記載された説明は、本発明に係るその代わりのスクリーニング方法の対応する工程d)〜f)の様式にも適応する。
【0049】
以下の図1によって、本発明をより詳細に説明する。
【0050】
2−デオキシグルコースの取り込み(ピコモル/l/10分/卵母細胞)(相加平均±SEM)を、図1の縦座標Aにプロットする。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞に、SGK1、SGK2、SGK3またはタンパク質キナーゼB(PKB)cRNAと共に、または、それらを含まないで、Glut1のcRNAを注入した(実施例1を参照)。
【0051】
図1は、Glut1だけを発現する卵母細胞と比較して、Glut1に加えてhsgk1またはhsgk3を発現する卵母細胞で生じる2−デオキシ−グルコースの取り込みの増加を示す。これにより、hsgk1およびhsgk3の機能は、グルコース輸送体Glut1の活性を効率的に刺激することが実証される。類似の効果は、hsgk1またはhsgk3の代わりにhsgk2またはPKBmutを発現する卵母細胞では観察されない。
【0052】
以下の実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0053】
〔実施例〕
実施例1:アフリカツメガエルの卵母細胞における発現、および、二電極式ボルテージクランプ
正常なSGK1 cRNA[Waldegger S,Barth P,Raber G,Lang F:Cloning and characterization of a putative human serine/threonine protein kinase transcriptionally modified during anisotonic and isotonic alterations of cell volume.Proc Natl Acad Sci USA 1997年;94:4440〜4445]、および、構成的に活性なSGK1(S422DSGK1)cRNA[KobayashiおよびCohen 1999年]、同様に、正常なGlut1 cRNA[Iserovich P,Wang D,Ma L,Yang H,Zuniga FA,Pascual JM,Kuang K,De Vivo DC,Fischbarg J.Changes in glucose transport and water permeability resulting from the T310I pathogenic mutation in Glut1 are consistent with two transport channels per monomer.J Biol Chem.2002年;277:30991−7]をインビトロで合成した。アフリカツメガエルの卵巣の切開、ならびに、卵母細胞の回収および処理は、すでに詳細に説明されている[Wagner CA,Friedrich B,Setiawan I,Lang F,Broeer S:The use of Xenopus laevis oocytes for the functional characterization of heterologously expressed membrane proteins.Cell Physiol Biochem 2000年;10:1〜12]。卵母細胞に、ヒトGlut1(5ng)、ヒトS422DSGK1(7.5ng)、および/または、アフリカツメガエルのNedd4−2(5ng)を注入した。コントロール卵母細胞に、水を注入した。それぞれのcRNAを注射した後、室温で2日間、放射標識したグルコースの取り込みを測定した。コントロールバスの溶液は、96mMのNaCl、2mMのKCl、1.8mMのCaCl2、1mMのMgCl2、および、5mMのHEPESを含む、pH7.4。全ての物質は、所定の濃度で用いた。最終溶液をHClまたはNaOHでpH7.4に滴定した。
【0054】
計算
データは、相加平均±SEMとして示される;nは、試験された卵母細胞の数である。全ての実験は、少なくとも3つの異なる卵母細胞群で行われた。その結果は、スチューデントのt検定を用いて有意差に関して試験された。P<0.05の結果だけを、統計学的に有意とみなした。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】Glut1だけを発現する卵母細胞と比較して、Glut1に加えてhsgk1またはhsgk3を発現する卵母細胞で生じる2−デオキシ−グルコースの取り込みの増加を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の膨張を減少させるための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用。
【請求項2】
白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防用医薬を生産するための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用。
【請求項3】
hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤は、スタウロスポリンまたはケレリトリンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防のための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質の機能的な阻害剤、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子を含む医薬。
【請求項5】
白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、受託番号NM005627に記載のhsgk1配列、もしくはそのフラグメントの一つを包含する一本鎖または二本鎖核酸の使用。
【請求項6】
一本鎖または二本鎖核酸は、少なくとも1つのhsgk1遺伝子の多型ヌクレオチド、特にhsgk1遺伝子の「SNP」を包含することを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
hsgk1遺伝子のSNPは、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのGの挿入、hsgk1遺伝子のイントロン6における2071位でのT/C置換、および、hsgk1遺伝子のエキソン8における2617位でのT/C置換からなるSNPの群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、受託番号AF169035に記載のhsgk3配列を包含する一本鎖または二本鎖核酸、もしくはそのフラグメントの一つの使用。
【請求項9】
一本鎖または二本鎖核酸は、hsgk3遺伝子、特にhsgk1遺伝子の「SNP」の少なくとも1つの多型ヌクレオチドを包含することを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
疾病(白内障、緑内障および糖尿病性神経障害)の少なくとも1つを発症させる素因を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の基質に対する抗体の使用(該抗体は、リン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含むヒト相同体のエピトープに対するものである)。
【請求項11】
sgkファミリーのヒト相同体の基質は、Nedd4−2(受託番号BAA23711)であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
疾病(白内障、緑内障および糖尿病性神経障害)の一つを診断するためのキットであって、hsgk1もしくはhsgk3に対する抗体を含む、または、ストリンジェントな条件下で、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子、もしくは、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子とハイブリダイズできる核酸を含む、または、これら抗体と核酸とを共に含む、上記キット。
【請求項13】
核酸は、ストリンジェントな条件下で、hsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の多型ヌクレオチド、特に「SNP」を包含する、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子、または、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子のDNA領域とハイブリダイズできることを特徴とする、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるためのスクリーニング方法であって、該治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられ、以下の工程:
a)以下を細胞中で異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
b)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つを培養する工程(該少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、細胞のアリコートのインデックス1〜Xに対応して異なっている)、および、いずれの試験物質の非存在下で、コントロール細胞のアリコートBを培養すること、
c)細胞のアリコートA1〜Axにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を、コントロール細胞のアリコートBにおけるグルコース輸送体Glut1の活性と比較して測定する工程、
を含む、上記方法。
【請求項15】
多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるためのスクリーニング方法であって、該治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられ、以下の工程:
d)細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つにおいて、以下を異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
および、
細胞のアリコートB1〜Bxの少なくとも1つにおいて、以下を異種発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、
e)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜AxおよびB1〜Bxを培養する工程(該少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、細胞のアリコートのインデックス1〜Xに対応して異なっている)、
f)細胞のアリコートA1〜Axと細胞のアリコートB1〜Bxにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を比較して測定する工程、
を含む、上記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防用医薬を製造するための、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質のアンタゴニストの使用(該アンタゴニストは、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の天然基質に構造的に類似している)、または、hsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子の使用。
【請求項2】
アンタゴニストは、リン酸化可能なアミノ酸のセリンまたはトレオニンに構造的に類似している、請求項2に記載のhsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質のアンタゴニストの使用。
【請求項3】
白内障、緑内障または糖尿病性神経障害の治療および/または予防のための、hsgk1タンパク質もしくはhsgk3タンパク質のアンタゴニスト(該アンタゴニストは、hsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質の天然基質に構造的に類似している)を含む、または、hsgk1遺伝子もしくはhsgk3遺伝子の転写の負の調節因子を含む医薬。
【請求項4】
アンタゴニストは、リン酸化可能なアミノ酸のセリンまたはトレオニンに構造的に類似している、請求項3に記載のhsgk1タンパク質またはhsgk3タンパク質のアンタゴニストを含む医薬。
【請求項5】
白内障、緑内障および/または糖尿病性神経障害を発症させる素因を診断するための、hsgkファミリーのヒト相同体の配列、もしくはそのフラグメントの一つを包含する一本鎖または二本鎖核酸の使用。
【請求項6】
一本鎖または二本鎖核酸は、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子の配列、もしくはそのフラグメントの一つを包含することを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
hsgk1遺伝子は、少なくとも1つの多型ヌクレオチド、特にhsgk1遺伝子の「SNP」を包含することを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
hsgk1遺伝子の多型ヌクレオチドは、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのGの挿入、hsgk1遺伝子のイントロン6における2071位でのT/C置換、および、hsgk1遺伝子のエキソン8における2617位でのT/C置換からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
一本鎖または二本鎖核酸は、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子の配列、またはそのフラグメントの一つを包含することを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
hsgk1遺伝子は、少なくとも1つのhsgk3遺伝子の多型ヌクレオチド、特に“SNP”を包含することを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
疾病(白内障、緑内障および糖尿病性神経障害)の少なくとも1つを発症させる素因を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の基質に対する抗体の使用であって、該抗体は、リン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含むヒト相同体のエピトープに対するものである、上記使用。
【請求項12】
sgkファミリーのヒト相同体の基質は、Nedd4−2(受託番号BAA23711)であることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
病気(白内障、緑内障および糖尿病性神経障害)の一つを診断するためのキットであって、hsgk1もしくはhsgk3に対する抗体を含む、または、ストリンジェントな条件下で、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子、もしくは、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子とハイブリダイズできる核酸を含む、または、これら抗体と核酸とを共に含む、上記キット。
【請求項14】
核酸は、ストリンジェントな条件下で、hsgk1遺伝子またはhsgk3遺伝子の多型ヌクレオチド、特に“SNP”を包含する、受託番号NM005627に記載のhsgk1遺伝子、または、受託番号AF169035に記載のhsgk3遺伝子のDNA領域とハイブリダイズできることを特徴とする、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるためのスクリーニング方法であって、該治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられ、以下の工程:
a)以下を細胞中で異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
b)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つを培養する工程(該少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、インデックス1〜Xに対応して異なっている)、および、いずれの試験物質の非存在下で、コントロール細胞のアリコートBを培養する工程、
c)細胞のアリコートA1〜Axにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を、コントロール細胞のアリコートBにおけるグルコース輸送体Glut1の活性と比較して測定する工程、
を含む、上記方法。
【請求項16】
工程a)において、hsgk1基質Nedd4−2は、グルコース輸送体Glut1に加えて、または、その代わりに付随して共発現され、工程c)において、細胞のアリコートA1〜Axにおけるhsgk1基質Nedd4−2(受託番号BAA23711)のリン酸化の程度は、コントロール細胞のアリコートBと比較して測定される、請求項15に記載のスクリーニング方法。
【請求項17】
多数の試験物質のなかから、治療活性を有する物質を同定し、特徴付けるためのスクリーニング方法であって、該治療活性を有する物質は、白内障、緑内障および糖尿病性神経障害からなる群より選択される病気の少なくとも1つを治療および/または予防するのに用いられ、以下の工程:
a)細胞のアリコートA1〜Axの少なくとも1つにおいて、以下を異種的に共発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、および、
ii)hsgk1および/またはhsgk3、
および、
細胞のアリコートB1〜Bxの少なくとも1つにおいて、以下を異種発現させる工程、
i)グルコース輸送体Glut1、
b)それぞれの場合において、少なくとも1種の試験物質の存在下で、細胞のアリコートA1〜AxおよびB1〜Bxを培養する工程(該少なくとも1種の試験物質は、それぞれの場合において、細胞のアリコートのインデックス1〜Xに対応して異なっている)、
c)細胞のアリコートA1〜Axと細胞のアリコートB1〜Bxにおけるグルコース輸送体Glut1の活性を比較して測定する工程、
を含む、上記方法。
【請求項18】
工程a)において、hsgk1基質Nedd4−2は、グルコース輸送体Glut1に加えて、または、その代わりに、細胞のアリコートA1〜Axと細胞のアリコートB1〜Bxの両方で付随して共発現され、工程c)において、細胞のアリコートA1〜Axにおけるhsgk1基質Nedd4−2(受託番号BAA23711)のリン酸化の程度は、細胞のアリコートB1〜Bxと比較して測定される、請求項17に記載のスクリーニング方法。

【公表番号】特表2006−519189(P2006−519189A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501737(P2006−501737)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001048
【国際公開番号】WO2004/069258
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(501496603)
【Fターム(参考)】