説明

白華発生抑制型即時脱型コンクリートブロック及び白華発生予測方法

【課題】 本発明は、白華の発生を抑制することができる即時脱型コンクリートブロックを提供することを目的とする。また、本発明は、即時脱型ブロックにおける白華の発生の可能性を簡易的且つ短期間で予測する方法を提供すること。
【解決手段】 セメント、混和材、骨材、可塑剤、白華低減剤及び水を含むコンクリートを硬化させた即時脱型コンクリートブロックであって、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cm以下であり、且つブロック充填率が86%以上であることを特徴とする即時脱型コンクリートブロックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即時脱型方法により成形したコンクリートブロックにおける白華の発生を抑えたコンクリートブロック及び白華の発生の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧振動による方法で成形される即時脱型コンクリート製品は、成形直後に型枠から脱型できるため、自動化された製造ラインで効率よく生産されている。単位水量の極めて少ない超硬練り配合とすることで、脱型直後の塑性変形を抑止した即時脱型コンクリート製品を製造することができるが、一般のコンクリート組成物に比べて空隙量が多くなる。そのため、即時脱型コンクリート製品の内部では、練混ぜ水の一部や外部から浸透する雨水に起因する水分が移動し易く、可溶性の白華成分も水分の移動と共にコンクリート表面に移動するため、即時脱型コンクリート製品は一般に白華が発生し易い。
【0003】
白華とは、コンクリート中に含まれるNaSO、KSO、Ca(OH)等の可溶性成分が、水分の移動によりコンクリート表面に移動し、水分の蒸発や空気中の炭酸ガスとの反応により、白色物質を生成することである。即時脱型製品等の空隙の大きい製品の場合、水分の移動が容易であり、白華が発生しやすくなる。また、低温環境下では、Ca(OH)の溶解度が大きいこと、セメントの水和が遅くなりCa(OH)が長く供給されることなどの理由により、白華が発生しやすくなる。
【0004】
また、近年需要が伸びている顔料で着色された化粧ブロックは、特に白華が目立ち易く、外観を大きく損なう可能性が高くなっている。
【0005】
即時脱型コンクリート製品における白華の発生を抑制する方法として、一般に市販されている白華低減(抑制)剤を使用する方法が挙げられるが、効果は充分とはいえず、冬季及び梅雨などの環境下では白華が発生する場合がある。
【0006】
また、白華の発生を抑制する方法として、二酸化炭酸処理を行う方法(特許文献1、特許文献2)や超音波を照射する方法(特許文献3)が提案されているが、これらの方法はいずれも設備投資を必要とし、製造ラインに組み入れると生産コストが上昇し、また生産工程が増えるため生産性が低下する要因となる。
【特許文献1】特開平11−246251号公報
【特許文献2】特開平11−217281号公報
【特許文献3】特開平9−70811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、白華の発生を抑制することができる即時脱型コンクリートブロックを提供することを目的とする。また、本発明は、即時脱型ブロックにおける白華の発生の可能性を簡易的且つ短期間で予測する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、即時脱型コンクリートブロックにおける白華の発生と、溶出カルシウムイオン積算値及びブロック充填率とが深く関係していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、セメント、混和材、骨材、可塑剤、白華低減剤及び水を含むコンクリートを硬化させた即時脱型コンクリートブロックであって、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cm2以下であり、且つブロック充填率が86%以上である即時脱型コンクリートブロックに関する。
【0010】
また、本発明は、即時脱型コンクリートブロックから蒸発する水の量を測定する工程と、即時脱型コンクリートブロックから溶出するカルシウムイオン量を測定し、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cm2を超えているか否かを確認する工程と、即時脱型コンクリートブロックのブロック充填率を測定し、ブロック充填率が86%を超えているか否かを確認する工程と、を含む即時脱型コンクリートブロックにおける白華の発生を予測する方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、白華の発生を抑えた即時脱型コンクリートブロックの製造が可能になるとともに、白華の発生の可能性を、簡易的且つ短期間で判定することが可能となる。よって、即時脱型コンクリートブロックの製造工程において、白華の発生を防止する新たな工程が不要となり、生産性を向上できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、コンクリートブロックはセメント、混和材、骨材、可塑剤、白華低減剤及び水を含む。また、本明細書で使用する用語は、コンクリートの技術分野で一般的に使用されている用語の意味、例えば、JIS A0203「コンクリート用語」に定義されている意味で使用される。
【0013】
セメントは、例えば、JISR5210「ポルトランドセメント」、混合セメントとしてのJISR5211「高炉セメント」及びJISR5213「フライアッシュセメント」などが挙げられる。
【0014】
また、混和材は、特に限定されるものではなく、例えば、タンカル、フライアッシュなどが挙げられる。その他必要に応じて添加される混和材として、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、凝結・硬化調節剤、防錆剤、収縮低減剤、水和熱低減剤、可塑性剤、白華低減剤などが挙げられる。
なお、可塑剤は、特に限定されるものではないが、ポリサッカライド及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル含むことが好ましい。また、白華低減剤は、特に限定されるものではないが、脂肪酸イオン界面活性剤を含むことが好ましい。
【0015】
骨材は、細骨材及び粗骨材のいずれも使用することができる。細骨材は、砂、砕砂、銅スラグ、高炉スラグ細骨材などが挙げられるが、銅スラグを含むことが好ましい。また、粗骨材は、砕石、高炉スラグ粗骨材などが挙げられる。
【0016】
本発明において、即時脱型コンクリートブロックは、一般の文献などに記載されている方法によって製造することができる。
また、原料は、一般的なコンクリートミキサを使用することで混練することが可能である。
【0017】
ブロック充填率は、コンクリートブロックの配合により決定される。ブロック充填率を86%以上とするためには、セメント100重量部に対して、混和材の含有量を、29重量部以上とすることが必要であり、50重量部以上とすることが好ましく、70重量部以上とすることがより好ましい。
また、コンクリートブロックの水セメント比を、0.30〜0.55とすることが必要であり、0.33〜0.50とすることが好ましく、0.38〜0.49とすることがより好ましい。
また、コンクリートの水粉体比を、0.25〜0.40とすることが必要であり、0.27〜0.35とすることが好ましく、0.29〜0.31とすることがより好ましい。
また、コンクリートブロックは、可塑性剤及び白華低減剤を含むことが好ましい。
【0018】
本発明において、即時脱型コンクリートブロック製品の溶出カルシウムイオン積算値Cは、次式のとおり、カルシウムイオン溶出量Aと逸散水量Bとの積で表される。
【0019】
溶出カルシウムイオン積算値C(mmol/cm2)=カルシウムイオン溶出量A(mmol/L・cm2)×逸散水量B(L)
【0020】
カルシウムイオン溶出量Aの測定には、「涌井一、井上寛美、“即時脱型方法による繊維補強コンクリートの曲げ特性”コンクリート工学年次論文報告集 Vol.9-1、pp471-474(1987)」等に記載されている即時脱型方法を用いて成形し、必要に応じて蒸気養生したコンクリートブロックを使用した。コンクリートブロックから意匠を施した面を残すように、乾式カッターを用いて、3cm×19cm×10cmに切断したものを試験体とした。試験体を成形してから1日経過後、20℃、1.5Lのイオン交換水に5時間浸漬し、浸漬液の一部を採取してイオンメータ((株)堀場製作所製 F−23)を用いてカルシウムイオン濃度を測定した。このカルシウムイオン濃度をブロックの表面積で除した値を、カルシウムイオン溶出量Aとした。なお、表面積の算出にあたり、ブロックの化粧・意匠用テクスチャーや微細な凹凸は無視した。
【0021】
逸散水量Bの測定には、上記のカルシウムイオン溶出量の測定用の試験体と同様の方法で作製した試験体を使用した。混練り後のコンクリートをブロック型枠に投入した時点から3日経過後、図1に示すように、試験体の意匠を施したブロック表面を下面にし(図1イ)、4つの側面を全て遮水性の樹脂等でシールし(図1ロ)、上面からの水分の蒸発逸散を防止するため、蓋付きプラスチックケースの底面を切り取って作製した箱(以下、「上面非蒸発シール箱」という)を取り付けた(図1ハ)。次いで、この試験体を、20℃の水道水に1時間浸漬し(図1ニ)、この時点の試験体と上面非蒸発シール箱の質量(M1)を計量し(図1ホ)、続いて恒温恒湿器内で温度5℃、相対湿度30%、風速0.5m/sの条件下で、ブロック表面が下面となるように静置して乾燥し(図1ヘ)、24時間後に試験体と上面非蒸発シール箱の質量(M2)を計量した(図1ト)。M2とM1の質量差分の水量を上面非蒸発シール箱の蓋を開けて供給し、サンプルに吸水させた(図1チ)。この乾燥及び吸水操作を繰返した後の蒸発水の総量を、逸散水量とした。好ましくは5回以上、より好ましくは7回以上、乾燥及び吸水操作を繰り返す。本操作を5回繰り返すことで、ブロック充填率に対する溶出水量の差が確認され、7回行うことでその差が明確になるからである。
なお、本明細書において、この乾燥及び吸水操作を合計7回行った逸散水量の値に基づいて、溶出カルシウム積算値を論じている。
【0022】
下記に示すように、ブロック充填率Hは、成形直後の即時脱型コンクリートブロックの質量Dと容積Eから算出されるブロックの密度Fと、得られた即時脱型コンクリートブロックを成形するために用いたコンクリートの単位容積質量Gとの比で表される。
【0023】
ブロックの密度F(g/cm3)=ブロックの質量D(g)/ブロックの容積E(cm3
ブロック充填率H(%)=ブロックの密度F(g/cm3)/コンクリートの単位容積質量G(g/cm3)×100
【0024】
また、白華の発生量は、逸散水量を測定する試験操作において、ブロック表面に発生した白華の量で表され、目視観察により、ブロック表面全体に白華が発生した場合を×、部分的に白華が発生した場合を△、白華が発生しない場合を○とした。
【0025】
本発明において、即時脱型コンクリートブロックの白華の発生を抑制するためには、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cm2以下であり、且つブロック充填率が86%以上であることが必要であり、溶出カルシウムイオン積算値が0.0020mmol/cm2以下であり、且つブロック充填率が88%以上であることが好ましく、溶出カルシウムイオン積算値が0.00010mmol/cm2以下であり、且つブロック充填率が90%以上であることがより好ましい。
【0026】
溶出カルシウムイオン積算値Aは、そのコンクリートブロック中に含まれる白華を生じさせる重要な成分である溶解性のカルシウム量が相対的に多いか少ないか、また部分的に溶出したカルシウムの移動度の指標となり得ると考えられる。一方、ブロック充填率Hは、ブロックの空隙量が多いか少ないか、また溶出した白華成分のブロック表面への移動のし易さの指標となりえると考えられる。溶出カルシウムイオン積算値が、0.00027mmol/cm2を超え、さらには0.0010mmol/cm2を超えると、白華の多量発生の原因になるため好ましくない。一方、即時脱型コンクリートブロックのブロック充填率が86%未満、さらには82%未満であると、白華が多量に発生しやすくなると考えられるため、好ましくない。
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの説明は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0028】
使用した即時脱型コンクリートブロックは、普通ポルトランドセメント、骨材、水、混和材、ポリサッカライド及びポリオキシエチレンアルキルフェノールを含有する可塑剤(商品名 ルブリリス100(BASF社製))、脂肪酸イオン界面活性剤を含有する白華低減剤(商品名 ルブリリス640(BASF社製))を含む。これらの材料を2分間モルタルミキサで練り混ぜた後、即時脱型ブロック成形機(タイガーマシン製作所製)を用いて成形した。成形後、温度30℃、相対湿度100%で1時間保持し、7.5℃/hの昇温速度で4時間かけて60℃に昇温し、温度60℃、相対湿度100%で1時間保持し、7.5℃/hの降温速度で2時間かけて45℃に降温する条件で、コンクリートブロックを養生した。その後、温度20℃、相対湿度60%の条件で、コンクリートブロックを試験開始まで保管した。
【0029】
実施例1〜3及び比較例1〜4について、配合割合を表1に示す。実施例1、2、比較例1、2では、普通ポルトランドセメントを使用し、水セメント比0.36〜0.49の配合で、混和材としてタンカルを使用して即時脱型コンクリートブロックを得た。
実施例1及び実施例2は、ブロック充填率86%を満たす対策をとり、その結果実施例1は89.5%、実施例2は93.2%であった。一方、比較例1は85.6%、比較例2は85.9%であった。
実施例3では、普通ポルトランドセメントを使用し、水セメント比0.49の配合割合で、混和材としてフライアッシュを使用して、ブロック充填率86%を満たす対策をとり、即時脱型コンクリートブロックを得た。ブロック充填率は87.9%であった。
比較例3では、普通ポルトランドセメントを使用し、水セメント比0.37の配合割合で、混和材としてシラスを使用して、即時脱型コンクリートブロックを得た。ブロック充填率は83.0%であった。
比較例4では、普通ポルトランドセメントを使用し、水セメント比0.33の配合割合で混和材を使用せず、即時脱型コンクリートブロックを得た。ブロック充填率は81.7%であった。
【0030】
実施例1〜3及び比較例1〜4について、前記の測定装置を用いて、溶出カルシウムイオン積算量及び逸散水量を求めた。本実施例において、逸散水量は7回乾燥及び吸水を繰り返した値を使用した。
【0031】
実施例1〜3及び比較例1〜4について、ブロック充填率、カルシウムイオン溶出量、逸散水量、溶出カルシウムイオン積算値及び白華の発生状態を、表2に示す。実施例1及び比較例2の対比から、カルシウムイオン溶出量の低域が白華発生を抑制することがわかる。
【0032】
すなわち、即時脱型コンクリートにおける白華の発生を抑制する指標として、溶出カルシウムイオン積算値とブロック充填率とが挙げられ、溶出カルシウムイオン積算値が、0.00027mmol/cm2以下であることが必要であり、0.00020mmol/cm2以下であることが好ましく、0.00010mmol/cm2以下であることがより好ましい。また、ブロック充填率が、86%以上であることが必要であり、88%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。そして、これらの指標と白華の発生状況とが対応することから、これらの指標を求めることは、製造される即時脱型コンクリートブロックにおける白華の発生の可能性を判断する方法として有用であり、並びに簡易的且つ短時間で求めることができる。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】溶出カルシウムイオン積算値を測定するための装置及び概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、混和材、骨材、可塑剤、白華低減剤及び水を含むコンクリートを硬化させた即時脱型コンクリートブロックであって、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cm以下であり、且つブロック充填率が86%以上であることを特徴とする即時脱型コンクリートブロック。
【請求項2】
コンクリートの水セメント比が、0.30〜0.55である、請求項1記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項3】
可塑剤が、ポリサッカライド及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む、請求項1又は2記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項4】
白華低減剤が、脂肪酸陰イオン界面活性剤である、請求項1〜3いずれか1項記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項5】
骨材が、銅スラグである、請求項1〜4いずれか1項記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項6】
混和材が、タンカル及び/又はフライアッシュである、請求項1記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項7】
即時脱型コンクリートブロックから蒸発する水の量を測定する工程と、
即時脱型コンクリートブロックから溶出するカルシウムイオン量を測定し、溶出カルシウムイオン積算値が0.00027mmol/cmを超えているか否かを確認する工程と、
即時脱型コンクリートブロックのブロック充填率を測定し、ブロック充填率が86%を超えているか否かを確認する工程と、を含む
即時脱型コンクリートブロックにおける白華の発生を予測する方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法を使用した、コンクリートブロックの検査方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−13021(P2009−13021A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177647(P2007−177647)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000230836)日本興業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】