説明

皮下組織部位に減圧を適用するためのスリーブ、マニホルド、システム、及び方法

ここに記載された具体的な実施例が、皮下組織部位に減圧を適用するための器具、システム、及び方法を扱っている。1つの具体的な実施例では、器具が、皮下組織部位に配置するよう構成されたスリーブを有する。さらに、このスリーブは、マニホルドを受容するよう構成される。また、スリーブは、マニホルドから皮下組織部位に減圧を送るよう動作可能な穴を有する。また一実施例では、本器具は、スリーブの中に挿入可能なマニホルドを有する。マニホルドは、少なくとも1の開口部を有し、少なくとも1の開口部を介して皮下組織部位に減圧を送出するよう動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本出願は、2008年12月31日に出願され、参照することによりここで引用されている米国仮特許出願61/141,716の利益を主張する。
【0002】
本出願は、概して、医療治療システムに関し、特に、組織部位に減圧を適用するための減圧治療システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究及び業務により、組織部位の近くに減圧を与えて、組織部位で新たな組織の成長を拡大及び加速させることが分かっている。このような現象の適用は多くあるが、減圧のある1つの適用は、創傷の治療を含んでいる。このような治療は、上皮及び皮下組織の移動、血流の改善、及び創傷部位での組織の微小変形を含む多くの利益を提供する。これらの利益とともに、肉芽組織が発達し回復期間が早くなる。一般に、減圧は、多孔質パッド又は他のマニホルド器具を通して組織に減圧源によって適用される。多くの例において、創傷の滲出液及び組織部位からの他の液体が、容器の中に集められて液体が減圧源に達するのを防止する。
【発明の概要】
【0004】
既存の減圧システムによって与えられる問題が、ここで記載された具体的な実施例に係る本システム及び方法によって解決される。一実施例では、皮下組織に減圧を適用するためのシステムが提供される。本システムは、管腔を有し、皮下組織部位に配置するよう構成されるスリーブを有する。スリーブは、穴を有する。さらに、本システムは、スリーブの管腔の中に挿入されるような大きさ及び形状のマニホルドを有する。マニホルドは、少なくとも1の開口部を有しており、少なくとも1の開口部及び穴を通して皮下組織部位に減圧を送出するよう動作可能である。
【0005】
別の実施例では、皮下組織部位に減圧を適用するための器具が、遠位端及び近位端を有するマニホルド及び遠位端及び近位端を有するスリーブを有する。スリーブは、皮下組織部位に配置するための大きさ及び形状である。スリーブは、マニホルドを受容するための内部を有する。スリーブは、マニホルドから皮下組織部位に減圧を伝えるよう動作可能な穴を具えた形状である。マニホルドの遠位端は、スリーブの内部の中に挿入されるような大きさ及び形状である。マニホルドは、少なくとも1の開口部を具えて形成され、少なくとも1の開口部を通して皮下組織部位に減圧を送出するよう動作可能である。
【0006】
さらに別の実施例では、皮下組織部位に減圧を適用するための方法が、スリーブの穴が皮下組織部位に隣接するように、皮下組織部位にスリーブを挿入するステップを有する。マニホルドが、少なくとも1の開口部を有するスリーブの中に挿入される。減圧が少なくとも1の開口部及び穴を介して皮下組織部位に供給される。
【0007】
さらに別の実施例では、皮下組織部位に減圧を適用するための器具を作製する方法が提供される。この方法は、皮下組織部位に配置するよう構成されたスリーブを形成するステップを有する。スリーブは、さらに、マニホルドを受容するよう構成され、マニホルドから皮下組織部位に減圧を伝えるよう動作可能な穴を有する。
【0008】
具体的な実施例の他の目的、態様、及び利点が、以下の図面及び詳細な説明を参照することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、具体的な実施例に係る、皮下組織部位に減圧を適用するための減圧治療システムの概略図を示す。
【図2】図2は、具体的な実施例に係る、皮下組織部位に減圧を適用するための器具の側面図を示す。
【図3】図3は、器具の一部を隠れ線で示した図2の器具の遠位部の斜視図を示す。
【図4】図4は、図2の器具の斜視図を示す。
【図5】図5は、具体的な実施例に係る、マニホルド及びエンドキャップの側面図を示す。
【図6】図6は、図5の6−6でのエンドキャップの正面の断面図を示す。
【図7】図7は、図5の7−7でのエンドキャップの正面の断面図を示す。
【図8】図8は、図6の8−8でのエンドキャップの一部の断面図を示す。
【図9】図9は、腹腔の組織部位の減圧を適用するための減圧治療システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施例の詳細な説明において、発明の一部を形成する、本発明を実施する特定の好適な具体例で示す添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるよう十分に詳細に説明され、他の実施例が用いられてもよく、本発明の意図または範囲を逸脱することなく、他の実施例を使用し、論理構造的、機械的、電気的、化学的な変更を施すことができると解される。当業者がここに記載された実施例を実施できるのに不要な詳細を避けるべく、説明において当業者に周知の特定の情報を省略している場合がある。このため以下の詳細な説明は、限定の意味として解すべきではなく、説明する実施例の範囲は添付のクレームよってのみ規定される。
【0011】
ここで使用する「減圧」という用語は、一般に、治療を受ける組織部位の周囲圧力よりも低い圧力に関する。大部分のケースにおいて、このような減圧は、患者が居る大気圧よりも低いであろう。代替的に、減圧を組織部位の組織に関する静水圧よりも低くし得る。「真空」及び「負圧」という用語を使用して、組織部位に加わる圧力を説明できるが、組織部位に適用される実際の圧力減少は、完全真空に通常関連する圧力減少よりも顕著に小さい。減圧は、組織部位の領域での流体の流れによって最初に発生する。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に近づくと、流れが低下し、その後減圧が維持される。他のものを示さない限り、ここで言及する圧力の値は、ゲージ圧である。同様に、減圧の程度の増加は、一般に、絶対圧力の減少に関するものである一方、減圧の程度の減少は、一般に、絶対圧力の増加に関する。
【0012】
図1を参照すると、組織部位103に減圧を適用する具体的な実施例に係る減圧治療システム100を示す。図1に示す実施例では、組織部位103は、骨組織部位である。特に、組織部位103は、実施例では大腿骨として示される骨106の損傷である。組織部位103での減圧は、多くの利点を与えると考えられる。骨の組織成長を促進するよう使用される場合、減圧治療が、損傷、偽関節、空洞、又は他の骨の血管に関する修復率を高めることができる。また、減圧治療を使用して、骨髄炎からの回復を改善する。さらに、この治療は、骨粗しょう症を患っている患者の局部骨密度を増やす。そして、減圧治療を使用して、腰部のインプラント、膝部のインプラント、及び固定器具といった整形外科的インプラントのオセオインテグレーションをスピード化且つ改善する。
【0013】
組織部位103は、骨組織である一方、ここで使用される「組織部位」という用語は、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、又は靱帯といった、これらに限定されないある組織に又はその中に位置する傷又は欠陥に関する。さらに、「組織部位」という用語は、必ずしも傷付いたもの又は欠陥を有しないが、さらなる組織の成長を付加又は促進することが望ましい組織の領域に関する。例えば、減圧組織治療を特定の組織領域に使用して、培養且つ別の組織の場所に移植される付加的組織を成長させ得る。
【0014】
図1を参照すると、減圧治療システム100が、減圧源109及び組織部位103に配置されたマニホルド112を有する。減圧源109は、マニホルド112を通して組織部位103に減圧を提供する。マニホルド112は、減圧を管理して組織部位103から流体を除去又はそこに供給するための通路(図1に示さず)を有する。通路は、マニホルド112の遠位端113から近位端114に延びている。マニホルド112は、マニホルド112に液通する送出管路115を通して減圧源109から減圧を受容し、治療の際にマニホルド112に減圧を送出する。マニホルド112は、開口部118といった少なくとも1の開口部を有しており、開口部118を介して組織部位103に減圧を送出する。
【0015】
一実施例では、マニホルド112をスリーブ121の中に挿入して、組織部位103に減圧治療を提供できる。管腔部材であるスリーブ121は、組織部位103から患者の皮膚を通して患者124の外部の場所に延びている。マニホルド112が挿入される穴130を有するスリーブ121の近位端127は、スリーブ121が組織部位103に配置されたときに患者124から突出する。このような方法でスリーブ121の近位端127を露出することで、スリーブ121にアクセスし易くなり、スリーブ121の中にマニホルド112を挿入し易くなる。マニホルド112は長手方向の長さL1を有し、スリーブは長手方法の長さL2を有し、組織部位から患者の外部の場所までの距離は、L3である。一実施例では、L1>L2>L3である。別の実施例では、スリーブ121の近位端127が患者124の皮下に配置されており、すなわちL2<L3である。スリーブ121は、図1に示すような屈曲向きを含む様々な空間的向きで患者124の組織部位103に配置される。スリーブ121を患者124に取り外し可能に固定して、組織部位103に対して固定位置でスリーブ121を保持することができ、又は固定を外し得る。一実施例では、スリーブ121を医療用エポキシ、医療用テープ、又は他の手段を用いて所定の位置に縫い込み又は接着することができる。近位端127は、フランジ(図示せず)を含んでおり、近位端127が患者124に入るのを防止する。さらに、フランジを患者124の外部に突出する所定の位置に置くことができ、エポキシ、医療用テープ、縫合糸等を用いて接着できる。
【0016】
スリーブ121は、マニホルド112を摺動可能に受容し得る。マニホルド112を穴130の中に挿入して、スリーブ121の遠位端133に向けて移動させ得る。マニホルド112をスリーブ121の穴136の近くに配置することができる。穴136をスリーブ121の遠位部139に配置させ、スリーブ121の長さ分とし、任意の形状又は大きさを取り得る。マニホルド112は、目に見える指標(図9の例示691を参照)を有しており、マニホルド112がスリーブ121の内部の中に挿入される程度を測るのを補助する。マニホルド112の外側又はスリーブ121の内側又は双方は、スリーブ121及びマニホルド111の相対位置に関して医療提供者に触覚フィードバックを与えるためのリブを含む。マニホルド112は、スリーブ121の穴136を介して減圧源109から組織部位103に減圧を送出し得る。
【0017】
使用時に、スリーブ121にマニホルド112を取り外し可能に固定するのが望ましい。以下でさらに説明するように、締まり嵌め又はグルーブロックを使用できる。代替的に、マニホルド112が、マニホルド112の長手方向(又は長手方向の一部)に沿って設けられ、スリーブ121の内側の長手方向の溝部(図示せず)に整合する長手方向の突起部材(図示せず)を有する。代替的に、溝部がマニホルド112に、突起部材がスリーブ121にあってもよい。このようなマニホルド112及びスリーブ121を固定する方法は、マニホルド112が穴136及び最終的には組織部位103に対して適切な位置を取ることを確実に補助する。
【0018】
マニホルド112は、スリーブ121に挿入可能であり、スリーブ121から取り外し可能である一方、スリーブ121は、組織部位103に残ったままである。使用中に、患者124の穴119、例えば患者の皮膚の穴の近くでマニホルド112及びスリーブ121の周囲に空圧シールを形成する。ドレープ材料、医療用テープ、親水コロイド、又は他のシーリング材を用いて空圧シールを形成できる。
【0019】
マニホルド112を常にスリーブ121の外に出すことができる。マニホルド112をスリーブ121に挿入できスリーブ121から取り外せる一方、スリーブが組織部位103に残っていることで、システム100が組織部位103の効果的な減圧治療を促進する。例えば、マニホルド112が詰まった場合には、フィブリン、組織、又は他の体の物質といったものによって、マニホルド112が除去されて、洗浄されるか又はスリーブ121に挿入できる別のマニホルドに交換される。マニホルド112の完全性を目で監視するため、又は患者124を減圧源109から離すことによって患者124の移動をし易くするといった何らかの理由により、マニホルド112を除去又は再挿入できる。さらに、マニホルド112の挿入及び除去を何度も繰り返せるが、組織部位103及びその周囲又は皮膚の組織の破壊又は損傷を最小限にする。
【0020】
一実施例では、マニホルド112にパージング液を送出することよって、マニホルド112の閉塞を減少又は防止できる。このような実施例では、流体源142がパージング液を供給する。送出管路115がマニホルド112に流体を送出する。流体は、液体又は空気といった気体とすることができ、マニホルド112の閉塞をパージする。フィブリン、組織、又は他の体の物質を含むパージされたこれらの物質は、マニホルド112の外に引き出され、減圧源109からの減圧を用いて減圧源109に向かう。これらの物質は、容器145によって収容できる。別の実施例では、流体源142は、組織部位103に、抗菌剤、抗ウイルス剤、細胞増殖促進剤、洗浄液、又は他の化学的に活性な薬剤も供給する。
【0021】
一実施例では、組織部位103に減圧を適用するための方法が、スリーブ121の穴136が組織部位103に近接するように、組織部位103にスリーブ121を挿入するステップを有する。また、この方法は、スリーブ121の中に開口部118を有するマニホルド112を挿入するステップを有する。開口部118及び穴136を介して組織部位103に減圧が供給される。また、この方法は、スリーブ121からマニホルド112を除去するステップを有する。このような実施例では、スリーブ121が組織部位103に残ったままであり、マニホルド112又は他のマニホルドをスリーブ121の中に挿入又は再挿入できる。また、マニホルド112がスリーブ121に配置されているか否かにかかわらず、スリーブ121をいつでも組織部位103から除去できる。
【0022】
一実施例では、組織部位103に減圧を適用するための器具を作製する方法が、スリーブ121を形成することを含んでいる。またこの方法は、マニホルド112を形成することを含んでいる。
【0023】
図2乃至4を参照すると、皮下組織部位に減圧を適用するための器具201が、具体的な実施例に関して示されている。特に、図2乃至4は、図1のマニホルド112及びスリーブ121とそれぞれ同じようなマニホルド212及びスリーブ221を示す。スリーブ221及びマニホルド212は、同じ横断面形状を有する。図2乃至4では、スリーブ221及びマニホルド212が円形の横断面を有する。スリーブ221又はマニホルド212は、楕円、多角形、不規則形状、又は特製の形状といった他の横断面形状を有する。
【0024】
スリーブ221の幅248は、好適には、マニホルド212の幅251よりも大きい。しかしながら、マニホルド212の幅251は、マニホルド219の長さ全体に沿って一定であることを要しない。マニホルド212の幅251を、スリーブ221の幅248に対してその長さに沿って変えて、マニホルド212及びスリーブ221間のスペースの量を増減させることができる。
【0025】
スリーブ221又はマニホルド212は、シリコーンを含む様々な生体適合性材料でできている。スリーブ221は、皮下組織に挿入したときにスリーブ221が曲げられるように、柔軟性を有する。一実施例では、スリーブ221が、マニホルド212よりも柔軟性のある材料から成る。マニホルド212の剛性により、減圧を受けたときにマニホルド212の潰れを防止し易くなる。
【0026】
図1の穴136に機能的に類似するスリーブ221の穴236を、スリーブ221の壁257、側壁に配置できる。穴236が、スリーブ221の最遠位部233に又はその近くに設けられており、スリーブ221の長さに沿って拡がっている。穴236は、マニホルド212から組織部位に減圧を伝え得る。一実施例では、穴236がスリーブ221のほぼ長さ260全体に沿って延びている。
【0027】
略矩形を有する穴236を示す。しかしながら、穴236は、円形、楕円形、多角形、不規則形状、又は特製の形状を含む任意の形状を有する。穴236が特製の形状を有する実施例では、特定の実施又は器具201によって治療される組織部位に基づいて、穴236を形成できる。さらに、スリーブ221が、2又はそれ以上の穴236を有する。2又はそれ以上の穴236は、同一又は異なる向きを有する。例えば、2つの穴236を壁257の両側に配置できる。別の実施例では、壁257の同じ側に2つの穴236を配置でき、スリーブ221の長さ260に沿って並べることができる。穴236の大きさ、形状、数は、特定の組織部位及び実施される治療のタイプに依存する。
【0028】
マニホルド212が、マニホルド212を部分的に又は完全に囲む複数の開口部218を有する。開口部218がマニホルド212を完全に囲む実施例では、マニホルド212は略円筒形であり、開口部218がマニホルド212の周縁に設けられている。開口部218がマニホルド212を部分的に囲む実施例では、開口部218のそれぞれが、マニホルド212がスリーブ221に挿入されたときに穴236に実質的に面するよう配置されている。
【0029】
また、マニホルド212が、マニホルド212を部分的に又は完全に囲むフランジ263を有する。フランジ263の外側端部266は、マニホルド212がスリーブ221に挿入されたときに、スリーブ221の内面269に少なくとも部分的に突出する。また、フランジ263の外側端部266は、マニホルド212が矢印272の方向にスリーブの中に挿入されたときに、又は矢印275の方向に除去されたときに、スリーブ221の内面269に沿って摺動可能である。フランジ263をマニホルド212の端部278を含むマニホルド212に沿ったどこにでも配置できる。2又はそれ以上のフランジ263といった任意の数のフランジ263を含めることができる。
【0030】
フランジ263は、図2の矢印275で示すようにマニホルド212がスリーブ221から除去されたときに、スリーブ221の近位端227に向けて、体の物質又は流体といった物質を移動させ得る。この実施例では、マニホルド212を除去することで、スリーブ221の遠位端239を含むスリーブ221から、滲出液、組織、又は他の物質といった組織片を取り除くのを助ける。
【0031】
フランジ263の幅281、又は外径は、穴236の幅283よりも大きい。このような実施例では、フランジ263が、特に、マニホルド212がスリーブ221の中に挿入されたときに、マニホルド212が穴236を通してスリーブ221の外に出るのを防止するよう助ける。代替的な実施例では(図示せず)、スリーブ221の内部が、フランジ263に係合してスリーブ221の中へのマニホルド212のさらなる挿入を止めるよう構成された遮断部材を含んでいる。代替的に、マニホルド212は、近位部にスリーブ221の中へのマニホルド212のさらなる前進を防止する面態様を有する。
【0032】
一実施例では、フランジ263が、穴285といった少なくとも1の穴を有する。穴285により、フランジ263の遠位側の空間287とフランジ263の近位側の空間289との間が液通できる。フランジ263は任意の数の穴285を有しており、穴285は任意の形状を有する。一実施例では、フランジ263が穴285を有しない。別の実施例では、穴285が穴285に一方向弁を有しており、マニホルド212を除去したときに流体がスリーブ221の外に引き出され得るが、マニホルド212がスリーブ221の中に移動するときに空気又は他の流体を押すのを防止する(すなわち、この弁により、弁を通した矢印275の方向への流体流れが可能となるが、矢印272の方向への流れが規制される)。
【0033】
図3にマニホルド212がスリーブ221の中に十分に挿入されたときに穴236の長さに沿って設けられたフランジ263を示すが、マニホルド212が十分に挿入されたときに、代わりにフランジ263を穴236の遠位に配置できる。このような特定の実施例では、穴236の遠位にフランジ263を配置することで、フランジ263が穴236を通ってスリーブ221に入る体の組織片及び物質全てを(マニホルドを除去したときに)より良好に除去できる。
【0034】
スリーブ221は、スリーブ221の遠位端292に結合された端部キャップ291を有する。ここで使用される「結合」という用語は、別々の物体を介した結合を含んでおり、また直接的な結合を含む。直接的な結合のケースでは、結合される2つの物体がある方法で互いに接触する。また、「結合」という用語は、同じ材料片で形成された各構成要素のために互いに接触する2又はそれ以上の構成要素を包含する。また、「結合」という用語は、化学結合を介したような化学的結合を含む。また、「結合」という用語は、機械的、熱的、又は電気的結合を含んでいる。また、「結合」は、固定結合された又は取り外し可能に結合されたものを意味する。
【0035】
エンドキャップ291により、流体及び減圧がスリーブ221の遠位端292でスリーブ221に出入りするのを防止する。エンドキャップ291は、円形又はドーム形を含む任意の形状を有する。エンドキャップ291が円形又はドーム形を有する実施例では、エンドキャップ291の形状がスリーブ221の皮下挿入をより良好に促進する。また、エンドキャップ291の内側の空間293は、中空又は中実のいずれかである。別の実施例では、スリーブ221がエンドキャップ291を有しない。
【0036】
さらに特に図4を参照すると、図1の送出管路115に機能的に類似する送出管路215が、マニホルド212に減圧又は流体を送出する。一実施例では、送出管路215が、管腔293及び294といった2又はそれ以上の管腔を有する。一実施例では、管腔293がマニホルド212に減圧を送出し、管腔294がマニホルド212に流体を送出する。送出管路215は、マニホルド212に流体結合されている。
【0037】
図5乃至8を参照すると、図1のマニホルド112と同じようなマニホルド512、図2乃至4のエンドキャップ291と同じようなエンドキャップ591を、分解図で示す。エンドキャップ591が結合されるスリーブは、明りょうのために図5に示さない。エンドキャップ591は、エンドキャップ591のスリーブに面する側596に固定壁595を有する。一実施例では、固定壁595が、固定壁595がマニホルド512の遠位端578を少なくとも部分的に囲むように、マニホルド512の遠位端578を受容し、締まり嵌めを形成する。代替的に、マニホルドの遠位端578が、固定壁595を受容且つ囲み、締まり嵌めを形成する。固定壁595は、マニホルド512がスリーブ521の中に挿入されたときに、安定化させ、固定し、又は例えばマニホルド512及びスリーブ521の横方向の移動又は長手方向の移動といった相対移動を防止する。固定壁595の周りの空間502は、中空又は中実である。エンドキャップ591は、図示するようなドーム形であるか、又は円筒形であるか、又は任意の他の形状を取り得る。
【0038】
一実施例では、固定壁595が、溝部597といった少なくとも1の溝部を有しており、マニホルド512が、マニホルド512の遠位端578又はその近くに、突出部598といった少なくとも1の突出部を有する。突出部598は、マニホルド512から半径方向に延びている。遠位端578が固定壁595の中に挿入されると、溝部597が、突出部598を摺動可能に受容する。溝部597の中に突出部598を挿入することによって、マニホルド512が、マニホルド512に対して回転移動するのを実質的に防止される。溝部597が突出部598を摺動可能に受容するときに、開口部518がスリーブの穴(図示せず)に面するように、マニホルドが向く。固定部599の溝部597の中に突出部598を移動させることによって、スリーブの外へのマニホルド512の移動が、妨げられ又は防止される。別の実施例では、溝部597が固定部599を有しない。
【0039】
スリーブ及びマニホルドの図示する実施例を使用して、1又はそれ以上の組織部位及び患者の中の様々な場所に位置する組織部位に減圧治療を提供できる。例えば、骨といった組織部位103に適用される図1のシステム100を示す。図9の別の具体的な実施例では、減圧治療システム600が、腹部の組織部位603に減圧を提供できる。
【0040】
システム600はシステム100に類似し、500で示す符号とともに図1と同じようなパーツを示す。組織部位603は、患者624の腹腔の中、特に結腸傍溝607の中にある。マニホルド612をスリーブ621の中に挿入する。スリーブ621は、遠位端625及び近位端627を有する。スリーブ621の近位端627は、マニホルド612が中に挿入される穴630を有する。このような実施例では、組織欠陥を有さず、マニホルド612が解剖学的面又は領域に沿った、このケースでは結腸傍溝607に沿った多数の組織及び組織部位に晒される。1つの結腸傍溝607に適用されるシステム600を示すが、患者624の他方の側の結腸傍溝611にも減圧治療を適用し得ることに留意されたい。
【0041】
スリーブ621を患者の腹部の穴を通して挿入し、結腸傍溝607に配置する。マニホルド612をスリーブ621の中に挿入する。マニホルド612は、穴636の近く及び組織部位603の近くに開口部618を有するよう配置される。マニホルド612の近位端690が、送出管路615に結合される。送出管路615は、減圧源609から減圧を与え、組織部位603から流体(例えば、腹水又は滲出液)を除去し、その後、容器645の中に集める。また、送出管路615は、流体源642から流体を供給する。マニホルド612の近位端690は、目に見える目印691を有しており、医療従事者がマニホルド612がスリーブ621の中に挿入されている程度を測るのを補助する。また、近位端690は、フランジ又は他の器具を有しており、スリーブ621の中へのマニホルド612の挿入を防止する。
【0042】
システム600を使用して、創傷部位603に減圧治療を提供でき、又は単に、例えば腹腔から腹水といった流体を除去する。また、多くの他の組織部位にも可能である。
【0043】
上記から顕著な利点を有する発明が提供されることが明らかであろう。ほんの数種類の形式の本発明を示すが、それに限定されるわけではなく、その精神から逸脱せずに様々な変更及び修正が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下組織部位に減圧を適用するためのシステムであって、前記システムが:
管腔を具えたスリーブであって、皮下組織部位に配置するよう構成され、穴を有するスリーブと;
前記スリーブの前記管腔の中に挿入されるような大きさ及び形状のマニホルドと;
を具えており、
前記マニホルドが、少なくとも1の開口部を有しており、
前記マニホルドが、前記少なくとも1の開口部及び前記穴を通して前記皮下組織部位に減圧を送出するよう動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
さらに、減圧を供給するよう動作可能な減圧源及び前記マニホルドに液通する送出管路を具えており、
前記送出管路が、治療中に前記マニホルドに前記減圧を送出するよう動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記組織部位が骨であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記組織部位が、腹腔内にあることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記組織部位が、結腸傍溝の近くにあることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記スリーブが、柔軟性のある材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記マニホルドが、減圧を送出するための流路を具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記マニホルドが、減圧を送出するための流路を具えており、前記流路が、前記マニホルドの遠位端から近位端に延びていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
L1>L2であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
前記皮下組織部位から患者の外部の場所までの距離が、L3であり、
L1>L2>L3であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
さらに、流体を供給するよう動作可能な流体源を具えており、
前記送出管路が、さらに、前記マニホルドに前記流体を送出するよう動作可能であることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
皮下組織部位に減圧を適用するための器具であって、前記器具が:
遠位端及び近位端を有するマニホルドと;
遠位端及び近位端を有し、前記皮下組織部位に配置するための大きさ及び形状のスリーブであって、前記マニホルドを受容するための内側部を有し、前記マニホルドから前記皮下組織部位に減圧を伝えるよう動作可能な穴を具えて形成されたスリーブと;
を具えており、
前記マニホルドの前記遠位端が、前記スリーブの前記内側部の中に挿入される大きさ及び形状であり、
前記マニホルドが、少なくとも1の開口部を具えて形成されており、
前記マニホルドが、前記少なくとも1の開口部を通して前記皮下組織に減圧を送出するよう動作可能であることを特徴とする器具。
【請求項13】
前記スリーブに形成された前記穴が、前記スリーブの側壁に設けられており、
前記穴が、前記スリーブの長さに沿って延びていることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記穴が、前記スリーブの前記遠位端の近くに設けられていることを特徴とする請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記スリーブの幅が前記マニホルドよりも広いことを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項16】
前記スリーブ及び前記マニホルドが、同じ断面形状を有することを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項17】
前記マニホルドが、さらに、前記マニホルドを少なくとも部分的に囲むフランジを具えており、
前記フランジの外側端部が、前記スリーブの内側部に少なくとも部分的に突出するよう構成されることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項18】
前記フランジの外側端部が、前記スリーブの内面に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記マニホルドが前記スリーブから外れるときに、前記フランジが前記スリーブの近位端に向けて物質を移動させるよう動作可能であることを特徴とする請求項18に記載の器具。
【請求項20】
前記物質が、体の物質であることを特徴とする請求項19に記載の器具。
【請求項21】
前記フランジが、少なくとも1の穴部を有することを特徴とする請求項17に記載の器具。
【請求項22】
前記フランジの幅が、前記穴よりも広いことを特徴とする請求項17に記載の器具。
【請求項23】
さらに、前記スリーブの遠位端に結合されたエンドキャップを具えることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項24】
前記エンドキャップが、ドーム形を有することを特徴とする請求項23に記載の器具。
【請求項25】
前記エンドキャップが、前記エンドキャップのスリーブ対向面に固定壁を具えており、
前記固定壁が前記マニホルドの前記遠位端を少なくとも部分的に囲むように、前記固定壁が前記マニホルドの遠位端を受容するよう構成されることを特徴とする請求項23に記載の器具。
【請求項26】
さらに、前記マニホルドが、前記マニホルドの遠位端に少なくとも1の突出部を具えており、
前記少なくとも1の突出部が、前記マニホルドから半径方向に延びており、
前記固定壁が、前記少なくとも1の突出部を摺動可能に受容する少なくとも1の溝部を有することを特徴とする請求項25に記載の器具。
【請求項27】
前記少なくとも1の開口部が、前記少なくとも1の溝部が前記少なくとも1の突出部を摺動可能に受容するときに、前記穴に面することを特徴とする請求項26に記載の器具。
【請求項28】
さらに、前記スリーブ及び前記マニホルドの少なくとも一方が、シリコーンから成ることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項29】
前記スリーブが、柔軟性のあるスリーブであることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項30】
前記スリーブが、前記マニホルドよりも柔軟な材料でできていることを特徴とする記載の請求項29に記載の器具。
【請求項31】
前記マニホルドが、減圧を送出するための流路を具えており、前記流路が、前記マニホルドの前記遠位端から前記近位端に延びていることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項32】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
L1>L2であることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項33】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
前記組織部位から患者の外部の場所までの距離が、L3であり、
L1>L2>L3であることを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項34】
前記スリーブが、複数の穴を有することを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項35】
前記スリーブが、略円筒形を有することを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項36】
皮下組織部位に減圧を適用するための方法であって、前記方法が:
前記スリーブの穴が前記皮下組織部位に隣接するように、前記皮下組織部位にスリーブを挿入するステップと;
前記スリーブの中に少なくとも1の開口部を有するマニホルドを挿入するステップと;
前記少なくとも1の開口部及び前記穴を介して前記皮下組織部位に減圧を供給するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項37】
さらに、前記スリーブから前記マニホルドを外すステップを具えることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記マニホルドが、前記マニホルドを少なくとも部分的に囲むフランジを有しており、
前記スリーブからマニホルドを外すステップが、前記フランジを用いて前記スリーブの近位端に向けて物質を移動させるステップを有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記スリーブが、近位端及び遠位端を有しており、
さらに、前記スリーブの前記近位端及び前記患者の周りに空圧シールを形成するステップを具えることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記スリーブが、長手方向の溝部を有しており、
前記マニホルドが、前記長手方向の溝部に摺動可能に整合するような大きさ及び形状の長手方向の突起部を有しており、
前記マニホルドを挿入するステップが、前記長手方向の溝部の中に前記長手方向の突起部を配置するステップと、前記スリーブの中に前記マニホルドを摺動させるステップとを具えることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記マニホルドが、フランジを具えており、
前記スリーブが、前記マニホルドが所定の距離だけ前記スリーブの中に挿入されると、前記フランジを止めるような大きさ及び形状であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記マニホルドが、減圧を送出するための流路を具えており、
前記流路が、前記マニホルドの遠位端から近位端に延びていることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
L1>L2であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記マニホルドが、長手方向の長さL1を有しており、
前記スリーブが、長手方向の長さL2を有しており、
前記組織部位から患者の外部の場所までの距離が、L3であり、
L1>L2>L3であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記組織部位が骨であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記皮下組織部位が、腹腔内にあることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記皮下組織部位が、結腸傍溝の近くにあることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項48】
皮下組織部位に減圧を適用するための器具を製造する方法であって、前記方法が:
前記皮下組織部位に配置するよう構成され、さらに、マニホルドを受容するよう構成されたスリーブであって、前記マニホルドから前記皮下組織部位に減圧を伝えるよう動作可能な穴を有するスリーブを形成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項49】
さらに、前記マニホルドを形成するステップを具えており、
前記マニホルドが、前記スリーブの中に挿入可能であり、
前記マニホルドが、少なくとも1の開口部を有しており、
前記マニホルドが、前記少なくとも1の開口部を介して前記皮下組織部位に減圧を送出するよう動作可能であることを特徴とする請求項48に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−513834(P2012−513834A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543653(P2011−543653)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069279
【国際公開番号】WO2010/078166
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】