説明

皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤

【課題】皮膚と衣類との間の摩擦抵抗を低減して滑りやすくし、衣類の脱着をスムーズにする作用を有する摩擦抵抗低減剤(滑り剤)を提供する。
【解決手段】平均粒径0.01〜100μmの粉粒体(シリコーン樹脂粉末など)、及び引火点90℃以下の揮発性分散剤(低粘度シリコーンなどのシリコーンオイル)、並びに必要に応じてスキンケア成分などの化粧料成分を配合し、スプレー塗布等を用いて皮膚又は衣類に噴霧して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂粉末等の粉粒体と揮発性分散剤とからなる製剤であって、皮膚又は衣類に塗布することによって皮膚と衣類との間の摩擦抵抗を低減する作用を有する摩擦抵抗低減剤(滑り剤)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚と衣類の間には一定の滑り摩擦抵抗があるため、衣類の脱着時にはある程度抵抗が生じるが、通常の範囲であれば脱着にことさら不便を感じることは少ない。しかしながら、近年開発が進んでいる低抵抗水着やウェットスーツなどのスポーツ用スーツは、身体への密着度が極めて高いため、皮膚と衣類との間の滑り性が低く摩擦抵抗が高い。そのためこのような衣類の脱着が困難となり、不便が生じていた。
【0003】
従来、摩擦抵抗を低減し滑り性を改良するための滑り剤は、様々な分野で使用されている。例えば、なすやほうれん草等の菜果類の収納袋(ポリエチレンフィルム製等)の表面へ塗布し、該菜果類の収納袋への付着・粘着を低減し円滑な収納を可能にする滑り剤が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
しかしながら、皮膚と衣類との間の摩擦抵抗は、このような菜果類とポリエチレンフィルム製収納袋との間の摩擦抵抗と同じではなく、また皮膚又は衣類表面へ塗布するのであれば皮膚へ接触しても安全且つ低刺激性でなければならない。さらに、大量生産品を工場で塗布するものとは異なり、使用の都度、使用者が皮膚又は衣類へ塗布するため、一般利用者が容易に塗布可能であることが求められ、しかも使用後は衣類を洗濯したり、皮膚へ付着した滑り剤を洗い流したりする必要があるため、易洗浄性も求められる。
【0005】
このように、皮膚と衣類との間に使用する滑り剤は、従来の滑り剤とは全く異なる物性が求められるが、これまで皮膚と衣類との間の滑り性を改善し、衣類の脱着をスムーズにするための適切な滑り剤は提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−139335号公報
【特許文献2】特開2000−139337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下なされたものであって、皮膚と衣類との間の摩擦抵抗を低減して滑りやすくし、衣類の脱着を容易(スムーズ)にする作用を有する摩擦抵抗低減剤(滑り剤)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、シリコーン樹脂粉末等の粉粒体と揮発性分散剤とからなる滑り剤を皮膚又は衣類に塗布することにより、皮膚−衣類間の摩擦抵抗を低減できることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す摩擦抵抗低減剤に関する。
(1)皮膚又は衣類に塗布して皮膚−衣類間の摩擦抵抗を低減させるための摩擦抵抗低減用組成物であって、粉粒体と揮発性分散剤とからなることを特徴とする、皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【0010】
(2)前記粉粒体がシリコーン樹脂粉末である、(1)記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
(3)前記粉粒体の平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする、(1)又は(2)記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【0011】
(4)前記揮発性分散剤の引火点が90℃以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
(5)前記粉粒体が0.1〜99重量%、及び前記揮発性分散剤が1〜99.9重量%配合されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【0012】
(6)前記粉粒体と揮発性分散剤の比率が1:99〜50:50(重量比)であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
(7)スキンケア成分を配合してなる、(1)〜(6)のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤は、皮膚と衣類との間の摩擦抵抗を低減する効果が高い。したがって、皮膚又は衣類表面へ塗布することにより、水着やスポーツウェア等の身体に密着させて着用するような種々の衣類の着脱を、スムーズに行うことができる。また、皮膚へ付着しても安全且つ低刺激性であるため、肌荒れや皮膚の炎症などを引き起こす心配がない。
【0014】
また、例えばスプレー形式で塗布する場合でも容易に均一に皮膚又は衣類へ塗布できるため、簡便で利用しやすい。さらに、使用後に該摩擦抵抗低減剤の付着した衣類を洗濯したり、該摩擦抵抗低減剤の付着した皮膚を洗い流したりすることによって、摩擦抵抗低減剤を容易に除去することができる。
さらに、保湿剤、清涼剤、香料、各種エキス、保護料(エモリエント剤)、抗菌剤、薬剤等のスキンケア用成分を配合することにより、皮膚への保護・スキンケア作用に優れたものとすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤は、主として粉粒体と揮発性分散剤とからなる。
1.粉粒体
(1)粒子形状
本発明の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤は、摩擦抵抗の低減効果を与える主体として粉粒体を用いる。粉粒体の粒子形状は特に限定されず、球状(粒状、ビーズ状)、板状、フレーク状、針状、微粒子、多孔質、無孔質状等のいずれでも良いが、滑り性、皮膚へ接触した場合の感触及び外観の点等を考慮すると、好ましいのは球状である。板状、フレーク状のものは、滑り性が低くなる可能性がある。また、粉粒体の隠蔽性が高いと、塗布したところが白くなるなど目立つようになり、外観に問題が生じる場合がある。
【0016】
本発明で用いる粉粒体は、好ましくは平均粒径が0.01〜100μmのものである。平均粒径が0.01μm未満では、滑らかさ(滑り性)が劣り、100μmより大きいと隠蔽性が高くなり肌上に白化を起こす場合がある。
【0017】
滑り性の更なる向上効果を考慮すると、平均粒径1〜30μmのものが好ましい。また、噴霧(スプレー)形式による塗布方法を選択する場合の目詰まりなどを考慮すると、さらに2〜5μmのものが最適である。
【0018】
また、平均粒径の異なる2種以上の粉粒体を併用することもできる。粒径の異なるものを混合することにより、滑らかさがより向上する。いかなる組み合わせで併用するかは使用する粉粒体によっても異なるが、例えば平均粒径2〜5μmの粉粒体と平均粒径10〜30μmの粉粒体とを1:1〜3:2(重量比)で混合することができる。
【0019】
なお、本発明における平均粒径とは、球状の場合は直径であり、板状又はフレーク状の場合は「(短軸+長軸)÷2」が平均粒径となる。
【0020】
(2)材質
本発明で用いられる粉粒体の材質は無機系でも有機系でもよい。無機系の粉粒体としては、チタン、タルク、カオリン、無水ケイ酸、合成雲母、セリサイト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらは市販されているものを使用することができる。例えば、無水ケイ酸としては、商品名「シリカマイクロビーズP1500」(日揮触媒化成(株)製;平均粒径=8μm)を挙げることができる。
また、上記粉粒体は種々の表面処理剤で被覆(コーティング)されていてもよい。被覆材としてはメチルポリシロキサン、水酸化アルミニウム、ステアリン酸等が挙げられる。
【0021】
有機系の粉粒体としては、ケイ素樹脂、ポリアルキレングリコール類、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などからなるものが挙げられる。
【0022】
ケイ素樹脂としては、シリコーン樹脂、メチルシロキサン網状重合体、(ビニルメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、シリコンレジンパウダー(ポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粉末)等が挙げられる。
【0023】
また、これらの市販品としては、例えば商品名「トスパール2000」(メチルシロキサン網状重合体;GE東芝シリコーン(株)製;平均粒径=6μm)や、商品名「シリコーンパウダーKSP−105」(平均粒径=2μm)、同「シリコーンパウダーKSP−101」(平均粒径=12μm)、同「シリコーンパウダーKSP−102」(平均粒径=30μm)(いずれも(ビニルメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー;信越化学工業(株)製)、同「トレフィル E−506S」(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー;東レ・ダヴコーニング社;平均粒径=4μm)などが挙げられる。
【0024】
また、本発明の粉粒体としては、他材料によって被覆(コーティング)されたものを用いることもできる。被覆材としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン等が挙げられる。また、他材料と混合して用いることもできる。混合する材料としてはマイカ、ラウロイルリシン(アミノ酸系粉末)等が挙げられる。また、オイル等に分散させたペーストタイプのものを用いることもできる。オイルとしてはメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0025】
なお、商品名「シリコーンパウダー」として提供されているシリコーン樹脂粉末は、シロキサン結合が(RSiO3/2nで表される三次元網目状に架橋した構造をもつポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粉末である
【0026】
アクリル系樹脂としては、球状ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸エステル樹脂粉末等が挙げられる。市販品としては、商品名「ミクロ中空ビーズ10」(メタクリル酸エステル樹脂粉末;平均粒径=8μm;クラレ(株)製)、商品名「ジュリマーMB−1」(球状ポリメタクリル酸メチル;平均粒径5μm;日本純薬(株)製)等が挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン粉末等が挙げられる。市販品としては、商品名「フロービーズCL20200」(ポリエチレン粉末;平均粒径=5μm;住友精化(株)製))等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン粉末(商品名「ナイロンパウダーHK5000」;平均粒径8μm;住化エンビロサイエンス(株)製))等が挙げられる。
【0028】
また、有機系の粉粒体と無機系の粉粒体を混合して用いることもできる。例えば、ポリアクリル酸アルキルと無水ケイ酸との混合物(商品名「マイクロスフェアーM−330」;平均粒径==8μm;マツモト油脂製薬(株)製)等の市販品を用いることもできる。このほかに、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、デンプン、ラウロイルリジン等が含まれる。
【0029】
本発明においては、上述した粉粒体のうち、商品名「シリコーンパウダー」として提供されているポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粉末等のシリコーン樹脂粉末を用いるのが特に好ましい。かかるシリコーン樹脂粉末は粒子形状が球状であって摩擦抵抗低減効果に優れ、皮膚への感触も滑らかで安全性も高い。さらに、スポーツ用ウェア等はデリケートな繊維からなり洗濯等の取り扱いに細心の注意を要するものが多いが、かかるシリコーン樹脂粉末は水洗いのみで容易に洗い落とすことができることから、目地に吸着し白く残りやすい無機粉体と異なり、洗濯等の取り扱いが容易であるという利点を有する。
【0030】
2.分散剤
本発明で用いられる分散剤(上記粉粒体を分散状態で保持できる流体)は、剤形の状態、使用感、冷感、噴霧状態、揮発性、繊維への影響等を総合的に判断して選択されるが、具体的には引火点が90℃以下、好ましくは50℃以下の揮発性分散剤が用いられる。
引火点が90℃を超えると、揮発が遅くべとつきやすいといった不利益がある。また、本発明の揮発性分散剤の粘度は特に限定されないが、1〜100mPa・sの範囲が好ましい。
【0031】
(2)具体例
上述した条件を満たす揮発性油剤としては、揮発性シリコーンオイル、水添ポリオレフィン類等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる分散剤の具体例としては、低粘度シリコーン(引火点:30−90℃)、環状シリコーン(引火点:50−80℃)、水添ポリイソブテン(引火点:90℃以下)、イソドデカン(引火点:50℃以下)等が挙げられる。
【0033】
これらの分散剤は、揮発性に優れ、かつスプレー形式で塗布する場合、噴霧状態が良好で均一な塗布が可能になる。皮膚への刺激感が無く使用感に優れ、また繊維(衣類)に付着した場合に繊維(衣類)の傷みや色移り等の影響がない。
【0034】
これらのうちで特に好ましいものは、揮発性シリコーンオイルであり、具体的には低粘度シリコーンや環状シリコーンである。低粘度シリコーンとしては、トリメチルシロキサン、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等からなるものが挙げられる。環状シリコーンとしては、シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、デカメチルシクロペンタシロキサンからなるもの等がある。
【0035】
このような低粘度シリコーンは、市販品を用いることができ、例えば商品名「シリコーンKF−96A−1」(オクタメチルトリシロキサントリメチルシロキサン;信越化学工業(株)製、引火点:37℃)、商品名「シリコーンKF−995」(デカメチルシクロペンタシロキサン;信越化学工業(株)製、引火点:77℃)等を用いることができる。
なお、揮発性溶媒としてアルコール類を使用することも考えられるが、衣類からの色移りが生じる場合があり、また皮膚への刺激感がある。
【0036】
3.その他の成分
本発明の摩擦抵抗低減剤は、化粧料その他の皮膚外用剤として皮膚へ直接塗布するための製剤とすることができるだけでなく、衣類へ適用するための製剤(衣類用トリートメント剤などの雑貨類、日用品類など)とすることもできる。したがって、本発明の摩擦抵抗低減剤には、上記粉粒体及び分散剤の他に、用途、剤形等に応じて種々の公知の添加剤を配合することができる。
【0037】
例えば、本発明の摩擦抵抗低減剤を化粧料などの皮膚外用剤とする場合には、皮膚の保湿作用、美肌作用、抗菌作用、リラックス作用、冷感作用等を有するスキンケア成分などの化粧料成分を配合することもできる。
【0038】
配合しうる添加剤の具体例としては、保湿剤、各種オイル(化粧料効果を目的としたもの)、植物エキス、清涼剤、香料、抗菌剤等を挙げることができる。
【0039】
保湿剤としては、グリセリン、ブチレングリコール等が挙げられる。
各種オイルとしては、スクワラン、植物油等が挙げられる。化粧料用オイル(油剤)の配合は、化粧料効果だけでなく、上記粉粒体との組み合わせによってさらなる摩擦抵抗低減効果の向上による脱着の容易化への相乗効果が期待できる。
その他、化粧料に一般的に使用される成分として、香料、顔料、防腐剤等を配合することができる。
【0040】
衣類用トリートメント剤など衣類へ適用するための製剤とする場合は、上記化粧料にも使用可能な香料、保湿剤などの他に、帯電防止剤、静電防止剤等を配合することもできる。
【0041】
4.配合割合
本発明の摩擦抵抗低減剤中における前記粉粒体の配合割合は、好ましくは0.1〜99重量%、より好ましくは0.1〜40重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは1〜4重量%である。粉粒体の配合割合が多すぎると塗布後の皮膚や衣類が白く目立つ、洗濯時に充分に洗い流せない場合がある、粉粒体が目詰まりを起こし、少なすぎると滑り効果が不十分となる場合がある。
【0042】
本発明の摩擦抵抗低減剤中における前記揮発性分散剤の配合割合は、好ましくは1〜99.9重量%、より好ましくは20〜97重量%、特に好ましくは50〜97重量%である。分散剤の配合割合が多すぎると滑り効果が低減し、少なすぎると粉粒体の凝集・目詰まり等が生じる場合がある。
【0043】
本発明の摩擦抵抗低減剤に保湿剤を配合する場合、保湿剤の配合割合は特に制限されず、一般のスキンケア用化粧料に用いられる範囲内の割合で適宜配合できるが、好ましくは摩擦抵抗低減剤全量に対し1〜50重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0044】
5.製造方法
上記配合成分を混合する。混合順序は特に限定されない。
配合方法は特に制限されないが、好ましくは揮発性分散剤に粉粒体を添加する。
【0045】
6.用途
本発明の摩擦抵抗低減剤を皮膚又は衣類へ塗布する方法は特に限定されないが、簡便性及び均一に塗布できる点から、スプレー形式で噴霧状態にして塗布するのが好ましい。スプレー形式としては、ディスペンサータイプ、エアゾールタイプのいずれでもよい。
【0046】
本発明の摩擦抵抗低減剤は、皮膚又は衣類へ塗布することによって使用する。皮膚へ使用する場合、使用のタイミングは特に制限されないが、好ましくは衣類を着用する前に衣類が接触する皮膚へ塗布する。塗布後に揮発性分散剤が揮発し、粉粒体が均一に皮膚に塗布され、該粉粒体の滑り効果により衣類の着用及びその後の脱衣時に皮膚と衣類の間の滑り性が良好となり、衣類の脱着が容易となる。
【0047】
衣類へ塗布する場合は、衣類の皮膚へ接触する面へ予め塗布してから着用することにより、着脱時の摩擦抵抗が低減され、衣類の脱着が容易となる。衣類への塗布は着用直前、もしくは衣類の製造時に行うことができる。
【0048】
なお、本発明で対象とする衣類は、皮膚へ直接接触するものであれば特に着用部位、材質、用途は特に制限されない。例えば、主として胴体部分へ着用するものとしては、水着、スウェットスーツ、ウェットスーツ、スキンズなどのスポーツ用スーツだけでなく、介護用ウェットスーツ、補正下着・ゴム手袋など、スポーツ用以外のスーツに適用することもできる。
【0049】
また、手、足、頭部などに使用するものであってもよい。例えば、手術用や作業用手袋、ブーツ、ヘルメットなどであって、皮膚に密着し着脱しにくくなる可能性のあるものに対し使用することもできる。
衣類の材質としては、木綿、化繊、不織布、ゴム、ウレタン、ナイロン等が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によって詳細に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
1.ディスペンサータイプの摩擦抵抗低減剤の調製
以下の各成分を、下記表1に示す割合で配合することにより、液状タイプのディスペンサー用摩擦抵抗低減剤(処方A及びB)を調製した。調製は、揮発性分散剤(シリコンKF−96A−1)と化粧料用オイル(スクワラン)を混合したものに、粉粒体(シリコーンパウダーKSP−105)を添加・分散することによって行った。
【0052】
(1)揮発性分散剤;低粘度シリコーン(トリメチルシロキサン;商品名「シリコーンKF−96A−1」、引火点=37℃)
(2)粉粒体;ビニルメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(商品名「シリコーンパウダーKSP−105;平均粒径=2μm;信越化学工業(株)製)
(3)その他
化粧料用オイル;スクワラン
香料;商品名「ティーツリー」(イワキ株式会社)
【0053】
【表1】

【0054】
2.官能テスト結果
パネラー5人(男=3人、女=2人;平均年齢=40才)が、スポーツ用ウェア(スキンズ;材質はナイロン76%、ポリウレタン24%)を着用する前に、身体の腕部分の左右何れか一方のみに上で調製したディスペンサー用摩擦抵抗低減剤(上記表1の処方A)を噴霧(手首に4プッシュ使用、噴霧量=0.28g)し、着脱を5回行ったのち、噴霧した側と噴霧しない側で着脱の難易を下記評価基準に基づいて評価した。なお、腕の左右差が生じないよう、被験者により噴霧する腕を入れ替えた。無塗布時及び塗布時における評価結果(パネラー5名の評価平均)を下記表2に示す。表2の結果からわかるように、本発明の摩擦抵抗低減剤を噴霧した方は、脱着がし易く動きがスムーズになるという結果が得られた。
【0055】
[評価基準]
◎:抵抗なし(スムーズ)
○:若干の抵抗あり
△:明らかに抵抗はあるが苦ではない
×:かなりの抵抗を感じる
【0056】
【表2】

【0057】
<実施例2>
1.エアゾールタイプの摩擦抵抗低減剤の調製(噴射剤20%含有)
以下の各成分を、下記表2に示す割合で配合することにより、液状タイプのエアゾール用摩擦抵抗低減剤(処方A及びB)を調製した。調製は、揮発性分散剤(シリコンKF−995)と化粧料用オイル(スクワラン)を混合したものに、粉粒体(シリコーンパウダーKSP−105)を添加・分散することによって行った。
【0058】
(1)分散剤;低粘度シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン;商品名「シリコーンKF−995」、引火点=77℃)
(2)粉粒体;ビニルメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(商品名「シリコーンパウダーKSP−105;平均粒径=2μm;信越化学工業(株)製)
(3)その他
化粧料用オイル;スクワラン
香料;商品名「ティーツリー」(イワキ株式会社)
噴射剤;LPG
【0059】
【表3】

【0060】
2.官能テスト結果
パネラー5人(男=3人、女=2人;平均年齢=40才)が、スポーツ用ウェア(スキンズ;材質はナイロン76%、ポリウレタン24%)を着用する前に、身体の腕部分の左右何れか一方のみに上で調製したエアゾール用摩擦抵抗低減剤(上記表3の処方A)を噴霧(手首に4プッシュ使用、噴霧量=0.28g)し、着脱を5回行ったのち、噴霧した側と噴霧しない側で着脱の難易を下記評価基準に基づいて評価した。なお、腕の左右差が生じないよう、被験者により噴霧する腕を入れ替えた。無塗布時及び塗布時における評価結果(パネラー5名の評価平均)を下記表4に示す。表4の結果からわかるように、本発明の摩擦抵抗低減剤を噴霧した方は、脱着がし易く動きがスムーズになるという結果が得られた。
【0061】
[評価基準]
◎:抵抗なし(スムーズ)
○:若干の抵抗あり
△:明らかに抵抗はあるが苦ではない
×:かなりの抵抗を感じる
【0062】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤は、皮膚と衣類との間の摩擦抵抗を低減する効果が高い。また、皮膚に対する安全性及び低刺激性に優れ、かつ洗濯による除去が容易である。また、スプレー形式で容易に均一に皮膚又は衣類へ塗布することができ、簡便で利用しやすい。
このように、本発明の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤は、水着やスポーツウェア等の身体に密着させて着用するような種々の衣類の着脱をスムーズにする効果が高く、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚又は衣類に塗布して皮膚−衣類間の摩擦抵抗を低減させるための摩擦抵抗低減用組成物であって、粉粒体と揮発性分散剤とからなることを特徴とする、皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項2】
前記粉粒体がシリコーン樹脂粉末である、請求項1記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項3】
前記粉粒体の平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項4】
前記揮発性分散剤の引火点が90℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項5】
前記粉粒体が0.1〜99重量%、及び前記揮発性分散剤が1〜99.9重量%配合されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項6】
前記粉粒体と分散剤の比率が1:99〜50:50(重量比)であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。
【請求項7】
スキンケア成分を配合してなる、請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚−衣類間用摩擦抵抗低減剤。

【公開番号】特開2010−173992(P2010−173992A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21021(P2009−21021)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(504401994)株式会社セプテム総研 (11)
【Fターム(参考)】