説明

皮膚および毛を明るくする方法

メラノサイト上のBMP-4膜貫通受容体に結合し、メラニン合成のレベルを減少させる物質、例えばタンパク質、ペプチド、活性融合タンパク質、活性断片、または分子模倣体を投与することにより、脊椎動物の皮膚、または哺乳動物の皮膚もしくは毛を明るくし得る方法について記載する。また、メラノサイト中のメラニンの減少を引き起こすBMP-14の機能を模倣する分子を同定する方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年4月12日に出願した米国特許仮出願第60/372,523号の利益を主張する。上記出願の全内容は、参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、好ましくない皮膚の過剰な色素沈着の部位は「漂白」 剤で処置される。肌をより色白に見せたいと望む色黒の人の正常な皮膚を明るくするためにも、同様の製剤が用いられる。この製剤中の最も一般的な有効成分は、ヒドロキノン、まだ十分に理解されていない機能によりメラニン沈着を阻害する本質的に有害な化学物質である。最も有効な濃度では、ヒドロキノンによりメラノサイトが永久に失われる可能性がある。コウジ酸等の、市販の漂白クリーム中の他の「有効」成分にも、有効性がわずかであり毒性の可能性があるという同様の問題が存在する。髪の毛は慣習的に、その色素含量を減少させつつ毛幹を損傷する過酷な化学過程である「漂白」により明るくする。その上、「漂白」は皮膚表面の上にある髪の毛の部分にのみ作用し、したがって間もなく黒い「根元」が見えてきて、所望の美容効果が失われる。
【0003】
米国特許第5,962,417号は、PKC-βを阻害することにより構成性および誘発性の皮膚の色素沈着を減少させる方法について記載している。しかし、この方法では活性分子がPKC-βの部位である細胞に入らなければならず、薬剤が膜貫通受容体に結合する方法に比べてより問題があると予想される。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、骨形成タンパク質4(BMP-4)が、メラニン形成の律速酵素であるチロシナーゼの活性を減少させることによりメラノサイトにおけるメラニン合成を減少させるという本出願者らの発見に基づく。
【0005】
本発明は、BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、または上
記の組み合わせの組成物の有効量を投与することにより、哺乳動物の皮膚または毛の色素沈着を減少させる方法を含む。本発明の1つの態様において、処置を受ける哺乳動物はヒトである。本発明の別の態様では、BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、または組み合わせにより、表皮のメラノサイト中のチロシナーゼレベルが減少し、したがって色素沈着が減少する。本発明の他の態様では、BMP-4組成物を局所投与する。組成物は、リポソーム中で、またはエアロゾルとして、またはクリーム、軟膏、ゲル、ローション、もしくは水溶液等の任意の他の化粧料的に許容される担体として製剤化できる。
【0006】
本発明はさらに、BMP-4、BMP-4の活性断片、BMP-4の活性融合タンパク質、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を塗布することにより、脊椎動物の表皮のメラノサイトにおける色素沈着を減少させる方法を含む。この方法により、メラノサイト中のチロシンキナーゼレベルが減少することによって色素が減少し得る。本発明の1つの態様において、組成物はリポソーム状である。
【0007】
また、BMP-4もしくはBMP-4融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP-4の膜受容体結合部位を含むBMP-4の分子模倣体、または上記の組み合わせの有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の皮膚の色素沈着を減少させる方法も提供する。
【0008】
本発明の1つの方法では、BMP-4の断片または模倣体の存在下でメラノサイトを培養することにより、メラノサイトにおけるメラニン合成を阻害するBMP-4の模倣体または断片を同定する。次に、メラノサイト中のメラニン含量を測定し、断片または模倣体の存在下で培養していない対照メラノサイトで測定したメラニン含量と比較する。BMP-4の模倣体または断片で処理したメラノサイト中のメラニン含量が対照メラノサイト中のメラニン含量よりも低いことが、断片または模倣体がメラノサイトにおけるメラニン合成を阻害することを示唆する。
【0009】
本発明の別の態様では、BMP-4の断片または模倣体を培養中のメラノサイトに添加し、断片または模倣体を添加した後のメラノサイト中のメラニン含量の変化を測定し、そのメラニン含量を断片または模倣体の存在下で培養していない対照メラノサイトで測定したメラニン含量と比較することにより、メラノサイトにおけるメラニン合成を阻害するBMP-4の模倣体または断片を同定する。対照メラノサイト中のメラニン含量と比較して、BMP-4の模倣体または断片で処理したメラノサイト中のメラニン含量が低いことが、断片または模倣体がメラノサイトにおける合成を阻害することを示唆する。本発明の特定の態様においては、BMP-4活性断片または模倣体を同定するために用いるべきメラノサイトは、ヒト新生児から単離する。
【0010】
本発明は、メラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣する薬剤を同定する別の方法を含む。この方法は、培養においてメラノサイトを薬剤とともにインキュベートする段階、およびメラノサイトの核内のNF-κBについてアッセイする段階を含む。培養において薬剤とともにインキュベートしていない対照メラノサイト中のNF-κB染色を示す核の数と比較して、NF-κB染色を示す核が多いことが、薬剤がメラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣することを示唆する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、メラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣する薬剤を同定する別の方法に関する。レポーター遺伝子に機能的に結合させたBMP-4応答性プロモーターを含むベクターをメラノサイトに形質移入し、次に試験する化合物にこのメラノサイトを曝露する。本発明のこの態様では、薬剤に曝露した形質移入培養物および曝露していない対照形質移入培養物について、産生される遺伝子産物の量を測定する。薬剤に接触させていない形質移入メラノサイトの対照培養物と比較して、薬剤に接触させた形質移入メラノサイトの培養物において、レポーター遺伝子が発現した結果産生される遺伝子産物の量が多いまたは少ないことが、試験薬剤がメラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣することを示唆する。
【0012】
本発明の別の態様において、細胞内のチロシナーゼのレベルに影響を及ぼすことによりメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法を提供する。まず、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする。次に、メラノサイト中のチロシナーゼmRNAのレベルを測定し、これをBMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトから単離したチロシナーゼmRNAのレベルと比較する。BMP-4の断片または模倣体に曝露した培養物で測定したチロシナーゼmRNAのレベルが、対照メラノサイトで測定したチロシナーゼmRNAのレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0013】
本発明の1つの局面は、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートし、次にメラノサイト中のPKC-βRNAのレベルを測定することにより、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法に関する。このレベルを、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトで測定したPKC-βRNAのレベルと比較する。BMP-4模倣体とともにインキュベートしたメラノサイトで測定したPKC-βRNAのレベルが、対照メラノサイトで測定したPKC-βRNAのレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0014】
本発明のさらなる局面は、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートし、次にメラノサイト中のPKC-βタンパク質のレベルを測定することにより、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法に関する。そのメラノサイトで測定したPKC-βタンパク質のレベルを、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトで測定したPKC-βタンパク質のレベルと比較する。処理したメラノサイト中のPKC-βタンパク質のレベルが、対照メラノサイトで測定したPKC-βタンパク質のレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0015】
メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体の同定に関する本発明のさらなる局面は、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階、メラノサイトを抗NF-κB抗体で染色する段階、およびメラノサイトの抗体染色の分布を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトの抗体染色の分布と比較する段階を含む。対照メラノサイトでは抗体染色の分布が主に細胞質および核周辺であるのに対して、メラノサイトの抗体染色の分布が主に核である場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0016】
本発明の別の態様は、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定するさらなる方法に関する。まず、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする。次に、BMP-4の断片または模倣体とメラノサイトとのインキュベーションの様々な時間においてメラノサイトから単離した全細胞RNAについて、プローブとしてヒトチロシナーゼをコードするDNAを用いてノーザンブロット解析を行う。メラノサイトについて行ったノーザンブロット解析の結果を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトから単離した全細胞RNAについて行ったノーザンブロット解析と比較する。対照メラノサイトで見られるチロシナーゼ特異的RNAのレベルと比較して、メラノサイト中に見られるチロシナーゼ特異的RNAのレベルがBMP-4の断片または模倣体とのインキュベーションの時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0017】
メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体の同定に関する本発明のさらに別の方法は、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階を含む。次に、プローブとしてヒトPKC-βをコードするDNAを用いて、BMP-4の断片または模倣体とメラノサイトとのインキュベーションの様々な時間においてメラノサイトから単離した全細胞RNAノーザンブロット解析を行い、それによりPKC-βRNAを定量化する。メラノサイトでのノーザンブロット解析の結果を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトから単離した全細胞RNAについて行ったノーザンブロットの結果と比較する。対照メラノサイトで見られるPKC-β特異的RNAのレベルと比較して、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしたメラノサイト中に見られるPKC-β特異的RNAのレベルが時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0018】
また、培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトに添加する段階、BMP-4の断片または模倣体添加後の様々な時間において回収したメラノサイトの試料から全細胞タンパク質の抽出物を調製する段階を含む、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法を提供する。これらの単離したタンパク質をゲル電気泳動法により分離し、ウェスタンブロット解析用のメンブレンにブロッティングし、次にメンブレンを抗チロシナーゼ抗体とともにインキュベートし、これにより飽和量の抗体がチロシナーゼに結合することを可能にする。結合した抗体を検出する手段をメンブレンに適用し、これにより結合した抗体を定量化する。メラノサイトにBMP-4の断片または模倣体を添加した後、結合した飽和量の抗体が時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる。
【0019】
なお、さらなる態様において、本発明は、BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の毛(hair)、むく毛(wool)、または柔毛(fur)の毛周期過程においてメラニン形成の制御を変化させる方法に関する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の毛包メラノサイトにおいて色素生成をユーメラニンからフェオメラニンに切り替える方法に関する。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、骨形成タンパク質4(BMP-4)が、ヒトのメラノサイトにおいて色素沈着を減少させるという本出願者らの発見に基づく。BMP-4は、この細胞においてメラニンの生成を減少させることにより作用する。
【0022】
メラノサイト(色素細胞)は、表皮の基底層および毛球に位置する細胞である。メラニン色素はメラノソームと呼ばれるメラノサイト特異的細胞内小器官に沈着し、次にこのメラノソームがメラノサイトから周囲のケラチノサイトに輸送され、その結果皮膚または毛幹の表皮(外層)に広く分散する。脊椎動物の皮膚、ならびに哺乳動物の皮膚、毛、むく毛、および柔毛の色(色素沈着)は、主にメラニン色素含量によって決まる。
【0023】
TGF-βスーパーファミリーのメンバーである骨形成タンパク質(BMP)は元来、胚形成および形態形成過程において軟骨および骨形成を誘導する能力によって同定され特徴づけられた。その最初の発見以来、BMPは成熟したおよび発達中の生物において細胞過程に関与することが認められている。BMPは、脊椎動物および哺乳動物種にわたって高度に保存されている(Hwang, S.L.ら、DNA Cell Biol. 16(8):1003-1011 (1997);Martinez-Barberaら、Gene 198(1-2):33-59 (1997);Hwang, S.L.ら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 258:(2):457-463 (1999);Panopoulouら、Dev. Dyn. 213(1):130-139 (1998))。BMPはまた、神経冠細胞の発生の指示を含むいくつかの非骨形成過程においても役割を担う(Jinら、Develop. Bio., 233(1):22-37 (2001))。今日までに単離された20を超えるBMPのうち6つが構造的に互いに関連し、軟骨内の骨形成の過程を開始し得る(Subach, B.R.ら、Neurosurg. Focus 10(4):1-6 (2001))。ヒトBMP-2およびヒトBMP-4はどちらも、配列決定され特徴づけられている(Kawai, S.およびSugiura, T、Bone 29(1):54-61 (2001);Padgett, R.W.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 90:2095 (1993);Wozneyら、Science 248(4855):1528-1534 (1988))。BMP-2とBMP-4との間には相同性があり、遺伝子のある部分(BMP-2の塩基3242〜3468およびBMP-4の塩基37〜263)においては100%である。http//www.nci.nlm.nih.gov/entrezを参照されたい、またKawaiおよびSugiura、2001;Wozneyら、1988も参照されたい。BMP-4は筋形成を阻害することにより体節の発生に寄与することが示されているのに対し(McPherron, A.C.およびS-J Lee、Proc. Natl. Acad. Of Sci., USA 94:12457 (1997))、BMP-2は軟骨細胞および骨芽細胞前駆細胞の形成を誘導する(Wall, N.A.およびHogan, B.L.M.、Curr. Opin. Genet. Dev. 4:517 (1994))。
【0024】
本発明は、BMP-2/4と略記する融合タンパク質により本明細書で例証するジスルフィド結合したホモ二量体タンパク質を含む、皮膚または毛の色素沈着を減少させる製剤を包含する。ヒトBMP-2シグナルペプチドおよびプロペプチドをコードするDNA配列(ヒトBMP-2のアミノ酸残基1〜282)を、ヒトBMP-4成熟鎖(ヒトBMP-4のアミノ酸残基293〜408)に融合した(Wozneyら、1988)。マウスメラノーマ細胞株NSOにおいて、この融合タンパク質を発現させた(Wozneyら、1988)。シグナルペプチドおよびポリペプチドをタンパク質分解によって除去することにより、成熟BMP-2/4融合タンパク質を作製した(Hammonds, Jr.ら、米国特許第5,168,050号;Hammondsら、Mol. Endocr. 5(1):149-155 (1991))。BMP-2/4の分子量は26 kDである。BMP-4の活性と類似の活性を有するこの分子のより小さな断片、ペプチドまたは非ペプチド類似体を同定することができる。
【0025】
Wozneyら(1998)は、ヒト胎盤DNAからクローニングし全長BMP-2およびBMP-4タンパク質をコードするBMP-2およびBMP-4のcDNAを開示している。BMP-2およびBMP-4は50%を超えるアミノ酸配列相同性を共有し、3'カルボキシル末端で特に高い相同性を有する(92%類似性)(Wozneyら、1988)。BMP-2およびBMP-4のDNA配列は、最初に発現プラスミドにクローニングされた。次に、BMP-4のC末端成熟増殖因子ドメインにつなぎ合わせたBMP-2のN末端プロドメインをコードするDNA含む発現プラスミドが構築された。組換えBMP-2/4タンパク質は、ラット骨移植片のカルシウム含量を増加させる能力を示した(米国特許第5,168,050号)。本出願者らの研究では、BMP-2/4融合タンパク質はBMP-4の生物活性を有することを示している。
【0026】
BMP-4を含む骨形成タンパク質は、2つの膜貫通受容体、BMP受容体1およびBMP受容体2を介してシグナルを送る(Piekら、FASEBJ 13(15):2105-24 (1999)、Massagueら、Genes and Develop. 14:627-644 (2000))。BMP受容体2が主要なリガンド結合受容体であるのに対して、BMP受容体1は主にシグナルを細胞内に伝達する(Piekら、1999;Massagueら、2000)。BMP受容体1には、2つの異なる形:AおよびBが存在する(Piekら、1999;Massagueら、2000)。リガンド結合に際して、1型および2型受容体はヘテロマー複合体を形成する(Piekら、1999;Massagueら、2000)。したがって、BMPシグナル伝達を媒介するためには1型および2型受容体の両方が必要であると考えられている。受容体に結合した際に、BMP-4はNF-κBの活性化を刺激することが報告されている(Mohan R.R.ら、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 39:2626 (1998))。NF-κBは不活性化状態では細胞質中に存在するが、活性化に際して核に迅速に移行する。
【0027】
産物を配列決定することにより確認されたこれらヒト受容体転写産物に相補的なプライマーを用いてRT-PCRを行うことにより、メラノサイトにおいて増殖関連1A型BMP受容体(BMP R1A)が強く構成的に発現されることが明らかに実証された。実施例7を参照されたい。メラノサイトはまた1B型BMP受容体(BMP R1B)および2型BMP受容体(BMP R2)も発現しており、このことからメラノサイトがBMP刺激に応答するために必要なすべての膜貫通受容体を発現することが実証された。実施例8および9を参照されたい。さらに、メラノーマ細胞もまた1A型、1B型、および2型BMP受容体を発現し、例えばBMP-4模倣体またはBMP-4の活性断片を同定する方法において、BMP-4の効果を試験するためにメラノーマ細胞を用いることもできる。実施例11および12を参照されたい。BMPシグナルは、核に移行し遺伝子の転写をもたらす細胞質Smadタンパク質のリン酸化を介して伝達される。Smadによって認識されるDNA共通配列、CAGACAが、ヒトチロシンキナーゼのプロモーター領域に存在する(ヌクレオチド-2051〜-2045)。BMP-4で処理したメラノサイトのノーザンブロットおよびウェスタンブロット解析により、15時間ないし72時以内にそれぞれチロシナーゼmRNAおよびタンパク質が実質的に下方制御されることが示される。実施例3および4を参照されたい。BMP-4はまた、チロシナーゼを活性化する酵素であるPKC-βの2種類のmRNA転写産物およびそのタンパク質を下方制御する。実施例5および6を参照されたい。RT-PCR実験および産物の配列決定により、ケラチノサイトはBMP-4を弱く発現するがメラノサイトはBMP-4を強く発現することが明らかになり、これによってメラノサイトにおけるBMP-4の自己分泌およびパラ分泌効果が示唆される。これらのデータは、ヒトの皮膚においてメラノサイトの機能に影響を及ぼす新規なシグナル伝達の証拠を提供するものである。
【0028】
メラニン形成における律速酵素であるチロシナーゼの活性化は、プロテインキナーゼC-β(PKC-β)の媒介するチロシナーゼの細胞質ドメインのセリンおよびスレオニン残基のリン酸化に起因する(米国特許第5,962,417号)。チロシナーゼはもっぱらメラノサイトに見出され、メラノソームに局在する膜貫通タンパク質である。PKC-βの媒介するチロシナーゼのリン酸化を阻害することにより、表皮メラノサイトにおけるチロシナーゼの活性化が妨げられ、その結果メラノサイトにおけるメラニン色素の産生が減少する。したがって、チロシナーゼまたはPKC-βのレベルの減少により、細胞で産生されるメラニンレベルが減少する。
【0029】
本明細書に、メラノサイトまたはメラノーマ細胞の表面において2型および1型BMP受容体をそのリン酸化により(Piekら、1999;Massagueら、2000)活性化する薬剤を含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の皮膚または毛の色素沈着を減少させる方法を記載する。これらの細胞で影響を受ける経路の1つの最終結果は、細胞当たりのメラニン含量の減少である。他の測定可能な効果には、チロシナーゼmRNAおよびタンパク質の減少、PKC-β mRNAおよびタンパク質の減少、NF-κBの核への移行、ならびに2型および1型BMP受容体のリン酸化である。それらのリン酸化を引き起こす2型および1型BMP受容体を活性化する任意の薬剤を用いて、皮膚のメラノサイト中のメラニン含量を減少させることができる。そのような薬剤には、例えば2型および1型BMP受容体をリン酸化するBMP-4、BMP-4融合タンパク質、BMP-4断片、およびBMP-4の分子模倣体が含まれる。リン酸化により2型および1型BMP受容体を活性化し、最終的に皮膚のメラノサイト当たりのメラニン含量を減少させる、他のBMP、それに由来する融合タンパク質、断片、および分子模倣体を見いだすことも可能である。他のBMPおよびそれに由来する分子でBMP受容体を活性化した場合にも、上記のような他の中間的効果が観察され得る。
【0030】
哺乳動物の皮膚または毛における色素沈着を減少させる薬剤を同定するため、リン酸化により2型BMP受容体および1型BMP受容体を活性化する薬剤について試験することができる。これは、メラノサイトもしくはメラノーマ細胞、または1型および2型BMP受容体を有することが実証されている他の細胞を用いて行うことができる。
【0031】
BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、または上記の組み合わせ適用することによる、哺乳動物の皮膚または毛の色素沈着のレベルを減少させる方法を提供する。この方法は、BMP-4の断片または模倣対が基底層メラノサイトを含む細胞内に入るような様式で、哺乳動物の表皮細胞に色素沈着を減少させるもしくは抑制する有効量のBMP-4の断片または
模倣体と接触させる(例えば、導入する、送達する、または投与する)段階を含む。例えば、BMP-4の断片または模倣体を生理的適合性のある組成物中に含めることができ、皮膚および毛を明るくするように、皮膚または毛球、むく毛の周りの皮膚に局所的に適用する。
【0032】
本発明の方法に用いるBMP-4は天然源から精製することもできるし、組換え法により改変したゲノムを含む細胞を用いて細胞または細胞培養物から単離することもできる。BMP-4は任意の天然の対立遺伝子変種の配列を有してもよいし、1つもしくは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入、あるいは遺伝子変化のいくつかの組み合わせを起こす人工的な遺伝子操作によって生じる変異型であってもよい。天然BMP-4または本明細書に記載するBMP-2/4融合タンパク質の質的生物活性を有することが示され得る切断型BMP-4タンパク質および上記BMP-4タンパク質の任意の断片もまた、「BMP-4」および「活性BMP-4断片」に含まれる。
【0033】
本明細書で用いる「融合タンパク質」 という用語は、(1) そのアミノ酸配列が天然タンパク質に由来してもしなくてもよい1つのタンパク質分子またはその一部の(2) 別のタンパク質分子、その一部(例えばドメイン)、アミノ酸残基、またはペプチドへのペプチド結合を介した融合体を指す。融合タンパク質の部分(2)は、部分(1)のN末端、C末端、または内部にあってよい。本発明の融合タンパク質は、リンカーペプチド配列が利用される構築物を含んでもよい。融合タンパク質は、式R1-R2またはR1-L-R2、式中R1およびR2は実質的に類似したまたは同一のタンパク質であり、Lはリンカー、典型的にはペプチドである、を有し得る。R1およびR2は、例えば異なるタンパク質であってもよい。
【0034】
本明細書で用いる「生物活性断片」または「活性断片」という用語は、量的活性はBMP-4の活性と異なってもよいが、BMP-4と同じ質的生物活性を示し得るBMP-4の断片(例えば、タンパク質およびペプチド)を包含する。これらの分子は、メラニン細胞によって発現されるBMP-4受容体に結合し得る。タンパク質の「断片」とは、タンパク質よりも短い、タンパク質のアミノ酸配列の連続した部分を有する任意のポリペプチドまたはペプチドである。そのような分子は、BMP-4内に、例えばクローニング過程またはリンカーペプチドに由来するアミノ酸配列といった、非天然のさらなるアミノ酸配列をさらに含んでも含まなくてもよい。
【0035】
本発明は、BMP-4がPKC-βの媒介するチロシナーゼのリン酸化を阻害し、表皮メラノサイトにおいてチロシナーゼの活性化を妨げるという発見によるものである。その結果、メラノサイトにおけるメラニン色素の産生が減少する。
【0036】
皮膚または毛の色素沈着を減少させる組成物の製剤化に用いられる正確な用量は、投与経路および所望の効果に依存することになる。そのような同定されたBMP-4の断片または模倣体の有効量とは、表皮メラノサイトにおいて色素沈着を測定可能な程度に減少、低減、または実質的に阻害するのに有効な量である。メラノサイト中のメラニン濃度は、本明細書に記載する方法または当技術分野で周知の他の方法を用いて評価することができる。
【0037】
本発明での使用に適した様々な送達系が当技術分野で周知であり、これを用いて、メラノサイトにおいて色素沈着を減少させるために、BMP-4断片もしくは模倣体、またはBMP-2/4等の融合タンパク質の有効量を送達することができる。一般に、皮膚バリア(角質層)に浸透し得る任意の製剤が好ましい。例えば、リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルへのカプセル化;組換え細胞による発現、受容体を介したエンドサイトーシス、レトロウイルスもしくは他のベクターの一部として天然または偽リガンドをコードする核酸の構築物を用いることができる。さらに、本発明の組成物は、皮膚および/または毛包への適用を容易にする様々な溶媒、ゲル、クリーム、ローション、または溶液中で製剤化してよい。気体媒質中の固体の微細粒子または液体の液滴の懸濁液からなるエアロゾル化物質を利用して、BMP-4、BMP-4融合タンパク質、断片、または模倣体の有効量を送達してもよい。懸濁液は高圧化で保存されて微細なスプレーまたは泡の形で放出され、皮膚または毛に直接適用することができる。
【0038】
好ましい態様においては、リポソーム製剤を用いることができる。リポソーム製剤は、角質層に浸透して細胞膜と融合し、その結果リポソームの内容物を細胞内に送達する任意のリポソームから構成され得る。リポソームは、当業者に周知の方法により調製することができる。例えば、米国特許第5,077,211号;米国特許第4,621,103号;米国特許第4,880,635号;または米国特許第5,147,652号に記載されるリポソーム等のリポソームを用いることができる。Yarosh, D.ら、J. Invest. Dermatol., 103(4):461-468 (1994)またはCaplen, N.J.ら、Nature Med., 1(1):39-46 (1995)も参照されたい。
【0039】
リポソームは、適切な細胞(例えば、表皮メラノサイト)を特異的に標的し得る。本発明の好ましい態様においては、リポソーム組成物を哺乳動物の色素沈着の減少を所望する領域の皮膚または毛に直接適用する。
【0040】
本発明はまた、メラノサイトにおいて色素沈着を減少させる薬剤を同定する方法を包含する。これらの方法では、BMP-4の断片または模倣体が、BMP-4により活性化されるのと同じシグナル伝達経路を活性化することによりメラニン合成を減少させる能力に基づいて、BMP-4の断片または模倣体を同定する。BMP-4活性断片もしくは模倣体、またはBMP-4の活性融合タンパク質は、1型および2型BMP受容体を活性化し得ると定義され、この活性化は、本明細書に記載するようなメラノサイトにおけるメラニン含量、メラニン合成、NF-κBの位置、チロシナーゼmRNA、チロシナーゼタンパク質、PKC-βmRNA、もしくはPKC-βタンパク質に及ぼす効果、またはメラノサイトもしくはメラノーマ細胞におけるこれらの効果の任意の組み合わせを有することに加えて、例えば、軟骨細胞、例えばATDL-5軟骨細胞においてアルカリホスファターゼの産生を誘導する能力によって明らかにすることができる。
【0041】
例えば、脊椎動物のメラノサイトを、メラノサイトの増殖および生存の維持に適した条件下で培養して増殖させる。本発明の1つの態様において、メラノサイトはヒト新生児の包皮検体から単離する。次に、試験するBMP-4の断片または模倣体(すなわち試験物質)を培養物に導入し、これにより培養細胞との相互作用を可能にする。BMP-4の断片または模倣体が色素沈着に影響を及ぼす、例えばメラニン合成に影響を及ぼすのに適した条件下で、試験物質を含む培養物を維持する。メラノサイトの対照培養物も同様の条件下で維持するが、試験するBMP-4の断片または模倣体は含まない。適切な時間後に、例えばトリプシン処理または剥離により培養物からメラノサイトを回収し、メラニン含量を定量化する。
【0042】
本発明の特定の態様においては、メラノサイト培養物においてメラニン合成の速度を測定する。これは、一定の期間、様々な時間においてメラノサイト試験試料中のメラニン濃度を測定することにより達成される。メラニン合成の速度を決定するため、時間に対する測定したメラニン含量をグラフにプロットすることができる。
【0043】
本発明の他の態様においては、メラノサイトに対するBMP-4の断片または模倣体の効果を評価する同様の手順を、メラノサイトのモデルとしてのメラノーマ細胞に対して行うことができる。
【0044】
メラニン量の測定は典型的に、メラノサイトを試験物質とともに培養している間に起こったメラニン合成の量を定量化する段階を包含する。細胞のメラニン含量は、例えばその内容が参照として本明細書に組み入れられるGordon, P.R.およびGilchrest, B.A.、J. Invest. Darmatol., 93:700-702 (1989)に記載されているように、直接測定することができる。簡潔に説明すると、ヒトのメラノサイトを標準的な実験室条件下で培養する。メラニン含量を測定するためには、日常的に1 x 106個の細胞を用いることができる。細胞を2,500 rpmで15分間遠心し、生じたペレットを1N NaOH 0.5 mlに溶解する。分光光度計でOD475を測定することによりメラニン含量を算出し、既知濃度のメラニンを用いて作製したOD475測定値の検量線と比較する。試験薬剤の存在下で培養したメラノサイトのメラニン含量を、試験化後物の非存在下で培養した対照細胞のメラニン含量と比較する。薬剤とともに培養したメラノサイト中のメラニン含量の方が低いことが、試験物質がメラニン合成を阻害することの指標である。
【0045】
本発明の1つの方法は、メラノサイトによって発現されるBMP-4受容体と同じ受容体を発現する細胞を利用して薬剤をスクリーニングする段階、および次の、薬剤がBMP-4によって活性化されるシグナル伝達と同じシグナル伝達を活性化するかどうかを判定する段階を含む。例えば、BMP-4受容体にリガンドが結合した際には、BMP-4によるSmad細胞内タンパク質の活性化により、Smadタンパク質の核内への移行が起こる(Attisanoら、Curr. Opin. Cell Biol. 12:235-245 (2000))。Smadのメラノサイトの核内への移行を促進する薬剤はBMP-4受容体に結合し、したがってこれはBMP-4模倣体である。さらに、BMP受容体をコードするベクターを細胞に形質移入してもよい(Noheら、J. Biol. Chem. 277(7):5330-8 (2002))。次に、薬剤がBMP-4模倣体であるかどうかを判定するために、BMP-4シグナル伝達経路に及ぼす薬剤の効果を研究することができる。メラノーマ細胞はメラノサイトに見出されるBMP受容体と同じ受容体を発現するため、スクリーニングアッセイにおいてこの細胞を用いることもできる。実施例11および12を参照されたい。
【0046】
BMP-4とその膜貫通受容体、BMP受容体1A、1B、および2との相互作用部位を模倣するペプチド、ペプチド断片、タンパク質、有機または無機分子を、本発明において特に包含する。これらの分子はBMP-4受容体への結合においてBMP-4を模倣し、したがってチロシナーゼのPKC-β活性化を阻害し、それによりメラノサイトにおけるメラニン合成を減少させる。
【0047】
本明細書に記載する方法において用いるBMP-4模倣体は、例えばタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(天然および/または非天然アミノ酸を含む)であってよい。BMP-4模倣体はまた、ペプチドおよび非ペプチド部分を含むペプチド類似体であってもよい。そのようなペプチドは、生細胞内でのタンパク質分解への抵抗性を増すため、天然のL-異性体のアミノ酸ではなくD-異性体を用いて作製することができる。BMP-4模倣体はまた、メラノサイトにおいてメラニン合成を減少させるBMP-4の生物学的効果を有する他の有機または無機分子であってもよい。BMP-4模倣体は、例えば、BMP-4類似体のBMP-4受容体との分子モデリングにより設計した後に、合成によって作製することができる。BMP-4模倣体はまた、所望の生物学的特性および/または結合特性(例えば、メラノサイトにおいてメラニン合成を減少させる能力、および軟骨形成細胞においてアルカリホスファターゼの産生を誘導する能力)に関してスクリーニング試験を行うことにより、同定することができる。天然または合成供給源由来の分子を、スクリーニング法に用いることができる。これらの方法で用いるBMP-4模倣体はすべて、生物活性に関する特有の特徴を有する。これらの特徴には、これらの模倣体がメラノサイトまたはメラノーマ細胞の表面に結合し、これらの細胞においてメラニン生成、チロシナーゼ発現、またはPKC-β発現の減少を引き起こす能力が含まれる。
【0048】
本発明の1つの態様において、BMP-4模倣体はPKC-βの媒介するチロシナーゼのリン酸化を阻害し、したがって表皮メラノサイトにおいてチロシナーゼの活性化を妨げる。BMP-4模倣体は、メラニン生成に関与するシグナル伝達を防ぐために必要な細胞表面受容体に結合する。この結果、メラノサイトにおけるメラニン色素の生成が減少する。
【0049】
本発明の別の態様では、候補BMP-4模倣体を添加した後に、NF-κBの細胞部位を判定することができる。BMP-4のその受容体への結合により、ある種の遺伝子の転写活性化因子として働く一組の二次メッセンジャー(NF-κB等)が誘導される(Mohanら、1998)。NF-κBは、通常は細胞の細胞質内に局在する。BMP-4で刺激しBMP-4受容体を活性化した後、NF-κBは核に局在する(Mohanら、1998)。したがって、NF-κBの細胞部位はBMP-4活性の指標となる。簡潔に説明すると、メラノサイトの増殖および生存を維持するのに適した条件下で、候補BMP-4模倣体の存在下でメラノサイトを培養することができる。次に標識を含む抗NF-κB抗体で細胞を染色し、当業者に周知である免疫組織化学的技法を用いて抗体を検出する。次に染色された細胞を顕微鏡で調べ、細胞内の結合した抗体の部位を判定する。核内に抗体が存在することにより、BMP-4受容体活性化の結果としてNF-κBがこの部位に局在したことが示唆される。核へのNF-κB局在を引き起こす薬剤はBMP-4に特有であるメラノサイト表面への結合を示すため、BMP-4模倣体である(Mohanら、1998)。
【0050】
本発明はまた、レポーター遺伝子の上流に位置するBMP-4応答性プロモーターを含む遺伝子を含むベクターを利用することによる、BMP-4模倣体の同定を包含する。本明細書で用いる「BMP-4応答性プロモーター」とは、物質(例えば、BMP-4、その活性断片、またはBMP-4模倣体)のBMP-4膜貫通受容体への結合により活性化されるプロモーターである。BMP-4の結合によりBMP-4受容体が活性化され、次にこの受容体が一組の二次メッセンジャーを誘導する、BMP-4は、BMPファミリーの他のメンバーと同様に、2型および1型セリン/スレオニンキナーゼ受容体に結合し、Smadタンパク質を介して細胞内シグナルを伝達する。ある種のSmadはCo-Smadタンパク質と複合体を形成し、その複合体は核内へ移行し、そこで様々な標的遺伝子の転写を制御する(Massagueら、2000;Attisanoら、2000)。BMP-4受容体の活性化により誘導される二次メッセンジャーの別の例は、NF-κBである。本明細書では、レポーター遺伝子とは、別の遺伝子の上流転写調節領域(例えばプロモーター)に結合させた容易にアッセイされる産物(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ)をコードする遺伝子である。次に、レポーター遺伝子を用いて、どの因子が関心対象の遺伝子の上流領域に存在する応答エレメントを活性化するかを判定することができる。
【0051】
本明細書に記載のように、レポーター遺伝子の上流に位置しこれに機能的に結合させたBMP-4応答性プロモーターを含む遺伝子を含むベクターを、メラノサイトに形質移入することができる。次に、形質転換したメラノサイトを、BMP-4模倣体として試験する候補薬剤と接触させる。次に、メラノサイトの形質移入培養物で発現されるレポーター遺伝子の量を測定し、これを薬剤と接触させていないメラノサイトの対照形質移入培養物で発現されるレポーター遺伝子の量と比較する。BMP-4模倣体の結合によりBMP受容体が活性化され、それによりBMP-4応答性プロモーターを制御する細胞内タンパク質の活性が誘導される。プロモーターは下流のレポーター遺伝の発現を駆動し、遺伝子産物を定量化することができる。薬剤と接触させた後にレポーター遺伝子の発現量が増加/減少することが、薬剤がBMP-4応答性プロモーターからの転写を増加/減少させること、したがってその薬剤がBMP-4模倣体であることを示唆する。
【0052】
本発明の方法を用いて、メラノサイトにおいてPKC-βを、したがってチロシナーゼのリン酸化を下方制御する能力により、BMP-4模倣体を同定することができる。BMP-4模倣体のメラノサイト表面への結合により、PKC-βによるチロシナーゼのリン酸化が阻害され、したがってこれによりメラニン産生が減少する。具体的には、メラノサイトの増殖および生存に適した条件下で、BMP-4模倣体として試験する候補薬剤の存在下でメラノサイトを培養することができる。メラノサイトの対照培養物も同様の条件下で維持するが、候補薬剤は添加しない。培養したメラノサイト中のPKC-β特異的mRNAのレベルを測定し、これを試験化合物の非存在下で培養したメラノサイトの対照培養物由来のRNAのレベルと比較する。薬剤が、PKC-βRNAのレベルを対照中のPKC-βRNAのレベルと比較して減少させる場合、試験薬物はBMP-4模倣体である。本発明の別の態様では、薬剤の存在下で培養したメラノサイトの試料を、様々な時間間隔で回収してもよい。次に、上記のように全RNAを抽出し、薬剤の非存在下で培養し同じ時間間隔で回収した対照メラノサイトの試料中のPKC-βRNAのレベルと比較する。
【0053】
本発明の1つの態様においては、PKC-βRNAの存在を当業者に周知の方法を用いてノーザンブロット解析により判定する(補足57までの補足を含めた、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.ら編、John Wiley & Sons, 2002の第4.9章を参照のこと)。簡潔に説明すると、メラノサイトから全細胞RNAを単離する。ゲル電気泳動法によりRNAを分離し、メンブレンに転写する。当技術分野で周知の方法により、標識PKC-βDNAプローブを作製する。標識は、例えば放射性同位元素であってよい。PKC-βRNAが結合しているメンブレンの部分へのプローブのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、メンブレンをプローブを含む溶液と接触させる。非結合のプローブおよび非特異的に結合したプローブを除去するためにメンブレンを洗浄した後、プローブに用いた標識法に基づいて、既知の技法により結合したプローブを可視化する。飽和量のPKC-βDNAプローブがメンブレンの一部に結合することにより、培養したメラノサイト中にPKC-βRNAが存在することが示唆される。従来技法により飽和量の結合したプローブを定量化することができ、これによりメラノサイト試料中のPKC-βのレベルが示される。薬剤の非存在下で培養すること以外は同一の条件下で培養した対照メラノサイトに対しても、同様の解析を行う。対照メラノサイトと比較して、候補薬剤で処理したメラノサイトから回収したPKC-βRNAの量が減少していることが、候補薬剤がPKC-β産生を減少させ、したがってメラニン合成を減少させることを示す。次に、この薬剤をBMP-4模倣体として同定する。
【0054】
さらに、本発明の方法は、細胞から単離しウェスタンブロット解析により検出したPKC-βタンパク質の量を測定することによる、メラノサイト中のPKC-βを下方制御する能力によるBMP-4模倣体の同定を対象にする。具体的には、メラノサイトを薬剤の存在下で培養する。当業者に周知の方法により、全細胞タンパク質を単離する(Zhai, S.ら、Exp. Cell. Res. 224:335-343 (1996))。ゲル電気泳動法によりタンパク質を分離し、ウェスタンブロット用のメンブレンに転写する(補足57までの補足を含めた、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.ら編、John Wiley & Sons, 2002の第10.8章を参照のこと)。抗PKC-β抗体を溶液中に希釈し、PKC-βタンパク質を含むメンブレンの部分への飽和量の抗PKC-β抗体の結合を可能にする条件下で、メンブレンと接触させる。非結合の抗体および非特異的に結合した抗体を除去するためにメンブレンを洗浄した後、可視化できるように適切に標識した二次抗体(一次抗体に対して作製された)とともにインキュベートする。標識は、例えば、放射性同位元素もしくはフルオロフォア、または西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗PKC-β抗体がメンブレンの一部に結合することにより、培養したメラノサイト中にPKC-βタンパク質が存在することが示唆される。従来技法により結合した抗体の量を定量化することができ、これによりメラノサイト試料中のPKC-βのレベルが示される。薬剤の非存在下で培養すること以外は同一の条件下で培養した対照メラノサイトに対しても、同様の解析を行う。対照メラノサイト中のPKC-βタンパク質の量と比較して、候補薬剤で処理したメラノサイト中のPKC-βタンパク質の量が低いことを反映するウェスタンブロットにより、候補薬剤がPKC-β産生を減少させ、したがってメラニン合成を減少させることが示唆される。次に、この薬剤をBMP-4模倣体として同定する。
【0055】
実施例
実施例1
BMP-2/4によるメラノサイトにおけるメラニン生成の減少
記載されているように、ヒト新生児メラノサイトを包皮検体から単離した(Gilchrest, B.A.ら、In Vitro Cell & Develop Biol. 21:114-120 (1985))。簡潔に説明すると、包皮断片をリン酸緩衝食塩水(PBS)でリンスし、0.25%トリプシン中で4℃で一晩インキュベートした。次に、表皮シートを機械的に分離して0.02% EDTA中に入れ、単一細胞懸濁液が得られるようにボルテックスし、106細胞/35 mmディッシュでプレーティングした。細胞は、記載されているように、無血清で増殖因子を添加しホルモンを添加した培地で維持した(Yaar, M.ら、J. Clin. Invest. 100:2333-2340 (1997))。簡潔に説明すると、濃度を増加させていったBMP-2/4または対照としての希釈液(希釈液は図1で「0」として示す)の存在下で、10 ng/ml上皮増殖因子(EGF)、10μg/mlインスリン、10-9 Mトリヨードチロニン、10μg/mlトランスフェリン、1.4 x 10-6ヒドロコルチゾン、10 ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子、および10μg/mlイノシトールを添加した培地199で細胞を維持した。BMP-2/4融合タンパク質のBMP-4活性は、ATDL-5軟骨形成細胞においてアルカリホスファターゼ産生を誘導する能力により測定した。この効果のED50は、通常10〜30 ng/mlである。刺激してから72時間後に細胞を回収した。一対のディッシュをトリプシン処理し、PBSで2回洗浄し、1 N NaOH 0.8 ml中で10〜15分間勢いよくボルテックスして可溶化した。OD475を測定し、合成メラニン(Sigma)を用いて得られた検量線と比較することにより、メラニン濃度を測定した。図1の結果は、細胞当たりのメラニン含量として表したものである。BMP-2/4(25 ng/ml)により、メラニン含量が約75%減少した。BMP-2/4を添加した結果として、二通りの培養物の細胞収率は増加していた(図2)。
【0056】
実施例2
メラノサイトのアポトーシスを誘導しないBMP-2/4
BMP-2/4がメラノサイトに対して毒性があるという可能性を除外するため、10 ng/ml BMP-2/4の存在下で48時間ないし72時間、実施例1のように細胞を維持した。アポトーシスの結果として生じる細胞質のヒストン会合モノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームを測定する細胞死検出ElisaPLUSキット(Roche、インディアナ州、インディアナポリス)を用いて、メラノサイトのアポトーシスを測定した。285±5 nmに定めた50 mJ/cm2の太陽光擬似照射でUV照射した細胞では、予想どおり照射してから72時間後に反応産物が>100倍の増加を示したのに対して、BMP-2/4で処理したメラノサイトは低バックグラウンドレベルを超えるアポトーシスを示さなかった。図3Aおよび3Bを参照されたい。キットに含まれている陽性対照(DNA-ヒストン複合体)は予想された高いシグナルを示し、キットに提供される別の化合物が機能的であることを確証するためにこれを含めた。
【0057】
実施例3
BMP-2/4によるチロシナーゼmRNAの下方制御
10 ng/ml BMP-2/4または対照としての希釈液の存在下で、実施例2のようにメラノサイトを維持した。BMP-2/4または希釈液を添加してから24時間、48時間、または72時間後に全細胞RNAを回収し、ノーザンブロット解析用に処理した。ブロットをチロシナーゼcDNAとハイブリダイズさせた。ヒトチロシナーゼ(Pmel34)のcDNAプローブは、B. Kwon氏(Guthrie Research Institute、ペンシルバニア州、セア)の供与による。2回の独立した実験において、BMP-2/4は、刺激してから15時間ほどの早さでチロシナーゼmRNAを実質的に下方制御した。
【0058】
実施例4
BMP-2/4によるチロシナーゼタンパク質の下方制御
メラニンに対するBMP-2/4の最大効果が25 ng/mlの濃度で観察されたため、25ng/ml BMP-2/4または対照としての希釈液の存在下で、実施例2のようにメラノサイトを維持した。BMP-2/4または希釈液を添加してから24時間、48時間、または72時間後に全細胞タンパク質を回収し、ウェスタンブロット解析用に処理した。ブロットを、1:500希釈した抗チロシナーゼ抗体(Novocastra Laboratories Ltd、英国、ニューキャッスル・アポン・タイン)と反応させた。BMP-2/4は、刺激してから24時間以内にチロシナーゼタンパク質を実質的に下方制御した。この効果は48時間持続し、1回刺激してから72時間経過した後でもなお検出可能であった。予想どおり、チロシナーゼの基準レベルは、処理した培養物においても対照培養物においても培養物の成熟度に伴い増加した。
【0059】
実施例5
BMP-2/4によるPKC-βmRNAの下方制御
25 ng/ml BMP-2/4または対照としての希釈液の存在下で、実施例1のようにメラノサイトを維持した。刺激してから24時間後に全細胞RNAおよび全タンパク質を回収し、ノーザンブロットおよびウェスタンブロット解析用に処理した。ノーザンブロットをPKC-βcDNAとハイブリダイズさせた。PKC-βに特異的なcDNAプローブは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州、マナッサス)から購入した。BMP-2/4は、報告されているような2種類の既知PKC-β転写産物(4.2 kbおよび10 kb)(Yamanishi, D.T.ら、Carcinogenesis 12:105-109 (1991);Park, H.Y.ら、J. Biol. Chem. 268:11742-11749 (1993))を実質的に下方制御した。抗PKC-β抗体と反応させたウェスタンブロットにより、BMP-2/4がPKC-βタンパク質のレベルを実質的に減少させたことが示される。抗PKC-β抗体はTransduction Laboratories(ケンタッキー州、レキシントン)から入手し、25 ng/mlで使用した。
【0060】
実施例6
BMP-4に対する共通配列を表すチロシナーゼプロモーター
BMP-4は、BMPファミリーの他のメンバーと同様に、2型および1型セリン/スレオニンキナーゼ受容体に結合し、Smadタンパク質を介して細胞内シグナルを伝達する。ある種のSmadはCo-Smadタンパク質と複合体を形成し、その複合体が核内に移行し、そこで様々な標的遺伝子の転写を制御する(Massagueら、2000;Attisanoら、2000に概説されている)。ルシフェラーゼ遺伝子の上流に機能的に結合させたBMP応答性X型コラーゲンプロモーターを用いた形質移入実験の結果、BMPで刺激してから24時間ないし48時間以内にルシフェラーゼが発現し、このことからBMP刺激の結果としての遺伝子転写がこの期間内に起こることが示唆された(Leoboy, P.ら、J. Bone Joint Surg. Am. 83-A, Suppl 1:S15-22 (2001))。Smad/Co-Smad転写因子に認識される共通配列の1つは、Ponnazhaganら、J. Invest. Dermatol. 102:744-748 (1994)によって公表されたヒトチロシナーゼプロモーターのCAGACAである。チロシナーゼプロモーターは、この共通配列を表す。NCBIから入手した(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez.query、アクセッション番号U03039)、太字で示したSmad/Co-Smadに対する共通配列を有するチロシナーゼプロモーターの一部を示す(Ponnazhaganら、J. Invest. Dermatol 102:744-748 (1994))。
【0061】
実施例7
メラノサイトによる1A型BMP受容体の発現
実施例1のように維持した正常なヒトのメラノサイトから、全メラノサイトRNAを回収した。逆転写によりcDNAを作製し、ヒト1A型BMP受容体mRNAに相補的なプライマーを用いてPCRを行うことにより、推定1A型BMP受容体特異的DNAを増幅した(Mohanら、1998)。

【0062】
1%アガロースゲルで電気泳動することによりPCR産物を分離し、強いバンドを同定した。バンドを配列決定し、その配列をヒトゲノムのワーキングドラフト配列と比較した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/seq/のBLAST)。配列決定したバンドは、ヒト1A型BMP受容体のコード配列を有すると同定した。
【0063】
実施例8
メラノサイトによる1B型BMP受容体の発現
実施例1のように全メラノサイトRNAを処理し、ヒト1B型BMP受容体mRNAに相補的なプライマーを用いてPCRを行うことにより、推定1B型BMP受容体をコードするmRNAを増幅した(Mohan、R.R.ら)。

【0064】
1%アガロースゲルで電気泳動することによりPCR産物を分離し、単一のバンドを同定した。バンドを配列決定し、その配列をヒトゲノムのワーキングドラフト配列と比較した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/seq/のBLAST)。配列決定したバンドは、ヒト1B型BMP受容体のコード配列を有すると同定した。
【0065】
実施例9
メラノサイトによる2型BMP受容体の発現
実施例1のように全メラノサイトRNAを処理し、ヒト2型BMP受容体mRNAに相補的なプライマーを用いてPCRを行うことにより、推定2型BMP受容体をコードするmRNAを増幅した(Mohan、R.R.ら)。

【0066】
1%アガロースゲルで電気泳動することによりPCR産物を分離し、強いバンドを同定した。バンドを配列決定し、その配列をヒトゲノムのワーキングドラフト配列と比較した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/seq/のBLAST)。配列決定したバンドは、ヒト2型BMP受容体のコード配列を有すると同定した。
【0067】
実施例10
BMP-4刺激に際して活性化されるメラノサイト中のNF-κB
メラノサイトを得て実施例1のように維持し、25 ng/ml BMP-4または対照としての希釈液で10分間刺激した。免疫組織化学的技法を用いて、培養物をNF-κB染色用に処理した。抗NF-κB抗体はSanta Cruz Biotech(カリフォルニア州、サンタクルーズ、NF-κB、p65、F-6)から入手し、1:200希釈で使用した。希釈液を添加した細胞では、NF-κBは細胞質に局在し、特に核周囲への分布が認められた。BMP-4刺激をして10分以内にNF-κBは核に局在し、これにより受容体が活性化されたことが示される。
【0068】
実施例11
メラノーマ細胞による1A型BMP受容体および1B型BMP受容体の発現
10%ウシ胎児血清を添加したDME培地で、3種類のメラノーマ細胞株(AN、EP、およびLH)を維持した。全細胞RNAを回収した。逆転写によりcDNAを作製し、ヒト1A型BMP受容体mRNAに相補的なプライマーを用いてPCRを行うことによりcDNAを増幅し、別のチューブではcDNAを鋳型として使用し1B型BMP受容体をコードするDNAを増幅した(Mohan, R.R.ら、IOVS 39:2626-2636 (1998))。
1A型BMP受容体用:

1B型BMP受容体用:

【0069】
1%アガロースゲルでPCR産物を分離し、全メラノーマ細胞株において予想される分子量の強いバンドを同定したが、これによりメラノーマ細胞が1A型および1B型BMP受容体を発現することが示された

【0070】
実施例12
メラノーマ細胞による2型BMP受容体の発現
3種類のメラノーマ細胞株(AN、EP、およびLH)を、実施例11のように維持した。実施例11のように全細胞RNAを処理し、ヒト2型BMP受容体mRNAに相補的なプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅した(Mohan、R.R.ら)。

【0071】
1%アガロースゲルでPCR産物を分離し、全メラノーマ細胞株において予想される分子量の強いバンドを同定したが、これによりメラノーマ細胞が2型BMP受容体を発現することが示された。
【0072】
実施例13
BMP-2/4によるチロシナーゼプロモーター活性の抑制
60 mmディッシュに4 x 104個のANメラノーマ細胞をプレーティングした。プレーティングしてから24時間後、FuGENE(商標)6形質移入試薬(Roche Applied Science)を用いてかつ製造業者の推奨に従い、全長チロシナーゼプロモーター(6.1 kb)(Kluppel, M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3777-3781 (1991))を有するチロシナーゼ-CATプラスミド構築物を細胞に形質移入した。形質移入した時点で、細胞は50〜80%コンフルエントであった。形質移入してから24時間後、細胞をBMP-2/4(25 ng/ml)で刺激した。形質移入してから72時間後に、CAT活性を測定した。1つの代表的な実験を図5に示す。全2回の実験でBMPはCAT活性を48±16%(平均値±SEM)減少させ、このことからBMP-2/4は転写的にチロシナーゼプロモーター活性を抑制することが示された。
【0073】
実施例14
UV照射はメラニン形成の最も認識されている環境刺激であるため、ケラチノサイトおよびメラノサイトにおけるBMP-4発現に及ぼすUV照射の影響を試験し、メラノサイトにおけるBMP-4受容体のレベルを測定した。
【0074】
A) UV照射はメラノサイト上のBMP受容体を下方制御する
適切にフィルターを取り付けた1 kWキセノンアークランプ(XMN 1000-21;Optical Radiation Corp.、カリフォルニア州、アズーサ)を内蔵したソーラーシミュレーター(Spectral Energy Corporation、ニュージャージー州、ウェストウッド)を2 x 104 W cm-2に調整して使用し、サブコンフルエントな正常ヒトメラノサイトをPBS中で照射した。この系により、地上での太陽光のスペクトル出力と実質的に同じスペクトル出力が送達される(Werninghaus, K. ら、Photodermatol Photoimmunol Photomed 8:236-242 (1991))。UVBプローブ(検出器SSE 240、拡散器W、フィルターUVB)を装着した研究用放射計(モデルIL1700A;International Light Inc.、マサチューセッツ州、ニューベリーポート)により、線量を285±5 nmに定めた。線量は20 mJ/cm2を含むと算出された。偽照射した細胞も同様に処理したが、照射中はアルミ箔の覆いの下に置いた。照射後、細胞に新たな培地を与え、24時間後に回収した。用いたUV照射の線量は生理的に関連性があり、どちらかと言うと重度の日焼けを起こすと予測される曝露に相当する。
【0075】
RT-PCRにより測定されるように、UV照射はメラノサイトにおいて3種のBMP受容体のmRNAを実質的に下方制御し、このことは、BMP-4がメラニン形成を減少させ、したがってUV照射後、色素沈着が誘導されチロシナーゼレベルが増加すると予想される時に、チロシナーゼの転写を阻害する生理的因子であるBMP-4の受容体のレベルが減少するという仮説と一致する。
【0076】
B) UV照射はメラノサイトおよびケラチノサイトにおいてBMP-4の発現を下方制御する
上記のようにPBS中で、サブコンフルエントな正常ヒトメラノサイトおよびケラチノサイトを285±5 nmに定めた20 mJ/cm2で照射した。偽照射した細胞も同様に処理したが、照射中はアルミ箔の覆いの下に置いた。照射後、細胞に新たな培地を与え、照射してから24時間後に(メラノサイト)および照射してから72時間後までに(ケラチノサイト)全細胞RNAを回収した。RT-PCRにより確認されるように、UV照射はケラチノサイトにおいてもメラノサイトにおいてもBMP-4 mRNAを実質的に下方制御し、このことは、UV照射後、色素沈着が誘導されチロシナーゼレベルが増加すると予想される時に、チロシナーゼの転写を阻害する生理的因子であるBMP-4の自己分泌およびパラ分泌のレベルが減少するという仮説と一致する。
【0077】
実施例15
トランスジェニックマウスの作製
Jackson Laboratory(メイン州、バーハーバー)からC3H/HeJマウスを購入し、K5-ノギン過剰発現マウスを作製するためのバックグラウンド株として用いた。K5-ノギン導入遺伝子は、プラスミドベクターpGEM 3Zを用いて、1690 bpヒトK5プロモーター、984 bp フラッグ(Flag)ノギン配列、およびポリアデニル化配列とともに構築した。フラッグ配列は、全長マウスノギンcDNAの5'末端に挿入した。このcDNAを、発現カセットのβグロブリンイントロンを含む1.69 kbヒトK5プロモーターとヒトK14遺伝子の転写ターミネーター/ポリアデニル化[ポリ(A)]断片との間に挿入した。EcoRIおよびHindIIIを用いてプラスミドから3.2 kbの挿入断片を切り出した後、マイクロインジェクションするためにCsCl勾配により精製した。K5-ノギン構築物は、ボストン大学のトランスジェニック動物施設(Transgenic Animal Facility at Boston University)において、F1 C3H/HeJマウスの受精卵に注入された。2匹のトランスジェニック創始マウスが同定され、2匹のトランスジェニック系列に由来するF2集団を作製した。K5-ノギンマウスは生存可能かつ繁殖可能であり、出生後に黄褐色から茶-黒色への毛の色素沈着の転換を表す。
【0078】
実施例16
毛色の調節におけるBMP-2/4の役割
哺乳動物の柔毛、むく毛、または毛では、フェオメラニン(赤/黄)およびユーメラニン(茶/黒)色素が認められる。C3H/HeJマウスでは、毛周期の過程で毛包メラノサイトにおけるフェオメラニンおよびユーメラニン形成が密接に協調して制御されることにより、毛の黄褐色が決まる。初期成長期毛包ではメラノサイトはユーメラニンを産生し、毛の先端部が茶色色素に見える。その後、毛周期開始から5〜6日後に、皮膚乳頭線維芽細胞によって産生され、α-メラノサイト刺激ホルモンのメラノコルチン-1受容体(MC-1R)との相互作用を妨げるアグーチシグナル伝達タンパク質(ASP)(Millarら、Development 121:3223-3232, (1995))により、MC-1Rを介したシグナル伝達が阻害されるため、メラノサイトはフェオメラニンを産生し始める。これにより、黄色のバンドが毛の先端近くに位置して見える。毛周期の進行中にASPの発現が減少し、MC-1Rを介したシグナル伝達が増加する。その結果、毛包メラノサイトによる色素生成がフェオメラニンからユーメラニンに転換し、毛の中心部および基部では茶色色素に見える。
【0079】
K5ノギンマウスで見られる毛の色素沈着表現型により、毛の末端部分の黄色色素が茶-黒色色素で置換され、その結果柔毛が茶-黒色になると示唆される。このことから、BMPシグナル伝達が、毛周期過程のフェオメラニンおよびユーメラニン形成を制御するタンパク質の発現の調節に関与することが示唆される。ウェスタンブロット解析により、脱毛誘導毛周期の5日目に得られた全層皮膚溶解液中のアグーチシグナル伝達タンパク質のレベルが、同一齢の野生型マウスと比較してK5-ノギンマウスでは顕著に減少していることを見出した。このことはアグーチ遺伝子のプロモーターにSmad1およびSmad5特異的配列が存在することとよく一致しており、これによりアグーチ遺伝子が毛包におけるBMP制御の新規標的を示す可能性が示唆される。総合すると、本発明者らのデータから、BMP-2/4は毛色の強度(明/暗)の調節ばかりでなく、アグーチシグナル伝達タンパク質の発現の調節を介して毛色の調節または変化をも調節している可能性が示唆される。
【0080】
本発明をその好ましい態様に関して詳細に示し説明したが、添付の特許請求の範囲に包含する本発明の範囲から逸脱することな、形式および詳細において様々な変更が行われ得ることを当業者は理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ヒト新生児メラノサイトの培養物に0、0.5、1、2、4、5、10、または25 ng/ml BMP-2/4を添加した後に産生されたメラニン(pg/細胞)をプロットした棒グラフである。刺激してから72時間後に、メラニンアッセイのために細胞を処理した。
【図2】細胞収率、対BMP-2/4 (ng/ml)の棒グラフである。
【図3】図3Aは、メラノサイトの培養物を希釈液、BMP-2/4、UV照射、または陽性対照として含まれていたDNAヒストン複合体で処理してから48時間後の、アポトーシスの副産物を示すELISA単位をプロットした棒グラフである。図3Bは、メラノサイトの培養物を希釈液、BMP-2/4、UV照射、またはDNAヒストン複合体で処理してから72時間後の、アポトーシスの副産物を示すELISA単位をプロットした棒グラフである。
【図4】チロシナーゼプロモーターの一部であり、BMP-4シグナル伝達に認識される配列(CAGACA)を含むヌクレオチド配列(配列番号:1)を表す。
【図5】ANメラノーマ細胞にチロシナーゼ-CATプラスミド構築物を形質移入し、BMP-2/4または希釈液で処理してから72時間後のCAT活性を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP-4模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の皮膚または毛の色素沈着を減少させる方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物を哺乳動物に投与することにより表皮メラノサイト中のチロシナーゼのレベルが減少する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
組成物を局所投与する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物がリポソームを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組成物をエアロゾルにより投与する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
BMP-4、BMP-4の活性断片、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を脊椎動物の皮膚に塗布する段階を含む、脊椎動物の表皮メラノサイトの色素沈着を減少させる方法。
【請求項8】
メラノサイト中のチロシナーゼレベルの減少により色素が減少する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
組成物がBMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP-4模倣体、または上記の組み合わせを含み、ここでBMP-4、融合タンパク質、断片、模倣体、または組み合わせがリポソーム内にカプセル化されている、請求項7記載の方法。
【請求項10】
a) BMP-4の断片または模倣体の存在下でメラノサイトを培養する段階;
b) メラノサイト中のメラニン含量を測定する段階;および
c) メラニン含量を、断片または模倣体の存在下で培養していない対照メラノサイトで測定したメラニン含量と比較する段階;
を含み、対照メラノサイト中のメラニン含量よりもa)のメラノサイト中のメラニン含量が低いことが、前記の断片または模倣体がメラノサイトにおけるメラニン合成を阻害することを示唆する、メラノサイトにおいてメラニン合成を阻害するBMP-4断片またはBMP-4模倣体を同定する方法。
【請求項11】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトに添加する段階;
b) この断片または模倣体を添加した後のメラニン含量の変化を測定する段階;および
c) メラニン含量の変化を、断片または模倣体を添加していない対照メラノサイト中のメラニン含量の任意の変化と比較する段階;
を含み、断片または模倣体を添加した後のメラノサイト中のメラニン含量の減少が、前記の断片または模倣体がメラノサイトにおけるメラニン合成を阻害することを示唆する、メラノサイトにおいてメラニン合成を阻害するBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項12】
メラノサイトをヒト新生児から単離する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
a) 培養においてメラノサイトを薬剤とともにインキュベートする段階;および
b) メラノサイトの核内のNF-κBについてアッセイする段階;
を含み、核内のNF-κBの濃度が、培養において薬剤とともにインキュベートしていない対照メラノサイト中のNF-κBの濃度よりも高いことが、薬剤がメラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣することを示唆する、メラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣する薬剤を同定する方法。
【請求項14】
a) レポーター遺伝子に機能的に結合させたBMP-4応答性プロモーターを含むベクターをメラノサイトに形質移入し、これにより形質移入メラノサイトを作製する段階;
b) 形質移入メラノサイトの1つまたは複数の培養物を薬剤と接触させる段階;および
c) 薬剤と接触させた形質移入メラノサイトの培養物および薬剤と接触させていない形質移入メラノサイトの培養物中の、レポーター遺伝子が発現した結果として産生される遺伝子産物の量を測定する段階;
を含み、薬剤と接触させていない形質移入メラノサイトの対照培養物中の遺伝子産物の量と比較した場合の、薬剤と接触させた形質移入メラノサイトの該培養物中の、レポーター遺伝子が発現した結果として産生される遺伝子産物の量の相違が、該薬剤がメラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣することを示唆する、メラノサイトにおいてBMP-4の活性を模倣する薬剤を同定する方法。
【請求項15】
BMP-4、BMP-融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP-4の分子模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の皮膚の色素沈着を減少させる方法。
【請求項16】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) メラノサイト中のチロシナーゼmRNAのレベルを測定する段階;および
c) b)で測定したチロシナーゼmRNAのレベルを、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトで測定したチロシナーゼmRNAのレベルと比較する段階;
を含み、b)で測定したチロシナーゼmRNAのレベルが、対照メラノサイトで測定したチロシナーゼmRNAのレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項17】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) メラノサイト中のPKC-βRNAのレベルを測定する段階;および
c) b)で測定したPKC-βRNAのレベルを、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトで測定したPKC-βRNAのレベルと比較する段階;
を含み、これによりb)で測定したPKC-βRNAのレベルが、対照メラノサイトで測定したPKC-βRNAのレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項18】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) メラノサイト中のPKC-βタンパク質のレベルを測定する段階;および
c) b)で測定したPKC-βタンパク質のレベルを、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトで測定したPKC-βタンパク質のレベルと比較する段階;
を含み、これによりb)で測定したPKC-βタンパク質のレベルが、対照メラノサイトで測定したPKC-βタンパク質のレベルよりも低い場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項19】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) 抗NF-κB抗体でメラノサイトを染色する段階;および
c) 段階b)のメラノサイトの抗体染色の分布を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトの抗体染色の分布と比較する段階;
を含み、対照メラノサイトでは抗体染色の分布が主に細胞質および核周辺であるのに対して、段階b)のメラノサイトの抗体染色の分布が主に核である場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項20】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) プローブとしてヒトチロシナーゼをコードするDNAを用いて、BMP-4の断片または模倣体とメラノサイトとのインキュベーションの様々な時間においてメラノサイトから単離した全細胞RNAのノーザンブロット解析を行い、それによりチロシナーゼRNAを定量化する段階;および
c) 段階b)の結果を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトから単離した全細胞RNAについて行ったノーザンブロット解析の結果と比較する段階;
を含み、対照メラノサイトで見られるチロシナーゼ特異的RNAのレベルと比較して、段階b)で見られるチロシナーゼ特異的RNAのレベルがBMP-4の断片または模倣体とのインキュベーションの時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項21】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトとともにインキュベートする段階;
b) プローブとしてヒトPKC-βをコードするDNAを用いて、BMP-4の断片または模倣体とメラノサイトとのインキュベーションの様々な時間においてメラノサイトから単離した全細胞RNAのノーザンブロット解析を行い、それによりPKC-β特異的RNAを定量化する段階;および
c) 段階b)の結果を、BMP-4の断片または模倣体とともにインキュベートしていない対照メラノサイトから単離した全細胞RNAについて行ったノーザンブロット解析の結果と比較する段階;
を含み、対照メラノサイトで見られるPKC-β特異的RNAのレベルと比較して、段階b)で見られるPKC-β特異的RNAのレベルがBMP-4の断片または模倣体とのインキュベーションの時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項22】
a) 培養においてBMP-4の断片または模倣体をメラノサイトに添加する段階;
b) BMP-4の断片または模倣体添加後の様々な時間において回収したメラノサイトの試料から全細胞タンパク質の抽出物を調製する段階;
c) 段階b)のタンパク質をゲル電気泳動法により分離する段階;
d) 段階c)のタンパク質をウェスタンブロット用のメンブレンにブロッティングする段階;
e) d)のメンブレンを飽和量の抗チロシナーゼ抗体とともにインキュベートし、これにより抗体がチロシナーゼに結合することを可能にする段階;および
f) 結合した抗体を検出する手段を適用し、これにより結合した抗体を定量化する段階;
を含み、これによりメラノサイトにBMP-4の断片または模倣体を添加した後、結合した抗体が時間とともに減少する場合、BMP-4の断片または模倣体がメラノサイト中のメラニンのレベルを減少させる、メラノサイト中のメラニンのレベルを減少させるBMP-4の断片または模倣体を同定する方法。
【請求項23】
BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の毛、むく毛、または柔毛の色素沈着を減少させる方法。
【請求項24】
メラノサイトまたはメラノーマ細胞の表面上にある2型および1型BMP受容体を活性化する薬剤を含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の皮膚または毛の色素沈着を減少させる方法。
【請求項25】
BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の毛、むく毛、または柔毛の毛周期過程においてメラニン形成の制御を変化させる方法。
【請求項26】
BMP-4、BMP-4の活性融合タンパク質、BMP-4の活性断片、BMP模倣体、または上記の組み合わせを含む有効量の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物の毛包メラノサイトにおいて色素生成をユーメラニンからフェオメラニンに切り替える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−508026(P2006−508026A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−583338(P2003−583338)
【出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/011376
【国際公開番号】WO2003/086313
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】