説明

皮膚光老化予防又は改善用組成物、Ki−67発現抑制剤および経口用組成物

【課題】 皮膚光老化予防又は改善用組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明によれば、松樹皮抽出物には皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。また、松樹皮抽出物には、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑制する効果がある。松樹皮抽出物を有効成分とする皮膚光老化予防又は改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類などの経口用組成物として用いることができ、皮膚光老化を予防する効果又は改善する効果がある。さらには、皮膚光老化予防又は改善用組成物を含有する経口用組成物は、手軽に摂取することができるとともに、皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚光老化予防又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に皮膚の老化とは、加齢に伴う生理的老化と、紫外線に晒されることによる光老化とが互いに影響しあって生じる生理的現象をいう。特に光老化と、肌荒れ、シワ、タルミ、シミ等の皮膚の老化との関係が、現在注目されている。長期間、皮膚が紫外線に晒されると、皮膚の老化に留まらず、皮膚ガンの発生を引き起こす。これは、太陽光の紫外線(特にUVB)が表皮下層に至る際に、皮膚細胞のDNA鎖に突然変異を引き起こし、DNA損傷が起こることが原因と考えられている。
【0003】
この問題を解決するため、皮膚の光老化予防又は改善用組成物が種々開発されている。例えば、フェニルエタノイド配糖体を有効成分とする皮膚光老化予防剤(特許文献1)、プロテオグリカン関連物質を主成分とすることを特徴とする皮膚光老化改善剤(特許文献2)、コウジ酸および/又はその誘導体を有効成分とすることを特徴とする光老化皮膚改善用化粧料(特許文献3)などが知られている。
【0004】
ここで、乳癌、胃癌、大腸癌、子宮癌など多くの腫瘍において、分化度、血管侵襲およびリンパ節転移といった腫瘍の悪性度や予後と相関するKi−67が、腫瘍組織における細胞増殖マーカーとして有用であることが知られている(非特許文献1)。よって、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑えることができれば、紫外線照射による皮膚の光老化や発ガンの予防や改善に大きく寄与することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−280271号公報
【特許文献2】特開2008−195629号公報
【特許文献3】特開2002−293738号公報
【非特許文献1】Arch Dermatol. 2008;144(10):1296−1302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年においては、消費者のニーズの多様性が進み、様々な皮膚光老化予防又は改善用組成物が求められている。しかし、従来技術のみではそれらのニーズに必ずしも応えていなかった。また、手軽に摂取できる、天然物由来の皮膚光老化予防又は改善用組成物も求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、皮膚光老化予防又は改善用組成物として用いられ得る素材として、松樹皮抽出物が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、腫瘍組織におけるKi−67の発現を、松樹皮抽出物が抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
具体的には、本発明は、松樹皮抽出物を有効成分とする皮膚光老化予防又は改善用組成物および松樹皮抽出物を有効成分とするKi−67発現抑制剤に関するものである。好ましくは前記皮膚光老化予防又は改善用組成物およびKi−67発現抑制剤を含有する経口用組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、松樹皮抽出物には皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。また、松樹皮抽出物には、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑制する効果がある。松樹皮抽出物を有効成分とする皮膚光老化予防又は改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類などの経口用組成物として用いることができ、皮膚光老化を予防する効果又は改善する効果がある。さらには、皮膚光老化予防又は改善用組成物を含有する経口用組成物は、手軽に摂取することができるとともに、皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】紫外線照射開始からの期間と、マウス皮膚の肥厚の変化を示した図である。
【図2】紫外線照射開始からの期間と、マウス皮膚の弾力性の変化を示した図である。
【図3】紫外線照射開始からの期間と、マウス皮膚の腫瘍数の変化を示した図である。
【図4】20週間経過後の、各群のマウスのしわ形成スコアを示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、後述の実施形態の記載により限定されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0012】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な有効成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果実の皮および種に集中的に含まれている。なお、このプロアントシアニジンは、ヒトの体内では生成することができない物質である。
【0013】
松樹皮抽出物には、プロアントシアニジンとして重合度が2以上の縮重合体が含有される。特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが望ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が望ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより望ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに望ましい。重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)のプロアントシアニジンは、特に体内に吸収されやすい。本明細書では、重合度が2〜4の重合体を、オリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin、以下「OPC」という)という。
【0014】
また、松樹皮抽出物としては、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体;すなわち、OPC)を15質量%、望ましくは20質量%以上、より望ましくは30質量%の割合で含有し、5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上、望ましくは15質量%以上の割合で含有する抽出物が望ましい。
【0015】
松樹皮抽出物には、さらにカテキン(catechin)類が含有され得る。このカテキン類は、望ましくは3質量%以上、より望ましくは5質量%以上の割合で含有される。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、およびアフゼレキン等が知られている。松樹皮抽出物からは、(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキン又はガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。
【0016】
カテキン類は、松樹皮抽出物に、3質量%以上含有されていることが望ましい。より望ましくは、OPCを20質量%以上、かつ5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上含有する松樹皮抽出物に、カテキン類が3質量%以上含有されるのが望ましい。例えば、松樹皮抽出物のカテキン類含有量が3質量%未満の場合、含有量が3質量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を3質量%以上含有し、OPCを20質量%以上、かつ5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上含有する松樹皮抽出物が望ましい。
【0017】
本発明に用いられる松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダ等の樹皮抽出物が望ましい。中でも、フランス海岸松の樹皮抽出物が望ましい。
【0018】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、フラボノイド類であるプロアントシアニジン(proanthocyanidin)を主要成分として含有する他に、有機酸ならびにその他の生理活性成分等を含有している。この主要成分であるプロアントシアニジンには、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0019】
松樹皮抽出物は、松の樹皮を水又は有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水、又は熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水、有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等が好ましく用いられる。
【0020】
松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は特に制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法等が用いられる。
【0021】
超臨界流体抽出法とは、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)等が用いられるが、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0022】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0023】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類等の目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0024】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程等が省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0025】
また、松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は、上述の抽出法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法等の方法によって行ってもよい。
【0026】
松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0027】
上述の抽出により得られた松樹皮抽出物は、限外濾過、あるいは吸着性担体(ダイヤイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチン等)を用いたカラム法又はバッチ法により精製を行うことが安全性の面から好ましい。
【0028】
本発明に用いられる皮膚光老化予防又は改善用組成物の配合量としては、特に制限されないが、個体1日当たり松樹皮抽出物2mg以上が好ましく、2mg以下だと充分な効果が期待できない。1日数回に分けて投与してもよい。また、株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物が好ましく用いられ得る。
【0029】
本発明に用いられるKi−67発現抑制剤の配合量としては、特に制限されないが、個体1日当たり松樹皮抽出物2mg以上が好ましく、2mg以下だと充分な効果が期待できない。1日数回に分けて投与してもよい。また、株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物が好ましく用いられ得る。
【0030】
本発明に用いられる皮膚光老化予防又は改善用組成物およびKi−67発現抑制剤は、そのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類などの経口用組成物および化粧品類として用いることができる。経口用組成物および化粧品類への松樹皮抽出物の添加量は特に制限はないが、個体1日当たり松樹皮抽出物2mg以上が好ましく、2mg以下だと充分な効果が期待できない。1日数回に分けて投与してもよい。
【0031】
飲食品類としては、本発明に記載の皮膚光老化予防又は改善用組成物およびKi−67発現抑制剤をそのまま、又は種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状等に成形して食品素材として提供することができる。また、水、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、青汁、ヨーグルト等に添加して使用してもよい。また、健康食品や特定保健用食品に添加しても良い。
【0032】
医薬品類としては、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状等に成形して医薬品として提供することができる。
【0033】
本発明の経口用組成物は、経口摂取することによって、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑制して、光老化による肌の症状(例えば肌荒れ、シワ、タルミ、シミ、腫瘍)などを改善する作用がある。
【0034】
化粧品類としては、例えば、化粧水、化粧クリーム、乳液、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、白粉、口紅、リップグロス、頬紅、アイシャドー、整髪料、育毛剤、水性軟膏、油性軟膏、目薬、アイウォッシュ、シップ、ジェルなどとして利用される。本発明の化粧品類は、皮膚等に塗布又は噴霧することによって、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑制して、光老化による肌の症状(例えば肌荒れ、シワ、タルミ、シミ、腫瘍)などを改善する作用がある。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、後述の実施例に限定して解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。松樹皮抽出物として株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物を用いた。
【0036】
4週齢のHRMメラニン含有へアレスマウス(日本SLC株式会社製 体重約15〜20g)を、UVBを照射しないnormal群、UVBを照射するのみのcontrol群、UVB照射をして松樹皮抽出物を低用量経口投与する試験食低用量群、UVB照射をして松樹皮抽出物を高用量経口投与する試験食高用量群の8匹ずつ4群に群分けした(表1)。
(表1)

normal群を除く各群のマウスに、20週間UVBランプ(T−15M、15W、312nm、家田紡績株式会社)を隔日照射した。UVB照射は、低容量から開始し、徐々に照射量を増やした。具体的には、1週目は36mJ/cm、2〜4週目は54mJ/cm、4〜7週目は72mJ/cm、7〜10週目は108mJ/cm、10〜13週目は144mJ/cm、13〜20週目は168mJ/cm照射した。並行して、試験食を摂取する群には、松樹皮抽出物を含有する水溶液を毎日朝夕の2回経口投与した。1回で投与する松樹皮抽出物の量は表1の通りで、試験食低用量群では60mg/kg、試験食高用量群では200mg/kgである。すなわち、例えば体重15gのマウスの場合、1回で投与する松樹皮抽出物の量は、試験食低用量群では0.9mg、試験食高用量群では3.0mgである。なお、normal群とcontrol群は水のみを投与した。
【0037】
(実施例1:皮膚光老化の評価)
皮膚光老化の評価は、皮膚の肥厚の変化および弾力性の変化、皮膚腫瘍数、しわ形成について行った。結果は、統計処理ソフトを用いて、Turkey−Kramer法によって検定を行い、p<0.05を有意と判断した。
【0038】
皮膚の肥厚および弾力性(皮膚の伸び)、皮膚腫瘍数は、1週間ごとに測定した。肥厚の結果を図1、弾力性の結果を図2、腫瘍数の結果を図3に示す。
【0039】
皮膚のしわについては、8週目、12週目、16週目、20週目に撮影した写真を用いて、しわ形成を6段階でスコア化した。すなわち、しわが認められない正常な皮膚をグレード0、浅いしわが認められるものをグレード2、粗いしわが認められるものをグレード4、深いしわが認められるものをグレード6とした。結果を図4に示す。
【0040】
図1から4に示す通り、松樹皮抽出物の経口投与(60mg/kg、200mg/kg)によって、皮膚の肥厚では投与8週目以降(図1)、皮膚の弾力性では投与17週目以降(図2)、皮膚腫瘍では投与18週目以降(図3)に有意な低値が認められた。また、しわの形成については松樹皮抽出物の経口投与(200mg/kg)によって、20週目に有意な低値が認められた(図4)。また、HE染色、アザン染色、フォンタナ・マツソン染色による病理評価においてもUVB照射による表皮層の肥厚に対する有意な抑制、メラニン顆粒生成の増加に対する有意な抑制が確認された。以上の結果より、皮膚光老化の諸症状である皮膚の肥厚、弾力性低下、しわの形成、発ガン(皮膚腫瘍)は、松樹皮抽出物によって予防又は改善できることが示された。
【0041】
(実施例2:メカニズムの検討)
表1の各群のマウスの皮膚組織片を10%ホルマリン緩衝液で固定し、定法に従って病理切片を作成した。皮膚病理の免疫染色は、抗マウスKi−67ラットモノクローナル抗体(DakoCytomation)、抗8−OHdG抗体(日本老化制御研究所)、アポトーシス検出キット(和光純薬工業株式会社)を用いて常法に従って行い、Ki−67陽性細胞数、8−OHdG陽性細胞数およびアポトーシス細胞数を測定した。
【0042】
結果を表2に示す。UVB照射により基底層にKi−67陽性細胞が増加し、細胞増殖していることが判明した。松樹皮抽出物の経口投与(60mg/kg、200mg/kg)によって、Ki−67発現細胞の増加が有意に抑制された。また、8−OHdG陽性細胞数もUVB照射により増加し、細胞増殖していることが判明した。松樹皮抽出物の経口投与(60mg/kg、200mg/kg)によって、8−OHdG発現細胞の増加に抑制傾向がみられた。UVB照射により、皮膚細胞がアポトーシスを引き起こしていることが判明した。松樹皮抽出物の経口投与(60mg/kg、200mg/kg)によって、アポトーシスが有意に抑制された。以上の結果より、松樹皮抽出物には腫瘍細胞においてKi−67や8−OHdGの発現を抑制する効果があることが示された。
(表2)

【0043】
また、上記各群のマウスを用いて、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)−2およびMMP−9の発現量を測定した。UVB照射によってMMP−2およびMMP−9は増加したが、松樹皮抽出物の経口投与による発現量の抑制は確認できなかった。よって、松樹皮抽出物による皮膚光老化の改善効果のメカニズムは、MMP−2およびMMP−9の発現を抑制したものではないと推定される。
【0044】
以上の結果を総合すると、松樹皮抽出物には皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。また、松樹皮抽出物には、腫瘍組織におけるKi−67や8−OHdGの発現を抑制する効果がある。よって、松樹皮抽出物には、腫瘍細胞においてKi−67や8−OHdGの発現を抑制することにより、皮膚の光老化を予防又は改善する効果がある。また、松樹皮抽出物がUVB照射によるアポトーシスの増加を抑制した結果から、松樹皮抽出物がUVB照射による細胞障害(発ガン)を防止する効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、松樹皮抽出物には皮膚光老化を予防又は改善する効果がある。また、松樹皮抽出物には、腫瘍組織におけるKi−67の発現を抑制する効果がある。松樹皮抽出物を有効成分とする皮膚光老化予防又は改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類などの経口用組成物として用いることができ、皮膚光老化の諸症状を予防する効果又は改善する効果がある。さらには、前記皮膚光老化予防又は改善用組成物は、飲食品類や医薬品類などの経口用組成物として手軽に摂取することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物を有効成分とする、皮膚光老化予防又は改善用組成物。
【請求項2】
松樹皮抽出物を有効成分とする、Ki−67発現抑制剤。
【請求項3】
請求項1に記載の皮膚光老化予防又は改善用組成物を含有する経口用組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のKi−67発現抑制剤を含有する経口用組成物。



【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178754(P2011−178754A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47020(P2010−47020)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】