説明

皮膚外用剤

【課題】ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含有し、光に対して安定な皮膚外用剤を提供すること、および、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含有する皮膚外用剤の光に対する安定性を改善する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、下記の(i)、(ii)及び(iii)を含む皮膚外用剤である:
(i)ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類
(ii)a)メントール又はその類縁物質、又は/及び、b)アラントイン又はその類縁物質
(iii)一種以上のpH調整剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む組成物中に下記の(i)及び(ii)を含むことで、光に安定なヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む皮膚外用剤を提供するものである。
(i)a)メントール又はその類縁物質、又は/及び、b)アラントイン又はその類縁物質
(ii)一種以上のpH調整剤
また本発明は、上記の(i)及び(ii)をヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類に添加することにより、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む皮膚外用剤の光に対する安定化を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿疹・皮膚炎等の炎症性皮膚疾患の治療においてはステロイド外用剤が汎用されている。抗炎症作用を有するステロイド剤は、抗炎症作用の増強、皮膚貯留性の向上、安定性の向上、副作用の減弱等を狙って、種々のステロイド化合物が開発されてきた。
ステロイド外用剤は炎症に対して著効を示す一方、皮膚の萎縮、毛細血管拡張、ステロイド潮紅といった様々な副作用を有し、抗炎症作用が強いほど副作用の懸念が大きくなる。よって抗炎症作用と副作用のバランスの両面から、皮膚の炎症症状に適したランクのステロイド外用剤を使用することが重要とされている。
ステロイド外用剤の一種であるヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類は、ステロイドのランクではweakからvery strongに属し、抗炎症作用と副作用のバランスの両面から、皮膚の炎症症状に適した化合物を選択することができる有用なステロイド外用剤である。
一方、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を皮膚外用剤に調製した場合、熱、光、酸素による分解が顕著であり、特に光に対しては極めて不安定な物質であることが知られている。一般にこれらの光に対して不安定な物質を含有する製剤を安定に保持する手段としては、製剤を収容する包装材料による遮光手段、例えば、製剤を収容する容器を紫外線吸収剤を容器素材に練りこんだ樹脂容器やアルミニウム容器にする方法が多く採用されている。
しかしながら、容器は外部よりその内容物を確認したり残量を確認するために容器の光透過性が必要であったり、昨今の環境への意識の高まりから省資源化のため容器素材の削減が求められることがあり、十分な保護安定性を図ることが難しい場合があった。また、消費者の手に渡ってからはどのように保存されるかは不明であり、製剤的に光に対する安定性を向上させることが望まれていた。
製剤的に光に対する安定化を向上する方法としては、ステロイドの光に対する安定性を改善する手段として、ステロイドの粒子径分布の中心を0.005μm〜5μmにする方法が提案されているが(特許文献1)、原末の粒子径をコントロールする必要があり、より簡便に光安定性を向上させる手段が望まれる。また、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類の熱に対する安定性を改善した製剤として、炭化水素、高級アルコール、エーテル型非イオン性界面活性剤、中性アミノ酸、無機塩及び塩基性物質を配合することで、ステロイドと尿素を安定に配合した皮膚外用クリーム剤(特許文献2)、クロタミトン、イソプロピルメチルフェノール、塩酸リドカインを配合し、pH3.6〜4.2に調整された酪酸ヒドロコルチゾン含有クリーム剤(特許文献3)、水に溶解した際に4〜6のpHを示す抗ヒスタミン薬を配合した酪酸ヒドロコルチゾン製剤(特許文献4)、亜鉛化合物、デンプン、結晶セルロースおよび水溶性高分子からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するエステル化ステロイド配合皮膚外用剤(特許文献5)およびアクリル酸重合物を含有する無水のステロイド系抗炎症薬組成物(特許文献6)等が知られている。
また、アラントイン、薬効成分、並びにスクワラン又は/及びシリコーンを含有する製剤的に安定であり使用感の良好な外用鎮痒剤組成物が報告されており(特許文献9)、薬効成分の例として抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、テルペノイド類、ステロイド剤及び低水準消毒剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−89386号公報
【特許文献2】特許第3150021号公報
【特許文献3】特許第2860748号公報
【特許文献4】特開2001−2573号公報
【特許文献5】特開2005−343891号公報
【特許文献6】特開2001−233772号公報
【特許文献7】特開2005−298452号公報
【特許文献8】特開2006−312628号公報
【特許文献9】特開2005−126336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含有し、光に対して安定な皮膚外用剤を提供することを目的とする。更に本発明は、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含有する皮膚外用剤の光に対する安定性を改善する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明は、下記の(i)、(ii)及び(iii)を含む皮膚外用剤である:
(i)ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類
(ii)a)メントール又はその類縁物質、又は/及び、b)アラントイン又はその類縁物質
(iii)一種以上のpH調整剤。
(2)より具体的には、本発明は、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類がヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン及び酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、又はそれらの塩類からなる群より選ばれる、(1)記載の皮膚外用剤である。
(3)さらに、本発明は、メントール又はその類縁物質が、l−メントール及びdl−メントールからなる群より選ばれる(1)または(2)記載の皮膚外用剤でもある。
(4)本発明は、アラントイン又はその類縁物質が、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインジヒドロキシアルミニウムからなる群より選ばれる、(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚外用剤でもある。
(5)また、本発明は、ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む組成物中にメントール又はその類縁物質、又は/及びアラントイン又はその類縁物質を含ませることを特徴とするヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類の光安定化改善方法でもある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は実施例1に記載した本発明の組成物1〜3および比較組成物Aの組成を示す。
【図2−1】図2−1は実施例1に記載した本発明の組成物4〜6および比較組成物BおよびCの組成を示す。
【図2−2】図2−2は実施例1に記載した本発明の組成物7および8の組成を示す。
【図3】図3は実施例1に記載した本発明の組成物9〜11および比較組成物Dの組成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いられるヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類は、薬学上許容される化合物であれば特に制限はない。例えば、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン及び酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、又はそれらの塩類(例えばコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムなど)等が挙げられる。本発明において使用されるヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類の具体的な量は、例えば一般には製剤の全質量に対し0.001〜2.0質量%であり、更に好ましくは0.1〜1.0質量%である。
本発明に用いられるメントール又はその類縁物質は、薬学上許容される化合物であれば特に制限はなく、l−メントール及びdl−メントールが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用されるメントール又はその類縁物質の具体的な量は、例えば一般には製剤の質量に対し0.001〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0008】
本発明に用いられるアラントイン又はその類縁物質は、薬学上許容される化合物であれば特に制限はなく、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインジヒドロキシアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において使用されるアラントイン又はその類縁物質の具体的な量は、例えば一般には製剤の質量に対し0.001〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明に用いられるpH調整剤は、薬学上許容される化合物であれば特に制限はない。例えば塩酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、ソルビン酸、乳酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、アルギニン、アンモニア水、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム、又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明においてpHは水を配合する場合はpH2.0〜5.0の範囲に調整するのが好ましい。又、本発明において水を配合しない場合は、水で10倍に希釈したときにpH2.0〜5.0の範囲となるようにpH調整剤を添加するのが好ましい。本発明において使用されるpH調整剤の具体的な量は用いるpH調整剤により異なるがpHが上記pH範囲に調整される量である。例えば一般には製剤の質量に対し0.001〜10質量%であり、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
【0009】
本発明においては、上記成分の他、必要に応じて発明の効果を損なわない範囲で、製剤の形態に応じて、医薬品、医薬部外品、化粧品等に使用される様々な有効成分や添加物を任意に選択し、併用して製剤化することができる。例えば、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、創傷治癒剤、局所麻酔剤、ビタミン剤、清涼化剤、保湿剤、殺菌剤、血管収縮剤、抗酸化剤、溶解剤、防腐剤、キレート剤、増粘剤、乳化剤、基剤等を含有させることができる。
【0010】
前記抗炎症剤には、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸又はその誘導体、カンゾウ抽出物、ヒドロコルチゾン以外のステロイド化合物(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロベタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの誘導体)、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、ウフェナマート、ピロキシカム、ケトプロフェン、サリチル酸又はその誘導体、ジメチルイソプロピルアズレン、トウキエキス、シコンエキスなどが含まれる。
前記抗ヒスタミン剤には、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、アゼラスチン、エメダスチン、ケトチフェン又はそれらの誘導体などが挙げられる。好ましくは、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンが含まれる。
【0011】
前記鎮痒剤には、サリチル酸又はその誘導体、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシンなどが含まれる。
前記創傷治癒剤には、アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、酸化亜鉛などが含まれる。
前記局所麻酔剤には、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、アミノ安息香酸又はそれらの誘導体などが含まれる。
前記ビタミン剤には、ビタミンA類[レチノール及びその誘導体(例えば、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール等)]、ビタミンB1類[チアミン及びその誘導体、(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン等)]、ビタミンB2類[リボフラビン及びその誘導体(例えば、リン酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)]、ビタミンB3類[ニコチン酸及びその誘導体(ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル等)]、ビタミンB5類[パントテン酸及びその誘導体(例えば、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテニルエチルエーテル等)]、ビタミンB6類[ピリドキシン及びその誘導体(例えば、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、及びピリドキサール等)]、ビタミンB12類[コバラミン及びその誘導体(例えば、シアノコバラミン、メコバラミン、及び塩酸ヒドロキソコバラミン等)]、ビオチン、葉酸またはその薬学上許容される塩、ビタミンC類[アスコルビン酸及びその誘導体(例えば、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アルコルビン酸等)、ビタミンD類[カルシフェロール及びその誘導体(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)]、ビタミンE類[トコフェロール、ユビキノン及びその誘導体(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム等)]、その他のビタミン類(例えば、ヘスペリジン、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、イノシトール、及びそれらの薬学上許容される塩)などが含まれる。
【0012】
前記清涼化剤には、カンフル、ボルネオール又はそれらの類縁物質、ウイキョウ油、ユーカリ油、ハッカ油などが含まれる。
前記保湿剤には、多価アルコール(グリセリン、1,3−ブチレングリコールなど)、ヒアルロン酸又はその誘導体、ヘパリン類似物質、高分子化合物(コラーゲン、キトサンなど)、アミノ酸(グリシン、アラニン、アスパラギン酸など)、天然保湿因子(乳酸ナトリウム、尿素など)、セラミド、植物抽出エキス(カミツレエキス、アロエエキスなど)などが含まれる。
前記殺菌剤には、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミドなどが含まれる。
前記血管収縮剤には、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、メチルエフェドリン又はその塩類などが含まれる。
抗酸化剤には、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸又はその誘導体(パルミチン酸アスコルビン酸など)などが含まれる。
【0013】
前記溶解剤には、エタノール、2−プロパノール、クロタミトン、ポリエチレングリコールなどが含まれる。
前記防腐剤には、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。
前記キレート剤には、エデト酸又はその塩類、ヘキサメタリン酸又はその塩類などが含まれる。
前記増粘剤には、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
前記乳化剤には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類などが含まれる。
【0014】
基剤としては例えば、炭化水素(白色ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィンなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸、ベヘニン酸など)、高級脂肪アルコール(ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、脂肪酸エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピルなど)、多価アルコール脂肪酸エステル(トリイソオクタン酸グリセリンなど)類などが使用できる。
製剤の剤形としては、外用剤であれば特に制限されないが、具体的な剤形には、軟膏剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、ゲルクリーム剤、ジェル剤、液剤、ノンガススプレー剤及びエアゾール剤が含まれる。
【0015】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
本発明の組成物および比較組成物の調製
以下のように本発明の組成物(組成物1〜11)および比較組成物A〜Dを調製した。
i)比較組成物A
ヒドロコルチゾン0.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
ii)組成物1
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール2.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
iii)組成物2
ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン0.2g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
iv)組成物3
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール2.5g、アラントイン0.2g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
図1にi)〜iv)の組成物の組成をまとめた。
【0017】
v)比較組成物B
ヒドロコルチゾン0.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.0)。
vi)比較組成物C
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール0.2g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
【0018】
vii)組成物4
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール0.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
viii)組成物5
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール2.0g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
ix)組成物6
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール3.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
x)組成物7
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール5.0g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
xi)組成物8
ヒドロコルチゾン0.5g、l−メントール7.0g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02g、乳酸1.5gをエタノール60.0gに溶解後、精製水を加えて全量を100gとした(pH3.1)。
図2−1および図2−2にv)〜xi)の組成物の組成をまとめた。
【0019】
xii)比較組成物D
ヒドロコルチゾン0.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
xiii)組成物9
ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン0.1g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
xiv)組成物10
ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン0.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
xv)組成物11
ヒドロコルチゾン0.5g、アラントイン0.7g、塩酸ジフェンヒドラミン1.0g、酢酸トコフェロール0.2g、dl−カンフル0.5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.3g、パルミチン酸アルコルビン酸0.02gをエタノール30.0gに溶解し、デキストリン0.2g、エデト酸ナトリウム0.01g、乳酸0.6gを溶解した水溶液と混合し、全量を100gとした(pH3.0)。
図3にxii)〜xv)の組成物の組成をまとめた。
【実施例2】
【0020】
本発明の皮膚外用剤の光安定性
製剤の光安定性の試験としては、日米EU三極医薬品承認審査調和国際会議(ICH)における新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドラインなどに示されており、同ガイドラインに従って比較組成物A〜Dおよび本発明の組成物1〜11について試験を行った。
比較組成物A〜D、本発明の組成物1〜11をポリエチレンテレフタレート製容器(紫外線吸収剤を配合し光線透過率の350nm以下をカットした容器)に充填し、10,000 Luxで120時間(総照度120000 Lux・hr)、それぞれの試料を曝光した後、サンプリングを行い、ヒドロコルチゾンの含量をHPLCにて測定してヒドロコルチゾン残存量を決定した。結果を表1〜3に示す。
【0021】
表1

【0022】
表2

【0023】
表3

【0024】
表1に示されるように、メントール及びアラントイン無配合下ではヒドロコルチゾンの光安定性は非常に悪く、メントール又は/及びアラントインを配合することで、ヒドロコルチゾンの光安定性が飛躍的に向上した。また、表2に示されるように、メントール配合濃度依存的にヒドロコルチゾンの光安定性は向上し、0.5質量%以上でその有効性が確認された。さらに表3に示されるように、アラントインにおいても、その配合濃度依存的にヒドロコルチゾンの光安定性が向上し、表1の結果と合わせて0.2質量%以上でその有効性が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(i)、(ii)及び(iii)を含む、皮膚外用剤:
(i)ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類
(ii)a)メントール又はその類縁物質、又は/及び、b)アラントイン又はその類縁物質
(iii)一種以上のpH調整剤。
【請求項2】
ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類が、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン及び酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、又はそれらの塩類からなる群より選ばれる請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
メントール又はその類縁物質が、l−メントール及びdl−メントールからなる群より選ばれる請求項1または2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
アラントイン又はその類縁物質が、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインジヒドロキシアルミニウムからなる群より選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
pH調整剤が、塩酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、ソルビン酸、乳酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、アルギニン、アンモニア水、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム、又はそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を配合した請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
pHが2.0〜5.0または水で10倍に希釈した場合にpHが2.0〜5.0である、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
軟膏剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、ゲルクリーム剤、ジェル剤、液剤、ノンガススプレー剤及びエアゾール剤のいずれかの剤形である請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
ヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類を含む組成物中にメントール又はその類縁物質、又は/及びアラントイン又はその類縁物質を含ませることを特徴とするヒドロコルチゾン、そのエステル化物、又はその塩類の光安定化改善方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144123(P2011−144123A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5058(P2010−5058)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000150028)株式会社池田模範堂 (8)
【Fターム(参考)】