説明

皮膚洗浄剤

【課題】皮膚洗浄剤は、皮膚に少し塗布し軽くマッサージすることによって消しゴムの屑状物を出し、それと共に汚れや古くなった角質を除去できるもので、洗浄できたことが視覚的に分かるものである。しかしながら、従来例では、皮膚に塗布しそれを摩擦するため、塗布した位置に残っていなければならない。水のようにすぐに垂れて落下するものでは、非常に使いづらい。そこで、本発明は、過剰塗布にならないように、且つ垂れにくい洗浄剤を提供する。
【解決手段】皮膚に塗布し摩擦することにより、消しゴムの屑状物に変化しその屑状物と共に汚れや古くなった角質等を除去するものであって、少なくとも、水、カチオンと反応する反応基を有するポリマー、カチオン系界面活性剤を含有し、且つそのカチオン系界面活性剤が、ある種の4級アンモニウムである洗浄剤を、ポンプフォーマーに充填したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄剤とは、皮膚の汚れや古い角質を除去するためのものである。ここでは、皮膚に塗布し軽く擦ることによって、固形化したものと一緒にそれらを除去するタイプのものをいう。
【0003】
従来の皮膚洗浄剤は、カチオン系界面活性剤とそれと反応して固形化するポリマーからなるものであった。例えば、特許文献1のような皮膚洗浄剤である。
【特許文献1】特開2005−187338
【0004】
この従来例は、皮膚に少し塗布し軽くマッサージすることによって消しゴムの屑状物を出し、それと共に汚れや古くなった角質を除去できるもので、洗浄できたことが視覚的に分かるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来例では、また市販されているものもすべて、皮膚に塗布しそれを摩擦するため、塗布した位置に残っていなければならない。水のようにすぐに垂れて落下するものでは、非常に使いづらい。
このため、従来のこの種の洗浄剤は粘度を高くし、垂れにくくしていた。しかし、粘度を上げるだけでは皮膚からの落下は軽減できない。また、粘度を高くすると、高分子が過剰に塗布されて返って効果を損ねていた。
【0006】
そこで、本発明は、過剰塗布にならないように、且つ垂れにくい洗浄剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明皮膚洗浄剤を完成したものであり、その特徴とするところは、皮膚に塗布し摩擦することにより、消しゴムの屑状物に変化しその屑状物と共に汚れや古くなった角質等を除去するものであって、少なくとも、水、カチオンと反応する反応基を有するポリマー、カチオン系界面活性剤を含有し、且つそのカチオン系界面活性剤が、下記化学式Iで示す4級アンモニウムである洗浄剤を、ポンプフォーマーに充填した点にある。
【化1】


ここで、R1は炭素数1〜18の炭化水素基、R2は炭素数8〜22の炭化水素基である。
【0008】
ここでカチオンと反応する反応基を有するポリマーとは、アニオン性の水溶性ポリマーであり、一般的にはカルボキシビニルポリマーである。これはアクリル酸系のモノマーが重合したものである。これも種々のものがあるが、カチオン系界面活性剤と反応し摩擦することにより消しゴムの屑状物(ゲル)になるものであればどのようなものでもよい。
【0009】
このポリマーの含有量は、本発明皮膚洗浄剤全体の0.1〜7重量%が適当である。0.1%以下ではゲルの生成が不十分であり、7%以上になるとゲルの粘度が高くなり使用し難い。
【0010】
このポリマーは、カチオンなら原則として何とでも反応するのであるが、本発明では、特別なものに限定している。
即ち、カチオン系界面活性剤が、前記化学式Iに示すハロゲン化アルキルアンモニウムである。
【0011】
これは、後述するポンプフォーマーによって適度に泡立つものを研究して見つけた結果である。ジメチルの部分がメチル基以外では、硬く(粘度が高く)なり泡立ちが悪くなる。また、長鎖の部分(R1)は、炭素数1〜18であり、R2は炭素数8〜22の炭化水素である。大きすぎると泡立ちが悪く、小さすぎると粘度が低くこれも泡立ちが悪くなる。
【0012】
これらのものは単独で使用しても、複数混合して使用してもよい。
これらの混合量(濃度)は、特別限定しないが、薄すぎて効果がなくなるか、粘度が高くなり後述するポンプフォーマーから泡となって出ないようになるまでの濃度である。分子が大きくなり、同じ濃度で粘度が高くなると濃度は下げなければならない。
【0013】
濃度としては、小さい分子では、0.2〜7重量%であり、大きな分子では0.05〜3重量%程度である。
粘度としては、泡立ちを考えると1000mPaS以下が好適である。
【0014】
上記の組成物をポンプフォーマーに充填し、そこから出して使用することが本発明のポイントである。
ここでいうポンプフォーマーとは、内容物を泡状にして出す容器であり、フロンや有機揮発性ガス等の高圧ガスを使用しないものをいう。このような容器は市販されておりどのようなものでもよい。
【0015】
本発明は、前記した組成物を泡状で出して皮膚上に載せるのである。このように泡状にすると、組成物自体の粘度が低く皮膚からすぐに流れ落ちるようなものでも、泡状にしているため、容易に皮膚の所定位置で保持される。
また、過剰塗布を防止することもできる。
【0016】
更に、上記の組成物には、他の成分として種々のものを混合してもよい。
例えば、炭の粉末である。炭粉末とは、炭を粉末にしたものでその製法は自由である。これは種々の加工を施したものでもよい。この炭の混合量は、限定はしないが水との混合が悪いため多くは混合できない。通常は、0.01〜3重量%程度である。
【0017】
また、この炭粉体に代えて、又は追加して多孔質シリカに内包されている炭の微粉末を用いてもよい。多孔質シリカに内包されている炭の微粉末とは、炭の微粉末をシリカでコーティングしたようなものである。炭の微粉末のサイズは、数百nm〜数百μm程度(混合物の平均粒径として)である。炭自体の原料は通常の木材だけでなく、竹やその他のもの等なんでもよい。
【0018】
シリカに内包させる方法は、特に限定はしない。例えば、炭の微粉末と、それと同程度のサイズのシリカ微粉末を混合する。混合比率は、重量比で、炭/シリカ=50〜1程度が好適である。これと別に純粋に水溶性カップリング剤(アルコキシチタネート等)を溶解して分散媒質を作る。微粒子と分散媒質を均質に混合し二次凝集粒子がないようにする。
【0019】
また、炭の効果をより視覚的に強調するため、他の黒色顔料や染料を混合してもよい。例えば、カーボン、いかすみ、グラファイトその他である。この混合量は、0〜3重量%程度である。
【0020】
更に、油剤とノニオン系界面活性剤を追加してもよい。これは、油剤によってエモリエント感を出すためである。またこの油剤を混合するため、ノニオン系界面活性剤も混合する。
【0021】
油剤としては、スクワラン、流動パラフィン、ホホバ油等の炭化水素系とミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル等のエステル系がある。エステルとしては水に不溶な炭素数(5以上)を有するものが好適である。
この油剤の含有量は、0.5〜10重量%である。0.5%以下では効果がほとんどなく、10%以上ではべとつき感がで、また混合も難しい。
【0022】
ノニオン系界面活性剤は、水に油剤を乳化させるために用いるもので、一種の乳化剤である。よって、本発明洗浄剤は乳化状態になり非常に使いやすい。またノニオン系にしているのは、前記したポリマーやカチオン系界面活性剤と反応するためイオン性のものが使用できないためである。
ノニオン系界面活性剤は、非イオン系であり親水性のものである。HLBで言えば、10〜18が好適である。10以下では添加してもほとんど効果がなく、添加しない場合とあまり変わらない。使用できるものとしては、ソルビタンオレエート、グリセリンステアレート等が挙げられる。
【0023】
このノニオン系界面活性剤の含有量は、本発明皮膚洗浄剤全体の0.1〜5重量%が適当である。0.1%以下では効果が不十分であり、5%以上は不要である。
【0024】
この洗浄剤の利点は、油剤が混合されているため、洗浄後にしっとりとした感じがある。また、耐水性も高いため濡れている部分でも消しゴムの屑状物が出やすい。
【0025】
また、上記の油剤とノニオン系界面活性剤に代えて、ノニオン系親油性界面活性剤とノニオン系親水性界面活性剤を混合してもよい。
【0026】
ノニオン系親油性界面活性剤は、HLBが2〜8であり、特に3〜7が好適である。例としては、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレングリコール(HLB5.8)、ポリオキシエチレン(3)ヒマシ油(HLB3.0)、ポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテル(HLB7.0)等がある。
このノニオン系親油性界面活性剤の含有量は、0.1〜5重量%である。0.1%以下では効果がほとんどなく、5%以上ではべとつき感がで、また混合も難しい。
【0027】
ノニオン系親水性界面活性剤は、HLBが12〜18であり、13〜17が好適である。例としては、ポリオキシエチレン(12)2級アルキルエーテル(HLB14.5)、ポリオキシエチレン(9)2級アルキルエーテル(HLB13.5)、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20EO)(HLB16.9)等がある。
このノニオン系親水性界面活性剤の含有量は、0.1〜5重量%である。0.1%以下では効果がほとんどなく、5%以上では混合が難しい。
【0028】
この洗浄剤の利点は、ノニオン系親油性界面活性剤が含まれているため、洗浄後にしっとりとした感じがある。耐水性も高いため、濡れている部分でも使用できる。溶液状(ジェル状も含む)であるため肌への馴染みがよい。
【0029】
更に、上記の油剤とノニオン系界面活性剤に代えて、両性界面活性剤を混合してもよい。
両性界面活性剤とは、分子内に陽イオン活性基と陰イオン活性基を含む界面活性剤である。両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等があり、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキルーN−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド液、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン液等があげられる。どれも使用できるが、皮膚への刺激が少ないことからアルキルベタインが好ましい。
【0030】
この両性界面活性剤の混合量は、0.1〜5重量%が好適であり、0.5〜3重量%がさらに好適である。0.1以下では効果が小さく、5以上では泡立ちが多くなり、反応性が悪くなる。この両性界面活性剤を加えることによって、皮膚が少々濡れていても消しゴムの屑状物が非常に出やすく、耐水性が向上する。これは、入浴中に使用できるという大きなメリットをもたらす。
また、カチオン活性剤と比べて刺激が少なく安全性も高い。
【0031】
更に、親水性増粘剤やグリセリンのような多価アルコールを混合してもよい。親水性増粘剤としては、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、メチルセルロース等がある。この親水性増粘剤を混合すると、洗浄剤自体の安定性がよくなるだけでなく、肌に保湿効果を与え、消しゴムの屑状物も出やすくなる。増粘剤の混合量は、特に限定はしないが、0.01〜5重量%程度が好適である。
【0032】
多価アルコールの効果としては、保湿効果と、消しゴムの屑状物がさらに出やすくなるためである。多価アルコールとしては前記グリセリンだけでなく、エチレングリコールやポリエチレングリコール等が使用できる。混合量としては1〜20重量%であり、3〜15重量%がより好適である。
【0033】
以上の成分を水を加えて100重量%にして完成であるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の成分を加えてもよい。例えば、植物抽出物、ビタミン類、着色剤、香料等である。
【0034】
本発明洗浄剤の使用法は、本洗浄剤をポンプフォーマーから皮膚に適量、塗布し軽くマッサージするように肌に擦りつける。このようにすると、液剤が固形化し消しゴムの屑状になる。それが、汚れや古くなった角質をまきこんで皮膚から除去する。
その後は屑状物を水やぬるま湯で洗い流す。これは簡単にできる。そして、通常の洗浄後の手入れはしてもしなくてもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明皮膚洗浄剤には次のような効果がある。
(1) 洗浄剤が泡状で塗布されるため、流れ落ちることが少ない。よって、思いの場所に塗布できる。
(2) 少量が的確に塗布できるので過剰塗布がない。
(3) 流れ落ちることが少ないため、ゆっくりと作業ができる。
(4) 泡状であるため、見た目で塗布量や場所がわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
まず、表1に活性剤としての化学式Iのアンモニウムの種々の例を示す。ここでは、R1、R2とも、飽和で直鎖の炭化水素である。
【表1】

【0038】
表1の活性剤を1種又は2種用いて、カチオンと反応する反応基を有するポリマー及び水と混合して実施例を作成した。ここでは、カチオンと反応する反応基を有するポリマーとしてノベオン社の「カーボポール940(カルボキシビニルポリマー)」を用い、すべてに2重量%混合した。
これらの実施例をポンプフォーマーから泡状に押し出し、少し皮膚に塗布し、その上から軽くマッサージして固形化するようにした。そして種々の効果を判断した。実施例の混合割合とその結果も合わせて表2及び表3に示す。
【表2】


【表3】

【0039】
表2及び表3で泡立ちにおいては、◎は「非常によい」、○は「よい」、△は「泡になるが流れやすい」、×は「泡にならない」を表す。
泡の持続性においては、◎は「長期間起立している」、○は「比較的長期間存在する」、△は「単期間で消える」、×は「泡にならない」を表す。
消しゴムの屑状物の発生状況において、◎は「非常によい」、○は「よい」、△は「屑状にはなるが効果は少ない」を表す。
【0040】
比較例1では、活性剤として本発明の活性剤ではなく(4級アンモニウム塩ではない)、ジオクチルアミンを使用した。比較例2は塗布剤は実施例1と同じであるが、ポンプフォーマーからフォーム状に押し出さず、液としてそのまま塗布した例である。
【0041】
比較例1では、ポンプフォーマーから押し出しているにもかかわらず、ほとんど泡状にならなかった。よって、本発明の趣旨である「泡状にして流れ落ちないようにする」ということはできなかった。
また、比較例2では、実施例1と同じ洗浄剤を泡立てずに塗布しているため、すぐに流れ落ちた。落ちないようにすれば屑状物の出方等は同様である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に塗布し摩擦することにより、消しゴムの屑状物に変化しその屑状物と共に汚れや古くなった角質等を除去するものであって、少なくとも、水、カチオンと反応する反応基を有するポリマー、カチオン系界面活性剤を含有し、且つそのカチオン系界面活性剤が、下記化学式Iで示す4級アンモニウムである洗浄剤を、ポンプフォーマーに充填したことを特徴とする皮膚洗浄剤。
【化1】


ここで、R1は炭素数1〜18の炭化水素基、R2は炭素数8〜22の炭化水素基である。
【請求項2】
該洗浄剤の粘度が1000mPa・s以下である請求項1記載の皮膚洗浄剤。

【公開番号】特開2008−222641(P2008−222641A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63982(P2007−63982)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(391027929)三粧化研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】