皮膚特性測定装置および皮膚特性測定プログラム
【課題】皮膚の物理的状態を客観的に評価することを可能にする
【解決手段】皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置は、筐体と、前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備える。前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である。
【解決手段】皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置は、筐体と、前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備える。前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置および皮膚特性測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の硬さや弾性に異常をきたす疾病を診療する場合、検者が皮膚を摘み上げて皮膚の硬さを評価している。また、上記の疾病に対して薬物治療を行った際の効果判定も主治医の主観によるところが多い。これは、皮膚の硬さや弾性等の客観的かつ定量的な評価は困難であるためである。しかし、医療のみならず皮膚整形や美容の分野においても、皮膚の硬さ、弾性、粘性等の物理特性を客観的に測定することが求められている。
【0003】
そのため、皮膚の硬さを測るための装置として、種々のものが開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1には、皮膚に圧力を加え、その圧力による皮膚の変形量を検出することにより、皮膚の弾性を測定する装置が開示されている。また、特許文献2には、対物接触振動子に設けられた振動検出部の出力信号を、増幅した後、対物接触振動子に強制帰還させて成る自励発振回路により物質の硬さを感知する方法が開示されている。対物接触振動子に物体が接触すると自励発振回路の発振周波数が変化するので、この変化量を測定することにより、物質の硬さが得られる。
【特許文献1】特開平2−134131号公報
【特許文献2】特開平5−322731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、皮膚は、表皮、真皮、皮下脂肪組織など、異なる成分からなる層状の組織であり、複雑な力学的挙動を示す。そのため、測定手段が異なれば、得られる測定結果も異なる。そして、異なる手段で測定された測定結果の間で相関関係が見られない場合が少なくない。すなわち、上記の装置によってもなお、皮膚の硬さ等の物理的状態を客観的に評価するのは困難であった。そのために、例えば、診療現場での皮膚の硬さの評価は、装置を用いた測定ではなく、依然として検者が皮膚を摘み上げて硬さを判断することにより行われている。
【0005】
ゆえに、皮膚の物理的状態を客観的に評価することを可能にする皮膚特性測定装置および皮膚特性測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる皮膚特性測定装置は、皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置であって、筐体と、前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備え、前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である皮膚特性測定装置。
【0007】
上記構成において、圧子は、圧力を加える方向に平行な面の断面形状が矩形である。変換部は、この圧子で被計測体に圧力を加えた場合の圧子の動きを検出して被計測体の物理的特性を示す信号を生成する。これにより、皮膚の物理的状態を客観的に評価するのに適した物理特性が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚の物理的状態を客観的に評価することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態において、前記圧子の前記一軸方向に垂直な面における断面形状は円であり、前記円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さいことが好ましい。
【0010】
このように圧子を形成することで、皮膚の物理的状態を客観的に評価するのにさらに適した物理特性が得られる。
【0011】
本発明の実施形態にかかる皮膚測定装置は、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位について記録する記録部と、前記複数の部位のうち、測定対象となる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、前記選択部で受け付けたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記変換部が生成した物理特性と、当該取得した基準値との関係を示す値を計算する計算部と、前記計算部により計算された値を出力する出力部とをさらに備えてもよい。
【0012】
計算部により、実際の測定値である変換部で生成された物理特性と、測定対照部位の基準値との関係を示す値が計算される。この値が出力部によって出力されるので、測定部位の基準値に対する相対値が出力されることになる。この相対値により、皮膚の物理特性を、測定部位の基準値に対して相対的に評価することが可能になる。すなわち、測定部位に応じた適切な評価を可能にする値が出力されることになる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる皮膚測定装置は、前記圧子に対して前記一軸方向に電磁力を作用させるコイルと、前記圧子の位置を検出する位置検出部とを備え、前記変換部は、前記圧子が皮膚に圧力を加える際の前記コイルによる電磁力の変化と、前記位置検出部が検出した前記圧子の位置の変化に基づいて、物理特性を算出する態様とすることができる。
【0014】
このように、変換部は、圧子の皮膚に圧力を加える動作において、圧子が皮膚に作用する力と、圧子の位置の時間的変化を用いて、物理特性を算出する。そのため、圧子が皮膚に圧力を加えるという一回の動作で、例えば、皮膚の硬さ、粘性、弾性および粘弾性等の複数の物理特性が求められる。
【0015】
本発明の実施形態における皮膚特性測定装置は、前記記録部、前記選択部、前記計算部および前記出力部は、前記筐体と通信可能な操作端末に含まれる構成とすることができる。
【0016】
本発明の実施形態における皮膚特性測定装置において、前記計算部は、前記変換部で生成された皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、前記皮膚特性測定装置は、前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備えてもよい。
【0017】
上記構成により、複数の被計測体についての皮膚の物理特性を示すデータが蓄積されると、蓄積されたデータによって、基準値が計算される。そのため、皮膚の物理特性を示すデータが蓄積されるに従って、自動的に基準値を計算することができる。
【0018】
本発明の実施形態にかかる皮膚特性測定装置は、皮膚の物理特性を測定するセンサから皮膚の物理特性を示す信号またはデータを受け付け、前記信号またはデータを処理して出力する皮膚特性測定装置であって、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部と、前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算部と、前記計算部により計算された値を出力する出力部とを備える。
【0019】
本発明の実施形態において、前記計算部は、前記センサから受け付けた皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、皮膚特性測定装置は、前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える態様とすることができる。
【0020】
本発明の実施形態にかかる皮膚特性測定プログラムは、皮膚の物理特性を測定するセンサと、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部とにアクセス可能なコンピュータに処理を実行させる皮膚特性測定プログラムであって、前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択処理と、前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算処理と、前記計算処理により計算された値を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示す測定装置10は、測定器1(探触子とも称される)および操作端末2で構成される。測定器1は、無線IF(無線インタフェース)部3、変換部4およびセンサ部5を備える。操作端末2は、無線IF部21、記録部22、計算部23、選択部24、出力部25、UI(ユーザインタフェース)部26、入力装置27および表示装置28を備える。
【0023】
測定器1および操作端末2は、それぞれ別の筐体で形成される。例えば、測定器1は、検者が握りやすい形状(例えば、円筒状)の筐体で形成される。操作端末2は、例えば、PDA(Personal Digital Assistance Device)のような携帯型コンピュータで形成される。
【0024】
<測定器1の構成>
測定器1において、センサ部5は、被計測体に接触して圧力を加えるための圧子と、圧子に加圧するための手段を備える。変換部4は、センサ部5の動作を制御するとともに、圧子の動きを検出して、被計測体の物理特性を示すデータを生成する。この物理特性は、例えば、弾性係数、粘性係数、緩和時間、粘弾性率(viscoelastic ratio)および硬さ(硬度)等である。なお、変換部で得られる物理特性は、これらに限られず、被計測体に圧力を加えた場合の動きから計算される物理特性であればよい。なお、センサ部5および変換部4の詳細は後述する。
【0025】
無線IF部3は、測定器1と操作端末2との間の無線データ通信を可能にするインタフェースである。例えば、無線IF部3は、変換部4が生成したデータを無線通信により操作端末2へ送信する。
【0026】
<操作端末2の構成>
操作端末2において、表示装置28および入力装置27の機能は、例えば、PDAが備えるタッチパネル機能付き表示装置により実現される。その他の入力装置27として、例えば、トラックボールなどのポインティングデバイス、ボタン、キーボード、その他入力デバイスが用いられてもよい。また、UI部26は、表示装置28へのデータ出力および入力装置27からデータ入力を可能にするGUIの機能を有する。
【0027】
記録部22は、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する。ここで、基準値は、例えば、健常者の皮膚の硬さの平均値または標準偏差のように、所定のカテゴリに属する複数の人の皮膚の物理特性の代表値または散布度(散らばり度合い)の値である。基準値は、例えば、複数の人の皮膚の測定値に対して統計処理することにより算出される。基準値は、予め記録部22に記録される。下記表1は、記録部22に記録される基準値のデータ内容の一例を示す表である。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1に示す例では、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の平均および標準偏差の値が、部位ごとに記録されている。この平均は、例えば、健常者20人の平均値および標準偏差とすることができる。上記表1に示す部位は、全身を17の部位に分類した場合の各部位である。なお、上記表1は、一例であり、物理特性や基準値の種類や部位は、これに限られない。物理特性の種類、基準値の種類、部位の分類の仕方、または、どの部位について基準値を記録するかといった事項は、測定の目的によって適宜選択することができる。
【0030】
選択部24は、複数の部位(上記表1の例では17の部位)のうち、どの部位が測定部位となるかを示すデータの入力を受け付ける。ここで、測定部位は、測定器1により測定しようとする部位である。例えば、選択部24は、UI部26へ指示して、記録部22に記録された17の部位を、選択可能な状態で表示装置28へ表示させる。この表示を見た検者(ユーザ)は、入力装置27を用いて、複数の部位のうちで測定しようとする部位を選択することができる。選択部24は、検者の選択した部位(測定部位)を、UI部26を介して受け取り、計算部23へ通知する。
【0031】
無線IF部21は、測定器1と操作端末2との間の無線データ通信を可能にするインタフェースである。例えば、無線IF部21は、測定器1で測定された物理特性を示すデータ(測定データ)を、測定器1の無線IF部3から受信する。無線IF部3および無線IF部21は、例えば、bluetooth、NFC(Near Field Communication)、HomeRF(Home Radio Frequency)、無線LAN(IEEE 802.11b)、UWB(Ultra Wide Band)、Wibree、またはWirelessUSB(Wireless Universal Serial Bus)等のような無線通信規格を用いて無線通信を行うことができる。
【0032】
計算部23は、選択部24で、受け付けた測定部位の基準値を記録部22から読み出す。そして、当該取得した基準値と、無線IF部21から受け取った測定データとの関係を示す値を計算する。例えば、基準値と測定値との相対的な関係を示す値が計算される。例えば、測定データとして、右手背の皮膚の硬さの測定値Hm-1が得られた場合、上記表1の右手背の皮膚の硬さの平均値HAV―1および標準偏差HSD―1を用いて、下記式(1)により、上記相対関係を示す値Zが計算される。
Z = (Hm-1−HAV―1)/HSD―1 ・・・(1)
【0033】
出力部25は、計算部23で計算された値を、測定データとともに、表示装置28へ表示するようにUI部26に指示する。これにより、表示装置28には、測定器1で測定された部位の物理特性を示す値と、その値の基準値に対する相対値とが表示される。これにより、検者は、測定値が基準からどの程度離れているかを知ることができる。その結果、皮膚の物理特性の客観的かつ定量的な評価が可能になる。
【0034】
測定器1は、図示しないが、マイクロプロセッサまたはICチップ等のコンピュータまたは電子回路を内蔵する。測定器1の変換部4および無線IF部3の機能は、このようなコンピュータが所定のプログラムを実行するか、あるいは電子回路による信号処理により実現される。また、操作端末2の無線IF部21、計算部23、選択部24、出力部25、UI部26の各機能は、操作端末2の備えるコンピュータが所定のプログラムを実行することによって実現される。操作端末2は、例えば、市販のPDAに上記各機能を実現するためのプログラムをインストールすることにより構築することができる。そのため、上記各機能を実現するためのプログラムおよびプログラムを記録した記録媒体も本発明の実施形態の一例である。
【0035】
なお、本発明の測定装置の構成は、上記の例に限られない。例えば、変換部4は、操作端末2が備えてもよい。その場合、測定器1からは、検出された圧子の動きを示す信号と、圧子に圧力を加えるための制御信号が操作端末2へ送信される。
【0036】
また、上記構成のように、操作端末2をPDAのような携帯性を有する端末とすることで、検者が測定装置を携帯しやすくなる。そのため、例えば、臨床現場において、被測定者がいるベッドサイドまで測定装置を運搬することが容易になる。または、スキンケア用品の販売現場等において、手軽に顧客の皮膚の物理特性測定をすることが可能になる。
【0037】
さらに、測定器1と操作端末2が無線により通信する構成なので、検者は、測定器1の移動範囲や向きなどの制約を受けることなく、被検者の周囲を自由に動きながら測定することが可能になる。
【0038】
<センサ部5の詳細な説明>
次に、センサ部5の構成例を説明する。図2は、センサ部5の断面図である。センサ部5は、内部に空間を有する円筒形状のカバー(筐体)17と、カバー17内部の空間に、ばね19を介して前記円筒の中心軸の方向に移動可能に設けられた測定ヘッド14を備える。測定ヘッド14の円筒の中心軸は、カバー17の円筒の中心軸と同じである。また、カバー17の内側側面の、測定ヘッド14の移動経路上には、スイッチ18が設けられている。測定ヘッド14とカバー17間に力が働くことにより、ばね19が一定の長さになると、スイッチ18が掛かるようになっている。
【0039】
測定ヘッド14も内部に空間を有する円筒形状である。測定ヘッド14の内部には、さらに、前記中心軸方向に移動可能に設けられた圧子13が設けられている。圧子13の先端部分は、カバー17および測定ヘッド14の外側に露出するように設けられている。これにより、圧子13の先端部分が、被計測体に接触して圧力を加えることができる。
【0040】
圧子13も、カバー17と中心軸を同じくする円筒形状である。すなわち、圧子の先端部分においては、移動方向に平行な平面における断面の形状は矩形であり、移動方向に垂直な平面における断面は円形である。そして、圧子13の移動方向に垂直な平面における円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さくなるように圧子が形成されることが好ましい。なお、圧子13の先端の形状および大きさの詳細については後述する。
【0041】
圧子13の先端部分とは反対側のカバー17内部の側の端には、永久磁石16が設けられている。測定ヘッド14には、圧子13の永久磁石16を取り囲むように電磁コイル15が固定されている。そのため、電磁コイル15の電流または電圧が変化することにより、圧子13に前記中心軸方向の電磁力が作用する。すなわち、電磁コイル15および永久磁石16が加圧手段となっている。
【0042】
圧子13の円筒側面には、位置識別マーク11が付されている。測定ヘッド14には、圧子13の位置識別マーク11の位置を測定する位置センサ12が設けられている。これにより、圧子13の動き、すなわち圧子13の位置の時間的変化が検出される。
【0043】
図2においては図示していない変換部4は、電磁コイル15の電流の制御を制御することにより、圧子13に作用する(すなわち、被計測体に作用する)電磁力の発生及び除去のタイミングを制御する。また、変換部4は、位置センサ12により検出された位置を読み込んで、被計測体に圧子13の電磁力が作用したときの、位置識別マーク11の位置の時間変化(速度および加速度)を計算する。変換部4は、計算した値を用いて、被計測体の物理特性を示すデータを生成することができる。
【0044】
<センサ部5および変換部4の動作例>
ここで、皮膚の物理特性を測定する場合の、センサ部5および変換部4の動作例を説明する。測定時には、検者により、スイッチ18が掛かるまで、測定ヘッド14が被計測体の表面に押し付けられる。図3は、測定ヘッド14が被計測体Sに押し付けられスイッチ18が掛かっている状態を示す図である。
【0045】
この状態で、変換部4は、電磁コイル15の電流を制御して、電磁コイル15と永久磁石16との間に電磁力を発生させる。これにより、圧子13が被計測体Sを押す力を、短時間でゼロから所定の目標値まで上げる。圧子13から力を受けると被計測体Sはくぼみ始め、圧子13の押す力と被計測体Sの弾性による力がつりあうと、圧子13は停止する。この押圧過程では、圧子13は常に被計測体Sに接触している。そのため、押圧過程で、位置センサ12が圧子13の位置識別マーク11の位置を検出することにより、被計測体Sの変形量の時間的変化と、最終的なくぼみ量が測定される。
【0046】
圧子13と被計測体Sとの力がつりあった状態を一定時間保った後、変換部4は、突然、電磁力をゼロに下げる。電磁力が除去されると、被計測体Sのくぼみは元の状態へ戻る。この回復過程においても、位置センサ12が圧子13の位置識別マーク11の位置を検出する。
【0047】
例えば、ケルビン・フォークトモデルを用いると、上記の回復過程において下記式(2)が成り立つ。
m(d2γ/dt2)=Gγ+η(dγ/dt) ・・・(2)
上記式(2)において、mは圧子13の質量、γは被計測体Sのひずみ量、tは時間、Gは弾性係数、ηは粘性係数である。上記式のひずみ量γと時間tとの関係は、位置センサ12の検出した位置によって測定される。変換部4は、この測定されたひずみ量γと時間tとの関係を用いて、上記(2)の数値解析により、弾性係数Gおよび粘性係数ηを算出できる。なお、緩和時間は、例えば、η/Gと計算することができる。
【0048】
粘弾性率VERは、弾性による応力をS1、粘性による応力をS2とすると、例えば、下記式(3)で計算することができる。下記式により計算されるVERは、粘性に対する弾性の優位性を示すパラメータと言う事ができる。
【0049】
VER = S1/(S1+S2) ・・・(3)
さらに、硬さを示す値は、例えば、圧子13と被計測体Sとの力がつりあった状態で被計測体Sに生じたくぼみの深さから計算することができる。例えば、圧子13が皮膚に進入した深さが硬さに反比例すると想定して、硬さを計算することができる。一例として、圧子13が皮膚に進入した深さとデュロメータ硬度計により測定される硬度との対応関係を予め求めておき、圧子13が皮膚に進入した深さを、この対応関係を用いてJIS規格のデュロメータ(Durometer)の硬度に変換することができる。
【0050】
以上のような動作により、皮膚の物理特性を示す測定データが得られる。上記の動作では、圧子13を被計測体Sの表面に一定の速度で衝突させ、被計測体Sに変形を与えたときの圧子13の挙動を、位置センサ12が検出することにより、被計測体Sの変形過程を測定する。変換部4が、粘弾性体の解析モデルであるケルビン・フォークトモデルに基づいた波動分析をすることにより、弾性係数、粘性係数、粘弾性率および緩和時間を算出することができる。また、変換部4は、被計測体Sに生じたくぼみの深さから、JIS規格デュロメータ硬度計に対応する硬さを算出することもできる。
【0051】
なお、センサ部5の構造および変換部4の処理は上記例に限られない。例えば、センサ部5にデュロメータを採用し、圧子13の押し込みの深さにより、硬さ測定してもよい。
【0052】
<圧子13の先端部分の形状および大きさ>
図4(a)および図4(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの前腕の皮膚の硬さを測定した場合の測定値と、従来の方法で評価された皮膚の硬さ(スキンスコア)との相関性を示すグラフである。図4(a)(b)に示すグラフにおいて、縦軸は圧子13を用いた測定で得られた硬さの、スキンスコアに対する相対値を示す。横軸は従来の方法で評価されたスキンスコア(mRSS(modified Rodnan skin score))を示す。この縦軸の相対値は、スキンスコア=0と判断された皮膚の硬さの測定値を1とした場合に、スキンスコア1、2、3と判断された皮膚の測定値が、それぞれ何倍になったかを表す値である。
【0053】
図4(a)のグラフは、先端形状が円柱である圧子を用いた測定の結果を示し、図4(b)のグラフは、先端形状が球である圧子を用いた測定の結果を示している。また、図4(a)および図4(b)のグラフにおいて、丸、ひし形、三角形、正方形のプロットは、圧子の押圧に垂直な方向の断面形状における直径が2mm、4mm、6mm、8mmである場合の測定結果をそれぞれ示している。
【0054】
図4(a)および図4(b)のグラフに示されるように、圧子を用いた測定結果とmRSSとの相関は、圧子の形状および大きさにより変化する。これらのグラフにおいて、スキンスコアの上昇にしたがって、相対値が大きく変化するほど皮膚硬度の違いに対する感度がよいことになる。下記表2は、図4(a)および図4(b)に示す相対値の各スキンスコア群間の統計学的有意差の有無を示す表である。下記表2において、スキンスコア群間の相対値に有意差がある場合を「*」、ない場合を「NS」で示している。
【0055】
【表2】
【0056】
図4(a)、(b)および表2に示す結果から、圧子の先端が直径2mmと6mmの円柱である場合に全てのスキンスコア群間で相対値に有意差が見られる。なお、相対値の差は、圧子の先端が直径2mmの円柱である場合が最も大きい。その他の圧子では、異なるスキンスコア間での相対値の違いを統計学的有意差をもって検出しえない場合がある。この傾向は、図4(a)および図4(b)に示す前腕の皮膚の測定結果だけでなく、他の部位の測定結果でも見られる。
【0057】
例えば、図5(a)および図5(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの手背の皮膚の硬さを測定した場合の測定結果と、スキンスコアとの相関性を示すグラフである。図5(a)のグラフは、先端形状が円柱の圧子を用いた測定の結果を示し、図5(b)は、先端形状が球である圧子を用いた測定の結果を示している。これらのグラフからも、圧子の先端が直径2mmの円柱である場合に、mRSSとの相関性が最もよいことが示されている。一方で、直径2mmの円柱以外の形状および大きさの組み合わせに掛かる圧子の測定結果では、手背については、mRSSとの相関が必ずしもよくなっていない。例えば、図5(a)の6mm円柱の測定結果では、スキンスコア群間で相対値に有意差が表れない場合が存在する。
【0058】
なお、断面形状の直径が0.5mmおよび1mmの圧子は、皮膚に接触したときに、被検者に看過できない痛みが伴うため、皮膚測定には適していない。
【0059】
したがって、圧子13は、押圧方向に延びる柱状であることが好ましい。すなわち、圧子13の先端部分の押圧方向に平行な面内における断面は矩形であることが好ましい。特に、圧子13は円柱であることが好ましい。すなわち、押圧方向に垂直な面における断面形状は円であることが好ましい。
【0060】
圧子13の押圧方向に垂直な断面における直径は、1mmより大きく、4mmより小さいことが好ましい。すなわち、圧子13の押圧方向に垂直な断面の面積Sの好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(4/2)2π(mm2)である。より好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(3/2)2π(mm2)であり、さらに、好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(2/2)2π(mm2)とすることができる。そして、Sは略12πmmであることが特に好ましい。
【0061】
圧子13の押圧方向に垂直な断面積が小さい方が感度はよくなる傾向がある可能性は否定できない。しかし、断面積が小さくなればなるほど、測定される患者の苦痛が増すことになる。上記図4、5に示した測定の過程において、断面の直径が1mmの場合は患者から痛いとの苦情がでたため測定を放棄している。
【0062】
このような形状および大きさの圧子を用いて皮膚の物理特性を測定することによって、従来の評価による結果と相関性がよい測定結果が得られ、かつ、客観的かつ定量的に、皮膚の物理特性を評価することが可能になる。
【0063】
なお、本実施形態では、圧子の押圧方向における断面形状は円である場合の例を説明したが、断面形状は必ずしも厳密な真円である必要はない。断面形状は、例えば、楕円、半円もしくは多角形等であってもよい。すなわち、断面形状の面積が上記好ましい範囲であれば、必ずしも円である必要はない。
【0064】
<操作端末2の動作例>
図6は、操作端末2の動作例を示すフローチャートである。図2に示す処理では、まず、選択部24は、記録部22から、選択可能な部位を読み出して、UI部26に表示装置28へ表示させる(S1)。例えば、選択部24は、上記表1の部位の列に記録された17の部位を示すデータを取得し、UI部26に渡す。その際、選択部24は、各部位を選択可能な状態で表示するようにUI部26に指示する。
【0065】
図7は、選択可能な17の部位を選択可能な状態で表示した画面の一例を示す図である。図7に示す例では、ヒトの体を17の部位に分割した画像が表示されている。検者は、例えば、スタイラスペンまたは指で、画面上の測定したい部位を触ることで選択することができる。また、図7に示す画面では、「測定部位をクリックして下さい」という検者へ部位選択を促すメッセージM1と、被検者の氏名およびIDをそれぞれ入力するための入力エリアT1、T2が表示されている。
【0066】
図7で、測定部位が選択されると(S2でYes)、選択部24は、検者へ測定操作を促すメッセージを画面に表示する。例えば、図7に示すメッセージM1が、「測定部位をクリックして下さい」から「プローブを測定部位にのせて下さい」に変更される。これにより、検者が、測定器1(プローブ)を測定部位に接触させると、測定器1において自動的に測定が開始される。そして、物理特性を示す測定データが生成され、操作端末2へ無線で送信される(S3)。以下では、一例として、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の測定値が、測定データとして操作端末2へ送信される場合について説明する。
【0067】
さらに、計算部23は、S1で選択された部位の基礎データを記録部22から取得する(S4)。ここで取得される基礎データは、選択された部位の物理特性の基準値を示すデータである。例えば、記録部22に上記表1に示したデータが記録されている場合、選択された部位の、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の平均および標準偏差が読み出される。
【0068】
そして、計算部23は、測定器1から受信した測定データが示す測定値と、基準データが示す基準値との関係を示す相対値(Z−score)を計算する(S5)。例えば、基準値が、上記表1に示したように、健常者の平均値と標準偏差である場合、Z−scoreは、下記式(4)で計算される。
【0069】
Z−score=(測定値−健常者の平均)/(健常者の標準偏差) ・・・(4)
Z−scoreは、例えば、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率各々について計算される。なお、相対値は、上記式で計算されるZ−scoreに限られない。
【0070】
Z−scoreが計算されると、出力部25は、測定値およびZ−scoreを表示装置28へ表示するようUI部26に指示する(S6)。図8は、測定結果を表示する画面の一例を示す図である。図8に示す例では、測定部位と、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率各々の測定値およびZ−scoreとが表示されている。このように、測定値とともに、Z−score(相対値)を表示することで、検者は、測定部位の基準値に対する相対的な評価が可能になる。皮膚の硬さは、身体の部位によって異なる傾向がある。例えば、ヒトの腹部の皮膚は、手背の皮膚に比べて柔らかい傾向がある。測定値のみの表示だと、その値が、例えば、健康時に比べて異常なのかどうか判断するのが難しい。しかし、基準値に対する相対値を表示することで、この判断が容易になる。
【0071】
例えば、皮膚の硬さについて、Z−scoreに基づいて次のように評価をすることができる。Z−scoreが−1から+1の間である場合は普通、+1から+2の間の場合はやや硬い、+2から+4の場合は硬い、+4以上の場合は非常に硬いと判断することができる。また、上記のような基準で、Z−scoreに基づき判断結果を自動的に計算することもできる。
【0072】
以上のS1〜S6の処理が、検者からの終了を指示する入力があるまで(S7でYES)、繰り返される。上記の動作および画面は実施形態の一例であり、本発明の実施形態はこれに限られない。
【0073】
図9は、測定結果を示す画面の他の例を示す図である。図9に示す例では、ヒトの体を17の部位に分割した画像が表示されている。それぞれの部位にZ−scoreに対応した長さの棒グラフとZ−scoreが表示されている。棒グラフは、対応するZ−scoreの値がプラスかマイナスかを識別できるように表示される。図9に示す例では、プラスの場合は斜線パターンで、マイナスの場合は白抜きで表示されているが、例えば、色を変えて表示することもできる。画面右下の「Toral score = 46.54」は、17箇所の部位のZ−scoreの合計値の表示である。画面左上には、日付、被検者の氏名およびIDが表示される。
【0074】
また、未測定の部位は、測定済みの部位と区別可能な態様で表示される。図9に示す例では、未測定の部位がドットパターンで表示されている。なお、検者が未測定の部位をタッチすることで、測定部位として選択できる状態で表示されてもよい。
【0075】
画面には、さらに、表示する物理特性の種類、すなわち「硬さ」「弾性係数」「粘性係数」「緩和時間」および「粘弾性率」を選択するためのボタンB1〜B5が表示されている。検者が所望の物理特性のボタンをタッチすると、タッチされたボタンの物理特性のZ−scoreに対応する棒グラフが表示される。図9は、「硬さ」が選択された場合の表示例を示している。
【0076】
その他、画面には、保存ボタンB6、印刷ボタンB7、および画面遷移のための戻るボタンB8、進むボタンB9が表示される。保存ボタンB6は、測定結果およびZ−scoreのデータを保存する処理を指示するためのボタンである。例えば、検者が保存ボタンB6をタッチすると、ファイル名と保存場所を入力するための画面が表示される。なお、測定結果およびZ−scoreは、日付および被検者のIDと関連付けられて保存されてもよい。測定結果およびZ−scoreは、例えば、記録部22に保存される。
【0077】
印刷ボタンB7は、操作端末2に接続されたプリンタに、測定結果を印刷するためのボタンである。戻るボタンB7がタッチされると、例えば、図7に示した、測定部位および被検者の氏名を入力するための画面に遷移する。進みボタンB8がタッチされると、例えば、未測定の部位を選択するための画面に遷移する。
【0078】
図9のように、各部位ごとの基準値に対する相対値(Z−score)を、全部位について1画面上に表示することで、検者は、例えば、皮膚の物理特性が異常をきたしている部位を、素早く把握することが容易になる。
【0079】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図である。図10に示す測定装置10aにおいて、図1と同じブロックには同じ番号を付す。本実施形態において、操作端末2aは、図1に示す操作端末2に対して、評価入力部31および解析部32をさらに備える構成である。その他の機能ブロックは図1と同様である。
【0080】
評価入力部31は、出力部25が、一人の被検者の測定結果およびZ−socoreを表示させた後に、その被検者に対する評価を示す評価データの入力を、UI部26および入力装置27を介して受け付ける。入力された評価データは、測定結果およびZ−socoreと対応付けて、記録部22に記録される。被検者に対する評価を示すデータには、例えば、特定の疾病を患っているか否かといった被検者に対する診断結果が含まれる。具体的には、被検者が強皮症を患っているか否か、あるいは、びまん型(diffuse type)強皮症、または限局型(limited cutaneous)強皮症等の疾病を示すデータ等が挙げられる。
【0081】
下記表3は、評価入力部31により記録部22に記録される内容の一例を示す表である。
【0082】
【表3】
【0083】
上記表3に示す例では、被検者のID、測定を行った日付、評価データ、並びに各部位の測定値およびZ−scoreが対応付けられて1レコードとして記録されている。上記表3に示すように、複数の被検者の測定による測定結果および評価結果が記録部22に蓄積される。なお、記録されるデータ形式は、上記表3のようなテーブル形式に限られず、例えば、CSVデータ等でもよい。また、上記表3の項目の他に、年齢、性別など、被検者の属性や特性を示すデータ、もしくは、診察履歴、治療履歴、投薬履歴等を示す臨床データも対応付けて記録されてもよい。
【0084】
解析部32は、記録部22に記録された複数の被検者の測定結果を読み出して解析し、解析データを生成して記録部22に記録する。例えば、解析部32は、複数の被検者の測定値の平均、標準偏差、分散等の統計量を計算する。
【0085】
具体的には、解析部32は、上記表3の評価データが「びまん型強皮症」または「限局型強皮症」であるレコードの測定値(硬さ)の平均を部位ごとに計算する。これにより、強皮症患者の平均が得られる。さらに、解析部32は、健常者の測定値の平均および標準偏差も部位ごとに計算する。そして、強皮症患者の平均と、健常者の平均との相対関係を示す値(相対値)を計算し、解析データとして記録する。例えば、下記式(5)により、上記相対値が計算される。下記式(5)では、相対値として、強皮症患者の平均が健常者の平均から標準偏差いくつ分離れているかを示す値が計算される。
(強皮症患者の平均−健常者の平均)/健常者の標準偏差・・・(5)
【0086】
図11および図12は、解析データの表示画面例を示す図である。図11では、強皮症患者20人の皮膚の硬さの平均の、健常者の平均に対する相対値が部位ごとに表示されている。図12は、限局型強皮症患者10人の皮膚の硬さの平均の、健常者平均に対する相対値の表示例を示す図である。図11および図12のような画面を表示することにより、例えば、強皮症あるいは限局型強皮症の患者に特有の皮膚の状態を把握することが可能になる。
【0087】
また、解析部32は、記録部22に蓄積された測定結果のデータを用いて、上記のように、健常者の平均および標準偏差を部位ごとに計算し、計算した値を基準値として記録してもよい。すなわち、解析部32は、複数の被検者の測定結果に基づいて、各部位の基準値を計算し、計算した値で基準値を更新してもよい。これにより、測定結果のデータの蓄積されるにしたがって、基準値が妥当な値に近づいていくことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の実施の形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図
【図2】センサ部の断面図
【図3】測定ヘッドが被計測体に押し付けられスイッチが掛かっている状態を示す図
【図4】(a)および(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの前腕の皮膚の硬さを測定した場合の測定値と、従来の方法で評価された皮膚の硬さ(スキンスコア)との相関性を示すグラフである。
【図5】(a)および(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの手背の皮膚の硬さを測定した場合の測定結果と、スキンスコアとの相関性を示すグラフである。
【図6】操作端末の動作例を示すフローチャート
【図7】選択可能な17の部位を選択可能な状態で表示した画面の一例を示す図
【図8】測定結果を表示する画面の一例を示す図
【図9】測定結果を示す画面の他の例を示す図
【図10】第2の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図
【図11】解析データの表示画面例を示す図
【図12】解析データの表示画面例を示す図
【符号の説明】
【0089】
1 測定器(探触子)
2 操作端末2
3 無線IF(無線インタフェース)部
4 変換部
5 センサ部
13 圧子
14 測定ヘッド
17 カバー
21 無線IF部
22 記録部
23 計算部
24 選択部
25 出力部
26 UI(ユーザインタフェース)部
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置および皮膚特性測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の硬さや弾性に異常をきたす疾病を診療する場合、検者が皮膚を摘み上げて皮膚の硬さを評価している。また、上記の疾病に対して薬物治療を行った際の効果判定も主治医の主観によるところが多い。これは、皮膚の硬さや弾性等の客観的かつ定量的な評価は困難であるためである。しかし、医療のみならず皮膚整形や美容の分野においても、皮膚の硬さ、弾性、粘性等の物理特性を客観的に測定することが求められている。
【0003】
そのため、皮膚の硬さを測るための装置として、種々のものが開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1には、皮膚に圧力を加え、その圧力による皮膚の変形量を検出することにより、皮膚の弾性を測定する装置が開示されている。また、特許文献2には、対物接触振動子に設けられた振動検出部の出力信号を、増幅した後、対物接触振動子に強制帰還させて成る自励発振回路により物質の硬さを感知する方法が開示されている。対物接触振動子に物体が接触すると自励発振回路の発振周波数が変化するので、この変化量を測定することにより、物質の硬さが得られる。
【特許文献1】特開平2−134131号公報
【特許文献2】特開平5−322731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、皮膚は、表皮、真皮、皮下脂肪組織など、異なる成分からなる層状の組織であり、複雑な力学的挙動を示す。そのため、測定手段が異なれば、得られる測定結果も異なる。そして、異なる手段で測定された測定結果の間で相関関係が見られない場合が少なくない。すなわち、上記の装置によってもなお、皮膚の硬さ等の物理的状態を客観的に評価するのは困難であった。そのために、例えば、診療現場での皮膚の硬さの評価は、装置を用いた測定ではなく、依然として検者が皮膚を摘み上げて硬さを判断することにより行われている。
【0005】
ゆえに、皮膚の物理的状態を客観的に評価することを可能にする皮膚特性測定装置および皮膚特性測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる皮膚特性測定装置は、皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置であって、筐体と、前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備え、前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である皮膚特性測定装置。
【0007】
上記構成において、圧子は、圧力を加える方向に平行な面の断面形状が矩形である。変換部は、この圧子で被計測体に圧力を加えた場合の圧子の動きを検出して被計測体の物理的特性を示す信号を生成する。これにより、皮膚の物理的状態を客観的に評価するのに適した物理特性が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚の物理的状態を客観的に評価することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態において、前記圧子の前記一軸方向に垂直な面における断面形状は円であり、前記円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さいことが好ましい。
【0010】
このように圧子を形成することで、皮膚の物理的状態を客観的に評価するのにさらに適した物理特性が得られる。
【0011】
本発明の実施形態にかかる皮膚測定装置は、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位について記録する記録部と、前記複数の部位のうち、測定対象となる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、前記選択部で受け付けたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記変換部が生成した物理特性と、当該取得した基準値との関係を示す値を計算する計算部と、前記計算部により計算された値を出力する出力部とをさらに備えてもよい。
【0012】
計算部により、実際の測定値である変換部で生成された物理特性と、測定対照部位の基準値との関係を示す値が計算される。この値が出力部によって出力されるので、測定部位の基準値に対する相対値が出力されることになる。この相対値により、皮膚の物理特性を、測定部位の基準値に対して相対的に評価することが可能になる。すなわち、測定部位に応じた適切な評価を可能にする値が出力されることになる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる皮膚測定装置は、前記圧子に対して前記一軸方向に電磁力を作用させるコイルと、前記圧子の位置を検出する位置検出部とを備え、前記変換部は、前記圧子が皮膚に圧力を加える際の前記コイルによる電磁力の変化と、前記位置検出部が検出した前記圧子の位置の変化に基づいて、物理特性を算出する態様とすることができる。
【0014】
このように、変換部は、圧子の皮膚に圧力を加える動作において、圧子が皮膚に作用する力と、圧子の位置の時間的変化を用いて、物理特性を算出する。そのため、圧子が皮膚に圧力を加えるという一回の動作で、例えば、皮膚の硬さ、粘性、弾性および粘弾性等の複数の物理特性が求められる。
【0015】
本発明の実施形態における皮膚特性測定装置は、前記記録部、前記選択部、前記計算部および前記出力部は、前記筐体と通信可能な操作端末に含まれる構成とすることができる。
【0016】
本発明の実施形態における皮膚特性測定装置において、前記計算部は、前記変換部で生成された皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、前記皮膚特性測定装置は、前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備えてもよい。
【0017】
上記構成により、複数の被計測体についての皮膚の物理特性を示すデータが蓄積されると、蓄積されたデータによって、基準値が計算される。そのため、皮膚の物理特性を示すデータが蓄積されるに従って、自動的に基準値を計算することができる。
【0018】
本発明の実施形態にかかる皮膚特性測定装置は、皮膚の物理特性を測定するセンサから皮膚の物理特性を示す信号またはデータを受け付け、前記信号またはデータを処理して出力する皮膚特性測定装置であって、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部と、前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算部と、前記計算部により計算された値を出力する出力部とを備える。
【0019】
本発明の実施形態において、前記計算部は、前記センサから受け付けた皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、皮膚特性測定装置は、前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える態様とすることができる。
【0020】
本発明の実施形態にかかる皮膚特性測定プログラムは、皮膚の物理特性を測定するセンサと、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部とにアクセス可能なコンピュータに処理を実行させる皮膚特性測定プログラムであって、前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択処理と、前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算処理と、前記計算処理により計算された値を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示す測定装置10は、測定器1(探触子とも称される)および操作端末2で構成される。測定器1は、無線IF(無線インタフェース)部3、変換部4およびセンサ部5を備える。操作端末2は、無線IF部21、記録部22、計算部23、選択部24、出力部25、UI(ユーザインタフェース)部26、入力装置27および表示装置28を備える。
【0023】
測定器1および操作端末2は、それぞれ別の筐体で形成される。例えば、測定器1は、検者が握りやすい形状(例えば、円筒状)の筐体で形成される。操作端末2は、例えば、PDA(Personal Digital Assistance Device)のような携帯型コンピュータで形成される。
【0024】
<測定器1の構成>
測定器1において、センサ部5は、被計測体に接触して圧力を加えるための圧子と、圧子に加圧するための手段を備える。変換部4は、センサ部5の動作を制御するとともに、圧子の動きを検出して、被計測体の物理特性を示すデータを生成する。この物理特性は、例えば、弾性係数、粘性係数、緩和時間、粘弾性率(viscoelastic ratio)および硬さ(硬度)等である。なお、変換部で得られる物理特性は、これらに限られず、被計測体に圧力を加えた場合の動きから計算される物理特性であればよい。なお、センサ部5および変換部4の詳細は後述する。
【0025】
無線IF部3は、測定器1と操作端末2との間の無線データ通信を可能にするインタフェースである。例えば、無線IF部3は、変換部4が生成したデータを無線通信により操作端末2へ送信する。
【0026】
<操作端末2の構成>
操作端末2において、表示装置28および入力装置27の機能は、例えば、PDAが備えるタッチパネル機能付き表示装置により実現される。その他の入力装置27として、例えば、トラックボールなどのポインティングデバイス、ボタン、キーボード、その他入力デバイスが用いられてもよい。また、UI部26は、表示装置28へのデータ出力および入力装置27からデータ入力を可能にするGUIの機能を有する。
【0027】
記録部22は、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する。ここで、基準値は、例えば、健常者の皮膚の硬さの平均値または標準偏差のように、所定のカテゴリに属する複数の人の皮膚の物理特性の代表値または散布度(散らばり度合い)の値である。基準値は、例えば、複数の人の皮膚の測定値に対して統計処理することにより算出される。基準値は、予め記録部22に記録される。下記表1は、記録部22に記録される基準値のデータ内容の一例を示す表である。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1に示す例では、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の平均および標準偏差の値が、部位ごとに記録されている。この平均は、例えば、健常者20人の平均値および標準偏差とすることができる。上記表1に示す部位は、全身を17の部位に分類した場合の各部位である。なお、上記表1は、一例であり、物理特性や基準値の種類や部位は、これに限られない。物理特性の種類、基準値の種類、部位の分類の仕方、または、どの部位について基準値を記録するかといった事項は、測定の目的によって適宜選択することができる。
【0030】
選択部24は、複数の部位(上記表1の例では17の部位)のうち、どの部位が測定部位となるかを示すデータの入力を受け付ける。ここで、測定部位は、測定器1により測定しようとする部位である。例えば、選択部24は、UI部26へ指示して、記録部22に記録された17の部位を、選択可能な状態で表示装置28へ表示させる。この表示を見た検者(ユーザ)は、入力装置27を用いて、複数の部位のうちで測定しようとする部位を選択することができる。選択部24は、検者の選択した部位(測定部位)を、UI部26を介して受け取り、計算部23へ通知する。
【0031】
無線IF部21は、測定器1と操作端末2との間の無線データ通信を可能にするインタフェースである。例えば、無線IF部21は、測定器1で測定された物理特性を示すデータ(測定データ)を、測定器1の無線IF部3から受信する。無線IF部3および無線IF部21は、例えば、bluetooth、NFC(Near Field Communication)、HomeRF(Home Radio Frequency)、無線LAN(IEEE 802.11b)、UWB(Ultra Wide Band)、Wibree、またはWirelessUSB(Wireless Universal Serial Bus)等のような無線通信規格を用いて無線通信を行うことができる。
【0032】
計算部23は、選択部24で、受け付けた測定部位の基準値を記録部22から読み出す。そして、当該取得した基準値と、無線IF部21から受け取った測定データとの関係を示す値を計算する。例えば、基準値と測定値との相対的な関係を示す値が計算される。例えば、測定データとして、右手背の皮膚の硬さの測定値Hm-1が得られた場合、上記表1の右手背の皮膚の硬さの平均値HAV―1および標準偏差HSD―1を用いて、下記式(1)により、上記相対関係を示す値Zが計算される。
Z = (Hm-1−HAV―1)/HSD―1 ・・・(1)
【0033】
出力部25は、計算部23で計算された値を、測定データとともに、表示装置28へ表示するようにUI部26に指示する。これにより、表示装置28には、測定器1で測定された部位の物理特性を示す値と、その値の基準値に対する相対値とが表示される。これにより、検者は、測定値が基準からどの程度離れているかを知ることができる。その結果、皮膚の物理特性の客観的かつ定量的な評価が可能になる。
【0034】
測定器1は、図示しないが、マイクロプロセッサまたはICチップ等のコンピュータまたは電子回路を内蔵する。測定器1の変換部4および無線IF部3の機能は、このようなコンピュータが所定のプログラムを実行するか、あるいは電子回路による信号処理により実現される。また、操作端末2の無線IF部21、計算部23、選択部24、出力部25、UI部26の各機能は、操作端末2の備えるコンピュータが所定のプログラムを実行することによって実現される。操作端末2は、例えば、市販のPDAに上記各機能を実現するためのプログラムをインストールすることにより構築することができる。そのため、上記各機能を実現するためのプログラムおよびプログラムを記録した記録媒体も本発明の実施形態の一例である。
【0035】
なお、本発明の測定装置の構成は、上記の例に限られない。例えば、変換部4は、操作端末2が備えてもよい。その場合、測定器1からは、検出された圧子の動きを示す信号と、圧子に圧力を加えるための制御信号が操作端末2へ送信される。
【0036】
また、上記構成のように、操作端末2をPDAのような携帯性を有する端末とすることで、検者が測定装置を携帯しやすくなる。そのため、例えば、臨床現場において、被測定者がいるベッドサイドまで測定装置を運搬することが容易になる。または、スキンケア用品の販売現場等において、手軽に顧客の皮膚の物理特性測定をすることが可能になる。
【0037】
さらに、測定器1と操作端末2が無線により通信する構成なので、検者は、測定器1の移動範囲や向きなどの制約を受けることなく、被検者の周囲を自由に動きながら測定することが可能になる。
【0038】
<センサ部5の詳細な説明>
次に、センサ部5の構成例を説明する。図2は、センサ部5の断面図である。センサ部5は、内部に空間を有する円筒形状のカバー(筐体)17と、カバー17内部の空間に、ばね19を介して前記円筒の中心軸の方向に移動可能に設けられた測定ヘッド14を備える。測定ヘッド14の円筒の中心軸は、カバー17の円筒の中心軸と同じである。また、カバー17の内側側面の、測定ヘッド14の移動経路上には、スイッチ18が設けられている。測定ヘッド14とカバー17間に力が働くことにより、ばね19が一定の長さになると、スイッチ18が掛かるようになっている。
【0039】
測定ヘッド14も内部に空間を有する円筒形状である。測定ヘッド14の内部には、さらに、前記中心軸方向に移動可能に設けられた圧子13が設けられている。圧子13の先端部分は、カバー17および測定ヘッド14の外側に露出するように設けられている。これにより、圧子13の先端部分が、被計測体に接触して圧力を加えることができる。
【0040】
圧子13も、カバー17と中心軸を同じくする円筒形状である。すなわち、圧子の先端部分においては、移動方向に平行な平面における断面の形状は矩形であり、移動方向に垂直な平面における断面は円形である。そして、圧子13の移動方向に垂直な平面における円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さくなるように圧子が形成されることが好ましい。なお、圧子13の先端の形状および大きさの詳細については後述する。
【0041】
圧子13の先端部分とは反対側のカバー17内部の側の端には、永久磁石16が設けられている。測定ヘッド14には、圧子13の永久磁石16を取り囲むように電磁コイル15が固定されている。そのため、電磁コイル15の電流または電圧が変化することにより、圧子13に前記中心軸方向の電磁力が作用する。すなわち、電磁コイル15および永久磁石16が加圧手段となっている。
【0042】
圧子13の円筒側面には、位置識別マーク11が付されている。測定ヘッド14には、圧子13の位置識別マーク11の位置を測定する位置センサ12が設けられている。これにより、圧子13の動き、すなわち圧子13の位置の時間的変化が検出される。
【0043】
図2においては図示していない変換部4は、電磁コイル15の電流の制御を制御することにより、圧子13に作用する(すなわち、被計測体に作用する)電磁力の発生及び除去のタイミングを制御する。また、変換部4は、位置センサ12により検出された位置を読み込んで、被計測体に圧子13の電磁力が作用したときの、位置識別マーク11の位置の時間変化(速度および加速度)を計算する。変換部4は、計算した値を用いて、被計測体の物理特性を示すデータを生成することができる。
【0044】
<センサ部5および変換部4の動作例>
ここで、皮膚の物理特性を測定する場合の、センサ部5および変換部4の動作例を説明する。測定時には、検者により、スイッチ18が掛かるまで、測定ヘッド14が被計測体の表面に押し付けられる。図3は、測定ヘッド14が被計測体Sに押し付けられスイッチ18が掛かっている状態を示す図である。
【0045】
この状態で、変換部4は、電磁コイル15の電流を制御して、電磁コイル15と永久磁石16との間に電磁力を発生させる。これにより、圧子13が被計測体Sを押す力を、短時間でゼロから所定の目標値まで上げる。圧子13から力を受けると被計測体Sはくぼみ始め、圧子13の押す力と被計測体Sの弾性による力がつりあうと、圧子13は停止する。この押圧過程では、圧子13は常に被計測体Sに接触している。そのため、押圧過程で、位置センサ12が圧子13の位置識別マーク11の位置を検出することにより、被計測体Sの変形量の時間的変化と、最終的なくぼみ量が測定される。
【0046】
圧子13と被計測体Sとの力がつりあった状態を一定時間保った後、変換部4は、突然、電磁力をゼロに下げる。電磁力が除去されると、被計測体Sのくぼみは元の状態へ戻る。この回復過程においても、位置センサ12が圧子13の位置識別マーク11の位置を検出する。
【0047】
例えば、ケルビン・フォークトモデルを用いると、上記の回復過程において下記式(2)が成り立つ。
m(d2γ/dt2)=Gγ+η(dγ/dt) ・・・(2)
上記式(2)において、mは圧子13の質量、γは被計測体Sのひずみ量、tは時間、Gは弾性係数、ηは粘性係数である。上記式のひずみ量γと時間tとの関係は、位置センサ12の検出した位置によって測定される。変換部4は、この測定されたひずみ量γと時間tとの関係を用いて、上記(2)の数値解析により、弾性係数Gおよび粘性係数ηを算出できる。なお、緩和時間は、例えば、η/Gと計算することができる。
【0048】
粘弾性率VERは、弾性による応力をS1、粘性による応力をS2とすると、例えば、下記式(3)で計算することができる。下記式により計算されるVERは、粘性に対する弾性の優位性を示すパラメータと言う事ができる。
【0049】
VER = S1/(S1+S2) ・・・(3)
さらに、硬さを示す値は、例えば、圧子13と被計測体Sとの力がつりあった状態で被計測体Sに生じたくぼみの深さから計算することができる。例えば、圧子13が皮膚に進入した深さが硬さに反比例すると想定して、硬さを計算することができる。一例として、圧子13が皮膚に進入した深さとデュロメータ硬度計により測定される硬度との対応関係を予め求めておき、圧子13が皮膚に進入した深さを、この対応関係を用いてJIS規格のデュロメータ(Durometer)の硬度に変換することができる。
【0050】
以上のような動作により、皮膚の物理特性を示す測定データが得られる。上記の動作では、圧子13を被計測体Sの表面に一定の速度で衝突させ、被計測体Sに変形を与えたときの圧子13の挙動を、位置センサ12が検出することにより、被計測体Sの変形過程を測定する。変換部4が、粘弾性体の解析モデルであるケルビン・フォークトモデルに基づいた波動分析をすることにより、弾性係数、粘性係数、粘弾性率および緩和時間を算出することができる。また、変換部4は、被計測体Sに生じたくぼみの深さから、JIS規格デュロメータ硬度計に対応する硬さを算出することもできる。
【0051】
なお、センサ部5の構造および変換部4の処理は上記例に限られない。例えば、センサ部5にデュロメータを採用し、圧子13の押し込みの深さにより、硬さ測定してもよい。
【0052】
<圧子13の先端部分の形状および大きさ>
図4(a)および図4(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの前腕の皮膚の硬さを測定した場合の測定値と、従来の方法で評価された皮膚の硬さ(スキンスコア)との相関性を示すグラフである。図4(a)(b)に示すグラフにおいて、縦軸は圧子13を用いた測定で得られた硬さの、スキンスコアに対する相対値を示す。横軸は従来の方法で評価されたスキンスコア(mRSS(modified Rodnan skin score))を示す。この縦軸の相対値は、スキンスコア=0と判断された皮膚の硬さの測定値を1とした場合に、スキンスコア1、2、3と判断された皮膚の測定値が、それぞれ何倍になったかを表す値である。
【0053】
図4(a)のグラフは、先端形状が円柱である圧子を用いた測定の結果を示し、図4(b)のグラフは、先端形状が球である圧子を用いた測定の結果を示している。また、図4(a)および図4(b)のグラフにおいて、丸、ひし形、三角形、正方形のプロットは、圧子の押圧に垂直な方向の断面形状における直径が2mm、4mm、6mm、8mmである場合の測定結果をそれぞれ示している。
【0054】
図4(a)および図4(b)のグラフに示されるように、圧子を用いた測定結果とmRSSとの相関は、圧子の形状および大きさにより変化する。これらのグラフにおいて、スキンスコアの上昇にしたがって、相対値が大きく変化するほど皮膚硬度の違いに対する感度がよいことになる。下記表2は、図4(a)および図4(b)に示す相対値の各スキンスコア群間の統計学的有意差の有無を示す表である。下記表2において、スキンスコア群間の相対値に有意差がある場合を「*」、ない場合を「NS」で示している。
【0055】
【表2】
【0056】
図4(a)、(b)および表2に示す結果から、圧子の先端が直径2mmと6mmの円柱である場合に全てのスキンスコア群間で相対値に有意差が見られる。なお、相対値の差は、圧子の先端が直径2mmの円柱である場合が最も大きい。その他の圧子では、異なるスキンスコア間での相対値の違いを統計学的有意差をもって検出しえない場合がある。この傾向は、図4(a)および図4(b)に示す前腕の皮膚の測定結果だけでなく、他の部位の測定結果でも見られる。
【0057】
例えば、図5(a)および図5(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの手背の皮膚の硬さを測定した場合の測定結果と、スキンスコアとの相関性を示すグラフである。図5(a)のグラフは、先端形状が円柱の圧子を用いた測定の結果を示し、図5(b)は、先端形状が球である圧子を用いた測定の結果を示している。これらのグラフからも、圧子の先端が直径2mmの円柱である場合に、mRSSとの相関性が最もよいことが示されている。一方で、直径2mmの円柱以外の形状および大きさの組み合わせに掛かる圧子の測定結果では、手背については、mRSSとの相関が必ずしもよくなっていない。例えば、図5(a)の6mm円柱の測定結果では、スキンスコア群間で相対値に有意差が表れない場合が存在する。
【0058】
なお、断面形状の直径が0.5mmおよび1mmの圧子は、皮膚に接触したときに、被検者に看過できない痛みが伴うため、皮膚測定には適していない。
【0059】
したがって、圧子13は、押圧方向に延びる柱状であることが好ましい。すなわち、圧子13の先端部分の押圧方向に平行な面内における断面は矩形であることが好ましい。特に、圧子13は円柱であることが好ましい。すなわち、押圧方向に垂直な面における断面形状は円であることが好ましい。
【0060】
圧子13の押圧方向に垂直な断面における直径は、1mmより大きく、4mmより小さいことが好ましい。すなわち、圧子13の押圧方向に垂直な断面の面積Sの好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(4/2)2π(mm2)である。より好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(3/2)2π(mm2)であり、さらに、好ましい範囲は、(1/2)2π(mm2)<S<(2/2)2π(mm2)とすることができる。そして、Sは略12πmmであることが特に好ましい。
【0061】
圧子13の押圧方向に垂直な断面積が小さい方が感度はよくなる傾向がある可能性は否定できない。しかし、断面積が小さくなればなるほど、測定される患者の苦痛が増すことになる。上記図4、5に示した測定の過程において、断面の直径が1mmの場合は患者から痛いとの苦情がでたため測定を放棄している。
【0062】
このような形状および大きさの圧子を用いて皮膚の物理特性を測定することによって、従来の評価による結果と相関性がよい測定結果が得られ、かつ、客観的かつ定量的に、皮膚の物理特性を評価することが可能になる。
【0063】
なお、本実施形態では、圧子の押圧方向における断面形状は円である場合の例を説明したが、断面形状は必ずしも厳密な真円である必要はない。断面形状は、例えば、楕円、半円もしくは多角形等であってもよい。すなわち、断面形状の面積が上記好ましい範囲であれば、必ずしも円である必要はない。
【0064】
<操作端末2の動作例>
図6は、操作端末2の動作例を示すフローチャートである。図2に示す処理では、まず、選択部24は、記録部22から、選択可能な部位を読み出して、UI部26に表示装置28へ表示させる(S1)。例えば、選択部24は、上記表1の部位の列に記録された17の部位を示すデータを取得し、UI部26に渡す。その際、選択部24は、各部位を選択可能な状態で表示するようにUI部26に指示する。
【0065】
図7は、選択可能な17の部位を選択可能な状態で表示した画面の一例を示す図である。図7に示す例では、ヒトの体を17の部位に分割した画像が表示されている。検者は、例えば、スタイラスペンまたは指で、画面上の測定したい部位を触ることで選択することができる。また、図7に示す画面では、「測定部位をクリックして下さい」という検者へ部位選択を促すメッセージM1と、被検者の氏名およびIDをそれぞれ入力するための入力エリアT1、T2が表示されている。
【0066】
図7で、測定部位が選択されると(S2でYes)、選択部24は、検者へ測定操作を促すメッセージを画面に表示する。例えば、図7に示すメッセージM1が、「測定部位をクリックして下さい」から「プローブを測定部位にのせて下さい」に変更される。これにより、検者が、測定器1(プローブ)を測定部位に接触させると、測定器1において自動的に測定が開始される。そして、物理特性を示す測定データが生成され、操作端末2へ無線で送信される(S3)。以下では、一例として、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の測定値が、測定データとして操作端末2へ送信される場合について説明する。
【0067】
さらに、計算部23は、S1で選択された部位の基礎データを記録部22から取得する(S4)。ここで取得される基礎データは、選択された部位の物理特性の基準値を示すデータである。例えば、記録部22に上記表1に示したデータが記録されている場合、選択された部位の、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率の平均および標準偏差が読み出される。
【0068】
そして、計算部23は、測定器1から受信した測定データが示す測定値と、基準データが示す基準値との関係を示す相対値(Z−score)を計算する(S5)。例えば、基準値が、上記表1に示したように、健常者の平均値と標準偏差である場合、Z−scoreは、下記式(4)で計算される。
【0069】
Z−score=(測定値−健常者の平均)/(健常者の標準偏差) ・・・(4)
Z−scoreは、例えば、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率各々について計算される。なお、相対値は、上記式で計算されるZ−scoreに限られない。
【0070】
Z−scoreが計算されると、出力部25は、測定値およびZ−scoreを表示装置28へ表示するようUI部26に指示する(S6)。図8は、測定結果を表示する画面の一例を示す図である。図8に示す例では、測定部位と、硬さ、弾性係数、粘性係数、緩和時間および粘弾性率各々の測定値およびZ−scoreとが表示されている。このように、測定値とともに、Z−score(相対値)を表示することで、検者は、測定部位の基準値に対する相対的な評価が可能になる。皮膚の硬さは、身体の部位によって異なる傾向がある。例えば、ヒトの腹部の皮膚は、手背の皮膚に比べて柔らかい傾向がある。測定値のみの表示だと、その値が、例えば、健康時に比べて異常なのかどうか判断するのが難しい。しかし、基準値に対する相対値を表示することで、この判断が容易になる。
【0071】
例えば、皮膚の硬さについて、Z−scoreに基づいて次のように評価をすることができる。Z−scoreが−1から+1の間である場合は普通、+1から+2の間の場合はやや硬い、+2から+4の場合は硬い、+4以上の場合は非常に硬いと判断することができる。また、上記のような基準で、Z−scoreに基づき判断結果を自動的に計算することもできる。
【0072】
以上のS1〜S6の処理が、検者からの終了を指示する入力があるまで(S7でYES)、繰り返される。上記の動作および画面は実施形態の一例であり、本発明の実施形態はこれに限られない。
【0073】
図9は、測定結果を示す画面の他の例を示す図である。図9に示す例では、ヒトの体を17の部位に分割した画像が表示されている。それぞれの部位にZ−scoreに対応した長さの棒グラフとZ−scoreが表示されている。棒グラフは、対応するZ−scoreの値がプラスかマイナスかを識別できるように表示される。図9に示す例では、プラスの場合は斜線パターンで、マイナスの場合は白抜きで表示されているが、例えば、色を変えて表示することもできる。画面右下の「Toral score = 46.54」は、17箇所の部位のZ−scoreの合計値の表示である。画面左上には、日付、被検者の氏名およびIDが表示される。
【0074】
また、未測定の部位は、測定済みの部位と区別可能な態様で表示される。図9に示す例では、未測定の部位がドットパターンで表示されている。なお、検者が未測定の部位をタッチすることで、測定部位として選択できる状態で表示されてもよい。
【0075】
画面には、さらに、表示する物理特性の種類、すなわち「硬さ」「弾性係数」「粘性係数」「緩和時間」および「粘弾性率」を選択するためのボタンB1〜B5が表示されている。検者が所望の物理特性のボタンをタッチすると、タッチされたボタンの物理特性のZ−scoreに対応する棒グラフが表示される。図9は、「硬さ」が選択された場合の表示例を示している。
【0076】
その他、画面には、保存ボタンB6、印刷ボタンB7、および画面遷移のための戻るボタンB8、進むボタンB9が表示される。保存ボタンB6は、測定結果およびZ−scoreのデータを保存する処理を指示するためのボタンである。例えば、検者が保存ボタンB6をタッチすると、ファイル名と保存場所を入力するための画面が表示される。なお、測定結果およびZ−scoreは、日付および被検者のIDと関連付けられて保存されてもよい。測定結果およびZ−scoreは、例えば、記録部22に保存される。
【0077】
印刷ボタンB7は、操作端末2に接続されたプリンタに、測定結果を印刷するためのボタンである。戻るボタンB7がタッチされると、例えば、図7に示した、測定部位および被検者の氏名を入力するための画面に遷移する。進みボタンB8がタッチされると、例えば、未測定の部位を選択するための画面に遷移する。
【0078】
図9のように、各部位ごとの基準値に対する相対値(Z−score)を、全部位について1画面上に表示することで、検者は、例えば、皮膚の物理特性が異常をきたしている部位を、素早く把握することが容易になる。
【0079】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図である。図10に示す測定装置10aにおいて、図1と同じブロックには同じ番号を付す。本実施形態において、操作端末2aは、図1に示す操作端末2に対して、評価入力部31および解析部32をさらに備える構成である。その他の機能ブロックは図1と同様である。
【0080】
評価入力部31は、出力部25が、一人の被検者の測定結果およびZ−socoreを表示させた後に、その被検者に対する評価を示す評価データの入力を、UI部26および入力装置27を介して受け付ける。入力された評価データは、測定結果およびZ−socoreと対応付けて、記録部22に記録される。被検者に対する評価を示すデータには、例えば、特定の疾病を患っているか否かといった被検者に対する診断結果が含まれる。具体的には、被検者が強皮症を患っているか否か、あるいは、びまん型(diffuse type)強皮症、または限局型(limited cutaneous)強皮症等の疾病を示すデータ等が挙げられる。
【0081】
下記表3は、評価入力部31により記録部22に記録される内容の一例を示す表である。
【0082】
【表3】
【0083】
上記表3に示す例では、被検者のID、測定を行った日付、評価データ、並びに各部位の測定値およびZ−scoreが対応付けられて1レコードとして記録されている。上記表3に示すように、複数の被検者の測定による測定結果および評価結果が記録部22に蓄積される。なお、記録されるデータ形式は、上記表3のようなテーブル形式に限られず、例えば、CSVデータ等でもよい。また、上記表3の項目の他に、年齢、性別など、被検者の属性や特性を示すデータ、もしくは、診察履歴、治療履歴、投薬履歴等を示す臨床データも対応付けて記録されてもよい。
【0084】
解析部32は、記録部22に記録された複数の被検者の測定結果を読み出して解析し、解析データを生成して記録部22に記録する。例えば、解析部32は、複数の被検者の測定値の平均、標準偏差、分散等の統計量を計算する。
【0085】
具体的には、解析部32は、上記表3の評価データが「びまん型強皮症」または「限局型強皮症」であるレコードの測定値(硬さ)の平均を部位ごとに計算する。これにより、強皮症患者の平均が得られる。さらに、解析部32は、健常者の測定値の平均および標準偏差も部位ごとに計算する。そして、強皮症患者の平均と、健常者の平均との相対関係を示す値(相対値)を計算し、解析データとして記録する。例えば、下記式(5)により、上記相対値が計算される。下記式(5)では、相対値として、強皮症患者の平均が健常者の平均から標準偏差いくつ分離れているかを示す値が計算される。
(強皮症患者の平均−健常者の平均)/健常者の標準偏差・・・(5)
【0086】
図11および図12は、解析データの表示画面例を示す図である。図11では、強皮症患者20人の皮膚の硬さの平均の、健常者の平均に対する相対値が部位ごとに表示されている。図12は、限局型強皮症患者10人の皮膚の硬さの平均の、健常者平均に対する相対値の表示例を示す図である。図11および図12のような画面を表示することにより、例えば、強皮症あるいは限局型強皮症の患者に特有の皮膚の状態を把握することが可能になる。
【0087】
また、解析部32は、記録部22に蓄積された測定結果のデータを用いて、上記のように、健常者の平均および標準偏差を部位ごとに計算し、計算した値を基準値として記録してもよい。すなわち、解析部32は、複数の被検者の測定結果に基づいて、各部位の基準値を計算し、計算した値で基準値を更新してもよい。これにより、測定結果のデータの蓄積されるにしたがって、基準値が妥当な値に近づいていくことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の実施の形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図
【図2】センサ部の断面図
【図3】測定ヘッドが被計測体に押し付けられスイッチが掛かっている状態を示す図
【図4】(a)および(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの前腕の皮膚の硬さを測定した場合の測定値と、従来の方法で評価された皮膚の硬さ(スキンスコア)との相関性を示すグラフである。
【図5】(a)および(b)は、圧子の先端部分の形状と大きさを変えてヒトの手背の皮膚の硬さを測定した場合の測定結果と、スキンスコアとの相関性を示すグラフである。
【図6】操作端末の動作例を示すフローチャート
【図7】選択可能な17の部位を選択可能な状態で表示した画面の一例を示す図
【図8】測定結果を表示する画面の一例を示す図
【図9】測定結果を示す画面の他の例を示す図
【図10】第2の実施形態にかかる測定装置の構成を示す機能ブロック図
【図11】解析データの表示画面例を示す図
【図12】解析データの表示画面例を示す図
【符号の説明】
【0089】
1 測定器(探触子)
2 操作端末2
3 無線IF(無線インタフェース)部
4 変換部
5 センサ部
13 圧子
14 測定ヘッド
17 カバー
21 無線IF部
22 記録部
23 計算部
24 選択部
25 出力部
26 UI(ユーザインタフェース)部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置であって、
筐体と、
前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、
前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備え、
前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である皮膚特性測定装置。
【請求項2】
前記圧子の前記一軸方向に垂直な面における断面形状は円であり、前記円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さい、請求項1に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項3】
皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位について記録する記録部と、
前記複数の部位のうち、測定対象となる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、
前記選択部で受け付けたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記変換部が生成した物理特性と、当該取得した基準値との関係を示す値を計算する計算部と、
前記計算部により計算された値を出力する出力部とをさらに備える、請求項1または2に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項4】
前記圧子に対して前記一軸方向に電磁力を作用させるコイルと、
前記圧子の位置を検出する位置検出部とを備え、
前記変換部は、前記圧子が皮膚に圧力を加える際の前記コイルによる電磁力の変化と、前記位置検出部が検出した前記圧子の位置の変化に基づいて、物理特性を算出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項5】
前記記録部、前記選択部、前記計算部および前記出力部は、前記筐体と通信可能な操作端末に含まれる構成である、請求項3に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項6】
前記計算部は、前記変換部で生成された皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、
前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える、請求項3または5に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項7】
皮膚の物理特性を測定するセンサから皮膚の物理特性を示す信号またはデータを受け付け、前記信号またはデータを処理して出力する皮膚特性測定装置であって、
皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部と、
前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、
前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算部と、
前記計算部により計算された値を出力する出力部とを、備える皮膚特性測定装置。
【請求項8】
前記計算部は、前記センサから受け付けた皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、
前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える、請求項7に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項9】
皮膚の物理特性を測定するセンサと、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部とにアクセス可能なコンピュータに処理を実行させる皮膚特性測定プログラムであって、
前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択処理と、
前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算処理と、
前記計算処理により計算された値を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させる皮膚特性測定プログラム。
【請求項1】
皮膚の物理特性を測定する皮膚特性測定装置であって、
筐体と、
前記筐体に対して一軸方向に移動可能に設けられ、被計測体である皮膚に前記一軸方向に圧力を加えるための圧子と、
前記圧子が前記皮膚に圧力を加えるときの前記圧子の動きを検出して、皮膚の物理特性を示す信号またはデータを生成する変換部とを備え、
前記圧子は、前記一軸方向に平行な面における断面形状が矩形である皮膚特性測定装置。
【請求項2】
前記圧子の前記一軸方向に垂直な面における断面形状は円であり、前記円の直径は、1mmより大きく、4mmより小さい、請求項1に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項3】
皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位について記録する記録部と、
前記複数の部位のうち、測定対象となる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、
前記選択部で受け付けたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記変換部が生成した物理特性と、当該取得した基準値との関係を示す値を計算する計算部と、
前記計算部により計算された値を出力する出力部とをさらに備える、請求項1または2に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項4】
前記圧子に対して前記一軸方向に電磁力を作用させるコイルと、
前記圧子の位置を検出する位置検出部とを備え、
前記変換部は、前記圧子が皮膚に圧力を加える際の前記コイルによる電磁力の変化と、前記位置検出部が検出した前記圧子の位置の変化に基づいて、物理特性を算出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項5】
前記記録部、前記選択部、前記計算部および前記出力部は、前記筐体と通信可能な操作端末に含まれる構成である、請求項3に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項6】
前記計算部は、前記変換部で生成された皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、
前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える、請求項3または5に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項7】
皮膚の物理特性を測定するセンサから皮膚の物理特性を示す信号またはデータを受け付け、前記信号またはデータを処理して出力する皮膚特性測定装置であって、
皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部と、
前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択部と、
前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算部と、
前記計算部により計算された値を出力する出力部とを、備える皮膚特性測定装置。
【請求項8】
前記計算部は、前記センサから受け付けた皮膚の物理特性を示すデータを、複数の被計測体について記録部へ蓄積し、
前記記録部に蓄積された複数の被計測体の皮膚の物理特性を示すデータを読み出し、前記部位ごとの前記物理特性の平均および標準偏差を計算して、前記基準値として前記記録部に記録する解析部をさらに備える、請求項7に記載の皮膚特性測定装置。
【請求項9】
皮膚の物理特性を測定するセンサと、皮膚の物理特性の基準値を人体の複数の部位についてそれぞれ記録する記録部とにアクセス可能なコンピュータに処理を実行させる皮膚特性測定プログラムであって、
前記複数の部位のうち、被計測体が含まれる測定部位を示すデータの入力を受け付ける選択処理と、
前記選択処理で入力されたデータが示す測定部位の基準値を前記記録部から取得し、前記センサで測定された皮膚の物理特性と、当該取得した基準との関係を示す値を計算する計算処理と、
前記計算処理により計算された値を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させる皮膚特性測定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−240374(P2009−240374A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87639(P2008−87639)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(500433340)株式会社ウェイブサイバー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(500433340)株式会社ウェイブサイバー (1)
【Fターム(参考)】
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