説明

皮膚紋様の画像中の関心のある領域の決定方法

皮膚紋様の画像中の関心のある領域を決定する方法であって、皮膚が、隆線及び谷間を有し、画像が、画像データの形態を取り、画像データの第1の値範囲内の値を隆線に割り当て、画像データの第2の値範囲内の値を谷間に割り当て、画像全体の値を第1値範囲の方向にシフトさせる方法。画像全体をタイルに分割する。個々のタイルについてのシフト後の値の平均値を基準値と比較する。平均値が基準値に対して第1値範囲の方向にずれているタイルを少なくとも予備的条件に基づいて関心のある領域に属するものと見なす。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、皮膚紋様の画像中の関心のある領域を決定する方法であって、皮膚が、隆線(隆起条)及び谷間(谷部)を有し、画像が、画像データの形態を取り、画像データの第1の値範囲内の値が、隆線に割り当てられ、画像データの第2の値範囲内の値が、谷間に割り当てられるようになっている方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
皮膚紋様画像、特に指紋の自動検出のため、画像化されるべき皮膚エリア、特に指先がセンサで走査される。皮膚エリアは光学走査法の場合には透明である表面上に位置決めされる。しかしながら、センサの検出エリアは一般に矩形であり、関心のある領域は、センサにより検出されるエリア全体を占めていないのが普通である。それにより、次に行う評価を妨害する場合のある画像断片が生じる。
【0003】
したがって、本発明の目的は、次に行う画像処理ステップを関心のある領域中に含まれた情報に制限できるよう関心のある領域を決定することにある。
【0004】
〔発明の概要〕
この目的は、本発明によれば、画像全体の値を第1値範囲の方向にシフトさせ、画像全体をタイルに分割し、個々のタイルについてのシフト後の値の平均値を基準値と比較し、平均値が基準値に対して第1値範囲の方向にずれているタイルを少なくとも予備的条件に基づいて関心のある領域に属するものと見なすことを特徴とする技術的事項によって達成される。
【0005】
種々のタイプのセンサ、例えば光センサ、容量センサ又は圧力センサを用いると皮膚紋様画像を走査することができる。光センサの場合、指紋中の谷間と呼ばれている凹みは、明るく、隆線(隆起部)は暗い。したがって、この場合、第1の値の範囲を低い明るさの値に割り当てなければならず、第2の値の範囲をこれよりも高い明るさの値に割り当てる必要がある。加うるに、背景、即ち、関心のある領域に属していない領域は、光センサの場合、明るい場合があれば暗い場合もあり、このような場合に、本発明の方法が利用できる。
【0006】
値範囲の特に好ましいシフトは、別の改良例によれば、値をシフトさせるため、各タイルを、タイル全体にわたり広範に一様に分布した複数の画素群の状態に分割し、各タイル及び各群について、対応の値のうちで最小値を作り、各タイルについて、平均値を群の最小値によって計算し、平均値をそれぞれのタイルの特性として蓄積することによって実現できる。
【0007】
上述の本発明の方法は又、関心のある領域に属するものとはまだ見なされていないタイルについて、変化しなかった画像データ中の各タイル内のグレースケール値の分散を計算し、これらタイルの評価を、それ自体関心のある領域に属していないことを示す平均値と基準値の差が適度に大きな分散により補償でき、関心のある領域に属していることを示す差が適度に小さな分散により補償できるような仕方で平均値、分散及び基準値の関数として行うという技術的事項により一段と改良できる。この一段と改良された例により、更に多くのタイルをこれらが関心のある領域に属しているかどうかについて吟味することができる。
【0008】
別の改良例は、次に、各タイルをこれを包囲しているタイルのうち6以上又は5以下が関心のある領域に属していると評価されているかどうかについて吟味し、6以上の場合、吟味したタイルを関心のある領域に属するものとして評価し、5以下の場合、吟味したタイルを関心のある領域に属していないものとして評価するという技術的事項から成る。かくして、先に関心のある領域に属するものと見なされたが、関心のある領域の外に位置する分散タイルを破棄し、関心のある領域の一部としてカウントされるべきであるが、これまでそのように評価されなかった個々のタイルを関心のある領域に含める。このステップを3回繰り返すことが特に好ましいと判明した。
【0009】
指先を平らな表面に押し付けると、関心のある領域は穴が無く、しかも大きな「入口(inlet )」の無い形態を有すると見なすことができる。かかる形態は又、各水平の直線及び各垂直の直線が関心のある領域と1回だけ交差することを特徴としている。
【0010】
かかる関心のある領域を得るために、本発明の方法の別の改良例は、これまでに決定した関心のある領域を「入口」があるかどうかについて調査し、「入口」内に位置するタイルを関心のある領域に属するものと見なすことを特徴とする。この方法では特に、これまでに決定した関心のある領域の各側で、該側の両方の端部から始まったポインタを各場合において、関心のある領域に属するものと決定された最も外側のタイル上に位置決めし、ポインタは、互いに向かって移動し、そして、列毎に、それよりも外方に位置するタイルの位置を採用し又は「入口」の場合に同一の位置を保持し、ポインタが出会うまでのポインタの経路は、関心のある最終の領域のそれぞれ境界を形成すると有利である。
【0011】
図面に例示として記載された実施形態を参照して本発明を更に説明するが、本発明はかかる実施形態には限定されない。
【0012】
〔好ましい実施形態の説明〕
図示の例示としての実施形態では、指紋中の谷間1が明るく、隆線2が暗いと仮定する。画像4も又、背景3が明るい状態で作られる。かかる画像は、図1aに示されている。まず最初に、画像をオーバーラップさせないで正方形タイルに分割し、これらタイルは、例えば8×8画素を含み、これらは図1b〜図1dに見える。これらタイルは、高い確率を持って関心のある領域に属する領域中の最小値と平均値をバランスさせて用いることにより黒っぽく又は濃く(暗色化)されている。図4を参照して特に好ましい形式の暗色化を説明する。各タイル(図4にはそのうちの1つしか示されていない)を複数の群G1〜G8に分割する。個々に取られたこれら群の各々は、タイル全体にわたりできる限り一様に分布されるようになっている。全ての群G1〜G8を組み合わせると、元のタイルが作られ、したがってタイルの各点が正確に1つの群で生じるようになる。
【0013】
図4は、8画素×8画素のタイルの一例を示している。個々の点の最終グレースケール値を各タイル及び各群について作る。次に、平均値を群の最小値により各タイルについて計算する。この平均値をタイルの「暗色化(darkened)」特性として蓄積する。その結果得られた画像は、指紋の暗色化状態の低構造(low-structure )ラスタ化バージョンであり、この場合、関心のある領域は一般に容易に見える。最小値と平均値をバランスをとって用いることにより、隆線は、暗色化に対して相当大きな影響を有し、関心のある領域の外部のエリア中で生じる変化はごく僅かである。それと同時に、平均値の作成は、関心のある領域の外部の個々の暗点(マーベリック)が結果的に暗いタイルを生じさせるのを阻止する。
【0014】
暗色化を一層説明するために、以下図2及び図3のフローチャートを参照されたい。符号11のところで開始した後、符号12のところで、指紋、プロセスが次に進むのに必要なパラメータ及び暗色化マスクを入力する。暗色化マスクは、図4に従ってグループを表している。次に、プログラム要素13において、タイル毎に暗色化を行い、この場合、上述したように平均値及び最小値を用い、各タイルについて値x(T)を生じさせる。次のプログラムステップ14では、全ての値x(T)を倍率変更してこれらが0〜1の範囲を取るようにする。
【0015】
値x(T)の比較のためには基準値xrefを必要とし、この基準値は、用途に応じて、一定値に設定し又は各場合において画像内容から計算できる。この目的のため、符号15のところで、プログラムを一定値に設定された(静的)基準値xrefが計算のために使用されるべきかどうかに応じて分岐させる。もしそうでなければ、基準値xrefを符号16のところで計算する。
【0016】
x(T)がxrefよりも小さいタイルが、関心のある領域に属していると仮定する。これに対応した分岐17が、全てのタイルに通されたループ18内で生じる。タイルは、図1bでは黒色である。
【0017】
この条件が当てはまらないタイルについては、分散v(T)を符号19のところで計算する。加うるに、符号20のところで、全ての分散、即ち全てのタイルの最大分散vmaxを求める。ループ18の後、ループ21がこれ又、全てのタイルに通され、このループでは、この場合も又、分岐22が分岐17と同様に行われて関心のある予備的領域に属するものと見なされるべきタイルがどれであるかを決定するようになっている。この条件を満たさないタイルの場合、符号23のところでA>Bであるかどうかについて点検を行う。Aは、パラメータαを乗算した分散v(T)/vmaxであり、B=(xref−x(T))である。
【0018】
もしA>Bであれば、これは、定義により最初に仮定された関心のある領域の外部に位置するそれぞれのタイルが指紋である場合のある構造を示していることを意味している。したがって、この場合、それぞれのタイルは、関心のある予備的領域に属するものの1つとして符号24のところでカウントされる。条件A>Bが満足されなければ、それぞれのタイルは、関心のある領域に属していないものとして符号25のところで記録される。この状況は、例えば図1Cに示されており、この図では、関心のある領域に属していないエリアは、黒色であり、関心のある予備的領域は、後で吟味される指紋を含んでいる。しかしながら、関心のある予備的領域の境界は依然として完全に不規則である。不規則性、例えば突き出たタイルは、次に行う評価を妨害する場合がある。
【0019】
したがって、ループ30を内部で実施する以下に説明するループ33では、関心のある領域の境界は、平滑化され又は先の方法ステップにおいて関心のある領域に属するものとして認識されたが、この表面の外部に位置している個々のタイルを無くす。なお、この逆の関係も成り立つ。この目的のため、すぐ隣りのタイルのうち少なくとも6つのタイルが関心のある予備的領域に属するものとして認識されたかどうかを符号26のところで点検する(図3)。もしそうであれば、それぞれのタイルが属していることを符号27のところで確認し、他方、もしそうでない場合、符号28のところで上記タイルを関心のある領域に属していないものとして区別する。この状況は、図1dに示されている。
【0020】
以下のプログラムステップ29,30,31は、関心のある予備的領域中の「入口」及び穴を無くすよう設計されている。この目的のため、まず最初に、関心のある予備的領域の異方性凸閉包の左側の境界を符号29のところでコンピュータ処理する。符号30のところで、右側の境界をコンピュータ処理し、符号31のところで、左側の境界と右側の境界との間の全てのタイルを関心のある最終領域に割り当てる。符号32のところで、プログラムを終了させる。
【0021】
プログラムステップ29〜31(図3)で行われた異方性凸閉包を備える関心のある領域の生成法を図5を参照して詳細に説明する。図5は、タイルに分割された全ての画像表面4を示しており、ここでは、ハッチングを施したタイルが関心のある予備的領域を形成している。全部で4つのポインタを作製し、このうちの2つのポインタ42,43は、最上列で開始し、2つのポインタ44,45は、最下列で開始し、この場合、ポインタはそれぞれ、列毎に下方又は上方に動かされる。ポインタ42,44は、最も左側又は最も右側のタイル上の特定の列に位置決めされるが、それぞれ右側又は左側にはシフトできない。このように、点46までのポインタ42の経路が作られ、同一点までのポインタ44の経路が作られ、かかる点でこれらの経路が交わる。同じことが、ポインタ43,45について行われる。ポインタの進んだ経路は、関心のある最終領域の左側境界及び右側境界を表している。かくして、無視できるほどのずれとは別に、関心のある最終領域には、「入口」及び穴が無い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本方法の種々の段階の指紋画像を示す図である。
【図2】本発明の方法を実施するプログラムのフローチャートである。
【図3】本発明の方法を実施するプログラムのフローチャートである。
【図4】第1の方法ステップを実施する略図である。
【図5】別の方法ステップを実施する略図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚紋様の画像中の関心のある領域を決定する方法であって、皮膚が、隆線及び谷間を有し、画像が、画像データの形態を取り、画像データの第1の値範囲内の値が、隆線に割り当てられ、画像データの第2の値範囲内の値が、谷間に割り当てられる方法において、画像全体の値を第1値範囲の方向にシフトさせ、画像全体をタイルに分割し、個々のタイルについてのシフト後の値の平均値を基準値と比較し、平均値が基準値に対して第1値範囲の方向にずれているタイルを少なくとも予備的条件に基づいて関心のある領域に属するものと見なすことを特徴とする方法。
【請求項2】
値をシフトさせるため、各タイルを、タイル全体にわたり広範に一様に分布した複数の画素群の状態に分割し、各タイル及び各群について、対応の値のうちで最小値を作り、各タイルについて、平均値を群の最小値によって計算し、平均値をそれぞれのタイルの特性として蓄積することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
関心のある領域に属するものとはまだ見なされていないタイルについて、変化しなかった画像データ中の各タイル内のグレースケール値の分散を計算し、これらタイルの評価を、それ自体関心のある領域に属していないことを示す平均値と基準値の差が適度に大きな分散により補償でき、関心のある領域に属していることを示す差が適度に小さな分散により補償できるような仕方で平均値、分散及び基準値の関数として行うことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
次に、各タイルをこれを包囲しているタイルのうち6以上又は5以下が関心のある領域に属していると評価されているかどうかについて吟味し、6以上の場合、吟味したタイルを関心のある領域に属するものとして評価し、5以下の場合、吟味したタイルを関心のある領域に属していないものとして評価することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項3に記載されたステップを3回繰り返すことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
これまでに決定した関心のある領域を「入口」があるかどうかについて調査し、「入口」内に位置するタイルを関心のある領域に属するものと見なすことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
これまでに決定した関心のある領域の各側で、該側の両方の端部から始まったポインタを各場合において、関心のある領域に属するものと決定された最も外側のタイル上に位置決めし、ポインタは、互いに向かって移動し、そして、列毎に、それよりも外方に位置するタイルの位置を採用し又は「入口」の場合に同一の位置を保持し、ポインタが出会うまでのポインタの経路は、関心のある最終の領域のそれぞれ境界を形成することを特徴とする請求項6記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−507582(P2006−507582A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553007(P2004−553007)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005163
【国際公開番号】WO2004/047005
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】