説明

監視制御システム、およびこれに利用する信号処理装置、信号処理方法

【課題】監視制御対象の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う信号処理装置を、無監視制御時間を発生させることなく冗長化することが可能な監視制御システム、およびこれに利用する信号処理装置、信号処理方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、中央監視制御装置において建物内の複数系統の機器の監視制御を行う監視制御システムの系統ごとに設置される信号処理装置は、第1系統処理部とイベント検知部と代替第2系統処理部とを備える。第1系統処理部は、第1系統の信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う。イベント検知部は、第2系統の第2信号処理装置において信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知する。代替第2系統処理部は、イベント通知が検知されたときに第2系統の信号入出力装置と中央監視制御装置との間で代替で信号処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、監視制御システム、およびこれに利用する信号処理装置、信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルや工場等の大型の施設では、電力、空調、照明などの各設備機器を、中央の監視制御装置で一括して監視および制御する監視制御システムが普及している。この監視制御システムでは、例えば各設備機器から出力された動作状態信号が、設備ごとに設置された信号入出力装置により中央監視制御装置に送信され、この動作状態信号に基づいて生成された監視情報が中央監視制御装置に出力されることにより、オペレータにより各設備機器の状態が監視される。また監視されることによりオペレータによりいずれかの設備機器の動作を制御するための操作が中央監視制御装置から入力されると、この操作により生成された制御信号が信号入出力装置により各設備に入力される。また、いずれかの設備機器から故障通知信号が出力されると、この故障通知信号が信号入出力装置により中央監視制御装置に送信され、中央監視制御装置において警報発令処理が行われる。
【0003】
このような中央監視制御装置を用いた監視制御システムを、特高受電部や半導体製造ラインにおける空調機など、施設運用上重要な機器の安定稼動が不可欠な設備を有する施設で用いる場合は、停電による施設運用上の損害や電機機器(発電機、エレベータなど)のトラブル、火災事故の発生等を防ぐため、高い信頼性および確実性を実現することが要求される。
【0004】
そのため、上記のような重要設備を有する施設では、監視制御を行う装置を冗長化し、いずれかの装置で異常が発生した場合でも監視制御処理が続行可能になるように構成している。
【0005】
また昨今では建物の高層化やテナント数の増加に伴い、一般ビル等の設備でも高い信頼性を要するケースが増加し冗長化の気運が高まっており、確実かつ簡易に実現するための技術が求められている。
【0006】
上述したような監視制御システムにおいて、冗長化の対象となる装置としては、(1)当該システムの上位に設置され、オペレータが監視および操作する中央監視装置、(2)中央監視装置の下位に設置され、プロセス管理機能および信号処理機能を有する信号処理装置、および(3)信号処理装置のさらに下位に設置され、監視制御対象の各機器に対応して信号の入出力を行う機能を有する信号入出力装置がある。
【0007】
このうち、(2)信号処理装置に関しては、複数の入出力装置からの信号を処理して中央監視装置に通知する機能を有しており、自装置が故障すると中央監視装置による自系統の機器の監視制御が全て不能になることから高い信頼性が要求される。
【0008】
そのため、従来は1つの系統に対する信号処理装置を二重化することで、冗長化を図ることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−157944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述したように1つの系統に対する信号処理装置を二重化した場合、一方の信号処理装置が、メンテナンスまたは異常が発生したために停止したことにより他方の信号処理装置で一定期間信号処理を行うと、双方の信号処理装置が正常に復活したときに等値化処理が必要になり、その処理期間は監視制御処理を行うことができない期間(「無監視制御時間」とする。)となってしまっていた。
【0011】
この無監視制御時間は、系統内の信号処理装置の数や信号処理内容にもよるが、数分〜数十分かかる場合もあり、その間の機器の監視制御は監視員が直接現場で行わなければならず、対応が煩雑となるという問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、監視制御対象の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う信号処理装置を、無監視制御時間を発生させることなく冗長化することが可能な監視制御システム、およびこれに利用する信号処理装置、信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための実施形態によれば、中央監視制御装置において建物内の複数系統の機器の監視制御を行う監視制御システムの系統ごとに設置される信号処理装置は、第1系統処理部と、イベント検知部と、第2系統処理部とを備える。第1系統処理部は、第1系統の信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う。イベント検知部は、接続された、第2系統の第2信号処理装置において信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知する。第2系統処理部は、イベント検知部においてイベント通知が検知されたときに、第2系統の信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態による監視制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】一実施形態による監視制御システムの信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態による監視制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈一実施形態による監視制御システムの構成〉
本発明の一実施形態による監視制御システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0016】
本実施形態による監視制御システム1は、第1系統および第2系統に属する設備機器を監視および制御しており、監視対象の建物内に設置された第1系統の受電設備、空調設備、照明設備、および動力設備等に使用するn台の設備機器10−1〜10−nに伝送路を介して各々接続されたn台の信号入出力装置2−1〜2−nと、これらの信号入出力装置2−1〜2−nに伝送路およびハブ3を介して接続された信号処理装置4と、この信号処理装置4にネットワーク幹線を介して接続された中央監視制御装置5と、監視対象の建物内に設置された第2系統の受電設備、空調設備、照明設備、および動力設備等に使用するm台の設備機器20−1〜20−mに伝送路を介して各々接続されたm台の信号入出力装置6−1〜6−mと、これらの信号入出力装置6−1〜6−mに伝送路およびハブ7を介して接続されるとともに中央監視制御装置5にネットワーク幹線を介して接続された信号処理装置8とから構成されている。ここで信号処理装置4と信号処理装置8とは、ハブ3とハブ7とを接続する伝送路を介して接続されている。
【0017】
信号入出力装置2−1〜2−nは、各設備機器10−1〜10−nの故障等を含む動作状態を示す動作状態信号を受信すると、この動作状態信号をハブ3を介して信号処理装置4に出力する。
【0018】
信号入出力装置6−1〜6−mは、各設備機器20−1〜20−mの故障等を含む動作状態を示す動作状態信号を受信すると、この動作状態信号をハブ7を介して信号処理装置8に出力する。
【0019】
信号処理装置4および8の詳細な構成を、図2のブロック図を参照して説明する。
【0020】
信号処理装置4は、常時稼働する第1系統処理部41と、信号処理装置8において信号処理が停止するイベントが発生したときに稼働する代替第2系統処理部42とを有する。
【0021】
第1系統処理部41は、第1系統の設備機器10−1〜10−nを監視制御するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶部411と、この記憶部411に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器10−1〜10−nと中央監視制御装置5との間で信号処理を行う信号処理部412aを有する制御部412とを有する。
【0022】
代替第2系統処理部42は、第2系統の設備機器20−1〜20−mを監視制御するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶部421と、信号処理装置8において信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知部422a、およびこのイベント検知部422aでイベント通知が検知されたときに、記憶部421に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器20−1〜20−mと中央監視制御装置5との間で代替の信号処理を行う信号処理部422bを有する制御部422とを有する。
【0023】
信号処理装置8は、信号処理装置4において信号処理が停止するイベントが発生したときに稼働する代替第1系統処理部81と、常時稼働する第2系統処理部82とを有する。
【0024】
代替第1系統処理部81は、第1系統の設備機器10−1〜10−nを監視制御するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶部811と、信号処理装置4において信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知部812a、およびこのイベント検知部812aでイベント通知が検知されたときに、記憶部811に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器10−1〜10−nと中央監視制御装置5との間で代替で信号処理を行う信号処理部812bを有する制御部812とを有する。
【0025】
第2系統処理部82は、第2系統の設備機器20−1〜20−mを監視制御するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶部821と、この記憶部821に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器20−1〜20−mと中央監視制御装置5との間で信号処理を行う信号処理部822aを有する制御部822とを有する。
【0026】
〈一実施形態による監視制御システムの動作〉
次に、監視制御システム1の動作について、図3のシーケンス図を参照して説明する。
【0027】
まず、監視制御システム1が通常状態として稼動しているときには、信号処理装置4では第1系統処理部41の制御部412の信号処理部412aにおいて、記憶部411に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器10−1〜10−nと中央監視制御装置5との間で信号処理が実行され(S1)、信号処理装置8では第2系統処理部82の制御部822の信号処理部822aにおいて、記憶部821に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器20−1〜20−mと中央監視制御装置5との間で信号処理が実行されている(S2)。
【0028】
この信号処理には、信号入出力装置と中央監視制御装置5との間で送受信される信号のプロトコル変換処理、信号入出力装置から送信された状態信号を一定期間保持して中央監視制御装置5に送信する処理、信号入出力装置から送信された信号に対応して制御信号を送信する処理、中央監視制御装置5から送信された制御信号を、該当する信号入出力装置に送信する処理等がある。
【0029】
そして、信号処理装置8の第2系統処理部82において、異常の発生またはメンテナンス等により信号処理が停止されると、このイベントを示すイベント通知が信号処理装置8からハブ7、ハブ3を介して信号処理装置4に送信される(S3)。
【0030】
信号処理装置4では、信号処理装置8から送信されたイベント通知が代替第2系統処理部42の制御部422のイベント検知部422aで取得され、信号処理装置8の信号処理が停止したことが検知される(S4)。
【0031】
イベント検知部422aにおいて信号処理装置8の信号処理が停止したことが検知されると、信号処理部422bにおいて、記憶部421に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器20−1〜20−mと中央監視制御装置5との間で代替の信号処理が開始される(S5)。
【0032】
その後、信号処理装置8の第2系統処理部82が復活し、信号処理動作が再開されると、このイベントを示すイベント通知が信号処理装置8からハブ7、ハブ3を介して信号処理装置4に送信される(S6)。
【0033】
信号処理装置4では、信号処理装置8から送信されたイベント通知が代替第2系統処理部42の制御部422のイベント検知部422aで取得され、信号処理装置8で信号処理動作が再開したことが検知される(S7)。
【0034】
イベント検知部422aにおいて信号処理装置8で信号処理動作が再開したことが検知されると、信号処理部422bで実行されていた代替の信号処理が停止される(S8)。
【0035】
また、信号処理装置4の第1系統処理部41において、異常の発生またはメンテナンス等により信号処理が停止されると、このイベントを示すイベント通知が信号処理装置4からハブ3、ハブ7を介して信号処理装置8に送信される(S9)。
【0036】
信号処理装置8では、信号処理装置4から送信されたイベント通知が代替第1系統処理部81の制御部812のイベント検知部812aで取得され、信号処理装置4の信号処理が停止したことが検知される(S10)。
【0037】
イベント検知部812aにおいて信号処理装置4の信号処理が停止したことが検知されると、信号処理部812bにおいて、記憶部811に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて設備機器10−1〜10−nと中央監視制御装置5との間で代替で信号処理が開始される(S11)。
【0038】
その後、信号処理装置4の第1系統処理部41が復活し、信号処理動作が再開されると、このイベントを示すイベント通知が信号処理装置4からハブ3、ハブ7を介して信号処理装置8に送信される(S12)。
【0039】
信号処理装置8では、信号処理装置4から送信されたイベント通知が代替第1系統処理部81の制御部812のイベント検知部812aで取得され、信号処理装置4で信号処理動作が再開したことが検知される(S13)。
【0040】
イベント検知部812aにおいて信号処理装置4で信号処理動作が再開したことが検知されると、信号処理部812bで実行されていた代替の信号処理が停止される(S14)。
【0041】
以上の本実施形態によれば、監視制御対象の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と中央監視制御装置との間で信号処理を行う信号処理装置が、何らかのイベントにより信号処理動作が停止したときに、接続された稼動中の他の系統の信号処理装置において代替で信号処理が実行されるように切り換えられることで冗長化されているため、切り換え先の装置を待機状態から稼働状態へ移行処理させる必要がなく、瞬時に切り換えることが可能になる。
【0042】
また、他の系統の信号処理装置で代替で信号処理を行っている間の処理結果は継続して中央監視制御装置5に蓄積されるため、切り替え先の信号処理装置と切り替え元の信号処理装置との間で等値化処理を行う必要がなく、無監視制御時間が発生せず、監視員が現場の機器の監視制御を行う必要がなく負担が軽減される。
【0043】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…監視制御システム
2−1〜2−n,6−1〜6−m…信号入出力装置
3,7…ハブ
4,8…信号処理装置
5…中央監視制御装置
10−1〜10−n,20−1〜20−m…設備機器
41…第1系統処理部
42…代替第2系統処理部
81…代替第1系統処理部
82…第2系統処理部
411,421,811,821…記憶部
412a,422b,812b,822a…信号処理部
412,422,812,822…制御部
422a,812a…イベント検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央監視制御装置において複数系統の機器の監視制御を行う監視制御システムにおいて、
第1系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第1系統処理部と、
第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第2信号処理装置において、信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知部と、
前記イベント検知部において、前記イベント通知が検知されたときに、前記第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で代替で信号処理を行う代替第2系統処理部と、
を有する第1信号処理装置と、
建物内の前記第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第2系統処理部と、
前記第1信号処理装置において、信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知部と、
前記イベント検知部において、前記イベント通知が検知されたときに、前記第1系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で代替で信号処理を行う代替第1系統処理部と、
を有する第2信号処理装置と
を備えることを特徴とする監視制御システム。
【請求項2】
中央監視制御装置において建物内の複数系統の機器の監視制御を行う監視制御システムの、系統ごとに設置される信号処理装置であって、
建物内の第1系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第1系統処理部と、
第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第2信号処理装置において、信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知部と、
前記イベント検知部において、前記イベント通知が検知されたときに、前記第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で代替で信号処理を行う代替第2系統処理部と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
中央監視制御装置において建物内の複数系統の機器の監視制御を行う監視制御システムの、系統ごとに設置される信号処理装置が、
建物内の第1系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第1系統処理ステップと、
第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で信号処理を行う第2信号処理装置において、信号処理が停止するイベントが発生したときに送信されるイベント通知を検知するイベント検知ステップと、
前記イベント検知ステップにおいて、前記イベント通知が検知されたときに、前記第2系統の機器に各々対応して設置された信号入出力装置と前記中央監視制御装置との間で代替で信号処理を行う代替第2系統処理ステップと、
を有することを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−43247(P2012−43247A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184807(P2010−184807)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】