説明

監視装置

【課題】 監視対象箇所が遠隔地にある場合でも高画質映像によって監視を可能とする。
【解決手段】 監視カメラのプリセット位置毎に予め設定された画像符号化パラメータを保存しておくパラメータ記録部60と、カメラ動作コマンドを解析して監視カメラが前記プリセット位置の監視を行うか否かを判定するコマンド解析部50と、監視カメラがプリセット位置の監視を行うとコマンド解析部50が判定したときパラメータ記録部60に保存されているプリセット位置に対応する画像符号化パラメータを用いて監視カメラから送られてくる監視画像を符号化する符号化部20とを備える。カメラプリセット位置毎に符号化部20への設定パラメータが最適化され、遠隔地の監視でも高画質映像を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視映像をディジタルネットワークを利用して遠隔地で表示する監視装置に係り、特に、監視映像の撮影領域毎に最適な符号化パラメータを選択し高画質な監視映像を表示することが可能な監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に記載されている従来の映像監視システムでは、カメラプリセット位置毎にホワイトバランス、フォーカス情報、絞り情報等のパラメータ値を予め設定しておき、カメラでプリセット位置を撮影するよう操作が行われた場合、予め設定済みの前記パラメータ値をカメラ部へ設定し、瞬時に高画質映像を得ることができるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−502332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術を利用して、監視映像をA/D変換後に圧縮符号化しネットワーク1/Fへ出力するネットワークカメラを構成した場合、符号化部ヘパラメータ情報を設定することができないので、必ずしも高画質映像を得ることができない。また、ビットレートを減少させて伝送可能チャンネル数を増加させる場合、符号化部でのパラメータ設定が画質を決める要因の大部分を占めるので、従来技術では画質劣化を防止することができない。つまり、従来技術では、高画質映像による遠隔監視を行うことができないという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、監視対象箇所が遠隔地にある場合でも高画質映像によって監視が可能な監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視装置は、監視カメラのプリセット位置毎に予め設定された画像符号化パラメータを保存しておくパラメータ記録部と、カメラ動作コマンドを解析して前記監視カメラが前記プリセット位置の監視を行うか否かを判定するコマンド解析部と、前記監視カメラが前記プリセット位置の監視を行うと前記コマンド解析部が判定したとき前記パラメータ記録部に保存されている前記プリセット位置に対応する前記画像符号化パラメータを用いて前記監視カメラから送られてくる監視画像を符号化する符号化部とを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成により、監視カメラがプリセット位置の監視を行う場合には、プリセット位置に応じた最適な画像符号化パラメータにより符号化部が動作し、高画質映像を出力することが可能となる。
【0008】
本発明の監視装置における前記画像符号化パラメータは、前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎の動ベクトル探索範囲であることを特徴とする。
【0009】
この構成により、動きの大きい分割領域では広範囲で動ベクトルを探索し動きの小さい分割領域では狭範囲で動ベクトルを探索するため、処理負荷が小さく、しかも高画質映像を得ることが可能となる。
【0010】
本発明の監視装置における前記画像符号化パラメータは、前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎のノイズ除去フィルタ特性であることを特徴とする。
【0011】
この構成により、ノイズが大きい分割領域では十分にノイズを除去することができ、ノイズが少ない分割領域では映像信号自体の周波数成分を除去することによる画質劣化を防止することができ、高画質な符号化画像を得ることができる。
【0012】
本発明の監視装置では、前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎の最適な前記画像符号化パラメータは、パラメータ設定可能範囲でパラメータ値と符号化効率との関係を自動的に調べ前記パラメータ記録部に保存されることを特徴とする。
【0013】
この構成により、符号化パラメータの最適値の設定が自動化されるので、パラメータ調整作業が不要となり、カメラプリセット位置への移動後は最適なパラメータを使用して、高画質映像の符号化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリセット位置の監視を行う場合には、最適な画像符号化パラメータを用いて監視映像を符号化するため、監視対象箇所が遠隔地であっても高画質映像による監視が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る監視装置に設ける動画像符号化装置全体の機能ブロック図である。動画像符号化装置は、監視映像を取り込んでアナログ/ディジタル変換後に所定信号フォーマットで出力する撮像部(本実施形態における監視カメラ。本実施形態では、監視カメラを、光学像を取り込んで電気信号に変換するカメラ部分と、この電気信号をアナログ/ディジタル変換等の信号処理する回路部分等と一体にして構成しているが、カメラ部分と回路部分とを分離した構成とすることでもよい。)10と、撮像部10から出力されるディジタル映像信号70を圧縮符号化する符号化部20と、符号化部20で圧縮符号化処理されたビットストリーム90をパケット化するパケット構成部30と、パケット構成部30から出力されるパケットをディジタルネットワーク(以下、ネットワークという。)が要求する信号仕様に従ってネットワークに映像ストリームとして出力するネットワークI/F部40と、ネットワークI/F部40を介してネットワークから入力されたカメラ制御コマンドをデコードして撮像部10へ出力すると共にカメラ撮影位置の制御指令位置がプリセット位置か否かを判定するコマンド解析部50と、コマンド解析部50の解析結果を取り込みプリセット位置に応じた符号化パラメータ80を符号化部20に出力するパラメータ記録部60とを備える。
【0017】
撮像部10は、図示しないレンズを通して取り込んだ映像をCCD、CMOS等の撮像素子を利用して電気信号に変換し、更にこの映像信号をディジタル化すると共に、符号化部20が要求する信号仕様にフォーマット化し、出力する。
【0018】
符号化部20は撮像部10から取り込んだディジタル映像信号を圧縮符号化し、符号化結果であるストリームを出力する。映像圧縮方式の具体例としては、国際標準方式であるMPEG2(ISO/IEC、13818−2)、MPEG4(ISO/IEC、14496−2)を挙げることができ、内部の詳細動作については後述する。
【0019】
パケット構成部30は、符号化部20から出力されるストリームを取り込み、定められたフォーマットにパケット化する。
【0020】
ネットワークI/F部40は、入力されたパケットをネットワークI/F仕様に応じて映像ストリームとしてネットワークに送出すると共に、ネットワークから入力されるカメラ制御コマンドを受信した場合は、受信パケットを構成してコマンド解析部50へ出力する。
【0021】
コマンド解析部50は、入力されたカメラ制御コマンドを解析し、撮像部10とのI/F仕様に準拠したカメラ制御コマンド形式に変換して撮像部10に出力すると共に、カメラ制御コマンドがプリセット位置への撮影範囲の変更コマンドであれば、プリセット位置への変更コマンドであることと、プリセット位置情報とをパラメータ記録部60へ出力する。
【0022】
パラメータ記録部60は、プリセット位置へのカメラ制御時に、入力されたカメラプリセット位置に対応した符号化パラメータである符号化領域毎の動ベクトル探索範囲を符号化部20へ出力する。
【0023】
図2乃至図7は、カメラプリセット位置が2箇所ある場合のプリセット位置毎の動ベクトル探索範囲の設定例を説明する図である。図2の全体の矩形枠がプリセット位置Aにおけるカメラの一画面における全撮影範囲であり、この全撮影範囲を、3×4の計12領域(A1、A2、…、A12)に分割している。同様に、図5の全体の矩形枠がプリセット位置Bにおけるカメラの一画面における全撮影範囲であり、この全撮影範囲を3×4の計12領域(B1、B2、…、B12)に分割している。
【0024】
例えば、監視カメラによって出入口を監視している場合、出入りする人がいるため出入口の映像の動き量は大きいが、出入口の上部の壁の部分が写っている領域では、動きはない。プリセット位置Aにおける上記の12領域A1、A2、…、A12に対応した領域における動き量の「大」「中」「小」の一例を図3に示す。同様に、プリセット位置Bにおける動き量の一例を図6に示す。
【0025】
図3に示す例では、領域A1、A5、A6、A9が画面内で比較的大きな動きがある領域であり、A2、A10、A11が画面内で中間的な大きさの動きがある領域であり、A3、A4、A7、A8、A12が画面内で動きが小さい領域である。
【0026】
監視装置の設置者は、各分割領域毎の動き量を動ベクトル検出範囲として設定する。図4に、プリセット位置Aにおける各領域毎の動ベクトル検出範囲の設定値を示す。動きが大きい分割領域は「±60画素」、動きが中程度であれば「±30画素」、動きが小さければ「±15画素」と設定する。これらの動ベクトル検出範囲は、監視装置の設置者が動きの大きさを観察後に手動で設定する。
【0027】
同様に、図6はプリセット位置Bにおける各分割領域の動き量の一例を示す図であり、図7は各領域における動ベクトル検出範囲の設定値を示す図である。領域B3、B4、B8、B12が画面内で比較的大きな動きがある領域であり、領域B1、B2が画面内で中間的な大きさの動きがある領域であり、領域B5、B6、B7、B9、B10、B11が画面内で動きが小さい領域である。このため、動きが大きい領域は「±60画素」、動きが中程度の領域は「±30画素」、動きが小さい領域は「±15画素」と設定する。
【0028】
パラメータ記録部60は、プリセット位置AまたはBへのカメラ制御コマンド受信時に、プリセット位置に応じた各符号化領域毎(分割領域毎)の動ベクトル検出範囲を符号化部20へ出力し、符号化部20は、各分割領域毎の動ベクトル検出範囲に応じて、後述の様に、符号化動作を行う。
【0029】
図8は、符号化部20の詳細ブロック構成図である。符号化部20は、撮像部10から符号化ブロック単位で出力されるディジタル入力信号70と、パラメータ記録部60から出力される動ベクトル検出範囲を示す符号化パラメータ信号80とを取り込み、パケット構成部30に圧縮ストリーム信号90を出力する。
【0030】
この符号化部20は、入力ディジタル信号70と後述の動き補償部120が出力した動き補償画像を入力してフレーム間予測符号化を行うか(inter)フレーム内符号化(intra)を行うかを判定するinter/intra判定部100と、inter/intra判定部100が出力した判定結果と動き補償部120が出力した動き補償画像と定数‘0’とを入力し動き補償画像または定数‘0’を減算器103に出力するスイッチ部(No.1)102と、入力ディジタル信号70とスイッチ部(No.1)102の出力結果の減算結果を入力して直交変換係数を出力する直交変換部104と、直交変換部104が出力した直交変換係数と後述のバッファ部110が出力した量子化幅を入力して量子化直交変換係数を出力する量子化部106と、量子化部106が出力した量子化直交変換係数と量子化直交変換係数に多重されているブロック符号化モード情報を入力して可変長符号を出力するVLC部108と、VLC部108が出力した可変長符号を一旦蓄積して一定レートで圧縮ストリーム信号90として出力し且つ内部のバッファ残留量から量子化幅を求めて量子化部106へ出力するバッファ部110とを備える。
【0031】
符号化部20は、更に、量子化部106が出力した量子化直交変換係数を入力して逆量子化直交変換係数を出力する逆量子化部112と、逆量子化部112が出力した逆量子化直交変換係数を入力して逆直交変換係数を出力する逆直交変換部114と、逆直交変換部114が出力した逆直交変換係数と後述のスイッチ部(No.2)118が出力した画素値信号の加算器119による加算結果を入力して再生画像として蓄積するフレームメモリ部116と、inter/intra判定部100が出力したブロック符号化モード情報と定数‘0’と動き補償部120が出力した動き補償画像とを入力し予測画素値信号を出力するスイッチ部(No.2)118と、フレームメモリ部116が出力した再生画像と入力ディジタル信号70と動ベクトル検出範囲信号80を入力して動きと動き補償画像を出力する動き補償部120とを備える。
【0032】
次に、符号化部20の動作を詳細に説明する。図8で説明した構成は、動画像符号化方式の国際標準であるMPEG2またはMPEG4を想定した構成である。同方式は、画面を一定の大きさの多数のブロックに分割し、ブロック毎に符号化するものであり、符号化効率を高めるため、参照画像を動き補償(参照画像と入力画像の相関が最も高くなるようなブロック毎の動きの検出と、その動きが示す位置から画像を構成する)して予測画像とする方法が用いられる。
【0033】
inter/intra判定部100は、ブロック単位で入力される入力ディジタル信号70と動き補償部120が出力した動き補償画像とを入力し、入力画像の分散値と動き補償画像/入力画像間の予測差分の分散値を比較し、入力分散値が大きい時はフレーム間予測符号化を選択し、逆に予測差分の分散値が大きければフレーム内符号化を選択し、選択結果を、スイッチ部(No.1)102とスイッチ部(No.2)118とVLC部108へ出力する。
【0034】
スイッチ部(No.1)102は、inter/intra判定部100がフレーム内符号化を選択した時は固定値‘0’を減算器103へ出力して直交変換部104が入力ディジタル信号70を入力するようにし、フレーム間符号化を選択した時は動き補償画像を減算器103へ出力して直交変換部104が予測差分を入力するようにする。
【0035】
直交変換部104は、入力ディジタル信号70または予測差分を入力し、DCT変換を実行して直交変換係数を出力する。量子化部106は、直交変換係数の情報量を削減するため、バッファ部110が出力した量子化幅で直交変換係数を量子化して量子化直交変換係数を出力する。逆量子化部112は、量子化直交変換係数を入力し、量子化時と同一の量子化幅で逆量子化し、逆量子化直交変換係数を出力する。
【0036】
逆直交変換部114は、逆量子化直交変換係数を入力して逆直交変換し、逆直交変換係数を出力する。スイッチ部(No.2)118は、inter/intra判定結果がフレーム内符号化を示している時は‘0’を加算器119へ出力し、フレーム間符号化を示している時は動き補償画像を加算器119へ出力し、フレームメモリ部116へ量子化誤差を含む再生画像を出力するようにする。
【0037】
VLC部108は、量子化直交変換係数とinter/intra判定結果と動き補償予測付随情報とを入力し、これらを可変長符号化してバッファ部110へ出力する。バッファ部110は、不定速度で入力される可変長符号を一旦蓄積し、一定速度の圧縮ストリーム信号90として出力すると共に、内部蓄積符号量に比例させた量子化幅を算出して量子化部106へ出力する。
【0038】
動き補償部120は、入力ディジタル信号70とフレームメモリ部116からの再生画像とパラメータ記録部60(図1参照)からの動ベクトル検出範囲信号80を入力し、ブロックマッチング法で映像中の動きを検出し、動き補償画像とその付随情報(動き補償の有効/無効、動きベクトル)を出力する。ブロックマッチング法の具体例としては“画像の帯域圧縮と符号化技術”(日刊工業新聞社)P61〜P62記載を挙げることができる。
【0039】
動き補償部120の、詳細動作は以下の通りである。第1ステップとして、ブロックマッチング法により動きベクトル、動き補償画像、動き補償予測付随情報を求める。この時、動きベクトル検出範囲は動ベクトル検出範囲信号80で示された範囲に限定する。
【0040】
即ち、図4、図7で示した各分割領域毎の動ベクトル検出範囲に限定する。映像に小さな動き(例えば水平右方向に5画素、垂直下方向に3画素)しか存在しない分割領域に対して、水平右と左に30画素、垂直上と下に30画素の範囲で動ベクトルを探索しても、結果として水平右方向に5画素、垂直下方向に3画素の動きが検出されるのみである。このように、映像の動き以上に不必要に探索(検出)範囲を拡張しても、いたずらに計算負荷を増加させるのみであり、画質は向上しない。
【0041】
逆に映像に大きな動き(例えば水平右方向に54画素、垂直下方向に49画素)が存在する領域に対して、水平右と左に30画素、垂直上と下に30画素の範囲内でしか動ベクトルを探索しないと、探索範囲内のみで最も入力画像に近い動ベクトルを検出するだけとなり、結果として正しい動きである水平右方向に54画素、垂直下方向に49画素の動きが検出されず、予測効率が低下し、結果として画質劣化を発生させる。このように、動ベクトルの探索範囲を映像の動きの範囲に応じて適切に設定することで、本実施形態では、計算負荷と画質のバランスをとることが可能になる。
【0042】
第2ステップとして、動き補償画像と動き補償前の(動き量を‘0’画素とした場合)画像のいずれが符号化効率が良好かを入力ディジタル信号70との差分絶対値和によって判定する。
【0043】
第3ステップとして、判定結果を反映した予測画像をスイッチ部(No.1)102、inter/intra判定部100、スイッチ部(No.2)118へ出力し、動き補償の付随情報をVLC部108へ出力する。
【0044】
本実施形態では、上述した様に、映像のプリセット位置毎に予め動ベクトル探索範囲を設定しておけば、プリセット位置の映像を監視する時は必要十分な動ベクトル探索範囲で動ベクトルが検出でき、計算負荷を抑えつつ高画質映像を得ることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る符号化部の詳細ブロック図である。動画像符号化装置全体の構成は図1と同じであり、パラメータ記録部60以外の動作は第1の実施形態と同じである。
【0046】
本実施形態のパラメータ記録部60は、プリセット位置へのカメラ制御時に、入力したカメラプリセット位置に対応した符号化パラメータである前置フィルタ特性を符号化部20へ出力する。
【0047】
本実施形態の符号化器20は、図8に示す符号化器20に比較して、入力ディジタル信号70の入力段に前置フィルタ部122を設け、パラメータ記録部60から信号80の代わりに出力されるパラメータ設定値(前置フィルタ制御信号)81が前置フィルタ部122に取り込まれる様にしている点が異なり、他の構成及び動作は第1の実施形態と同様である。
【0048】
図10は、プリセット位置Aにおける各分割領域毎の入力映像に含まれるノイズ量の説明図である。1画面の映像を領域分割する仕方は、図2と同じである。領域A6、A7が画面内で比較的ノイズ量が大きい領域であり、領域A2、A3、Al0、A11が画面内でノイズ量が中程度の領域であり、領域A1、A4、A5、A8、A9、A12が画面内でノイズ量が少ない領域であるとする。これらの各領域におけるノイズ量は、監視装置の設置者がプリセット位置Aの映像観察により判定する。
【0049】
図11は、プリセット位置Aにおける前置フィルタの特性設定値の一例を示す図である。同11に示す様に、ノイズ量が大きい領域A6、A7は、強いフィルタ(カットオフ周波数が比較的低いフィルタ)を設定し、ノイズ量が中程度の領域A2、A3、A10、A11は弱いフィルタ(カットオフ周波数が比較的高いフィルタ)を設定し、それ以外の領域のノイズ量が少ない領域はフィルタ無しとする。
【0050】
図12は、プリセット位置Bにおける各分割領域毎の入力映像に含まれるノイズ量の説明図である。1画面の映像を領域分割する仕方は、図5と同じである。領域B1、B5、B9が画面内で比較的ノイズ量が大きい領域であり、領域B6が画面内でノイズ量が中程度の領域であり、領域B3、B4、B7、B8、B10、B11、B12が画面内でノイズ量が少ない領域であるとする。これらの各領域におけるノイズ量も、監視装置の設置者がプリセット位置Bの映像観察により判定する。
【0051】
図13は、プリセット位置Bにおける前置フィルタの特性設定値の一例を示す図である。図11に示す様に、ノイズ量が大きい領域は強いフィルタ(カットオフ周波数が比較的低いフィルタ)を設定し、ノイズ量が中程度の領域は弱いフィルタ(カットオフ周波数が比較的高いフィルタ)を設定し、ノイズ量が少ない領域はフィルタ無しとする。
【0052】
次に、図9を参照して、符号化部20の動作を説明する。動き補償部120は、入力ディジタル信号70とフレームメモリ部116からの再生画像とを入力し、ブロックマッチング法で動きを検出し、動き補償画像、付随情報(動き補償の有効/無効、動きベクトル)を出力するが、第1の実施形態とは異なり、動ベクトル探索範囲の設定は行わない。
【0053】
前置フィルタ部122は、入力ディジタル信号70の他に、パラメータ記録部60(図1参照)から領域毎の前置フィルタ特性設定値を取り込み、指定された特性設定値の前置フィルタ処理を施す。これにより、ノイズ成分が高域から低域まで広く分布しノイズが多く知覚される領域(図10の領域A6、A7、図12のB1、B2、B5、B9)は、カットオフ周波数が低いフィルタを用いることでノイズ成分を除去する。逆にノイズが知覚されにくい領域では、カットオフ周波数が高いフィルタを用いることで、高域にわずかに残るノイズを除去しつつ、映像信号を通過させる。
【0054】
このように、本実施形態では、分割領域毎のノイズ量に応じて、最適な特性の前置フィルタをかけることにより、画面内の全領域で同一特性の前置フィルタ処理を実施した場合に生じる問題、即ち、ノイズが大きい部分はノイズを除去しきれず、逆にノイズが少ない部分は映像信号自体の周波数成分を除去することによる画質劣化を防止することができ、高画質な符号化画像を得ることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態に係る動画像符号化装置全体の機能ブロック図であり、図15は、図14に示す符号化部の詳細ブロック図であり、図16は、本実施形態に係るパラメータ設定自動化方法の説明図である。
【0056】
図14に示す本実施形態の動画像符号化装置は、コマンド解析部50とパラメータ記録部60以外は図1に示す第1の実施形態と同じである。本実施形態のコマンド解析部50は、入力したカメラ制御コマンドを解析し、撮像部10とのI/F仕様に準拠したカメラ制御コマンド形式に変換して出力すると共に、カメラ制御コマンドがプリセット位置への撮影範囲の変更コマンドであれば、プリセット位置への変更コマンドであることと、プリセット位置情報をパラメータ記録部60へ出力する。また、カメラ制御コマンドがパラメータ自動設定コマンドであれば、当該コマンドをパラメータ記録部60へ出力する。パラメータ記録部60は、プリセット位置へのカメラ制御時に、入力したカメラプリセット位置に対応した符号化パラメータである符号化領域毎の動ベクトル探索範囲を符号化部20へ出力する。
【0057】
次に、図16を参照し、パラメータ自動設定コマンドを入力した場合のパラメータ記録部60の動作を説明する。図16の横軸は動ベクトル探索範囲、縦軸は発生符号量であり、動ベクトル探索範囲を増加させるに従って、発生符号量が単調に減少することを示している。パラメータ記録部60は、画面内の各分割領域毎に動ベクトル探索範囲をr1からr12まで順次広げながら、当該範囲を符号化部20へ設定して符号化部20を動作させ、符号化部20より入力した発生符号量の変動を記録する。図示する例では、発生符号量の減少効果が無くなるr4が最適な動ベクトル探索範囲となる。
【0058】
図15に示す本実施形態に係る符号化部20は、図8の第1の実施形態と比較して、VLC部108が、1映像フレームを符号化した結果、発生した符号量を符号化効率信号95としてパラメータ記録部60(図14参照)に出力する点が異なるだけである。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、プリセット位置の各分割領域毎に、符号化パラメータの最適値の設定が自動化されるので、パラメータ調整作業が不要となり、カメラプリセット位置への移動後は最適なパラメータを使用して、高画質映像の符号化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高画質映像による遠隔監視が可能になるという効果を奏するため、監視装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る監視装置に用いる動画像符号化装置の全体概略ブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る監視カメラのプリセット位置Aにおける撮影範囲の領域分割図
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプリセット位置Aの分割領域毎の動き量を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態に係るプリセット位置Aの分割領域毎に予め設定保存された動ベクトル探索範囲を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態に係る監視カメラのプリセット位置Bにおける撮影範囲の領域分割図
【図6】本発明の第1の実施形態に係るプリセット位置Bの分割領域毎の動き量を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態に係るプリセット位置Bの分割領域毎に予め設定保存された動ベクトル探索範囲を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態に係る符号化部の詳細ブロック図
【図9】本発明の第2の実施形態に係る符号化部の詳細ブロック図
【図10】本発明の第2の実施形態に係るプリセット位置Aの分割領域毎のノイズ量を示す図
【図11】本発明の第2の実施形態に係るプリセット位置Aの分割領域毎に予め設定保存されたノイズ除去フィルタ特性を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係るプリセット位置Bの分割領域毎のノイズ量を示す図
【図13】本発明の第2の実施形態に係るプリセット位置Bの分割領域毎に予め設定保存されたノイズ除去フィルタ特性を示す図
【図14】本発明の第3の実施形態に係る監視装置に用いる動画像符号化装置の全体概略ブロック図
【図15】本発明の第3の実施形態に係る符号化部の詳細ブロック図
【図16】本発明の第3の実施形態における動ベクトル探索範囲の自動設定方法の説明図
【符号の説明】
【0062】
10 撮像部
20 符号化部
30 パケット構成部
40 ネットワークI/F部
50 コマンド解析部
60 パラメータ記録部
70 入力ディジタル信号
80 動ベクトル探索範囲信号
81 前置フィルタ制御信号
90 圧縮ストリーム信号
95 符号化効率信号
100 inter/intra判定部
102 スイッチ部(No.1)
104 直交変換部
106 量子化部
108 VLC部
110 バッファ部
112 逆量子化部
114 逆直交変換部
116 フレームメモリ部
118 スイッチ部(No.2)
120 動き補償部
122 前置フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視カメラのプリセット位置毎に予め設定された画像符号化パラメータを保存しておくパラメータ記録部と、カメラ動作コマンドを解析して前記監視カメラが前記プリセット位置の監視を行うか否かを判定するコマンド解析部と、前記監視カメラが前記プリセット位置の監視を行うと前記コマンド解析部が判定したとき前記パラメータ記録部に保存されている前記プリセット位置に対応する前記画像符号化パラメータを用いて前記監視カメラから送られてくる監視画像を符号化する符号化部とを備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記画像符号化パラメータは、前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎の動ベクトル探索範囲であることを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記画像符号化パラメータは、前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎のノイズ除去フィルタ特性であることを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記監視カメラの撮影範囲を領域分割した分割領域毎の最適な前記画像符号化パラメータは、パラメータ設定可能範囲でパラメータ値と符号化効率との関係を自動的に調べ前記パラメータ記録部に保存されることを特徴とする請求項1記載の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−180200(P2006−180200A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371138(P2004−371138)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】