説明

監視装置

【課題】
監視装置の保守点検作業における人為的ミスの低減、保守作業効率の向上、正確な保守作業情報の入手を可能とする監視装置の提供を目的とする。
【解決手段】
監視装置に外部記憶媒体を装着可能とする装着部を設け、装着部への可搬記録媒体の脱着操作を監視モードと保守モードの切替手段として、可搬記録媒体に保守点検情報を記録する。また、監視装置をネットワーク手段と接続し、可搬記録媒体の装着部への脱着操作に伴う保守モード開始あるいは終了を電子メール送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置の保守点検作業のサポート機能に関する。
【背景技術】
【0002】
監視装置では、1台の装置に複数の機能を備えており、モード選択や機能設定等を使って多様な機能制御を実現している。このような監視装置の保守作業を行なう場合、保守担当者は、保守作業開始前に保守作業に影響するこれらの機能設定および運用状態を一時的に無効とし、保守作業に影響する全ての必要な項目を各々変更している。保守作業終了後は、保守作業開始前の状態に復帰する必要があるため、これらの一連の変更作業を記憶しておく必要があった。
【0003】
このような保守作業終了時に元の監視状態に戻す作業段階において、不慣れな作業者等による設定の戻し忘れや、設定を戻すときに設定値を間違って設定してしまう。
上記ヒューマンエラーを防止する従来例として、特開2000−30087号公報(特許文献1)は、「この発明は、保守点検の終了時に基の状態に戻す際に、設定の戻し忘れを防止することができる。」ことを課題として述べ、解決手段として「この発明は、自動改札装置の全ての設定を一括して装置内のメモリに保存し、さらにその設定を呼び出すことにより、全ての設定を一括して変更することのできる機能を自動改札装置に付与するようにしたものである。」と記載している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−30087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す監視装置は、複数台のカメラの映像をモニター200に分割画面表示しており、いずれかのカメラ映像に異常を検知した場合、ネットワーク201を通じて予め指定されたメールアドレスに対してメール送信を行なう設定となっている。また、全てのカメラ映像を内蔵ハードディスクドライブ202に常時記録している。
このような設定状態において、保守員が保守作業を実施しようとした場合、本体釦を使用して、モニター200、ネットワーク201、監視記録装置202を含む現在の設定を装着部に設定した可搬記録媒体203に待避する。その後、保守員は、複数台のカメラの任意の映像をモニター300に出力するように設定を変更し、保守作業にて検知した異常をメール送信しないようにネットワーク301の設定を変更し、監視記録装置302の記録の停止操作を行なった後、各種保守点検作業に入る。保守作業終了後、保守員は本体釦を使用して予め決められた操作を行なうことで、保守作業開始直前に待避した装着部に設定した可搬記録媒体303から設定および状態を読み出している。
【0006】
このような保守点検作業では、保守員自身の操作により監視モードから保守モードに手動操作で切り替えている。また、保守作業終了後に可搬記録媒体から設定および状態を読み出すことで保守点検作業前の状態にスムーズに復帰できる利点があるものの、保守員が保守点検作業開示時や終了時の本体釦操作ミスによるトラブルは防止できない。
更に、その保守点検作業が手順どおりに行なわれたかどうか、保守点検内容において間違い等をしていないかどうか等の作業内容の不透明さがあり、確認できることが求められている。
【0007】
また、従来、保守点検作業を開始および終了する場合には、作業者は管理責任者に対して携帯端末等を報告手段として用いる場合が多いが、監視記録装置の設置場所によっては携帯端末等の電波が満足に受信できない場合や、状況により携帯端末そのものを使用できない場合がある。このような場合には一旦作業場所から離れなければならず、作業時間のロスになっていた。また、携帯端末を使用できても話中などにより保守作業開始および終了を報告できずに作業時間のロスになっていた。
【0008】
本発明では以上のような問題に鑑み創案されたもので、上記課題を解決し効率よく保守作業を行なうことができる監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為、本発明の手段は、監視装置の装着部に対する可搬記録媒体の脱着操作を監視モードと保守モードの切替手段として用い、装着された可搬記録媒体に保守点検情報を記録することを特徴としている。詳細には、特許請求範囲の構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の監視装置によれば、保守点検作業における人為的ミスの低減、保守作業効率の向上、正確な保守作業情報の入手が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る監視装置の保守点検方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る監視装置システムの概略構成図である。
監視装置001は、外部ネットワークまたはローカルネットワーク010と接続して通信を可能とする通信手段002と、監視装置の一時的な設定情報を保存する監視装置の電源が入っている場合のみ記憶可能な作業メモリ003と、監視装置の設定情報を監視装置の電源が入っていない場合でも記憶可能な、例えば、EEPROM等で構成される保存メモリ004と、保守作業内容の保存が可能なUSBメモリ等の可搬記録媒体を装着するための装着部005と、監視対象を撮像する複数のカメラ006と、の映像および音声信号を記録するためのHDD007と、画面を表示するためのモニター008と、全体の制御を行うCPU009で構成されている。
【0013】
また、監視装置001の通信手段は、あらかじめ登録されている電子メール送信先に対して保守点検作業の開始を自動的に電子メール送信し、かつ、保守モードから監視モードへの切替え時に、前記電子メール送信先に対して保守点検作業の終了を自動的に電子メール送信する監視装置システムを構築している。
【0014】
図2(a)は、保守作業を開始するため、ストレージメディアを監視装置の装着部、例えば、USB端子に接続し、自動的に監視モードから保守モードに移行する際のフローチャートを表したものである。
ステップ101(S101)にて、ストレージメディアが監視装置の装着部であるUSB端子にて挿抜されたか否かを、装着部であるUSB端子に関わるハードウェア(ICチップ)が、ハードウェア(ICチップ)の挿抜の状態を示すレジスタ値の変化をCPUへハードウェア割り込み通信処理が動作することにより、YESと判断し、YESの場合はステップ102に進み、NOの場合(ハードウェア割り込み通信処理が動作しない場合)はステップ100(S100)の監視モードを継続する。
【0015】
ステップ102(S102)にて、ストレージメディアがUSB端子に有るか否かをハードウェア割り込み通信処理の内容を確認し、YESの場合はステップ103に進み、NOの場合はステップ100(S100)に戻る。
【0016】
ステップ103(S103)にて、そのストレージメディア内に保守モードに移行するための保守移行許可コードが含まれているかを検索する。この保守移行許可コードは、あらかじめ定められた独自のファイル名称を持ったテキスト形式で構成されており、ストレージメディア内に存在しているか否かで判断する。通常のストレージメディア使用時はストレージメディア内に存在しないファイルである為、たとえば保守モードに移行するためではなく、監視モードでの記録画像などのデータバックアップ用途の為にUSB端子に挿入されたストレージメディアである場合等は保守モードへの移行は行なわない。
【0017】
ステップ103(S103)にて、YESの場合はステップ104に進み、NOの場合はステップ100(S100)に戻る。
【0018】
ステップ104(S104)にて、監視装置を監視モードから保守モードに自動的に移行する。
図2(b)は、保守作業を終了するため、ストレージメディアをUSB端子から外して、保守モードから監視モードに移行する際のフローチャートを表したものである。
ステップ106(S106)にて、ストレージメディアがUSB端子にて挿抜されたか否かを判断し、YESの場合はステップ102に進み、NOの場合はステップ105(S105)の保守モードを継続する。
【0019】
ステップ107(S107)にて、ストレージメディアがUSB端子に有るか否かを確認し、YESの場合はステップ108に進み、NOの場合はステップ105(S105)に戻る。
【0020】
ステップ108(S108)にて、機器を保守モードから監視モードに自動的に移行し再起動を行なう。保守作業終了時は、再起動により復旧するため保存メモリの内容を読み出して作業メモリの設定を元の状態に戻すことができる。
【0021】
図2に示すモード切り替えにより、保守作業者が作業前の設定状態をあらかじめ覚えておく必要が無く、また作業前の設定状態を意識することなく保守内容に応じた設定に変更して作業を行なうことができる。また、作業終了時には監視記録装置を再起動することで作業前の設定状態に容易に戻すことができる。
【0022】
図3は、監視装置の作業メモリと保存メモリに設定変更情報を記録する様子を表すイメージ図である。監視装置は、作業メモリ100と保存メモリ101の二つの記憶メモリから構成している。保存メモリは電源供給が停止しても機器に記憶可能な領域であり、作業領域は電源供給している間のみ記憶が可能な領域である。
【0023】
図3(1)は、監視装置への電源供給開始時に、保存メモリ101から作業メモリ100への設定内容を読み出して、作業メモリ100に設定する様子を模式的に表している。
【0024】
図3(2)は、監視モードにおける設定変更の様子を模式的に表し、作業メモリ100と保存メモリ101の二つの設定内容を書き換える様子を示す。
【0025】
図3(3)は、保守モードにおける設定変更の様子を模式的に表し、作業メモリ100の設定内容を書き換える一方保存メモリ101への書き込みを禁止する様子を示す。
【0026】
図4は、保守モード開始時及び終了時の電子メール送信の動作フローチャートを表したものである。
【0027】
保守作業を開始し、監視モードから保守モードに移行した際、
ステップ115(S115)にて、あらかじめ保守用の電子メールアドレスが登録されているかどうか登録内容の確認を行なう。保守用メールアドレス登録有りと判定された場合、ステップ116(S116)に進み、保守用メールアドレス登録無と判定された場合、ステップ117(S117)に進む。
【0028】
ステップ116(S116)にて、監視装置のネットワーク機能を用いてアドレス登録先に対して保守作業開始を知らせる電子メールを送信し、ステップ117(S117)に進む。
【0029】
ステップ117(S117)にて、保守モードの各種点検作業を行い、保守点検作業が終了するとステップ118(S118)に進む。
【0030】
ステップ118(S118)にて、保守作業を終了し保守モードから監視モードに移行し、ステップ119(S119)に進む。
【0031】
ステップ119(S119)にて、あらかじめ保守用の電子メールアドレスが登録されているかどうか、登録内容の確認を行なう。登録されている場合は、ステップ120(S120)に進み、登録されていない場合は、そのまま監視モードに入る。
【0032】
ステップ120(S120)にて、監視装置のネットワーク機能を用いて登録先に対して保守作業開始を知らせる電子メールを送信した後、監視モードに入る。
【0033】
保守モード開始時及び終了時に、あらかじめ登録されている電子メール送信先に対して保守点検作業を開始および終了することを自動的に電子メール送信することにより、作業者が作業を中断して報告する手間が省けるとともに、開始及び終了した日時が自動的に付加されることにより正確な日時を通知することができる。また、同時に複数の保守対応物件で作業を実施する場合等は、報告完了するまでの間、作業が停滞してしまうことが解消されるため、非常に効率よく保守作業を行なうことができる。
【0034】
図5は保守操作内容保存の動作フローチャートを表したものである。
ステップ122(S122)にて、ストレージメディアが監視装置の装着部に装着され、ストレージメディアに保守モードへの移行コードが存在することか確認されると、ステップ123(S123)に進む。他方、ストレージメディアの挿入あるいはストレージメディアに保守モードへの移行コードが存在しない場合は、ステップ127(S127)に進み、ステップ127(S127)にて、保守モードの各種点検作業を行い、各種点検作業が完了するとステップ128(S128)に進み、ストレージメディアが監視装置から外されると保守モードから監視モードに切替る。
【0035】
ステップ123(S123)では、保守モードの各種点検作業を行い、ステップ124(S124)
に進む。
【0036】
ステップ124(S124)にて、保守モードの操作内容、設定変更内容、異常発生内容を逐次テキストファイル形式でストレージメディアに記録し、ステップ125(S125)に進む。
ステップ125(S125)にて、保守モードの各種点検内容が完了したか否かを判定し、完了
した場合は、ステップ126(S126)に進む。完了していない場合はステップ123(S123)に戻る。
【0037】
ステップ126(S126)にて、ストレージメディアが監視装置から外されることを確認した場合、保守モードから監視モードに切替る。
【0038】
ストレージメディアに、点検操作内容を逐次記憶して保守点検作業履歴を保存することにより、作業手順のフィードバックが可能となり、作業者が手順を間違っていないか、確認漏れが無いか等を管理責任者が確認することで、作業者のスキルアップにもつながる。
【0039】
また、本記録内容を保守作業報告書として活用することにより、事務作業を短縮することができ、繁雑時に報告書の作成漏れ等を防ぐことができる。
【0040】
コスト面においても、保守作業内容をネットワーク経由してデータベース登録するような既存のシステムとは異なり、安価な可搬記録装置を用いることで、設備費用を低く抑えかつ同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る監視装置のシステム構成を概略的に示した図
【図2】可搬記録媒体挿抜による保守モード動作フローチャート
【図3】メニュー設定保護動作詳細
【図4】メール送信実施動作フローチャート
【図5】保守操作内容保存実施動作フローチャート
【図6】従来の監視装置におけるシステムの概略構成を示した図
【符号の説明】
【0042】
103:通常時の設定変更操作
104:書き込み処理
105:保守作業時の設定変更操作
106:書き込み処理禁止

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカメラと、前記複数のカメラの映像を映すモニターと、前記複数のカメラの映像を記録する記録部と、可搬記録媒体を装着する装着部を有する監視装置であって、少なくとも監視モードと保守モードの2種類の制御手段を有し、前記可搬記録媒体を前記装着部に接続することにより監視モードを保守モードに切替え、前記可搬記録媒体を前記装着部から外すことにより保守モードを監視モードに切替る切替手段を設けることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
複数のカメラと、前記複数のカメラの映像を映すモニターと、前記複数のカメラの映像を記録する記録部と、可搬記録媒体を装着する装着部を有する監視装置であって、少なくとも監視モードと保守モードの2種類の制御手段を有し、前記可搬記録媒体を前記装着部に接続した際に前記可搬記録媒体が保守モード用媒体であることを示すコード情報の有無を判定して、コード情報有と判定した場合は監視モードから保守モードに切替え、コード情報無と判定した場合は監視モードを継続する判定切換手段と、前記可搬記録媒体を前記装着部から外すことにより保守モードを監視モードに切替る切替手段を設けることを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2記載の監視装置であって、外部ネットワークまたは内部ネットワーク、もしくは、その両方のネットワーク手段と接続し、前記監視モードから保守モードへの切替え時、あらかじめ登録されている電子メール送信先に対して保守点検作業の開始を自動的に電子メール送信し、かつ、保守モードから監視モードへの切替え時に、前記電子メール送信先に対して保守点検作業の終了を自動的に電子メール送信する通信手段を設けることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2あるいは請求項3記載の監視装置であって、前記複数のカメラ、前記モニター、前記記録部の接続に関する設定情報を記録する保存メモリと作業メモリを設け、前記監視装置の電源投入時に、前記保存メモリに記憶している前記設定情報を前記作業メモリに記録し、前記監視モードにおいては、前記保存メモリと前記作業メモリに接続設定の変更情報を記録し、前記保守モードにおいては、前記作業メモリと前記可搬記録媒体に点検設定情報を記録し、保守モードから監視モードへの切替え時、前記保存メモリに記憶している接続設定情報を前記作業メモリに記録する制御手段を設けることを特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−105515(P2009−105515A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273305(P2007−273305)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】