説明

目地部材およびそれを用いた化粧板の施工方法

【課題】壁材、天井材等の化粧板の目透かし施工を目地部材を用いて簡易に行うことができ、現場での化粧板の切断精度が低くても意匠性に優れた目透かし施工ができる、目地部材及び化粧板の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】長尺帯状の基部と、基部の略中央にある目透かし部と、目透かし部を挟んで基部から立ち上がり角が90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片と、立ち上がり片の基部側に基部より垂直に立ち上がると共に立ち上がり片から段差を有して外側に突き出す化粧板当接面が立ち上がり片の先端当接面よりも内側に配置される目地部材の基部を下地材に固定した後、該目地部材を間に挟み双方より化粧板端面を立ち上がり片に当接させると共に化粧板を下地材に固定することで、意匠性に優れた目透かし施工の化粧面が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材、天井材等の化粧板の目透かし施工を目地部材を用いて簡易に行うことができる意匠性に優れた化粧板の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より壁面や天井面に化粧板を施工する際には、一般的に化粧板の木口同士を接触させて隙間無く配置する突き付け工法により施工していたが、湿気や乾燥で化粧板が伸縮して目隙きや反りが発生すると目地部が目立ち、見苦しくなる場合があった。また、地震等の大きな応力によりヒビ等が発生する等の不具合があった。
【0003】
当該不具合を解消する方法として、化粧板の端部同士に若干の隙間を空けて配置する目透かし施工が行われている。目透かし施工では、目隙きや反りによる目地部の目立ちやヒビ等の発生は防止されるが、化粧板の木口が露出して見苦しいため、予め木口に表面と同様の塗料を塗布したり化粧シートを木口まで巻き込むことで木口を目立ち難くすることができる。しかし、現場で寸法調整するために木口を切断すると木口が露出し意匠性が劣るため、現場加工をしないで済むように工場で寸法調整した多種類の化粧板が必要となりコストアップになると共に精密な割付が必要で施工に時間がかかるという問題が発生する。
【0004】
さらに、当該問題を解決する方法として、化粧板の目地部に軟質合成樹脂の目地部材を設ける目地構造が開示されている。本特許では図7に示す目地部材51を図6に示すように下地材53に固着し、目地部材51の可撓性のヒレ状体54に化粧板(サイディング材)52の端部を当接することにより表面に位置する目地部55によって化粧板52の木口を覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−13509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法においても化粧材52と目地部材51の材質感の違いによって外装材としては問題ないものの、内装材としての意匠性は十分とは言えない。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、壁材、天井材等の化粧板の目透かし施工を目地部材を用いて簡易に行うことができ、現場での化粧板の切断精度が低くても意匠性に優れた目透かし施工ができる、目地部材及び化粧板の施工方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を解決するために、請求項1に係る目地部材の発明は、長尺帯状の基部と基部の略中央にある目透かし部と目透かし部を挟んで基部から立ち上がり角が90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る目地部材の発明は、請求項1の目地部材において、立ち上がり片の基部側に基部より垂直に立ち上がると共に立ち上がり片から段差を有して外側に突き出す化粧板当接面が立ち上がり片の先端当接部よりも内側に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る目地部材の発明は、請求項1又は2に記載の目地部材において、少なくとも一対の立ち上がり片と目透かし部に化粧仕上げ層が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る目地部材の発明は、請求項1乃至3に記載の目地部材の基部を下地材に固定した後、該目地部材を間に挟み双方より化粧板端面を立ち上がり片の先端当接部と化粧板当接面に当接させると共に化粧板を下地材に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明による目地部材は、長尺帯状の基部と基部の略中央にある目透かし部と目透かし部を挟んで基部から立ち上がり角が90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片とを有するので、化粧板を立ち上がり片に当接させた場合、化粧板端面の表面側が立ち上がり片の先端当接部に密着し、現場で精度の低い切断を行っても隙間が開くことがなく、切断された木口面が露出することはない。
【0013】
請求項2に係る発明では、目地部材の立ち上がり片の基部側に基部より垂直に立ち上がると共に立ち上がり片から段差を有して外側に突き出す化粧板当接面が立ち上がり片の先端当接部よりも内側に配置されるので、化粧板端面と化粧板当接面が面接触して当接され、化粧板端面の表面近傍部分に当接による強い圧縮力がかからないため、目に付く化粧板端面の表面近傍部分の万一の破損を防止できる。
【0014】
請求項3に係る発明では、少なくとも目地部材の一対の立ち上がり片と目透かし部に化粧仕上げ層が設けられているので、外側に露出する立ち上がり片と目透かし部の意匠性を高めることができ、目地部材を使用しても見映えのよい目地部分を提供することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3に記載の目地部材を用いた化粧板の施工方法であり、目地部材の基部を下地材に固定した後、該目地部材を間に挟み双方より化粧板端面を立ち上がり片の先端当接部と化粧板当接面に当接させると共に化粧板を下地材に固定することで、簡単な施工作業でに意匠性に優れた化粧板の目透かし施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】目地部材の一例を示す断面図。
【図2】図1記載の目地部材の一部拡大図。
【図3】化粧仕上げを行った目地部材の一例を示す断面図。
【図4】図1記載の目地部材を用いた目地構造の一例を示す断面図。
【図5】図3記載の目地部材を用いた目地構造の一例を示す断面図。
【図6】従来技術の目地構造の一例を示す断面図。
【図7】従来技術の目地構造に用いる目地部材の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための実施形態を図1から図5を用いて説明する。もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0018】
本発明に係る目地部材1は、図1に示すように、長尺帯状の基部11と基部の略中央にある目透かし部13と目透かし部13を挟んで基部11から立ち上がり角αが90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片12からなり、必要に応じて、立ち上がり片12の基部側に基部11より垂直に立ち上がると共に立ち上がり片12から段差18を有して突き出す化粧板当接面14を有する。
【0019】
目地部材1の材質としては、ABS、ポリプロピレン、アクリル、スチロール、硬質塩ビ等の硬質樹脂の押出し製品を用いることで、硬質で強度の大きな部材でありながら若干の柔軟性を有するので、化粧板2の表面側に密着して隙間が生じない。樹脂部材の他にアルミ押出し製品等の金属部材を用いても良い。なお、金属部材の場合は立ち上がり片12が変形可能な程度に薄肉化することが好ましい。
【0020】
基部11は目地部材1を壁や天井の下地に固定するための部分で、この部分での化粧板の浮き上がりを抑えて不陸の発生を防止するため厚さは1mm以下が好ましい。基部は左右が夫々10mm程度の幅を有し、基部11の略中央部に目透かし部13が設けられるので、墨出しを行わなくても簡単に一定幅の目透かし施工を行うことができる。目透かし部13の幅は特に限定しないが、一般的な目透かし施工の目地幅と同等で3mm前後から10mm程度で設定されるのが好ましい。目地部材1の長さは一般的な見切り材と同等で良く最大3m程度である。
【0021】
目透かし部13を挟んで一対の立ち上がり片12が基部11から突設する。立ち上がり片12の立ち上がり角αは90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に形成され長尺方向に連続するので、立ち上がり片12の先端当接部17が化粧板端面21の表面近傍部分に密着して、現場で切断する際の木口の切断ムラが外部に露出せず(隙間が開かない)見映えの良い外観が得られる。立ち上がり角αは85度前後が望ましく、基本的に左右一対の立ち上がり片12の立ち上がり角αは略同一に設けられる。
【0022】
立ち上がり片12の先端には面取部15が設けられ、引っかかりを防止し厚みを見かけ上薄くすることができ目立ち難く見映えを良くすることができる。基部側に立ち上がり片12から段差18を有して外側に突き出す化粧板当接面14を設けることで、化粧板端面21が裏面近傍部分で化粧板当接面14と面接触して当接されるので、化粧板当接面14がない場合のように化粧板端面21が表面近傍部分で立ち上がり片12の先端当接部17のみに線接触で当接することによる強い圧縮力がかからないため、化粧板端面21の表面近傍部分の万一の破損を防止できる。また、化粧板当接面14の垂直方向の面は立ち上がり片12の先端当接部17よりも内側に配置されるので、立ち上がり片12の先端当接部17と化粧板端面21の表面近傍部分には隙間が生じない。
【0023】
さらに、目地部材1の各部寸法について図2の拡大図により説明すると、立ち上がり片12から外側に突き出す段部18の寸法aは0.1〜1.0mm、化粧板当接面14と先端当接部17の距離bは0.1〜1.0mmが好ましく、基部11から立ち上がり片12の先端までの距離cは化粧板2の厚みよりも同等か若干大きく設定される。また、立ち上がり片12の厚さdは実用強度を保持しながら外観上目立ち難くするため、樹脂の場合は0.3〜1.0mm程度で好ましくは0.5mm前後、金属の場合は0.2〜0.5mm程度で好ましくは0.3mm前後に設定される。
【0024】
図3は図1に示す目地部材1に化粧仕上げを行った以外は図1と同様なため、共通部分の説明は省略する。化粧仕上げ層15は少なくとも目地部材1の一対の立ち上がり片12と目透かし部13に設けられる。化粧仕上げ層15は化粧シート(樹脂、紙、突板)でも塗装でも良く一般的に市販されているもので良く、材質、厚み等は限定しない。目地部材1の化粧仕上げ層15と化粧板2の化粧仕上げ層25を同じものとすれば外観上一体感のある化粧面が得られる。また、目地部材1の化粧仕上げ層15と化粧板2の化粧仕上げ層25を別の柄や色としアクセントを設けた意匠とすることもできる。
【0025】
施工手順を以下に示す、(1)下地材3(柱に固定された胴縁や合板、石膏ボード等の板材)に墨打ちして固定位置を決めた後、目地部材1の基部11を下地材3に両面テープ、接着剤、釘、ビス、ステープル等で固定する。(2)化粧板2を必要に応じて現場で切断しした後、一方側の化粧板2の化粧板端面21を立ち上がり片12の先端当接部17に当接させ立ち上がり片12を押し込みながら化粧板当接面14に当接するまで変形させる。他方側の化粧板2についても同様の作業を行う。(3)化粧板2を下地材3に固定する(両面テープ、接着剤、釘、ビス、ステープル、等)。
【0026】
以上の施工方法により、図4、5に示すように、目地部材1を設けた目透かし部13によって、一定幅で精度の良い目地を有する目透かし施工が容易に行うことができると共に、目透かし部13を挟んで基部11から立ち上がり角αが90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片12によって、化粧板2の木口が見えない意匠性に優れた、目地を形成することができる。

【産業上の利用可能性】
【0027】
壁材、天井材等の化粧板の目透かし施工を目地部材を用いて簡易に行うことができる意匠性に優れた化粧板の施工方法を提供できる。

【符号の説明】
【0028】
1 目地部材
2 化粧板
3 下地材
11 基部
12 立ち上がり片
13 目透かし部
14 化粧板当接面
15 面取部
16 化粧仕上げ層(目地部材)
17 先端当接部
18 段差
21 化粧板端面
25 化粧仕上げ層(化粧板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の基部と基部の略中央にある目透かし部と目透かし部を挟んで基部から立ち上がり角が90度未満で上方向に向かって外側に広がるように傾斜状に突設する一対の立ち上がり片とを有することを特徴とする目地部材。
【請求項2】
請求項1の目地部材において、立ち上がり片の基部側に基部より垂直に立ち上がると共に立ち上がり片から段差を有して外側に突き出す化粧板当接面が立ち上がり片の先端当接部よりも内側に配置されることを特徴とする目地部材。
【請求項3】
少なくとも一対の立ち上がり片と目透かし部に化粧仕上げ層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の目地部材。

【請求項4】
請求項1乃至3に記載の目地部材の基部を下地材に固定した後、該目地部材を間に挟み双方より化粧板端面を立ち上がり片の先端当接部と化粧板当接面に当接させると共に化粧板を下地材に固定することを特徴とする目地部材を用いた化粧板の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−69046(P2011−69046A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218380(P2009−218380)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】