説明

目視視認支援装置

【課題】目視情報を得ることができる光学機器に、暗順応に影響を与え視認性が低下しないように各種情報を表示させることができる目視視認支援装置を提供する。
【解決手段】自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器50において、光学機器50の視野領域の中央部以外に設けて目視視認に関連した情報を表示する表示手段90と、表示手段90の明るさを調節する調光手段60とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器を用いた目視視認支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海洋上での船舶の安全航行を図るために、双眼鏡などの光学機器を用いて舷灯や他船の点灯や色識別を行っている。初認を船舶搭載のレーダーで行った場合には、目視による確認が必要となるが、レーダー情報と目視情報との一致確認には、複数のツールが必要となり、目標を割り出すまでに長時間を要してしまう。一方、レーダーで認識できない他船の大きさ、進行方向、及び船尾・船首方向などの確認は、光学機器を用いて目視にて行われている。
目視情報にレーダー情報を重畳するシステムが既に提案されているが、レーダーを搭載している大型船舶向けで高価であるため、小型船舶への普及には難しい現状にある。
CCD(Charge Coupled Device)などで電子化された映像に、レーダー情報を重畳することは可能であるが、CCDでは、ダイナミックレンジが狭く、晴天や逆光、新月の暗夜など、自然光下の周囲環境に対応することは困難であり、目視情報での判断が必要となる。
目視情報を得ることができる光学機器に、各種データを表示させる場合には、ヒトの暗順応を低下させない配慮が重要である。
【0003】
特許文献1で提案されているGPSを利用した望遠鏡では、GPS衛星からの測位信号を受信し現在位置を演算する測位手段と、演算された現在位置情報と、外部機器から送信された外部機器の位置情報とに基づいて、2点間の距離、高度差、方位角を算出する相対位置演算手段と、得られた距離、高度差、方位角表示させる通知手段とを有している。
また、特許文献2で提案されている観察用光学機器では、GPS測位信号を受信して双眼鏡の緯度経度及び標高を演算するGPS測位手段と、光学機器の視準線の方位を検出するコンパスと、水平面に対する光学機器の視準線の傾き角を検出する傾き検出手段と、目標物の緯度経度及び標高が記憶された位置情報記憶手段と、GPS測位手段から入力された双眼鏡の緯度経度及び標高、並びに位置情報記憶手段から入力された目標物の緯度経度及び標高に基づいて光学機器から目標物への方位及び垂直方向角を演算する演算手段と、光学機器から目標物への方位及び垂直方向角、並びに光学機器の視準線の方位及び水平面に対する光学機器の視準線の傾き角を表示する表示手段を有している。
【0004】
また、特許文献3で提案されているGPS回路搭載の双眼鏡は、GPS回路と、表示部と、GPS回路で受信されたデ−タを処理して表示部に表示させる表示制御手段とを有している。
また、特許文献4で提案されている透明LCD付望遠鏡では、対物レンズの結像位置に透明なLCDを設けた望遠鏡と、視野内の目視像に関する諸情報を計測する複数の計測手段と、各計測手段を制御してLCDに表示信号を伝達する制御手段と、制御手段を操作して所望の情報をLCDに表示させる操作手段とを有している。
【0005】
また、特許文献5で提案されている天体望遠鏡では、方位検出手段により検出された方位及び傾き手段により検出された傾きによって特定される方向で観測される所定範囲の星図画像を表示する星座早見モードを有している。
また、特許文献6で提案されている天体観測機器では、天体データを有するサーバと、指定した特定の天体の天体データをサーバから受け取る端末とを有して、受け取った天体データに基づいて特定の天体を捉えている。
【0006】
また、特許文献7で提案されている情報提供方法では、回動可能に設置された望遠鏡において、閲覧している風景に重ね合わせて対象物の情報を表示する方法が提案され、この方法によれば、例えば望遠鏡で閲覧中の牧場やホテルの名前などがディスプレイのウィンドウに映し出される。
また、特許文献8で提案されている情報表示装置では、被写体の関係情報を記録した記録媒体と、光学機器を介して見えている被写体の映像の関係情報を記録媒体から読み出し、読み出された関係情報を情報表示部に表示し、関係情報を映像に合成し、接眼レンズを通して合成された映像を見ることができる。
【0007】
また、特許文献9で提案されている観光用眼鏡では、その場所における風景に関するキャラクタ(名称)データの中から、観光用眼鏡を向けた方向の風景に対応するキャラクタデータ部分を取り出して観光用眼鏡内の表示手段にそのキャラクタ画像を表示し、このキャラクタが実風景の像中にスーパインポーズされるようにキャラクタ画像と実風景データの像を重畳させることにより、看者が、観光用眼鏡を通して風景を鑑賞する際にその主要各部の名称を直ちに知ることができる。
また、特許文献10で提案されている情報提示装置では、カメラ一体型VTR、望遠鏡などで、画像における物体の名称や説明などの属性データをユーザーに提示する。
【0008】
一方、特許文献11で提案されている電子カメラ付双眼鏡では、双眼の一方の光路内に撮像素子を出し入れ自在に配置し、双眼の他方の光路内に、光軸に直交する方向に移動可能に視野枠スライド部材を配置している。
また、特許文献12では、被検査物の寸法情報を液晶表示パネルで顕微鏡の視野範囲内に表示している。
また、特許文献13では、測定データを表示する表示体を拡大鏡の鏡胴内に被観測物と同時に直視可能に設置している。
なお、明るさ検出手段により検出された明るさに基づいてフォーカス駆動手段の駆動位置を制御する望遠鏡が特許文献14で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−206750号公報
【特許文献2】特開2002−221670号公報
【特許文献3】特開平5−72486号公報
【特許文献4】実願昭63―136692号(実開平2−58718号))の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(平成2年4月26日特許庁発行)
【特許文献5】WO2004/107013号公報
【特許文献6】特開2002−48982号公報
【特許文献7】特開2005−175712号公報
【特許文献8】特開平11−211993号公報
【特許文献9】特開平9−96766号公報
【特許文献10】特開平10−13720号公報
【特許文献11】特開平11−112851号公報
【特許文献12】実願昭59―137963号(実開昭61−54214号))の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(昭和61年4月11日特許庁発行)
【特許文献13】特開昭53−104260号公報
【特許文献14】特開2005−141005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1から特許文献10で示されているように、双眼鏡や望遠鏡などの光学機器において、GPS、方位センサ、姿勢センサなどの情報に基づく情報を表示させるものが既に提案されているが、いずれも目視視認を行う視野範囲に重畳して表示が行われているために視野領域が素通しとなっていないか、目視視認を行う視野範囲とは別の表示手段を備えたものである。
目視視認を行う視野範囲に表示が行われ、素通しとなっていない場合には、ハーフミラーや透明液晶等の重畳させる手段により光量が大幅に低下し、特に夕方や夜間の観測における視認性が低下してしまう。また、光量の低下とともに重畳させる手段により光のスペクトルも変化し、ヒトの暗順応に頼った視認性も低下してしまう。
特許文献11では、素通しによる目視視認ができるとともに、一方の光路内に撮像素子を出し入れ自在に配置し、他方の光路内に移動可能に視野枠スライド部材を配置しているが、常時は、撮像素子を光路外に移動させて、通常の双眼鏡として使用し、撮影時には、撮像素子を光路内に移動させて、その光路を撮影系とし、他方の光路をファインダ系とするものであり、双眼鏡としての機能と電子カメラとしての機能を使い分けるためのもので、目視情報を得ることができる光学機器に各種データを表示させるものではない。
【0011】
一方、特許文献12及び特許文献13では、素通しによる目視視認ができるとともに、この目視視認範囲内に他のデータを表示させることができる。
しかし、特許文献12及び特許文献13は、顕微鏡であるがために、そもそも人工的に調光された光の中で目視視認されるもので、自然光下の周囲環境を見るものではない。
昼夜の自然光の下では明暗変化が大きく、視認性の観点から明るい環境下では表示手段を明るくする必要があり、暗い環境下では表示手段を暗くする必要がある。暗順応は、暗い状態になる前にどれだけの明るさに目が馴れているかによって変わってくる。前順応光が明るい場合は、暗順応には30分くらいの時間がかかる。また、前順応光が相当暗い場合でも、馴れるまでに10分から20分くらいの時間を要するとされている。
暗順応には時間がかかるが、暗順応した状態で明るい光が入射すると、一瞬で暗順応が破られてしまい、それまで目視できた暗い状態における対象物が見えなくなる。このため、暗い状態の下では、特に表示手段の表示光には注意を払う必要がある。
【0012】
そこで本発明は、目視情報を得ることができる光学機器に、暗順応に影響を与え視認性が低下しないように各種情報を表示させることができる目視視認支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載に対応した目視視認支援装置においては、自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、光学機器の視野領域の中央部以外に設けて目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、表示手段の明るさを調節する調光手段とを備えたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができる。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の目視視認支援装置において、調光手段による、夜間における表示手段の明るさの上限を設定する上限設定手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、明るい光による暗順応が破られることを防止することができ、暗順応の状態を維持することができる。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の目視視認支援装置において、表示手段の夜間における表示光として、赤色系の光を用いたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、桿体細胞の感度の低い赤色系の光を用いることで桿体細胞の飽和を防ぎつつL錐体細胞による視力を確保でき、また赤色系の光によってロドプシンの分解を防ぐことができるため、暗順応に掛かる時間を短くすることができる。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の目視視認支援装置において、調光手段による明るさの調節範囲を、昼間と夜間とで異ならせる調光範囲制御手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、昼間時には表示手段による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の目視視認支援装置において、光学機器の周囲の明るさを検出する明るさセンサをさらに備え、明るさセンサの検出結果に応じて調光手段を制御したことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、周囲の明るさに応じて表示手段の明るさを調整することで、表示を見やすくすることができるとともに、周囲観察に影響を与えることがない。
請求項6記載の本発明は、請求項2から請求項5のいずれかに記載の目視視認支援装置において、表示手段の表示状態や設定を昼間と夜間で切り換える昼夜切換手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、昼間時には表示手段による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の目視視認支援装置において、表示手段を視野領域に出し入れ可能に構成したことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、表示手段を視野領域から外すことができるため、素通しによる目視視認範囲を広げることができる。
請求項8に対応した目視視認支援装置においては、自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、光学機器の視野領域の中央部以外に設けた目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、表示手段の明るさを調節する調光手段と、少なくとも光学機器の目視視認する方位を検出する方位検出手段、光学機器の姿勢角を検出する姿勢角検出手段、及び光学機器の位置を検出する位置検出手段のうちの1つとを備えたことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができる。また、請求項8に記載の本発明によれば、方位検出手段、姿勢角検出手段、及び位置検出手段のうちの1つを光学機器に備えているため、外部から情報を得ること無しに、方位、姿勢角、又は地理的位置を把握することができる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の目視視認支援装置において、光学機器の視野領域に基準となる視野垂直線及び/又は視野水平線を設け、表示手段にも視野垂直線に合せた表示手段垂直線及び/又は視野水平線に合わせた表示手段水平線を設け、方位検出手段による方位を視野垂直線に基づいて検出し、及び/又は姿勢角検出手段による姿勢角を視野水平線に基づいて検出したことを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、光学機器の視野領域に表示される視野垂直線や視野水平線を基準に方位や姿勢角が検出されるため、目視視認に合わせた方位や姿勢角を把握することができる。
請求項10記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の目視視認支援装置において、方位検出手段、姿勢角検出手段、位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた検出結果を表示手段に表示したことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、周囲環境を観察する場合に、この周囲環境を視認しつつ、対象物の方位や俯仰角、又は対象物に関するデータを同時に視認することができる。
請求項11記載の本発明は、請求項8から請求項10のいずれかに記載の目視視認支援装置において、方位検出手段、姿勢角検出手段、位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた関連情報を表示手段に表示したことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、周囲環境内に対象物が存在する場合にはこの対象物に関するデータも視認することができる。
請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の目視視認支援装置において、表示手段に検出結果及び/又は関連情報を、スクロールして表示可能とするスクロール手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、表示手段を限られた視野領域の一部に限っているため、表示領域が狭く多くの情報を表示させることができにくいが、スクロール表示によって多くの情報を表示させることができる。
請求項13記載の本発明は、請求項10から請求項12のいずれかに記載の目視視認支援装置において、表示手段の表示を固定的に取り込む固定取込手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項13に記載の本発明によれば、対象物に関するデータを、更新することなく固定させて表示を維持、記憶することで、光学機器を対象物に維持しなくても、また後からでもデータ内容を再確認できる。
請求項14記載の本発明は、請求項8から請求項13のいずれかに記載の目視視認支援装置において、光学機器に機器用計時手段をさらに備え、少なくとも方位検出手段、姿勢角検出手段、及び位置検出手段のうちの1つの検出信号及び/又は光学機器への接眼状況の時間的変化に基づいて、光学機器に供給される電力を抑制したことを特徴とする。請求項14に記載の本発明によれば、検出信号や光学機器への接眼状況の時間的変化によって不使用状態を検出して供給電力を抑制することで、消費電力を少なくし、又は電池容量を小さくすることでの光学機器の軽量化や使用時間の延長を図ることができる。
請求項15記載の本発明は、請求項11又は請求項12に記載の目視視認支援装置において、検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて関連情報を取得し、関連情報を光学機器に送信する中継手段をさらに備えたことを特徴とする。請求項15に記載の本発明によれば、関連情報の取得を中継手段で行わせることで、光学機器の小型化及び軽量化を図ることができ、モバイル性を高めることができる。
請求項16記載の本発明は、請求項15に記載の目視視認支援装置において、中継手段にはさらに記憶手段を備え、受信、送信に関連した情報を記憶したことを特徴とする。請求項16に記載の本発明によれば、中継手段に受信、送信に関連した情報を記憶させることで、光学機器での観測を、観測者以外でも確認でき、蓄積した情報の再確認や分析を行うことができる。
請求項17記載の本発明は、請求項11から請求項16のいずれかに記載の目視視認支援装置において、関連情報には、GIS(地理情報システム)情報、AIS(船舶自動識別システム)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報、又は設定した目標物の方向を指示するガイド機能情報を含むことを特徴とする。請求項17に記載の本発明によれば、周囲環境内に存在する対象物に関する情報を視認することができるとともに、ガイド機能情報により対象物を短時間で捉えることができる。
請求項18記載の本発明は、請求項15から請求項17のいずれかに記載の目視視認支援装置において、中継手段に中継手段用計時手段をさらに備え、検出信号、関連情報の時間的な取得状況を管理したことを特徴とする。請求項18に記載の本発明によれば、光学機器を用いた目視視認作業が正しく行われているかを管理することができる。
請求項19記載の本発明は、請求項15から請求項18のいずれかに記載の目視視認支援装置において、検出信号を中継手段に送信し、中継手段で処理した処理信号を光学機器に戻し、光学機器の所定の操作に基づいて、処理信号を基準にして系の故障を検出したことを特徴とする。請求項19に記載の本発明によれば、光学機器に対する自己診断機能を搭載することで、誤った観測を防止することができる。
請求項20に対応した目視視認支援装置においては、自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、光学機器の視野領域の中央部以外に設けた目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、光学機器の観測する方位を検出する方位検出手段と、光学機器の姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、時間を計測する計時手段と、方位検出手段と姿勢角検出手段と計時手段の検出信号に基づいて光学機器の地理的位置を算出する地理的位置算出手段とを備えたことを特徴とする。請求項20に記載の本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができる。また、請求項20に記載の本発明によれば、地理的位置算出手段によって地理的位置を算出する機能を光学機器に備えているため、外部から情報を得ること無しに、地理的位置を把握することができる。
請求項21記載の本発明は、請求項20に記載の目視視認支援装置において、光学機器の地理的位置を検出する位置検出手段をさらに備え、地理的位置算出手段を位置検出手段による検出ができないときに機能させたことを特徴とする。請求項21に記載の本発明によれば、通常は位置検出手段による地理的位置を利用できるとともに、位置検出手段が使えない状況に陥っても地理的位置算出手段によって地理的位置を把握できる。
請求項22記載の本発明は、請求項1から請求項21のいずれかに記載の目視視認支援装置において、光学機器を双眼鏡としたことを特徴とする。請求項22に記載の本発明によれば、例えば船舶に搭載されて周囲環境の観測に用いられることで、船舶における操船時や航行時の監視負担を軽減でき、特に夜間や濃霧における安全性を向上させることができるなど、手軽に利用することができる。
請求項23記載の本発明は、請求項22に記載の目視視認支援装置において、双眼鏡を上下逆にして使用したときに、表示手段の表示も逆に表示したことを特徴とする。請求項23に記載の本発明によれば、双眼鏡の上下逆使いによっても表示手段の表示情報を利用することができる。
請求項24記載の本発明は、請求項22又は請求項23に記載の目視視認支援装置において、双眼鏡の焦点合わせに連動して、表示手段の表示範囲を変更したことを特徴とする。請求項24に記載の本発明によれば、光学機器の視野領域に多くの対象物が存在する場合にも、目視視認の対象である対象物を主とした表示内容とすることができる。
請求項25記載の本発明は請求項22から請求項24のいずれかに記載の目視視認支援装置において、表示手段を視野領域の上部及び/または下部に水平方向に設け、双眼鏡の目幅調節時に表示を機構的あるいは表示制御的に水平に保つことを特徴とする。請求項25に記載の本発明によれば、視野領域の中央部以外に表示手段を配置するとともに表示を水平に保つことで、素通しによる目視視認を確保できるとともに、表示手段の表示を常に見やすい状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができる。
なお、調光手段による、夜間における表示手段の明るさの上限を設定する上限設定手段をさらに備えたときは、明るい光による暗順応が破られることを防止することができ、暗順応の状態を維持することができる。
【0015】
また、表示手段の夜間における表示光として、赤色系の光を用いたときは、桿体細胞の感度の低い赤色系の光を用いることで桿体細胞の飽和を防ぎつつL錐体細胞による視力を確保でき、また赤色系の光によってロドプシンの分解を防ぐことができるため、暗順応に掛かる時間を短くすることができる。
また、調光手段による明るさの調節範囲を、昼間と夜間とで異ならせる調光範囲制御手段をさらに備えたときは、昼間時には表示手段による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
また、光学機器の周囲の明るさを検出する明るさセンサをさらに備え、明るさセンサの検出結果に応じて調光手段を制御したときは、周囲の明るさに応じて表示手段の明るさを調整することで、表示を見やすくすることができるとともに、手動の場合のように誤って暗順応を破るような明るさに調節することがなくなり、周囲観察に影響を与えることがない。
【0016】
また、表示手段の表示状態や設定を昼間と夜間で切り換える昼夜切換手段をさらに備えたときは、昼間時には表示手段による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
また、表示手段を視野領域に出し入れ可能に構成したときは、表示手段を視野領域から外すことができるため、素通しによる目視視認範囲を広げることができる。
また、本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、
素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができ、更には、方位検出手段、姿勢角検出手段、及び位置検出手段のうちの1つを光学機器に備えているため、外部から情報を得ること無しに、方位、姿勢角、又は地理的位置を把握することができる。
【0017】
また、光学機器の視野領域に基準となる視野垂直線及び/又は視野水平線を設け、表示手段にも視野垂直線に合せた表示手段垂直線及び/又は視野水平線に合わせた表示手段水平線を設け、方位検出手段による方位を視野垂直線に基づいて検出し、及び/又は姿勢角検出手段による姿勢角を視野水平線に基づいて検出したときは、光学機器の視野領域に表示される視野垂直線や視野水平線を基準に方位や姿勢角が検出されるため、目視視認に合わせた方位や姿勢角を把握することができる。
また、方位検出手段、姿勢角検出手段、位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた検出結果を表示手段に表示したときは、周囲環境を観察する場合に、この周囲環境を視認しつつ、対象物の方位や俯仰角、又は対象物に関するデータを同時に視認することができる。
また、方位検出手段、姿勢角検出手段、位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた関連情報を表示手段に表示したときは、周囲環境内に対象物が存在する場合にはこの対象物に関するデータも視認することができる。
【0018】
また、表示手段に検出結果及び/又は関連情報を、スクロールして表示可能とするスクロール手段をさらに備えたときは、表示手段を限られた視野領域の一部に限っているため、表示領域が狭く多くの情報を表示させることができにくいが、スクロール表示によって多くの情報を表示させることができる。
また、表示手段の表示を固定的に取り込む固定取込手段をさらに備えたときは、対象物に関するデータを、更新することなく固定させて表示を維持、記憶することで、光学機器を対象物に維持しなくても、また後からでもデータ内容を再確認できる。
また、光学機器に機器用計時手段をさらに備え、少なくとも方位検出手段、姿勢角検出手段、及び位置検出手段のうちの1つの検出信号及び/又は光学機器への接眼状況の時間的変化に基づいて、光学機器に供給される電力を抑制したときは、検出信号や光学機器への接眼状況の時間的変化によって不使用状態を検出して供給電力を抑制することで、消費電力を少なくし、又は電池容量を小さくすることでの光学機器の軽量化や使用時間の延長を図ることができる。
【0019】
また、検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて関連情報を取得し、関連情報を光学機器に送信する中継手段をさらに備えたときは、関連情報の取得を中継手段で行わせることで、光学機器の小型化及び軽量化を図ることができ、モバイル性を高めることができる。
また、中継手段にはさらに記憶手段を備え、受信、送信に関連した情報を記憶したときは、中継手段に受信、送信に関連した情報を記憶させることで、光学機器での観測を、観測者以外でも確認でき、蓄積した情報の再確認や分析を行うことができる。
また、関連情報には、GIS(地理情報システム)情報、AIS(船舶自動識別システム)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報、又は設定した目標物の方向を指示するガイド機能情報を含むときは、周囲環境内に存在する対象物に関する情報を視認することができるとともに、ガイド機能情報により対象物を短時間で捉えることができる。
【0020】
また、中継手段に中継手段用計時手段をさらに備え、検出信号、関連情報の時間的な取得状況を管理したときは、光学機器を用いた目視視認作業が正しく行われているかを管理することができる。
また、検出信号を中継手段に送信し、中継手段で処理した処理信号を光学機器に戻し、光学機器の所定の操作に基づいて、処理信号を基準にして系の故障を検出したときは、光学機器に対する自己診断機能を搭載することで、誤った観測を防止することができる。
また、本発明によれば、表示手段を光学機器の視野領域の中央部以外に設けることで、
素通しによる目視視認を確保し、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができ、更には、地理的位置算出手段によって地理的位置を算出する機能を光学機器に備えているため、外部から情報を得ること無しに、地理的位置を把握することができる。
【0021】
また、光学機器の地理的位置を検出する位置検出手段をさらに備え、地理的位置算出手段を位置検出手段による検出ができないときに機能させたときは、通常は位置検出手段による地理的位置を利用できるとともに、位置検出手段が使えない状況に陥っても地理的位置算出手段によって地理的位置を把握できる。
また、光学機器を双眼鏡としたときは、手軽に利用することができる。
また、双眼鏡を上下逆にして使用したときに、表示手段の表示も逆に表示したときは、双眼鏡の上下逆使いによっても表示手段の表示情報を利用することができる。
【0022】
また、双眼鏡の焦点合わせに連動して、表示手段の表示範囲を変更したときは、光学機器の視野領域に多くの対象物が存在する場合にも、目視視認の対象である対象物を主とした表示内容とすることができる。
また、表示手段を視野領域の上部及び/または下部に水平方向に設け、双眼鏡の目幅調節時に表示を機構的あるいは表示制御的に水平に保つときは、視野領域の中央部以外に表示手段を配置するとともに表示を水平に保つことで、素通しによる目視視認を確保できるとともに、表示手段の表示を常に見やすい状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による目視視認支援装置を搭載する船舶の側面図
【図2】同目視視認支援装置を示す機器構成図
【図3】同目視視認支援装置での光学機器の視野領域内の昼間時における表示状態を示す図
【図4】同目視視認支援装置での光学機器の視野領域内の夜間時における表示状態を示す図
【図5】同目視視認支援装置での光学機器の視野領域内の表示を示す他の実施形態による表示状態を示す図
【図6】同目視視認支援装置を機能実現手段で表したブロック図
【図7】同目視視認支援装置を機能実現手段で表した他の実施形態によるブロック図
【図8】同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図
【図9】同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図
【図10】同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図
【図11】同目視視認支援装置に用いる光学機器の要部構成図
【図12】同目視視認支援装置での表示状態を示す図
【図13】同目視視認支援装置での他の実施形態による表示状態を示す図
【図14】同目視視認支援装置の設定管理、ワッチ管理を説明する図
【図15】同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態を示す図
【図16】同目視視認支援装置の他の使用例を示す図
【図17】同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態を示す図
【図18】同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の目視視認支援装置の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態による目視視認支援装置を搭載する船舶の側面図、図2は同目視視認装置を示す機器構成図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態では目視視認支援装置を船舶10で用いた場合であり、目視視認支援装置は船橋6にて用いられる。
船舶10には、AIS(船舶自動識別装置)レシーバ1、GPSレシーバ2、ジャイロコンパス3、船体姿勢角検出手段としての姿勢角センサ(3軸角度センサ)4、レーダー装置5を備えている。
【0026】
AISレシーバ1では、船舶10の船名、船種、識別番号、位置、針路、速度、航行状態、安全情報などの、被観測物(対象物)となる他船データを取得することができる。GPSレシーバ2では、複数の衛星からの信号を受け取ることで自船の現在位置を得るデータを取得することができる。またジャイロコンパス3では自船の針路データを取得することができる。姿勢角センサ4は、自船の揺れによって生じるヨーイング、ローリング、ピッチングの姿勢角データを検出することができる。レーダー装置5では、自船から一定範囲に存在する被観測物について、自船から見た方位データと自船からの距離データを取得することができ、他船の方位、他船までの距離、再接近距離、再接近までの所要時間を主として判断できる。他船の針路、他船の速度情報は、レーダー装置5で取得する情報をプロティングすることでも得ることができる。また、ARPA(自動衝突予防支援装置)情報として自動処理した情報としても得ることができる。ARPA情報には、被観測物となる他船の方位、他船までの距離、他船の針路、速度、予測される最接近距離、最接近までの所用時間などが含まれる。
【0027】
AISレシーバ1では、船名など静的な情報は6分毎、動的な情報は航走状態により2〜12秒間隔といったように間欠的に情報更新がされるが、AISレシーバ1で得られる完結的な情報を一旦記憶させておいて利用することもできる。
また、船橋6には、レピーターコンパス7などの各種計測表示機器とともに中継手段20と光学機器50が設けられている。光学機器50は、本実施形態では双眼鏡であるが、望遠鏡やカメラなどの撮像機器であってもよい。光学機器50は基台8に保持されており、周囲環境の観測エリアの観測時には基台8から離脱して用いる。なお、レピーターコンパス7の前には、情報を周囲環境に重畳表示する重畳表示器9を備えている。
【0028】
図3及び図4は、同目視視認支援装置での光学機器の視野領域内の表示状態を示す図であり、図3は昼間時における表示状態を示す図、図4は夜間時における表示状態を示す図である。
光学機器50の視野領域の中央部以外には、表示手段90aを配置している。表示手段90aには、例えば透過型の液晶パネルや透明な有機ELディスプレイが適しているが、ハーフミラーやプリズムの一部を視野領域の中央部以外に臨ませ、文字や記号を投影して表示することもできる。表示手段90aとして、透明性の高いパネルやディスプレイを用いても、レンズだけの場合(素通しの場合)と比較すると透過率は大幅に低下してしまうため、視野領域全てには設けない。本実施形態における表示手段90aは、視野領域の上端から、視野領域の直径に対して1/4までの位置に配置している。光学機器50の視野領域の中央部は、視野領域の中心を通り、視野領域の半径に対して1/2の半径で囲まれる領域よりも大きく、3/4の半径で囲まれる領域よりも小さいことが好ましい。
【0029】
光学機器50の視野領域には、視野領域の中心を通る視野垂直線50vと、この視野垂直線50vに直交する視野水平線50hとを設けている。ここで、視野垂直線50v及び視野水平線50hは、例えば、光学系レンズに溝を形成することで物理的に構成する。
一方、表示手段90aには、視野垂直線50vに合せた表示手段垂直線90vと、視野水平線50hに合わせた表示手段水平線90hを設ける。ここで、表示手段垂直線90v及び表示手段水平線90hは、液晶などの制御によって表示する。表示手段垂直線90vは視野垂直線50vに一致させて表示し、表示手段水平線90hは視野水平線50hと平行になるように表示する。
【0030】
図3及び図4では、表示手段90aには、表示手段垂直線90v及び表示手段水平線90h以外に、方位「275°」、速度「12.9kt」、船名「OOTA−MARU」、距離「2.5NM」を表示している。また、船首が手前に向いていることを、表示手段垂直線90v上の三角マークで表示している。
【0031】
図3で示す昼間時には表示手段90aによる表示を明るくして見やすくし、図4に示す夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持するために表示手段90aによる表示を暗く調整している。また、表示される文字や記号は、昼間は暗色系で表示し、夜間は液晶などの表示を反転させ淡色系で表示し、目に入る光量を極力制限し暗順応が損なわれないように配慮している。更に、夜間における文字や記号の表示は、赤色系の光で表示し暗順応へ影響を及ぼさないように配慮している。
このように調整、配慮することで、昼間時のように視野領域が明るい場合でも表示手段90aの表示を確実に視認することができ、夜間時のように視野領域が暗い場合には、表示手段90aの表示の影響を受けることなく、被観測物である船舶10の船影を捉えたり、遠方の舷灯の色判別を確実に行うことができる。すなわち、視野領域の中央部を素通しとし、表示手段90aの明るさを調節する調光手段を備えることにより、自然光下の一億倍以上にも及ぶ明るさの変化に対応し、様々な場面で視認性を確保することが可能となっている。
【0032】
図5は、同目視視認支援装置での光学機器の視野領域内の表示を示す他の実施形態による表示状態を示す図である。
光学機器50の視野領域の中央部以外には、表示手段90a、90bを配置している。表示手段90a、90bには、例えば透過型の液晶パネルや透明な有機ELディスプレイが適しているが、ハーフミラーやプリズムの一部を視野領域の中央部以外に臨ませ、文字や記号を投影して表示することもできる。表示手段90a、90bとして、透明性の高いパネルやディスプレイを用いても、レンズだけの場合(素通しの場合)と比較すると透過率は大幅に低下してしまうため、視野領域全てには設けない。本実施形態における表示手段90aは、視野領域の上端から、視野領域の直径に対して1/4までの位置に配置し、表示手段90bは、視野領域の下端から、視野領域の直径に対して1/8までの位置に配置している。光学機器50の視野領域の中央部は、視野領域の中心を通り、視野領域の半径に対して1/2の半径で囲まれる領域よりも大きく、3/4の半径で囲まれる領域よりも小さいことが好ましい。
【0033】
光学機器50の視野領域には、視野領域の中心を通る視野垂直線50vと、この視野垂直線50vに直交する視野水平線50hとを設けている。ここで、視野垂直線50v及び視野水平線50hは、例えば、光学系レンズに溝を形成することで物理的に構成する。
一方、表示手段90a、90bには、視野垂直線50vに合せた表示手段垂直線90vと、視野水平線50hに合わせた表示手段水平線90hを設ける。ここで、表示手段垂直線90v及び表示手段水平線90hは、液晶などの制御によって表示する。表示手段垂直線90vは視野垂直線50vに一致させて表示し、表示手段水平線90hは視野水平線50hと平行になるように表示する。
表示手段90aには、表示手段垂直線90v及び表示手段水平線90h以外に、方位「275°」、速度「12.9kt」、船名「OOTA−MARU」、距離「2.5NM」を表示し、表示手段90bには、表示手段垂直線90v及び表示手段水平線90h以外に、東経「134°12.604’E」、北緯「35°43.315’N」を表示している。
本実施形態のように、光学機器50の視野領域の中央部以外の領域として、上部と下部にそれぞれ表示手段90a、90bを設けることで、上部又は下部だけに設ける場合と比較して表示情報量を多くすることができる。
【0034】
図6は同目視視認支援装置を機能実現手段で表したブロック図である。
図6を用いて同目視視認支援装置の機能実現手段について説明する。図6では、中継手段20と光学機器50とを示している。
中継手段20では、AISレシーバ1から、船舶10の船名、船種、識別番号、位置、針路、速度、航行状態、安全情報などの、被観測物となる他船データを、GPSレシーバ2から自船に関する現在位置データを、ジャイロコンパス3から自船の針路データを、姿勢角センサ4から自船の揺れによって生じる船体姿勢角データを、レーダー装置5から、自船から一定範囲に存在する被観測物について、自船から見た方位データと自船からの距離データを、ARPA装置11(自動衝突予防支援装置)から、他船の針路、他船の速度情報を、それぞれ継続的にリアルタイムで取得する。
【0035】
中継手段20は、中継手段用位置検出手段21、中継手段用姿勢角検出手段22、中継手段用方位検出手段23を備えている。
中継手段用位置検出手段21は、例えばGPSレシーバ2から、自船の現在位置に関するデータを取得することで現在位置を検出する。中継手段用姿勢角検出手段22は、例えば姿勢角センサ4から自船の揺れによって生じる船体姿勢角データを取得することで姿勢角を検出する。中継手段用方位検出手段23は、例えばジャイロコンパス3から自船の針路データを取得することで方位を検出する。
【0036】
一方、光学機器50は、位置検出手段51、姿勢角検出手段52、及び方位検出手段53を備えている。位置検出手段51では光学機器50の機器位置を、姿勢角検出手段52では光学機器50の機器姿勢角を、方位検出手段53では光学機器50の機器方位(観測方位)を検出する。位置検出手段51では、例えばGPSセンサ(図示せず)から現在位置に関するデータを取得することで機器位置を検出し、姿勢角検出手段52では、Pitch成分とRoll成分を例えば姿勢角センサ(3軸)4を用いて検出し、方位検出手段53では、方位(Bearing・・・Yaw成分を基に演算)を例えば姿勢角センサ(3軸)4を用いて検出する。
【0037】
基台8には中継手段用離脱センサ24を、光学機器50には基台離脱センサ54を備えており、中継手段用離脱センサ24及び基台離脱センサ54は、例えばスイッチで構成されており、光学機器50の基台8からの離脱を検知する。
中継手段用位置検出手段21、中継手段用姿勢角検出手段22、及び中継手段用方位検出手段23からの自船に関する現在位置データ、船体姿勢角データ、及び針路データは、中継手段用検出処理回路25において処理され、光学機器50を保持する基台8の位置、姿勢角、方位を演算する。ここで、基台8の姿勢角は、光学機器50の保持状態における基準姿勢角、基台8の方位は、光学機器50の保持状態における基準方位である。なお、自船の現在位置データを基台8の位置データとして用いることができる場合、姿勢角データを基台8の姿勢角として用いることができる場合、針路データを基台8の方位として用いることができる場合には、中継手段用検出処理回路25での演算処理を必ずしも要しない。
【0038】
なお、本実施形態では、中継手段用離脱センサ24及び基台離脱センサ54は、光学機器50の基台8からの離脱を検知するものとして説明したが、光学機器50の機器方位、機器姿勢角、及び機器位置をリセットする機能を有すればよい。また、中継手段用離脱センサ24は基台8に設けているとして説明したが、基台8と中継手段20とは一体的に構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、中継手段20に中継手段用離脱センサ24を、光学機器50に基台離脱センサ54を設けたが、いずれか一方だけを設けてもよい。この場合には、例えば中継手段用離脱センサ24だけを設けた場合には、離脱時点で中継手段用離脱センサ24から方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51に信号を送ることで、方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51での検出を開始する。
また、光学機器50の累積誤差の解消の目的で、光学機器50を基台8に戻さなくても、光学機器50からの指示(機器操作設定器67での操作)で方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51をリセットして、機器方位、機器姿勢角、及び機器位置の更新を行い、これを新たな起点として演算を行うこともできる。
【0039】
中継手段用離脱センサ24では、離脱を検知すると中継手段用検出処理回路25に信号を送り、中継手段用検出処理回路25では、離脱時点での基台8(又は中継手段20)の位置データ、姿勢角データ、及び方位データを基準データとして、中継手段用位置検出手段21、中継手段用姿勢角検出手段22、及び中継手段用方位検出手段23で検出した離脱検知後の変位データの検出処理を行う。
基台離脱センサ54では、離脱を検知すると機器用検出処理回路55に信号を送り、機器用検出処理回路55では、離脱時点での位置検出手段51、姿勢角検出手段52、及び方位検出手段53からのデータを基準データとして、それぞれ機器位置、機器姿勢角、機器方位の変位データの検出処理を行う。
機器用検出処理回路55で処理されたデータは、機器側送信回路56から継続的にリアルタイムで中継手段用受信回路26に送信される。機器側送信回路56と中継手段用受信回路26とは有線によるデータ送信でもよいが、無線によるデータ送信が好ましい。
【0040】
演算回路27では、中継手段用検出処理回路25における離脱時における基準データと、機器用検出処理回路55からの変位データとから、光学機器50の観測範囲や、被観測物の方位と俯仰角が算出される。すなわち、演算回路27では、離脱時における基準位置データを基準にして、機器位置の変位データを用いてその後の光学機器50の位置を演算し、離脱時における基準姿勢角データを基準にして、機器姿勢角の変位データを用いてその後の光学機器50の機器姿勢角を演算し、離脱時における基準方位データを基準にして、機器方位の変位データを用いてその後の光学機器50の方位を演算する。
また、演算回路27では、現在位置を基準にした光学機器50での観測エリアの中心の方位と俯仰角を算出し、光学機器50における視野領域に応じて観測エリア(表示対象範囲)が決定される。光学機器50において倍率変更が可能な場合には、それぞれの倍率に応じた観測エリアがあらかじめ設定されている。
【0041】
演算回路27で演算されたデータは、継続的にリアルタイムで中継手段用送信回路28から送信されるとともに、中継手段用表示装置29にて表示される。
また、演算回路27で演算されたデータは、継続的にリアルタイムで関連情報取得回路30に送られ、関連情報取得回路30では、観測エリアに対応する被観測物に関するデータを取得する。
すなわち、関連情報取得回路30では、演算回路27で算出された観測エリアを特定する方位範囲データ及び俯仰角範囲データを用いて、観測エリア内に存在する被観測物のデータを関連情報として取り込む。ここで、関連情報は、被観測物の位置データ、方位データ、又は距離データ、その他として、例えば、船名、識別番号などの被観測物に関する情報であり、関連情報には、GIS(地理情報システム)情報、AIS(船舶自動識別システム)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報、又は設定した目標物の方向を指示するガイド機能情報を含む。
【0042】
例えばAISレシーバ1から、船舶10の船名、船種、識別番号、位置、針路、速度、航行状態、安全情報などの、被観測物となる他船データを関連情報として取得する。また、AIS情報以外に、又はAIS情報とともに、ARPA情報、レーダー情報、GIS情報(ENC(電子海図)情報)、潮汐情報、天文情報を関連情報として取得することができる。また、レーダー装置5からのデータを関連情報として用いることもできる。この場合には、レーダー装置5では、被観測物について、自船から見た方位データと自船からの距離データを取得することができる。また、AISレシーバ1又はレーダー装置5とともにARPA装置11(自動衝突予防援助装置)による被観測物情報を関連情報として用いることもできる。なお、ガイド機能情報については後述する。
【0043】
抽出される被観測物が複数存在する場合、全てを抽出してもよいが、基台8に近い距離にある被観測物に関するデータを優先して抽出することも有効である。
また、被観測物を含む被観測物に関する情報を、被観測物の前後の所定の範囲で抽出し、被観測物が輻輳して存在する場合に分かり易い表示に繋げることも有効である。また、被観測物の決定にあたっては、光学機器50の焦点調節を検出し、焦点合致によって被観測物であることを判断することができる。
また、関連情報取得回路30で取得した被観測物に関するデータは、継続的にリアルタイムで中継手段用送信回路28から送信されるとともに、中継手段用表示装置29にて表示される。
【0044】
中継手段用受信回路26で受信される機器用検出処理回路55で処理されたデータは、中継手段用計時手段31の計時データとともに記憶手段32に記憶される。
なお、記憶手段32に記憶するデータは、中継手段用受信回路26で受信されるデータとともに、又は中継手段用受信回路26で受信されるデータに代えて中継手段用送信回路28で送信されるデータであってもよい。
中継手段用送信回路28から送信されるデータは、光学機器50内の機器側受信回路57で受信し、表示手段90で表示される。ここで表示手段90は、図3から図5を用いて説明した表示手段90a及び/又は表示手段90bが相当する。
【0045】
表示手段90では、位置検出手段51、姿勢角検出手段52、方位検出手段53の少なくとも1つの検出信号に基づいた検出結果、すなわち、機器位置、機器姿勢角、又は機器方位を表示することで、周囲環境を観察する場合に、この周囲環境を視認しつつ、観測エリアの方位や俯仰角、又は被観測物に関するデータを同時に視認することができる。また、表示手段90では、位置検出手段51、姿勢角検出手段52、方位検出手段53の少なくとも1つの検出信号に基づいた関連情報を表示することで、観測エリア内に被観測物が存在する場合にはこの被観測物に関するデータも視認することができる。なお、中継手段用送信回路28と機器側受信回路57とは有線によるデータ送信でもよいが、無線によるデータ送信が好ましい。
【0046】
光学機器50には、機器用計時手段58を更に備えている。機器用計時手段58は、被観測物に関するデータの取得時刻の管理に用いるほか、位置検出手段51として例えば姿勢角センサ(3軸)4を用いた場合には、機器用計時手段58を用いて位置検出を行うことができる。
また、光学機器50は、バッテリー59を内蔵している。バッテリー59は、中継手段20の電力供給手段(図示せず)から電力が供給される。電力供給手段からの電力の供給は、光学機器50と中継手段20との接触によって行う場合でも、非接触によって行う場合でもよい。
また、光学機器50は、表示手段90の明るさを調節する調光手段60を更に備えている。調光手段60は、ボリューム変更が可能な調光機構60aと、調光機構60aで設定された明るさとなるように調光する調光回路60bからなる。また、夜間における表示手段90の明るさの上限を設定する上限設定手段61を備え、上限設定手段61では、調光機構60aでのボリューム変更可能な上限を設定することで、夜間における暗順応への悪影響を防止することができる。ヒトは個人毎に暗順応への適応能力に若干の差があるが、上限設定手段61でボリューム変更可能な上限を設定することで、個人毎の最適な上限値を設定できる。調光回路60bでの調光によって照明62での明るさが決定され、照明62の光で表示手段90が表示される。この照明62は、赤色系の光を用いることにより、暗順応へ影響を及ぼさないように配慮されている。ヒトの目の光を感じる視細胞には、明暗のみに反応する桿体細胞と、色彩に反応する錐体細胞がある。特に、赤色に反応するL錐体細胞は、桿体細胞のスペクトル範囲を越えて(600nm以上)感度を持つ。このため、桿体細胞の反応しなくなる600nm以上の赤色系の光で表示すると、赤色系の光に反応するL錐体細胞で表示を認識し、ロドプシンの分解を防ぎ、桿体細胞の暗順応に対して影響を及ぼすことを抑制できる。なお、照明62は液晶などの表示手段90と一体的に設けることも、表示手段90に光を導く光路を用いて別体として設けることも可能である。
【0047】
また、光学機器50は、撮像装置63と固定取込手段64とを更に備えている。
撮像装置63は、被観測物の周囲環境を撮像するもので、光学機器50の視野領域と一致させている。
固定取込手段64は、撮像装置63での撮像を固定的に取り込む機能で、固定取込設定器64aの操作によって固定取込回路64bが機能して撮像装置63でのデータを取り込む。すなわち、固定取込手段64によって、撮像装置63で送信する撮像データを、静止画像データとして表示手段90で表示し、機器側送信回路56から、中継手段20に送信して中継手段用表示装置29で表示することで、静止画像データとして固定的な表示によるデータ内容の再確認を行える。また、中継手段20に送信した静止画像データを、機器用検出処理回路55で出力するデータとともに、記憶手段32に記憶させてもよい。なお、取込むデータは動画像データであっても構わない。この場合、固定取込設定器64aが操作されたときを起点として、再操作がされる迄、あるいは操作から所定の時間にわたり動画像データを取り込む。
【0048】
このように、撮像装置63の表示を固定的に取り込む固定取込手段64を備えたときは、被観測物に関するデータを、更新することなく固定させて表示を維持、記憶することで、光学機器50を被観測物に維持しなくても、データ内容を再確認できる。
また、光学機器50は、機器用記憶手段65、焦点調節機構66、及び機器操作設定器67を備えている。
機器用記憶手段65では、機器用検出処理回路55で処理されるデータ、機器側送信回路56で送信されるデータ、機器側受信回路57で受信されるデータ、撮像装置63からの撮像データ、及び/又は固定取込回路64bによる静止画像データが記憶される。
焦点調節機構66は、光学機器50の焦点鏡の位置を変更する機構である。また、機器操作設定器67では、表示手段90を視野領域に出し入れする操作指示や光学機器50の起動/停止等を設定する。
一方、中継手段20には、中継手段用操作設定器33を設けている。中継手段用操作設定器33では、中継手段用表示装置29での表示内容の設定や変更を行ったり、複数の人が交代で使用する場合に、個人に合わせた光学機器50の自動設定(眼幅や好みの照明レベルなど)の設定管理、また中継手段20の起動/停止等を行うことができる。
【0049】
図7は同目視視認支援装置を機能実現手段で表した他の実施形態によるブロック図である。なお、図6と同一機能実現手段には同一符号を付して説明を省略する。また、中継手段20の機能については、図6と同一であるため、図示を省略する。
本実施形態では、光学機器50に、光学機器50の周囲の明るさを検出する明るさセンサ68、表示手段90の表示状態や設定を昼間と夜間で切り換える昼夜切換手段69、調光手段60による明るさの調節範囲を、昼間と夜間とで異ならせる調光範囲制御手段70を備えている。
【0050】
明るさセンサ68では、明るさを検出し、調光回路60bで照明62のレベルを変える。例えば、明るさ0(新月)の場合には照明レベル1、明るさ2(満月)の場合には照明レベル2、明るさ5(曇り)の場合には照明レベル5のように照明62のレベルを変える。
昼夜切換手段69では、昼間モードと夜間モードとの切り換えを行う。昼間モードと夜間モードとの切り換えは、例えば、照明レベルの切り換え、照明62の調光範囲の変更、夜間モードでは照明62を赤色光への変更、液晶表示の反転を、いずれか又は組み合わせて行う。
調光範囲制御手段70では、個人による調節可能な範囲を変える。例えば、明るさ0(新月)の場合には照明レベル範囲0.5〜1.5、明るさ2(満月)の場合には照明レベル範囲1.5〜2.5、明るさ5(曇り)の場合には照明レベル範囲4〜6とし、個人によってこの照明レベル範囲内での調整を行うことができる。
【0051】
上限設定手段61は、特に夜間の照明レベルの上限を、例えば照明レベル2.5以下のように抑えるもので、照明レベル調節スイッチに段階を設けて機構的に制限する構成や、昼夜切換手段69での夜間切換に連動させて制限する構成や、明るさセンサ68の検出値に連動させて制限する構成を採用することができる。
また、本実施形態では、光学機器50に、表示手段90に検出結果及び/又は関連情報を、スクロールして表示可能とするスクロール手段71を備えている。スクロール手段71により、表示情報をスクロールできるので、特に長い関連情報の表示時に便利であり、適宜手動でスクロール手段71を動作指示できる。スクロール手段71の動作指示は、機器操作設定器67にて行う。
【0052】
また、本実施形態では、光学機器50に、双眼の距離を変更する目幅調節手段72と、双眼鏡の目幅調節時に表示を機構的あるいは表示制御的に水平に保つ水平調節回路73とを備えている。目幅調節手段72は、水平方向に伸縮自在なスライド調節機構であってもよいが、軸式の場合には水平調節回路73によって水平表示とする。水平表示は、軸の回転角度を検出して表示手段90を機構的に回動させることで補正を行う他、姿勢角検出手段52の検出に基づいて常に水平表示を行うことにより実現する。
また、本実施形態では、光学機器50に、表示手段90を視野領域に出し入れ可能とする表示出入機構74を備えている。表示出入機構74は、機器操作設定器67からの操作により、機構的に表示手段90を視野内と視野外に位置を変更させる。
【0053】
また、本実施形態では、光学機器50に、光学機器50の焦点合わせに連動して、表示手段90の表示範囲を変更する表示範囲変更回路75を備えている。表示範囲変更回路75は、光学機器50の焦点調節に連動して、焦点の合った対象物の前後所定の範囲の情報を表示することで、特に複数の船が前後に存在する場合に、複数の被観測物に関する表示が重なって表示されないために見やすくできる。
また、本実施形態では、光学機器50に、光学機器50である双眼鏡を上下逆にして使用したときに、表示手段90の表示も逆に表示する逆転表示回路76を備えている。逆転表示回路76は、効き目に合わせて双眼鏡を逆さ使用する場合に、姿勢角検出手段52でこれを検出し、表示を逆転させることで実現する。
【0054】
図8は同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図である。なお、図6と同一機能実現手段には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、光学機器50に、故障検出回路77を備えている。
故障検出回路77は、検出信号を中継手段20に送信し、中継手段20で処理した処理信号を光学機器50に戻し、光学機器50の所定の操作に基づいて、処理信号を基準にして系の故障を検出する。具体的には、機器操作設定器67で、光学機器50の使用開始(起動)を設定し、あらかじめ設定した手順(例えば垂直に立てるとか、90°方位を変更する)に従って光学機器50をセットする。このときに、光学機器50からの信号を中継手段用受信回路26で受信し、処理信号を光学機器50に戻して検出値があらかじめ設定した所定範囲に入っていない場合には故障と判断する。
また、光学機器50から、擬似信号を中継手段20に送信し、機器用検出処理回路55における処理信号を中継手段用送信回路28から発信して機器側受信回路57で受信することで制御回路系の故障を検出することもできる。
【0056】
また、本実施形態では、光学機器50に、接眼検出手段78と電力抑制回路79とを備えている。接眼検出手段78で光学機器50からの眼の離脱を検出すると、電力抑制回路79によって照明62や表示手段90を切又は出力低下させる。または、接眼検出手段78で光学機器50への接眼状況の時間的変化によって所定時間接眼が行われていないことを検出すると、電力抑制回路79によって照明62や表示手段90を切又は出力低下させる。更に長い時間接眼が行われていないことを検出すると、他の制御回路への電力供給を抑制したり、プロセッサ―(CPU)の周波数や電圧を下げて、更なる電力抑制を行う。
また、電力抑制回路79は、少なくとも方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51のうちの1つの検出信号が所定時間変化しないことを判定して照明62、表示手段90を切又は出力低下させてもよい。ここで、接眼検出手段78、方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51の検出信号が所定時間変化しないことの検出には、機器用計時手段58を用いる。
【0057】
また、本実施形態では、中継手段20に、検出信号、関連情報の時間的な取得状況を管理する取得情報管理回路80を備えている。
取得情報管理回路80では、中継手段用受信回路26で受信した光学機器50からの位置、姿勢、方位の処理信号や、関連情報取得回路30で取得した情報を、中継手段用計時手段31からの時系列的計時データとともに記憶手段32に記憶し、中継手段用表示装置29で表示させることで管理者が光学機器50での監視状況をチェックし、ワッチ管理することができる。
なお、中継手段用操作設定器33の設定により、複数の人が交代で使用するワッチ業務の場合に、個人に合わせた光学機器50の自動設定(眼幅や好みの照明レベルなど)の設定管理を行うこともできる。
【0058】
図9は同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図である。なお、図6と同一機能実現手段には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、光学機器50に、位置データベース81と地理的位置算出手段82とを備えている。
地理的位置算出手段82では、方位検出手段53と姿勢角検出手段52と位置データベース81とから地理的位置を演算により算出する。例えば、光学機器50によって被観測物として認識できる星座や灯台等のターゲットを観測することで得られる情報から、現在位置データを算出できる。また、現在位置を特定した後の位置変更は、方位検出手段53と姿勢角検出手段52と機器用計時手段58の検出信号に基づいて算出してもよい。
地理的位置算出手段82は、位置検出手段51による検出ができないときに機能させるが、特に、中継手段用位置検出手段21及び位置検出手段51の双方とも検出ができない場合に特に有効である。
【0060】
図10は同目視視認支援装置を機能実現手段で表した更に他の実施形態によるブロック図である。なお、図6と同一機能実現手段には同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、図6における中継手段20が有する機能の一部を光学機器50に備えたもので、本実施形態における出力回路83、表示選択回路84、及び外部表示装置85は、実質的に図6に示す機器側送信回路56、機器側受信回路57、中継手段用表示装置29の機能に相当する。
また、本実施形態における記憶手段32及び関連情報取得回路30は、光学機器50に設けることだけが図6と相違し、機能的には同一である。
本実施形態では、中継手段20を備えることなく、光学機器50にて各種機能を実現するものであり、中継手段用位置検出手段21、中継手段用姿勢角検出手段22、中継手段用方位検出手段23、及び中継手段用検出処理回路25の代わりに、各種データベース86を設け、GISレシーバ12からのGIS情報とともに関連情報取得回路30に用いる。ここで各種データベース86では、星座、景観などに関する情報を含む。また、光学機器50の外部にも外部表示装置85を設けることが好ましい。
【0062】
次に、図11を用いて同目視視認支援装置に用いる光学機器の要部構成について説明する。
図11に示すように、光学機器50として双眼鏡を用いる場合には、対物レンズ91と接眼レンズ92との間には、対物レンズ側ポロプリズム93と接眼レンズ側ポロプリズム94とが配置されている。対物レンズ側ポロプリズム93の反射面には、入射光用直角プリズムを、接眼レンズ側ポロプリズム94の反射面には、出射光用直角プリズムをそれぞれ配置する。対物レンズ側ポロプリズム93の反射面、又は入射光用直角プリズムにおける対物レンズ側ポロプリズム93の反射面との当接面には、屈折率調整用のコーティングを施している。また、接眼レンズ側ポロプリズム94の反射面、又は出射光用直角プリズムにおける接眼レンズ側ポロプリズム94の反射面との当接面には、屈折率調整用のコーティングを施している。
接眼レンズ側ポロプリズム94と接眼レンズ92との間には、焦点鏡95とともに表示手段90が配置される。表示手段90は、表示出入機構74によって接眼レンズ側ポロプリズム94から接眼レンズ92までの光路96に垂直な方向に移動する。
【0063】
一対の光路96の間には、コマンドスイッチケース97、主制御回路98、位置検出手段51、姿勢角検出手段52、方位検出手段53が配置される。コマンドスイッチケース97は接眼レンズ92側に配置され、明るさセンサ68は対物レンズ91側に配置される。
コマンドスイッチケース97には、機器操作設定器67及び固定取込設定器64aが設置されている。主制御回路98には、機器用検出処理回路55、機器側送信回路56、機器側受信回路57、調光回路60b、固定取込回路64b、水平調節回路73、表示範囲変更回路75、逆転表示回路76、故障検出回路77、電力抑制回路79、出力回路83、表示選択回路84が組み込まれている。
【0064】
次に、図12を用いて同目視視認支援装置での表示状態について説明する。
図12(a)は、船舶10の船橋6から見える自然光下の周囲環境の一部を示しており、図12(b)(c)(d)は、それぞれ双眼鏡における観測エリア(図12(a)中に記載した円(b)(c)(d))を示している。なお、図12(a)中に記載した円(c)と円(d)は同一円を示している。
【0065】
まず、図12(a)に示すように、周囲環境中には、観測エリア中の被観測物として、客船101、タンカー102、及び灯台103が見えている。
図12(b)では、光学機器50としての双眼鏡での被観測物をタンカー102とした場合であり、視野領域の上部に水平方向に設けた表示手段90aには、タンカー102の関連情報として、対地進路(COG:Course over Ground)が「315°」、対地速度(SOG:Speed over Ground)が「12.5kt」、船名が「MITAKA−MARU」であること、また船の向きを三角記号にて表示している。視野領域の下部に水平方向に設けた表示手段90bには、タンカー102の関連情報として、方位(BRG:Bearing)が「225°」、距離(RNG:Range)が「3.0NM」であることを表示している。
【0066】
光学機器50の視野領域には、視野領域の中心を通る視野垂直線50vを設けており、表示手段90a及び表示手段90bには、視野垂直線50vに合せた表示手段垂直線90vが表示されている。ここでは、表示される方位(BRG:Bearing)「225°」は、被観測物であるタンカー102に関するものであるが、被観測物が存在しない場合に表示される方位は、視野垂直線50vに基づいた検出値となる。
【0067】
図12(c)では、光学機器50としての双眼鏡での観測エリア内に、タンカー102と客船101が存在する場合であり、視野領域の上部に水平方向に設けた表示手段90aには、タンカー102の関連情報として、方位が「225°」、対地速度が「12.5kt」、船名が「MITAKA−MARU」、距離が「3.0NM」であること、また船の向きを記号にて表示している。視野領域の下部に水平方向に設けた表示手段90bには、客船101の関連情報として、方位が「215°」、対地速度が「10kt」、船名が「TAMAYA−MARU」、距離が「2.5NM」であること、また船の向きを記号にて表示している。
【0068】
本実施形態では、観測エリア内に複数の被観測物が存在する場合の表示方法を示しており、一方の被観測物であるタンカー102の関連情報を一方の表示手段90aに表示させ、他方の被観測物である客船101の関連情報を他方の表示手段90bに表示させている。
また、例えば、本実施の形態のように、表示させる関連情報量が多い場合には、図7に示したスクロール手段71によって表示内容をスクロールさせることで、多くの情報を表示させることができる。
なお、スクロール手段71によって表示内容をスクロールさせる場合には、表示手段垂直線90vの表示をさせないことが好ましい。
【0069】
図12(d)では、光学機器50としての双眼鏡での観測エリア内に、タンカー102と客船101が存在する場合での他の表示方法を示すものである。
視野領域の上部に水平方向に設けた表示手段90aには、タンカー102の関連情報として、方位が「225°」、船名が「MITAKA−MARU」であること、客船101の関連情報として、方位が「215°」、船名が「TAMAYA−MARU」であることを表示している。一方、視野領域の下部に水平方向に設けた表示手段90bには、観測エリア内の方位をメモリ表示するとともに50vの方位を表示している。
なお、表示内容によっては、表示手段垂直線90vの表示をさせないように機器操作設定器67にて設定することができる。
【0070】
次に、図13を用いて同目視視認支援装置での他の実施形態による表示状態について説明する。図13(a)は、光学機器の焦点調節に連動させ無い場合の表示状態を示す図、図13(b)は、光学機器の焦点調節に連動させた場合の表示状態を示す図である。
【0071】
図13では、光学機器50としての双眼鏡での観測エリア内に、船舶104、船舶105のように複数の被観測物が存在している。
基本的には、表示手段垂直線90vに近い被観測物を表示する。図13(a)では、表示手段垂直線90vが船舶105に一致しているため、表示手段90aには、船舶105の関連情報として、対地進路が「200°」、対地速度が「10.0kt」、船名が「MUSASHINO−MARU」であることが表示され、表示手段90bには、方位が「6.5°」、距離が「4.0NM」であることが表示されている。
しかし、例えば手ぶれの影響で、実際に知りたい被観測物が必ずしも表示手段垂直線90vに来ない場合もある。
【0072】
図13(b)では、表示範囲変更回路75によって、光学機器50の焦点調節に連動して、焦点の合った対象物の前後所定の範囲の情報を表示させている。ここでは表示範囲変更回路75によって、表示範囲を「1.0〜3.0NM」に限定している。
この場合には、表示手段垂直線90vが船舶105に一致しているが、表示手段90aには、船舶104の関連情報として、対地進路が「315°」、対地速度が「12.5kt」、船名が「MITAKA−MARU」であることが表示され、表示手段90bには、方位が「5.5°」、距離が「2.0NM」であることが表示されている。
【0073】
本実施形態のように、双眼鏡の焦点合わせに連動して、表示手段90a、90bの表示範囲を変更することで、視野領域に多くの被観測物が存在する場合にも、目視視認の対象である被観測物に限った表示内容とすることができる。また、感度合わせ(方位範囲±○○°以内)によっては、複数の被観測物の関連情報を表示させることもできる。
【0074】
次に、図14を用いて図8で説明した自動設定(眼幅や好みの照明レベルなど)の設定管理とワッチ管理について説明する。
図14は、同目視視認支援装置の設定管理、ワッチ管理を説明する図である。
図中、担当者別プリセット表は、個人に合わせた光学機器50の設定内容を示している。
複数の人が交代で使用するワッチ業務の場合に、担当者別プリセット表に示すように、担当者単位で、夜間照明レベル及び昼間照明レベルの最大値、左右の眼の焦点の違いの補正値、効き目に応じた表示反転を、中継手段用操作設定器33の設定によりあらかじめ設定することができる。これらの設定を行っておくことで、機器操作設定器67又は中継手段用操作設定器33にて使用者が担当者識別情報を入力することで、個別に調整することなく、光学機器50の設定を行うことができる。
【0075】
図中、ワッチ管理表は、中継手段用受信回路26で受信した光学機器50からの位置、姿勢、方位の処理信号を取得情報管理回路80で取得することで作成される。
担当者名とともに、ワッチ時刻、動作時間、操作回数、長期垂直回数、及び長期静止回数が一覧表示され、それらの分析によって判定も行われる。また、これらのワッチ管理での分析、あるいは予め設定された設定値に基づき、ワッチ中の担当者に対するリアルタイムでの警告、例えば「周囲の確認をお願いします」という音声による警告を発することもできる。
【0076】
次に、図15を用いて同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態について説明する。
図15では、光学機器50としての双眼鏡での観測エリア内に、目視できる被観測物が存在していない場合を示している。
本実施形態は、設定水深を「10m」と設定した場合であり、目視できる被観測物が存在していないが、表示手段90aには、設定水深の関連情報として、設定条件を満たす原因「座礁注意」、水深が「6.5m」であることが表示され、表示手段90bには、方位が「5.5°」、距離が「2.0NM」であることが表示されている。この場合、設定水深よりも水深が小さい周囲環境が存在しているので座礁注意が表示されるとともに、リアルタイムでの警告、例えば「水深に注意してください」という音声による警告を発することもできる。
【0077】
次に、図16を用いて同目視視認支援装置の他の使用例について説明する。
本実施形態は、図9で示した地理的位置算出手段での処理流れを具体的に示すものである。
本実施形態では、光学機器50に設けている方位検出手段53と姿勢角検出手段52と機器用計時手段58の検出信号に基づいて光学機器50の地理的位置を算出する。
光学機器50にて、被観測物となる星座を観測エリア内に捉えることで、姿勢角検出手段52により高度角読み込みが行われ(ステップ1)、方位検出手段53により方位角読み込みが行われる(ステップ2)。
次に、機器用計時手段58によって現在時刻を読み込み(ステップ3)、位置データベース81から位置データを読み込み(ステップ4)、検出された高度角と方位角から、現在位置である緯度、経度を計算する(ステップ5)。ステップ6において、計算された緯度、経度を出力することで現在位置を把握することができる。
このような地理的位置算出の必要性は、例えばGPS情報が得られない場合や、GPSレシーバ2や中継手段20、また位置検出手段51の故障の場合等に地理的位置を知ることができる点にある。
【0078】
次に、図17を用いて同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態について説明する。
図17では、光学機器50としての双眼鏡での観測エリア内に、被観測物として灯台が存在する場合を示している。
本実施形態では、GIS(地理情報システム)情報を用いることで、表示手段90aには、灯台名「INUBOUSAKI」、北緯「35°37’N」、東経「139°04’E」であることが表示されている。また、表示手段90aには、光学機器50の方位をシンボル記号で表示している。
【0079】
次に、図18を用いて同目視視認支援装置での更に他の使用例による表示状態について説明する。
図18では、光学機器50により、天体観測を行う場合を示しており、あらかじめ被観測物を設定しておく。
【0080】
図18(a)では、観測エリア内に被観測物を捉えていない状態を示し、図18(b)では、観測エリア内に被観測物を捉えた状態を示している。
図18(a)では、表示手段90aには、被観測物として設定した天体名「SIRIUS」が表示され、表示手段90bには、被観測物の現時刻における方位「270.0°」、高度「45.0°」が表示されている。また、表示手段90aには、設定した被観測物が存在する方向を、矢印の向きと長さによって表示し、表示手段90bには、観測エリアの現在方位「245.0°」、現在高度「60.0°」を表示している。
図18(b)では、表示手段90aには、被観測物として設定した天体名「SIRIUS」が表示され、表示手段90bには、被観測物の現時刻における方位「270.0°」、高度「45.0°」が表示されている。また、表示手段90aには、設定した被観測物が視野中心に導入されたことを示すシンボルが表示され、表示手段90bには、被観測物と一致する観測エリアの現在方位「270.0°」、高度「45.0°」が表示されている。
【0081】
本実施形態で示した、矢印の向きと長さ、視野中心に導入されたことを示すシンボル、及び被観測物の現時刻における方位「270.0°」、高度「45.0°」と観測エリアの現在方位「245.0°」、現在高度「60.0°」の表示は、ガイド機能情報であり、これらのガイド機能情報を表示情報に含めることで、被観測物を捉えやすくなる。本実施形態では、天体観測を例に説明したが、被観測物はこれに限られるものではない。
【0082】
本実施形態によれば、表示手段90を光学機器50の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段90による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段60による明るさ調整によって、ダイナミックレンジの広い自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができる。
なお、調光手段60による、夜間における表示手段90の明るさの上限を設定する上限設定手段61をさらに備えたときは、明るい光による暗順応が破られることを防止することができ、暗順応の状態を維持することができる。
また、表示手段90の夜間における表示光として、赤色系の光を用いたときは、桿体細胞の感度の低い赤色系の光を用いることで桿体細胞の飽和を防ぎつつL錐体細胞による視力を確保でき、また赤色系の光によってロドプシンの分解を防ぐことができるため、暗順応に掛かる時間を短くすることができる。
【0083】
また、調光手段60による明るさの調節範囲を、昼間と夜間とで異ならせる調光範囲制御手段70をさらに備えたときは、昼間時には表示手段90による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
また、光学機器50の周囲の明るさを検出する明るさセンサ68をさらに備え、明るさセンサ68の検出結果に応じて調光手段60を制御したときは、周囲の明るさに応じて表示手段90の明るさを調整することで、表示を見やすくすることができるとともに、手動の場合のように誤って暗順応を破るような明るさに調節することがなくなり、周囲観察に影響を与えることがない。
また、表示手段90の表示状態や設定を昼間と夜間で切り換える昼夜切換手段69をさらに備えたときは、昼間時には表示手段90による表示を明るくして見やすくできるとともに、夜間には視認性を確保し、暗順応の状態を維持することができる。
【0084】
また、表示手段90を視野領域に出し入れ可能に構成したときは、表示手段90を視野領域から外すことができるため、素通しによる目視視認範囲を広げることができる。
また、本発明によれば、表示手段90を光学機器50の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保でき、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段90による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段60による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができ、更には、方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51のうちの1つを光学機器50に備えているため、外部から情報を得ること無しに、方位、姿勢角、又は地理的位置を把握することができる。
【0085】
また、光学機器50の視野領域に基準となる視野垂直線50v及び/又は視野水平線50hを設け、表示手段90にも視野垂直線50vに合せた表示手段垂直線90v及び/又は視野水平線50hに合わせた表示手段水平線90hを設け、方位検出手段53による方位を視野垂直線50vに基づいて検出し、及び/又は姿勢角検出手段52による姿勢角を視野水平線50hに基づいて検出したときは、光学機器50の視野領域に表示される視野垂直線50vや視野水平線50hを基準に方位や姿勢角が検出されるため、目視視認に合わせた方位や姿勢角を把握することができる。
また、方位検出手段53、姿勢角検出手段52、位置検出手段51の少なくとも1つの検出信号に基づいた検出結果を表示手段90に表示したときは、周囲環境を観察する場合に、この周囲環境を視認しつつ、対象物の方位や俯仰角、又は対象物に関するデータを同時に視認することができる。
【0086】
また、方位検出手段53、姿勢角検出手段52、位置検出手段51の少なくとも1つの検出信号に基づいた関連情報を表示手段90に表示したときは、周囲環境内に対象物が存在する場合にはこの対象物に関するデータも視認することができる。
また、表示手段90に検出結果及び/又は関連情報を、スクロールして表示可能とするスクロール手段71をさらに備えたときは、表示手段90を限られた視野領域の一部に限っているため、表示領域が狭く多くの情報を表示させることができにくいが、スクロール表示によって多くの情報を表示させることができる。
また、表示手段90の表示を固定的に取り込む固定取込手段64をさらに備えたときは、対象物に関するデータを、更新することなく固定させて表示を維持、記憶することで、光学機器50を対象物に維持しなくても、また後からでもデータ内容を再確認できる。
【0087】
また、光学機器50に機器用計時手段58をさらに備え、少なくとも方位検出手段53、姿勢角検出手段52、及び位置検出手段51のうちの1つの検出信号及び/又は光学機器50への接眼状況の時間的変化に基づいて、光学機器50に供給される電力を抑制したときは、検出信号や光学機器50への接眼状況の時間的変化によって不使用状態を検出して供給電力を抑制することで、消費電力を少なくし、又は電池容量を小さくすることでの光学機器50の軽量化や使用時間の延長を図ることができる。
また、検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて関連情報を取得し、関連情報を光学機器50に送信する中継手段20をさらに備えたときは、関連情報の取得を中継手段20で行わせることで、光学機器50の小型化及び軽量化を図ることができ、モバイル性を高めることができる。
【0088】
また、中継手段20にはさらに記憶手段32を備え、受信、送信に関連した情報を記憶したときは、中継手段20に受信、送信に関連した情報を記憶させることで、光学機器50での観測を、観測者以外でも確認でき、蓄積した情報の再確認や分析を行うことができる。
また、関連情報には、GIS(地理情報システム)情報、AIS(船舶自動識別システム)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報、又は設定した目標物の方向を指示するガイド機能情報を含むときは、周囲環境内に存在する対象物に関する情報を視認することができるとともに、ガイド機能情報により対象物を短時間で捉えることができる。
また、中継手段20に中継手段用計時手段31をさらに備え、検出信号、関連情報の時間的な取得状況を管理したときは、光学機器50を用いた目視視認作業が正しく行われているかを管理することができる。
【0089】
また、検出信号を中継手段20に送信し、中継手段20で処理した処理信号を光学機器50に戻し、光学機器50の所定の操作に基づいて、処理信号を基準にして系の故障を検出したときは、光学機器50に対する自己診断機能を搭載することで、誤った観測を防止することができる。
また、本発明によれば、表示手段90を光学機器50の視野領域の中央部以外に設けることで、素通しによる目視視認を確保し、暗く光量の少ない状態での対象物の視認性を向上できるとともに、表示手段90による情報表示領域と目視視認領域とが異なることで、情報表示の明るさによる目の暗順応への影響を少なくできる。更に調光手段60による明るさ調整によって、自然光下での環境変化への対応や暗順応への悪影響の軽減が可能となり、またヒトの個人差に対応させることができるため、暗順応の低下を更に少なくし視認性を更に向上することができ、更には、地理的位置算出手段82によって地理的位置を算出する機能を光学機器50に備えているため、外部から情報を得ること無しに、地理的位置を把握することができる。
また、光学機器50の地理的位置を検出する位置検出手段51をさらに備え、地理的位置算出手段82を位置検出手段51による検出ができないときに機能させたときは、通常は位置検出手段51による地理的位置を利用できるとともに、位置検出手段51が使えない状況に陥っても地理的位置算出手段82によって地理的位置を把握できる。
【0090】
また、光学機器50を双眼鏡としたときは、手軽に利用することができる。
また、双眼鏡を上下逆にして使用したときに、表示手段90の表示も逆に表示したときは、双眼鏡の上下逆使いによっても表示手段90の表示情報を利用することができる。
また、双眼鏡の焦点合わせに連動して、表示手段90の表示範囲を変更したときは、光学機器50の視野領域に多くの対象物が存在する場合にも、目視視認の対象である対象物を主とした表示内容とすることができる。
また、表示手段90を視野領域の上部及び/または下部に水平方向に設け、双眼鏡の目幅調節時に表示を機構的あるいは表示制御的に水平に保つときは、視野領域の中央部以外に表示手段90を配置するとともに表示を水平に保つことで、素通しによる目視視認を確保できるとともに、表示手段90の表示を常に見やすい状態に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認できる光学機器、例えば双眼鏡や望遠鏡に利用することができ、特に持ち運び可能なポータブルな光学機器において適している。
【符号の説明】
【0092】
8 基台
9 重畳表示器
10 船舶
20 中継手段
21 中継手段用位置検出手段
22 中継手段用姿勢角検出手段
23 中継手段用方位検出手段
24 中継手段用離脱センサ
25 中継手段用検出処理回路
26 中継手段用受信回路
27 演算回路
28 中継手段用送信回路
29 中継手段用表示装置
30 関連情報取得回路
50 光学機器
50h 視野水平線
50v 視野垂直線
51 位置検出手段
52 姿勢角検出手段
53 方位検出手段
54 基台離脱センサ
55 機器用検出処理回路
56 機器側送信回路
57 機器側受信回路
58 機器用計時手段
59 バッテリー
60 調光手段
60a 調光機構
60b 調光回路
61 上限設定手段
62 照明
63 撮像装置
64 固定取込手段
64a 固定取込設定器
64b 固定取込回路
65 機器用記憶手段
66 焦点調節機構
67 機器操作設定器
90 表示手段
90a 表示手段
90b 表示手段
90h 表示手段水平線
90v 表示手段垂直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、前記光学機器の視野領域の中央部以外に設けて目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、前記表示手段の明るさを調節する調光手段とを備えたことを特徴とする目視視認支援装置。
【請求項2】
前記調光手段による、夜間における前記表示手段の明るさの上限を設定する上限設定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の目視視認支援装置。
【請求項3】
前記表示手段の夜間における表示光として、赤色系の光を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の目視視認支援装置。
【請求項4】
前記調光手段による明るさの調節範囲を、昼間と夜間とで異ならせる調光範囲制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項5】
前記光学機器の周囲の明るさを検出する明るさセンサをさらに備え、前記明るさセンサの検出結果に応じて前記調光手段を制御したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項6】
前記表示手段の表示状態や設定を昼間と夜間で切り換える昼夜切換手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項7】
前記表示手段を前記視野領域に出し入れ可能に構成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項8】
自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、前記光学機器の視野領域の中央部以外に設けた目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、前記表示手段の明るさを調節する調光手段と、少なくとも前記光学機器の目視視認する方位を検出する方位検出手段、前記光学機器の姿勢角を検出する姿勢角検出手段、及び前記光学機器の位置を検出する位置検出手段のうちの1つとを備えたことを特徴とする目視視認支援装置。
【請求項9】
前記光学機器の前記視野領域に基準となる視野垂直線及び/又は視野水平線を設け、前記表示手段にも前記視野垂直線に合せた表示手段垂直線及び/又は前記視野水平線に合わせた表示手段水平線を設け、前記方位検出手段による方位を前記視野垂直線に基づいて検出し、及び/又は前記姿勢角検出手段による姿勢角を前記視野水平線に基づいて検出したことを特徴とする請求項8に記載の目視視認支援装置。
【請求項10】
前記方位検出手段、前記姿勢角検出手段、前記位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた検出結果を前記表示手段に表示したことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の目視視認支援装置。
【請求項11】
前記方位検出手段、前記姿勢角検出手段、前記位置検出手段の少なくとも1つの検出信号に基づいた関連情報を前記表示手段に表示したことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項12】
前記表示手段に前記検出結果及び/又は前記関連情報を、スクロールして表示可能とするスクロール手段をさらに備えたことを特徴とする請求項11に記載の目視視認支援装置。
【請求項13】
前記表示手段の表示を固定的に取り込む固定取込手段をさらに備えたことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項14】
前記光学機器に機器用計時手段をさらに備え、少なくとも前記方位検出手段、前記姿勢角検出手段、及び前記位置検出手段のうちの1つの検出信号及び/又は前記光学機器への接眼状況の時間的変化に基づいて、前記光学機器に供給される電力を抑制したことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項15】
前記検出信号を受信し、受信した前記検出信号に基づいて前記関連情報を取得し、前記関連情報を前記光学機器に送信する中継手段をさらに備えたことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の目視視認支援装置。
【請求項16】
前記中継手段にはさらに記憶手段を備え、受信、送信に関連した情報を記憶したことを特徴とする請求項15に記載の目視視認支援装置。
【請求項17】
前記関連情報には、GIS(地理情報システム)情報、AIS(船舶自動識別システム)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報、又は設定した目標物の方向を指示するガイド機能情報を含むことを特徴とする請求項11から請求項16のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項18】
前記中継手段に中継手段用計時手段をさらに備え、前記検出信号、前記関連情報の時間的な取得状況を管理したこと特徴とする請求項15から請求項17のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項19】
前記検出信号を前記中継手段に送信し、前記中継手段で処理した処理信号を前記光学機器に戻し、前記光学機器の所定の操作に基づいて、前記処理信号を基準にして系の故障を検出したことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項20】
自然光下の周囲環境に存在する対象物を目視視認する光学機器において、前記光学機器の視野領域の中央部以外に設けた目視視認に関連した情報を表示する表示手段と、前記光学機器の観測する方位を検出する方位検出手段と、前記光学機器の姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、時間を計測する計時手段と、前記方位検出手段と前記姿勢角検出手段と前記計時手段の検出信号に基づいて前記光学機器の地理的位置を算出する地理的位置算出手段とを備えたことを特徴とする目視視認支援装置。
【請求項21】
前記光学機器の前記地理的位置を検出する位置検出手段をさらに備え、前記地理的位置算出手段を前記位置検出手段による検出ができないときに機能させたことを特徴とする請求項20に記載の目視視認支援装置。
【請求項22】
前記光学機器を双眼鏡としたことを特徴とする請求項1から請求項21のいずれかに記載の目視視認支援装置。
【請求項23】
前記双眼鏡を上下逆にして使用したときに、前記表示手段の前記表示も逆に表示したことを特徴とする請求項22に記載の目視視認支援装置。
【請求項24】
前記双眼鏡の焦点合わせに連動して、前記表示手段の表示範囲を変更したことを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の目視視認支援装置
【請求項25】
前記表示手段を前記視野領域の上部及び/または下部に水平方向に設け、前記双眼鏡の目幅調節時に前記表示を機構的あるいは表示制御的に水平に保つことを特徴とする請求項22から請求項24のいずれかに記載の目視視認支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−159541(P2012−159541A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17236(P2011−17236)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(591163177)タマヤ計測システム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】